JP2024001900A - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたプレス成形性を有し、優れた塗装後耐食性、一次防錆性を有する鋼板およびその製造方法を提供する。【解決手段】鋼板表面に、下層として付着量200mg/m2以上800mg/m2以下の金属Zn層を有し、上層として平均厚さが20nm以上の酸化物層を有し、酸化物層はZnを30mg/m2以上、Sを1.0mg/m2以上、平均粒子径が5.0μm以下である固形潤滑材を30mg/m2以上1000mg/m2以下含有する。【選択図】図4

Description

本発明は、プレス成形性における摺動性に優れ、かつ、自動車車体として使用される場合に特に重要な性能である塗装後耐食性、および一次防錆性に優れた鋼板およびその製造方法に関するものである。
冷延鋼板および熱延鋼板は自動車車体用途を中心に広範な分野で広く利用され、そのような用途では、プレス成形を施されて使用に供される。また、近年のCO排出規制強化の観点から、車体軽量化の目的で高強度鋼板の使用比率が増加する傾向にある。しかし、特に引張強度(TS)が440MPaを超える高強度鋼板は、強度上昇に伴い、プレス成形時の面圧が上昇するため、また、鋼板の硬さが金型の硬さに近づくため、型カジリが発生しやすいという課題を有している。すなわち、連続プレス成形時に金型の磨耗が激しく、成形品の外観を損なうなど、自動車の生産性に深刻な悪影響を及ぼしている。さらに、そのような高強度鋼板は強度上昇に伴い、材料の伸びが劣る傾向にあるため、プレス成形時に鋼板の破断が起こりやすい。
また、比較的強度の低い鋼板に対しても、部品の一体化や意匠性の向上のため、より複雑な成形を可能とする必要がある。
以上のように、冷延鋼板および熱延鋼板には、更なるプレス成形性の向上が必要である。
冷延鋼板および熱延鋼板のプレス成形性を向上させる方法として、金型への表面処理が挙げられる。広く用いられる方法ではあるが、この方法では、表面処理を施した後、金型の調整を行えない。また、コストが高いといったような問題もある。従って、鋼板自身のプレス成形性が改善されることが強く要請されている。
ところで、近年、自動車の軽量化のために鋼板の薄肉化が進められており、塗装後耐食性への要求も向上している。プレス成形性と同時に、優れた塗装後耐食性を有する鋼板が求められている。また、プレス後の塗装工程までの間に高温多湿な環境でさらされた場合に発錆してしまう場合があり、塗装前の一次防錆性も必要となる。さらに、自動車用鋼板は、プレス成形した後に、溶接、脱脂、化成処理、塗装を施され使用されるため、このような後工程を阻害しないことが同時に重要である。
鋼板自身のプレス成形性を改善させる方法としては、鋼板の表面に潤滑皮膜を形成させる技術が挙げられる。
特許文献1には、アルカリ金属ホウ酸塩と潤滑剤としてステアリン酸亜鉛とワックスの混成物を含有する潤滑皮膜を鋼板上に形成させる技術が記載されている。
特許文献2には、リチウムシリケートを皮膜成分として、これに潤滑剤としてワックスと金属石鹸を加えた物を鋼板上に形成させる技術が記載されている。
特許文献3には、シラノール基あるいは水酸基を有するポリウレタン樹脂を1~15μmの厚さで形成させた、高面圧加工による連続成形性に優れた潤滑処理鋼板が記載されている。
特許文献4には、エポキシ樹脂中に潤滑剤を添加したアルカリ可溶型有機皮膜を鋼板上に形成させる技術が記載されている。
特許文献5には亜鉛系めっき鋼板の表面に、特許文献6には鋼板の表面に平均厚さが20nm以上酸化物層を有する皮膜を形成させる技術が記載されている。
また、本出願人らは、従来の潤滑鋼板よりも優れた潤滑性を有する鋼板として、下層として金属Zn層を有し、上層としてZn、O、S、Cからなり固体潤滑材を含有する酸化物層を有する鋼板を特許文献7および8として出願した。
特開2007-275706号公報 特開2002-307613号公報 特開2001-234119号公報 特開2000-167981号公報 特開2018-172787号公報 特開2018-168421号公報 特開2017-206715号公報 特開2017-206716号公報
しかしながら、特許文献1~4に記載の技術では、含有する潤滑剤等による潤滑効果で潤滑性は発現するものの、高強度冷延鋼板のように面圧が高い部位においては要求特性を満足するものではなかった。さらに塗装後耐食性や一次防錆性は必ずしも要求特性を満足するものではなかった。
特許文献5に記載の技術は亜鉛めっき鋼板の上層に酸化皮膜を形成させたものであり、亜鉛めっき層を付着させるためにコストが高く、スポット溶接の連続打点性が非めっき鋼板よりも劣るという問題があった。
特許文献6に記載の技術は鋼板上に直接酸化皮膜を形成させたために一次防錆性に劣るという問題があった。
また、特許文献7、8に記載の技術では優れた潤滑性を有するが、一次防錆性と塗装後耐食性に劣る場合があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、プレス成形時の面圧が上昇する高強度鋼板および複雑な成形を施される比較的強度の低い鋼板において、プレス成形時の割れ危険部位での摺動抵抗が小さく、面圧が高く型カジリの発生が想定される部位において優れたプレス成形性を有し、塗装後耐食性に優れ、さらには優れた一次防錆性を有する鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
従来は、鋼板表面に被覆した皮膜により鋼板と金型の接触を抑制することで摩擦抵抗を減少させていた。しかし、高強度鋼板のプレス成形における高面圧条件においては、皮膜の磨耗量が増加するため、従来の方法では摺動距離が一定量を超えると十分な効果を得ることはできない。
本発明者らは、特許文献7、8の一次防錆性と塗装後耐食性の両課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、塗装後耐食性と一次防錆性を主に決定しているのは下層の金属Znの付着量であり、一次防錆性は金属Znの付着量が多くなると良好となるのに対し、塗装後耐食性は逆に金属Znの付着量が多くなると劣化することを見出した。更に、一次防錆性と塗装後耐食性とを良好にする限定的な金属Znの付着量領域が存在することを見出した。その付着量領域の金属Zn層の上層に、限定された粒子径の固形潤滑材を含有する特定厚さの酸化物層を形成させた鋼板は、プレス成形性における摺動性、塗装後耐食性、および一次防錆性を有することを確認した。
本発明は、以上の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1] 鋼板表面に、下層として付着量200mg/m以上800mg/m以下の金属Zn層を有し、上層として平均厚さが20nm以上の酸化物層を有し、酸化物層はZnを30mg/m以上、Sを1.0mg/m以上、平均粒子径が5.0μm以下である固形潤滑材を30mg/m以上1000mg/m以下含有することを特徴とする鋼板。
[2] 前記金属Zn層の付着量が200mg/m以上450mg/m以下であることを特徴とする[1]に記載の鋼板。
[3] 前記金属Zn層の鋼板への被覆率が85%以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載の鋼板。
[4] 前記酸化物層には、硫酸基及び水酸基が存在することを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の鋼板。
[5] 前記固形潤滑材がポリエチレン、マイクロクリスタリンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]]~[4]のいずれかに記載の鋼板。
[6] 鋼板に金属Zn層を形成した後に、該鋼板を、硫酸イオンを3g/L以上、Znイオンを3g/L以上および固形潤滑材を0.10g/L以上含有する酸性溶液に1秒以上60秒以下接触させ、その後水洗することを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
[7] 前記酸性溶液は、pHが3以上6以下であり、温度が20℃以上80℃以下であることを特徴とする[6]に記載の鋼板の製造方法。
[8] 前記酸性溶液は、酸化剤を含有することを特徴とする[6]または[7]に記載の鋼板の製造方法。
なお、本発明において、鋼板とは、熱延鋼板および冷延鋼板である。
本発明によれば、プレス成形性に優れた鋼板が得られる。鋼板と金型等との摩擦係数が顕著に低下する。このため、プレス成形時の面圧が上昇する高強度鋼板において、プレス成形時の割れ危険部位での摺動抵抗が小さく、面圧が高く型カジリの発生が想定される部位において優れたプレス成形性を有する鋼板が得られる。さらに、優れた塗装後耐食性と一次防錆性を有する。また、複雑な成形を施される比較的強度の低い鋼板に対して、安定的に優れたプレス成形性を有することになる。
なお、本発明において、「高強度」とは引張強度(TS)が440MPa以上を想定しており、「比較的強度の低い」とはTSが440MPa未満を想定している。
図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。 図2は、図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図である。 図3は、図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図である。 図4は、金属Zn層のZn付着量と摺動性、一次防錆性および塗装後耐食性との関係を示した図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明では、下層として付着量200mg/m以上800mg/m以下の金属Zn層と、上層として鋼板の表面に酸化物層を有し、酸化物層は、平均厚さが20nm以上であり、酸化物層中には、Znを30mg/m以上、Sを1.0mg/m以上、平均粒子径が5.0μm以下である固形潤滑剤を30mg/m以上1000mg/m以下含有することを特徴とする。
上記酸化物層の潤滑メカニズムについては明確ではないが、以下のように考えることができる。摺動時には、金型と鋼板の間には高い面圧が生じ、潤滑油が排除され、金型と鋼板には直接的に接触する部分が生じる。さらに金型と鋼板との凝着力から鋼板の表面にはせん断応力が生じる。このような場合において、Zn、Oの元素は、金型と鋼板の直接的な接触を抑制する凝着抑制力がある。また、Sは極圧添加剤として使用される元素である。Sには、油が排除されるような高面圧状態においても、鋼板表面あるいは金型に吸着することで、鋼板と金型の凝着を抑制する凝着抑制力がある。さらに、酸化物層中に固体潤滑材粒子を含むことにより、固体潤滑材粒子が金型と鋼板の間の摺動の一部を担い、摩擦係数は著しく低下する。これらの相乗効果により、高強度鋼板を想定した高面圧条件においても、優れたプレス成形性を有することが可能となると考えられる。また、複雑な成形も可能となる。
図4に、金属Zn層のZn付着量と摺動性、一次防錆性および塗装後耐食性との関係を示した。摺動性は摩擦係数で評価した。一次防錆性は高温高湿度環境下に一定時間暴露した後の赤錆発生状況で評価した。塗装後耐食性はリン酸塩処理後電着塗装した試験材に傷を付けて複合腐食試験を行って評価した。評価方法の詳細は後述の実施例に示した。
図4から判るように、Zn付着量が200mg/mより少ないと十分な摺動性向上効果、すなわち、プレス成形性向上効果を得ることが難しく、一次防錆性も十分でない場合がある。
Zn付着量が少ないと十分な摺動性向上効果が得られなくなるのは軟質な金属Zn層の存在による摺動抵抗の減少効果が得られなくなるためであり、一次防錆性が十分でなくなるのはZnによる犠牲防食作用が得られなくなるためであると考えられる。
一方、Zn付着量が800mg/m超えになると塗装後耐食性が劣化する場合がある。
この理由は塗装後に腐食環境にさらされた場合に、塗膜下部で金属Znの溶解が盛んに起こり、ZnはFeの溶解よりも早い速度で進行するため、塗膜下腐食が進行し、耐食性が劣化するためであると考えられる。
これらの結果から、Zn付着量が200mg/m以上800mg/m以下の限定された領域で、一次防錆性と塗装後耐食性が共に良好となり、プレス成形性向上効果も得られる。Zn付着量を200mg/m以上450mg/m以下とすることにより、塗装後耐食性が更に良好となり、より好ましい。
化成処理工程において金属Zn層は800mg程度溶解するため、Zn付着量が800mg/m以下の場合には化成処理後に金属Zn層は残存しない。そのため、金属Znの溶解による腐食の進行が起こらないため塗装後耐食性が良好となる。また、化成処理前の金属Zn層が多いほど化成処理工程で形成されるリン酸亜鉛皮膜のP比(フォスフォフィライトとホパイトの比率)が低下する。耐酸性、耐アルカリ性ともホパイトはフォスフォフィライトよりも劣るため、P比が低下すると塗装後耐食性が低下する。Zn付着量が450mg/m以下の場合にはP比の低下を抑えることが出来るため特に塗装後耐食性が良好となると考えられる。
Znの鋼板への被覆率は85%以上が好ましい、85%未満で十分な摺動性向上効果が得られない場合がある。また、Znの鋼板への被覆率を85%以上とすることで特に優れた一次防錆性を得ることが出来る。
金属Zn層の付着量については、重クロム酸アンモニウム2質量%+アンモニア水14質量%溶液を用いて、酸化物層のみを溶解し、水洗、乾燥した試験片について、20質量%塩酸+インヒビター溶液で金属Zn層を溶解した液を中和し、ICPでZnの濃度を測定し、測定した値を単位面積あたりの含有量に換算することで求めることができる。
金属Zn層の被覆率については、重クロム酸アンモニウム2質量%+アンモニア水14質量%溶液を用いて、酸化物層のみを溶解し、水洗、乾燥した試験片について、EPMAにより加速電圧15kVで560μm角の範囲のZn強度マッピング分析を行い、得られたZn強度マッピング像からZn強度がめっきしていない鋼板と同じ強度以下となる部分を非被覆部として全体の面積から除き、その割合を計算することで求めることが出来る。
酸化物層中のZn、Sの含有量は、Znが30mg/m以上、Sが1.0mg/m以上である。酸化物層のZn含有量が30mg/m未満、S含有量が1.0mg/m未満では十分な摺動特性向上効果を得ることが難しい。一方、Zn含有量が1000mg/m超え、S含有量が100mg/m超えになると、自動車製造の際に重要となるスポット溶接性や化成処理性が低下する場合がある。そのため、Zn含有量は1000mg/m以下、S含有量は100mg/m以下が好ましい。
酸化物層の平均厚さは、20nm以上とする。20nm未満では十分なプレス成形性が得られない。一方、200nmを超えると表面の反応性が極端に低下し、化成処理皮膜を形成するのが困難になる場合がある。よって、200nm以下とするのが好ましい。
本発明では、酸化物層中に固形潤滑剤を含有する。酸化物層中に固形潤滑剤を効率よく含有させるためには、平均粒子径は5.0μm以下とする。平均粒子径が5.0μmを超えると、酸化物層中に取り込まれ難くなる。また、酸化物層との密着性が劣る傾向がある。好ましい平均粒子径は、0.1μm~1.0μmである。固形潤滑材としては、ポリエチレン、マイクロクリスタリンから選ばれる少なくとも1種を好適に用いることが可能である。ポリエチレン、マイクロクリスタリンは汎用的に使用されコストが安い。また、酸化物層中にこれらの粒子を含有することで十分な摺動特性向上効果が得られる。また、フッ素樹脂を含む場合、溶接時に熱分解し、HFやPFIBなどの有害なガスが発生する可能性がある。これに対して、本発明では、ポリエチレン、マイクロクリスタリン粒子はいずれも分子中にCおよびHしか含まないため、溶接時に有害ヒュームが発生する懸念や有害ガスが発生する懸念がない。また、本発明では有機樹脂を使用するため、二硫化モリブデンや窒化ホウ素のような無機固体潤滑剤に比べ十分な摺動特性向上効果が得られる。
固形潤滑剤の含有量は、合計で30mg/m以上1000mg/m以下とする。30mg/m未満では十分な潤滑効果を発揮できない。一方、1000mg/m超えの場合には、スポット溶接性や化成処理性が低下する。
本発明で鋼板の表面に形成させる酸化物層は下記の方法で分析することが可能である。
酸化物層中のZn含有量、S含有量については、重クロム酸アンモニウム2質量%+アンモニア水14質量%溶液で、酸化物層を溶解した溶液を、ICP発光分析装置を用いて分析することで定量することが可能である。
酸化物層の厚さについては、蛍光X線を用いて測定し、得られた酸素強度を、厚さが既知である酸化シリコン皮膜を形成したシリコンウエハーの値を基準として、シリカ膜厚に換算し測定することができる。これから測定した値の平均値を酸化物層の平均厚さとする。
Zn、S、Oの存在形態はX線光電子分光装置を用いて分析することが可能である。
酸化物層中のポリエチレン、マイクロクリスタリン粒子については、SEM観察像から、任意の20個の粒子の粒径を測定し平均することで平均粒子径を求め、一定面積にある粒子の存在数を測定し全体積に密度を積算することで含有量を算出することが可能である。なお、平均粒子径は個数平均粒子径である。
酸化物層中には、硫酸基及び水酸基が存在することが酸化物層安定性の観点で好ましい。なお、硫酸基及び水酸基が存在の有無は、後述する実施例の方法にて確認することができる。
本発明の鋼板の製造方法について説明する。
本発明の鋼板の製造方法とは、鋼板表面に、下層として付着量が200mg/m以上800mg/m以下の金属Zn層を有し、上層として平均厚さが20nm以上の酸化物層を有し、酸化物層はZnを30mg/m以上、Sを1.0mg/m以上、平均粒子径が5.0μm以下である固形潤滑剤を30mg/m以上1000mg/m以下含有する鋼板の製造方法であって、下層形成工程と、酸化物層形成工程とを備える。
先ず、下層形成工程について説明する。
下層形成工程とは、鋼板表面に、上層酸化物形成後の金属Zn付着量が200mg/m以上800mg/m以下の下層、すなわち金属Zn層を形成する工程である。後の上層酸化物形成工程において10~50mg/mの金属Znの溶解が想定されるため、上層酸化物形成工程における溶解量を加味した下層金属Zn層を形成する。
母材鋼板は、熱延鋼板、冷延鋼板のいずれも用いることができる。
下層形成工程において、金属Zn層形成方法は特に限定されず、電気亜鉛めっき、PVD(physical vapor deposition)法、CVD(chemical vapor deposition)法等の一般的な方法を採用可能である。また、めっきの処理条件は特に限定されず、適宜好ましい条件を採用すればよい。一例として、亜鉛イオンを所定量含有する酸性のめっき液で満たされた亜鉛めっき浴中で、陰極としての鋼板及び不溶性陽極を用いて、めっき液を循環させながら電解することで鋼板表面に亜鉛めっきを形成する方法、すなわち電気亜鉛めっきを行う方法があげられる。電気亜鉛めっきの場合には鋼板の表面状態やめっき条件により、めっきしたZnの被覆率が変化する場合がある。従って脱脂や酸洗などの前処理やめっき時の条件を調整することにより被覆率を制御することが出来る。例えば、前処理として有機酸を含む水溶液に鋼板を浸漬し、有機酸を鋼板に吸着させることでZnの被覆率が向上する。また、電気めっき時の電流密度を50A/dm以上に制御することでも被覆率を向上することが出来る。さらに、鋼板表面の結晶方位によるめっき層の不均一形成を防止するために鋼板表面を機械研磨して結晶粒の表面にひずみを導入することでもZnの被覆率を向上することが出来る。また、PVDやCVDでは比較的被覆率の高い金属Zn層を形成することが可能である。
次に、酸化物層形成工程について説明する。
酸化物層形成工程とは、下層形成工程で形成された金属Zn層形成後の鋼板を、硫酸イオンを3g/L以上、Znイオンを3g/L以上および固形潤滑剤を0.10g/L以上含有する酸性溶液に1秒以上60秒以下接触させ、その後水洗を行う工程である。上層のZn、O、S、固形潤滑剤を含有する酸化物層を鋼板上へ形成する一例として、鋼板を、硫酸イオン、Znイオン、固形潤滑剤を含有する酸性溶液に所定時間接触させ、その後水洗を行う方法が挙げられる。なお、必要に応じて、水洗後に乾燥を行ってもよい。具体的には、鋼板を、硫酸イオンを3g/L以上、Znイオンを3g/L以上および固形潤滑剤を0.10g/L以上含有する酸性溶液と接触させた後、水洗を行う。酸性溶液はpHが3以上6以下であることが好ましい。pHが3未満では下層に形成した金属亜鉛層の溶解が激しく、酸化物層の生成も抑制される場合がある。一方、pHが6超えの酸性溶液では溶液中のZnイオンが析出し、スラッジが発生してしまう場合があり、好ましくない。よって、酸性溶液のpHは3以上6以下が好ましい。
酸性溶液の温度は20℃以上80℃以下が好ましい。温度が20℃未満では酸化物層形成速度が遅い。一方、温度が80℃を超えると溶液の蒸発量が増加し、液濃度の管理が困難になり、コスト増大に繋がるため好ましくない。
酸性溶液との接触時間は1秒以上60秒以下が好ましい。1秒未満では十分な膜厚の皮膜が得られない場合がある。60秒を超えると処理時間が長時間化し、生産コストが増大する。
酸性溶液には酸化剤を含有することが好ましい。酸化剤の例として、硝酸や硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、過酸化水素、過マンガン酸カリウムなどが挙げられる。酸性溶液に酸化剤を含有することにより、酸化物層の形成が促進され、短時間での酸化物層の形成が可能となる。
本工程で、Zn、S、Oおよび固形潤滑剤を含有する酸化物層の形成メカニズムについては明確ではないが、次のように考えることができる。金属亜鉛層を被覆した鋼板を硫酸イオン、Znイオンおよび固体潤滑剤を含有する酸性溶液に接触させると、鋼板側では亜鉛の溶解反応と水素イオンの還元による水素が発生し、鋼板表面のpHが上昇する。このときpHが上昇した鋼板表面付近の溶液中に硫酸イオンとZnイオンが存在するとZn、O、Sが化合物として沈殿析出する。また、同時に鋼板付近の溶液中に固形潤滑剤が存在すると、Zn、O、Sの化合物に固形潤滑剤が取り込まれる。そして、上記酸化物層が形成すると考えられる。
上記形成メカニズムの観点から、鋼板を接触させる溶液中の硫酸イオンは3g/L以上、Znイオンは3g/L以上、ポリエチレン、固形潤滑剤は0.10g/L以上含有することが好ましい。硫酸イオンおよびZnイオンがそれぞれ3g/L未満の場合、析出速度が遅く、十分な厚さの酸化物層形成が困難となる場合がある。固形潤滑剤が0.10g/L未満の場合、酸化物層に取り込まれる量が少なくなる可能性がある。一方、硫酸イオンが170g/L以上、Znイオンが120g/L以上、固体潤滑剤が100g/L以上となると、それ以上の析出速度の増加は期待できない。そのため、コストとの兼ね合いから、硫酸イオンは170g/L未満、Znイオンは120g/L未満、固形潤滑剤は100g/L未満であることが好ましい。
上記酸性溶液を上記鋼板に接触させる方法は特に限定されず、鋼板を酸性溶液に浸漬させて接触させる方法、鋼板に酸性溶液をスプレーして接触させる方法、塗布ロールを用いて鋼板上に酸性溶液を塗布する方法等がある。
酸化物層形成工程の最後に水洗を行う。なお、必要に応じて、その後、乾燥を行ってもよい。なお、水洗、乾燥の方法は特に限定されず、一般的な方法を採用可能である。
なお、溶液中に不純物が含まれることによりN、Pb、Na、Mn、Ba、Sr、Si、Zr、Al、Sn、Cu、Be、B、F、Neなどが酸化物層中に取り込まれても、本発明の効果が損なわれるものではない。
以下、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
板厚1.2mmの高強度冷延鋼板(TS:590MPa)に対して、電気亜鉛めっきを施し、表1に示す付着量、被覆率の金属亜鉛層を形成した。引き続き、表1に示す条件に調整した酸性溶液に鋼板を所定時間浸漬した。固形潤滑剤としてはポリエチレン、またはマイクロクリスタリンを用いた。次に、水洗を行った後、乾燥した。
なお、ポリエチレンまたはマイクロクリスタリンは表1に示す個数平均粒子径のディスパージョンを処理液に添加して使用した。
上記により得られた鋼板に対して、以下に示す方法で、表面の酸化物層の厚み及び詳細を測定し、プレス成形性(摺動特性)、一次防錆性および塗装後耐食性を評価した。
(1)酸化物層の分析
酸化物層の厚さの測定
鋼板に形成された酸化物層の厚みの測定には蛍光X線分析装置を使用した。測定時の管球の電圧および電流は30kVおよび100mAとし、分光結晶はTAPに設定してO-Kα線を検出した。O-Kα線の測定に際しては、そのピーク位置に加えてバックグラウンド位置での強度も測定し、O-Kα線の正味の強度が算出できるようにした。なお、ピーク位置およびバックグラウンド位置での積分時間は、それぞれ20秒とした。
また、試料ステージには、これら一連の試料と一緒に、適当な大きさに劈開した膜厚96nm、54nm及び24nmの酸化シリコン皮膜を形成したシリコンウエハーをセットし、これらの酸化シリコン皮膜からもO-Kα線の強度を算出できるようにした。これらのデータを用いて酸化物層厚さとO-Kα線強度との検量線を作成し、供試材の酸化物層の厚さを酸化シリコン皮膜換算での酸化物層厚さとして算出した。これから測定した値の平均値を酸化物層の平均厚さとする。
酸化物層の組成分析
重クロム酸アンモニウム2質量%+アンモニア水14質量%溶液を用いて、酸化物層のみを溶解し、その溶液を、ICP発光分析装置を用いて、Zn、Sの定量分析を実施した。
ポリエチレン、マイクロクリスタリン含有量の分析
走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧5kV、作動距離8.5mm、倍率5000倍でランダムに抽出した5視野を観察し、ポリエチレン、マイクロクリスタリンの個数を求めた。
観察視野中の単位面積当たりの固体潤滑剤の合計体積を求め、密度と掛け合わせることで含有量を算出し、5視野の平均値を求めてポリエチレン、マイクロクリスタリンの含有量とした。
Zn、S、Oの存在形態(水酸基および硫酸基の存在の有無)
X線光電子分光装置を用いて、Zn、S、Oの存在形態について分析した。Al Ka モノクロ線源を使用し、Zn LMM、S 2pに相当するスペクトルのナロー測定を実施した。
(2)プレス成形性(摺動特性)の評価方法
プレス成形性を評価するために、各供試材の摩擦係数を以下のようにして測定した。
図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押上げることにより、ビード6による摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取付けられている。上記押し付け力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑油として、スギムラ化学工業(株)製のプレス用洗浄油プレトン(登録商標)R352Lを試料1の表面に塗布して試験を行った。
図2、図3は使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図2に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ5mm、摺動方向両端の下部は曲率1.0mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有する。図3に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ59mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ50mmの平面を有する。
摩擦係数測定試験は以下に示す2条件で行った。
[条件1]
図2に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):100cm/minとした。摩擦係数が0.105以下の場合にプレス成形性が良好であると判定した。
[条件2]
図3に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):20cm/minとした。摩擦係数が0.130以下の場合にプレス成形性が良好であると判定した。
供試材とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
(3)一次防錆性の評価方法
150×70mmのサイズに切り出した鋼板にスギムラ化学工業(株)製のプレス用洗浄油プレトン(登録商標)R352Lを塗布し、温度40℃、湿度80%の条件に置き、錆び発生までの日数を評価した。14日で錆が発生しなかったものは15日以上とした。錆発生までの日数が8日以上の場合に一次防錆性が良好であると判定した。
(4)塗装後耐食性の評価方法
150×70mmのサイズに切り出した鋼板を日本パーカライジング(株)製の脱脂剤「FC-E2001」で脱脂し、水洗した後、同社製の表面調整剤「PL-X」で30秒間表面調整を行い、次いで、同社製の化成処理液「PB-SX35」に浸漬して温度38℃で90秒の化成処理を行い、水洗、乾燥した。上記の化成処理を施した試験片に関西ペイント(株)製の電着塗料:GT-100を用いて電着塗装を行った後170℃の炉内で20分焼付けることで15μmの電着皮膜を形成させた。その後、カッターナイフで鋼板に到達するまでのカットをクロス状に付与し、0.5質量%NaCl水溶液を用いて、SAE J2334に規定される複合サイクル試験に準拠して30サイクルの試験を行った。その後、クロスカット部について、カット部からの片側最大剥離幅を測定した。この最大剥離幅が4.0mm以下であれば、塗装後耐食性は良好であるといえる。
以上より得られた結果を表2および表3に示す。
Figure 2024001900000002
Figure 2024001900000003
Figure 2024001900000004
表1~3より、本発明例の鋼板は、いずれも優れたプレス成形性と一次防錆性および塗装後耐食性が得られている。特に金属Zn層の付着量が450mg/m以下では最大剥離幅が3.5mm以下となり、塗装後耐食性は特に良好である。これに対して比較例の鋼板は、プレス成形性と一次防錆性および塗装後耐食性のいずれか一特性以上が劣っている。
本発明の鋼板はプレス成形性と一次防錆性および塗装後耐食性に優れることから、自動車車体用途を中心に広範な分野で適用できる。
1 摩擦係数測定用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
9 レール

Claims (8)

  1. 鋼板表面に、下層として付着量200mg/m以上800mg/m以下の金属Zn層を有し、上層として平均厚さが20nm以上の酸化物層を有し、酸化物層はZnを30mg/m以上、Sを1.0mg/m以上、平均粒子径が5.0μm以下である固形潤滑材を30mg/m以上1000mg/m以下含有することを特徴とする鋼板。
  2. 前記金属Zn層の付着量が200mg/m以上450mg/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記金属Zn層の鋼板への被覆率が85%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板。
  4. 前記酸化物層には、硫酸基及び水酸基が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板。
  5. 前記固形潤滑材がポリエチレン、マイクロクリスタリンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板。
  6. 鋼板に金属Zn層を形成した後に、該鋼板を、硫酸イオンを3g/L以上、Znイオンを3g/L以上および固形潤滑材を0.10g/L以上含有する酸性溶液に1秒以上60秒以下接触させ、その後水洗することを特徴とする請求項1に記載の鋼板の製造方法。
  7. 前記酸性溶液は、pHが3以上6以下であり、温度が20℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項6に記載の鋼板の製造方法。
  8. 前記酸性溶液は、酸化剤を含有することを特徴とする請求項6または7に記載の鋼板の製造方法。
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