JP4779037B2 - 電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真方式の高精細な画像形成に用いられる電子写真感光体とそれを備えた画像形成装置に関する。
有機光導電体(Organic Photoconductor;略称:OPC)を用いた有機系感光体は、感度、耐久性および環境に対する安定性などに若干の問題を有する。しかしながら、毒性、製造原価および材料設計の自由度などの点において、無機系感光体に比べて多くの利点を有している。
さらに、有機系感光体は、感光層を浸漬塗布法に代表される容易かつ安価な方法で形成することができるという利点も有している。
有機系感光体は、その製造上において上記のように多くの利点を有することから、次第に電子写真感光体の主流を占めてきている。
また近年の研究開発によって、有機系感光体の感度および耐久性は向上されており、現在では特別な場合を除き、電子写真感光体として有機系感光体が用いられるようになってきている。
特に、有機系感光体の性能は、電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の物質にそれぞれ分担させた機能分離型感光体の開発によって著しく改善されている。
すなわち、機能分離型感光体は、有機系感光体の有する前記の利点に加え、感光層を構成する材料の選択範囲が広く、任意の特性を有する感光体を比較的容易に作製できるという利点をも有している。
このような有機系感光体の構成としては、導電性基体上に電荷発生物質を結着樹脂に分散させた電荷発生層と電荷輸送物質を結着樹脂に分散させた電荷輸送層とをこの順でまたは逆順で形成した積層構造または逆二層型積層構造などの様々な構成が提案されている。
これらの中でも感光層として電荷発生層上に電荷輸送層を積層した機能分離型の感光体は、電子写真特性および耐久性に優れ、材料選択の自由度の高さから感光体特性を様々に設計できることから広く実用化されている。
一方、レーザー光を露光用光源とする電子写真装置としては、レーザープリンタが代表的な例であるが、近年では複写機においてもデジタル化が進みレーザー光が露光用光源に用いられることが一般的となってきた。主に露光用光源として用いられるレーザー光は、低コストで消費エネルギーが少なく軽量小型である半導体レーザーが実用化されており、発振波長や出力の安定性、寿命の点において800nm付近の近赤外領域に発振波長を有するものが一般的なものであった。
これは短波長で発振するレーザー光が技術的な問題から実用化にはいたっていなかったためである。この事を受けて、レーザー光を露光光源とした電子写真装置で用いられる電荷発生物質は、長波長領域に光を吸収して感度を有する有機化合物、特にフタロシアニン顔料を電荷発生層に、トリフェニルアミン化合物(特公昭58−32372号公報:特許文献1、特開平2−190862号公報:特許文献2)、スチルベン化合物(特開昭54−151955号公報:特許文献3、特開昭58−198043号公報:特許文献4)、ヒドラゾン化合物(特開昭54−150128号公報:特許文献5、特公昭55−42380号公報:特許文献6、特開昭55−52063号公報:特許文献7)、フェニレンジアミン化合物(特開平4−291266号公報:特許文献8)、エナミン化合物(特開平7−134430号公報:特許文献9)を電荷輸送層に含有した積層型感光体が開発されてきた。
1990年に青色発光ダイオードの製造方法が発明され(特許第2628404号公報:特許文献10)それ以後、青色半導体レーザーの関連技術は活発に開発が進められ、ブルーレイディスクと呼ばれる次世代ディスクが急速に普及しつつある。
この一方で、近年、電子写真装置の出力画像の画質向上を図るために、画質の高解像度化が検討されている。記録密度の高い高解像度の画質を達成するひとつの手段として、光学的な方法としてはレーザー光のスポット径を絞り、書込み密度を上げることが挙げられる。そこで使用するレンズの焦点距離を短くすれば良いが光学系の設計上の難しさに加え、800nm付近の近赤外域に発振波長を持つレーザー光では、光学系の操作でレーザー光の光径を細くしてもスポット輪郭の鮮明さが得られにくい。その原因はレーザー光の回折限界にあり、これは避けることの出来ない現象である。
一般に、感光体の表面に収束されるレーザー光のスポット径は、スポット径をDとすると、スポット径Dとレーザー光の波長及びレンズ開口数NAとは次の式で示される関係にある。
D=1.22λ/NA
(式中、λはレーザー光の波長、NAはレンズ開口数を表す)
この式から、スポット径Dはレーザー光の発振波長に比例しており、スポット径Dを小さくするには発振波長の短いレーザー光を用いればよいことが示唆される。
つまり、現在主流の近赤外半導体レーザーに替えて、青色半導体レーザーを用いれば、さらなる高解像度が実現できることが判る。
しかし、このような青色系レーザー光は光ディスクの記録密度を向上させるものという意味で大きな成果を挙げたが、電子写真装置の露光用光源としてはほとんど期待されていなかった。それは従来の電子写真感光体はこの波長域に感度を示さなかったからである。
従来の積層型電子写真感光体は導電性基体の上に電荷発生層、電荷輸送層を順に積層したものが一般的に実用化されているが、425nm以下の波長にも吸収を示す電荷発生物質を用いれば、一般的に425nm以下の短波長レーザー光による露光にも感度を示すはずである。
しかしながら、実際には電荷発生層の上に積層された電荷輸送層、特に電荷輸送物質が425nmの波長に吸収を示すことから、露光光源として用いた短波長のレーザー光が感光層の表面で吸収されて電荷発生層まで到達できないことから、積層型電子写真感光体ではこの波長域に感度を示さない。
また、更に、波長成分の揃った高強度の光で露光されるために電荷輸送物質や電荷発生物質が変質しやすく、長期の使用によって感光体の感度が低下し高画質が維持できないという問題もあった。
これらの問題に対応した電子写真感光体が開発されている(特許第3937602号公報:特許文献11)が、膜の透過率と高感度化を両立できたものはなかった。また、425nm以下の波長に吸収を有しない電荷輸送物質は、電荷発生物質から、電荷の注入がスムーズではなく、繰り返し使用時の感度悪化が大きい感光体となる問題もあった。
さらに、405±20nmの光で露光した場合に低湿下で帯電低下が非常に大きく、カブリなどの画像不良が起きやすいという問題が生じた。
特許文献1:特公昭58−32372号公報
特許文献2:特開平2−190862号公報
特許文献3:特開昭54−151955号公報
特許文献4:特開昭58−198043号公報
特許文献5:特開昭54−150128号公報
特許文献6:特公昭55−42380号公報
特許文献7:特開昭55−52063号公報
特許文献8:特開平4−291266号公報
特許文献9:特開平7−134430号公報
特許文献10:特許第2628404号公報
特許文献11:特許第3937602号公報
本発明の目的は、405±20nmの波長域で高い感度特性を有し、環境安定性に優れ、繰り返し使用時にも安定した特性を有する高精細印字用電子写真感光体を提供することにある。
更に別の目的は、この感光体と発振波長が405±20nmの範囲にある半導体レーザーを使用することによって、高安定性・高感度・高解像力を有する電子写真装置を提供することにある。
本発明者らは、鋭意努力研究を重ねた結果、特定のフェニレンジアミン化合物を電荷輸送物質として用い、かつ特定の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンダイマーを電荷発生物質として用いることにより、波長405±20nmの露光光源で使用され、高安定性・高感度・高解像力を有する電子写真感光体を提供できることを見出し本発明を完成した。
しかるに、本発明によれば、波長405±20nmの露光光源で使用される電子写真感光体において、該電子写真感光体が、導電性基体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を順次積層してなり、
該電荷輸送層が、電荷輸送物質として、下記一般式(I):
Figure 0004779037
(式中、Arは置換基を有してもよいアリ−ル基であり、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子またはアルキルもしくはアルコキシ基であり、kは1〜5の整数であり、lおよびmは1〜4の整数である)
で表されるフェニレンジアミン化合物を含有し、かつ電荷発生層が、電荷発生物質としてガリウムフタロシアニンダイマーを含有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、前記電荷発生物質が、X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、10.0°、15.0°、18.8°、22.3°及び28.4°に回折ピークを示す結晶形を有するガリウムフタロシアニンダイマーである前記の電子写真感光体が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体に対して波長が405±20nmの光源を露光手段とし、露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置が提供される。
波長405±20nmの露光光源で使用される電子写真感光体において、電荷輸送物質として一般式(I)で示される本フェニレンジアミン化合物を含有し、かつ電荷発生物質として、特定の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンダイマーを電荷発生物質として含有することで、低湿度下においても高い安定性があり、且つ高感度、高解像力を有する電子写真感光体及び電子写真装置を提供することができる。
また、本発明によれば、上記の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体に対して青色半導体レーザーによる露光を行う露光手段と、露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする電子写真装置が提供される。
本発明の一つの積層型感光体構成を示す模式断面図である。 本発明に使用できるガリウムフタロシアニンダイマーのX線回折スペクトル図である。 本発明のガリウムフタロシアニンダイマーを用いた電荷発生層の分光透過吸収スペクトルである。 本発明の他の積層型感光体構成を示す模式断面図である。 本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
本発明において、前記一般式(I)におけるArが意味するアリール基は、フェニル基、ナフチル基またはビフェニル基であり、該アリール基が有し得る置換基は、C1〜C4のアルキル基またはアルコキシ基であり;R1、R2およびR3が意味するハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子であり;R1、R2およびR3が意味するアルキル基またはアルコキシ基はC1〜C4のアルキル基またはアルコキシ基である。
具体的には、本発明において、前記一般式(I)のArは、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、3−エチルフェニル、4−エチルフェニル、3,4−ジエチルフェニル、3,5−ジエチルフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、3−エトキシフェニル、4−エトキシフェニル、3,4−ジエトキシフェニル、3,5−ジエトキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2'−メチル−4−ビフェニリル、4'−メチル−4−ビフェニリル、2',4'−ジメチル−4−ビフェニリル基、2'−メチル−4−ビフェニリル、4'−エチル−4−ビフェニリルまたは2',4'−ジエチル−4−ビフェニリル基であり;
1は、水素原子あるいは2'−、3'−、4'−、5'−もしくは6'−メチルまたはエチル基であり、R2は、水素原子あるいは2−、3−、5−もしくは6−メチルまたはエチル基であり、R3は水素原子あるいは2−、4−、5−もしくは6−メチルまたはエチル基である。
より具体的には、本発明において、前記一般式(I)の化合物は、R2およびR3が、水素原子であり、以下の一般式(II):
Figure 0004779037
(式中、Ar、R1およびkは一般式(I)において定義したとおりである)
で表されるフェニレンジアミン化合物である。
さらに具体的には、本発明における前記一般式(I)の化合物は、Arが4−メチルフェニルまたは2'−メチル−4−ビフェニリル基であり、R1が水素原子または2'−メチル基であり、R2およびR3が水素原子であり、以下の式:
Figure 0004779037
で表されるフェニレンジアミン化合物である。
一般的な電荷輸送物質は、電子雲を可能な限り広げることで、高移動度を実現している。しかしながら、電子雲を広げれば、電荷輸送物質の吸収波長は、傾向的に長波長化する。
本発明のフェニレンジアミン化合物は、電子雲の広がりを比較的小さく抑えているものの、実使用上十分な移動度を有している。
すなわち、405±20nmの範囲にある露光光源に対する吸光度と移動度のバランスが非常に優れている構造になっており、本発明のフェニレンジアミン化合物を電荷輸送層に含有することで、405±20nmの範囲にある露光光源に対して良好な透過性を示し、かつ良好な電気特性を示すことが出来る。
したがって、本発明によれば、本発明のフェニレンジアミン化合物を電荷輸送物質として含有する電荷輸送層と、X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、10.0°、15.0°、18.8°、22.3°及び28.4°に回折ピークを示す結晶形を有するガリウムフタロシアニンダイマーを電荷発生物質として電荷発生層に含有させることにより、低湿度下における繰り返し使用においても高い安定性があり、かつ高感度で、高解像力を有する電子写真感光体および該感光体を備える画像形成装置が提供される。
これは、本発明で用いられる電荷発生物質としてのガリウムフタロシアニンダイマーが、405±20nmのレーザー光にて露光された時に、効率良く電荷を発生し、かつ発生した電荷を、本発明の電荷輸送物質としてのフェニレンジアミン化合物にスムーズに電荷注入でき、該化合物が効率よく電荷を輸送するためと考えられる。すなわち、本発明において、電荷発生物質と電荷輸送物質との間で特異的にマッチングが良好になったものと考えられる。
また、本発明によれば、前記露光手段が青紫色半導体レーザーであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
次に、一般的に用いられる電子写真感光体の材料について説明する。尚、本発明に係る感光体材料は以下に記載の内容に限定されるものではない。
図1は、本発明による電子写真感光体の一例である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す概略断面図である。
電子写真感光体1は、導電性材料からなるシート状の導電性支持体11上に、中間層18を設け、その上に電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷輸送物質13および電荷輸送物質13を結着させるバインダ樹脂17を含有する電荷輸送層16とが、導電性支持体11から外方に向かってこの順序で積層されてなる積層構造からなる感光層14を有する積層型感光体である。
導電性支持体
導電性支持体11を構成する導電性材料としては、たとえばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼およびチタンなどの金属材料、ならびに、表面に金属箔ラミネート、金属蒸着処理、または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層の蒸着もしくは塗布を行ったポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙またはガラスなどを挙げることが出来る。特に、JIS3003系、JIS5000系およびJIS6000系などのアルミニウム合金を用いるのが好ましい。
導電性支持体11の形状は、シート状、ドラム状、無端ベルト状などが挙げられる。
導電性支持体11の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化被膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理を施してもよい。レーザー光を露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザー光の波長が揃っているため、入射するレーザー光と電子写真感光体内で反射された光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥が発生することがある。導電性支持体11の表面に前述のような処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザー光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
中間層
本発明の積層型感光体は、導電性支持体11と感光層14との間に中間層18を有するのが好ましい。
中間層は、導電性支持体から積層型感光層への電荷の注入を防止する機能を有する。すなわち、感光層の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。
また、中間層で導電性支持体の表面を被覆する中間層は、導電性支持体の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、積層型感光層の成膜性を高め、導電性支持体と感光層との密着性を向上させることができる。
中間層18は、例えば、樹脂材料を適当な溶剤に溶解させて中間層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
樹脂材料としては、積層型感光層に含まれるものと同様のバインダ樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が特に好ましい。アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、2−ナイロンおよび12−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、ならびにN−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などが挙げられる。
樹脂材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤、アセトン、ジオキソラン、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
中間層18の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法のうちから、塗布の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を選択することができる。特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に導電性支持体11を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって導電性支持体11上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、電子写真感光体を製造する場合に多く利用されている。
また、中間層形成用塗布液は、金属酸化物粒子を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子は、中間層の体積抵抗値を容易に調節でき、積層型感光層への電荷の注入をさらに抑制できると共に、各種環境下において感光体の電気特性を維持できる。
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどが挙げられる。
中間層形成用塗布液におけるバインダ樹脂と金属酸化物粒子との合計重量Cと溶剤の重量Dとの比率(C/D)は、1/99〜40/60が好ましく、2/98〜30/70が特に好ましい。
また、バインダ樹脂の重量Eと金属酸化物粒子の重量Fとの比率E/Fは、90/10〜1/99が好ましく、70/30〜5/95が特に好ましい。
中間層の膜厚は特に限定されないが、0.01〜20μmが好ましくは、0.05〜10μmが特に好ましい。
中間層の膜厚が20μmを超える場合には、均一な中間層を形成し難く、また中間層上に均一な単層型感光層を形成し難く、感光体の感度が低下するおそれがある。一方、中間層の膜厚が0.01μm未満の場合には、中間層として実質的に機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面が得られないおそれがある。すなわち、導電性支持体からの積層型感光層への電荷の注入を防止することができなくなり、帯電性の低下が生じる。
なお、導電性支持体の構成材料がアルミニウムの場合には、アルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、中間層とすることができる。
電荷発生層
電荷発生層15は、電荷発生物質12として、ガリウムフタロシアニンダイマーを含有する。本発明に好ましく用いられる具体例としては、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、10.0°、15.0°、18.8°、22.3°及び28.4°に回折ピーク(図2参照−縦軸は吸収強度、横軸は回折角)を示す結晶構造を有するガリウムフタロシアニンダイマーが挙げられる。
ガリウムフタロシアニンダイマーを含有する感光体は、405±20nmの波長範囲に発振波長を有する露光光であっても、高感度かつ高品質な画像を提供できる。加えて、湿度依存性が低く環境安定性に優れている。
図3に、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、10.0°、15.0°、18.8°、22.3°及び28.4°に回折ピークを示す結晶構造を有するガリウムフタロシアニンダイマーの分光透過吸収スペクトルを示す(縦軸は吸収効率、横軸は波長)。
感光体における感度は、上記の分光透過吸収スペクトルを示す電荷発生物質の光の吸収効率に負うところが大きい。すなわち、図3に示されている上記のガリウムフタロシアニンダイマーの分光透過吸収スペクトルにおいて、波長405±20nmにおける吸光度約7.7は、従来露光光源として用いられている近赤外域(約780nm)における吸光度約5.0と比べて1.5倍程高いことが判る。
よって、本発明による感光体は、露光波長が405±20nmの光である露光手段を備えた画像形成装置において高感度を発揮できる。
また、ガリウムフタロシアニン顔料は結晶水を有さないことが知られており、したがって、該ガリウムフタロシアニンを電荷発生物質として含む感光体は、湿度依存性が低く環境安定性に優れている。
例えば、特開平10−88023号公報に、様々な結晶型のガリウムフタロシアニンダイマーが挙げられているが、本発明においては特にX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、10.0°、15.0°、18.8°、22.3°及び28.4°に回折ピークを示すガリウムフタロシアニンダイマーが好適に用いられる。
電荷発生物質12は、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料またはチオピリリウム塩染料などの増感染料と組合わされて使用されてもよい。
電荷発生層15の形成方法としては、電荷発生物質12を導電性支持体11上に真空蒸着する方法、または溶剤中に電荷発生物質12を分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性支持体11上に塗布する方法などがある。これらの中でも、結着剤であるバインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質12を従来公知の方法によって分散し、得られた塗布液を導電性支持体11上に塗布する方法が好ましい。
以下、この方法について説明する。
バインダ樹脂には、たとえばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などからなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。共重合体樹脂の具体例としては、たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。バインダ樹脂はこれらに限定されるものではなく、一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することができる。
溶剤には、たとえばジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、またはN,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが用いられる。また、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤を用いることもできる。地球環境に対する配慮すると、非ハロゲン溶剤を用いることが好ましい。
電荷発生物質12とバインダ樹脂との配合比率は、電荷発生物質12の割合が10重量%〜99重量%の範囲にあることが好ましい。電荷発生物質12の割合が10重量%未満であると、感度が低下する。電荷発生物質12の割合が99重量%を越えると、電荷発生層15の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質12の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少して画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多くなる。
したがって、10重量%〜99重量%が好ましい。
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質12を分散させる前に、予め電荷発生物質12を粉砕機によって粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などを挙げることができる。
電荷発生物質12をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカー、ボールミルまたはサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択する。
電荷発生物質12をバインダ樹脂溶液中に分散して得られる電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法のうちから、塗布の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を選択することができる。特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に導電性支持体11を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって導電性支持体11上に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、電子写真感光体を製造する場合に多く利用されている。なお、浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるため、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。
電荷発生層15の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層15の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感度が低下する。電荷発生層15の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下する。
電荷輸送層
電荷輸送層16は、電荷発生物質12で発生した電荷を受入れ輸送する能力を有する電荷輸送物質13を、バインダ樹脂17中に含有させることによって得られる。電荷輸送物質13としては、本発明の一般式(I):
Figure 0004779037
(式中、Arは置換基を有してもよいアリ−ル基であり、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子またはアルキルもしくはアルコキシ基であり、kは1〜5の整数であり、lおよびmは1〜4の整数である)
で表されるフェニレンジアミン化合物が用いられる。
上記の一般式(I)で表されるフェニレンジアミン化合物は、例えば以下のように製造することが出来る。
すなわち、一般式(III):
Figure 0004779037
(式中、Ar、R3及びmは前記一般式(I)において定義したとおりである)で表されるフェニレンジアミン誘導体を、一般式(IV):
Figure 0004779037
(式中、R1、R2、kおよびlは前記一般式(I)において定義したとおりであり、Xはヨウ素又は臭素を表す)
で表されるハロゲン化ビフェニル化合物と;銅粉末、酸化銅、ハロゲン化銅等の銅化合物から選択される銅系触媒;および炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩または水酸化物から選択される塩基性化合物の存在下;無溶媒またはニトロベンゼン、ジクロロベンゼン、キノリン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等から選択される有機溶媒中、150〜260℃で5〜50時間加熱攪拌する。
反応終了後、反応混合物を冷却し、得られた生成物を塩化メチレンやトルエンなどの有機溶媒に溶解し、不溶物を分離し、溶剤を留去した後、残留物をアルミナカラム又はシリカゲルカラム等で精製し、トルエン、エタノール、酢酸エチル等から再結晶することによりフェニレンジアミン化合物を製造することが出来る。
また、フェニレンジアミン誘導体、ハロゲン化ビフェニル化合物、銅系触媒及び塩基性化合物の使用量は、常法に従って、通常、化学量論量を使用すれば良いが、好ましくはフェニレンジアミン誘導体1モルに対して、ハロゲン化ビフェニル化合物2〜10モル、銅系触媒0.1〜2モル、塩基性化合物1〜3モルの範囲で使用すればよい。本発明における一般式(I)で表されるフェニレンジアミン化合物としては、例えば、次のような化合物がある。
Figure 0004779037
Figure 0004779037
Figure 0004779037
Figure 0004779037
Figure 0004779037
また、本発明のフェニレンジアミン化合物と他の種々の公知電荷輸送物質と電荷輸送層中の電荷輸送物質の総量中、20重量%以下ならば混合してもよい。例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体およびベンジジン誘導体などを挙げることができる。また、これらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリマー、たとえばポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレンおよびポリ−9−ビニルアントラセンなども挙げられる。
電荷輸送層16のバインダ樹脂17には、電荷輸送物質13との相溶性に優れるものが選ばれる。具体例としては、たとえばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂およびそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノール樹脂などの樹脂などを挙げることができる。また、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂を使用してもよい。これらの樹脂は、単独で使用されてもよく、また2種以上混合されて使用されてもよい。前述した樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れており、また皮膜性および電位特性などにも優れているので、これらをバインダ樹脂17に用いることが特に好ましい。
電荷輸送物質13(A)とバインダ樹脂17(B)との比率A/Bは、10/12〜10/30で用いられる。前記比率A/Bが10/30未満でありバインダ樹脂17の比率が高くなると、浸漬塗布法によって電荷輸送層16を形成する場合、塗布液の粘度が増大するので、塗布速度低下を招き生産性が著しく悪くなる。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層16に白濁が発生する。また前記比率A/Bが10/12を超えバインダ樹脂17の比率が低くなると、バインダ樹脂17の比率が高いときに比べて耐刷性が低くなり、感光層の摩耗量が増加する。
電荷輸送層16には、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤またはレベリング剤などの添加剤を添加してもよい。可塑剤としては、たとえば二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。
また電荷輸送層16には、機械的強度の増強や電気的特性の向上を図るために、無機化合物または有機化合物の微粒子を添加してもよい。
電荷輸送層16は、たとえば前述の電荷発生層15を形成する場合と同様に、適当な溶剤中に電荷輸送物質13およびバインダ樹脂17、ならびに必要な場合には前述の添加剤を溶解または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液をスプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法または浸漬塗布法などによって、電荷発生層15上に塗布することによって形成される。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述したように種々の点で優れているので、電荷輸送層16を形成する場合にも多く利用されている。
塗布液に用いられる溶剤には、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などからなる群から選ばれる1種が単独でまたは2種以上が混合されて使用される。また前述した溶剤に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。また、地球環境への配慮から非ハロゲン系有機溶剤を用いることが好ましい。
電荷輸送層16の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。電荷輸送層16の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下する。電荷輸送層16の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下する。
感光層14には、感度の向上を図り、繰返し使用時の残留電位の上昇および疲労などを抑えるために、さらに1種以上の電子受容物質や色素を添加してもよい。
電子受容物質には、たとえば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸および4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレンおよびテレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノンおよび1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノンおよび2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物、ならびにジフェノキノン化合物などの電子吸引性物質、またはこれらの電子吸引性物質を高分子化したものなどを用いることができる。
色素には、たとえばキサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料または銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物を用いることができる。これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。
図4は、本発明による電子写真感光体のさらに他の例である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す概略断面図である。電子写真感光体2は、図1に示す電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
注目すべきは、電子写真感光体2が、電子写真感光体1の最外層に表面保護層を設けていることである。
表面保護層150 に使用されるバインダ樹脂としてはポリスチレン、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂が有効に使用される。摩耗特性、電気的特性を考慮した場合、ポリカーボネート、ポリアリレートが好ましい。これらのバインダは、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
また、感光体の表面保護層150 にはその他、耐摩耗性を向上する目的でフィラー材料を添加することができる。有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。
特に、フィラーの硬度の点からは、この中でも無機材料を用いることが有利である。また、フィラーの平均一次粒径は、0.01〜0.5μmであることが表面保護層の光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。これらフィラーは分散性向上などの理由から無機物、有機物で表面処理されてもよい。一般に、撥水性処理としてシランカップリング剤で処理したもの、あるいはフッ素系シランカップリング剤で処理したもの、高級脂肪酸で処理したもの、無機物処理としてはフィラー表面をアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカで処理したもの知られている。
表面保護層中のフィラー材料濃度は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、保護層 の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、50重量%以下、好ましくは30重量%以下程度である。また、表面保護層中に前記電荷輸送物質13を含有してもよい。
なお、表面保護層150 の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。さらに1.0〜8.0μmの範囲であることが好ましい。長期的に繰り返し使用される感光体は、機械的に耐久性が高く、摩耗しにくいものとする。しかし実機内では、帯電部材などから、オゾン及びNOxガスなどが発生し、感光体の表面に付着する。これらの付着物が存在すると、画像流れが発生する。この画像流れを防止するためには、感光層をある一定速度以上に摩耗する必要がある。そのためには、長期的な繰り返し使用を考慮した場合、表面保護層は少なくとも1.0μm以上の膜厚であることが好ましい。また表面保護層の膜厚が8.0μmよりも大きい場合は、残留電位上昇や微細ドット再現性の低下が考えられる。
本発明の電子写真装置は、本発明の積層型感光体と、積層型感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された積層型感光体に対して青色レーザーダイオードによる露光を施す露光手段と、露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする。
図面を用いて本発明の画像形成装置およびその動作について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
図5の画像形成装置(レーザープリンタ)100は、本発明の積層型感光体1(図1参照)と、露光手段(半導体レーザー)31と、帯電手段(コロナ帯電器(帯電器ともいう))32と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35、クリーニング手段(クリーナ)36とを含んで構成される。符号51は転写紙を示す。
積層型感光体1は、図示しない画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を積層型感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、積層型感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。
帯電器32、露光手段31、現像器33、転写帯電器34およびクリーナ36は、この順序で、積層型感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される積層型感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
帯電器32は、積層型感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
露光手段31は、青色半導体レーザー光を光源として備え、光源から出力されるレーザー光を、帯電器32と現像器33との間の積層型感光体1の表面に照射することによって、帯電された単層型感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である積層型感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して積層型感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された積層型感光体1の帯電量がレーザー光の照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
現像器33は、露光によって積層型感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、積層型感光体1を臨んで設けられ、積層型感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを単層型感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
転写帯電器34は、現像によって積層型感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から積層型感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる非接触式の転写手段である。
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に積層型感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、積層型感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
また、画像形成装置100には、積層型感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
また、符号37は 転写紙と感光体を分離する分離手段、38は画像形成方法の各手段を収容するハウジング(ケーシング)を示す。
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。まず、積層型感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも積層型感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、単層型感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
次いで、露光手段31から、積層型感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。積層型感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段31による光の結像点よりも積層型感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された積層型感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
積層型感光体1に対する露光と同期して、積層型感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、積層型感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も積層型感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって積層型感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された積層型感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、積層型感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、積層型感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
なお、以下の製造例で調製したフェニレンジアミン化合物の確認は、以下の1H−NMR測定装置および測定条件でNMRスペクトルを測定した。
測定機器;MERCURY 300型装置(バリアン社製、300MHz)
測定溶剤;CDCl3
サンプル濃度;約4mg試料/0.4m(CDCl3
製造例1
化合物2の製造
o−ジクロロベンゼン100ml中で、以下の式:
Figure 0004779037
で表される化合物(B)5.0g(1.0当量)、以下の式:
Figure 0004779037
で表される化合物(C)11.7g(2.1当量)、銅粉末2.2g(2.0当量)、無水炭酸カリウム19.1g(8.0当量)を混合し、反応温度を180℃まで上げ、この温度を保つように加熱しながら18時間撹拌および還流して反応させた。反応終了後、熱時セライト瀘過を行い、瀘液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=1/1)で精製し、白色粉末化合物を得た。
得られた白色粉末状化合物の1H−NMR測定を行い、化学構造分析を行った。その結果、1H−NMRスペクトルは、δ 2.31(s、6H)、6.68(dd、J=8.1Hz,J=2.4,2H)、6.88(t、J=2.1Hz,1H)、7.00−7.13(m、13H),7.27−7.32(m,2H) 、7.34−7.44(m、8H)、7.47−7.54(m、4H)を示し、化合物2の構造が、以下の式:
Figure 0004779037
で表されるフェニレンジアミン化合物であることを確認できた。
製造例2
化合物13の製造
製造例1における化合物(C)を、以下の式:
Figure 0004779037
で表される化合物(E)に変えた以外は、製造例1と同様の操作で目的物を得た。製造例1と同様にして化学構造分析も行った。
1H−NMRスペクトルは、δ 2.23 (s, 6H), 2.30 (s, 6H), 6.68 (dd, J=8.1Hz、J=2.1Hz、2H)、6.92(t、J=2.4Hz、1H)、7.03−7.30(m、25H)を示し、化合物13が、以下の式:
Figure 0004779037
製造例3
化合物21の製造
製造例1における化合物(B)を、以下の式:
Figure 0004779037
で表される化合物(F)に変えた以外は、製造例2と同様の操作で生成物を得た。製造例1と同様の化学構造分析も行った。
1H−NMRスペクトルは、δ 2.27(s、12H)、6.82(dd、J=7.8Hz,J=2.1Hz,2H)、7.07(t、J=2.1Hz,1H)、7.15−7.26(m、33H)を示し、化合物21が、以下の式:
Figure 0004779037
で表されるフェニレンジアミン化合物であることを確認できた。
実施例1
酸化チタン(商品名:タイベークTTO−D−1、石原産業株式会社製)3重量部および市販のポリアミド樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ株式会社製)2重量部を、メチルアルコール25重量部に加え、ペイントシェーカーにて8時間分散処理し、中間層形成用塗工液3Kgを調製した。得られた中間層用塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体として直径30mm、長さ357mmのアルミニウム製のドラム状支持体を浸漬した後引き上げ、膜厚1μmの中間層を形成した。
次いで電荷発生物質は、下記方法によって製造した。
撹拌器、塩化カルシウム管などの必要器具を備えた1000mlのガラス製4口フラスコにフタロニトリル177.2gと1−クロルナフタレン820ml及び塩化ガリウム50.0gを仕込み、10時間還流下撹拌した。その後、還流を停止し、200℃程度まで放冷後熱時濾過して、熱ジメチルホルムアミド(DMF)3500ml、DMF3000mlを用いて振りかけ洗浄した。得られたウエットケーキをDMF800mlに再度分散し、5時間撹拌還流した後、熱濾過後、熱DMF2500ml、DMF2000mlを用いて振りかけ洗浄し、メタノール置換後乾燥して青色固体のクロロガリウムフタロシアニン125.0g(収率73.5%)を得た。
得られたクロロガリウムフタロシアニン10.0gを濃硫酸300gに温度を0〜5℃に保ちながら徐々に溶解させ、この温度で1時間撹拌した。これを氷水1500mlへ、温度が5℃を越えないように撹拌しながら注加し、注加終了後さらに2時間撹拌した。濾過、水洗後、1500mlのイオン交換水へ再分散し、再度濾過した。水洗後ウエットケーキを4%アンモニア水600mlに再分散して、6時間還流下撹拌した。濾過後、ケーキをイオン交換水で念入りに洗浄した後、減圧下、50℃で乾燥し、粉砕して8.72g(収率89.8%)の青色固体を得た。
次いで、o−ジクロロベンゼン130mlに得られた青色固体7.7gを加え、170〜180℃で撹拌した。予め付属させたリービッヒコンデンサーから、生成する水を煮沸により反応系内より除去した。水の生成が少なくなったらリービッヒコンデンサーを空冷コンデンサーに替え、3時間還流下、撹拌した。熱時濾過し、DMFによる振りかけ洗浄に引続き、メタノールによってケーキ中のDMFを置換した。乾燥、粉砕して、ガリウムフタロシアニンダイマー7.1g(収率93.6%)を得た。
更に、得られたガリウムフタロシアニンダイマー7.0gと5mmφガラスビーズ80gを広口瓶に仕込み、試験用分散器(所謂ペイントシェーカー)を用いて2〜3日間乾式粉砕を行った。一部サンプリングし、結晶変態の変化が止まったところで、ふるいを用いてガラスビーズを分離し、6.8gのアモルホス型ガリウムフタロシアニンダイマーを青色固体として得た。
得られたアモルホス型ガリウムフタロシアニンダイマー1.0gにアミルアルコール30mlを加え、還流下、10時間撹拌分散した。放冷後、フタロシアニンダイマーを濾取し、メタノール置換後減圧下乾燥し、ガリウムフタロシアニンダイマー0.91gを青色固体として得た。
得られた結晶のX線回析スペクトルを図2に示す。得られた結晶は、X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、10.0°、15.0°、18.8°、22.3°及び28.4°に回折ピークを示す結晶形を有するガリウムフタロシアニンダイマーであった。
ここで得られたガリウムフタロシアニンダイマー1.8重量部と、ブチラール樹脂(積水化学社製:エスレックBX−1)1.2重量部と、ジメトキシエタン87.3重量部と、シクロヘキサノン9.7重量部とを混合し(混合比率=90/10)、ペイントシェーカーにて分散して電荷発生層用塗布液3Kgを調整した。この塗布液を、中間層の場合と同様の浸漬塗布法にて前述の中間層上に塗布し、自然乾燥して層厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次いで、電荷輸送物質として表1の化合物2 100重量部、ポリカーボネート樹脂(TS2050:帝人化成社製)150重量部、シリコンオイルSH200(東レ・ダウコーニング社製)0.02重量部を混合し、テトラヒドロフランを溶剤として固形分25重量%の電荷輸送層形成用塗工液3Kgを調製した。この電荷輸送層形成用塗工液をアプリケーター塗布法および浸漬法により、先に設けた電荷発生層表面に塗布し、120℃で1時間乾燥して膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、図1に示す積層型感光体を作製した。
実施例2
実施例1における化合物2に代えて前記の化合物13を用いた以外は実施例1と同様にして積層型感光体を作製した。
実施例3
実施例1における化合物2に代えて前記の化合物21を用いた以外は実施例1と同様にして積層型感光体を作製した。
比較例1
実施例1における化合物2に代えて、以下の式:
Figure 0004779037
で表されるトリフェニルアミン系化合物(TPD)(商品名:D2448、東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、図1の積層型感光体を作製した。
比較例2
実施例1における化合物2に代えて、以下の式:
Figure 0004779037
で表されるエナミン系化合物(特許第3881651号公報記載の方法で合成)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、図1の積層型感光体を作製した。
比較例3
実施例1における化合物2に代えて、以下の式:
Figure 0004779037
で表されるトリフェニルアミン系化合物(商品名:D2558、東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、図1の積層型感光体を作製した。
比較例4
特開2000−105479号公報に開示されている製造例に従って得られた、結晶のX線回折スペクトルが、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に強いピークを有するチタニルフタロシアニンを電荷発生物質として用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
比較例5
特開平5−279591号公報に開示されている製造例に従って得られた、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを電荷発生物質として用いたこと以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
[評価]
1.実施例1〜3および比較例1〜5において得られた感光体を、解像度1200dpi負帯電方式のデジタル複写機(商品名:MX−2600、シャープ株式会社製)の露光ユニット(LSU)を青色半導体レーザー(405nm)用に改造した試験用複写機にそれぞれ搭載し、画像形成工程における感光体の表面電位を測定できるようにTREC(TREC JAPAN社製、model344)を設けて、各感光体の電気特性および環境安定性を評価した。
まず、温度22℃、相対湿度65%のN/N環境下において、帯電器による帯電動作直後の感光体の表面電位を帯電電位V0(V)として測定した。また、レーザー光(波長:405nm)によって露光を施した直後の感光体の表面電位をN/N環境下における残留電位VL(V)として測定した。併せて初期画像の画質評価を行った。具体的には、黒モードにおいて、自己印字モードで 1ライン画像、縦横の2ライン画像、黒ベタの1ライン抜け画像、1by1ドット(1ドット置きに1ドットを印字)画像の評価を行った。
次に、N/N環境下と同様にして、温度25℃、相対湿度5%のN/L環境下においても、帯電電位V0(V)及び残留電位VL(V)を測定及び、初期画像の画質評価を行った。
さらに、温度25℃、相対湿度5%のN/L環境下において、所定のパターンのテスト画像(ISO 19752に規定された文字テストチャート)を記録用紙10万枚に連続して複写させた後、初期と同様にして帯電動作直後の感光体の表面電位を帯電電位V0(V)として、露光後の感光体の表面電位を残留電位VL(V)として測定した。併せて、記録用紙10万枚複写後においても画像の画質評価を行った。
2.実施例および比較例で用いられた電荷輸送層形成用塗工液を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(略称PET)フィルム上にアプリケーターによって塗布し、120℃の熱風で60分間乾燥させ、膜厚20μmの電荷輸送層を作製した。このフィルムをU−4000型分光光度計(日立製作所社製)により405nmの波長における光透過率を%単位で求めた。
評価結果を、以下の表に示す。
Figure 0004779037
実施例1〜3、比較例1〜3より、電荷輸送物質に本発明のフェニレンジアミン化合物を用いた電子写真感光体は、電荷輸送膜の透過率も高く、高感度であることがわかる。また、本発明のフェニレンジアミン化合物を用いることで、高解像度化においても露光光源の短波長化による光学系のメリットを十分に生かした画像形成装置が実現できることがわかった。
比較例1〜比較例3のトリフェニルアミン(TPD)化合物およびエナミン化合物は、透過率が低く、電荷発生層に十分な光が届かないため、感度が悪いことがわかる。また、比較例1〜比較例3のトリフェニルアミン(TPD)化合物およびエナミン化合物は、電荷輸送物質に光が吸収され、電荷輸送層内部で発光するため画像評価においても不鮮明な画像となった。比較例3のトリフェニルアミン化合物は、透過率は優れているものの、電荷輸送機能に問題あるため、非常に低感度であり、それに伴い画像濃度も評価出来ないレベルであった。
さらに比較例1〜5より、本発明と異なる電荷発生物質と電荷輸送物質の組み合わせを用いると、低湿環境下での繰り返し使用に対して初期帯電の低下が著しく見られ、画像評価においてもカブリが見られた。一方、実施例1〜3では、低湿環境下での繰り返し使用に対して初期帯電の低下は抑制されており、画像評価においても良好な状態を保持している。このことから本発明のフェニレンジアミンとガリウムフタロシアニンダイマーどちらか一方では効果は発揮せず、この組み合わせによって環境安定性の向上に対して有用であることがわかる。
波長405±20nmの露光光源で使用される電子写真感光体において、電荷輸送物質として一般式(I)で示される本フェニレンジアミン化合物を含有し、かつ電荷発生物質として、特定の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンダイマーを電荷発生物質として含有することで、低湿度下においても高い安定性があり、且つ高感度、高解像力を有する電子写真感光体及び電子写真装置を提供することができる。
1、2 電子写真感光体
11 導電性支持体
12 電荷発生物質
13 電荷輸送物質(フェニレンジアミン化合物)
14 感光層
15 電荷発生層
16 電荷輸送層
17 バインダ樹脂
18 中間層
31 露光手段(半導体レーザー)
32 帯電手段(コロナ帯電器)
33 現像手段(現像器)
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写手段(転写帯電器)
35 定着手段(定着器)
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーニング手段(クリーナ)
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
37 分離手段
38 ハウジング(ケーシング)
41 矢符
44 回転軸線
51 転写紙
100 画像形成装置(レーザープリンタ)
150 表面保護層

Claims (5)

  1. 波長405±20nmの露光光源で使用される電子写真感光体において、該電子写真感光体が、導電性基体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層を順次積層してなり、
    該電荷輸送層が、電荷輸送物質として、以下の式
    Figure 0004779037
    で表されるフェニレンジアミン化合物を含有し、かつ電荷発生層が、電荷発生物質としてガリウムフタロシアニンダイマーを含有することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記電荷発生物質が、X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°、10.0°、15.0°、18.8°、22.3°及び28.4°に回折ピークを示す結
    晶形を有するガリウムフタロシアニンダイマーである請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記導電性基体と前記電荷発生層との間に中間層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 請求項1〜のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体に対して波長が405±20nmの光源を露光手段とし、露光によって形成される静電潜像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
  5. 前記露光手段が青紫色半導体レーザーであることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
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