JP2005220929A - クラッチ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】入力部材および出力部材間に設けられる第1摩擦クラッチと、クラッチ遮断操作力の作用に応じて動力遮断状態となる第2摩擦クラッチと、第1および第2摩擦クラッチ間に設けられるトルクカム機構とを備えるクラッチ装置において、部品点数低減、構造の簡略化およびコンパクト化を図る。
【解決手段】クラッチアウタ49を共通にして第1および第2摩擦クラッチ45,46が構成され、トルクカム機構47が、クラッチアウタ49内で第1および第2摩擦クラッチ45,46間に設けられる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、クラッチ操作力を小さくし得るようにしたクラッチ装置、特に、入力部材および出力部材間に設けられる第1摩擦クラッチと、クラッチ遮断操作力を作用せしめるのに応じて動力遮断状態となるようにして第1摩擦クラッチに隣接配置される第2摩擦クラッチと、前記入力部材および前記出力部材の相対回転差が生じるのに応じて第1摩擦クラッチを動力遮断状態から動力伝達状態に変化させるようにして第1および第2摩擦クラッチ間に設けられるトルクカム機構とを備えるクラッチ装置に関する。
このようなクラッチ装置は、クラッチばねのばね荷重を小さくしてクラッチ操作力を小さくしつつ大きな伝達トルクが得られるようにしたものであり、たとえば特許文献1で既に知られている。
特開昭62−49494号公報
ところで、上記特許文献1で開示されたものでは、第1摩擦クラッチが回転部材に結合されたアウタクラッチを有するとともに、第2摩擦クラッチが、第1摩擦クラッチのアウタクラッチとは別にクラッチ軸に相対回転不能に結合されたアウタクラッチを有しており、トルクカム機構は、第1摩擦クラッチのプレッシャプレートと、第2摩擦クラッチのクラッチアウタとの間に設けられており、部品点数が比較的多くなるとともに構造も複雑であり、軸線に沿う方向でクラッチ装置も大型化してしまう。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、部品点数の低減、構造の簡略化およびコンパクト化を図ったクラッチ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、入力部材および出力部材間に設けられる第1摩擦クラッチと、クラッチ遮断操作力を作用せしめるのに応じて動力遮断状態となるようにして第1摩擦クラッチに隣接配置される第2摩擦クラッチと、前記入力部材および前記出力部材の相対回転差が生じるのに応じて第1摩擦クラッチを動力遮断状態から動力伝達状態に変化させるようにして第1および第2摩擦クラッチ間に設けられるトルクカム機構とを備えるクラッチ装置において、クラッチアウタを共通にして第1および第2摩擦クラッチが構成され、前記トルクカム機構が、前記クラッチアウタ内で第1および第2摩擦クラッチ間に設けられることを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記トルクカム機構が、第1および第2摩擦クラッチが備えるクラッチディスクの内径よりも小径に構成されることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の構成に加えて、前記第2摩擦クラッチが、前記クラッチアウタとの相対回転を可能としたクラッチセンタと、該クラッチセンタとの相対回転を不能とした第2プレッシャプレートと、前記クラッチアウタに相対回転不能に係合されるとともに前記クラッチセンタおよび第2プレッシャプレート間に配置される単一のクラッチディスクとを備えることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の発明の構成に加えて、前記第2摩擦クラッチを動力遮断状態とするためのクラッチレリーズ機構を含み、該クラッチレリーズ機構は、前記第2摩擦クラッチが備える第2プレッシャプレートに連結されるリフタプレートを、前記第2摩擦クラッチを覆うカバーに回動可能に支承されたリフタ軸の回動に応じて前記カバー側に牽引すべく構成されることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、第1摩擦クラッチが備える第1プレッシャプレートならびに第2摩擦クラッチが備えるクラッチセンタ間に設けられる前記トルクカム機構は、第1プレッシャプレートおよび前記クラッチセンタ間の相対回転位相差を元に戻す側に第1プレッシャプレートおよび前記クラッチセンタを付勢するトーションばねを備えることを特徴とする。
さらに請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記トルクカム機構は、第1摩擦クラッチが備える第1プレッシャプレートならびに第2摩擦クラッチが備えるクラッチセンタにそれぞれ固定されて相互に対向する一対のカムプレートと、それらのカムプレート間に介装される球体とを備え、両カムプレートの相互に対向する面には、前記出力部材から前記入力部材側へのトルク伝達時に発揮する前記推力が前記入力部材から前記出力部材側へのトルク伝達時に発揮する前記推力よりも小さくなるようにして前記球体に接触するカム面がそれぞれ形成されることを特徴とする。
請求項1記載の発明によれば、第1および第2摩擦クラッチに共通にしてクラッチアウタを配設するので、部品点数を低減して構造を単純化することが可能であるとともに、回転軸線に沿う方向でクラッチ装置全体をコンパクト化することが可能となる。
また請求項2記載の発明によれば、第1および第2摩擦クラッチが備えるクラッチディスクの内径よりもトルクカム機構を小径に構成することにより、第1および第2摩擦クラッチを軸方向により近接させて配置することが可能となり、クラッチ装置をその軸方向にコンパクト化することができる。
請求項3記載の発明によれば、第2プレッシャプレートの操作ストロークを最小限として、レバー比を稼ぎ、クラッチ操作荷重を小さくすることができる。
請求項4記載の発明によれば、クラッチ操作荷重が小さくてすむことによりカバーにかかる負荷を軽減し、カバーの厚みを増したり、補強リブを多くして強度を増大することを不要とし、カバーの軽量化を図ることができる。
請求項5記載の発明によれば、非作動状態では、第1プレッシャプレートおよびクラッチセンタの相対位置を初期位置に戻すようにしてクラッチ作動応答性を高めることができる。
さらに請求項6記載の発明によれば、出力部材側から入力部材側へのバックトルクを低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図7は本発明の第1実施例を示すものであり、図1は自動二輪車に搭載されたエンジンおよび変速機の横断面図、図2は図1の要部拡大図、図3はトルクカム機構の縦断面図であって図4の3−3線に沿う断面図、図4は第2摩擦クラッチ側のカムプレートおよびトーションばねを図3の4−4矢視方向から見た図、図5は第1摩擦クラッチ側のカムプレートを図3の4−4線矢視方向から見た図、図6はエンジンから変速機側へのトルク伝達状態での図3の6−6線断面図、図7は変速機からエンジン側へのトルク伝達状態での図6に対応した断面図である。
先ず図1において、たとえば自動二輪車に搭載される4気筒のエンジンEは、クランクシャフト11を回転自在に支承するクランクケース12と、該クランクケース12に結合されるシリンダブロック13と、シリンダブロック13に結合されるシリンダヘッド14と、シリンダヘッド14に結合されるヘッドカバー15とを備え、シリンダブロック13には、前記クランクシャフト11の軸線と平行に並ぶ4つのシリンダボア16…が設けられ、各シリンダボア16…にそれぞれ摺動可能に嵌合されるピストン17…がコネクティングロッド18…を介してクランクシャフト11に連結される。
前記各ピストン17…の頂部を臨ませるようにしてシリンダブロック13およびシリンダヘッド14間には燃焼室19…が形成される。シリンダヘッド14には、前記各燃焼室19…への混合気の流入を制御する吸気弁20,20…が各燃焼室19…毎に一対ずつ開閉作動可能に配設されるとともに、前記各燃焼室19…からの燃焼ガスの排出を制御する排気弁(図示せず)が各燃焼室19…毎に一対ずつ開閉作動可能に配設されており、シリンダヘッド14およびヘッドカバー15間に形成される動弁室21には、前記各吸気弁20,20…を開閉駆動するための吸気側カムシャフト22ならびに前記各排気弁を開閉駆動するための排気側カムシャフト(図示せず)を含む動弁機構23が収容される。
吸気側カムシャフト22および排気側カムシャフトには、クランクシャフト11からの回転動力が調時伝動機構24により1/2の減速比で伝達されるものであり、該調時伝動機構24は、クランクシャフト11の一端に固定される駆動スプロケット25と、吸気側カムシャフト22の一端に固定される被動スプロケット26と、排気側カムシャフトの一端に固定される被動スプロケット(図示せず)と、それらのスプロケット26…に巻き掛けられる無端状のタイミングチェーン27とを備え、クランクケース12、シリンダブロック13およびシリンダヘッド14には、前記タイミングチェーン27を走行せしめるためのチェーン室28が形成される。
クランクケース12から突出するクランクシャフト11の他端にはロータ31が連結されており、該ロータ31と協働して発電機30を構成するステータ32は、発電機30を覆うようにしてクランクケース12に締結される発電機カバー33に固定される。
ところで、クランクケース12内には、前記クランクシャフト11の大部分を収容するクランク室34およびミッション室35が、隔壁12aで隔てられるようにして形成されており、ミッション室35には、前記クランクシャフト11と平行にしてクランクケース12で回転自在に支承される出力部材としてのメインシャフト36と、該メインシャフト36と平行にしてクランクケース12に回転自在に支承されるカウンタシャフト37と、択一的に確立可能として前記メインシャフト36および前記カウンタシャフト37間に設けられる第1〜第6速ギヤ列G1〜G6とを備える変速機Mが収容される。
クランクシャフト11の回転動力は、クランクシャフト11の一端寄りに設けられる駆動ギヤ41と、前記メインシャフト36に回転自在に支承されて前記駆動ギヤ38に噛合する入力部材としての被動ギヤ42と、発進クラッチとして機能するようにして前記被動ギヤ42およびメインシャフト36間に設けられる本発明のクラッチ装置Cとを経て、メインシャフト36の一端側に伝達される。前記クラッチ装置Cとは反対側でクランクケース12から突出したカウンタシャフト37の端部には出力スプロケット38が固定されており、この出力スプロケット38には図示しない後輪に動力を伝達するための無端状のチェーン39が巻き掛けられる。
図2において、クラッチ装置Cは、同軸である被動ギヤ42およびメインシャフト36間に設けられる第1摩擦クラッチ45と、クラッチ遮断操作力を作用せしめるのに応じて動力遮断状態となるようにしつつメインシャフト36の軸線に沿って第1摩擦クラッチ45に隣接した位置に配置される第2摩擦クラッチ46と、前記被動ギヤ42および前記メインシャフト36の相対回転差が生じるのに応じて第1摩擦クラッチ45を動力遮断状態から動力伝達状態に変化させるようにして第1および第2摩擦クラッチ45,46間に設けられるトルクカム機構47とを備える。
第1摩擦クラッチ45は、被動ギヤ42に複数のダンパばね48…を介して連結されるクラッチアウタ49と、メインシャフト36に相対回転不能に結合される第1クラッチセンタ50と、第1クラッチセンタ50に設けられる第1受圧板部50aに対しての近接離反を可能としつつ第1クラッチセンタ50に相対回転不能に係合される第1プレッシャプレート51と、第1プレッシャプレート51を第1受圧板部50aから離反する側に付勢する戻しばね52と、第1受圧板部50aおよび第1プレッシャプレート51間に配置されてクラッチアウタ49に相対回転不能に係合される複数枚の駆動側クラッチディスク53…と、第1受圧板部50aおよび第1プレッシャプレート51間で前記各駆動側クラッチディスク53…と交互に配置される複数枚の被動側クラッチディスク54…とを備える。
前記メインシャフト36の一端側およびクランクケース12間に介装されるボールベアリング40の内輪40aと、メインシャフト36の一端に螺合されるナット55との間には、該ナット55側から順に、第1スペーサ56と、支持筒57のボス57aと、第1クラッチセンタ50のボス50bと、第2スペーサ58と、メインシャフト36を同軸に囲繞する円筒状のスリーブ59とが挟まれており、前記支持筒57のボス57aおよび第1クラッチセンタ50のボス50bはメインシャフト36にスプライン嵌合される。すなわち前記支持筒57および第1クラッチセンタ50はメインシャフト36に相対回転不能に結合される。また被動ギヤ42のボス42aは前記スリーブ59にニードルベアリング60を介して回転自在に支承される。
クラッチアウタ49は、前記被動ギヤ42との間に環状の滑り板61を介装せしめる端壁49aを被動ギヤ42側の端部に有して円筒状に形成されるものであり、端壁49aの周方向複数箇所に連結ボス62…が突設される。一方、被動ギヤ42には、その周方向に間隔をあけた位置で周方向に長く延びる複数の長孔63…が設けられ、それらの長孔63…に前記各連結ボス62…が挿通される。しかもクラッチアウタ49の前記端壁49aとは反対側で被動ギヤ42の側面に対向する保持板64が前記各連結ボス62の端面に当接されており、各連結ボス62を貫通するリベット65…で保持板64が各連結ボス62…の端面に固定される。また保持板64および被動ギヤ42間には、前記被動ギヤ42および前記端壁49aを前記滑り板61の両面に接触させる側に付勢するばね力を発揮する皿ばね66が設けられる。
また前記各長孔63…とは周方向にずれた複数箇所で被動ギヤ42には、周方向に長く延びる保持孔67…が設けられており、各保持孔67…に、前記クラッチアウタ49および前記保持板64と、前記被動ギヤ42との間に介装されるダンパばね48…が収容される。
第1クラッチセンタ50および第1プレッシャプレート51は前記クラッチアウタ49で覆われるものであり、第1クラッチセンタ50の外周部に環状の第1受圧板部50aが一体に設けられ、第1受圧板部50aに対する近接、離反動作を可能とした第1プレッシャプレート51が、第1クラッチセンタ50に相対回転不能に係合される。
第2摩擦クラッチ46は、第1摩擦クラッチ45と共通な前記クラッチアウタ49と、メインシャフト36に対する相対回転を可能として第1プレッシャプレート51に対向する位置に配置される第2クラッチセンタ70と、第2クラッチセンタ70に設けられる第2受圧板部70aに対しての近接離反を可能としつつ第2クラッチセンタ70に相対回転不能に係合されるとともにクラッチばね72で第2受圧板部70aに近接する側にばね付勢される第2プレッシャプレート71と、前記クラッチアウタ49に相対回転不能に係合されて第2受圧板部70aおよび第2プレッシャプレート71間に配置されるクラッチディスク73とを少なくとも備え、この実施例では、クラッチアウタ49に相対回転不能に係合される単一枚のクラッチディスク73が、第2受圧板部70aおよび第2プレッシャプレート71間に配置される。またクラッチばね72は皿ばねであり、支持筒57および第2プレッシャプレート71間に設けられる。
図3〜図5を併せて参照して、トルクカム機構47は、第1プレッシャプレート51および第2クラッチセンタ70の相対回転に応じて第1プレッシャプレート51を第1受圧板部50a側に押圧する推力を発揮するようにして第1プレッシャプレート51および第2クラッチセンタ70間に設けられるものであり、第2クラッチセンタ70の内周部に複数のリベット74…で結合される環状のカムプレート76と、第1プレッシャプレート51の内周部に複数のリベット75…で結合されるカムプレート77と、両カムプレート76,77間に挟まれる複数個たとえば3個の球体78…と、両カムプレート77,76の相対回転位相差すなわち第1プレッシャプレート51および第2クラッチセンタ70の相対回転位相差を元に戻す側に第1プレッシャプレート51および第2クラッチセンタ70を付勢するトーションばね79とを備え、第1摩擦クラッチ45において第1プレッシャプレート51を第1受圧板部50aから離反する側に付勢する戻しばね52は、第1クラッチセンタ50と、第1プレッシャプレート51に固定されたカムプレート77との間に介装される。
このトルクカム機構47は、第1摩擦クラッチ45における駆動側および被動側クラッチディスク53…,54…の内径ならびに第2摩擦クラッチ46におけるクラッチディスク73の内径よりも小径に構成される。しかも第2摩擦クラッチ46側のカムプレート76の外径は、第1プレッシャプレート51における第2摩擦クラッチ46側の端面内周部に設けられる凹部51aに外周部を挿入可能な程度に形成され、第1摩擦クラッチ45側のカムプレート77は前記カムプレート76よりも小径に形成されており、前記凹部51aの内周部に結合される。
前記カムプレート76,77の内周部は、メインシャフト36とともに回転する支持筒57に相対回転可能に支承されており、支持筒57には、カムプレート76の内周部に第1摩擦クラッチ45側から係合する止め輪80が装着される。また支持持筒57には、第1摩擦クラッチ45とは反対側からカムプレート76側に臨む環状の段部57bが設けられており、その段部57bに当接する環状の受け板81およびカムプレート76間にスラストローラベアリング82が介装される。すなわちカムプレート76および第2クラッチセンタ70は、メインシャフト36の軸線に沿う方向での移動を規制されつつ支持筒57に相対回転可能に支承されることになる。
トーションばね79は、両カムプレート76,77の相対回転位相差が生じていない状態では一方のカムプレート76に外周部にほぼ沿うようにして円弧状に形成されるものであり、トーションばね79の一端は連結ピン83で前記カムプレート76に連結され、トーションばね79の他端は、他方のカムプレート77に結合された第1プレッシャプレート51に連結ピン84で連結される。
前記両カムプレート76,77の相互に対向する面には、前記各球体78…の一部をそれぞれ収容する凹部85…,86…が各球体78…の個数と同一複数だけ設けられる。
図6において、一方のカムプレート76の凹部85は、その最深部から周方向両側に向かうにつれて浅くなるように形成されるものであり、凹部85の底面のうち最深部から周方向一側の部分は傾斜角度αを比較的緩やかとして傾斜した第1カム面85aとして形成され、凹部85の底面のうち最深部から周方向他側の部分は傾斜角度βを第1カム面85aの傾斜角度αよりも大きくして傾斜した第2カム面85bとして形成される。
また他方のカムプレート77の凹部86は、その最深部から周方向両側に向かうにつれて浅くなるように形成されるものであり、凹部85の底面のうち最深部から周方向一側の部分は一方のカムプレート76の第2カム面85bと同一の傾斜角度βを有して傾斜した第2カム面86bとして形成され、凹部86の底面のうち最深部から周方向他側の部分は一方のカムプレート76の第1カム面85aと同一の傾斜角度αを有して傾斜した第1カム面86aとして形成される。
而して第1カム面85a,86aは、図6で示すように、一方のカムプレート76を入力側とするとともに他方のカムプレート77を出力側としたとき、すなわちエンジンEのクランクシャフト11から変速機Mへのトルク伝達時に、カムプレート76,77間に回転位相差が生じるのに応じて球体78に両側から接触するものであり、第1カム面85a,86aの傾斜角度αが比較的小さいものであることにより、カムプレート76の回転に応じて他方のカムプレート77に作用する推力、すなわち第1摩擦クラッチ45において第1プレッシャプレート51を第1クラッチセンタ50の第1受圧板部50aに近接させる方向に押す力は比較的大きなものとなる。
一方、第2カム面85b,86bは、図7で示すように、他方のカムプレート77を入力側とするとともに一方のカムプレート76を出力側としたとき、すなわちエンジンブレーキ時に変速機M側からエンジンEのクランクシャフト11に駆動力が伝達されるときに、カムプレート77,76間に回転位相差が生じるのに応じて球体78に両側から接触するものであり、第2カム面85b,86bの傾斜角度βが第1カム面85a,86aの傾斜角度αよりも大きいことにより、カムプレート77の回転に応じて該カムプレート77が受ける推力は、エンジンEのクランクシャフト11から変速機Mへのトルク伝達時に発生する推力よりも小さくなる。
再び図2において、第2摩擦クラッチ46を動力遮断状態とするためのクラッチレリーズ機構87は、第2プレッシャプレート71に外周部が連結されるリフタプレート88と、前記メインシャフト36の一端部にスライド可能に嵌合される円筒状のリフタピース90と、リフタピース90およびリフタプレート88の内周部間に設けられるレリーズベアリング89と、図示しないクラッチレバーの操作に応じて回動するようにしてカバー92に回動可能に支承されるリフタ軸91とを備え、カバー92は、クランクシャフト11の一端部およびクラッチ装置Cを覆うようにしてクランクケース12に締結される。
前記リフタ軸91のカバー92内への突出端部には、該リフタ軸91の一部を切欠くことで略L字所のアーム部91aが形成されており、前記リフタピース90の端部には前記アーム部91aに係合する係合鍔部90aが一体に設けられる。而してクラッチレバーの操作に応じてリフタ軸91が回動することにより、リフタプレート88がカバー92側に牽引され、それにより第1摩擦クラッチ46では、第2プレッシャプレート71がクラッチばね72のばね力に抗して第2受圧板部70aから離反する方向に移動し、第2摩擦クラッチ46は、クラッチアウタ49および第2クラッチセンタ70間の動力伝達を遮断することになる。
次にこの第1実施例の作用について説明すると、第2摩擦クラッチ46が動力伝達状態にあるときに、被動ギヤ42からダンパばね48…を介してクラッチアウタ49に駆動トルクが入力されると、第2摩擦クラッチ46の第2クラッチセンタ70はクラッチアウタ49とともに回転するが、クラッチアウタ49の回転開始時に第1摩擦クラッチ45では、メインシャフト36に相対回転不能に結合された第1クラッチセンタ50との相対回転が不能である第1プレッシャプレート51が静止状態にあり、第2クラッチセンタ70および第1プレッシャプレート51の相対回転差が生じるのに応じて、トルクカム機構47が第1プレッシャプレート51を第1クラッチセンタ50の第1受圧板部50a側に押圧する推力を発揮することにより、第1摩擦クラッチ45が動力伝達状態となり、被動ギヤ42からダンパばね48…および第1摩擦クラッチ45を介してメインシャフト36に駆動力が伝達されることになる。
すなわち、第2摩擦クラッチ46は、第1プレッシャプレート51および第2クラッチセンタ70に相対回転差を生じさせるだけの機能を発揮すればよく、クラッチばね72のばね荷重を比較的小さく抑えることが可能である。したがって被動ギヤ42およびメインシャフト36間の動力伝達を遮断するときに、第2摩擦クラッチ46の第2プレッシャプレート71をクラッチばね72のばね力に抗して第2受圧板部70aから離反する方向に操作する際の操作力を小さくして操作負荷を軽減することができる。
しかも第1および第2摩擦クラッチ45,46に共通にしてクラッチアウタ49を配設しているので、部品点数を低減して構造を単純化することが可能であるとともに、メインシャフト36の軸線に沿う方向でクラッチ装置C全体をコンパクト化することが可能となる。
また第2摩擦クラッチ46の第2受圧板部70aおよび第2プレッシャプレート71間には、クラッチアウタ49に相対回転不能に係合される単一のクラッチディスク73が配置されるので、第2プレッシャプレート71の操作ストロークを最小限として、レバー比を稼ぎ、クラッチ操作荷重をより小さくすることができる。
また第1摩擦クラチ45が備える駆動側および被動側クラッチディスク53…,54…の内径、ならびに第2摩擦クラッチ46が備えるクラッチディスク73の内径よりも小径にトルクカム機構47が構成されているので、第1および第2摩擦クラッチ45,46を軸方向により近接させて配置することが可能となり、クラッチ装置Cをその軸方向にコンパクト化することができる。
また第2摩擦クラッチ46を動力遮断状態とするためのクラッチレリーズ機構87は、第2プレッシャプレート71に連結されるリフタプレート88を、第2摩擦クラッチ46を含むクラッチ装置C全体およびクランクシャフト11の一端部を覆うようにしてクランクケース12に締結されるカバー92に回動可能に支承されたリフタ軸91の回動に応じてカバー92側に牽引すべく構成されるものであり、上述のように、クラッチ操作荷重が小さくてすむことによりカバー92にかかる負荷を軽減することが可能であり、カバー92の厚みを増したり、補強リブを多くして強度を増大することを不要とし、カバー92の軽量化を図ることができる。
しかもトルクカム機構47は、第1プレッシャプレート51および第2クラッチセンタ70間の相対回転位相差を元に戻す側に第1プレッシャプレート51および第2クラッチセンタ70を付勢するトーションばね79を備えるものであり、第1プレッシャプレート51および第2クラッチセンタ70の相対位置をトーションばね79で初期位置に戻すようにしてクラッチ作動応答性を高めることができる。
さらにトルクカム機構47は、第1プレッシャプレート51および第2クラッチセンタ70にそれぞれ固定されて相互に対向する一対のカムプレート76,77と、それらのカムプレート76,77間に介装される球体78…とを備えるものであり、両カムプレート76,77の相互に対向する面には、メインシャフト36からエンジンEのクランクシャフト11側へのトルク伝達時に発揮する第1プレッシャプレート51を第1受圧板部50a側に押圧する推力が、前記クランクシャフト11からメインシャフト36側へのトルク伝達時に発揮する前記推力よりも小さくなるようにして球体78…に接触する第1カム面85a,86aおよび第2カム面85b,86bがそれぞれ形成されるので、エンジンブレーキ時にメインシャフト36側からクランクシャフト11側へのバックトルクを低減することができる。
図8は本発明の第2実施例を示すものであり、第2摩擦クラッチ46′は、クラッチアウタ49と、第2クラッチセンタ70′と、第2クラッチセンタ70′に設けられる第2受圧板部70aに対しての近接離反を可能としつつ第2受圧板部70aに近接する側にばね付勢される第2プレッシャプレート71と、前記クラッチアウタ49に相対回転不能に係合されて第2受圧板部70aおよび第2プレッシャプレート71間に配置される2枚の駆動側のクラッチディスク73,73と、第2クラッチセンタ70′に設けられる円筒部70bに相対回転不能に係合されつつ両クラッチディスク73,73間に挟まれる被動側のクラッチディスク94とを備え、第2プレッシャプレート71は、第2クラッチセンタ70′の円筒部70bに相対回転不能に係合される。
この第2実施例によれば、被動側のクラッチディスク94および駆動側のクラッチディスク73,73間の移動フリクションにより、第2摩擦クラッチ46′の接・断作動が滑らかとなり、第1実施例に比べると、第2プレッシャプレート71の操作ストロークが多少大きくなるものの、クラッチ装置の接・断作動をより滑らかとすることができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
自動二輪車に搭載されたエンジンおよび変速機の横断面図である。 図1の要部拡大図である。 トルクカム機構の縦断面図であって図4の3−3線に沿う断面図である。 第2摩擦クラッチ側のカムプレートおよびトーションばねを図3の4−4矢視方向から見た図である。 第1摩擦クラッチ側のカムプレートを図3の4−4線矢視方向から見た図である。 エンジンから変速機側へのトルク伝達状態での図3の6−6線断面図である。 変速機からエンジン側へのトルク伝達状態での図6に対応した断面図である。 第2実施例の第2摩擦クラッチの一部を示す断面図である。
符号の説明
36・・・出力部材としてのメインシャフト
42・・・入力部材としての被動ギヤ
45・・・第1摩擦クラッチ
46,46′・・・第2摩擦クラッチ
47・・・トルクカム機構
49・・・クラッチアウタ
51・・・第1プレッシャプレート
53,54,73・・・クラッチディスク
70,70′・・・クラッチセンタ
76,77・・・カムプレート
78・・・球体
79・・・トーションばね
85a,85b;86a,86b・・・カム面
87・・・クラッチレリーズ機構
88・・・リフタプレート
91・・・リフタ軸
92・・・カバー
C・・・クラッチ装置

Claims (6)

  1. 入力部材(42)および出力部材(36)間に設けられる第1摩擦クラッチ(45)と、クラッチ遮断操作力を作用せしめるのに応じて動力遮断状態となるようにして第1摩擦クラッチ(45)に隣接配置される第2摩擦クラッチ(46,46′)と、前記入力部材(42)および前記出力部材(36)の相対回転差が生じるのに応じて第1摩擦クラッチ(45)を動力遮断状態から動力伝達状態に変化させるようにして第1および第2摩擦クラッチ(45;46,46′)間に設けられるトルクカム機構(47)とを備えるクラッチ装置において、クラッチアウタ(49)を共通にして第1および第2摩擦クラッチ(45;46,46′)が構成され、前記トルクカム機構(47)が、前記クラッチアウタ(49)内で第1および第2摩擦クラッチ(45;46,46′)間に設けられることを特徴とするクラッチ装置。
  2. 前記トルクカム機構(47)が、第1および第2摩擦クラッチ(45;46,46′)が備えるクラッチディスク(53,54,73)の内径よりも小径に構成されることを特徴とする請求項1記載のクラッチ装置。
  3. 前記第2摩擦クラッチ(46)が、前記クラッチアウタ(49)との相対回転を可能としたクラッチセンタ(70)と、該クラッチセンタ(70)との相対回転を不能とした第2プレッシャプレート(71)と、前記クラッチアウタ(49)に相対回転不能に係合されるとともに前記クラッチセンタ(70)および第2プレッシャプレート(71)間に配置される単一のクラッチディスク(73)とを備えることを特徴とする請求項1または2記載のクラッチ装置。
  4. 前記第2摩擦クラッチ(46,46′)を動力遮断状態とするためのクラッチレリーズ機構(87)を含み、該クラッチレリーズ機構(87)は、前記第2摩擦クラッチ(46,46′)が備える第2プレッシャプレート(71)に連結されるリフタプレート(88)を、前記第2摩擦クラッチ(46,46′)を覆うカバー(92)に回動可能に支承されたリフタ軸(91)の回動に応じて前記カバー(92)側に牽引すべく構成されることを特徴とする請求項2または3記載のクラッチ装置。
  5. 第1摩擦クラッチ(45)が備える第1プレッシャプレート(51)ならびに第2摩擦クラッチ(46,46′)が備えるクラッチセンタ(70,70′)間に設けられる前記トルクカム機構(47)は、第1プレッシャプレート(51)および前記クラッチセンタ(70)間の相対回転位相差を元に戻す側に第1プレッシャプレート(51)および前記クラッチセンタ(70,70′)を付勢するトーションばね(79)を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクラッチ装置。
  6. 前記トルクカム機構(47)は、第1摩擦クラッチ(45)が備える第1プレッシャプレート(51)ならびに第2摩擦クラッチ(46,46′)が備えるクラッチセンタ(70,70′)にそれぞれ固定されて相互に対向する一対のカムプレート(76,77)と、それらのカムプレート(76,77)間に介装される球体(78)とを備え、両カムプレート(76,77)の相互に対向する面には、前記出力部材(36)から前記入力部材(42)側へのトルク伝達時に発揮する前記推力が前記入力部材(42)から前記出力部材(36)側へのトルク伝達時に発揮する前記推力よりも小さくなるようにして前記球体(78)に接触するカム面(85a,85b;86a,86b)がそれぞれ形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のクラッチ装置。
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