JP2004175743A - エナミン化合物並びに、それを用いた電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents

エナミン化合物並びに、それを用いた電子写真感光体及び画像形成装置 Download PDF

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Takatsugu Obata
孝嗣 小幡
Akihiro Kondo
晃弘 近藤
Kazuya Ishida
一也 石田
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Abstract

【課題】帯電電位が高く高感度で、光応答性及び耐久性に優れ、低温環境下及び高速プロセスにおいても特性が低下しない電子写真感光体を実現する。
【解決手段】エナミン化合物は高い電荷移動度を有するため、該エナミン化合物を感光層中に含有することで、高感度で、低温環境下及び高速プロセスでも、十分な光応答性を有する電子写真感光体を実現できる。
また、そのような移動度の高いエナミン化合物を用いることで、従来から知られる物質を用いた場合に比べ、バインダ樹脂の混合比を高くできる。
そのため、バインダ樹脂の混合比を高くすることで、耐刷性を向上でき、光応答性及び電荷輸送能力を悪化させることなく、耐刷性を向上した、耐久性の高い電子写真感光体を実現できる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
導電性支持体と、
該導電性支持体上に設けられ、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する感光層とを備えた電子写真感光体と、該電子写真感光体を備えた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、有機光導電性物質が幅広く研究開発されており、静電記録素子、センサ材料、有機EL( EL:Electro Luminescent )素子等に利用されるようになってきている。
【0003】
また、電子写真感光体( 以下、「感光体」と称す )にも利用されるようになってきている。
【0004】
有機光導電性物質を用いた電子写真分野への利用は、一般的な複写機の分野に限らず、従来では写真技術が使われていた印刷版材、スライドフィルム、マイクロフィルム等の分野にも広がっており、また、レーザー、LED( LightEmitting Diode )、CRT( Cathode Ray Tube )を光源とする高速プリンタにも応用されるようになっている。
【0005】
従って、有機光導電性材用及びそれを用いた電子写真感光体に対する要求も、高度で幅広いものとなりつつある。
【0006】
従来から、電子写真感光体としては、セレン、酸化亜鉛、カドミウム等の無機系光導電性物質を主成分とした感光層を有する無機感光体が、広く用いられてきた。
【0007】
しかしながら、無機感光体は感光体としてのある程度の基礎特性を備えているものの、成膜が困難であり、また、無機系の光導電性物質は一般的に毒性が強いために、製造上及び取り扱い上において、大きな制約を受けていた。
【0008】
一方で、有機系光導電性物質を用いた電子写真感光体は、成膜性が良く、可撓性も良く、軽量で透明性も良く、適当な増感方法により広範囲の波長域に感度を示す感光体の設計が容易である等の利点を有している。
【0009】
そのため、電子写真感光体の主力は、次第に、無機感光体から有機感光体へと移りつつある。
【0010】
従来の有機感光体は、感度及び耐久性が十分ではなかったが、電荷発生機能と電荷輸送機能とを、それぞれ別の物質(電荷発生物質及び電荷輸送物質)に分担させた機能分離型電子写真感光体によって、著しく改善されている。
【0011】
こうした機能分離型電子写真感光体では、電荷発生物質と電荷輸送物質を、それぞれ決定することができるため、それぞれの物質選択の選択範囲が広く、所望する特性を有する電子写真感光体を、比較的容易に作成できるという利点がある。
【0012】
電荷発生機能を有する電荷発生物質としては、例えば、フタロシアニン顔料、スクエアリウム色素、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、シアニン色素、スクエアリック酸染料、ピリリウム塩系色素等の多種の物質が検討され、耐光性が強く、電荷発生能力が大きい種々の物質が提唱されている。
【0013】
一方、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質としては、例えば、ピラゾリン化合物(例えば、特許文献1参照)、ヒドラゾン化合物(例えば、特許文献1乃至4参照)、トリフェニルアミン化合物(例えば、特許文献5及び6参照)、スチルベン化合物(例えば、特許文献7及び8参照)等の種々の化合物が知られている。
【0014】
最近では、縮合多環式炭化水素系を中心母核に持つ、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体及びターフェニル誘導体(例えば、特許文献9参照)等も開発されている。
【0015】
これらの電荷輸送物質には以下に示すような特性が要求される
▲1▼光及び熱に対して安定であること。
▲2▼コロナ放電により発生するオゾン、NOx(Nitrogen Oxides)、硝酸等に対して安定であること。
▲3▼高い電荷輸送能力を有すること。
▲4▼有機溶剤及び結着剤との相溶性が高いこと。
▲5▼製造が容易であり、安価に製造できること。
【0016】
しかしながら、従来から知られている電荷輸送物質では、上記特性のすべてを同時に満足させることはできなかった。
【0017】
特に、電荷輸送物質をバインダ樹脂内に分散させて構成した電荷輸送層が、感光体の表面層となる場合においては、上記感光体が複写機やレーザープリンターに搭載して用いられる際に、クリーニングブレード、帯電ローラー等の機能部材によって、感光体の表面層の一部が削り取られてしまうことが多い。
【0018】
従って、上記感光体(即ち、電荷輸送層)が、上記機能部材に対して、強い表面層を持つことが望まれていた。
【0019】
上記感光体の表面層を強くし、耐久性を向上するためには、電荷輸送層中のバインダ樹脂の含有量を高めることが考えられる。
【0020】
ところが、電荷輸送層中のバインダ樹脂の含有量を高めると、電荷輸送層中の電荷輸送物質の電荷輸送能力が低下してしまい、その結果、感光体の光応答性が低下してしまうという問題点があった。
【0021】
感光体の光応答性が悪いと、感光体の表面電位が十分に減衰していない状態で、繰り返し使用することとなり、残留電位上昇に伴う電位変化が増大し、感光体使用の早い時期に画像品位が低下してしまう。
【0022】
従って、十分な応答性を確保することが必要であり、そのためには、高い輸送能力を有する有機光導電性物質が求められていた。
【0023】
また、感光体の特性として、低温環境下で用いた場合にも感度が低下しないことも望まれるが、こうした特性を有する電荷輸送物質も、現在まで得られていない。
【0024】
こうした要求を満たす電荷輸送物質として、前述の電荷輸送物質よりも高い移動度を有するエナミン化合物が提案されている(例えば、特許文献10乃至12参照)。
【0025】
【特許文献1】
特公昭52−004188号公報 (1頁〜2頁)
【特許文献2】
特開昭54−150128号公報 (1頁〜4頁)
【特許文献3】
特公昭55−042380号公報 (1頁〜7頁)
【特許文献4】
特開昭55−052063号公報 (1頁〜5頁)
【特許文献5】
特公昭58−032372号公報 (1頁〜5頁)
【特許文献6】
特開平02−190862号公報 (2頁〜6頁)
【特許文献7】
特開昭54−151955号公報 (1頁〜3頁)
【特許文献8】
特開昭58−198043号公報 (1頁〜9頁)
【特許文献9】
特開平07−048324号公報 (3頁〜15頁)
【特許文献10】
特開平02−051162号公報 (2頁〜6頁)
【特許文献11】
特開平07−120945号公報 (2頁〜20頁)
【特許文献12】
特開平10−069107号公報 (6頁〜15頁)
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献10乃至12に記載のエナミン化合物を用いた感光体の性能は十分ではなかった。
【0027】
また、感光体の特性として、また、種々の環境下において特性の変化が小さく信頼性が高いこと、特に、低温環境下で用いた場合であっても、感度が低下しないことが望まれているが、このような特性までも実現している電荷輸送物質は得られていなかった。
【0028】
そのため、本発明では、帯電電位が高く高感度であり、低温環境下及び高速プロセスにおいても十分な光応答性を有し、また、高い電荷輸送能力を有した電子輸送物質であるエナミン化合物を提供することを目的としている。
【0029】
また、本発明では、帯電電位が高く高感度であり、低温環境下及び高速プロセスにおいても十分光応答性を有し、また、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することを目的としている。
【0030】
また、本発明では、帯電電位が高く高感度であり、低温環境下及び高速プロセスにおいても十分光応答性を有し、また、耐久性に優れた画像形成装置を提供することを目的としている。
【0031】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記一般式(1)で表されるエナミン化合物である。
【0032】
【化5】
Figure 2004175743
【0033】
(式中、Ar及びArは各々置換基を含んでも良いアリール基又は置換基を含んでも良い複素環基を示す。Arは置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基又は置換基を含んでも良いアルキル基を示す。Arは置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基を示す。Arは置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基を示す。但し、nが0の時Ar及びArは同時にフェニレン基となることはない。Arは水素原子、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基又は置換基を含んでも良いアルキル基を示す。Ar及びArは、原子又は原子団を介して互いに結合し、環構造を形成しても良い。Arは置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基、置換基を含んでも良いアルキル基又は水素原子を示す。Xは炭素原子又はヘテロ原子を示し、pは、1〜3の整数を示す。但し、pが2以上の時、複数のArは同一でも異なっても良い。Rは水素原子又は置換基を含んでも良いアルキル基を示し、R、R及びRは水素原子、置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基又は置換基を含んでも良いアラルキル基を示す。nは0〜2までの整数を示す。)
上記構成によれば、有機光導電性物質として、上記エナミン化合物を用いることができる。
【0034】
上記エナミン化合物は、高い電荷移動度を有しているため、該エナミン化合物を電荷輸送物質として用いることで、帯電電位が高く、高感度で、十分な光応答性を示す電子写真感光体を実現することができる。
【0035】
また、耐久性に優れ、低温環境下及び高速プロセスで用いた場合にも上記特性が低下しない、信頼性の高い電子写真感光体を実現することができる。
【0036】
なお、上記エナミン化合物を、センサ材料、EL素子又は静電記録素子等に使用することで、応答性の優れた各種デバイスを提供するようにしても良い。
【0037】
また、本発明は、一般式(1)で示されるエナミン化合物が、下記一般式(2)で示されることを特徴とするエナミン化合物である。
【0038】
【化6】
Figure 2004175743
【0039】
(式中、Arは置換基を含んでも良い複素環基を示す。Ar及びAr10は各々、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基又は置換基を含んでも良いアルキル基を示す。a、b及びcは、各々置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアルコキシ基、置換基を含んでも良いジアルキルアミノ基、置換基を含んでも良いアリール基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、m及びlは1〜5の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。但し、m、l及びkが2以上の時、対応するa、b及びcは各々同一でも異なっても良く、互いに環を形成しても良い。Rは水素原子又は置換基を含んでも良いアルキル基を示し、R、R及びRは水素原子、置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基又は置換基を含んでも良いアラルキル基を示す。nは0〜2までの整数を示す。)
上記構成によれば、有機光導電性物質として用いることができる上記エナミン化合物を、低コストで提供することができる。
【0040】
そのため、電荷移動度の高いエナミン化合物を、有機光導電性物質が用いられることが多い、電子写真感光体、センサ材料、EL素子及び静電記録素子等に使用することができるため、応答性の優れたデバイスを低コストで提供することができる。
【0041】
例えば、上記エナミン化合物を電子写真感光体に用いた場合には、帯電電位が高く、高感度で、十分な光応答性を示す電子写真感光体を実現することができる。
【0042】
また、耐久性に優れ、低温環境下及び高速プロセスで用いた場合にも上記特性が低下せず、かつ、光曝露によっても上記特性が低下することのない、信頼性の高い電子写真感光体を実現することができる。
【0043】
また、本発明は、一般式(1)で示されるエナミン化合物が、下記一般式(3)で示されることを特徴とするエナミン化合物である。
【0044】
【化7】
Figure 2004175743
【0045】
(式中、Ar11は置換基を含んでも良い複素環基を示す。a、b、d及びeは、各々置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアルコキシ基、置換基を含んでも良いジアルキルアミノ基、置換基を含んでも良いアリール基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。m、l及びjは1〜5の整数を示し、iは1〜4の整数を示す。Rは水素原子又は置換基を含んでも良いアルキル基を示し、R、R及びRは水素原子、置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基又は置換基を含んでも良いアラルキル基を示す。但し、m、l、i及びjが2以上の時、対応するa、b、d及びeは各々同一でも異なっても良く、互いに環を形成しても良い。nは0〜2までの整数を示す。)
上記構成によれば、有機光導電性物質として用いることができる上記エナミン化合物を、低コストで提供することができる。
【0046】
そのため、電荷移動度の高いエナミン化合物を、有機光導電性物質が用いられることが多い、電子写真感光体、センサ材料、EL素子及び静電記録素子等に使用することができるため、応答性の優れたデバイスを低コストで提供することができる。
【0047】
例えば、上記エナミン化合物を電子写真感光体に用いた場合には、帯電電位が高く、高感度で、十分な光応答性を示す電子写真感光体を実現することができる。
【0048】
また、耐久性に優れ、低温環境下及び高速プロセスで用いた場合にも上記特性が低下せず、かつ、光曝露によっても上記特性が低下することのない、信頼性の高い電子写真感光体を実現することができる。
【0049】
また、本発明は、一般式(1)で示されるエナミン化合物が、下記一般式(4)で示されることを特徴とするエナミン化合物である。
【0050】
【化8】
Figure 2004175743
【0051】
(式中、Z及びVは酸素原子、イオウ原子又は置換基を含んでも良い窒素原子を示し、Y及びWは窒素原子又は置換基を含んでも良い炭素原子を示す。Rは水素原子又は置換基を含んでも良いアルキル基を示し、R、R及びRは水素原子、置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基又は置換基を含んでも良いアラルキル基を示す。R及びRは置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアルコキシ基、置換基を含んでも良いジアルキルアミノ基、置換基を含んでも良いアリール基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。m、l、及びjが2以上の時、対応するa、b、及びdは各々同一でも異なっても良く、互いに環を形成しても良い。nは0〜2までの整数を示す。)
上記構成によれば、有機光導電性物質として用いることができる上記エナミン化合物を、低コストで提供することができる。
【0052】
そのため、電荷移動度の高いエナミン化合物を、有機光導電性物質が用いられることが多い、電子写真感光体、センサ材料、EL素子及び静電記録素子等に使用することができるため、応答性の優れたデバイスを低コストで提供することができる。
【0053】
例えば、上記エナミン化合物を電子写真感光体に用いた場合には、帯電電位が高く、高感度で、十分な光応答性を示す電子写真感光体を実現することができる。
【0054】
また、耐久性に優れ、低温環境下及び高速プロセスで用いた場合にも上記特性が低下せず、かつ、光曝露によっても上記特性が低下することのない、信頼性の高い電子写真感光体を実現することができる。
【0055】
また、本発明は、導電性支持体と、
該導電性支持体上に設けられ、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する感光層とを備えた電子写真感光体であって、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエナミン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0056】
上記構成によれば、導電性材料からなる導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられ、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する感光層とを備える電子写真感光体において、上記感光層中に上記エナミン化合物が含有されている。
【0057】
即ち、上記エナミン化合物は高い電荷移動度を有しているため、上記エナミン化合物が感光層中に電荷輸送物質として含有されることによって、高感度で、低温環境下及び高速プロセスにおいても、十分な光応答性を有する電子写真感光体を実現することができる。
【0058】
また、そのような移動度の高いエナミン化合物を用いることによって、従来から知られている電荷輸送物質を用いた場合に比べ、バインダ樹脂の混合比をより高くすることができる。
【0059】
即ち、上記エナミン化合物を用いることによって、バインダ樹脂の混合比が高くなっても、電荷輸送能力が悪化し難くなっている。
【0060】
そのため、バインダ樹脂の混合比が高くすることで、耐刷性を向上できることから、上記エナミン化合物を用いることによって、光応答性及び電荷輸送能力を悪化させることなく、耐刷性を向上した、耐久性の高い電子写真感光体を実現することができる。
【0061】
また、本発明は、上記感光層に、電荷発生物質として、Cu−kα特性X線回折(波長:1.54Å)におけるブラック角(2θ±0.2°)が少なくとも27.2°に明確な回折ピークを有するオキソチタニルフタロシアニンを含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0062】
上記構成によれば、感光層に電荷発生物質であるオキソチタニルフタロシアニンと、電荷輸送物質である上記一般式(1)乃至(4)で示されるエナミン化合物が含有される。
【0063】
オキソチタニルフタロシアニンは、高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であるので、光吸収により多量のキャリアが生成されると共に、生成されたキャリアをその内部に蓄積することなく、電荷輸送物質であるエナミン化合物に効率良く注入する。
【0064】
従って、光吸収によって、電荷発生物質で発生する電荷が、移動度の高い電荷輸送物質に効率的に注入され、円滑に輸送されるので、高感度の電子写真感光体を提供することができる。
【0065】
また、本発明は、上記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、
電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とからなる
積層構造を有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0066】
上記構成によれば、感光層は少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなる積層構造をしており、上記電荷発生層と電荷輸送層は、それぞれ電荷発生物質及び電荷輸送物質を含んでいる。
【0067】
上記構成のように、電荷発生層と電荷輸送層とを別々の層に分け、電荷発生機能と電荷輸送機能を別々の層に担わせることによって、電荷発生機能を有する電荷発生物質と、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質を、それぞれ最適な物質を選択することができ、感光体設計上の自由度を向上させることができる。
【0068】
その結果として、より高感度で、繰り返し使用時の安定性が向上した、高耐久性を有する電子写真感光体を実現することができる。
【0069】
また、本発明は、上記電荷輸送層は、更にバインダ樹脂を含有し、
電荷輸送層中の(電荷輸送物質)/(バインダ樹脂)の重量比が、
10/12乃至10/30であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0070】
上記構成によれば、上記エナミン化合物は高い電荷移動度を有しているため、そのような移動度の高いエナミン化合物を用いることによって、従来から知られている電荷輸送物質を用いた場合に比べ、バインダ樹脂の混合比をより高くすることができる。
【0071】
即ち、電荷移動度の高い上記エナミン化合物を用いることによって、(電荷輸送物質)/(バインダ樹脂)の重量比を、10/12乃至10/30とすることができ、従来より公知の電荷輸送物質を用いる場合よりも高い比率でバインダ樹脂を含有させても、光応答性を低下させることなく、電荷輸送層の耐刷性を向上させ、電子写真感光体の耐久性を向上させることができる。
【0072】
そのため、バインダ樹脂の混合比が高くすることで、耐刷性を向上できることから、上記エナミン化合物を用いることによって、光応答性及び電荷輸送能力を悪化させることなく、耐刷性を向上した、耐久性の高い電子写真感光体を実現することができる。
【0073】
また、本発明は、上記電荷輸送層は、更にバインダ樹脂を含有し、
電荷輸送層中の(電荷輸送物質)/(バインダ樹脂)の重量比が、
10/20乃至10/25であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0074】
上記構成によれば、上記エナミン化合物は高い電荷移動度を有しているため、そのような移動度の高いエナミン化合物を用いることによって、従来から知られている電荷輸送物質を用いた場合に比べ、バインダ樹脂の混合比をより高くすることができる。
【0075】
即ち、電荷移動度の高い上記エナミン化合物を用いることによって、(電荷輸送物質)/(バインダ樹脂)の重量比を、10/12乃至10/30とすることができ、従来より公知の電荷輸送物質を用いる場合よりも高い比率でバインダ樹脂を含有させても、光応答性を低下させることなく、電荷輸送層の耐刷性を向上させ、電子写真感光体の耐久性を向上させることができる。
【0076】
そのなかでも特に、上記(電荷輸送物質)/(バインダ樹脂)の重量比を、10/20乃至10/25とすることで、感光体として使用しても、膜減り量の小さい耐刷性の高い電子写真感光体を実現することができる。
【0077】
そのため、バインダ樹脂の混合比が高くすることで、耐刷性を向上できることから、上記エナミン化合物を用いることによって、光応答性及び電荷輸送能力を悪化させることなく、耐刷性を向上した、耐久性の高い電子写真感光体を実現することができる。
【0078】
また、本発明は、上記導電性支持体と感光層との間に設けられた中間層からなる、
積層構造を有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0079】
上記構成によれば、中間層は、感光体における導電性支持体と、感光層との間に設けられている。
【0080】
そのため、導電性支持体から感光層への電荷の注入及び流出を防止することができるため、感光層の帯電量(即ち、帯電性)の低下を防ぐことができる。
【0081】
従って、露光によって消去されるべき部分以外の表面電位が減少し画像にかぶり等の欠陥が発生することを防止することができる。
【0082】
また、上記中間層は、導電性支持体表面の欠陥(凹凸、キズ等)を被覆することになるため、導電性支持体表面をより均一(一般には平坦)にすることができ、感光層の成膜性を高めることができる。
【0083】
また、上記中間層は、導電性支持体と感光層との接着力に影響するため、感光層の導電性支持体からの剥離を抑え、感光層の耐久性を向上することができる。
【0084】
また、本発明は、請求項5乃至9のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0085】
上記構成によれば、上記のように、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また耐久性に優れ、低温環境下又は高速プロセスで用いた場合にもそれらの特性が低下しない電子写真感光体が備えられるので、各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い画像形成装置を得ることができる。
【0086】
なお、上記画像形成装置は、複写機、スキャナ、プリンタ、ファクシミリ等、種々の画像形成装置であってもよく、また、それらを組み合わせた所謂複合機であっても良い。
【0087】
【発明の実施の形態】
本発明に係るエナミン化合物(電子輸送物質)は、上記一般式(1)に示す化合物である。
【0088】
上記一般式(1)において、Ar及びArは各々置換基を含んでも良いアリール基又は置換基を含んでも良い複素環基を示す。
【0089】
具体例としては、フェニル、トリル、アニシル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、N−メチルインドリル等の複素環基が挙げられる。
【0090】
また、上記一般式(1)において、Arは置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基又は置換基を含んでも良いアルキル基を示す。
【0091】
具体例としては、フェニル、トリル、アニシル、ナフチル、ピレニル、ビフェニル等のアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、N−エチルカルバゾリル等の複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジル、1−ナフチルメチル等のアラルキル基、n−プロピル、iso−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル等のアルキル基が挙げられる。
【0092】
また、上記一般式(1)において、Arは置換基を含んでも良いアリール基又は置換基を含んでも良い複素環基を示す。
【0093】
具体例としては、フェニレン、トリレン、アニシレン、ナフチレン、ピレニレン、ビフェニレン等のアリール基、フリレン、チエニレン、チアゾリレン、ベンゾフリレン、ベンゾチアゾリレン、N−メチルインドリチアゾリレン等の複素環基が挙げられる。
【0094】
また、上記一般式(1)において、Arは置換基を含んでも良いアリール基又は置換基を含んでも良い複素環基を示す。具体例としては、フェニレン、トリレン、アニシレン、ナフチレン、ピレニレン、ビフェニレン等のアリール基、フリレン、チエニレン、チアゾリレン、ベンゾフリレン、ベンゾチアゾリレン、N−メチルインドリチアゾリレン等の複素環基が挙げられる。但し、nが0の時Ar及びArは同時にフェニレン基となることはない。
【0095】
また、上記一般式(1)において、Arは、水素原子、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基又は置換基を含んでも良いアルキル基を示す。
【0096】
具体例としては、フェニル、トリル、アニシル、ナフチル、ピレニル、ビフェニル等のアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、N−エチルカルバゾリル等の複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジル、1−ナフチルメチル等のアラルキル基、n−プロピル、iso−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル等のアルキル基が挙げられる。
【0097】
上記Ar及びArは、原子又は原子団を介して互いに結合し、環構造を形成しても良い。
【0098】
ArとArとを結合する原子の具体例としては、酸素原子及び硫黄原子等を挙げることができる。
【0099】
ArとArとを結合させる原子団の具体例としては、アルキル基を有する窒素原子等の2価の原子団、並びにメチレン、エチレン及びメチルメチレン等のアルキレン基、ビニレン及びプロペニレン等の不飽和アルキレン基、オキシメチレン(化学式:−O−CH2−)等のヘテロ原子を含むアルキレン基、チオビニレン(化学式:−S−CH=CH−)等のヘテロ原子を含む不飽和アルキレン基等の2価基等を挙げることができる。
【0100】
また、上記一般式(1)において、Arは置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基、置換基を含んでも良いアルキル基又は水素原子を示し、pは0〜3までの整数を示す。
【0101】
pはXに応じて変化し、例えば、Xが2価のヘテロ原子の場合は1、Xが3価のヘテロ原子の場合は2、Xが4価のヘテロ原子又は炭素原子の場合は3を示す。但し、pが2以上の時、複数のArは同一でも良く異なっても良い。
【0102】
また、Xが炭素原子の場合、複数のArのうち少なくとも1つはアリール基、複素環基又はアラルキル基であり、−X−(Ar)pはアルキル基ではない。
【0103】
Arの具体例としては、フェニル、トリル、アニシル、ナフチル、ピレニル、ビフェニル等のアリール基、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、N−エチルカルバゾリル等の複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジル、1−ナフチルメチル等のアラルキル基、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル等のアルキル基が挙げられる。
【0104】
また、上記一般式(1)において、Xは炭素原子又はヘテロ原子を示す。
【0105】
具体例としては、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、窒素原子、リン原子及びシラン原子等を挙げることができる。
【0106】
また、上記一般式(1)において、Rは水素原子又は置換基を含んでも良いアルキル基を示す。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、トリフルオロメチル等のアルキル基、水素原子が挙げられる。
【0107】
また、上記一般式(1)において、R、R及びRは水素原子、置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基又は置換基を含んでも良いアラルキル基を示す。
【0108】
具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、トリフルオロメチル等のアルキル基、フェニル、トリル、アニシル、ナフチル等のアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル等の複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジル、2−チエニルメチル等のアラルキル基が挙げられる。また、nは0〜2までの整数を示す。
【0109】
そして、上記一般式(1)で示されるエナミン化合物の好適な化合物として上記一般式(2)、(3)及び(4)で示されるエナミン化合物を挙げることができる。
【0110】
上記一般式(2)において、Arは置換基を含んでも良い複素環基を示す。
【0111】
具体例としては、フリレン、チエニレン、チアゾリレン、ベンゾフリレン、ベンゾチアゾリレン、N−メチルインドリチアゾリレン等の複素環基が挙げられる。
【0112】
また、上記一般式(2)において、Ar及びAr10は各々、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基又は置換基を含んでも良いアルキル基を示す。
【0113】
具体例としては、フェニル、トリル、アニシル、ナフチル、ピレニル、ビフェニル等のアリール基、フリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、N−エチルカルバゾリル等の複素環基、ベンジル、p−メトキシベンジル、1−ナフチルメチル等のアラルキル基、n−プロピル、iso−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル等のアルキル基が挙げられる。
【0114】
また、上記一般式(2)において、a、b及びcは、各々置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアルコキシ基、置換基を含んでも良いジアルキルアミノ基、置換基を含んでも良いアリール基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、m及びlは1〜5の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。
【0115】
但し、m、l、k及びjが2以上の時、対応するa、b、c及びdは各々同一でも異なっても良く、互いに環を形成しても良い。
【0116】
また、Ar、Ar、R〜R及びnは上記一般式(1)と同義である。
【0117】
上記一般式(3)において、Ar11は置換基を含んでも良い複素環基を示す。
【0118】
具体例としては、フリレン、チエニレン、チアゾリレン、ベンゾフリレン、ベンゾチアゾリレン、N−メチルインドリチアゾリレン等の複素環基が挙げられる。
【0119】
また、上記一般式(3)において、d及びeはそれぞれ置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアルコキシ基、置換基を含んでも良いジアルキルアミノ基、置換基を含んでも良いアリール基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、jは1〜5の整数を示し、iは1〜4の整数を示す。
【0120】
但し、j及びiが2以上の時、対応するj及びiは同一でも異なっても良く、互いに環を形成しても良い。
【0121】
また、Ar、Ar、Ar10、R〜R、a、b、n、m及びlは上記一般式(1)又は(2)と同義である。
【0122】
上記一般式(4)において、Z及びVは酸素原子、イオウ原子又は置換基を含んでも良い窒素原子を示し、Y及びWは窒素原子又は置換基を含んでも良い炭素原子を示す。
【0123】
ZとY及びVとWを含んだ5因環の具体例としては、フリレン、チエニレン、N−フェニルピロリレン、N−メチルイミダゾリレン、チアゾリレン、オキサゾレン等の複素環基が挙げられる。
【0124】
また、上記一般式(4)において、R及びRは置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアルコキシ基、置換基を含んでも良いジアルキルアミノ基、置換基を含んでも良いアリール基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。
【0125】
具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、トリフルオロメチル、1,1,1,−トリフルオロエチル、フルオロメチル、1−メトキシエチル等のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ等のアルコキシ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−iso−プロピルアミノ等のジアルキルアミノ基、フェニル、トリル、アニシル、ナフチル、ピレニル、ビフェニル等のアリール基が挙げられる。
【0126】
また、上記一般式(2)、(3)及び(4)において、a、b、c、d及びeの具体例としては、置換基を含んでも良い炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、トリフルオロメチル、1,1,1,−トリフルオロエチル、フルオロメチル、1−メトキシエチル等が、炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ等が、炭素数1〜3のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−iso−プロピルアミノ等が、アリール基としては、フェニル、トリル、アニシル、ナフチル、ピレニル、ビフェニル等が、又はロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素等がそれぞれ挙げられる。
【0127】
一般式(1)乃至(4)で示されるエナミン化合物は、エナミン構造が導入されているため、電荷移動度が高く、高感度で十分な光応答性を示し、この性質は低温環境下でも維持される。
【0128】
従って、このような特性を有するエナミン化合物を有機光導電性材料として電子写真感光体、センサ材料、EL素子及び静電記録素子等に使用することによって、応答性の優れたデバイスを提供することができる。
【0129】
特に、前述のエナミン化合物のうち、特性、コスト、製造等の観点から優れた物としては、Ar及びArはフェニレン基、Arはフェニル基、トリル基又はp−アニシル基、Arはフェニレン基、ナフチレン基、チエニレン基又はチアゾリレン基、Arはフェニレン基、ナフチレン基、チエニレン基又はチアゾリレン基、Arは水素原子又はフェニル基、Arはフェニル基、p−トリル基、p−アニシル基又はビフェニル基、Xは窒素原子、pは2、R、R、R及びRは水素原子、nは0又は1であるものが挙げられる。
【0130】
これらのエナミン化合物を具体的に挙げると、表1乃至表37に示す化合物を例示することができるが、これらによって本発明のエナミン化合物が限定されるものではない。
【0131】
【表1】
Figure 2004175743
【0132】
【表2】
Figure 2004175743
【0133】
【表3】
Figure 2004175743
【0134】
【表4】
Figure 2004175743
【0135】
【表5】
Figure 2004175743
【0136】
【表6】
Figure 2004175743
【0137】
【表7】
Figure 2004175743
【0138】
【表8】
Figure 2004175743
【0139】
【表9】
Figure 2004175743
【0140】
【表10】
Figure 2004175743
【0141】
【表11】
Figure 2004175743
【0142】
【表12】
Figure 2004175743
【0143】
【表13】
Figure 2004175743
【0144】
【表14】
Figure 2004175743
【0145】
【表15】
Figure 2004175743
【0146】
【表16】
Figure 2004175743
【0147】
【表17】
Figure 2004175743
【0148】
【表18】
Figure 2004175743
【0149】
【表19】
Figure 2004175743
【0150】
【表20】
Figure 2004175743
【0151】
【表21】
Figure 2004175743
【0152】
【表22】
Figure 2004175743
【0153】
【表23】
Figure 2004175743
【0154】
【表24】
Figure 2004175743
【0155】
【表25】
Figure 2004175743
【0156】
【表26】
Figure 2004175743
【0157】
【表27】
Figure 2004175743
【0158】
【表28】
Figure 2004175743
【0159】
【表29】
Figure 2004175743
【0160】
【表30】
Figure 2004175743
【0161】
【表31】
Figure 2004175743
【0162】
【表32】
Figure 2004175743
【0163】
【表33】
Figure 2004175743
【0164】
【表34】
Figure 2004175743
【0165】
【表35】
Figure 2004175743
【0166】
【表36】
Figure 2004175743
【0167】
【表37】
Figure 2004175743
【0168】
(エナミン化合物の製造例)
本発明のエナミン化合物は、従来公知の方法により、例えば以下に示す方法に基づいて製造することができる。
【0169】
まず、下記一般式(5)で示されるアルデヒド化合物又はケトン化合物と、下記一般式(6)で示される2級アミン化合物とを、脱水縮合反応を行わせることにより下記構造式(7)で示されるエナミン中間体を製造する。
【0170】
【化9】
Figure 2004175743
【0171】
【化10】
Figure 2004175743
【0172】
【化11】
Figure 2004175743
【0173】
(上記一般式(5)乃至(7)において、Ar、Ar、Ar、Ar及びRは、上記一般式(1)において定義したものと同義である。)
この脱水縮合反応は、例えば以下のようにして行う。
【0174】
上記一般式(5)で示されるアルデヒド化合物又はケトン化合物と略等モル量の上記一般式(6)で示される環状アミン化合物を、無極性溶媒、アルコール類、エーテル類、ケトン類等の溶媒、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ブターノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン等の溶媒に溶解し、1/10〜1/1000モル当量、好ましくは1/25〜1/500モル当量、最適には1/50〜1/200モル当量の触媒、例えばp−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、ピリジニュウム−p−トルエニンスルホン酸等の酸触媒を加え、加熱反応させる。
【0175】
反応中に水が副成し反応を妨げるため、生成した水を溶剤と共沸させ系外に取り除く。
【0176】
これによって、上記一般式(7)で示されるエナミン中間体を高収率で製造することができる。
【0177】
次に、上記一般式(7)で示されるエナミン中間体をフォルミル化することにより、例えば、(Rが水素原子である場合には)下記一般式(8)で示されるエナミン−アルデヒド中間体を製造できる。
【0178】
【化12】
Figure 2004175743
【0179】
(式中、Rは、上記一般式(1)においてnが0のとき、Rを示し、nが1又は2のとき、Rを示す。Ar、Ar、Ar、Ar及びRは、上記一般式(1)において定義したものと同義である。)
このフォルミル化反応は、例えば以下のようにして行う。
【0180】
N,N,−ジメチルホルムアルデヒド、1,2−ジクロロエタン等の溶剤中、オキシ塩化リン/N,N,−ジメチルホルムアルデヒド、オキシ塩化リン/N−メチル−N−フェニルホルムアルデヒド又はオキシ塩化リン/N,N,−ジフェニルホルムアルデヒドにより調整したビルスマイヤー試薬を1.0当量から1.3当量を、上記一般式(7)で示されるエナミン中間体1.0当量を加え、60〜110℃、2〜8時間加熱撹拌する。
【0181】
その後、1−8規定の水酸化ナトリウム、あるいは水酸化カリウム等のアルカリ水溶液で加水分解を行う。これによって、上記一般式(8)(Rが水素原子である場合。)で示されるエナミン−アルデヒド中間体を高収率で製造することができる。
【0182】
また、Rが水素原子以外である場合、フリーデル−クラフト反応によるアシル化を行うことによってエナミン−ケト中間体を製造することができる。
【0183】
このフリーデル−クラフト反応は、例えば以下のように行う。
【0184】
1,2−ジクロロエタン等の溶剤中に、塩化アルミニウムと酸塩化物とによって調製した試薬1.0当量から1.3当量と、上記一般式(7)で示されるエナミン中間体1.0当量とを加え、−40〜80℃で、2〜8時間撹拌する。
【0185】
このとき、場合によっては加熱するようにしても良い。
【0186】
その後、1〜8規定の水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液で加水分解を行う。
【0187】
これによって、上記一般式(8)(Rが水素原子以外である場合)で示されるエナミン−ケト中間体を高収率で製造することができる。
【0188】
次に、上記一般式(8)で示される中間体と下記一般式(9)で示されるWittig試薬とを塩基性条件下で反応させることにより、本発明のうちn=0の場合のスチルベン構造を有するエナミン化合物(一般式(1))を合成することができる。
【0189】
また、n=1,2の場合であっても、使用するWittig試薬の炭素数を伸ばすことにより、容易に製造できる。
【0190】
【化13】
Figure 2004175743
【0191】
(式中、Rは、置換基を含んでも良いアルキル基又は置換基を含んでも良いアリール基を示す。Ar、Ar、Ar、X及びpは、上記一般式(1)において定義したものと同義である。)
このWittig−Horner反応は、例えば以下のようにして行う。
【0192】
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールジメチルエーテル又はジメチルスルホキシド等の溶剤中、上記一般式(8)で示されるエナミン−アルデヒド化合物1.0当量、上記一般式(9)で示されるWittig試薬1.0〜1.20当量、カリウムt−ブトキサイド、ナトリウムエトキサイド、ナトリウムメトキサイド等の金属アルコキシド塩基1.0〜1.5当量とを、室温あるいは、30〜60℃で2〜8時間加熱撹拌する。
【0193】
これによって、上記一般式(1)で示されるエナミン化合物を高収率で製造することができる。
【0194】
本発明による電子写真感光体は、上記一般式(1)乃至(4)で示されるエナミン化合物を電荷輸送物質として用いるものであり、種々の実施形態がある。以下、図を参照して詳細に説明する。
(本発明の第一基本構成)
図1は、本発明による電子写真感光体の一例である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す概略断面図である。
【0195】
電子写真感光体1は、導電性材料からなるシート状の導電性支持体11上に、電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷輸送物質13及び、電荷輸送物質13を結着させるバインダ樹脂17を含有した電荷輸送層16によって構成されている。
【0196】
即ち、電子写真感光体1は、上記電荷発生層15と電荷輸送層16とが導電性支持体11から外方に向かってこの順序で積層された積層構造からなる、感光層14を有する積層型感光体である。
【0197】
なお、以下では、上記電荷発生層15と電荷輸送層16とを合わせた積層構造を、感光層14と称するものとし、以下では説明を省略する。
【0198】
電荷輸送層16には、電荷輸送物質13として、有機光導電性材料である上記一般式(1)乃至(4)で示される電荷移動度の高いエナミン化合物が含有される。
【0199】
従って、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また耐久性に優れ、低温環境下又は高速プロセスで用いた場合であっても、それらの特性が低下しない電子写真感光体を得ることができる。
【0200】
また上記のように、感光層14は、電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と電荷輸送物質13を含有する電荷輸送層16との積層構造からなる。
【0201】
このように、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、電荷発生と電荷輸送の機能にそれぞれ最適な材料を選択することが可能となるので、より高感度で、さらに繰り返し使用時の安定性も増した高耐久性を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0202】
導電性支持体11を構成する導電性材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼及びチタン等の金属材料、表面に金属箔ラミネート、金属蒸着処理、または、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性化合物の層の蒸着若しくは塗布を行ったポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリスチレン等の高分子材料、硬質紙及びガラス等を挙げることができる。
【0203】
導電性支持体11の形状は、本実施形態に係る電子写真感光体1ではシート状であるが、これに限定されるものではなく、ドラム状又は無端状ベルト状等、種々の形状を用いても良い。
【0204】
導電性支持体11の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品若しくは熱水等による表面処理、着色処理、又は表面を粗面化する等の乱反射処理を施しても良い。
【0205】
例えば、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているため、入射するレーザ光と電子写真感光体内で反射された光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥が発生することがある。
【0206】
そこで、導電性支持体11の表面に上記のような処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
【0207】
電荷発生層15は、光を吸収することによって電荷を発生させる電荷発生物質12を主成分として含有する。
【0208】
電荷発生物質12として有効な物質としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料及びトリスアゾ系顔料等のアゾ系顔料、インジゴ及びチオインジゴ等のインジゴ系顔料、ペリレンイミド及びペリレン酸無水物等のペリレン系顔料、アントラキノン及びピレンキノン等の多環キノン系顔料、金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類及びチオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素、セレン及び非晶質シリコーン等の無機材料を挙げることができる。
【0209】
これらの電荷発生物質12は、一種類単独で、又は2種以上が組合わされて使用することができる。
【0210】
これらの電荷発生物質12の中でも、オキソチタニルフタロシアニンを用いることが好ましい。
【0211】
特に、Cu−kα特性X線回折(波長:1.54Å)におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が少なくとも27.2°に明確な回折ピークを有するオキソチタニルフタロシアニンは、高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生させるとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質13に効率よく注入することができる。
【0212】
また、前述のように、電荷輸送物質13には、上記一般式(1)乃至(4)で示される電荷移動度の高い有機光導電性材料が使用される。
【0213】
従って、光吸収によって電荷発生物質12で発生する電荷は、電荷輸送物質13に効率的に注入されて円滑に輸送されるので、高感度かつ高解像度の電子写真感光体を得ることができる。
【0214】
電荷発生物質12は、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルー及びビクトリアブルー等に代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジ及びフラペオシン等に代表されるアクリジン染料、メチレンブルー及びメチレングリーン等に代表されるチアジン染料、カプリブルー及びメルドラブルー等に代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料又はチオピリリウム塩染料等の増感染料と組合わされて使用されても良い。
【0215】
電荷発生層15の形成方法としては、電荷発生物質12を導電性支持体11上に真空蒸着する方法、又は溶剤中に電荷発生物質12を分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性支持体11上に塗布する方法等がある。
【0216】
これらの中でも、結着剤であるバインダ樹脂17を溶剤中に混合したバインダ樹脂17溶液中に、電荷発生物質12を従来公知の方法によって分散し、得られた塗布液を導電性支持体11上に塗布する方法が好ましい。
【0217】
以下、この方法について説明する。
【0218】
バインダ樹脂17には、例えばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルホルマール樹脂等の樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂等からなる群から選ばれる1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0219】
共重合体樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂及びアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂等の絶縁性樹脂等を挙げることができる。バインダ樹脂17はこれらに限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂17として使用することができる。
【0220】
溶剤には、例えばジクロロメタン及びジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサン等のエーテル類、1,2−ジメトキシエタン等のエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、又はN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶剤等が用いられる。
【0221】
また、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤を用いることもできる。
【0222】
電荷発生物質12とバインダ樹脂17との配合比率は、電荷発生物質12の割合が10重量%〜99重量%の範囲にあることが好ましい。電荷発生物質12の割合が10重量%未満であると、感度が低下する。
【0223】
電荷発生物質12の割合が99重量%を越えると、電荷発生層15の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質12の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少して画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多くなる。
【0224】
従って、電荷発生物質12とバインダ樹脂17との配合比率は、10重量%〜99重量%が好ましい。
【0225】
バインダ樹脂17溶液中に電荷発生物質12を分散させる前に、予め電荷発生物質12を粉砕機によって粉砕処理しても良い。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル及び超音波分散機等を挙げることができる。
【0226】
電荷発生物質12をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミル又はサンドミル等を挙げることができる。
【0227】
このときの分散条件としては、用いる容器及び分散機を構成する部材の摩耗等による不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択する。
【0228】
電荷発生物質12をバインダ樹脂17溶液中に分散して得られる電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法及び浸漬塗布法等を挙げることができる。
【0229】
これらの塗布方法のうちから、塗布の物性及び生産性等を考慮に入れて最適な方法を選択することができる。
【0230】
特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に導電性支持体11を浸漬した後、一定速度又は逐次変化する速度で引上げることによって導電性支持体11上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性及び原価の点で優れているので、電子写真感光体を製造する場合に多く利用されている。
【0231】
なお、上記浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるため、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けても良い。
【0232】
電荷発生層15の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層15の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感度が低下する。
【0233】
一方、電荷発生層15の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光体表面の電荷を消去する過程での律速段階となり、感度が低下する。
【0234】
従って、電荷発生層15の膜厚は、0.05μm以上5μm以下が好ましい。
【0235】
電荷輸送層16は、上記一般式(1)乃至(4)で示される本発明の有機光導電性材料を、電荷発生物質12で発生した電荷を受入れ輸送する能力を有する電荷輸送物質13として、バインダ樹脂17中に含有させることによって得られる。
【0236】
上記一般式(1)乃至(4)で示される有機光導電性材料は、上記表1乃至37に示す例示化合物等からなる群から選ばれる1種が単独で又は2種以上が混合されて使用される。
【0237】
上記一般式(1)乃至(4)で示される有機光導電性材料は、他の電荷輸送物質と混合されて使用されても良い。
【0238】
他の電荷輸送物質としては、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体及びベンジジン誘導体等を挙げることができる。
【0239】
また、これらの化合物から生じる基を主鎖又は側鎖に有するポリマー、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン及びポリ−9−ビニルアントラセン等も挙げられる。
【0240】
しかしながら、特に高い電荷輸送能力を実現するためには、電荷輸送物質13の全量が、上記一般式(1)乃至(4)で示される本発明の有機光導電性材料であることが好ましい。
【0241】
電荷輸送層16中のバインダ樹脂17には、電荷輸送物質13との相溶性に優れるものが選ばれる。
【0242】
具体例としては、例えばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のビニル重合体樹脂及びそれらの共重合体樹脂、並びにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂等の樹脂を挙げることができる。
【0243】
また、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂を使用しても良い。これらの樹脂は、単独で使用されても良く、また2種以上混合されて使用されても良い。
【0244】
前述した樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂又はポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であり、電気絶縁性に優れており、また皮膜性及び電位特性等にも優れているので、これらをバインダ樹脂17に用いることが特に好ましい。
【0245】
電荷輸送物質13(A)とバインダ樹脂17(B)との比率A/Bは、一般的には重量比で10/12程度であるが、本実施形態に係る電子写真感光体1では、重量比で10/12〜10/30である。
【0246】
上記のように、電荷輸送物質13は上記一般式(1)乃至(4)で示される電荷移動度の高い本発明の有機光導電性材料を含むので、上記比率A/Bを10/12〜10/30とし、従来公知の電荷輸送物質を用いる場合よりも高い比率でバインダ樹脂を加えても、光応答性を維持することができる。
【0247】
従って、光応答性を低下させることなく、電荷輸送層16の耐刷性を向上させ、電子写真感光体の耐久性を向上させることができる。
【0248】
なお、上記比率A/Bが10/30未満でありバインダ樹脂17の比率が高くなると、浸漬塗布法によって電荷輸送層16を形成する場合、塗布液の粘度が増大するので、塗布速度低下を招き生産性が著しく悪くなる。
【0249】
また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層16に白濁が発生する。
【0250】
また上記比率A/Bが10/12を超えバインダ樹脂17の比率が低くなると、バインダ樹脂17の比率が高いときに比べて耐刷性が低くなり、感光層の摩耗量が増加する。
【0251】
従って、上記比率A/Bは、10/12〜10/30とするのが好ましい。
【0252】
なお、更に好ましくは、上記比率A/Bを10/20〜10/25とすることが好ましく、光応答性を維持しながら、耐刷性を向上させることができる。
【0253】
電荷輸送層16には、成膜性、可撓性及び表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤又はレベリング剤等の添加剤を添加しても良い。
【0254】
可塑剤としては、例えば二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル、塩素化パラフィン及びエポキシ型可塑剤等を挙げることができる。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤等を挙げることができる。
【0255】
また、電荷輸送層16には、機械的強度の増加や電気的特性の向上を図るために、無機化合物又は有機化合物の微粒子を添加しても良い。
【0256】
さらに電荷輸送層16には、必要に応じて酸化防止剤及び増感剤等の各種添加剤を含んでも良い。
【0257】
これによって、電位特性が向上するとともに、塗布液としての安定性が高まり、また感光体を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることができる。
【0258】
酸化防止剤には、ヒンダードフェノール誘導体又はヒンダードアミン誘導体が好適に用いられる。
【0259】
ヒンダードフェノール誘導体は電荷輸送物質13に対して0.1重量%以上50重量%以下の範囲で使用されることが好ましく、ヒンダードアミン誘導体は電荷輸送物質13に対して0.1重量%以上50重量%以下の範囲で使用されることが好ましい。
【0260】
またヒンダードフェノール誘導体及びヒンダードアミン誘導体は、混合されて使用されても良い。この場合、ヒンダードフェノール誘導体及びヒンダードアミン誘導体の合計使用量は、電荷輸送物質13に対して0.1重量%以上50重量%以下の範囲にあることが好ましい。
【0261】
ヒンダードフェノール誘導体の使用量、ヒンダードアミン誘導体の使用量、又はヒンダードフェノール誘導体及びヒンダードアミン誘導体の合計使用量が0.1重量%未満であると、塗布液の安定性の向上及び感光体の耐久性の向上に充分な効果を得ることができない。
【0262】
また、50重量%を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼす。従って、0.1重量%以上50重量%以下とした。
【0263】
電荷輸送層16は、例えば前述の電荷発生層15を形成する場合と同様に、適当な溶剤中に電荷輸送物質13及びバインダ樹脂17、必要な場合には前述の添加剤を溶解又は分散させて、電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液をスプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法又は浸漬塗布法等によって、電荷発生層15上に塗布することによって形成される。
【0264】
これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述したように種々の点で優れているので、電荷輸送層16を形成する場合にも多く利用されている。
【0265】
塗布液に用いられる溶剤には、ベンゼン、トルエン、キシレン及びモノクロルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン及びジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサン及びジメトキシメチルエーテル等のエーテル類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤等からなる群から選ばれる1種が単独で又は2種以上が混合されて使用される。
【0266】
また前述した溶剤に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリル又はメチルエチルケトン等の溶剤をさらに加えて使用することもできる。
【0267】
電荷輸送層16の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0268】
電荷輸送層16の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下し、一方で、電荷輸送層16の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下する。
【0269】
従って、電荷輸送層16の膜厚は、5μm以上50μm以下が好ましい。
【0270】
感光層14には、感度の向上を図り、繰返し使用時の残留電位の上昇及び疲労等を抑えるために、更に1種以上の電子受容物質や色素を追加、含有しても良い。
【0271】
電子受容物質には、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び4−クロルナフタル酸無水物等の酸無水物、テトラシアノエチレン及びテレフタルマロンジニトリル等のシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類、アントラキノン及び1−ニトロアントラキノン等のアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン及び2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン等の多環もしくは複素環ニトロ化合物、ジフェノキノン化合物等の電子吸引性材料、又はこれらの電子吸引性材料を高分子化したもの等を用いることができる。
【0272】
色素には、例えばキサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料又は銅フタロシアニン等の有機光導電性化合物を用いることができる。これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。
【0273】
感光層14の表面には、保護層を設けても良い。
【0274】
保護層を設けることによって、感光層14の耐刷性を向上させることができるとともに、感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾンや窒素酸化物等の感光層14への化学的悪影響を防止することができる。
【0275】
上記保護層には、例えば樹脂、無機フィラー含有樹脂又は無機酸化物等からなる層が用いられる。
【0276】
(本発明の第二基本構成)
図2は、本発明による電子写真感光体の例である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す概略断面図である。
【0277】
電子写真感光体2は、図1に示す電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0278】
電子写真感光体2と電子写真感光体1との違いは、導電性支持体11と感光層14との間に中間層18が設けられることである。
【0279】
導電性支持体11と感光層14との間に中間層18がない場合、導電性支持体11から感光層14に電荷が注入されてしまい、感光層14の帯電性が低下するため、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像にかぶり等の欠陥が発生することがある。
【0280】
特に、反転現像プロセスを用いて画像を形成する場合には、露光によって表面電荷が減少した部分にトナー像が形成されるので、露光以外の要因で表面電荷が減少すると、白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが発生し、画質の著しい劣化が生じる。
【0281】
即ち、導電性支持体11又は感光層14の欠陥に起因して微小な領域での帯電性の低下が生じ、黒ポチ等の画像のかぶりが発生し、著しい画像欠陥となる。
【0282】
前述のように中間層18を設けることによって、導電性支持体11から感光層14への電荷の注入を防止することができるので、感光層14の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し画像にかぶり等の欠陥が発生することを防止することができる。
【0283】
また中間層18を設けることによって、導電性支持体11表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができるので、感光層14の成膜性を高めることができる。また感光層14の導電性支持体11からの剥離を抑え、感光層14の接着性を向上させることができる。
【0284】
中間層18には、各種樹脂材料からなる樹脂層又はアルマイト層等が用いられる。
【0285】
樹脂層を形成する樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びポリアミド樹脂等の樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ならびにエチルセルロース等を挙げることができる。
【0286】
これらの中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂を用いることが好ましい。
【0287】
好ましいアルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン及び2−ナイロン等を共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、N−アルコキシメチル変性ナイロン及びN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂等を挙げることができる。
【0288】
中間層18には、金属酸化物等の粒子を含有しても良い。これらの粒子を含有させることによって、中間層18の体積抵抗値を調節し、導電性支持体11から感光層14への電荷の注入をさらに防止することができるとともに、各種環境下において感光体の電気特性を維持することができる。
【0289】
金属酸化物粒子としては、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び酸化スズ等の粒子を挙げることができる。
【0290】
中間層18に金属酸化物等の粒子を含有させる場合、例えば、前述の樹脂が溶解した樹脂溶液中に、これらの粒子を分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11上に塗布することによって中間層18を形成することができる。
【0291】
樹脂溶液の溶剤には、水及び各種有機溶剤が用いられる。特に、水、メタノール、エタノール、ブタノール等の単独溶剤、又は水とアルコール類、2種類以上のアルコール類、アセトンもしくはジオキソラン等とアルコール類、ジクロロエタン、クロロホルム及びトリクロロエタン等の塩素系溶剤とアルコール類等の混合溶剤が好適に用いられる。
【0292】
前述の粒子を樹脂溶液中に分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル又は超音波分散機等を用いる一般的な方法を使用することができる。
【0293】
中間層用塗布液中の樹脂及び金属酸化物の合計含有量Cは、中間層用塗布液に使用されている溶剤の含有量Dに対し、C/Dが重量比で1/99〜40/60であることが好ましく、より好ましくは2/98〜30/70である。また樹脂と金属酸化物との比率(樹脂/金属酸化物)は、重量比で90/10〜1/99であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95である。
【0294】
中間層用塗布液の塗布方法としては、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法及び浸漬塗布法等を挙げることができる。特に浸漬塗布法は、前述したように、比較的簡単で、生産性及び原価の点で優れているので、中間層18を形成する場合にも多く利用されている。
【0295】
中間層18の膜厚は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上10μm以下である。
【0296】
中間層18の膜厚が0.01μmより薄いと、実質的に中間層18として機能しなくなり、導電性支持体11の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体11から感光層14への電荷の注入を防止することができなくなり、感光層14の帯電性の低下が生じる。中間層18の膜厚を20μmよりも厚くすることは、中間層18を浸漬塗布法によって形成する場合に、中間層18の形成が困難になるとともに、中間層18上に感光層14を均一に形成することができず、感光体の感度が低下するので好ましくない。
(本発明の第三基本構成)
図3は、本発明による電子写真感光体の例である電子写真感光体3の構成を簡略化して示す概略断面図である。
【0297】
電子写真感光体3は、上記電子写真感光体1及び電子写真感光体2に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0298】
上記電子写真感光体1及び電子写真感光体2との違いとしては、電子写真感光体3が、電荷発生物質12と電荷輸送物質13とをバインダ樹脂17中に含有させた単層構造からなる感光層140を有する単層型感光体であることである。
【0299】
感光層140は、前述の電荷輸送層13を形成する場合と同様の方法で形成される。
【0300】
例えば、前述の電荷発生物質12と上記一般式(1)乃至(4)で示される本発明の有機光導電性材料を含む電荷輸送物質13とバインダ樹脂17とを、前述の適当な溶剤に溶解又は分散させて感光層用塗布液を調製し、この感光層用塗布液を浸漬塗布法等によって中間層18上に塗布することによって形成される。
【0301】
電荷輸送物質13とバインダ樹脂17との比率は、前述の電荷輸送層16中の電荷輸送物質13とバインダ樹脂17との比率A/Bと同様に、重量比で10/12〜10/30であることが好ましい。
【0302】
特に、重量比で、10/20〜10/25であると、更に好ましい。
【0303】
感光層140の膜厚は、5μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上50μm以下である。
【0304】
感光層140の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下し、感光層140の膜厚が100μmを超えると、生産性が低下する。従って、5μm以上100μm以下とした。
【0305】
本発明による電子写真感光体は、以上に述べた図1乃至図3に示す構成に限定されることなく、種々の層構成を採ることができる。
【0306】
また感光体の各層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤及び紫外線吸収剤等の各種添加剤を含んでも良い。
【0307】
これによって、電位特性が向上するとともに、塗布液としての安定性が高まり、また感光体を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることができる。
【0308】
特に酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物、トコフェロール系化合物及びアミン系化合物等を挙げることができる。
【0309】
これらの酸化防止剤は、電荷輸送物質13に対して0.1重量%以上50重量%以下の範囲で使用されることが好ましい。
【0310】
酸化防止剤の使用量が0.1重量%未満であると、塗布液の安定性の向上及び感光体の耐久性の向上に充分な効果を得ることができない。酸化防止剤の使用量が50重量%を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼす。
【0311】
従って、酸化防止剤は、0.1重量%以上50重量%以下とした。
(画像形成装置)
本発明に係る電子写真感光体を備える画像形成装置について説明する。
【0312】
なお、本発明による画像形成装置は、以下の記載内容に限定されるものではない。
【0313】
図4は、本発明に係る電子写真感光体10を備えた画像形成装置100の構成を簡略化して示す構成図である。
【0314】
画像形成装置100は、本発明による電子写真感光体10(以下、単に「感光体10」と称する。)を備える。
【0315】
感光体10は、円筒状であって、図示しない駆動手段によって符号41の方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0316】
感光体10の周囲には、感光体10の回転方向に沿って、帯電器32、図示しない半導体レーザ、現像器33、転写帯電器34、クリーナ36がこの順序で設けられる。また転写紙51の進行方向には定着器35が設けられる。
【0317】
この画像形成装置100による画像形成過程について説明する。
【0318】
まず、感光体10は、接触式又は非接触式の帯電器32によって、帯電器32に対向する表面43に正又は負の所定電位の均一帯電を受ける。
【0319】
次いで、図示しない半導体レーザからレーザビーム31が照射され、感光体10の表面43に露光が施される。
【0320】
レーザビーム31は、主走査方向である感光体10の軸方向に繰返し走査され、これに伴って感光体10の表面43に静電潜像が順次形成される。
【0321】
形成された静電潜像は、レーザビーム31の結像点よりも回転方向下流側に設けられた現像器33によって、トナー像として現像される。
【0322】
また、感光体10への露光と同期して、転写紙51が参照符42の方向から現像器33の回転方向下流側に設けられた転写帯電器34に与えられる。
【0323】
現像器33において感光体10の表面43に形成されたトナー像は、転写帯電器34によって転写紙51の表面上に転写される。
【0324】
トナー像が転写された転写紙51は、図示しない搬送ベルトによって定着器35に搬送され、定着器35によってトナー像が転写紙51に定着され、画像の一部が形成される。
【0325】
感光体10の表面43上に残留するトナーは、転写帯電器34のさらに回転方向下流側であって帯電器32の回転方向上流側に、図示しない除電ランプと共に設けられるクリーナ36によって除去される。
【0326】
感光体10をさらに回転させることによって以上の過程が繰返され、転写紙51上に画像が形成される。
【0327】
このようにして画像が形成された転写紙51は、画像形成装置100の外部に排紙される。
【0328】
画像形成装置100に備えられた、本発明に係る電子写真感光体10は、前述のように、上記一般式(1)乃至(4)で示される有機光導電性材料を電荷輸送物質として含有するため、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また耐久性に優れる。
【0329】
またそれらの特性は、低温環境下又は高速プロセスで用いた場合にも低下しない。
【0330】
従って、各種の環境下において高品質の画像を提供することのできる信頼性の高い画像形成装置を得ることができる。
(実施例)
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(合成例1(例示化合物12の合成))
トルエン100mlにジフェニルアミン16.9g(1.0当量)、下記構造式(10)で示されるジフェニルアセトアルデヒド20.6g(1.05当量)及びDL−10−カンファースルホン酸0.23g(0.01当量)加えて加熱し、副生した水をトルエンと共沸させ、系外に取り除きながら6時間反応を行った。
【0331】
反応終了後、反応混合物を1/10程度に濃縮し、激しく撹拌したヘキサン100ml中に徐々に滴下し、結晶化した。
【0332】
生成した結晶をろ過、洗浄し、淡黄色粉末化合物のエナミン中間体(11)を30.9g得た(収率:89%)。得られたエナミン中間体をLC−MSで分析した結果、純度99.5%、(M+H)=348.5(Calcd=347.17)であった。
【0333】
【化14】
Figure 2004175743
【0334】
【化15】
Figure 2004175743
【0335】
次に、無水N,N−ジメチルホルムアルデヒド100ml中に氷冷下9.2g(1.2当量)のオキシ塩化リンを徐々に加え、約30分攪拌し、ビルスマイヤー試薬を調整した。この溶液中に氷冷下、上記反応で得られた上記構造式(11)で示されるエナミン中間体17.4g(1.0当量)を徐々に加えた。
【0336】
添加後、徐々に加熱して反応温度を80℃まで上げ、この同温で3時間加熱攪拌した。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷やした4N−水酸化ナトリウム水溶液800ml中に徐々に加え沈殿を生じさせた。
【0337】
生じた沈殿を濾別し、充分に水洗後、エタノール/酢酸エチルより再結晶を行うことにより、黄色粉末化合物の下記構造式(12)で示されるエナミン−アルデヒド中間体を17.6g得た(収率94%)。
【0338】
得られたエナミン−アルデヒド中間体をLC−MSで分析した結果、純度99.7%、(M+H)=376.5(Calcd=375.16)であった。
【0339】
【化16】
Figure 2004175743
【0340】
最後に、上記で得られたエナミン−アルデヒド中間体(12)7.5g(1.0当量)、下記構造式(13)で示されるWittig試薬10.3g(1.2当量)を無水DMF80mlに溶解し、その溶液にカリウム−t−ブトキシド2.8g(1.25当量)を室温で徐々に加えた後、50℃、5時間加熱撹拌した。
【0341】
反応混合物は、放冷し、過剰のメタノールに注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解後、水洗し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。
【0342】
有機層は濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、目的とするエナミン化合物(例示化合物12)を11.8g、黄色結晶として得た(収率91%)。得られたエナミン化合物をLC−MSで分析した結果、純度99.1%、(M+H)=651.5(Calcd=650.28)であった。
【0343】
【化17】
Figure 2004175743
【0344】
(合成例2(例示化合物181の合成))
下記構造式(14)で示されるp−アニシル−チアゾリルアミン4.1gを原料として、合成例1と同様にエナミン化、アルデヒド化、スチリル化を行った結果、表1乃至37に示したエナミン化合物(例示化合物181)8.1gを黄色粉末化合物として得た(Total収率:65%)。
【0345】
得られたエナミン化合物をLC−MSで分析した結果、純度99.1%、(M+H)=624.5(Calcd=623.24)であった。
【0346】
【化18】
Figure 2004175743
【0347】
(合成例3(例示化合物243の合成))
上記構造式(14)で示されるp−アニシル−チアゾリルアミン4.1g及を原料として、合成例1と同様にエナミン化、アルデヒド化を行い、下記構造式(15)で示されるWittig試薬を用いたスチリル化を行った。
【0348】
その結果、表1乃至37に示したエナミン化合物(例示化合物243)7.8gを黄色粉末化合物として得た(Total収率:62%)。得られたエナミン化合物をLC−MSで分析した結果、純度98.8%、(M+H)=631.5(Calcd=630.19)であった。
【0349】
【化19】
Figure 2004175743
【0350】
(実施例1)
電荷発生物質12である下記構造式(16)で示されるアゾ化合物1重量部を、THF99重量部にフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製:PKHH)1重量部を溶解させた樹脂溶液に加えた後、ペイントシェーカで2時間分散させ、電荷発生層用塗布液を調製した。
【0351】
この電荷発生層用塗布液を、導電性支持体11である、表面にアルミニウムが蒸着された膜厚80μmのポリエステルフィルム上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層15を形成した。
【0352】
【化20】
Figure 2004175743
【0353】
次に、電荷輸送物質13である表1乃至37に示す例示化合物No.12のエナミン化合物8重量部と、バインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製:C−1400)10重量部とをTHF80重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0354】
この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層15上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚10μmの電荷輸送層16を形成した。
【0355】
以上のようにして、図1に示す構成の積層型の電子写真感光体を作製した。
(実施例2〜6)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.12に代えて、表1乃至37に示す例示化合物No.32、113、181、193、243のエナミン化合物を用いる以外は、実施例1と同様にして、5種類の電子写真感光体を作製した。
(比較例1)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.12に代えて、下記構造式(17)で示される比較化合物Aを用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0356】
【化21】
Figure 2004175743
【0357】
(比較例2)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.12に代えて、下記構造式(18)で示される比較化合物Bを用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0358】
【化22】
Figure 2004175743
【0359】
(比較例3)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.12に代えて、下記構造式(19)で示される比較化合物Cを用いる以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0360】
【化23】
Figure 2004175743
【0361】
以上の実施例1乃至6及び比較例1乃至4で作製した各電子写真感光体について、表面分析装置(理研計器株式会社製:AC−1)を用いてイオン化ポテンシャルを測定した。
【0362】
また、各電子写真感光体の感光層の表面に金を蒸着し、室温、減圧下で、飛行時間(Time−of−Flight)法によって電荷輸送物質13の電荷移動度を測定した。
【0363】
表38に測定結果を示す。なお、表38に示す電荷移動度の値は、電界強度が2.5×10 V/cmのときの値である。
【0364】
【表38】
Figure 2004175743
【0365】
表38の結果より、実施例のエナミン化合物は、従来のエナミン化合物である比較化合物A及びBや従来公知の電荷輸送物質であるTPD(Triphenylamine dimer;比較化合物C)等と比較しても、1〜2オーダー高い移動度を有していることがわかった。
(実施例7)
酸化アルミニウム(化学式:Al)及び二酸化ジルコニウム(化学式:ZrO)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製:TTO−D−1)9重量部と共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製:CM8000)9重量部とを、1,3−ジオキソラン41重量部とメタノール41重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカを用いて12時間分散させ、中間層用塗布液を調製した。
【0366】
調製した中間層用塗布液を、導電性支持体11である厚み0.2mmのアルミニウム基板上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚1μmの中間層18を形成した。
【0367】
次いで、電荷発生物質12である下記構造式(20)で示されるアゾ化合物2重量部を、THF97重量部にポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製:BX−1)1重量部を溶解させた樹脂溶液に加えた後、ペイントシェーカで10時間分散させ、電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を、先に形成した中間層18の上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層15を形成した。
【0368】
【化24】
Figure 2004175743
【0369】
次いで、電荷輸送物質13である表1乃至37に示す例示化合物No.12のエナミン化合物10重量部と、バインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製:Z200)14重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2重量部とを、THF80重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0370】
この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層15上に、ベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚18μmの電荷輸送層16を形成した。
【0371】
以上のようにして、図2に示す構成の積層型の電子写真感光体を作製した。
(実施例8〜12)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.12に代えて、表1乃至37に示す例示化合物No.32、113、181、193、243のエナミン化合物を用いる以外は、実施例7と同様にして、5種類の電子写真感光体を作製した。
(比較例4〜6)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.12に代えて、上記構造式(17)で示される比較化合物A、上記構造式(18)で示される比較化合物B又は上記構造式(19)で示される比較化合物Cを用いる以外は、実施例7と同様にして、3種類の電子写真感光体を作製した。
(実施例13)
実施例7と同様にして、中間層用塗布液を調製し、これを導電性支持体11である厚み0.2mmのアルミニウム基板上に塗布した後、乾燥させ、膜厚1μmの中間層18を形成した。
【0372】
次に、電荷発生物質12である上記構造式(20)で示されるアゾ化合物1重量部、バインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学株式会社製:Z−400)12重量部、電荷輸送物質13である表1乃至37に示す例示化合物No.12のエナミン化合物10重量部、3,5−ジメチル−3′,5′−ジ−t−ブチルジフェノキノン5重量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.5重量部及びTHF65重量部をボールミルで12時間分散し、感光層用塗布液を調製した。
【0373】
調製した感光層用塗布液を、先に形成した中間層18上に、ベーカアプリケータによって塗布した後、110℃で1時間、熱風乾燥し、膜厚20μmの感光層140を形成した。
【0374】
以上のようにして、図3に示す構成の単層型の電子写真感光体を作製した。
(実施例14)
電荷発生物質12に、上記構造式(20)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用いる以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体を作製した。
(実施例15〜19)
電荷発生物質12に、上記構造式(20)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、表1乃至37に示す例示化合物No.32、113、181、193、243のエナミン化合物を用いる以外は、実施例7と同様にして、5種類の電子写真感光体を作製した。
(比較例7〜9)
電荷発生物質12に、上記構造式(20)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質13に、例示化合物No.1に代えて、上記構造式(17)で示される比較化合物A、上記構造式(18)で示される比較化合物B、上記構造式(19)で示される比較化合物Cを用いる以外は、実施例7と同様にして、3種類の電子写真感光体を作製した。
【0375】
以上の実施例7乃至19及び比較例4乃至9で作製した各電子写真感光体について、静電複写紙試験装置(株式会社川口電機製作所製:EPA−8200)を用いて初期特性及び繰返し特性を評価した。
【0376】
なお、初期特性及び繰返し特性の評価は、温度22℃、相対湿度(Relative Humidity)65%(22℃/65%RH)の常温/常湿環境下(以下、N/N環境下と称する)と、温度5℃、相対湿度20%(5℃/20%RH)の低温/低湿環境下(以下、L/L環境下と称する)とにおいて行った。
【0377】
初期特性の評価は以下のように行った。感光体にマイナス(−)5kVの電圧を印加することによって感光体表面を帯電させ、このときの感光体の表面電位を帯電電位V(V)として測定した。
【0378】
但し、実施例13の単層型感光体の場合には、プラス(+)5kVの電圧を印加した。
【0379】
次に、帯電された感光体表面に対して露光を施した。このとき、感光体の表面電位を帯電電位Vから半減させるために要したエネルギーを半減露光量E1/2(μJ/cm)として測定し、感度の評価指標とした。
【0380】
また露光開始から10秒間経過した時点の感光体の表面電位を残留電位V(V)として測定し、光応答性の評価指標とした。
【0381】
なお、露光には、電荷発生物質12に、上記構造式(19)で示されるアゾ化合物を用いた実施例7乃至13及び比較例4乃至6の感光体の場合には露光エネルギー1μW/cmの白色光を用い、X型無金属フタロシアニンを用いた実施例14乃至19及び比較例7乃至9の感光体の場合にはモノクロメータにて分光して得られた波長780nm、露光エネルギー1μW/cmの光を用いた。
【0382】
繰返し特性の評価は、以下のように行った。前述の帯電及び露光の操作を1サイクルとして5000回繰返した後、初期特性の評価と同様にして、半減露光量E1/2、帯電電位V及び残留電位Vを測定した。
【0383】
以上の測定結果を表39及び40に示す。
【0384】
【表39】
Figure 2004175743
【0385】
【表40】
Figure 2004175743
【0386】
実施例7乃至12と比較例4乃至6との比較及び、実施例14乃至19と比較例7乃至9との比較から、電荷輸送物質13に上記一般式(1)で示される本発明の有機光導電性材料を用いた実施例7乃至12、14乃至19の感光体の方が、電荷輸送物質13に比較化合物A,B又はCを用いた比較例4乃至9の感光体よりも、半減露光量E1/2が小さく高感度で、また残留電位Vが負の方向に低い、即ち、残留電位Vと基準電位との電位差が小さく、光応答性に優れることが判った。
【0387】
またこの特性は、繰返し使用した場合であっても維持され、また低温/低湿(L/L)環境下においても維持されることが判った。
(実施例20)
酸化アルミニウム(Al)及び二酸化ジルコニウム(ZrO)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製:TTO−D−1)9重量部及び共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製:CM8000)9重量部を、1,3−ジオキソラン41重量部とメタノール41重量部との混合溶剤に加えた後、ペイントシェーカにて8時間分散処理し、中間層用塗布液を調製した。
【0388】
この中間層塗布液を塗工槽に満たし、直径40mm、全長340mmのアルミニウム製の円筒状導電性支持体11を塗工槽に浸漬した後引上げることによって、膜厚1.0μmの中間層18を導電性支持体11上に形成した。
【0389】
次いで、電荷発生物質12であるオキソチタニルフタロシアニンとしてCu−Kα特性X線(波長:1.54Å)によるX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶構造を有するオキソチタニルフタロシアニンの2重量部と、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製:エスレックBM−S)1重量部とメチルエチルケトン97重量部とを混合し、ペイントシェーカにて分散処理して電荷発生層用塗布液を調製した。
【0390】
この電荷発生層用塗布液を、先に形成した中間層18と同様の方法、即ち、浸漬塗布法にて、先に形成した中間層18上に塗布することによって、膜厚0.4μmの電荷発生層15を中間層18上に形成した。
【0391】
次いで、電荷輸送物質13である例示化合物No.12のエナミン化合物10重量部と、バインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製:ユーピロンZ200)20重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1重量部と、ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製:KF−96)0.004重量部とを、テトラヒドロフラン110重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0392】
この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した中間層18と同様の浸漬塗布法にて、先に形成した電荷発生層15上に塗布した後、110℃にて1時間乾燥させ、膜厚23μmの電荷輸送層16を形成した。
【0393】
以上のようにして、電子写真感光体を作製した。
(実施例21及び22)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.12に代えて、表1乃至37に示す例示化合物No.193又はNo.231のエナミン化合物を用いる以外は、実施例20と同様にして、2種類の電子写真感光体を作製した。
(比較例10及び11)
電荷輸送物質13に、例示化合物No.12に代えて、上記構造式(17)で示される比較化合物A又は上記構造式(18)で示される比較化合物Bを用いる以外は、実施例20と同様にして、2種類の電子写真感光体を作製した。
(実施例23)
電荷輸送層16のバインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂の量を25重量部とする以外は、実施例20と同様にして電子写真感光体を作製した。
(実施例24及び25)
電荷輸送層16のバインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂の量を25重量部とし、電荷輸送物質13に、例示化合物No.12に代えて、表1乃至37に示す例示化合物No.193又はNo.231のエナミン化合物を用いる以外は、実施例20と同様にして、2種類の電子写真感光体を作製した。
(実施例26)
電荷輸送層16のバインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂の量を10重量部とする以外は、実施例20と同様にして電子写真感光体を作製した。
(実施例27)
電荷輸送層16のバインダ樹脂17であるポリカーボネート樹脂の量を31重量部とする以外は、実施例20と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0394】
但し、電荷輸送層16の形成の際、実施例20と同量のテトラヒドロフランではポリカーボネート樹脂が完全に溶解した電荷輸送層用塗布液を調製することができなかったので、テトラヒドロフランを追加し、ポリカーボネート樹脂が完全に溶解した電荷輸送層用塗布液を調製し、これを用いて電荷輸送層16を形成した。
【0395】
しかしながら、電荷輸送層用塗布液中の溶剤の量が過剰であるために、円筒状の感光体の長手方向端部にブラッシング現象による白濁が生じ、特性評価を行うことができなかった。
【0396】
以上の実施例20乃至27並びに比較例10及び11で作製した各電子写真感光体について、耐刷性及び電気特性の安定性の評価を以下のように行った。
【0397】
実施例20乃至26並びに比較例10及び11で作製した各電子写真感光体を、プロセススピードを117mm/secとしたデジタル複写機(シャープ株式会社製:AR−C150)にそれぞれ搭載した。
【0398】
画像形成を40,000枚行った後、感光層の膜厚dを測定し、この値と作製時の感光層の膜厚dとの差を膜減り量Δd(=d−d)として求め、耐刷性の評価指標とした。
【0399】
また複写機内部に、画像形成過程における感光体の表面電位を測定できるように表面電位計(ジェンテック社製:CATE751)を設け、22℃/65%RHのN/N環境下において、帯電直後の表面電位である帯電電位V(V)及びレーザ光によって露光を施した直後の表面電位V(V)を測定した。
【0400】
また5℃/20%RHのL/L環境下においても同様にして、レーザ光によって露光を施した直後の表面電位Vを測定した。N/N環境下で測定した表面電位VをV(1)とし、L/L環境下で測定した表面電位VをV(2)としたとき、V(1)とV(2)との差を電位変動ΔV(=V(2)−V(1))として求め、電気特性の安定性の評価指標とした。
【0401】
なお、感光体表面の帯電は、負帯電プロセスで行った。
【0402】
これらの評価結果を表41に示す。
【0403】
【表41】
Figure 2004175743
【0404】
実施例20乃至25と、比較例10及び11との比較から、電荷輸送物質13に本発明の有機光導電性材料を用いた実施例20乃至25の感光体は、比較化合物A又はBを用いた比較例14及び15の感光体に比べ、高い比率でバインダ樹脂を加えた場合であっても、N/N環境下の表面電位Vの大きさが小さく光応答性に優れることが判った。また電位変動ΔVの大きさも小さく、L/L環境下においても充分な光応答性を示すことが判った。
【0405】
実施例20乃至25と、実施例26との比較から、電荷輸送物質(A)とバインダ樹脂(B)との比率A/Bが10/12〜10/30の範囲にある(より厳密には、10/20〜10/25の範囲にある)実施例20乃至25の感光体の方が、上記比率A/Bが10/10であり10/12を超え、バインダ樹脂の比率が低い実施例27の感光体よりも、膜減り量Δdが小さく、耐刷性が高いことが判った。
【0406】
以上のように、本発明の有機光導電性材料を含有させて電荷輸送層を形成することによって、光応答性を低下させることなく、電荷輸送層の耐刷性を向上させることができた。
【0407】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、帯電電位が高く高感度であり、低温環境下及び高速プロセスにおいても十分光応答性を有し、また、高い電荷輸送能力を有した電子輸送物質であるエナミン化合物を提供することができるという利点がある。
【0408】
また、本発明では、帯電電位が高く高感度であり、低温環境下及び高速プロセスにおいても十分光応答性を有し、また、耐久性に優れた電子写真感光体を提供できるという利点がある。
【0409】
また、本発明では、帯電電位が高く高感度であり、低温環境下及び高速プロセスにおいても十分光応答性を有し、また、耐久性に優れた画像形成装置を提供できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の一例である電子写真感光体1の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の一例である電子写真感光体2の構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の一例である電子写真感光体3の構成を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電子写真感光体10を備える画像形成装置100の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
1〜3 電子写真感光体
10 電子写真感光体
11 導電性支持体
12 電荷発生物質
13 電荷輸送物質
14 感光層
15 電荷発生層
16 電荷輸送層
17 バインダ樹脂
18 中間層
31 レーザビーム
32 帯電器
33 現像器
34 転写帯電器
35 定着器
36 クリーナ
51 転写紙
100 画像形成装置
140 感光層

Claims (11)

  1. 下記一般式(1)で表されるエナミン化合物。
    Figure 2004175743
    (式中、Ar及びArは各々置換基を含んでも良いアリール基又は置換基を含んでも良い複素環基を示す。Arは置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基又は置換基を含んでも良いアルキル基を示す。Arは置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基を示す。Arは置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基を示す。但し、nが0の時Ar及びArは同時にフェニレン基となることはない。Arは水素原子、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基又は置換基を含んでも良いアルキル基を示す。Ar及びArは、原子又は原子団を介して互いに結合し、環構造を形成しても良い。Arは置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基、置換基を含んでも良いアルキル基又は水素原子を示す。Xは炭素原子又はヘテロ原子を示し、pは、1〜3の整数を示す。但し、pが2以上の時、複数のArは同一でも異なっても良い。Rは水素原子又は置換基を含んでも良いアルキル基を示し、R、R及びRは水素原子、置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基又は置換基を含んでも良いアラルキル基を示す。nは0〜2までの整数を示す。)
  2. 一般式(1)で示されるエナミン化合物が、下記一般式(2)で示されることを特徴とする請求項1に記載のエナミン化合物。
    Figure 2004175743
    (式中、Arは置換基を含んでも良い複素環基を示す。Ar及びAr10は各々、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基、置換基を含んでも良いアラルキル基又は置換基を含んでも良いアルキル基を示す。a、b及びcは、各々置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアルコキシ基、置換基を含んでも良いジアルキルアミノ基、置換基を含んでも良いアリール基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、m及びlは1〜5の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。但し、m、l及びkが2以上の時、対応するa、b及びcは各々同一でも異なっても良く、互いに環を形成しても良い。Rは水素原子又は置換基を含んでも良いアルキル基を示し、R、R及びRは水素原子、置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基又は置換基を含んでも良いアラルキル基を示す。nは0〜2までの整数を示す。)
  3. 一般式(1)で示されるエナミン化合物が、下記一般式(3)で示されることを特徴とする請求項1に記載のエナミン化合物。
    Figure 2004175743
    (式中、Ar11は置換基を含んでも良い複素環基を示す。a、b、d及びeは、各々置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアルコキシ基、置換基を含んでも良いジアルキルアミノ基、置換基を含んでも良いアリール基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。m、l及びjは1〜5の整数を示し、iは1〜4の整数を示す。Rは水素原子又は置換基を含んでも良いアルキル基を示し、R、R及びRは水素原子、置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基又は置換基を含んでも良いアラルキル基を示す。但し、m、l、i及びjが2以上の時、対応するa、b、d及びeは各々同一でも異なっても良く、互いに環を形成しても良い。nは0〜2までの整数を示す。)
  4. 一般式(1)で示されるエナミン化合物が、下記一般式(4)で示されることを特徴とする請求項1に記載のエナミン化合物。
    Figure 2004175743
    (式中、Z及びVは酸素原子、イオウ原子又は置換基を含んでも良い窒素原子を示し、Y及びWは窒素原子又は置換基を含んでも良い炭素原子を示す。Rは水素原子又は置換基を含んでも良いアルキル基を示し、R、R及びRは水素原子、置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアリール基、置換基を含んでも良い複素環基又は置換基を含んでも良いアラルキル基を示す。R及びRは置換基を含んでも良いアルキル基、置換基を含んでも良いアルコキシ基、置換基を含んでも良いジアルキルアミノ基、置換基を含んでも良いアリール基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。m、l、及びjが2以上の時、対応するa、b、及びdは各々同一でも異なっても良く、互いに環を形成しても良い。nは0〜2までの整数を示す。)
  5. 導電性支持体と、
    該導電性支持体上に設けられ、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する感光層とを備えた電子写真感光体であって、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエナミン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
  6. 上記感光層に、電荷発生物質として、Cu−kα特性X線回折(波長:1.54Å)におけるブラック角(2θ±0.2°)が少なくとも27.2°に明確な回折ピークを有するオキソチタニルフタロシアニンを含有することを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体。
  7. 上記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、
    電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とからなる
    積層構造を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の電子写真感光体。
  8. 上記電荷輸送層は、更にバインダ樹脂を含有し、
    電荷輸送層中の(電荷輸送物質)/(バインダ樹脂)の重量比が、
    10/12乃至10/30であることを特徴とする
    請求項7に記載の電子写真感光体。
  9. 上記電荷輸送層は、更にバインダ樹脂を含有し、
    電荷輸送層中の(電荷輸送物質)/(バインダ樹脂)の重量比が、
    10/20乃至10/25であることを特徴とする
    請求項7に記載の電子写真感光体。
  10. 上記導電性支持体と感光層との間に設けられた中間層からなる、
    積層構造を有することを特徴とする請求項5乃至9のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  11. 請求項5乃至9のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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