JP2005008953A - 機械的かしめ接合用金属板および機械的かしめ接合方法 - Google Patents

機械的かしめ接合用金属板および機械的かしめ接合方法 Download PDF

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Abstract

【目的】金属板を機械的かしめ接合する際に、金型を高寿命化でき、高強度材であっても安定して接合できる機械的かしめ接合手法を提供する。
【構成】ステンレス鋼板またZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を原板とし、その少なくとも片面に潤滑剤含有樹脂塗膜が形成された金属板M,Mを重ねて可動ダイ4上に載置し、パンチ1で塑性変形させながらアンビル3の上面に押し込み、可動ダイ4を横方向に逃がして金属板の上面変形と同時に下面も塑性変形させてロック部を形成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、スポットクリンチ接合,トックス接合等の機械的かしめ接合法に適用でき、接合性に優れた金属板およびその金属板を用いた機械的かしめ接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に金属板の接合方法としては、スポット溶接法が広く採用されている。スポット溶接法は強い接合強度が比較的安定して得られ、かつ生産性に優れた方法である。しかしながら、散りやヒュームが発生したり、油分の燃焼により悪臭を発生させる等、作業環境を悪化させている。しかも、昨今、自動車,家電製品,建材等には塗装鋼板、或いはめっき鋼板に塗装を施したものが多く使用されている。このような塗装を施した鋼板をスポット溶接しようとすると、塗膜に導電性を付与した塗装鋼板しか使用できず、結果的に生産コストが高くなってしまう。
また、他の接合方法として、一般的な溶接法やボルト・ナット等による接合も行われている。しかし、溶接法による金属板の接合では、金属板の種類によって溶接条件等を変更する必要があるばかりでなく、溶接後の金属板表面に酸化スケールが付着するために美観が損なわれることもある。また、ボルト・ナット等による機械的な接合では、金属板に穴あけ工程が必要であるばかりでなく、ボルトやナット等の材料費用が必要になって高コストになる。
【0003】
このため、最近では素材的な制約がなく、しかも簡便な接合法として、スポットクリンチ接合,トックス接合等の機械的かしめ接合法が使用されるようになっている。
スポットクリンチ接合に代表される機械的かしめ接合法は、図1に示されるように、複数の板状材を重ね、ダイ4を背当てにしてパンチ1により局部的に押し込み、上下の板状材を機械的にかしめ接合するものである。
接合に要するエネルギ消費量が少なく、有害ガスの発生や他の環境汚染も少ない。また、各種コーティング材に適用できるばかりでなく、材質や板厚の違いにも対応できるので、自動車,家電製品,建材等の分野に広く使用されようとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
具体的に特開2001−99113号公報において、めっき鋼板やめっき層上に塗膜を形成した塗装鋼板を機械的にかしめ接合することが提案されている。
この技術においては母材鋼板として特定の引張強さ,伸び,加工硬化指数およびランクフォード値を有するものを使用している。所定の機械的特性を有する鋼板を用いことにより外観品質に優れ、接合強度の高い接合部を得ている。しかしながら、機械的かしめ接合においては、加工治具であるパンチにカジリが発生しやすく金型寿命が短いこと、ステンレス鋼に代表されるような高強度材の接合が困難であるという問題点もあった。
そこで、本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、金属板を機械的かしめ接合する際に、金型を高寿命化でき、高強度材であっても安定して接合できる機械的かしめ接合手法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の機械的かしめ接合用金属板は、その目的を達成するため、少なくとも片面に潤滑剤含有樹脂塗膜が形成されていることを特徴とする。
そして、潤滑剤含有樹脂塗膜としては、100℃での弾性率が1000〜60000N/cmのカルボキシル基含有ウレタン樹脂からなり、1〜35質量%の割合で固形潤滑剤粒子を分散したものや、有機ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させたウレタン樹脂であって、樹脂の伸びが200〜1000%,強度が3000〜9000N/cm,強度/伸びの比率が3.0〜36.0である樹脂組成物に、1〜20質量%の固形潤滑剤を分散したものが好ましい。
また、原板たる金属板としては、ステンレス鋼板、或いはZn−Al−Mg系の溶融めっきが施された冷延鋼板を用いることができる。
このような金属板を用いて機械的かしめ接合を行い、美麗で強度の高い接合部を得る。
【0006】
【作用】
本発明者等は、まず、最近使用量が多くなったオーステナイト系ステンレス鋼の代表的鋼種であるSUS304鋼板をかしめ接合する際の、パンチのカジリおよび接合不安定の原因について検討した。
その結果、次のことがわかった。すなわち、SUS304鋼板は軟鋼に比べ高強度であるため、パンチの加圧力を増大しなければ接合できない。このため、パンチへの面圧も高くなって、カジリが発生しやすくなる。また、パンチにカジリが生じることにより、板にパンチが入り難くなり、十分なインターロックが形成されないために接合が不安定になっている。
そこで、本発明は、機械的かしめ接合する素材板として、少なくとも片面に潤滑処理を施した金属板を使用すれば、潤滑処理を施していない金属板を接合する場合と比べてかしめ接合に必要なパンチの加圧力を低減することができ、高強度材の接合でもパンチにカジリを発生されることなく、安定して接合できるものである。
【0007】
【実施の形態】
潤滑性を高める処理としては、潤滑剤を含有した樹脂塗膜を形成することが好ましい。
塗膜としては、接合後、脱脂処理の有無や塗膜を残すか残さないかの違いにもよるが、次の2種の塗膜のうちのいずれかを使用することが好ましい。
アルカリ可溶塗膜としては、100℃での弾性率が1000〜60000N/cmのカルボキシル基含有ウレタン樹脂からなり、1〜35質量%の割合で固形潤滑剤粒子を分散したものである。100℃での弾性率が1000N/cm未満では塗膜強度が不足し、かしめ接合時にカジリが発生して潤滑作用を発揮しなくなる。逆に60000N/cmを超える弾性率では、塗膜の柔軟性が低下して潤滑作用が低下する。また、固形潤滑剤粒子によるかしめ接合性向上効果は、1〜35質量%の固形潤滑剤粒子を分散させるとき顕著になる。しかし、固形潤滑剤粒子を過剰に配合すると、皮膜強度の低下に起因するカジリがかしめ接合時に発生しやすくなる。
【0008】
この塗膜を形成する場合は、下層皮膜としてガラス転移温度0〜20℃のエポキシ変性アクリル樹脂からなる塗膜を形成したものが好ましい。固形潤滑剤粒子としては、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,フッ素樹脂等の合成樹脂粉末や、シリカ,二硫化モリブデン,黒鉛,二硫化タングステン等の無機粉末を使用することが好ましい。
【0009】
アルカリ不溶塗膜としては、有機ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させたウレタン樹脂であって、樹脂の伸びが200〜1000%,強度が3000〜9000N/cm,強度/伸びの比率が3.0〜36.0である樹脂組成物に、1〜20質量%の固形潤滑剤を分散した塗膜が挙げられる。
樹脂の伸びが200%に満たないと、延性不足のため加工時に樹脂塗膜が損傷するため下地の鋼板にカジリが発生する。逆に1000%を超えると塗膜に粘着性が生じ、潤滑性,加工性が低下することになる。
【0010】
樹脂の強度が3000N/cmに満たないと強度不足のため加工時に樹脂塗膜が損傷し、カジリが発生する。逆に9000N/cmを超えると塗膜の凝集力が増加して脆くなり、加工時にカジリが発生しやすくなる。
強度/伸びの比率が3.0に満たないと樹脂塗膜の伸びに対して強度が不足するため加工時に樹脂塗膜が損傷し、素地にカジリが発生する。逆に36.0を超えると樹脂塗膜に局部的に凝集力が過大となる部位が生じ、その部位を起点として加工時に塗膜損傷が生じるためにカジリが発生しやすくなる。
【0011】
塗料中にウレタンと相溶しない合成樹脂粉末を分散させて、その一部を樹脂塗膜より突出させると、厳しい加工を行う際にもカジリを発生させることなく成形加工することが可能となる。合成樹脂粉末の分散量が樹脂組成物に対して1質量%に満たないと潤滑性向上効果は得られず、逆に20質量%を超える過剰量の合成樹脂粉末を配合すると、塗料中への安定な分散が困難になり、ゲル化してしまう。このため、固形潤滑剤として合成樹脂粉末を分散させる場合には、その配合量を1〜20質量%の範囲に、特に塗料の長期安定性を確保するためには1〜10質量%に設定することが好ましい。
固形潤滑剤粒子としては、ウレタンと相溶せずに耐候性に優れた、例えばフッ素樹脂,ポリオレフィン樹脂,スチレン樹脂,塩化ビニル樹脂等の合成樹脂粉末を用いることが好ましい。これらの樹脂は1種または2種以上の混合物として用いてもよい。また、シリカ,二硫化モリブデン,黒鉛,二硫化タングステン等の無機粉末を使用してもよい。
【0012】
なお、いずれの場合も、合成樹脂粉末の大きさとしては、平均粒径0.1〜2.5μmのものを使用することが好ましい。平均粒径が0.1μmに満たないと合成樹脂粉末は樹脂塗膜中に埋没してしまい、滑りが不十分となる。逆に2.5μmを超えると合成樹脂粉末が樹脂塗膜より突出し過ぎてかしめ加工の際に削り取られやすくなって潤滑作用を発揮しなくなる。
合成樹脂粉末の形状には特に制限はない。所定の粒子径に機械粉砕したもの、化学的に或いは機械的に媒体中に分散懸濁させたものでもよい。
無機粉末を添加する場合も、同様の理由からその大きさは、平均粒径0.1〜2.5μmのものを使用することが好ましい。
【0013】
固形潤滑剤が分散された塗料組成物は、常法に従って、必要に応じて表面処理が施された下地金属板表面に塗布され、焼成・乾燥することにより塗膜となる。塗布方法に関しては特段の制約がなく、例えば刷毛,ローラ,ロールコーター,バーコータ,フローコータ,シャワーリング,スプレーのような塗装方法から経済性と生産性を考慮して選択される。下地金属板表面に均一塗膜が得られるように塗装した後、常温乾燥,加熱強制乾燥等で乾燥することによって塗膜が形成される。
下地金属板表面に形成される塗膜は、膜厚を0.2〜5μm未満の範囲に調整することが好ましい。膜厚が0.2μm未満では、塗装金属板に高面圧が加わるかしめ加工条件下でカジリが発生しやすい。逆に、5μmを超える厚膜では、下地金属板が局部伸びの領域まで変形するかしめ接合の場合、下地金属板の変形に追従することで生じる塗膜の内部応力が大きくなって塗膜が剥離しやすくなるため、耐カジリ性が低下する。
【0014】
潤滑剤含有樹脂塗膜を形成する金属板としては、特に限定されない。鋼板のみならず、AlやTi等の非鉄金属板も使用できる。鋼板の場合にあっても、その後の使用態様を考慮すると、耐食性に優れためっき鋼板やステンレス鋼板を用いることが好ましい。
めっき鋼板を用いる場合には、本出願人が開発した耐食性に優れたZn−Al−Mg系の溶融めっきを施したものが好ましい(特開平10−306357号公報)。当該溶融めっき鋼板は、Al:4〜22質量%,Mg:1〜4質量%を含み、必要に応じてTi:0〜0.1質量%,B:0〜0.045質量%,希土類元素,Y,Zr,Siから選ばれた1種又は2種以上を0.002〜0.05質量%を含み、残部が実質的にZnの組成で、Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織のマトリックスに初晶Al相又は初晶Al相及びZn単相が混在した金属組織の溶融めっき層が鋼板表面に形成されている。
【0015】
ステンレス鋼板を用いる場合には、強度および加工性を考慮して、C+N:0.06質量%以下,Si:1.5質量%以下,Mn:2.0質量%以下,Cr:15〜20質量%,Ni:5〜9質量%,Cu:1.0〜4.0質量%,S:0.01質量%以下,残部が実質的にFeからなる鋼板が好ましい。必要に応じてTi:0.5質量%以下,Nb:0.5質量%以下,Zr:0.5質量%以下,V:0.5質量%以下,Mo:3.0質量%以下,B:0.03質量%以下,REM(希土類金属):0.02質量%以下,Ca:0.03質量%以下の1種または2種以上を含むものでもよい。
【0016】
このような金属板には、樹脂塗膜を形成する前に、必要に応じて表面処理を施してもよい。
めっき鋼板、あるいはステンレス鋼板の場合には、通常の方法により、脱脂,酸洗等の表面調整を施した後、化成処理される。これにより、加工品を屋外に施工したときの耐初期発銹性を向上させることができる。化成処理には、通常のクロメート処理を採用することが好ましいが、他の方法でもよい。クロメート皮膜の場合は、Cr換算付着量1〜200mg/mで形成することが好ましい。1mg/m未満のCr換算付着量では耐初期発銹性の向上効果が不十分となる。逆に、200mg/mCr換算付着量では、加工時にクロメート皮膜に歪みが加わると凝集剥離が生じてカジリが発生する場合がある。
【0017】
上記のような、少なくとも片面に潤滑剤含有樹脂塗膜が形成された金属板M,Mを、図1に示すように可動ダイ4上に重ねて載置し、パンチ1で塑性変形させながらアンビル3の上面側に押し込み、可動ダイ4を横方向に逃がして金属板M,Mの上面変形と同時に下面も塑性変形させて図2に示すようなロック部Fを形成する。
上記のような少なくとも片面に潤滑剤含有樹脂塗膜が形成された金属板を機械的かしめ接合すると、金型の寿命を長くできるばかりでなく、美麗で強度の高い接合部を得ることができる。
なお、接合部のかしめ接合強度は、パンチの加圧力が大きいほど、さらには、ダイと金属板との間の潤滑が良くなるほど高くなる。ダイと金属板との間の潤滑を良くするために、速乾性プレス油を使用してもよい。
所望の接合強度に応じて上記条件からより適したものを採用すればよい。
【0018】
【実施例】
実施例1:
板厚1.5mmで、表1に示す化学成分を有し、冷間圧延後、焼鈍・酸洗を施したステンレス鋼板を基材とし、表2に示すアルカリ可溶塗膜を形成した供試材を使用した。
次に、2,2−ジメチロールプロピオン酸,ヘキサメチレンジイソシアネート,アジピン酸,1,4−ブチレングリコール,エチレングリコール系ポリエステルポリパラフェオールの各成分量を変化させて反応させることにより、酸価,ウレタン結合含有量,弾性率及び流動開始温度が異なるカルボキシル基含有ウレタン樹脂を合成し、このウレタン樹脂に合成樹脂粉末及びシリカ粉末を添加することによりエマルジョン処理液を調合した。
ロールコータを用いてステンレス鋼板に各エマルジョン処理液を塗布し、到達温度120℃で焼付けることにより、表2に示すウレタン樹脂皮膜を形成した。
【0019】
Figure 2005008953
【0020】
Figure 2005008953
【0021】
上記の潤滑剤含有塗膜を形成した供試材を65mm×24mmに剪断し、図1に示すような、パンチ径:5.3mm,パンチR:0.2mmの円筒パンチと、アンビル径:6.0mm,アンビルR:0.2mmのアンビルと可動式4分割タイプのダイを有するスポットクリンチかしめ接合装置にて、2枚の鋼板を十字状にかしめ接合した。なお、パンチの加圧力を4〜6トンの範囲で、図2にJmで示すダイ空胴部高さを1.3mmにして接合を行った。
なお、供試材1〜8は片面のみ非脱膜タイプの潤滑樹脂塗膜を、供試材9は両面に非脱膜タイプの潤滑樹脂塗膜を形成したものである。供試材10は粘度4mm/Sの揮発性プレス油を塗布しており、供試材11は無潤滑である。
供試材1〜8の潤滑樹脂塗膜の場合、金型と接触する面を潤滑塗膜の面とした。供試材10の揮発性プレス油の場合、金型に潤滑剤を塗油した。
【0022】
接合材について、JIS Z3137に準拠して図3に示すような十字引張試験を行って、接合強度を測定した、接合強度200kgf以上をOKとした。
評価結果を表3に示す。
この結果からもわかるように、パンチの加圧力が4トンではいずれの試験No.においても接合性は不十分であったが、パンチの加圧力を6トンにするといずれも目標の接合強度を満足した。
潤滑剤含有塗膜を施した本発明例である試験No.1〜7と9においては、パンチの加圧力が5トンであっても十分な接合強度が得られており、金型寿命の向上も期待できた。これは、パンチにカジリが生じ難いことと、金型(パンチ,アンビル)と供試材の間の滑り性がよいために水平方向に材料が流れ易く、図2に示すような2枚の鋼板でのロック部が形成されやすくなることによると考えられる。
なお、パンチの加圧力を6トンにしたときの金型寿命は、本発明例であるNo.1〜7と9においては10万ショットの連続加工が可能であった。これに対して比較例である試験No.8,10では5000ショット、試験No.11では100ショットで金型のカジリに起因すると思われる「低部残留板厚」(図2でSTとして表示)が大きくなって、目標の接合強度が得られなくなる。
【0023】
Figure 2005008953
【0024】
実施例2:
実施例1と同様に、板厚1.5mmで表1に示す化学成分を有し、冷間圧延後、焼鈍・酸洗を施したステンレス鋼板を基材とし、表4に示すアルカリ不可溶塗膜を形成した供試材を使用した。
かしめ接合条件,評価方法も実施例1と同じで行った。表5にかしめ接合結果を示す。
【0025】
Figure 2005008953
【0026】
Figure 2005008953
【0027】
実施例1と同様に、パンチの加圧力が4トンではいずれの試験No.においても接合性は不十分であったが、パンチの加圧力を6トンにするといずれも目標の接合強度を満足した。
潤滑塗膜を施した本発明例である試験No.1〜5,7,9,10,15においては、パンチの加圧力が5トンであっても十分な接合強度が得られており、金型寿命の向上も期待できた。
なお、パンチの加圧力を6トンにしたときの金型寿命は、本発明例である試験No.1〜5,7,9,10,15においては10万ショットの連続加工が可能であった。これに対して比較例である試験No.6,8,11〜14では5000ショットで金型のカジリに起因すると思われるST(図2参照)が大きくなり、目標の接合強度が得られなくなった。
【0028】
実施例3:
板厚1.5mmで表6に示す化学成分を有し、冷間圧延後に焼鈍し、Zn−6%Al−3%Mgの組成からめっき層を90g/mm付着させた溶融めっき鋼板を基材とし、表2に示すアルカリ可溶塗膜を形成した供試材を使用した。
かしめ接合条件,評価方法は実施例12準じるが、パンチ加圧力を2〜4トンで行った。
表7にかしめ接合結果を示す。
【0029】
Figure 2005008953
【0030】
Figure 2005008953
【0031】
パンチの加圧力2トンではいずれの試験No.においても接合性は不十分であったが、パンチの加圧力を4トンにするといずれも目標の接合強度を満足した。
潤滑塗膜を施した本発明例である試験No.1〜7,9においては、パンチの加圧力が3トンであっても十分な接合強度が得られており、金型寿命の向上も期待される。
なお、パンチの加圧力を4トンにしたときの金型寿命は、本発明例である試験No.1〜7,9においては30万ショットの連続加工が可能であった。これに対して比較例である試験No.8,10では15000ショットで金型のカジリに起因すると思われるST(図2参照)が大きくなり、目標の接合強度が得られなくなった。
【0032】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、金属板の少なくとも片面に潤滑剤含有樹脂塗膜が形成されているので、かしめ加工に用いる金型の高寿命化やパンチ加圧力の低減が可能となるので、ステンレス鋼のような高強度材料においても高品質のかしめ接合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スポットクリンチ方式による機械的かしめ接合方法を説明する図
【図2】かしめ部構造を説明する断面図
【図3】接合強度(十字引張)の測定方法を説明する図
【符号の説明】
1:パンチ 2:ストッパ 3:アンビル 4:可動ダイ
,M:塗装鋼板 F:ロック部
Jm:ダイ空洞部高さ(mm) ST:底部残留板厚(mm)

Claims (6)

  1. 少なくとも片面に潤滑剤含有樹脂塗膜が形成されていることを特徴とする機械的かしめ接合用金属板。
  2. 潤滑剤含有樹脂塗膜が、100℃での弾性率が1000〜60000N/cmのカルボキシル基含有ウレタン樹脂からなり、1〜35質量%の割合で固形潤滑剤粒子を分散したものである請求項1に記載の機械的かしめ接合用金属板。
  3. 潤滑剤含有樹脂塗膜が、有機ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させたウレタン樹脂であって、樹脂の伸びが200〜1000%,強度が3000〜9000N/cm,強度/伸びの比率が3.0〜36.0である樹脂組成物に、1〜20質量%の固形潤滑剤を分散したものである請求項1に記載の機械的かしめ接合用金属板。
  4. 金属板が、ステンレス鋼板である請求項2または3に記載の機械的かしめ接合用金属板。
  5. 金属板が、Zn−Al−Mg系の溶融めっきが施された冷延鋼板である請求項2または3に記載の機械的かしめ接合用金属板。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の金属板を用いて機械的かしめ接合を行うことを特徴とする機械的かしめ接合方法。
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