JP5377367B2 - 電子写真感光体およびそれを用いた画像形成装置 - Google Patents
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Description
したがって、従来の感光層の成膜が困難で、可塑性が悪く、製造原価が高いなどの問題があり、また一般に毒性が強く、製造上および取り扱い上、大きな制約がある無機光導電性材料に替わり、有機光導電性材料およびそれを用いた電子写真感光体に対する要求は、高度で幅広いものになりつつある。
(1)光および熱に対して安定であること、
(2)感光体の表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン、窒素酸化物(NOx)および硝酸などに対して安定であること、
(3)高い電荷輸送能力を有すること、
(4)有機溶剤や結着剤との相溶性が高いこと、
(5)製造が容易で安価であること
などが要求される。
また、前述の要求の中でも、特に、高い電荷輸送能力を有することが求められる。たとえば、電荷輸送物質がバインダー樹脂とともに分散されて形成された電荷輸送層が感光体の表面層となる場合、充分な光応答性を確保するために、電荷輸送物質には高い電荷輸送能力が求められる。
これは、電荷輸送物質の電荷輸送能力が低いため、バインダー樹脂の含有率の増加に伴って電荷輸送層中の電荷輸送物質が希釈され、電荷輸送層の電荷輸送能力が一層低下して光応答性が悪くなるものである。
したがって、充分な光応答性を確保するためには、電荷輸送物質に高い電荷輸送能力が求められる。
この対策としては置換基を構造単位をアリール基などの大きなものから最小構造単位のメチル基に変更することである程度対応できるが、電気特性(特にホール移動度)の面から見れば置換基はアルキル基よりもアリール基の方が好ましく、改良しなければならない課題である。
で示される非対称ブタジエン化合物を含有していることを特徴とする電子写真感光体が提供される。
さらに、本発明によれば、前記画像形成装置が、反転現像プロセスを用いて画像を形成する前記の画像形成装置が提供される。
また、前記有機光導電性材料を、センサ材料、EL素子または静電記録素子などに使用すれば、応答性の優れたデバイスを提供することができる。
上記の電荷発生物質は、光を吸収することによって多量の電荷を発生させるとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質に効率よく注入する。
また、前述のように、感光層には、有機光導電性材料として、前記一般式(1)で示される電荷移動度の高い電荷輸送物質が含有される。したがって、光吸収によって電荷発生物質で発生する電荷は、電荷輸送物質に効率的に注入されて円滑に輸送されるので、高感度かつ高解像度の電子写真感光体を得ることができる。
したがって、光応答性を低下させることなく、電荷輸送層の耐刷性を向上させ、電子写真感光体の耐久性を向上させることができる。
さらに、上記の中間層を設けることにより、感光層の導電性支持体からの剥離を抑え、導電性支持体と感光層との接着性を向上させることができる。
また本発明は、前記電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置である。
で示される非対称ブタジエン化合物を含むことを特徴とする。
まず、下記構造式(II):
で示される非対称ブタジエン化合物を製造することができる。
なお、以下の表1に示す各基は、前記一般式(I)の各基に対応するが、該一般式(I)における置換基Ar1とAr2またはAr3とAr4とは、互いに固定されたものではなく、それぞれ入れ替わることができるものと理解される。
図1は、本発明による電子写真感光体の一例である電子写真感光体の構成を簡略化して示す概略断面図である。図1における電子写真感光体は、導電性材料からなるシート状の導電性支持体1上に、電荷発生物質2を含有する電荷発生層5と、電荷輸送物質3および電荷輸送物質3を結着させるバインダー樹脂を含有する電荷輸送層6とが、導電性支持体1から上方に向かってこの順序で積層されてなる積層構造からなる感光層4を有する積層型電子写真感光体である。
なお、図1においては電荷発生物質2および電荷輸送物質3を示すために強調描写してあるが、実際は各層を構成、或いはバインダー樹脂等の成分に均一に分散しているものである。
したがって、帯電電位が高く、高感度で、充分な光応答性を示し、また耐久性に優れ、低温環境下または高速プロセスで用いた場合にもそれらの特性が低下しない電子写真感光体を得ることができる。また感光層4にポリシランを含有させることなく、高い電荷輸送能力を実現することができるので、光暴露によって特性が低下することのない信頼性の高い電子写真感光体を得ることができる。
このように、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することが可能となるので、より高感度で、さらに繰り返し使用時の安定性も増した高耐久性を有する電子写真感光体を得ることができる。
導電性支持体1を構成する導電性材料としては、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼およびチタンなどの金属材料を用いることができる。
またこれらの金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンおよびポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙またはガラスなどの表面に、金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどを用いることもできる。
導電性支持体1の形状は、図1における電子写真感光体ではシート状であるけれども、これに限定されることなく、円筒状、円柱状または無端ベルト状などであってもよい。
レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているため、入射するレーザ光と電子写真感光体内で反射された光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥を起こすことがある。導電性支持体1の表面に前述のような処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
電荷発生層5は、光を吸収することによって電荷を発生させる電荷発生物質2を主成分として含有する。
電荷発生物質2として有効な物質としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料;インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料;ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料;アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料;金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料;スクアリリウム色素;ピリリウム塩類およびチオピリリウム塩類;トリフェニルメタン系色素;ならびにセレンおよび非晶質シリコーンなどの無機材料などを挙げることができる。
これらの電荷発生物質は、1種が単独でまたは2種以上が組合わされて使用される。
オキソチタニウムフタロシアニンは、高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生させるとともに、発生した電荷を、その内部に蓄積することなく電荷輸送物質3に効率よく注入できる。
また、前述のように電荷輸送物質3には、前記一般式(I)で示される電荷移動度の高い有機光導電性材料が使用される。
したがって、本発明によれば、前記一般式(I)で示される電荷輸送物質を電荷輸送材料として用いることにより、光吸収によって電荷発生物質2で発生する電荷が、電荷輸送物質3に効率的に注入されて円滑に輸送されるので、高感度かつ高解像度の電子写真感光体を得ることができる。
バインダー樹脂には、たとえばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などからなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。
バインダー樹脂はこれらに限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂をバインダー樹脂として使用することができる。
電荷発生層5の形成方法としては、電荷発生物質2を導電性支持体1上に真空蒸着する方法、または溶剤中に電荷発生物質2を分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性支持体1上に塗布する方法などがある。これらの中でも、結着剤であるバインダー樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダー樹脂溶液中に、電荷発生物質2を従来公知の方法によって分散し、得られた塗布液を導電性支持体1上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
溶剤には、たとえばジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなどのエーテル類;1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類;ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類;またはN,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが用いられる。また、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤を用いることもできる。
電荷発生物質2とバインダー樹脂との配合率は、電荷発生物質2の割合が10質量%〜99質量%の範囲にあることが好ましい。
電荷発生物質2の割合が10質量%未満であると、電荷発生層の感度が低下する。
また、電荷発生物質2の割合が99質量%を越えると、電荷発生層5の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質2の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき以外の表面電荷が減少するので、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多くなる。
したがって、バインダー樹脂に対する電荷発生物質の配合率は10質量%〜99質量%が好適であることが判った。
電荷発生物質2をバインダー樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミルまたはサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択する。
特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に導電性支持体1を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって導電性支持体1上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、電子写真感光体を製造する場合に多く利用されている。なお、浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。
電荷発生層5の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感度が低下する。電荷発生層5の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下する。
したがって、電荷発生層の好適な膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが判明した。
電荷輸送層6は、電荷発生物質2で発生した電荷を受入れ輸送する能力を有する前記一般式(I)で示される本発明の有機光導電性材料としての電荷輸送物質3を、バインダー樹脂中に含有させることによって得られる。
電荷輸送物質
前記一般式(I)で示される電荷輸送物質は、前述の表1に示す化合物(1)〜(40)からなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合して使用するのが好ましい。
上記の他の電荷輸送物質としては、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体およびベンジジン誘導体などを挙げることができる。
また、これらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリマー、たとえばポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレンおよびポリ−9−ビニルアントラセンなども挙げられる。
電荷輸送層6に使用するバインダー樹脂には、電荷輸送物質3との相溶性に優れるものが選ばれる。具体例としては、例えばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂ならびにそれらの共重合体樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂などの樹脂などを挙げることができる。また、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂を使用してもよい。
前述した樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れており、また皮膜性および電位特性などにも優れているので、これらをバインダー樹脂に用いることが特に好ましい。
よって、光応答性を低下させることなく、電荷輸送層6の耐刷性を向上させ、電子写真感光体の耐久性を向上させることができる。
また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層6に白濁が発生する。また前記比率A/Bが10/12を超えバインダー樹脂17の比率が低くなると、バインダー樹脂の比率が高いときに比べて耐刷性が低くなり、感光層の摩耗量が増加する。
電荷輸送層6には、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤またはレベリング剤などの添加剤を添加してもよい。可塑剤としては、たとえば二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。
さらに電荷輸送層6には、必要に応じて酸化防止剤および増感剤などの各種添加剤を添加してもよい。これによって、電位特性が向上するとともに、塗布液としての安定性が高まり、また感光体を繰返し使用した際の疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることができる。
ヒンダードアミン誘導体は電荷輸送物質3に対して0.1質量%以上50質量%以下の範囲で使用されることが好ましい。ヒンダードフェノール誘導体とヒンダードアミン誘導体とは、混合されて使用されてもよい。
この場合、ヒンダードフェノール誘導体およびヒンダードアミン誘導体の合計使用量は、電荷輸送物質3に対して0.1質量%以上50質量%以下の範囲にあることが好ましい。
電荷輸送層6は、たとえば前述の電荷発生層5を形成する場合と同様に、適当な溶剤中に電荷輸送物質3およびバインダー樹脂、ならびに必要な場合には前述の添加剤を溶解または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液をスプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法または浸漬塗布法などによって、電荷発生層5上に塗布することによって形成される。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述したように種々の点で優れているので、電荷輸送層6を形成する場合にも多く利用されている。
電荷輸送層6の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下する。
また、電荷輸送層6の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下する。
したがって、電荷輸送層の好適な膜厚は、5μm以上50μm以下であることが判明した。
感光層4には、感度の向上を図り、繰返し使用時の残留電位の上昇および疲労などを抑えるために、さらに1種以上の電子受容物質や色素を添加してもよい。
これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。
感光層4の表面には、保護層を設けてもよい。保護層を設けることによって、感光層4の耐刷性を向上させることができるとともに、感光体表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾンや窒素酸化物などの感光層4への化学的悪影響を防止することができる。保護層には、たとえば樹脂、無機フィラー含有樹脂または無機酸化物などからなる層が用いられる。
酸化防止剤の使用量が0.1質量%未満であると、塗布液の安定性の向上および感光体の耐久性の向上に充分な効果を得ることができない。
また、酸化防止剤の使用量が50質量%を超えると、感光体特性に悪影響を及ぼす。
したがって、酸化防止剤の電荷輸送物質に対する好適な使用量は、0.1質量%以上50質量%以下であることが判明した。
図2は、本発明による電子写真感光体の他の実施形態例である電子写真感光体の構成を簡略化して示す概略断面図である。図2における電子写真感光体は、図1に示す電子写真感光体に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。注目すべきは、導電性支持体1と感光層4との間に中間層8が設けられることである。
特に、反転現像プロセスを用いて画像を形成する場合には、露光によって表面電荷が減少した部分にトナー画像が形成されるので、露光以外の要因で表面電荷が減少すると、白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが発生し、画質の著しい劣化が生じる。
前述のように中間層8を設けることによって、導電性支持体1から感光層4への電荷の注入を防止することができるので、感光層4の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき以外の表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止することができる。
また樹脂と金属酸化物との比率(樹脂/金属酸化物)は、質量比で90/10〜1/99であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95である。
中間層8の膜厚が0.01μmより薄いと、実質的に中間層8として機能しなくなり、導電性支持体1の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体1から感光層4への電荷の注入を防止することができなくなり、感光層4の帯電性の低下が生じる。
中間層8の膜厚を20μmよりも厚くすることは、中間層8を浸漬塗布法によって形成する場合に、中間層8の形成が困難になるとともに、中間層8上に感光層4を均一に形成することができず、感光体の感度が低下するので好ましくない。
図3は、本発明の更に他の実施形態である電子写真感光体の構成を簡略化して示す概略断面図である。図3における電子写真感光体は、図2に示す電子写真感光体に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
感光層7の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下する。感光層7の膜厚が100μmを超えると、生産性が低下する。
したがって、感光層7の好適な膜厚は、5μm以上100μm以下であることが判明した。
図4は、本発明による電子写真感光体を備える画像形成装置の構成を簡略化して示す構成図である。
レーザビーム31は、主走査方向である感光体の長手方向に繰返し走査され、これに伴って感光体表面に静電潜像が順次形成される。静電潜像は、レーザビーム31の結像点よりも回転方向下流側に設けられた現像器33によって、トナー画像として現像される。
トナー画像が転写された転写紙51は図示しない搬送ベルトによって定着器35に搬送され、定着器35によってトナー画像が転写紙51に定着され、画像の一部が形成される。
例示化合物No.1の製造
製造例1−1
ケトン中間体(A)の製造
4−ブロモ−α−クロロアセトフェノン2.3g(1.0当量)と、5−ブロモサリチルアルデヒド2.0g(1.0当量)と、ジイソプロピルエチルアミン2.6g(2.05等量)を1,4−ジオキサン50mlに溶解させ、100〜110℃で5〜6時間反応させる。反応終了後、放冷し、析出した結晶を濾別し、冷エタノールで洗浄することによって、粉末状化合物3.5gを得た。
また、LC−MSの分析結果から、得られたケトン中間体(A)の純度は99.3%であることが判った。
ケトン中間体(B)の製造
トルエン80ml中に、前記一般式(V)で示される2級アリールアミン誘導体としての(2,4−キシリル)−p−トリルアミン3.5g(2.1当量)と、先の反応により合成したケトン中間体(A)3.0g(1.0当量)と、ナトリウム−t−ブトキシド1.8g(2.4当量)を混合した。別途、酢酸パラジウム0.02gと下記構造式(VIII):
得られた化合物を液体クロマトグラフィー−質量分析法で分析した結果、目的とするケトン中間体(B)(分子量の計算値:640.31)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが641.7に観測されたことから、下記構造式(IX):
化合物(1)の製造
エチルエーテル20ml中、前記一般式(VII)で示されるアリルハライド誘導体として下記構造式(X):
得られた化合物を液体クロマトグラフィー−質量分析法で分析した結果、目的とする化合物(1);
また、LC−MSの分析結果から、ケトン中間体(B)として得られた化合物の純度は99.1%であることが判った。
上記製造例1−1〜1−3と同様な反応条件により、対応する原料からケトン中間体(A)およびケトン中間体(B)を経由して、一般式(V)および(VII)で示される2級アリールアミン誘導体およびアリルハライド誘導体を適宜選択することにより、上記の表1に記載した化合物(2)〜(40)も合成することが出来る。
電荷発生物質12である下記構造式(41):
5g)を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、先に形成した電荷発生層5上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚10μmの電荷輸送層6を形成した。
以上のようにして、図1に示す構成の積層型電子写真感光体を作製した。
電荷輸送物質3として、非対称ブタジエン化合物である化合物(1)に代えて、前記の表に示す化合物(2)、(14)、(15)、(18)および(28)をそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6において電子写真感光体をそれぞれ作製した。
電荷輸送物質3として、非対称ブタジエン化合物である化合物(1)に代えて、比較化合物として下記構造式(a):
以上の実施例1〜6および比較例1〜3で作製した各電子写真感光体について、表面分析装置(理研計器株式会社製:AC−1)を用いて各電子写真感光体表面のイオン化ポテンシャルを測定した。
また、各電子写真感光体の感光層の表面に金を蒸着し、室温、減圧下で、飛行時間(Time−of−Flight)法によって電荷輸送物質3の電荷移動度を測定した。
以上の評価において得られた結果を表1に示す。
上記のイオン化ポテンシャルおよび電荷移動度について総合評価した。
VG(very good):極めて良好; 電荷移動度が1.3×10-4〜2.0×10-4、
NB(not bad):悪くはない; 電荷起動度が2.0×10-5、
B(bad):不良; 電荷移動度が9.9×10-5以下。
上記の各測定結果を以下の表に示す。
酸化アルミニウム(化学式:Al2O3)および二酸化ジルコニウム(化学式:ZrO2)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製:TTO−D−1)9質量部と共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製:CM8000)9質量部とを、1,3−ジオキソラン41質量部とメタノール41質量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカを用いて12時間分散させ、中間層用塗布液(20g)を調製した。調製した中間層用塗布液を、導電性支持体1である厚み0.2mmのアルミニウム基板上にベーカアプリケータにて塗布した後、乾燥させ、膜厚1μmの中間層8を形成した。
以上のようにして、図2に示す構成の積層型の電子写真感光体を作製した。
電電荷輸送物質3として、非対称ブタジエン化合物である化合物(1)に代えて、前記の表1に示す非対称ブタジエン化合物である化合物(14)、(15)、(18)、(28)および(35)をそれぞれ用いる以外は、実施例7と同様にして、実施例8〜12による電子写真感光体をそれぞれ作製した。
電荷輸送物質3として、非対称ブタジエン化合物である化合物(1)に代えて、比較化合物としての前記構造式(a)で示される化合物(a)または、前記構造式(c)で示される化合物(c)をそれぞれ用いる以外は、実施例7と同様にして、比較例4および5の電子写真感光体をそれぞれ作製した。
実施例7と同様にして、中間層用塗布液を調製し、これを導電性支持体1である厚み0.2mmのアルミニウム基板上に塗布した後、乾燥させ、膜厚1μmの中間層8を形成した。
以上のようにして、図3に示す構成の単層型の電子写真感光体を作製した。
電荷発生物質2に、前記構造式(42)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業社製:ファストゲンブルー8120BS)を用いる以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体を作製した。
電荷発生物質2に、前記構造式(42)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質3に、化合物(1)に代えて、表1に示す化合物(2)、(15)、(18)、(28)および(35)の非対称ブタジエン化合物をそれぞれ用いる以外は、実施例14と同様にして、実施例15〜19による電子写真感光体をそれぞれ作製した。
電荷発生物質2に、前記構造式(42)で示されるアゾ化合物に代えて、X型無金属フタロシアニンを用い、電荷輸送物質3に、化合物(1)に代えて、比較化合物として前記構造式(a)で示される化合物(a)または、前記構造式(c)で示される化合物(c)を用いる以外は、実施例14と同様にして、比較例6および7による電子写真感光体をそれぞれ作製した。
以上の実施例7〜19および比較例4〜7で作製した各電子写真感光体について、静電複写紙試験装置(株式会社川口電機製作所製:EPA−8200)を用いて初期特性および繰返し特性を評価した。なお、初期特性および繰返し特性の評価は、温度22℃、相対湿度(Relative Humidity)65%(22℃/65%RH)の常温/常湿環境下(以下、N/N環境下と称する)と、温度5℃、相対湿度20%(5℃/20%RH)の低温/低湿環境下(以下、L/L環境下と称する)とにおいて行った。
次に、帯電された感光体表面に対して露光を施した。このとき、感光体の表面電位を帯電電位V0から半減させるために要したエネルギーを半減露光量E1/2(μJ/cm2)として測定し、感度の評価指標とした。また露光開始から10秒間経過した時点の感光体の表面電位を残留電位Vr(V)として測定し、光応答性の評価指標とした。
なお、露光には、電荷発生物質2に、前記構造式(42)で示されるアゾ化合物を用いた実施例7〜12および比較例4、5の感光体の場合には露光エネルギー1μW/cm2の白色光を用いた。
<総合評価>
上記のN/N環境下およびL/L環境下の繰り返し特性におけるVrの絶対値、すなわち、|Vr|が、いずれも10〜40の範囲内にあるものをVG(very good)とし、どちらか一方、または両方が上記の範囲外にあるが、|Vr|が65以下のものをNB(not bad)とした。
またこの特性は、繰返し使用した場合であっても維持され、さらに低温/低湿(L/L)環境下においても維持されることが判った。
酸化アルミニウム(Al2O3)および二酸化ジルコニウム(ZrO2)で表面処理を行った樹枝状の酸化チタン(石原産業株式会社製:TTO−D−1)9質量部および共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製:CM8000)9質量部を、1,3−ジオキソラン41質量部とメタノール41質量部との混合溶剤に加えた後、ペイントシェーカにて8時間分散処理し、中間層用塗布液(1.5kg)を調製した。この中間層塗布液を塗工槽に満たし、直径30mm、全長357mm、厚さ0.8mmのアルミニウム製の円筒状導電性支持体1を塗工槽に浸漬した後引上げることによって、膜厚1.0μmの中間層8を導電性支持体1上に形成した。
以上のようにして、電子写真感光体を作製した。
電荷輸送物質3に、非対称ブタジエン化合物として前記化合物(1)に代えて、前記表1に示す化合物(14)および化合物(18)の非対称ブタジエン化合物をそれぞれ用いる以外は、実施例20と同様にして、実施例21および22による電子写真感光体をそれぞれ作製した。
電荷輸送物質3に、非対称ブタジエン化合物として前記化合物(1)に代えて、前記構造式(a)で示される化合物(a)を用いる以外は、実施例20と同様にして、電子写真感光体を作製した。
電荷輸送層6のバインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を25質量部とする以外は、実施例20と同様にして電子写真感光体を作製した。
電荷輸送層6のバインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を25質量部とし、電荷輸送物質3に、非対称ブタジエン化合物として前記化合物(1)に代えて、前記表1に示す非対称ブタジエン化合物である化合物(14)または化合物(35)をそれぞれ用いる以外は、実施例20と同様にして、実施例24および25による電子写真感光体をそれぞれ作製した。
電荷輸送層6のバインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を10質量部とする以外は、実施例20と同様にして電子写真感光体を作製した。
電荷輸送層6のバインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂の量を31質量部とする以外は、実施例20と同様にして電子写真感光体を作製した。
ただし、電荷輸送層6の形成の際、実施例20と同量のテトラヒドロフランではポリカーボネート樹脂が完全に溶解した電荷輸送層用塗布液を調製することができなかったので、テトラヒドロフランを追加し、ポリカーボネート樹脂が完全に溶解した電荷輸送層用塗布液を調製し、これを用いて電荷輸送層6を形成した。
しかしながら、電荷輸送層用塗布液中の溶剤の量が過剰であるために、円筒状の感光体の長手方向端部にブラッシング現象による白濁が生じ、特性評価を行うことができなかった。
以上の実施例20〜25、比較例8、参考例1および2で作製した各電子写真感光体について、耐刷性および電気特性の安定性の評価を以下のように行った。
求め、耐刷性の評価指標とした。
また5℃/20%RHのL/L環境下においても同様にして、レーザ光によって露光を施した直後の表面電位VLを測定した。N/N環境下で測定した表面電位VLをVL(1)とし、L/L環境下で測定した表面電位VLをVL(2)としたとき、VL(1)とVL(2)との差を電位変動ΔL(=VL(2)−VL(1))として求め、電気特性の安
定性の評価指標とした。なお、感光体表面の帯電は、負帯電プロセスで行った。
なお、膜べり量Δdが5以下であり、L/L−電位変動ΔVLの絶対値、すなわち|Δ
VL|が20以上のものをVG(very good)とし、それ以外のものをNB(not bad)とした。
また電位変動ΔVLの大きさも小さく、L/L環境下においても充分な光応答性を示すことが判った。
2 電荷発生物質
3 電荷輸送物質
4、7 感光層
5 電荷発生層
6 電荷輸送層
8 中間層
31 レーザビーム
32 帯電器
33 現像器
34 転写帯電器
35 定着器
36 クリーナ
51 転写紙
Claims (9)
- 前記電荷輸送層または前記単層型感光層が、さらにバインダー樹脂を含有し、前記電荷輸送層または前記単層型感光層において、前記電荷輸送物質(A)と前記バインダー樹脂(B)との比率A/Bが、質量比で10/12〜10/30である請求項1〜4のいずれか一つに記載の電子写真感光体。
- 前記電荷発生層または前記単層型感光層が、Cu−Kα特性X線回折(波長:1.54Å)におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が少なくとも27.2°に明確な回折ピークを有するオキソチタニウムフタロシアニンを電荷発生物質として含む請求項1〜5のいずれか一つに記載の電子写真感光体。
- 前記積層型感光層または前記単層型感光層と、前記導電性支持体との間に、中間層を有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜7のいずれか一つに記載の電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置。
- 前記画像形成装置が、反転現像プロセスを用いて画像を形成する請求項8に記載の画像形成装置。
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