JP4100080B2 - リチウムシリケート系潤滑処理鋼帯 - Google Patents

リチウムシリケート系潤滑処理鋼帯 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑処理鋼帯、特に化成処理性、接着性に優れた潤滑処理鋼帯に関する。さらに詳述すれば、本発明は、熱延鋼帯または冷延鋼帯を母材鋼帯とした場合に、化成処理性、接着性が確保でき、かつ、良好なプレス成形性、耐型カジリ性が発現される潤滑処理鋼帯に関する。
【0002】
【従来の技術】
潤滑処理を施した鋼帯を活用することにより、
・金型損耗の抑制による金型寿命の延長を図ることが可能、
・金型焼き付きの防止が可能となれば、金型に施している硬質皮膜を形成する表面処理の省略が可能、
・多数回のプレス工程を経て最終形状に仕上げる複雑なプレス工程では、プレス工程の工程数の削減が可能、
であり、生産性の向上とともに、工程数や金型数を削減できるというコストメリットがある。
【0003】
また、表面潤滑を利用すると、絞り成形において、低グレードな材料でも高グレード材と同等の成形性を確保できる。
さらに、昨今は、熱延鋼帯、冷延鋼帯を問わず、各種材料について高張力鋼帯が広く採用されるようになってきている。しかし、高張力鋼帯は本来、成形性が充分でない。そのため、プレス加工時に局部的に非常に高い面圧がかかることによる金型損耗(型カジリ)の問題が顕在化し易いので、潤滑処理により金型損耗を抑制することが求められる。
【0004】
このような理由で、潤滑処理鋼帯を積極的に適用する動きがあり、この動きが今後もますます拡大していくことは必須である。従って、苛酷なプレス条件に絶え、金型焼き付きを防止できるような優れた潤滑皮膜を設けた鋼帯が強く求められている。
【0005】
例えば、自動車車体パネルについて、この動きを説明する。車体パネルは主に冷延鋼帯または熱延鋼帯から製作されるが、これらの鋼帯は、めっき鋼帯に比べて成形性が良好なため、潤滑性が問題視されることはなかった。その上、軟鋼の絞りグレードの高い材料を適用することで良好な加工性が確保できることから、これまでは潤滑処理を必要とすることがなかった。
【0006】
しかし、燃費向上を目的とする車体軽量化に伴って高張力鋼帯の適用が拡大するにつれ、上記のように金型損耗等の問題が起こり易くなり、車体パネル用鋼帯の潤滑処理が求められるようになってきた。さらに、潤滑処理により成形性を確保できると、従来の絞りグレードの高い材料に代わって、より安価な低グレード材料の適用を拡大する要望が生じ、車体パネル用鋼帯に適用可能な潤滑処理の必要性が増大してきている。
【0007】
自動車車体パネル用鋼帯の潤滑処理の場合、耐型カジリ性やプレス成形性を確保するのに十分な潤滑性に加え、プレス成形後に塗装下地処理として施されるリン酸亜鉛処理時に健全なリン酸亜鉛結晶が析出すること(化成処理性)、さらに車体パネルを組み立てる際の接合性、特に、接着性とスポット溶接性、も備えた皮膜を形成することが要求される。つまり、成形工程のみならず、その後に行われる塗装工程、組立て工程を阻害しないことが必要である。
【0008】
プレス成形性が低いめっき鋼帯については、これまでに各種の潤滑処理が検討されてきた。
しかし、裸の熱延鋼帯や冷延鋼帯に施す潤滑処理に関しては、主に、
(1) ミルボンドで代表される有機系の潤滑皮膜を表面に形成する方法、
(2) リン酸亜鉛皮膜を形成するボンデ処理の後、金属石鹸を塗布するボンダリユーベ処理を行うボンデ+ボンダリューベ処理方法、
(3) 潤滑性を付与した高潤滑性防錆油等の油を塗布する方法、
があるにすぎない。しかし、次に述べるように、各方法とも問題があり、熱延または冷延鋼帯をベースにした車体パネルに適した潤滑処理鋼帯が従来は存在しなかったのが現状である。
【0009】
(1) 有機潤滑皮膜:
ミルボンドを代表とする、アルカリ脱膜可能な、潤滑性を備えた有機樹脂皮膜を鋼帯表面に数g/m2の厚さで塗布により形成する方法である。車体パネル用途の場合、この皮膜は、化成処理の前に行われるアルカリ脱脂工程で脱膜されるため、その後の化成処理や塗装に問題を生じないので、良好な化成処理性、塗装性を確保することができる。
【0010】
しかし、ミルボンド等の有機潤滑皮膜は、軟質なため、温度が比較的低い領域では優れた潤滑性を発現するが、プレス加工変形と表面摩擦によって材料温度が100 ℃以上にも達する極めて苛酷なプレス条件下では、高温化に伴って皮膜が軟質化し、皮膜の強度が不足するため、充分な潤滑性や加工性が得られない。
【0011】
また、ミルボンド等の有機皮膜では、良好な潤滑性を確保するには、1.0 g/m2以上の付着量が必要となる。そのため、加工時に皮膜が剥離してプレスかすが発生し易く、これが金型やプレス品に付着して、加工後の表面汚染、表面欠陥の原因になり、生産性に支障をきたしたり、外観不良を発生させる。また、この有機潤滑皮膜に直接接着剤を塗布する場合、接着剤との相性が悪く、接着性に難点がある。
(2) ボンデ+ボンダリューベ処理(以下、ボンデ処理):
鋼帯上に数g/m2の塑性加工用のリン酸亜鉛皮膜を形成するボンデ処理と、その上層に金属石鹸を数g/m2の厚さで塗布するボンダリューベ処理を組み合わせた処理方法である。
【0012】
この処理方法は、下層が無機系皮膜であるため、広い温度域で安定した潤滑性が確保でき、非常に苛酷な加工条件下でも良好な加工性が得られる。しかし、プレス成形においては、ブランキング (打ち抜き) の後でボンデ処理を行い、成形するというバッチ処理が一般的であるため、鋼帯への連続処理は困難である。
【0013】
また、皮膜の付着量が2層合わせて約10 g/m2 と非常に厚いため、成形性は非常に良好であるが、上述したプレスかすの問題が発生する。さらに、プレス成形後の工程との適合性が悪く、そのまま溶接することが困難となる上、塗装を施す際の塗装下地処理ができないという問題もあり、車体パネル鋼帯用には適していない。
(3) 高潤滑性油の塗布:
極圧時の潤滑性を確保するため、極圧剤を添加したり、油の粘度を上げた防錆油を鋼帯表面に塗油する方法である。
【0014】
高潤滑性油は、極圧剤の種類を選定や、油の粘度の規定によって、化成処理性や接着性が良好なものを提供することが可能である。しかし、油は流動性があるため、非常に苛酷な面圧がかかった状態では、油膜切れを起こして金型焼き付きが発生する。従って、プレス成形性の改善効果は、上述したミルボンド処理、ボンデ処理等の固形潤滑処理に比べてどうしても小さくなる。
【0015】
特に、今後、適用拡大が見込まれる高張力鋼帯をプレス成形する際には、材料の耐力が大きく硬いため、従来の軟鋼帯に比較して、変形部での面圧が高くなり、金型焼き付きが発生しやすくなるが、従来から車体パネル鋼帯用に使用されているような高潤滑性防錆油、高潤滑性洗浄油等では、金型焼き付きによる型カジリを全く防止することができない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、昨今の鋼帯への潤滑処理の適用拡大化に伴い、車体パネルのプレス成形後に行われる塗装工程や組立て工程において支障をきたすことのない、多種多様の性能を具備した潤滑皮膜が求められているが、従来は、その要望に充分に応えられるものがなかった。
【0017】
本発明の課題は、少ない付着量で過酷なプレス成形を可能にする優れたプレス成形性を備え、従って、プレスかすの問題が軽減され、かつ車体パネル用鋼帯に適用した場合の成形後の工程に支障を生じない (即ち、化成処理性や接着性を確保できる) 潤滑処理鋼帯を提供することである。
【0018】
めっき鋼帯の場合と異なり、熱延鋼帯や冷延鋼帯の潤滑処理は、プレス成形性も重要であるが、むしろプレス加工時の型カジリの抑制が問題になる。この問題は、高張力鋼の適用拡大に伴ってより重要となる。本発明の別の課題は、この型カジリの問題に対処できる潤滑処理鋼帯を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決するために種々検討を重ねた。
車体パネル用鋼帯の固形潤滑皮膜に要求される性能としては、成形性以外に、化成処理性 (アルカリ脱膜性) 、接着性が重要である。他に、スポット溶接、アーク溶接のような溶接性、塗装密着性、耐食性等も要求されるが、塗装密着性と耐食性は、化成処理性が良好であれば、処理無しの従来の熱延鋼帯および冷延鋼帯と同等になるので、潤滑処理によって劣化しない。
【0020】
溶接性は、めっき等を施していない熱延鋼帯や冷延鋼帯ではもともと良好であり、問題が少ない。特に、プレスかす発生の問題を解決するために付着量を低減し、かつ硬質な無機系主体の潤滑被膜を形成した場合には、摺動に伴う皮膜の剥離が発生しても、金型、プレス品に再付着することが少ないため、溶接性への問題を生じないと考えられる。
【0021】
本発明者らは、成形性、化成処理性、接着性の全てを確保する潤滑皮膜について検討した結果、次のような知見を得た。
・接着性の良好なリチウムシリケートをベースとする皮膜構造は、リチウム量の増大により、化成処理性 (アルカリ脱膜性) が向上する。但し、リチウム量が過剰では、液安定性が劣化する。
【0022】
・成形性向上のために、固形潤滑剤をかなり大量に添加する。ベース皮膜構造のシリケートは潤滑剤の保持にも有効である。潤滑剤の大量添加は化成処理性にも良い影響を及ぼす。しかし、過剰の潤滑剤添加は、処理液の安定性を劣化させる上、シリケート皮膜が潤滑剤を保持できずに皮膜の粉ふき現象を生ずる。また、成形性も低下し始める。
【0023】
・耐型カジリ性の向上のためには、皮膜の硬質化が重要であり、リチウムシリケートをベースとする皮膜は、その意味でも有利である。耐型カジリ性の向上には、広い温度域で良好な摺動性を確保することも重要であり、これは潤滑剤として、ワックス等の有機高分子化合物と金属石鹸とを併用することにより達成できる。特に、高温時の潤滑性を確保することが耐型カジリ性の向上に必要であるが、それが金属石鹸により達成される。また、有機高分子化合物は、融点100 ℃以下の低融点のものか、逆に融点300 ℃以上の高融点のものが、高温潤滑性の向上に有効である。
【0024】
・金属石鹸は、化成処理性の向上効果もあり、化成結晶密度を増大させ、従来より緻密な化成処理皮膜の形成が可能となる。
・有機高分子化合物が上記の低融点または高融点のものであると、接着性の向上効果が得られる。
【0025】
・潤滑皮膜の付着量は、少ないと加工性が不十分となり、多いと化成処理性、接着性が劣化する。皮膜形成時の乾燥温度が高いと、皮膜が強固になりすぎ、化成処理性が低下する。
【0026】
ところで、従来にあっても、シリケートを適用した処理皮膜に関する提案はいくつかなされているが、それらは次に述べるように十分とは言えない。
特許第2998790 号、第2953654 号、および第2857989 号公報には、有機樹脂と固形潤滑剤を添加したリチウムシリケート皮膜が開示されている。これらは、皮膜の造膜性と耐食性の向上の目的で有機樹脂の添加を前提にしているが、低付着量でプレス時の金型焼付を防止するためには、有機樹脂添加は好ましくない。有機樹脂は、上述のように、高温時の膜強度の点で問題があり、良好な耐型カジリ性を確保でないためである。さらに、これらの皮膜はアルカリ脱脂や酸性のリン酸亜鉛処理液で除去されないので、化成処理性は著しく悪い。
【0027】
特開平9−253574号公報には、融点が金型温度より低いワックスを適用して潤滑被膜の耐型カジリ性を改善することが開示されている。一方、本発明では、金型温度ではなく、後述のように、接着剤の焼き付け硬化温度を基準に、ワックス等の有機高分子化合物を選定する。この公報にも、化成処理性と接着性を確保するため、潤滑剤としてワックスに金属石鹸を併用することは示されていない。
【0028】
本発明により、潤滑剤を含有するリチウムシリケート皮膜からなる、付着量10〜500mg/mの潤滑皮膜を備えた化成処理性、接着性に優れた自動車用プレス加工用潤滑処理鋼帯が提供される。
本発明の潤滑処理鋼帯は、
(1) リチウムシリケートのLi/Si原子比が0.4〜0.7であり、
(2) 潤滑剤/リチウムシリケートの質量比が0.1〜2.0であり、
(3) 潤滑剤が有機高分子化合物から選ばれた潤滑剤Aと、金属石鹸から選ばれた潤滑剤Bとを、潤滑剤B/潤滑剤Aの質量比が0.3〜5.0となる範囲で含有し、かつ
(4−1) 潤滑剤Aは、融点100℃以下の潤滑剤A1を、潤滑剤Aの総量に対する質量比 (A1/A)=0.20〜1となる量で含むか、または
(4−2) 潤滑剤Aは、融点300℃以上の潤滑剤A2を、潤滑剤Aの総量に対する質量比 (A2/A)=0.20〜1となる量で含む、
ことを特徴とする。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の潤滑処理は、成形性、耐型カジリ性の確保が求められる全ての鋼帯に適用することができる。
【0030】
鋼の種類としては、高張力鋼はもちろん、一般の低炭、極低炭軟鋼でもよく、さらにはステンレス鋼等の合金鋼であってもよい。鋼帯の形態は、熱延鋼帯、冷延鋼帯に限られず、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等の電気めっき鋼帯、溶融亜鉛めっき、溶融亜鉛合金めっき、溶融Zn−5%Alめっき、溶融Al−Znめっき等の溶融亜鉛めっき鋼帯であってもよい。また、表面にクロメート処理、またはボンデ処理等の後処理を施した鋼帯、さらには、その上層に有機樹脂をコーティングした有機複合被覆鋼帯への適用も可能である。
【0031】
ただし、鋼帯が車体パネル用である場合には、熱延鋼帯または冷延鋼帯が好ましく、特に、高張力鋼の熱延鋼帯または冷延鋼帯に本発明を適用した場合に効果が大きい。
【0032】
本発明の潤滑処理鋼帯は、化成処理性、プレス成形性、接着性が要求される用途に使用することが好ましい。具体的には、自動車の車体パネル (外板) および構造部材などであるが、もちろん他の用途に使用することも可能である。
【0033】
本発明では、潤滑被膜の皮膜(形成)成分として、無機化合物であるリチウムシリケートを利用する。リチウムシリケートは、水溶液を塗布して乾燥させるとガラス質の硬質な皮膜を形成することができる。潤滑皮膜をアルカリ脱膜可能にするため、従来のリチウムシリケート皮膜に含有させてきたアクリル樹脂、ウレタン樹脂などの有機樹脂からなる皮膜成分は、実質的に含有させない。従って、皮膜成分はリチウムシリケートのみから構成することが好ましい。
【0034】
リチウムシリケート皮膜は、接着性が良好である。シリケート皮膜は、皮膜表面に多量のシラノール基(Si−OH基)を有し、このシラノール基が接着剤と反応して、接着剤との密着力が向上するためと考えられる。
【0035】
リチウムシリケートは、化成処理性を確保するため、Li/Siの原子比が 0.4〜0.7 、好ましくは 0.5〜0.6 の範囲のものを使用する。この原子比が0.7 を超えると液安定性が劣化し、0.4 未満であると造膜性が高くなりすぎて、非常に強固なシリケート皮膜が形成されるため、化成処理前のアルカリ脱脂液またはその後の酸性のリン酸亜鉛処理液による皮膜溶解性が低下し、化成処理性が劣化する。リチウムシリケートは水溶液状態で市販されており、市販のリチウムシリケートは液の安定化のため一般に 0.4〜0.6 の範囲のLi/Si原子比を有する。必要に応じて、入手したリチウムシリケートの水溶液に水酸化リチウムまたはケイ酸コロイドを添加して、液のLi/Si原子比を調整することができる。
【0036】
リチウムシリケート皮膜は、それだけではプレス成形性が不足するので、これに比較的多量の潤滑剤を添加する。本発明では、潤滑剤として、有機高分子化合物 (潤滑剤A) および金属石鹸 (潤滑剤B) の2種類を併用する。
【0037】
潤滑剤Aの有機高分子化合物は、潤滑剤として機能させるため微粒子状であることが好ましく、これにはワックスおよび樹脂微粒子が包含される。ワックスとしては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、酸化ワックス等の天然または合成ワックスが挙げられる。樹脂微粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン [テフロン(R)]、ポリメタクリル樹脂等の合成樹脂の微粒子が挙げられる。いずれも水分散性のものが好ましい。
【0038】
この種の有機高分子化合物からなる潤滑剤は、これまでもリチウムシリケート皮膜の潤滑性向上に使用されている。リチウムシリケートの皮膜骨格にこのような有機高分子化合物を保持させることで、非常に良好な潤滑性が発揮される。
【0039】
有機高分子化合物は不活性であり、シリケート皮膜中に分散させても、基本的には化成処理時の脱膜性にほとんど影響を及ぼさない。しかし、シリケート皮膜そのものが、アルカリ脱脂液や酸性のリン酸亜鉛処理液への溶解による脱膜性、即ち、化成処理性が充分とはいいきれない。
【0040】
本発明者は、リチウムシリケート皮膜に金属石鹸を含有させると、化成処理性が向上することを見出した。その理由は定かでないが、金属石鹸がアルカリ性または酸性、特に酸性液中で溶解し易いことが関係すると考えられる。
【0041】
また、金属石鹸は、潤滑性、特に、高温下での潤滑性が優れるという特性もあり、シリケート皮膜の成形性、特に、耐型カジリ性の向上効果も期待できる。
本発明で使用できる金属石鹸としては、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、ラウリル酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。中でも、ステアリン酸塩、特にステアリン酸亜鉛が好適である。
【0042】
潤滑剤Aとして使用する有機高分子化合物は、その重合度により融点 (または軟化温度、以下同じ) が変化する。本発明では、次に述べる理由により、融点が100 ℃以下の低融点の有機高分子化合物 (潤滑剤A1) または融点が300 ℃以上の高融点の有機高分子化合物 (潤滑剤A2) を必須成分として使用する。
【0043】
一般に、ワックス等の高分子化合物型の潤滑剤は、融点近傍で優れた潤滑性を発揮する。そのため、特開平9−253574号公報に開示されているように、従来は金型温度の近傍に融点を持つ潤滑剤を採用することが検討されてきた。
【0044】
しかし、本発明のように皮膜成分が硬質で金型温度でも軟化しないリチウムシリケートである場合、潤滑剤の融点が高いと、プレス成形初期の金型温度が上昇していない状況、あるいは発熱が生じていない段階で、軟化・溶融していない潤滑剤が硬質なシリケート皮膜と一緒に削られ、良好な潤滑性の確保が困難となる。硬質なシリケート質皮膜では、融点が金型温度より十分に低い潤滑剤を使用して、金型温度に達する前に潤滑剤が完全に溶融し、流体潤滑効果を発現することにより、シリケート皮膜を保護する方が、潤滑性、特に耐型カジリ性の向上に有利であることが判明した。
【0045】
具体的には、過酷なプレス成形では、板温が150 ℃近傍まで上昇し、金型温度は120 ℃前後に達すると考えられる。従来の考えでは、金型近傍の例えば120 ℃前後の融点を有する潤滑剤を採用して加工性を確保することになる。しかし、本発明者が試験したところ、融点120 ℃の潤滑剤より、より低融点の潤滑剤を使用する方が好ましい結果となった。融点が100 ℃以下、好ましくは70℃以下の低融点 (つまり、低分子量) の潤滑剤A1を採用することで、完全な流体潤滑効果が発現でき、潤滑性、耐型カジリ性の更なる向上が可能となる。
【0046】
潤滑剤Aとして用いる高分子化合物の融点は、潤滑性だけでなく、リチウムシリケート皮膜の接着性にも大きく影響することが判明した。
ワックス等の高分子化合物は不活性であるため、基本的に接着剤とは反応しない。構造用の接着剤は、焼き付けにより硬化させて必要な接着性を確保する。しかし、シリケート皮膜が多量の高分子化合物 (潤滑剤) を含有していると、焼き付け硬化時に、潤滑皮膜表面に溶融した潤滑剤が濃化し(ブリード現象という)、潤滑皮膜表面に存在するシラノール基が減少するため、接着性が劣化する可能性がある。この問題は、ブリードした潤滑剤を焼き付け硬化時に接着剤に溶け込ませるか、または全くブリード現象を生じさせないことで解決できる。
【0047】
つまり、高分子化合物の融点が接着剤の焼き付け硬化温度より十分に低い場合には、ブリードした潤滑剤の溶け込みが可能であり、逆に該温度より十分に高い場合には、ブリード現象が起こらない。いずれの場合も、高分子化合物による接着性の劣化が防止され、リチウムシリケート皮膜が持つ優れた接着性を生かすことができる。
【0048】
自動車車体パネルでは、接着剤は塗装焼き付け時に硬化させることが一般的であるので、硬化温度は、塗装焼き付け温度の170 ℃近傍となる。製造上や部位での温度バラツキを想定すると焼き付け温度範囲は 150〜210 ℃程度である。
【0049】
従って、接着性を確保するため、本発明で潤滑剤Aとして使用する高分子化合物は、上記温度範囲で短時間のうちに完全に溶融するように融点が100 ℃以下の低融点のもの (A1) であるか、上記温度範囲では全く溶融しないように融点が300 ℃以上の高融点のもの (A2) とする。
【0050】
潤滑剤の総量(AとBの合計量)は、潤滑剤総量/リチウムシリケートの質量比が0.1〜2.0、好ましくは0.5〜1.5の範囲となるようにする。これらの範囲内では潤滑処理鋼帯の加工性、化成処理性が改善された上で、接着性の確保も可能となる。上記質量比が2.0を超えると、成形性改善効果が飽和してしまうか、むしろ皮膜の脆弱化に伴い、成形性が劣化傾向となるとともに、接着性が劣化する。一方、上記質量比が0.1を下回ると、成形性が十分でなくなる。
【0051】
潤滑剤の有機高分子化合物(潤滑剤A)と金属石鹸(潤滑剤B)の割合は、潤滑剤B/潤滑剤Aの質量比が 0.3〜5.0 、好ましくは 0.5〜3.0 の範囲になるようにする。この質量比が5.0 を超えると、金属石鹸分が多すぎ、低温時の摺動性が低下する。また、シリケート中に金属石鹸中の金属イオンが混入し、液中でのシリケートの硬化(液のゲル化)が進み、液安定性が低下する。一方、上記質量比が0.3 未満では、高分子化合物が多すぎ、接着性と化成処理性が低下する。
【0052】
上述したように、潤滑剤Aの有機高分子化合物としては、特に接着性の改善のため、その少なくとも一部として、融点100 ℃以下の潤滑剤A1または融点300 ℃以上の潤滑剤A2を使用する。
【0053】
低融点の潤滑剤A1は、接着性の改善に加え、潤滑性の改善効果もある。その効果を十分に確保するために、潤滑剤A1は、高分子化合物 (潤滑剤A) の総量に対する質量比 (=A1/A) が0.20以上、好ましくは0.30以上となるように配合する。0.20未満では、接着条件と厳しい焼き付け硬化不足の焼き甘の状態、あるいは仮止め状態の乾燥温度の低いプレキュアの条件下では充分な接着強度を確保できない。
【0054】
但し、低融点の潤滑剤だけでは、加工に伴う発熱により、潤滑剤を含んだシリケート皮膜そのものの硬度が低下して、膜強度が劣化するため、耐型カジリ性が低下する恐れがある。従って、高温下でもある程度の皮膜強度を確保するため、100 ℃より高融点の潤滑剤を併用することが好ましい。この意味で好ましいA1/A質量比の上限は0.70である。
【0055】
同様に、高融点の潤滑剤A2を使用する場合も、これを、高分子化合物 (潤滑剤A) の総量に対する質量比(=A2/A)が0.20以上、好ましくは0.30以上となるように配合する。0.20未満では、接着条件と厳しい焼き付け硬化不足の焼き甘の状態、あるいは仮止め状態の乾燥温度の低いプレキュアの条件下では充分な接着強度を確保できない。一方、融点の極めて高い潤滑剤を多く使用すると、潤滑剤が軟化しないプレス初期の比較的低温時の摺動性が低下し、プレス成形性が低下するので、A2/Aの質量比は0.70以下とすることが好ましい。
【0056】
このように、有機高分子化合物の潤滑剤Aとして、本発明では、融点100 ℃以下のA1と融点300 ℃以上のA2の一方または両方を使用することができ、それに融点が 100〜200 ℃の範囲の他の高分子化合物からなる潤滑剤を併用してもよい。
【0057】
化成処理性に関しては、リチウムシリケートのLi/Si原子比= 0.4〜0.7 が良好であることは前述したが、潤滑剤も化成処理性に大きな影響を及ぼすことが判明した。潤滑剤の添加量が多くなると、化成処理性は向上する。これは、潤滑皮膜中のシリケート量が相対的に減少し、アルカリ脱膜性が向上するためと考えられる。潤滑剤における金属石鹸の添加量を多くすると、化成結晶が緻密になり、化成処理性がさらに向上することは前述した。
【0058】
本発明に係る潤滑処理鋼帯は、リチウムシリケート水溶液中と潤滑剤を分散させた処理液を鋼帯表面に塗布し、塗膜を乾燥させることにより製造される。潤滑剤を分散保持したシリケートからなる潤滑皮膜は、乾燥中に乾燥ゲル状態からガラス質に変化する。潤滑皮膜は、鋼帯の片面または両面のいずれに形成してもよい。
【0059】
処理液は、市販または合成したリチウムシリケート (ケイ酸リチウム) の水溶液のLi/Si原子比を必要により調整した後、これに本発明で用いる2種類の潤滑剤AおよびB (有機高分子化合物および金属石鹸) を添加し、均一に分散させることにより調製できる。形成される潤滑皮膜の防錆性を確保するため、加工性、接着性、化成処理性を損なわない範囲で、例えばアミン系等のインヒビター (腐食抑制剤) を処理液に添加することも可能である。
【0060】
処理液の塗布方法は、所定付着量の潤滑皮膜と乾燥温度が確保できれば、特に問わない。具体的な塗布方法としては、処理液をスプレーし、所定付着量にロールで絞るシャワーリンガー法、ロールでコーティングするロールコート法等があげられる
潤滑処理鋼帯の潤滑皮膜の付着量 (リチウムシリケートと潤滑剤の合計量、両面に形成する場合には片面当たりの量) は10〜1000 mg/m2、好ましくは 100〜500 mg/m2 の範囲である。付着量が10 mg/m2未満では、高潤滑性防錆油なみの成形性の確保が困難であり、1000 mg/m2超では、皮膜が厚すぎて、接着性試験で皮膜内の凝集破壊が生じ、アルカリ脱脂による脱膜も不充分となるため、化成処理性が低下する。100 mg/m2 以上では、成形性に優れるミルボンド以上の成形性を確保できる。500 mg/m2 以下では、冷延鋼帯と同等の化成処理性が確保できる。
【0061】
乾燥温度は化成処理性と接着性に影響を及ぼす。乾燥温度は板温で200 ℃以下、特に120 ℃以下にすることが好ましい。乾燥時の板温が200 ℃を超えると、潤滑剤Aの高分子化合物が溶融して表面にブリードし、皮膜表面のシラノール基を減少させるため、接着性が低下する。また、200 ℃を超える温度では、シリケートの硬化(脱水縮合) 反応が進行して、シリケート皮膜が強固になりすぎ、アルカリ性と酸性のいずれの液でも溶解しにくくなり、化成処理性が劣化する。乾燥温度の下限は、皮膜が乾燥すれば特に問題はなく、温風ドライヤー乾燥で対応可能である。
【0062】
【実施例】
以下、実験データを用い、本発明の骨子となる皮膜構成について説明する。いずれの例でも、リチウムシリケート皮膜は、市販のリチウムシリケート液をベースに使用し、Li/Si比率の微調整はケイ酸コロイドおよび/または水酸化リチウムを配合することで行った。処理液の塗布はいずれもロールコート法により鋼板の両面に行った。
【0063】
(アルカリ脱膜性)
日本鉄鋼連盟規格における自動車用冷延鋼板JSC 270D (板厚=0.8 mm) に、リチウムシリケート中のLi/Si原子比を変化させた、潤滑剤を含有しないシリケート皮膜(付着量=200 mg/m2)を形成した。処理液の塗布後の乾燥は40℃で3分間行った。
【0064】
この潤滑処理鋼板をアルカリ脱脂に供して、アルカリ脱膜性を評価した。使用した脱脂液は、自動車鋼帯向け化成処理液PB-L3020の前処理用のFC-4420(日本パーカライジング社製)であり、濃度は18 g/lであった。アルカリ脱脂は、40℃で3分間の浸漬により行い、脱脂前後のSi量(蛍光X線でのSiの強度)の差からアルカリ脱脂除去率を求めた。
【0065】
脱脂除去率=(脱脂前Si強度−脱脂後Si強度)/(脱脂前Si強度)
その結果を図1に示す。図1から、リチウムシリケート中のLi原子比が高くなるとアルカリ脱膜性が向上することがわかる。Li/Si原子比が0.4 以上で約3/4が脱膜可能となり、良好な脱膜性の確保が可能となり、この原子比が0.5 以上では100 %脱膜可能となる。Li/Si原子比が0.7 以下であれば液安定性が確保でき、0.6 以下では液安定性はより向上する。
【0066】
本試験は、潤滑剤を含有しないリチウムシリケートについてアルカリ脱膜性を検討したが、潤滑剤を添加しても同様の傾向が得られる。
(成形性)
(1)プレス成形性
本試験では、潤滑剤の配合量とプレス成形性との関係を検討する。
【0067】
Li/Si原子比=0.6 のリチウムシリケート溶液に潤滑剤A、Bを添加した処理液を、前記と同じ冷延鋼板JSC 270D (板厚=0.8 mm)に塗布し、最高到達板温が70℃になるように乾燥させて、リチウムシリケート皮膜量150 mg/m2 の潤滑皮膜を形成した。
【0068】
使用した潤滑剤は、高分子化合物(潤滑剤A)が融点120 ℃の水分散性ポリエチレンワックス、金属石鹸(潤滑剤B)がステアリン酸亜鉛であり、A/Bの質量比は1に固定して、潤滑剤量 (A+Bの総量) を変化させた。従って、潤滑皮膜の付着量 (シリケート+潤滑剤) も変動した。
【0069】
得られた潤滑処理鋼板を用いて、図2に示す条件で円筒深絞り試験を実施し、プレス成形性を評価した。試験鋼板には、一般防錆油 (Nox-Rust 550HN: パーカー興産社製) 2 g/m2を塗布した。
【0070】
比較例として、下記(a) 〜(c) の潤滑処理を施した同じ鋼板についても同様に円筒深絞り試験を実施した。
(a) 高潤滑性防錆油:プレトンR860(塗油量2g/m2, 杉村化学社製)、
(b) ミルボンド:MC560J(塗布量1.2 g/m2、日本油脂社製)、
(c) ボンデ+ボンダリューベ処理:ボンデ処理PB-181X (付着量6g/m2) →ボンダリューべ処理LUB-235 (付着量6g/m2)(共に日本パーカライジング社製)。
【0071】
潤滑性は、成形限界しわ抑え圧により判定し、結果を図3に示す。潤滑性が高潤滑性防錆油(プレトンR860) と同等以上を合格とし、ミルボンド(MCJ560J)と同等以上であれば好適である。
【0072】
図3より、潤滑剤/シリケートの質量比が0.1 以上で合格、0.5 以上で好適な成形性が確保できることが判る。この質量比が1.5 以上になると成形性が劣化しはじめ、2.0 超ではミルボンドより成形性が劣る。
【0073】
(2)耐型カジリ性
本試験では、潤滑剤A (高分子化合物) と潤滑剤B (金属石鹸)の配合比率の影響について、極めて面圧が高く、カジリが発現しやすいバウデン試験(付着滑り試験機)により検討する。
【0074】
上記(1) のプレス成形性試験で述べたのと同様に潤滑処理鋼板を作製した。処理液に添加した潤滑剤は、潤滑剤Aが融点120 ℃の水分散性ポリエチレンワックス、潤滑剤Bがステアリン酸亜鉛と、上記試験と同じであったが、本試験では、潤滑剤B/潤滑剤Aの質量比を変化させた。潤滑皮膜中のリチウムシリケート皮膜量は200 mg/m2 、潤滑剤量 (A+Bの合計量) は200 mg/m2 に固定した。
【0075】
一般防錆油 (Nox-Rust 550HN: パーカー興産社製) 2 g/m2を塗布した後、潤滑処理鋼板をバウデン試験に供した。過酷なプレス条件下で見られる、加工に伴う発熱で金型温度と板温が上昇して型カジリが発現し易くなる状況をシミュレートするため、室温に加えて、板温を150 ℃に設定したバウデン試験も試験を行った。試験条件は図4に示す。
【0076】
前記と同様、比較材として高潤滑性防錆油(プレトンR860) 、ミルボンド(MC560J)、ボンデ+ボンダリューベ処理(PB-18X+LUB-235)も試験に供した。耐型カジリ性は、30往復させた際の摩擦係数により評価した。判定基準は、室温時の高潤滑性防錆油の摩擦係数(=0.19)以下を合格とし、最も耐型カジリ性に優れるボンデ+ボンダリューベと同等の摩擦係数(=0.05)であれば好適とした。
【0077】
結果を図5 (板温: 室温) および図6 (板温:150℃) に示す。
図5から、ワックス比率が高いと室温時の潤滑性に優れ、ステアリン酸亜鉛/ワックス (=潤滑剤B/潤滑剤A) の質量比≦5.0 で高潤滑性防錆油と同等の潤滑性が確保でき、最も耐型カジリ性に優れるボンデ+ボンダリューベと同等の潤滑性を確保するには、上記質量比≦3.0 が必要であることが判る。
【0078】
図6から、高温時(=150 ℃)では、ステアリン酸亜鉛の質量比が小さくなりすぎると、潤滑性が著しく低下することが判る。室温時の高潤滑性防錆油と同等の摩擦係数≦0.19を確保するには、上記質量比≧0.3 であり、ボンデ+ボンダリューベと同等の潤滑性を確保するには、上記質量比≧0.5 である。
【0079】
図5、6の対比から、防錆油やミルボンドでは、高温時の潤滑性が著しく低下するが、ボンデ+ボンダリューベは、高温時での潤滑性がほとんど低下せず、極めて耐型カジリ性が優れていることが判る。本発明に従って潤滑剤B/潤滑剤Aの質量比を適正化することにより、高温時でもボンデ+ボンダリューベ処理と同等の潤滑性、即ち、極めて優れた耐型カジリ性が確保できることが判る。
【0080】
(接着性)
潤滑剤A (高分子化合物) として、融点60℃の水分散性ポリエチレンワックスを使用した以外は、前述したプレス成形性試験の場合と同様に潤滑処理鋼板を作製した。即ち、リチウムシリケートのLi/Siモル比=0.6 、リチウムシリケート皮膜量:150 mg/m2 、ステアリン酸亜鉛/ポリエチレンワックス質量比=1であり、潤滑剤/シリケートの質量比を変化させた。
【0081】
接着性試験は、一般防錆油2g/m2(Nox-Rust 550HN:パーカー興産社製)を塗布した試験片と、構造用接着剤のエポキシ系接着剤PV5306(ヘンケル白水社製)とを用いて、図7に示す条件で実施した。防錆油とのなじみの問題が生じる可能性があるため、防錆油を塗油し、室温でスタック状態にして7日間養生期間を取った後、接着剤により接着を行った。
【0082】
比較材は、上記と同様、高潤滑性防錆油(プレトンR860) 、ミルボンド(MC560J)、ボンデ+ボンダリューベ処理(PB-18X+LUB-235)であった。
接着性は接着した試験片のせん断引張り強度により評価した。判定基準は、構造用接着剤で接着強度の低下問題を生じることがあるミルボンド以上の接着強度が確保できる領域を合格とした。また、高潤滑性防錆油を塗油したものと同等以上の接着性が確保できる領域を好適と判断した。
【0083】
結果を図8に示す。成形性の評価結果である図3では、潤滑剤量が多くても、高潤滑性防錆油以上の良好な円筒深絞り成形性は確保できていたが、図8から、潤滑剤量が多くなると、接着強度が低下し、良好な接着性の確保が困難になってくることが判る。
【0084】
すなわら、潤滑剤/シリケートの質量比が2.0 超になると、ミルボンドより接着強度が低下し、接着性に問題が生じることが判る。また、成形性評価(図3)において、ミルボンドと同等以上の成形性が確保できた上記質量比= 0.5〜1.5 の範囲では、図8から接着強度の面でも高潤滑防錆油と同等以上の接着強度が確保でき、好適範囲であることが判る。
【0085】
なお、本接着試験では、冷延鋼板に一般防錆油のみを塗油した無処理材が最も接着性が良好であり、高潤滑性防錆油はやや劣り、ミルボンドとボンデ+ボンダリューベ処理は接着強度がさらに低下している。この結果から、本試験における接着性評価が現状の接着問題をよくシミュレー卜できていることが判る。
【0086】
なお、自動車車体パネルを想定すると、本実施例に使用したようなエポキシ系の構造用接着剤以外に、高防錆スポットシーラー等の接着強度の低いマスチック型接着剤もあるが、本発明の潤滑処理鋼帯では、これらのマスチック型接着剤でも良好な接着性を確保することができる。
【0087】
【実施例1】
表1に示すように、Li/Si原子比の異なる各種リチウムシリケート水溶液を準備する。この水溶液に、高分子化合物の潤滑剤Aとして、水分散性ポリエチレンワックス(融点60℃)または水分散性ポリテトラフルオロエチレン「テフロン(R)]ワックス(融点320 ℃)を、金属石鹸の潤滑剤Bとして、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸ナトリウムまたはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを、それぞれ添加して分散させることにより、潤滑処理用の処理液を調製した。
【0088】
得られた処理液を、次に述べるように、各試験ごとに選定した鋼板の片面に所定の付着量 (シリケート+潤滑剤) になるようにロールコートし、熱風乾燥(板温=50℃) により潤滑皮膜を形成した。
【0089】
比較材として、ミルボンドのMC560J(塗布量1.2 g/m2)で処理した鋼板、ならびに、皮膜成分が、リチウムシリケート(Li/Si原子比=0.4)に、潤滑剤ではない水溶性有機樹脂である水溶性アクリル樹脂をシリケート固形分に対して5質量%添加した樹脂含有シリケート (表1のシリケート欄に「有機」と記した比較材、潤滑剤を同様に配合) である処理液で潤滑処理した鋼板、も併せて評価に供した。
【0090】
作製された潤滑処理鋼板の化成処理性、成形性、耐型カジリ性、耐プレスかす性、接着性を、下記の要領で評価した。それらの試験結果を、処理液の成分 (シリケートはLi/Si原子比) および配合比、潤滑剤/リチウムシリケートの質量比、金属石鹸/ワックス (高分子化合物) の質量比、および皮膜付着量と共に、表1に示す。試験はいずれも○以上が合格である。
【0091】
(化成処理性)
日本鉄鋼連盟規格の590 MPa 級、高降伏比型の冷延鋼板JSC 590R(板厚1.0 mm) に潤滑処理を施した。本試験で高張力鋼板を採用した理由は、高張力鋼板はもともと化成処理性が一般軟鋼に比較し劣化するためである。
【0092】
潤滑処理鋼板のサンプルをアルカリ性脱脂液FC-4420 で脱脂した後、リン酸亜鉛化成処理液PB-L3020(共に日本パーカライジング製)で化成処理を行った。化成処理性は、形成された化成皮膜の外観観察と、結晶成長状態のSEM観察(倍率500 倍)による化成結晶のミクロ的スケ状態の観察により、下記基準によって評価した。
【0093】
化成結晶外観観察 表面SEM観察状況
◎: 化成結晶均一生成; スケ発生面積率≦5%
○: 化成結晶均一生成; スケ発生面積率=5〜10%
△: 化成結晶ムラ有り; スケ発生面積率≦10%
×: 化成結晶ムラ有り; スケ発生面積率>10%。
【0094】
(プレス成形性)
日本鉄鋼連盟規格の軟鋼板JSC 270D(板厚0.8 mm) に潤滑処理を施した。得られた潤滑処理鋼板のサンプルに、一般防錆油を2g/m2塗油した後、前述と同じ円筒深絞り試験(図2参照)を実施した。前述と同様に、評価は成形限界しわ抑え圧により行い、◎がミルボンド以上、○は高潤滑性防錆油以上を基準として判定した。
【0095】
成形限界しわ抑え圧
◎: 375 kN以上
○: 150 kN以上、375 kN未満
×: 150 kN未満。
【0096】
(耐型カジリ性)
日本鉄鋼連盟規格の440 MPa 級、汎用型熱延鋼板JSH 440W(板厚3.2 mm)に潤滑処理を施した。得られた潤滑処理鋼板のサンプル (25×150 mm) に一般防錆油を2g/m2塗油した後、クランクプレス曲げにより型カジリ性を評価した。加工条件と評価方法を図9に示す。しごき率15% (クリアランス2.72 mm)で連続10枚成形した後の、10枚目のサンプルでの正常部残存率を評価した。
【0097】
耐型かじり性が良好なミルボンド(MC560J、塗布量=1.2 g/m2)の同条件での正常部残存率が75%であることから、下記のように、75%以上を合格とし、全く型カジリが発生しないものを最良とした。
【0098】
◎: 正常部残存率100 %
○: 正常部残存率75〜100 %
×: 正常部残存率<75%。
【0099】
(接着性)
日本鉄鋼連盟規格の軟鋼板JSC 270D(板厚0.8 mm) に潤滑処理を施した。得られた潤滑処理鋼板のサンプルに、一般防錆油を2g/m2塗油した後、前述と同じ接着性試験(図7参照)を実施した。その評価基準は、前述同様、以下の通りである。
【0100】
◎: 接着強度≧4.0kN (高潤滑性防錆油以上)
○: 接着強度 3.5〜4.0kN (ミルボンド以上)
×: 接着強度<3.5kN 。
【0101】
【表1】
Figure 0004100080
【0102】
表1から分かるように、本発明に従った潤滑皮膜を形成した場合には、化成処理性、成形性、耐型カジリ性、プレスかす、接着性の全ての面で満足できる潤滑処理鋼板が得られた。
【0103】
リチウムシリケート皮膜に潤滑剤を含有させないか、潤滑剤がワックス (潤滑剤A) または金属石鹸 (潤滑剤B) 単独では、化成処理性と成形性を両立できない。
【0104】
潤滑皮膜の付着量は10〜1000 mg/m2が好ましい。
潤滑剤を添加した系でも、Li/Si原子比が小さいシリケートは、化成処理性を確保できない。
【0105】
金属石鹸添加量が少ないと、プレスかすの発生、耐型カジリ性の劣化、化成処理性の劣化が起こるので、金属石鹸の添加は、プレスかす、耐型カジリ性、化成処理性の確保に有効である。但し、金属石鹸が多すぎると、成形性が確保できない。
【0106】
潤滑剤の総量 (潤滑剤/シリケート質量比) は、多すぎると接着性が確保できず、少なすぎると成形性が確保できず、プレスかす、化成処理性も劣化する。
水溶性有機樹脂をシリケートに添加すると、化成処理性が確保できない。ミルボンドでは、接着性、プレスかすに問題がある。
【0107】
【実施例2】
より厳しい接着条件下における接着性に及ぼす低融点の高分子化合物潤滑剤の影響を調べるため、焼き甘の状態を考慮したアンダーベーク条件での接着試験を行った。
【0108】
日本鉄鋼連盟規格440MPa級・汎用型熱延軟鋼板JSH 440W(板厚1.4 mm) に、Li/Si原子比=0.4 のリチウムシリケート水溶液に潤滑剤を添加した処理液を、実施例1と同様に塗布および乾燥して、下記構成の潤滑皮膜を形成した。潤滑剤のうち、有機高分子化合物 (潤滑剤A) としては、融点60℃および120 ℃の2種類の水分散性ポリエチレンワックスを使用し、金属石鹸 (潤滑剤B) としてはステアリン酸亜鉛を使用した。
【0109】
潤滑皮膜の付着量:250 mg/m2
リチウムシリケート皮膜量: 150 mg/m2
ワックス量:合計50 mg/m2
金属石鹸(ステアリン酸亜鉛)量:50 mg/m2
ポリエチレンワックス (潤滑剤A) は、合計量を50 mg/m2に固定して、融点60℃のワックス(A1)と、融点120 ℃のワックスの割合を変化させた。
【0110】
得られた潤滑処理鋼板の接着性試験は、前述した接着性試験と同様に図7に示す方法で、エポキシ系の構造用接着剤(ヘンケル製、PV5308)を用いて行った。但し、本実施例では、焼き甘のプレキュア状況をシミュレートした150 ℃×10分間焼き付けのアンダーベーク条件と、170 ℃×20分の標準焼き付け条件の2条件で焼き付けを実施した。
【0111】
評価基準は、前述の通り、接着強度がミルボンド以上を合格とし、無処理(一般防錆油2g/m2塗油)と同等以上を好適とした。
接着試験の結果 (接着強度) を、ポリエチレンワックス中の融点60℃の低融点ワックス (A1) の比率 (A1/Aの質量比) との関係として、図10 (アンダーベーク条件) および図11 (標準条件) に示す。
【0112】
図10から、ミルボンドと同等以上の接着性を焼き甘状態のアンダーベーク条件で確保するには、低融点ポリエチレンワックスの比率が0.2 以上必要であり、無処理材と同等以上の接着性を確保するには0.3 以上あればよいことが判る。一方、図11から、標準焼き付け条件では、低融点ポリエチレンワックスを併用しなくてもミルボンドと同等以上の接着性が得られることが判る。
【0113】
また、図4に示したバウデン試験(摺動性試験)により、潤滑処理鋼板の加工性についても調査した。この摺動性試験は、型カジリをより起こし易い150 ℃の板温で実施した。この結果を、やはりA1/Aの質量比との関係として図12に示す。図12からわかるように、低融点ポリエチレンワックスの比率が0.2 より小さいと摩擦係数が高くなり、加工性が低下する。
【0114】
【実施例3】
高融点の有機高分子化合物潤滑剤が、より厳しい接着条件下での接着性に及ぼす影響について、実施例2と同様に調べた。
【0115】
実施例2と同じ鋼板に、Li/Si原子比=0.4 のリチウムシリケート水溶液に潤滑剤を添加した処理液を、実施例1と同様に塗布および乾燥して、下記構成の潤滑皮膜を形成した。潤滑剤のうち、有機高分子化合物 (潤滑剤A) としては、融点320 ℃の水分散性テフロン(R) ワックスおよび融点120 ℃の水分散性ポリエチレンワックスの2種類を使用し、金属石鹸 (潤滑剤B) としてはステアリン酸亜鉛を使用した。
【0116】
潤滑皮膜の付着量:350 mg/m2
リチウムシリケート皮膜量: 150 mg/m2
ワックス量:合計100 mg/m2
金属石鹸(ステアリン酸亜鉛)量:50 mg/m2
ワックス (潤滑剤A) は、合計量を100 mg/m2 に固定して、融点320 ℃のワックス(A2)と、融点120 ℃のワックスの割合を変化させた。
【0117】
得られた潤滑処理鋼板の接着性を、実施例2と同様の方法により、焼き甘のプレキュア状況をシミュレートした150 ℃×10分間焼き付けのアンダーベーク条件で評価した。試験結果を、ポリエチレンワックス中の融点320 ℃の高融点ワックス (A2) の比率 (A2/Aの質量比) との関係として、図13に示す。
【0118】
本例でも、図4に示したバウデン試験により潤滑処理鋼板の加工性について調査し、型カジリをより起こしやすい150 ℃の板温でこの試験を実施した。この試験結果を、A2/Aの質量比との関係として図14に示す。
【0119】
図13から、高融点のテフロン(R) ワックスについても、そのワックス中の比率 (A2/A質量比) が0.2 以上でミルボンド以上の接着性が得られることが分かる。但し、高融点テフロン(R) ワックスの場合、図14から分かるように、比率が0.7 を超えると、摩擦係数が急激に上昇し始める。ワックス全量がテフロン(R) ワックスでも、摩擦係数はなおミルボンド以下であるが、高温時の耐型カジリ性が低下し始めるので、A2/Aの質量比は0.7 以下とすることが好ましい。
【0120】
【実施例4】
潤滑被膜の乾燥温度の影響を調査した。日本鉄鋼連盟規格の590 MPa 級・高降伏比型冷延鋼板JSC 590R (板厚1.0 mm) に、下記内容の潤滑処理液をロールコートし、40〜250 ℃の範囲の各種板温になるよう設定したオーブンで乾燥して、潤滑皮膜を形成した。
【0121】
潤滑被膜の付着量:250 mg/m2
リチウムシリケート:100 mg/m2
(Li/Sl 原子比=0.6)
有機高分子化合物* 潤滑剤:25 mg/m2
(*水分散性ポリエチレンワックス:
融点120 ℃: 15 mg/m2、融点60℃: 10 mg/m2
A1/A質量比=0.4)
金属石鹸(ステアリン酸亜鉛):25 mg/m2
得られた潤滑被膜鋼板を、化成処理性と接着性について試験した。
【0122】
化成処理性は、実施例1に記載したのと同じ方法と判断基準で評価した。
接着性は、実施例2、3と同じ、焼き甘、プレキュアの状況をシミュレートしたアンダーベーク条件での焼き付けにより実施し、同様の基準で評価した。
【0123】
試験結果を、図15 (化成処理性) および図16 (接着性) に示す。
化成処理性については、乾燥温度が120 ℃超で劣化し始め、200 ℃を超えると、合格レベルの化成処理性が確保できないことが判る。接着性についても、乾燥温度の上昇に伴い、接着強度が低下した。アンダーベーク条件では、無処理材と同等レベルの接着性を確保するには120 ℃以下の乾燥温度が必要で、ミルボンド以上の接着性を確保するには乾燥温度を200 ℃以下とするが必要であることが判る。
【0124】
【発明の効果】
本発明によれば、次のような優れた作用効果が得られる。
・自動車用鋼材として広く適用するために必要な化成処理性、接着性が確保できた上で、きわめて良好な成形性が確保できる。
・広い温度域で良好な潤滑性が確保できるため、金型焼き付きを防止できる。
・潤滑剤として金属石鹸と併用する有機高分子化合物 (例、ワックス) を、融点60℃以下の低融点の化合物、または融点300 ℃以上の高融点の化合物を一定割合以上で使用し、さらに潤滑被膜の乾燥温度を200 ℃以下、好ましくは120 ℃以下とすることにより、プレキュアや焼き甘の状況でも良好な接着性を確保することができ、接着の信頼性が高まる。
・乾燥温度を低くすると、化成処理性も良好となる。
【0125】
特に、将来的に自動車用鋼材として適用の拡大が見込める高張力鋼において、より過酷なプレス成形に耐えうるとともに、従来の潤滑処理では実現しえなかった、車体外板や構造用部材等の自動車用鋼板として必須性能である化成処理性、接着性が、簡単な潤滑処理で確保可能となる点において、本発明の工業的貢献度は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルカリ脱脂による脱膜性に及ぼすリチウムシリケートのLi/Si原子比の影響を示すグラフである。
【図2】円筒深絞り成形による成形性評価方法を示す模式図である。
【図3】成形性 (限界しわ抑え圧) に及ぼす潤滑剤/リチウムシリケートの質量比の影響を示すグラフである。
【図4】バウデン試験による耐型カジリ性評価方法を示す模式図である。
【図5】室温で測定したバウデン試験による耐型カジリ性の評価において、摩擦係数に及ぼす金属石鹸/ワックス (潤滑剤B/潤滑剤A) の質量比の影響を示すグラフである。
【図6】板温150 ℃で測定したバウデン試験による耐型カジリ性評価において、摩擦係数に及ぼす金属石鹸/ワックスの質量比の影響を示すグラフである。
【図7】接着性(構造用接着剤)の評価試験方法を示す模式図である。
【図8】接着強度に及ぼす潤滑剤/リチウムシリケート質量比の影響を示すグラフである。
【図9】実施例で採用した耐型カジリ性の評価試験方法および判定方法を示す模式図である。
【図10】アンダーベーク条件での接着性に及ぼす、ワックス中の低融点ワックスの比率 (A1/A質量比) の影響を示すグラフである。
【図11】標準ベーク条件での接着性に及ぼす、ワックス中の低融点ワックスの比率 (A1/A質量比) の影響を示すグラフである。
【図12】板温150 ℃で測定したバウデン試験による耐型カジリ性の評価において、摩擦係数に及ぼすワックス中の低融点ワックスの比率 (A1/A質量比) の影響を示すグラフである。
【図13】アンダーベーク条件での接着性に及ぼす、ワックス中の高融点ワックスの比率 (A2/A質量比) の影響を示すグラフである。
【図14】板温150 ℃で測定したバウデン試験による耐型カジリ性の評価において、摩擦係数に及ぼす高融点ワックスの比率 (A2/A質量比) の影響を示すグラフである。
【図15】化成処理性に及ぼす潤滑皮膜の乾燥温度の影響を示すグラフである。
【図16】アンダーベーク条件での接着性に及ぼす潤滑皮膜の乾燥温度の影響を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 潤滑剤を含有するリチウムシリケート皮膜からなる、付着量10〜500mg/mの潤滑皮膜を備えた潤滑処理鋼帯であって、
    リチウムシリケートのLi/Si原子比=0.4〜0.7、
    潤滑剤/リチウムシリケートの質量比=0.1〜2.0であり、
    潤滑剤が有機高分子化合物から選ばれた潤滑剤Aと、金属石鹸から選ばれた潤滑剤Bとを、潤滑剤B/潤滑剤Aの質量比=0.3〜5.0の範囲で含有し、かつ
    潤滑剤Aは、融点100℃以下の潤滑剤A1を、潤滑剤Aの総量に対する質量比(A1/A)=0.20〜1となる量で含む、
    ことを特徴とする化成処理性、接着性に優れた自動車用プレス加工用潤滑処理鋼帯。
  2. 潤滑剤を含有するリチウムシリケート皮膜からなる、付着量10〜500mg/mの潤滑皮膜を備えた潤滑処理鋼帯であって、
    リチウムシリケートのLi/Si原子比=0.4〜0.7、
    潤滑剤/リチウムシリケートの質量比=0.1〜2.0であり、
    潤滑剤が有機高分子化合物から選ばれた潤滑剤Aと、金属石鹸から選ばれた潤滑剤Bとを、潤滑剤B/潤滑剤Aの質量比=0.3〜5.0の範囲で含有し、かつ
    潤滑剤Aは、融点300℃以上の潤滑剤A2を、潤滑剤Aの総量に対する質量比(A2/A)=0.20〜1となる量で含む、
    ことを特徴とする化成処理性、接着性に優れた自動車用プレス加工用潤滑処理鋼帯。
  3. A2/A質量比=0.20〜0.70である、請求項2記載の潤滑処理鋼帯。
  4. 潤滑皮膜が200℃以下の温度で乾燥されたものである請求項1、2または3記載の潤滑処理鋼帯。
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