JP3314606B2 - 潤滑性に優れた亜鉛系めっき鋼板及びその製法 - Google Patents

潤滑性に優れた亜鉛系めっき鋼板及びその製法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車を始めとす
る各種車輛の外板材や建築材の如くプレス成形加工を施
して用いられる亜鉛系めっき鋼板の改質技術に関し、殊
にプレス加工等に必要な潤滑性の改善された亜鉛系めっ
き鋼板およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より自動車用外板材等として用いら
れる鋼板の防錆対策として、電気亜鉛めっき鋼板、溶融
亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、Zn−N
i合金電気めっき鋼板、Zn−Fe合金電気めっき鋼板
などの亜鉛系めっき鋼板が広く活用されている。これら
の亜鉛系めっき鋼板は、プレス形成加工によって自動車
用外板材等の製品形状に加工されるが、これら亜鉛系め
っき鋼板は、めっき処理の施されておらない裸の冷延鋼
板に比べると概して成形性が悪く、加工時に割れを起こ
し易い。そこでこうした欠点の改善策として、めっき
原板自体として軟質で伸びやランクフォード値(r値)
の高い鋼材を使用する、亜鉛系めっき層の表面に硬質
のFe系フラッシュめっきを施して表面の潤滑性を高め
る、亜鉛系めっき層表面に潤滑性の良好なプレス油や
潤滑油を塗布する、といった方法が採用されてきた。
【0003】ところが上記の方法では、軟質で伸びや
r値の高いめっき原板を得るのに、製鋼時におけるC
量、N量の制御や脱ガス処理、Ti等の合金元素の添
加、焼鈍工程での焼鈍温度や時間の制御などに伴う生産
性の低下や素材コストの上昇が避けられず、また上記
のFe系フラッシュめっき法では、安定した潤滑性が得
られるもののその製造に専用の設備が必要になるので、
やはりコストが大幅にアップしてくる。
【0004】また前記の方法は、上記やの方法に
比べると低コストに抑えられるが、流動体を潤滑に利用
する方法であるから、塗布量の不均一や油脂分の蒸発が
避けられず、前記の方法に比べると潤滑安定性に問題
が残される。油脂を用いた潤滑安定性を高めるため、使
用する油脂の粘性を高めたり極圧添加剤の併用なども試
みられているが、これらの方法を採用すると、油脂使用
による他の目的である防錆能が劣化するばかりでなく、
プレス加工後の塗装前処理として行なわれる脱脂が困難
になるという障害が生じてくる。
【0005】従って、の素材鋼板の改質やのFe系
フラッシュめっき、あるいはの潤滑剤使用に代わり、
コストアップや生産性の低下その他の弊害を生じること
なく、簡単な処理で優れた潤滑性を確実に与えることの
できる潤滑性向上技術の開発が求められる。
【0006】ここで、特に自動車用外板材としての潤滑
性改善手段に求められる要件を再整理すると次の通りで
ある。 (1) 通常の防錆油を塗布した状態で優れた潤滑性を示す
こと。 (2) 成形加工後の塗装前処理工程で不都合を起こさない
こと、具体的には、脱脂処理が容易であると共に、安定
したりん酸塩処理性が確保されて良好な塗膜密着性が保
障されること。 (3) 潤滑のための処理が簡単であり、殊にFe系フラッ
シュめっき法に比べて低コストに抑えられること。 他方、亜鉛系めっき鋼板の表面に、様々の目的でNi系
の置換めっきや電気めっきを施す方法も知られている。
【0007】たとえば、亜鉛めっき鋼板にクロメート処
理を施したときに生じる黒変を防止するため、クロメー
ト処理前の亜鉛めっき表面にNi等の金属めっきやNi
塩処理を施す方法(特開平4−350174号、同5−
65665号)が知られている。しかしながらこれらの
方法は、Ni系処理の施された亜鉛系めっき層の上に更
にクロメート処理を施すことを前提としており、潤滑性
の改善とは目的が異なる。しかして亜鉛めっき層の表面
にクロメート処理を施すと、プレス加工後に塗装前処理
として行なわれるりん酸塩処理が行なえなくなるので、
この様な方法を本発明で活用することはできない。
【0008】また、クロメート処理鋼板の型かじり性を
改善するため、亜鉛系めっき層の上にNi置換めっき処
理を施してからクロメート処理を行なう方法(特開平6
−57444号)も知られている。しかしながらこの発
明も、クロメート処理皮膜の欠点を改善するための前処
理である点で上記発明と実質的に変わらず、しかも、型
かじりというプレス金型との摺動時の傷付きを改善する
ため、Ni置換めっき処理によってクロメート層を硬質
化する方法であり、Ni置換めっき層そのものによって
潤滑性を高める技術とは異質である。
【0009】更に、亜鉛系めっき鋼板のスポット溶接性
を高めるため、亜鉛系めっき層の表面を塩化ニッケル溶
液で処理して特定量のNiめっき層を形成する方法も開
示されている(特開平1−96393号等)。しかしな
がらこれらの方法はあくまでもスポット溶接性の改善に
あり、作用効果としては、Ni層によって溶接チップ素
材と亜鉛の合金化反応を抑制し、溶接チップ先端の消耗
を抑えるものであり、亜鉛めっき鋼板の潤滑性向上とそ
れによりプレス成形性を高めるという思想は存在しな
い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、自動
車用外板材等としてプレス成形に付される亜鉛系めっき
鋼板の潤滑性改善に主眼をおき、潤滑のための処理が簡
単で殊に前記Fe系フラッシュめっき法に比べて低コス
トで安定した潤滑性を与えることができ、また通常の防
錆油を塗布した状態で優れた潤滑性を示し、更には、成
形加工後の塗装前処理として行なわれる脱脂処理が容易
であると共に、安定したりん酸塩処理性を保障して優れ
た塗膜密着性を確保できる様な亜鉛系めっき鋼板および
その製法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る潤滑性に優れた亜鉛系めっき鋼板
とは、亜鉛系めっき層の最表層部に、Ni付着量が1〜
1000mg/m2 である硫黄含有Ni置換めっき層が
形成され、あるいは該Ni置換めっき層の表面に、40
℃における粘度が5〜50mm2 /sである油脂を付着
せしめてなるところにその特徴が存在する。
【0012】本発明が適用される亜鉛系めっき層の種類
は特に制限されないが、その特徴がより効果的に発揮さ
れるのは、5〜15重量%のFeを含む合金化溶融亜鉛
系めっき層であり、且つその表面粗度が、中心線平均粗
さ(Ra)で0.5〜1.5μm、1インチ当たりに含
まれる1.27μm以上の大きさのピーク数が100〜
300個であるものである。
【0013】そして上記の様な潤滑性に優れた亜鉛めっ
き鋼板は、亜鉛系めっきの施された鋼板の表面を、Ni
2+濃度が1g/リットル以上、SO4 2- 濃度が1g/リ
ットル以上である水溶液に接触させ、亜鉛系めっき層の
最表層部に硫黄含有Ni置換めっき層を形成し、あるい
は該硫黄含有Ni置換めっき層の表面に、40℃におけ
る粘度が5〜50mm2 /sである油脂を付着させるこ
とによって製造できる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明において、亜鉛系めっき層
の最表層部に形成される硫黄含有Ni置換めっき層は、
Ni2+イオンとSO4 2- イオンを必須成分として含有す
る水溶液から置換析出したものであり、該置換めっき層
中、とりわけその表面に硫黄を含有させることによって
潤滑性を大幅に改善し、プレス成形性等を飛躍的に高め
ている。
【0015】Ni置換めっき層中に硫黄を含有させるこ
とによって潤滑性が高められる機構については、必ずし
も明確にされている訳ではないが、Ni置換めっき層
中、殊にその表面で硫黄が硫化物または硫酸塩化合物と
して存在し、これが成形加工時の成形面との摺動時に極
圧添加剤的作用を発揮し、それにより潤滑性を高めてい
るものと推定している。
【0016】こうした硫黄含有による潤滑性向上効果
は、Ni置換めっき層中に極少量の硫黄を含有させるだ
けで発揮されるが、その効果をより確実に発揮させるに
は、Ni置換めっき層中の硫黄含有量を100〜100
00ppm、より好ましくは500〜5000ppmの
範囲にすることが望ましく、硫黄含有量が極端に少ない
場合は潤滑性改善効果が顕著に現われず、逆に多過ぎる
場合は、析出した置換めっき層の脆化や剥離といった難
点を生じることがある。尚、硫黄含有による効果をより
有効に発揮させるには、Ni置換めっき層における表層
部の硫黄含有率を高めることが望ましく、その様にすれ
ば、硫黄含有によって生じる障害を可及的に抑えつつ、
その表面潤滑効果を最大限有効に発揮させることが可能
となる。
【0017】Ni置換めっき層中の硫黄含有量は、亜鉛
系めっき層の最表層部にNi置換めっき層を形成する際
に使用する処理液中のSO4 2- 濃度や処理温度、処理時
間等を変えることによって容易に調整することができ
る。
【0018】亜鉛系めっき層の最表層部に形成される上
記硫黄含有Ni置換めっき層の付着量は、Niとしての
付着量で1〜1000mg/m2 、より好ましくは3〜
200mg/m2 の範囲とすべきであり、1mg/m2
未満では潤滑性改善効果が殆んど発揮されず、また10
00mg/m2 を超えて過度に多くすることは処理液の
増大によってコストアップを招くばかりでなく、成形加
工の際にめっき剥離を起こし易くなるので好ましくな
い。
【0019】かくして本発明によれば、亜鉛系めっき層
の最表層部に硫黄含有Ni置換めっき層を形成すること
によって潤滑性が著しく高められ、成形型との滑りが良
くなって優れた成形加工性を得ることができるが、該硫
黄含有Ni置換めっき層の表面に、めっき鋼板の防錆と
一層の潤滑性向上を期して油脂を付着させることも有効
である。但しこの油脂付着によって、塗装前処理として
行なわれる油脂分の除去処理が困難となり燐酸塩処理皮
膜等の化成処理膜の付着を阻害する様なことになると、
塗膜密着性が低下して実用にそぐわなくなる。
【0020】ところが、油脂として40℃での粘度が5
〜50mm2 /sの範囲のものを選択使用すれば、上記
の様な弊害を生じることなく、優れた防錆効果と潤滑性
の一層の向上を果たすことができることを知った。しか
して、油脂の粘度が5mm2/s未満のものでは、流動
性が高過ぎるために保管時に油脂の流動が起こって付着
状態が不均一になり、部分的に油切れの部分が生じ、硫
黄含有Ni置換めっき層との相乗的作用による潤滑性向
上効果が安定的に発揮されにくくなり、一方油脂の粘度
が50mm2 /sを超える高粘度のものでは、塗装前処
理工程での油脂の除去が困難になり、燐酸塩処理性が阻
害されて塗膜密着性に悪影響を及ぼす恐れがでてくる。
こうした利害得失を考慮してより好ましい油脂の粘度は
10〜30mm2 /s(at 40℃)の範囲である。
【0021】本発明において、上記硫黄含有Ni置換め
っきの対象となる亜鉛系めっき鋼板としては、電気亜鉛
めっき鋼板、Zn−Ni,Zn−Fe等の合金電気めっ
き鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、Zn−Al溶融めっき鋼
板等に有効であるが、中でも本発明の上記特徴が有効に
発揮されるのとして、Fe含有率が5〜15%である合
金化溶融亜鉛めっきが挙げられる。これは、合金化溶融
亜鉛めっき鋼板表面のめっき層、とりわけその最表面層
が合金化条件によりη相(Feが固溶したZn層)、ζ
相(FeZn13)、δ1 相(FeZn7 )の単一あるい
は複数の相の混合状態となって表面の合金層の状態によ
り摩擦係数が大きく変動するため、実際のプレス現場で
散発的なプレス割れを起こし易いのに対し、本発明の上
記潤滑性改善処理を施すと、こうしたプレス割れを可及
的に阻止することができるからである。
【0022】ちなみに合金化溶融亜鉛めっき層のFe含
有率が5%未満では、合金化反応が表面まで到達せずに
めっき層表面に純亜鉛めっき層が残るため、上記の様な
表面摩擦係数の大きな変動が見られず、本発明で特徴と
する硫黄含有Ni置換めっき層形成による前記効果も、
通常の亜鉛めっき鋼板で発揮される改質効果に止まる。
また、Fe%含有率が15%を超えると、合金化溶融亜
鉛めっき層と素地鋼板との界面に生成する硬くて脆いΓ
相合金層の厚みが大きくなるため、プレス加工時にめっ
き剥離を起こし易くなる傾向が生じてくる。
【0023】尚上記の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含め
て、本発明により硫黄含有Ni置換めっき層が形成され
る亜鉛めっき鋼板の表面粗度は、中心線平均粗さRa
(JIS B0601規定)で0.5〜1.5μm、P
PI[1インチ当たりに含まれる1.27μm以上の大
きさのピークの数:SAE(アメリカ自動車技術者協
会),J911で規定]で100〜300個の範囲であ
れば、本発明による上記潤滑性改善効果が一層有効に発
揮される。
【0024】ここでいうPPIとは、めっき層表面にお
ける長さ1インチ当たりの山および谷のピークの内、そ
の大きさが1.27μm以上であるものの合計個数をい
う。そして、基準とするピークの大きさ「1.27μ
m」をピークカウントレベルといい、ピークカウントレ
ベルを小さくすれば、当然PPI値は増大するが、本発
明では、測定の簡便性と再現性の両面から最も多用され
ており、またSAEでも規定されている「1.27μ
m」をピークカウントレベルと定めた。
【0025】中心線平均粗さ(Ra )が0.5μm未満
でPPIが100個未満では、めっき層表面の粗面化不
足により摩擦係数が増大して滑りが悪くなるばかりでな
く、凹部の容量不足によって油の保持量が減少して高面
圧下で油切れを起こし易くなり、めっき層と金型との間
で焼付きを生じ易くなる傾向が生じ、一方、中心線平均
粗さ(Ra )が1.5μmを超え、あるいはPPIが3
00個を超えると、摺動時の動摩擦係数が次第に上昇傾
向を示す。
【0026】尚、亜鉛系めっき表面を上記の好適表面粗
度にするための手段も特に制限されないが、好ましい方
法としては、例えば、めっき後表面粗度を調整した圧延
ロールにより調質圧延する方法、またはめっき前の鋼板
の粗度を細かくしめっき浴中Al濃度を低めとすること
により合金化溶融亜鉛めっき層自体の粗度をコントロー
ルする方法等が挙げられる。
【0027】次に、上記の硫黄含有Ni置換めっき層を
形成する方法としては、Ni2+濃度が1g/リットル以
上の溶液で亜鉛系めっき鋼板の表面を処理する方法が採
用される。用いる溶液のNi2+濃度が1g/リットル未
満では置換めっき反応が殆んど起こらず、亜鉛系めっき
の表面に1mg/m2 上の付着量のNi置換めっき層が
形成されなくなるからである。処理効率を高めるうえで
より好ましいNi2+濃度は5g/リットル以上である。
【0028】ただしこの溶液は、Ni2+濃度が1g/リ
ットル以上であれば、塩化物、硝酸塩、燐酸塩、酢酸塩
等何でも良い訳ではなく、硫酸塩系の化合物をSO4 2-
濃度で1g/リットル以上含有させることが不可欠であ
り、それによりNi置換めっき層内に硫黄分を硫化物や
硫酸塩化合物として混入せしめ、それによりめっき層表
面の潤滑性を飛躍的に高めることが可能となる。硫黄分
混入による潤滑性改善効果をより短時間の処理で有効に
発揮させるには、該SO4 2- 濃度を5g/リットル以上
とすることが望ましい。尚この溶液は、硫酸塩系の化合
物をSO4 2- 濃度として1g/リットル以上含むもので
あれば、それ以外の成分として塩化物、硝酸塩、燐酸
塩、酢酸塩等が共存していても差し支えない。
【0029】硫黄含有Ni置換めっき層を形成するため
の処理法は特に制限されないが、最も簡単なのは、スプ
レー法、浸漬法など任意の方法で、所定濃度のNi2+
オンとSO4 2- イオンを含む溶液(通常は水溶液)を亜
鉛系めっき鋼板の表面に付着させ、必要により加温処理
することによって置換めっき反応を促進させた後、水洗
・乾燥する方法である。好ましい処理温度は30〜90
℃、処理時間は極短時間でよく数秒〜20秒程度で十分
にその目的を果たすことができる。
【0030】該Ni置換めっき処理の後は、そのままで
製品とすることも可能であるが、先に説明した様に、そ
の表面に適正粘度範囲の油脂を常法に従って付着させて
やれば、該油膜によって防錆効果が与えられるばかりで
なく、潤滑性も一段と高められることになる。
【0031】
【実施例】次に本発明の実施例を示すが、本発明はもと
より下記実施例によって制限を受けるものではなく、前
後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施
することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の
技術的範囲に含まれる。
【0032】実施例 板厚:0.7mm、めっき付着量:60g/m2 、めっ
き層中Fe含有率:11%、表面粗度(Ra ):1.0
μm、PPI:130の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表
面に、表1に示す条件でNi置換めっき処理を施した。
次いで水洗・乾燥後の表面に、粘度:17mm2 /s
(at 40℃)の防錆油(パーカー興産社製「ノック
スラスト550」)を2g/m2 塗布した後、下記の評
価試験を行なった。結果を表1に示す。
【0033】(平面摺動試験) 試験片サイズ:40×250mm 工具 :18×20mmの平頭工具 加圧力 :5kgf/mm2 摺動速度 :300mm/min 摺動長さ :150mm 評価 :引抜き荷重と加圧力から次式によって動
摩擦係数を求め、次式により摺動性を評価した。 動摩擦係数=引抜き荷重(kgf)/[2×加圧力(k
gf)]
【0034】(燐酸塩処理性)自動車仕様の燐酸塩処理
(日本ペイント社製「SD−5000」)を施した後、
めっき表面に形成される燐酸塩結晶の状態をSEMで観
察し、下記の基準で評価した。 ○:燐酸塩皮膜が均一に形成されている △:部分的に燐酸塩皮膜が形成されている ×:燐酸塩皮膜が形成されない
【0035】(めっき密着性)供試材をJIS−5号引
張試験片に加工し、伸び率30%(ゲージ長:50m
m)で引張加工を行なった後、表面をテーピングし、付
着しためっき層を塩酸で溶解してから原子吸光分析によ
りめっき層成分を分析し、めっき剥離量から下記の基準
でめっき密着性を評価した。 ○:剥離量が1g/m2 未満 △:剥離量が1〜2g/m2 ×:剥離量が2g/m2
【0036】
【表1】
【0037】表1からも明らかである様に、本発明の規
定要件を全て満足する実施例では、動摩擦係数、燐酸塩
処理性、めっき密着性のいずれにおいても良好な結果が
得られているのに対し、比較例1では、Ni置換めっき
処理液中のNi2+イオン濃度が不足するためNi付着量
が本発明の規定要件を満足せず、動摩擦係数が高くて満
足のいくプレス形成性が保障されず、また比較例2で
は、Ni置換めっき処理液中のSO4 2- イオン濃度が不
足するためNi置換めっき層内に硫黄成分が混入され
ず、その結果、動摩擦係数が高くてプレス成形性改善効
果が有効に発揮されない。比較例3は、Ni置換めっき
処理時間を長くしてNiの置換付着量を過度に多くした
例であり、めっき密着性劣化の難点が生じている。
【0038】比較例4は未処理の亜鉛系めっき鋼板であ
り、動摩擦係数が高くてプレス成形性を満足できないこ
とが明白である。また比較例5は、従来法に対応するも
のとして実施例1のNi置換めっき処理面に更にクロメ
ート処理を施したものであるが、最表層部をクロメート
皮膜とすることによってNi置換めっき層に期待される
潤滑性改善効果が失われ、動摩擦係数が比較例1,2よ
りもむしろ大きくなっており、燐酸塩処理性も著しく悪
化している。
【0039】次に、表2に示す各種亜鉛系めっき鋼板を
使用し、下記の条件で硫黄含有Ni置換めっき処理を施
した。尚、各亜鉛系めっき鋼板の表面粗度はスキンパス
圧延ロールの表面粗度ならびにスキンパス圧延条件によ
って調整した。 (硫黄含有Ni置換めっき処理) 処理浴 Ni2+濃度 :11g/l SO4 2- 濃度:23g/l 処理方法:スプレー法 温度:60℃ 時間:3秒 その後、水洗・乾燥してから表2に示す各種粘度の油を
塗布し、前記と同様にして、動摩擦係数、燐酸塩処理
性、めっき密着性を評価した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】表2からも明らかである様に、本発明の規
定要件を全て満足する実施例14〜25では、いずれも
動摩擦係数が0.11〜0.14と小さいのに対し、硫
黄含有Ni置換めっき処理を行なっていない比較例6〜
9の動摩擦係数は0.17〜0.25であって、プレス
成形性が劣悪であることが明白である。また、油脂を塗
布しない実施例17の場合でも、同一材料に油脂を塗布
した実施例15〜16に較べて動摩擦係数は僅かに低下
しているだけであり、防錆の観点からすると油脂の添加
は有効であると考えられるが、潤滑性の観点からすると
油脂付着よりも硫黄含有Ni置換めっきの方が格段に優
れた効果を発揮することを確認できる。
【0042】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、亜
鉛系めっき鋼板における亜鉛めっき層の最表層部に、N
i付着量の特定された硫黄含有Ni置換めっき層を形成
することによって、簡単な操作で且つ塗装前処理での不
都合を生じることなく潤滑性を効果的に高めて成形加工
性を改善することができ、またその表面に粘度の特定さ
れた油脂を付着させることにより、燐酸塩処理性や塗膜
密着性の劣化を最小限に抑えつつ防錆能と潤滑性の一層
の改善を図ることが可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 18/00 - 18/54

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛系めっき層の最表層部に、Ni付着
    量が1〜1000mg/m2である硫黄含有Ni置換め
    っき層が形成されると共に、該硫黄含有Ni置換めっき
    層の表面に、40℃における粘度が5〜50mm2/s
    である油脂が付着していることを特徴とする潤滑性に優
    れた亜鉛系めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 亜鉛系めっき層が、5〜15重量%のF
    eを含む合金化溶融亜鉛系めっき層であり、且つその表
    面粗度が、中心線平均粗さ(Ra)で0.5〜1.5μ
    m、1インチ当たりに含まれる1.27μm以上の大き
    さのピーク数が100〜300個である請求項1に記載
    の亜鉛系めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 亜鉛系めっき鋼板の表面を、Ni2+濃度
    が1g/リットル以上、SO4 2-濃度が1g/リットル
    以上である水溶液に接触させ、亜鉛系めっき層の最表層
    部に硫黄含有Ni置換めっき層を形成した後、該硫黄含
    有Ni置換めっき層の表面に、40℃における粘度が5
    〜50mm2/sである油脂を付着させることを特徴と
    する潤滑性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製法。
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