JP2001329352A - 摺動性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

摺動性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板

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JP2001329352A JP2000147846A JP2000147846A JP2001329352A JP 2001329352 A JP2001329352 A JP 2001329352A JP 2000147846 A JP2000147846 A JP 2000147846A JP 2000147846 A JP2000147846 A JP 2000147846A JP 2001329352 A JP2001329352 A JP 2001329352A
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Hajime Ishigaki
一 石垣
Tamotsu Toki
保 土岐
Hiroshi Takebayashi
浩史 竹林
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐パウダリング性と摺動性が共に良好でプレ
ス成形性に優れた、比較的低コストの合金化溶融亜鉛め
っき鋼板を提供する。 【解決手段】 質量%でFe:8〜12%、Al:0.05〜0.25
%、残部は不純物およびZnからなる組成の、η相が存在
しないZn−Fe合金めっき層、を有する合金化溶融亜鉛め
っき鋼板を大気酸化するか、Znイオン含有水溶液で湿式
処理して、めっき層の上にZn化合物を主体とする表面層
を形成する。表面の算術平均粗さ[Ra]が0.5 μm以上、
1.5 μm以下で、表面層中のZn量[Zn](mg/m2) が次式を
満たすようにする。 0.285>0.0373×[Ra] + 0.890×[Zn]-0.35 ‥‥ (1)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プレス金型との摺
動性に優れていると同時にめっき剥離が起こりにくく、
良好なプレス成形性を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板
に関する。
【0002】
【従来の技術】合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛
めっきした鋼板を、めっき層の出側に設けた合金化炉中
で450 ℃以上に加熱して、ZnとFeを相互拡散させ、Fe−
Zn合金めっき層を鋼板上に形成させたものであり、優れ
た耐食性を示すため、自動車、家電製品等に利用されて
いる。
【0003】上記Fe−Zn合金めっき層は、ζ(FeZn13)、
δ1(FeZn7)、Γ1(Fe5Zn21)、Γ(Fe3Zn10) の各合金相か
らなり、Fe含有率が高い相ほど硬質である。即ち、Γ相
が最も硬質で、ζ相は最も軟質である。これらの合金相
は、Fe−Zn合金めっき層中に地鉄側からFe含有率の多い
相の順 (即ち、Γ相、Γ1 相、δ1相、ζ相の順) に存
在する。合金化度が低いと、めっき表層に合金化してい
ないZn金属(η相)が残存し、この相は非常に軟らか
い。合金化の程度が進むと、めっき表面のη相が消失
し、さらにはζ相も消失して、Γ相および/もしくはΓ
1 相とδ1相とからなる組織を持つめっき層となる。合
金化の程度が大きいほど一般にめっき層は硬質になる。
【0004】合金化溶融亜鉛めっき鋼板はプレス成形に
より加工されることが多く、特に自動車用に使用する場
合にはかなり過酷なプレス加工が施される。その場合、
めっき層が硬すぎると、過酷なプレス加工を施した時
に、めっき層がプレス加工による鋼板の変形に追従でき
ないため、、めっき密着性が低下し、めっき剥離が起こ
り易くなる。このめっき剥離を抑制するには、めっき層
が硬くなりすぎないように合金化の程度を抑制し、めっ
き層中の鉄含有率を比較的低く制御する必要がある。
【0005】そのため、過酷なプレス加工が施される自
動車用の合金化溶融亜鉛めっき鋼板では特に、プレス加
工時のめっき剥離を抑制するため、合金化の程度を抑制
した(鉄含有率が比較的低い)合金化溶融亜鉛めっき鋼
板を使用することが多い。その場合、めっき表面が比較
的軟らかいので、今度はプレス金型 (以下金型) との摺
動性が問題となる。即ち、金型との摺動性が悪く、鋼板
の金型への流入が小さくなるため、プレス加工時に材料
の破断が起こり易くなる。
【0006】この問題を避けるために、合金化溶融亜鉛
めっき鋼板のめっき上にFe系合金めっきを施して、めっ
き層の金型摺動性を改善する方法や、潤滑性に優れた防
錆油もしくはプレス油を塗布することにより鋼板の金型
への流入を促進するといった方法が採られてきた。
【0007】しかし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の上に
Fe系めっきを施すことは材料のコスト上昇を招くので、
自動車用鋼板全体に適用することは必ずしも適当ではな
い。また、潤滑性に優れた防錆油やプレス油は脱脂性が
劣ることが多く、後工程の作用を煩雑にしたり、部品に
よっては工程上の理由でこれら潤滑性剤を使用すること
はできない場合があり、必ずしも十分な対策と言えな
い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、特にプレス加
工時のめっき剥離が起こりにくい、鉄含有率の比較的低
い合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、材料コストの大
きな上昇を抑えながら、摺動性を改善して、脱脂性のよ
い一般の防錆油や洗浄油をプレス油として用いても金型
との摺動性の問題を起きないような合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板を開発することが望まれている。本発明はこのよ
うな合金化溶融亜鉛めっき鋼板の開発を目指したもので
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】プレス成形における鋼板
の金型との摺動挙動は、鋼板表面の物性と表面形状に影
響され、また鋼板に塗布されるプレス油等の潤滑効果も
大きく関係してくる。これは合金化溶融亜鉛めっき鋼板
についてもあてはまる。
【0010】特開平9−209107号公報には、合金化溶融
亜鉛めっき鋼板のめっき層厚みが2μm以下となる大き
な凹部の数を制限することにより、金型とめっき層間の
摺動特性が改善されることが開示されている。これは、
鋼板表面形状だけを規制することで金型との摺動性を改
善する試みであるが、鉄含有率が比較的低い合金化溶融
亜鉛めっき鋼板については十分な摺動性の改善効果を得
ることはできない。
【0011】特開平8−296015号公報には、凹部の数を
制限すると共に、めっき層の表面にZnO を主体とする金
属酸化物または他の金属酸化物の皮膜を形成した合金化
溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。これは、主に電
着塗装時に発生するクレーターの発生の抑制を狙ったも
のであるが、プレス成形性も改善されることが記載され
ている。しかし、この公報に開示の凹部の個数の制限だ
けでは、摺動性の改善は不十分である。なお、ZnO を主
体とする皮膜の形成は、好ましくはZnイオンを含有する
酸性の酸化剤水溶液中に合金化溶融亜鉛めっき鋼板を浸
漬することにより行われる。
【0012】本発明者らは、上記特開平8−296015号公
報に提案された、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に形
成した酸化物皮膜中のZnO が、潤滑油と反応すると金属
石鹸となり、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の摺動性を著し
く改善する効果があることに着目した。そこで、この効
果について検討した結果、酸化物皮膜中のZn量と皮膜表
面の算術平均粗さとが一定の関係を満たす場合に摺動性
の著しい改善が得られること、およびめっき表面の皮膜
の主体はZnO である必要はなく、単にZn化合物でよいこ
とを見いだし、本発明に至った。
【0013】本発明は、質量%でFe:8〜12%、Al:0.
05〜0.25%、残部は不純物およびZnからなり、η相が存
在しないZn−Fe合金めっき層を有する合金化溶融亜鉛め
っき鋼板であって、めっき層の表面の算術平均粗さ[Ra]
が0.5 μm以上、1.5 μm以下であり、該めっき層がZn
化合物を主体とする表面層で覆われ、この表面層中のZn
量[Zn](mg/m2) が次式を満たすことを特徴とする、摺動
性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。
【0014】 0.285>0.0373×[Ra] + 0.890×[Zn]-0.35 ‥‥ (1) 前記表面層中のZn量[Zn]は、1000 mg/m2以下であること
が好ましい。前記表面層は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板
の大気酸化により形成された、ZnO を主体とする表面層
であるか、または合金化溶融亜鉛めっき鋼板をZnイオン
含有水溶液で処理することにより形成された、Zn化合物
を主体とする表面層でよい。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼
板は、溶融亜鉛めっきを施した鋼板を合金化炉で熱処理
してFe−Zn合金めっき層を鋼板上に形成した後、さらに
そのめっき層の表面にZn化合物を主体とする表面層を形
成したものである。
【0016】母材鋼板は特に制限されず、用途に応じて
適切な特性を持つ鋼板を選択すればよい。例えば、自動
車用の場合、極低炭素鋼、低炭素鋼、BH鋼、高張力鋼
等を使用することができる。母材鋼板は熱延鋼板と冷延
鋼板のいずれでもよい。
【0017】母材鋼板上に形成するFe−Zn合金めっき層
の組成は、Fe:8〜12%、Al:0.05〜0.25%、残部は不
純物およびZnとする。なお、以下では、%は特に断りが
ない限り質量%を表す。めっき層のFe含有率は主に熱処
理条件により調節でき、Al含有率はめっき浴中のAl含有
率に依存する。
【0018】めっき層のFe含有率が8〜12%であると、
良好なプレス成形に適した優れためっき密着性が得られ
る。このFe含有率が8%未満では、めっき表層に非常に
軟らかいη相(Zn)が残存し、金型との凝着が起こり易
く、摺動性とプレス成形性が劣化し、外観むらの原因と
もなる。一方、めっき層のFe含有率が12%を越えると、
めっき層が硬すぎて、密着性が劣るようになる。その結
果、プレス加工時にめっき剥離が起こり易く、粉状のめ
っき剥離片が成形品を傷つける現象 (パウダリング) を
引き起こすようになる。また、場合によってはプレス成
形性まで劣化することがある。めっき層のFe含有率は好
ましくは 8.5〜11.5%、より好ましくは9〜11%であ
る。
【0019】溶融亜鉛めっき浴には、溶融めっき中のFe
−Zn合金層の形成を抑制するためにAlが添加されている
のが普通であり、従ってめっき層にもAlが取り込まれ
る。本発明では、めっき層のAl含有率は0.05〜0.25%の
範囲とする。Al含有率が0.05%未満では合金化反応が速
すぎてFe含有率が12%超の過合金化処理になりやすく、
上記のように耐パウダリング性が劣化する。Al含有率が
0.25%を越えると、Alによる合金化反応の抑制効果が高
くなりすぎ、合金化反応が阻害される。
【0020】このFe−Zn合金めっき層の上に形成するZn
化合物を主体とする表面層は、プレス油として使用する
防錆油や洗浄油等の油と反応して、固形潤滑剤として機
能する金属石鹸を形成することができ、それにより摺動
性が著しく改善されると考えられる。
【0021】この表面層中のZn化合物の形態は、酸化
物、水酸化物のほか、炭酸塩、硫酸塩、硫化物等の各種
の亜鉛化合物でよく、一般に1種または2種以上のZn化
合物を主体とし微量の他のZn化合物または他の化合物が
混在した複雑な組成を持つ。
【0022】酸化物(ZnO) を主体とする表面層は、特開
平8−296015号公報に記載されているように、合金化溶
融亜鉛めっき鋼板を酸性の酸化剤水溶液 (この溶液は好
ましくはZn補給剤としてZn化合物を含有する) で処理
し、めっき層の表層部のZnを酸化してZnO を表面に形成
させる方法、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を硝酸亜鉛水溶
液中での陰極処理する方法、といった湿式処理、或いは
合金化炉出側で気水混合体を導入して露点を調整して表
面を酸化させるという乾式処理により形成することも可
能である。
【0023】しかし、ZnO を主体とする表面層の簡便な
形成方法は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を大気酸化し
て、めっき層の表層部のZnを酸化してZnO にすることで
ある。この方法は、乾式法であるので簡便であり、前述
した気水混合体による酸化に比べて短時間で酸化を完了
することができる。この大気酸化は、溶融めっきライン
内にて合金化炉の出側で実施するのが好ましいが、溶融
めっき工程とは切り離して別に実施することもできる。
大気酸化は 150〜450 ℃の温度範囲で行うことが好まし
い。処理時間は通常は5〜600 秒程度である。費用が高
くなるが、大気の代わりに他の酸素含有ガスを使用する
ことも当然可能である。
【0024】この大気酸化で形成された表面層は、ZnO
を主体とし、他に合金化溶融亜鉛めっき皮膜に由来する
Al2O3 、Fe酸化物、および他のめっき皮膜由来の酸化物
を含有する。
【0025】合金化溶融亜鉛めっき鋼板をZnイオン含有
水溶液で湿式処理すると、酸化物や他のZn化合物を主体
とする表面層が形成される。この方法では、合金化溶融
亜鉛めっき鋼板をまずアルカリ洗浄してAl2O3 を除去し
てから、亜鉛イオン含有水溶液で処理することが好まし
い。亜鉛イオンの供給源としては、硫酸亜鉛、塩化亜
鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛等の各種のイオン性亜鉛化合物
(亜鉛塩)が使用できる。処理に用いる水溶液は、亜鉛
イオンを供給する亜鉛化合物に加えて、表面層の形成を
促進するために過酸化水素などの酸化剤を含有すること
が好ましい。
【0026】この湿式処理に用いる水溶液中の亜鉛化合
物の濃度は50〜500 g/L の範囲が好ましい。酸化剤を使
用する場合の酸化剤濃度は適宜設定すればよいが、30%
過酸化水素水を使用する場合で1〜20 g/Lの範囲が適当
である。処理方法は浸漬、噴霧等が可能である。処理温
度は常温で十分であるが、加温あるいは冷却下に処理す
ることもできる。処理時間は1秒以下から数分程度まで
とすることが好ましく、連続溶融めっきライン内処理で
は1分以内とすることが有利である。
【0027】上記の湿式処理により形成される表面層
は、使用したZn化合物の種類によっても異なるが、例え
ば、後述する実施例のようにZn化合物が硫酸亜鉛である
場合、処理液の硫酸亜鉛濃度が変化しても、常にZn/S
原子比が3.5 前後の表面層が形成される。Sに対してZn
が過剰であることから、この表面層は、硫酸亜鉛に加え
て、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛が複雑に共存して
析出した構造を持つものと推定される。表面層中の水酸
化亜鉛と炭酸亜鉛の存在はESCAによる分析で確認され
た。いずれにしても、Zn化合物を主体とする表面層が形
成されることは間違いない。
【0028】本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、
こうして表面層を形成した後のめっき表面の算術平均粗
さが、0.5 μm以上、1.5 μm以下である。表面層を乾
式法で形成した場合には、表面層の形成によって表面粗
さは実質的に変化しないので、表面層を形成する前のFe
−Zn合金めっき層の表面が上記範囲の算術平均粗さを有
しているようにすればよい。合金化溶融亜鉛めっき鋼板
の表面粗さは、合金化炉を出た後で一般に行われる調質
圧延 (または矯正圧延) の圧延条件 (鋼板伸び率) や圧
延ロールの表面粗さにより、調節することができる。表
面層を湿式法で形成した場合には、表面層の形成によっ
て表面粗さが小さくなることがあるので、表面層を形成
した後の算術平均粗さが上記範囲になるように考えて、
予め合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面粗さを設定する。
これに必要な合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面粗さは、
実験により決めることができる。
【0029】表面粗さが上記範囲内であると、簡単に脱
脂できる一般の防錆油や洗浄油をプレス油として使用し
た場合にも、表面層が優れた摺動性を発揮することがで
きる。これは、適度の量のプレス油がめっき表面の凹部
に保持されることに加え、Zn化合物を主体とする表面層
がプレス油と反応して固形潤滑剤である金属石鹸が生成
することにより、この表面層が潤滑皮膜に変化するため
であると考えられる。即ち、プレス加工時に摺動界面に
熱と圧力が加わっても、この潤滑皮膜の潤滑効果によ
り、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とプレス金型との金属同
士の直接接触が防止され、めっき表面の摺動性が著しく
改善される。
【0030】めっき表面の算術平均粗さが0.5 μm未満
になると、プレス油を表面の凹凸の隙間に十分に保持す
ることができないため、プレス油の潤滑効果が十分に得
られず、摺動性が劣化する。一方、めっき表面の算術平
均粗さが1.5 μmを越えると、プレス油の潤滑効果は期
待できるが、凸部の高さが高いため工具との接触で表面
の凸部がおしつぶされて、めっき層に比べて硬さが著し
く小さいZn化合物を主体とする表面層が凸部では破壊さ
れてしまう。その結果、めっき層と工具との直接金属接
触が起こるようになり、摺動性が低下する。即ち、Zn化
合物を主体とする表面層を形成する場合には、表面の算
術平均粗さを1.5 μm以下にしないと、この表面層によ
る摺動性の改善効果を十分に発揮させることができな
い。この算術平均粗さは好ましくは1.0 μm以下であ
る。算術平均粗さが1.0 μmより大きくなると、Zn化合
物を主体とする表面層の破壊が部分的に起こり易くな
り、摺動性がやや低下する場合があるからである。
【0031】合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面にZn化合
物を主体とする表面層を形成し、その表面の算術平均粗
さが 0.5〜1.5 μmの範囲内であっても、必ずしも摺動
性の改善が十分に得られないことがある。鋼板のプレス
加工における摺動性は表面の摩擦係数μと相関性があ
り、摩擦係数μ≧0.25では摺動性が悪く、プレス成形性
が劣化する。そこで、通常の防錆油を塗布した試験片に
ついてピンオンディスク試験機により60℃で測定した摩
擦係数 [μ] が0.25未満になる条件について調査した結
果、表面層中のZn量[Zn](mg/m2) と表面の算術平均粗さ
[Ra]が下記(1) 式を満たしていると、μ<0.25となって
摺動性が十分に改善されることが判明した。
【0032】 0.285>0.0373×[Ra] + 0.890×[Zn]-0.35 ‥‥ (1) (1) 式は表面層中のZn量の下限を表面の算術平均粗さと
の関係で規定する式である。即ち、表面の算術平均粗さ
が大きくなるほど、摺動性の改善に必要な表面層中のZn
量が増大する。このZn量が(1) 式を満たす量より少ない
と、前述した表面層中のZn化合物による摺動性の改善が
不足し、プレス成形性が劣化する。
【0033】一方、表面層中のZn化合物による摺動性の
改善効果は、Zn量が1000 mg/m2で飽和し、それ以上にZn
量を増大させても摩擦係数の低下が得られなくなる。Zn
量の必要以上の増大は、表面層の形成のための処理時間
を長くするだけであり、コスト面で不利であるので、表
面層中のZn量は1000 mg/m2以下とする、即ち次式を満た
すようにすることが好ましい。
【0034】[Zn] ≦1000 ‥‥ (2) 表面層Zn量はより好ましくは800 mg/m2 以下である。本
発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、自動車用といった
過酷なプレス成形を受けても加工中にめっき剥離が起こ
りにくいように合金化度を比較的低く抑えているにもか
かわらず、この種の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の問題点
であった摺動性の劣化を回避することができる。即ち、
通常の一般的なプレス油を用いてプレス加工した場合に
良好な摺動性を示し、プレス加工中に均一で十分な材料
流入が確保され、冷延鋼板なみの良好なプレス成形性を
示す。
【0035】めっき表面に形成したZn化合物を主体とす
る表面層は溶接性、化成処理性、塗装性といった性能を
阻害しないので、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は
溶接組立が可能であり、またプレス加工後に必要であれ
ばリン酸亜鉛処理といった化成処理を施したり、化成処
理を施し又は施さずに塗装することができ、自動車の外
板や部品、家電製品、建材を始めとする各種用途に有用
である。
【0036】
【実施例】合金化度の指標であるめっき層中のFe含有率
がそれぞれ7%、10%および13%と異なる3種類の合金
化溶融亜鉛めっき鋼板を供試材として用意した。めっき
層のFe含有率は、インヒビターを含有する10%HCl 中に
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の試験片を入れてめっき層だ
けを溶解し、得られた溶液をFeについて定量分析するこ
とにより決定した。
【0037】各供試材のめっき層の組織をX線回折によ
りη相のピークの有無について調べたところ、Fe含有率
が7%のめっき層だけにη相のピークが検出され、η相
が存在することがわかった。
【0038】各供試材には、算術平均表面粗さを調節す
るために、伸び率が0%、1%または2%となる条件で
調質圧延を予め施しておいた。これらの合金化溶融亜鉛
めっき鋼板の供試材の表面に、次のいずれかの方法によ
って、Zn化合物を主体とする表面層を形成した。
【0039】(1) 乾式法:供試材を大気中で250 ℃に10
〜300 秒間加熱して、めっき層の表面を大気酸化させ、
ZnO を主体とする表面層を形成する。 (2) 湿式法:供試材をアルカリ洗浄して表面のAl2O3
除去した後、 ZnSO4・7H2O 200 g/L+30%H2O2 5 g/Lの
水溶液中に常温で 0.5〜60秒間浸漬することにより、Zn
化合物を主体とする表面層を形成する。
【0040】形成された表面層中のZn量[Zn](mg/m2)
は、重クロム酸アンモニウム50 g/L+水酸化アンモニウ
ム500 mg/Lの水溶液を用いて表面層を溶解させ、得られ
た溶液をZnについて定量分析することにより求めた。
【0041】表面層を形成した後の供試材の表面の算術
平均粗さを、触針式表面粗さ計により求めた。またこれ
らの供試材の試験片に対して、プレス油として市販の防
錆油を一定量塗布した後、ピンオンディスク試験機を用
いて下記の条件で摺動試験を行い、摺動性の指標となる
摩擦係数μを求めた: [摺動試験条件] 摺動条件:荷重3kg、回転速度1rpm 、 測定温度:60℃、 鋼球半径:2.5 mm。
【0042】また、プレス成形性と耐パウダリング性を
調査するため、表面層を形成した各供試材から所定寸法
の円板を打ち抜き、上記と同じ市販防錆油を一定量塗布
した後、円筒絞り試験機を用いてそれぞれ下記条件でプ
レス加工した。
【0043】[プレス成形性] ブランク径:69 mm 、 成形速度:60 mm/min 、 ブランク押さえ荷重:1.51 ton、 最大成形高さ:17.8 mm 。
【0044】プレス成形性は、プレス加工時の破断の有
無により下記基準で評価した: ○:破断せず、 △:成形高さ11 mm 以上で破断、 ×:成形高さ11 mm 未満で破断。
【0045】[耐パウダリング性] ブランク径:60 mm 、 ポンチ径:30 mm 、 ダイス径:35.4 mm 、 ダイ肩半径:3mm、 しわ押さえ力:500 kgf 。
【0046】円筒絞り後、成形品に付着している防錆油
を溶剤を用いて除去した後、成形品の内外周の剥離して
いるめっき皮膜片を粘着テープを用いて除去した。その
後の成形品の重量を測定し、円筒絞り前の重量との差か
ら、めっき皮膜にパウダリング量 (成形品1個当たりの
めっき剥離量) を測定し、下記基準で評価した: ○:12 mg 未満、 △:12〜20 mg 、 ×:20 mg 超。
【0047】これらの試験結果を、めっき層中のη層の
有無および合金化度 (Fe含有率) 、表面層形成後の算術
平均粗さおよび表面層のZn量、ならびに表面層の形成方
法と共に次の表1に示す。また、めっき層のFe含有率が
10%の供試材について、プレス成形性と表面層のZn量[Z
n](mg/m2) および算術平均粗さ[Ra]との関係を図1に示
す。
【0048】
【表1】 表1からわかるように、めっき層のFe含有率が7%と合
金化度が低すぎる供試材は、めっき層の表面にη相が残
存するため、本発明に従ってZn含有表面層を形成して
も、摺動性を十分に改善することができず、プレス成形
性が低くなる。一方、めっき層のFe含有率が13%と合金
化度が高すぎる供試材は、めっき層が硬すぎて、プレス
加工中にめっきが粉状に剥離するため、耐パウダリング
性が劣化する。また、表面の算術平均粗さが不適切であ
ると、本発明の表面層による摺動性の改善効果が十分に
得られず、摺動性とプレス成形性も劣化する。
【0049】これに対し、本発明に従って、Fe含有率が
10%の合金化溶融亜鉛めっき鋼板にZn含有表面層を形成
した場合には、表1および図1からわかるように、表面
の算術平均粗さが 0.5〜1.5 で、かつ表面層のZn量が前
記(1) 式を満たす時には、良好な耐パウダリング性を保
持しながら、μ=0.25未満という冷延鋼板なみの優れた
摺動性が付与され、プレス成形性が著しく改善される。
しかし、Zn量を1000 mg/m2より多くしても、μ=0.08以
下には摩擦係数が下がらないので、摺動性の改善効果が
飽和する。一方、表面の算術平均粗さが範囲外になる
か、表面層のZn量が前記(1) 式を満たさないと、摺動性
とプレス成形性の改善は不十分である。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、耐パウダリング性を良
好に保持できる合金化度が比較的低い合金化溶融亜鉛め
っき鋼板について、連続溶融亜鉛めっきライン内にて実
施可能な低コストの処理により、脱脂性に優れたプレス
油を使用してプレス加工した場合の摺動性を改善するこ
とができ、自動車用や家電用に適した、プレス成形性に
優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板をコストの著しい増大
を伴わずに安定して供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Fe含有率が10%の合金化溶融亜鉛めっき鋼板に
ついて、表面層のZn量および算術平均粗さと摺動性との
関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹林 浩史 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 Fターム(参考) 4K027 AA02 AA22 AB02 AB07 AB26 AB28 AB35 AB42 AB44 AC72 AC73 AC82 AE03 AE21 AE25 AE27 AE33

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%でFe:8〜12%、Al:0.05〜0.25
    %、残部は不純物およびZnからなり、η相が存在しない
    Zn−Fe合金めっき層を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板
    であって、めっき層の表面の算術平均粗さ[Ra]が0.5 μ
    m以上、1.5μm以下であり、該めっき層の表面がZn化
    合物を主体とする表面層で覆われ、この表面層中のZn量
    [Zn](mg/m2) が次式を満たすことを特徴とする、摺動性
    に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。 0.285>0.0373×[Ra] + 0.890×[Zn]-0.35 ‥‥ (1)
  2. 【請求項2】 前記表面層中のZn量[Zn]が1000 mg/m2
    下である、請求項1記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 前記表面層が、合金化溶融亜鉛めっき鋼
    板の大気酸化により形成されたものである、請求項1ま
    たは2記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 【請求項4】 前記表面層が、合金化溶融亜鉛めっき鋼
    板をZnイオン含有水溶液で処理することにより形成され
    たものである請求項1または2記載の合金化溶融亜鉛め
    っき鋼板。
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