JP4062744B2 - 一次防錆性、加工性および溶接性に優れた薄膜処理高潤滑熱延鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜処理高潤滑熱延鋼板に関し、特に、一次防錆性、加工性および溶接性に優れる薄膜処理高潤滑熱延鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車構造材や部品、家電製品等に用いられる鋼板には、高度な加工性が要求されるため、深絞り用冷延鋼板が使用されてきた。ところが、近年、コストダウンの観点から冷延鋼板の代替品として熱延鋼板が使用されるようになってきつつある。しかし、従来の熱延鋼板は、冷延鋼板と比較して深絞り成形性が劣り、上記分野への熱延鋼板の使用が制限されているのが現状である。そのため、熱延鋼板の深絞り成形性の向上が要求されている。ところで、深絞り成形性を向上させるためには、機械的特性として高いラングフォート(r値)を有することが求められる。このような深絞り成形性に優れた深絞り用熱延鋼板を得るためには、鋼板の成分組成、熱処理条件、圧延条件などを制御する方法が一般的である。これらの方法は、例えば、特開昭61−3845号公報、特開平1−1115845号公報等に記載されている。
【0003】
しかし、これらの方法では、いずれも製鋼段階での成分調整が必須であり、また大圧下では圧延ミルの荷重負担が増加してしまい、実施が困難である。さらに、潤滑圧延による方法では、鋼板表面の摩擦係数を低下させるために、より高性能な潤滑圧延油を使用する必要があるため、操業上、熱延後の通板性を低下させる問題を有し、加えて圧延回数の増加により実施が困難である。また、再結晶処理に必要な箱焼鈍等の熱処理等は、製造プロセスを繁雑にし、コストアップをもたらすという問題点がある。
【0004】
そこで、熱延鋼板の表面に有機樹脂組成物を薄膜処理することにより、上記問題点を解決する方法が提案されている。例えば、特開昭51−87461号公報には、無機性塩、有機性塩、アニオン性界面活性剤、消泡剤からなる溶液を塗布する方法が、特開昭53−37817号公報には、有機樹脂および金属石鹸からなる金属加工用表面処理剤が記載されている。さらに、特開昭63−223093号公報には、アクリル系樹脂、防錆剤、はっ水剤からなる塗料組成物が提案されている。
【0005】
また、近年、加工直前の高粘度プレス油の塗油を省略し、脱脂の省略等による作業性向上および作業環境向上を目的として、無塗油で優れた潤滑性能、加工後外観を有する薄膜処理鋼板のニーズが高まっている。ところが、無塗油でのメリットを生かすためには、薄膜処理熱延鋼板の製造時に需要家が鋼板を加工するまでの一次防錆性維持を目的として塗油していた防錆油の塗油をも省略しなければならない。そのため、めっき鋼板の使用、クロメート処理と薄膜処理の組合せ等の各種表面処理を施すことが通例となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、めっき鋼板の使用は、熱延鋼板のコストダウンには全く適用されず、また、クロメート処理と薄膜処理の組合せは製造工程の増加により製造コスト上昇を招いてしまう問題がある。樹脂−クロメート混合型塗料の使用も考えられるが、塗料安定性および廃液処理等の問題がある。また、特開昭51−87461号公報、特開昭53−37817号公報、特開昭63−223093号公報に記載の方法についても、塗油した冷延鋼板程度の一次防錆性では、SSTのような厳しい環境下では要求特性を満足しない。加えて深絞り成形性、張出し加工性も要求特性を満足していない。
【0007】
本発明は、前述の問題点を解決し、塗油した冷延鋼板程度の一次防錆性、加工性、および溶接性に優れる薄膜処理高潤滑熱延鋼板を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
ところで、一次防錆性の向上を目的とした親水性樹脂組成物による薄膜処理において、樹脂組成物からなる薄膜の膜厚は1〜2g/m2 であることが多い。このとき、樹脂薄膜は、一般には図1に示すように表面欠陥が存在せず、表面を完全に被覆している薄膜として表現される。しかし、実際の観察によれば、図2で示されるように、樹脂乾燥物が島状に分布した形態、もしくは図3の顕微鏡写真に示されるように、薄膜の形態をなしてはいるものの、ミクロ的には微細なピンホール様の、薄膜が他部位よりも薄い部分が存在している(図4は白色部の顕微鏡写真である。)。したがって、めっき鋼板やクロメート処理鋼板等の防錆性向上処理を施した鋼板を素材とした場合、この程度の付着量で十分な防錆性の向上が認められるもの、熱延鋼板や冷延鋼板では鋼板自体の防錆性が著しく劣るため、全く防錆性の向上に寄与しない。むしろ防錆油を塗油した熱延鋼板や冷延鋼板の方が防錆性に優れることが多い。これは、防錆油が完全に鋼板表面を被覆しているためである。
【0009】
また、親水性樹脂、特に、水分散性樹脂において、最低造膜温度(以下「MFT」という)前後の塗膜の成膜状態、特に被膜による鋼板表面の被覆率(以下表面被覆率とする)は著しく変化する。MFTより高温で成膜させた場合は、温度上昇に従って成膜性が向上し、表面被覆率が著しく上昇する。本発明者らは、この表面被覆率と防錆性との関係について検討を行った結果、表面被覆率と一次防錆性は密接な関係にあることを明らかにした。
【0010】
すなわち、焼付処理の温度の上昇にともない、親水性樹脂のみの薄膜では表面被覆率が上昇し、鋼板と防錆性低下の原因となる水分との直接接触を低減し、一次防錆性に良好な影響を与える。特に、MFT+150℃以上の焼付け温度においてその向上が著しい。従って、被膜の焼付処理の温度に応じて樹脂のMFTを低下すれば良い。ところが、一般に製造ラインの制約から、焼付処理の温度は100〜150℃であることが多く、一次防錆性を向上させるために必要なMFTは−50〜0℃となってしまう。MFTは、一般にガラス転移温度に一致することが多いため、MFTが低温である場合にはタッキングが発生してしまい、製品のハンドリングが著しく低下してしまうという問題が発生する。また、加工性の観点から、ガラス転移温度40〜90℃の時、最も良好な加工性(深絞り成形性および耐かじり性)を発揮することから、一次防錆性と加工性は両立しないことは明らかである。
【0011】
そこで、本発明者らが種々の検討を行った結果、親水性樹脂組成物に低融点および低分子量炭化水素系ワックス等を添加することで、焼付け時にワックスが比較的短時間・低温度で溶解して表面被覆率を向上させ、この表面被覆率が全表面積に対して80〜100%である場合に、一次防錆性を向上させることを見い出した。さらに、低融点ワックスと比較的高い融点を有するワックスの混合、成膜助剤の添加、防錆剤の添加との組み合わせでより一層の一次防錆性、加工性に優れた薄膜処理高潤滑熱延鋼板が得られる。加えて、溶接性は薄膜処理鋼板と溶接チップ間の樹脂排除時間の長短が溶接性能を著しく変化させる。この樹脂排除時間が短時間である場合に溶接初期抵抗が低抵抗となるが、本発明における低融点ワックスの添加により、樹脂排除時間が低下するため溶接性はむしろ高性能となることを知見した。
【0012】
すなわち、本発明は、前記課題を解決するために、熱延鋼板の少なくとも一方の面に、下記の(a)親水性樹脂、(b)炭化水素系ワックスおよび(c)潤滑剤を含む親水性樹脂組成物を塗布し、焼付後の片面あたりの付着量を0.5〜3.0g/m2 とし、かつ該樹脂薄膜層の表面被覆率を上昇させた一次防錆性、加工性および溶接性に優れた薄膜処理高潤滑熱延鋼板を提供するものである。
<親水性樹脂組成物>
(a)ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の水溶性または水分散性の樹脂であって、ガラス転移温度が40〜90℃である親水性樹脂
(b)融点が40〜90℃、かつ分子量が500〜5000である、水溶性または水分散性の炭化水素系ワックス
前記(a)親水性樹脂の固形分100重量部に対して、5〜50重量部
(c)融点が100〜130℃であるポリオレフィン樹脂分散体からなる潤滑剤5〜20重量部
【0013】
前記親水性樹脂組成物が、さらに、(d)アルコール類および2価アルコール類から選ばれる少なくとも1種の成膜助剤:0.01〜5.0重量部を含むものであると、好ましい。
【0014】
前記親水性樹脂組成物が、さらに、(e)リン酸、モリブデン酸およびリンモリブデン酸のZn塩、Ca塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の防錆剤:1〜20重量部を含むものであると、好ましい。
【0015】
以下、本発明の薄膜処理高潤滑熱延鋼板(以下、「本発明の薄膜処理鋼板」という)について詳細に説明する。
【0016】
本発明の薄膜処理鋼板は、熱延鋼板の少なくとも一面に、親水性樹脂組成物を主成分とする樹脂薄膜層を有するものである。熱延鋼板は、特に制限されず、いずれの熱延鋼板でもよい。例えば、JIS G3131に規定されているSPHC、SPHD、SPHE、あるいは高張力鋼板SPFH等のいずれの熱延鋼板を使用してもよい。また、本発明の薄膜処理鋼板は、樹脂薄膜層を、熱延鋼板の片面のみに有していてもよいし、両面に有していてもよい。
【0017】
樹脂薄膜層を形成する親水性樹脂組成物は、(a)親水性樹脂と、(b)炭化水素系ワックスとを主成分とするものである。
【0018】
親水性樹脂組成物の(a)成分である親水性樹脂は、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の水溶性または水分散性の樹脂である。また、これらには水溶性および水分散性のスチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、フェノール系樹脂、あるいはこれらを主成分とする変性樹脂などでもよい。さらに、本発明において、これらの親水性樹脂は、ガラス転移点が、40〜90℃、好ましくは40〜60℃のものである。ガラス転移点が30℃未満の親水性樹脂を使用すると、高温での潤滑性が低下し、加工後の外観(型かじりおよび薄膜処理層自体のパウダリング)が悪化してしまう、一方、ガラス転移点が90℃を超える親水性樹脂を使用すると、親水性樹脂組成物を成膜させるために焼付温度を高温にしなければならず、加えて十分な潤滑性が発揮されない。
【0019】
また、親水性樹脂組成物の(b)成分である炭化水素系ワックスは、本発明において、樹脂薄膜層の表面被覆率を向上させるための添加剤である。この炭化水素系ワックスは、水溶性もしくは水分散性の炭化水素系ワックスである。この炭化水素系ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、エチレンアクリル酸ワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても用いられる。また、この炭化水素系ワックスは、融点が40〜100℃、好ましくは40〜80℃のものである。融点が40℃未満の炭化水素系ワックスを使用すると、樹脂薄膜層のタッキングが生じ、一方、融点が100℃を超える炭化水素系ワックスを使用すると、十分な表面被覆率が得られず、さらに溶接性も低下する。
【0020】
さらに、この炭化水素系ワックスは、分子量が数平均分子量(Mn)で500〜5000、好ましくは1000〜4000のものである。数平均分子量(Mn)が500未満の炭化水素系ワックスを使用すると、加工後の外観に悪影響を及ぼし、一方、数平均分子量(Mn)が5000を超える炭化水素系ワックスを使用すると、溶融に要する熱量が高くなり、同一の焼付温度でも炭化水素系ワックスが溶融せず、表面被覆率が低下する。
【0021】
親水性樹脂組成物における(b)炭化水素系ワックスの配合割合は、(a)親水性樹脂100重量部に対して、5〜50重量部、好ましくは10〜50重量部の割合である。(b)炭化水素系ワックスの配合割合が、(a)親水性樹脂100重量部に対して、5重量部未満であると、防錆性の向上に必要な表面被覆率が得られず、一方、50重量部を超えると加工後の鋼板にパウダリングが発生し、また、型かじりが発生する。さらに水溶液中の水分散型樹脂と潤滑剤同士が凝集しやすくなるためポットライフが短くなる。
【0022】
さらに、親水性樹脂組成物には、前記の(a)親水性樹脂および(b)炭化水素系ワックス以外に、必要に応じて、(c)潤滑剤、(d)成膜助剤、(e)防錆剤等を配合してもよい。
【0023】
親水性樹脂組成物に必要に応じて配合される(c)潤滑剤としては、水分散型ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂分散体、または金属石鹸が例示され、また、その他一般に潤滑剤として公知のもので、樹脂水溶液に分散するものでもよく、有機硫黄化合物、有機リン化合物等の極圧剤、もしくは二硫化モリブデン、グラファイト等の無機物でもよい。金属石鹸としては、一般に公知のものでよく、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の炭素数8〜22の高級脂肪酸と、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属との塩、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム等が挙げられる。これらの潤滑剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0024】
親水性樹脂組成物に(c)潤滑剤を配合する場合、(c)潤滑剤の配合割合は、親水性樹脂100重量部に対して0.01〜30重量部である。潤滑剤の配合割合が、親水性樹脂100重量部に対して、0.01重量部未満であると、添加しない場合と比較してほとんど潤滑性が変化せずむしろコストアップを招く、一方、30重量部を超えると加工後の鋼板にパウダリングが発生し、型かじりも発生してしまう。さらに、親水性樹脂組成物中の水分散型樹脂と潤滑剤同士が凝集しやすくなるため、ポットライフが短くなる。また、潤滑剤として用いるポリオレフィン樹脂分散体、フッ素樹脂分散体は、融点が100〜130℃の範囲のものが好ましい。融点が100℃未満であれば、高温での潤滑性が低下するおそれがあり、逆に130℃を超えると加工時に十分な潤滑効果を発揮しないおそれがある。
【0025】
また、親水性樹脂組成物に必要に応じて配合される(d)成膜助剤は、表面被覆率の増加を促進させるものであり、例えば、アルコール類、2価アルコール類、エチレングリコールモノアルキルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン等が用いられる。この(d)成膜助剤は、加工性および防錆性の向上に有効であるが、樹脂薄膜中に残留すると、防錆性の劣化を招くおそれがあるため、親水性樹脂組成物に(d)成膜助剤を配合する場合は、親水性樹脂100重量部に対して0.01〜40重量部の範囲の配合割合が好ましい。成膜助剤の配合割合が、親水性樹脂100重量部に対して、0.01重量部未満であると、添加しない場合と比較してほとんど表面被覆率が変化せずむしろコストアップを招き、一方、40重量部を超えると、樹脂薄膜層の焼付け後も薄膜処理層系内に成膜助剤が残留してしまい、防錆性が低下してしまうおそれがある。
【0026】
さらにまた、親水性樹脂組成物に必要に応じて配合される(e)防錆剤は、一次防錆性の向上に有効である。この防錆剤としては、例えば、リン酸、モリブデン酸、リンモリブデン酸のZn,Ca,アンモニウム塩、もしくは一般に防錆剤として公知のものを用いることができる。親水性樹脂組成物に(e)防錆剤を配合する場合は、親水性樹脂組成物100重量部に対して0.01〜50重量部、特に5〜30重量部の配合割合が好ましい。これらの防錆剤は、腐食が進行する過程で鋼板の溶解によって生じる鉄イオンや樹脂薄膜層中のカルボキシル基と反応して、防錆性に寄与する錯塩を形成することにより防錆性を発揮する。金属表面への吸着により効果を発揮する防錆剤や撥水剤のみでは、カルボキシル基が残存している樹脂薄膜層中での水分の透過を防止することができず十分な防錆性を得ることができない。防錆剤の配合割合が、親水性樹脂100重量部に対して0.01重量部未満であると、添加しない場合と比較してほとんど表面被覆率が変化せず、むしろコストアップを招き、一方、50重量部を超えると潤滑性およびポットライフが悪化してしまうおそれがある。
【0027】
本発明の薄膜処理鋼板における樹脂薄膜層は、前記の親水性樹脂組成物を含む塗布液を、予め洗浄された熱延鋼板の片面または両面に塗布して焼付処理して形成される。この樹脂薄膜層の付着量は、片面あたり0.5〜3.0g/m2 、さらに好ましくは0.8〜2.0g/m2 の範囲である。樹脂薄膜層の付着量が0.1g/m2 未満では、十分な潤滑性および一次防錆性を有する薄膜処理鋼板が得られず、3.0g/m2 を超えると溶接性に劣る。
【0028】
親水性樹脂組成物を含む塗布液は、前記(a)親水性樹脂および(b)炭化水素系ワックス、ならびに必要に応じて配合される(c)潤滑剤、(d)成膜助剤、(e)防錆剤等を、ボールミル等により混合して調製される。
【0029】
親水性樹脂組成物を含む塗布液の塗布の方法としては、例えば、ロールコーティング法、スプレー法、フローコーティング法等が挙げられる。また焼付処理は、好ましくは処理開始後5〜20秒後の到達板温で40〜130℃となる軽度の焼付けを行う。焼付処理の温度が60℃未満では、薄膜処理層が十分に熱延鋼板の表面を被覆せず、得られる薄膜処理鋼板の一次防錆性および加工性が劣り、130℃を超えると焼付処理時に潤滑剤が融解して、得られる薄膜処理鋼板の加工性が劣る。
【0030】
本発明の薄膜処理鋼板において、前記親水性樹脂組成物からなる樹脂薄膜層は、熱延鋼板の表面を、好ましくは表面被覆率90〜100%で被覆してなるものである。表面被覆率が80%未満では、防錆性が劣る。本発明において、表面被覆率とは、下記式:
薄膜処理鋼板の銅付着量/(熱延鋼板の銅付着量−塗油熱延鋼板の銅付着量)に従って求められるものであり、薄膜処理鋼板の銅付着量、熱延鋼板の銅付着量および塗油熱延鋼板の銅付着量は、薄膜処理鋼板、熱延鋼板または塗油熱延鋼板を硫酸銅水溶液に浸漬した後、鋼板露出部の銅置換析出量を測定して求められる値である。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例について述べ、本発明をより具体的に説明する。
【0032】
(実施例1〜9、比較例1〜19)
各例において、板厚1.2mmの熱延鋼板(SPHC,SPHD,高張力鋼板)の両面に、表1または表2に示す親水性樹脂組成物をバーコーターにより塗布し、オーブンで焼付けて薄膜処理層を有する薄膜処理鋼板を製造した。このときの焼付温度、得られる薄膜樹脂層の付着量を、表1または2に示す。
なお、表1および表2に示す親水性樹脂組成物を構成する各成分について表3に示した。
次に、得られた薄膜処理鋼板から試験片を採取し、表面被覆率を評価し、さらに、一次防錆性、加工性および溶接性について下記の試験を行った。結果を表3に示す。
【0033】
(1)表面被覆率の評価
硫酸銅水溶液へ浸漬(硫酸銅濃度3%、浴温25℃、浸漬時間40秒)させた後、蛍光X線測定により銅付着量を測定した。この時、親水性塗料を塗布しない熱延鋼板における銅付着量を100%、防錆油を塗油した熱延鋼板における銅付着量を0%として評価した。
【0034】
(2)一次防錆性
試験片についてSST試験を4時間実施した後、試験片を肉眼で観察し、発錆面積率を測定し、一次防錆性を下記の基準で評価した。
点 数 発錆面積率(%)
○ 0〜3未満
△ 3以上〜10未満
× 10以上
【0035】
(3)加工性
a.限界絞り比
エリクセン試験機を用いて、ポンチ径33mm、成形速度60mm/s、しわ押さえ圧1000kgfの条件でL.D.R(限界絞り比)を測定した。
b.加工後外観
エリクセン試験機を用いて、ポンチ径33mm、ブランク径63mm、成形速度60mm/s、しわ押さえ圧1000kgfの条件で深絞り成形後のカップの外観を以下の基準で評価した。
○ かじり・パウダリングの発生が認められない
△ かじり・パウダリングの発生が全面積の1%未満
× かじり・パウダリングの発生が全面積の1%以上
【0036】
(4)溶接性
スポット溶接機を用いて、以下の条件における通電時の1サイクル目の抵抗値(μΩ)を溶接初期抵抗値と定義し、評価した。
電極チップ:CF5mmφ
サイクル :初期50Hz−通電12Hz−保持30Hz
加圧力 :240kg
溶接電流 :8.0kA
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
【表9】
【0046】
表3に示すとおり、本発明の実施例においては、成形加工性に優れた薄膜処理熱延鋼板を製造することができた。
【0047】
【発明の効果】
本発明の薄膜処理高潤滑熱延鋼板は、一次防錆性、加工性、および溶接性に優れるものである。親水性樹脂組成物の表面被覆率を向上させる添加剤として、低融点ワックス、必要に応じて防腐剤、成膜助剤、はじき防止剤、潤滑剤としてポリオレフィン系樹脂、フッ素樹脂分散体および/または金属石鹸を含む水溶性もしくは水分散性の親水性ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエスル樹脂水溶液を塗布することにより、熱延鋼板の表面の表面被覆率を向上させた、図5の顕微鏡写真に示すような薄膜処理層を形成することによって、防錆性が著しく向上し、かつ優れた加工性および溶接性を有する薄膜処理熱延鋼板を容易に製造することが可能となった。さらに、高張力鋼板においても、薄膜処理を施すことのみによって、成形加工性の向上を得ることができた。さらにまた、本発明の薄膜処理高潤滑熱延鋼板の薄膜処理層は、アルカリにより脱膜せず、一次防錆性を確保するための防錆油の塗油が全く必要でないため、後塗装前の脱脂工程を省略することができる利点がある。従って、本発明による生産性および経済的効果は極めて大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の樹脂薄膜について想定されていた理想的な形態を示す図。
【図2】従来の樹脂薄膜の実際の表面形態を示す概念図。
【図3】従来の樹脂薄膜の実際の表面形態を示す図面代用写真。
【図4】従来の樹脂薄膜の実際の表面形態を示す図面代用写真。
【図5】本発明の薄膜処理高潤滑熱延鋼板の表面形態を示す図面代用写真。
Claims (3)
- 熱延鋼板の少なくとも一方の面に、下記の(a)親水性樹脂、(b)炭化水素系ワックスおよび(c)潤滑剤を含む親水性樹脂組成物を塗布し、焼付後の片面あたりの付着量を0.5〜3.0g/m2とし、かつ該樹脂薄膜層の表面被覆率を上昇させた、前記表面被覆率が80〜100%である、一次防錆性、加工性および溶接性に優れた薄膜処理高潤滑熱延鋼板。
<親水性樹脂組成物>
(a)ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の水溶性または水分散性の樹脂であって、ガラス転移温度が40〜90℃である親水性樹脂
(b)融点が40〜90℃、かつ分子量が500〜5000である、水溶性または水分散性の炭化水素系ワックス
前記(a)親水性樹脂の固形分100重量部に対して、5〜50重量部
(c)融点が100〜130℃であるポリオレフィン樹脂分散体からなる潤滑剤5〜20重量部 - 前記親水性樹脂組成物が、さらに、(d)アルコール類および2価アルコール類から選ばれる少なくとも1種の成膜助剤:0.01〜5.0重量部を含むものである請求項1に記載の薄膜処理高潤滑熱延鋼板。
- 前記親水性樹脂組成物が、さらに、(e)リン酸、モリブデン酸およびリンモリブデン酸のZn塩、Ca塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の防錆剤:1〜20重量部を含むものである請求項2に記載の薄膜処理高潤滑熱延鋼板。
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1996
- 1996-03-29 JP JP10339996A patent/JP4062744B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP7455422B2 (ja) | 2019-10-18 | 2024-03-26 | 株式会社新成工業 | 支持具 |
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JPH09267430A (ja) | 1997-10-14 |
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