JP5927857B2 - クロメートフリー着色塗装金属板 - Google Patents

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本発明は、環境負荷性の高い6価クロムを含まない着色塗膜が金属板の少なくとも片面に形成された、耐食性、加工性、耐傷付き性等に極めて優れる安価な意匠性クロメートフリー着色塗装金属板に関する。
家電用、建材用、自動車用などに、従来の成形加工後に塗装されていたポスト塗装製品に代わって、着色した有機皮膜を被覆したプレコート金属板や金属表面の持つメタリック感をそのまま生かしたクリアプレコート金属板等が使用されるようになってきた。これらの意匠性金属板は、防錆処理を施した鋼板やめっき鋼板に着色した有機皮膜を被覆したり、金属光沢を呈する金属板にクリア塗膜を施したりしたもので、美麗な外観を有しながら、加工性を有し、耐食性が良好であるという特性を有している。
例えば、特許文献1には皮膜の構造を規定することによって加工性と耐汚染性、硬度に優れたプレコート鋼板を得る技術が開示されている。一方、特許文献2には、特定のクロメート処理液を用いることで端面耐食性を改善したプレコート鋼板が開示されている。これらのプレコート鋼板は、めっき皮膜、クロメート処理皮膜、クロム系防錆顔料を添加したプライマー(下塗り)皮膜の複合効果によって、耐食性とともに、加工性、塗料密着性を有し、加工後塗装を省略して、生産性や品質改良を目的とするものである。
しかしながら、クロメート処理皮膜およびクロム系防錆顔料を含む有機皮膜から溶出する可能性のある6価クロムの環境への負荷を考慮し、最近ではノンクロム防錆処理、ノンクロム有機皮膜に対する要望が高まっている。これに対し、例えば、特許文献3や特許文献4に、耐食性に優れるノンクロム系プレコート鋼板が開示されており、すでに実用化されている。
これらのプレコート鋼板に用いられる塗装は、塗装膜厚が10μm以上の厚いものである。その上、大量の溶剤系塗料を使用するため、インシネレーターや臭気対策設備等の専用の塗装設備が必要であり、塗装専用ラインで製造されることが一般的である。すなわち、塗装の原板となる鋼板の製造工程の他に余分な塗装工程を通るため、塗装に要する材料費の他にも多くの費用がかかる。したがって、得られるプレコート鋼板は高価なものになる。
しかしながら、ユーザーニーズの多様化により、家電や内装建材等の日常使用条件での耐久性を有すれば十分に目的を達する分野での意匠性鋼板の需要もあり、より低価格の製品が求められている。すなわち、従来の高価なプレコート鋼板だけでは多様化した需要に応えるのに十分ではない。
このようなニーズに対して、安価に製造ができる意匠性金属板として、例えば、特許文献5に厚さ5μm以下の着色樹脂層を設けた着色鋼板が、特許文献6には特定の粗度を有する鋼板表面に発色皮膜を有する着色鋼板が開示されている。しかしながら、これらの着色鋼板はクロメート処理皮膜を設けることで耐食性を担保する設計となっているため、昨今のノンクロム化ニーズに応えることができない。加えて、取り扱い時やプレス成形加工時に入る傷に対する耐性や、プレス成形加工し着色層が伸ばされた部位の隠蔽性まで考慮した設計にはなっていないため、傷入り部や成形加工部の外観が著しく低下するという課題も有していた。
特許文献7には、意匠性に優れた耐熱クリアプレコート金属板が開示されている。ここで使用されているクリア塗膜の膜厚は10μm以下で比較的薄く、且つノンクロム仕様ではあるが、クリア塗膜を形成するための塗料に溶剤系塗料を用いているため、専用の塗装設備が必要である。加えて、意匠性や加工性には優れるが、耐傷付き性が十分ではないという課題も有していた。
特許文献8には、素地鋼板の少なくとも片面に電気亜鉛めっき層と化成皮膜とを順に設け、化成皮膜の表面の粗さが、算術平均粗さRaで1.0〜1.6μm、かつ粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIで300〜500である、良好な導電性を有する表面処理鋼板が開示されている。化成皮膜として、クロムを含有しないものを用いることが記載されている。化成皮膜上に、耐食性、耐傷付き性、意匠性などを付与する有機樹脂層を備えるのが好ましいことも記載され、実施例では付着量0.5g/m2の比較的低い付着量(薄い膜厚)の有機樹脂層を形成している。特許文献8は高度な意匠性の要求がない塗装鋼板の裏面側の導電性を高める表面処理に関するものであり、化成皮膜の表面の粗さ(Ra、PPI)を高めることで導電性を確保するとの思想で発明されたものである。したがって、導電性に対する要求が小さく、高度な意匠性が要求される塗装鋼板の表面側(意匠性が必要面)に適用しても意匠性、耐傷付き性、加工性、耐食性等、意匠面に要求される性能レベルを担保することは困難である。
特開平8−168723号公報 特開平3−100180号公報 特開2000−199075号公報 特開2000−262967号公報 特開平5−16292号公報 特開平2−93093号公報 特開2008−149608号公報 特開2010−121201号公報
本発明は、前記現状に鑑み、環境負荷性の高い6価クロムを含まない塗装金属板であって、加工性、耐食性を低下させることなく、耐傷付き性を向上させた安価な意匠性クロメートフリー着色塗装金属板を提供することを目的とするものである。
一般に、塗装金属板の耐傷付き性を向上させるためには、塗膜を傷付きにくくすることが重要である。特に意匠性着色塗装金属板の場合、塗膜は着色されているため傷がつくと目立ちやすい、意匠用途に用いられるため外観意匠品位に厳格である、等の理由から、傷が多少入っても目立たなくすることが特に重要である。
塗膜の傷は、一般的に連続的に入る方が目立ちやすく、より不連続になるほど目立たなくなる。そこで、塗膜への傷の入り方が不連続になるようにすれば傷を目立ちにくくすることができるとの考えの下、塗膜を形成する金属板表面の粗度に着目して検討を行った。その結果、金属板表面に凹凸を一定以上付与し、且つ凸部間の距離を一定以上拡げることで、塗膜に傷が入ってもそれが不連続となりやすく、目立たなくなるとの知見を得た。金属板表面への凹凸の付与による着色塗膜表面全体の艶低下も、塗膜の傷を目立たなくする要因の一つとなる。具体的には、金属板表面の算術平均粗さRaが0.7μm以上、且つ粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIが300以下のときに、耐傷付き性(塗膜の傷の目立ちにくさ)に優れた意匠性着色塗装金属板が得られることが分かった。
加えて、金属板表面の粗度は着色塗装金属板の加工性には影響を与えないが、その算術平均粗さRaが1.5μmを超えると、耐食性が低下すること、粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIが120未満になると、塗膜の艶が高くなり、傷が目立ちやすくなることが分かった。
従って、金属板表面の算術平均粗さRaが0.7〜1.5μm、且つ粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIが120〜300のときに、耐傷付き性、耐食性、加工性の全てに優れた意匠性クロメートフリー着色塗装金属板が得られるとの知見が得られた。
上記知見を基に完成された本発明の主旨とするところは、次のとおりである。
(1)金属板の少なくとも片面に、有機樹脂(A)を造膜成分とし、着色顔料(B)、およびシリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板であって、前記金属板の表面の粗さが、算術平均粗さRaで0.7〜1.5μm、且つ粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIで120〜300であり、前記着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μmであって、
更に前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する下地処理層(β)を有し、
前記着色顔料(B)がカーボンブラック(B1)と二酸化チタン(B2)のいずれか一方、或いは両方を含有し、
カーボンブラック(B1)を含む場合、着色塗膜(α)中のカーボンブラック(B1)含有量をd質量%、着色塗膜(α)の厚みをbμmとしたとき、d≦15、b≦10、d×b≧20を満足し、
二酸化チタン(B2)を含む場合、着色塗膜(α)中の二酸化チタン(B2)含有量が10〜70質量%であることを特徴とする、クロメートフリー着色塗装金属板。
(2)前記有機樹脂(A)が硬化剤(D)で硬化された樹脂であることを特徴とする、上記(1)に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
(3)前記シリカ粒子(C)が、平均粒子径5〜50nmの球状シリカ粒子(C1)と平均粒子径0.3〜5μmの球状シリカ粒子(C2)とを含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
(4)前記着色塗膜(α)が、アクリル樹脂、シリコン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子(E)を更に含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに1つに記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
(5)前記樹脂粒子(E)の平均粒子径が1〜5μmであることを特徴とする、上記(4)に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
(6)前記有機樹脂(A)が、構造中にスルホン酸基を含むポリエステル樹脂(Ae)を含有することを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
(7)前記ポリエステル樹脂(Ae)が構造中に、更にビスフェノール構造を含むことを特徴とする、上記(6)に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
(8)前記有機樹脂(A)が、構造中にウレア基を含むポリウレタン樹脂(Au)をさらに含有することを特徴とする、上記(6)または(7)に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
(9)前記着色塗膜(α)が、ポリエチレン樹脂粒子(F)を更に含有することを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
(10)前記ポリエチレン樹脂粒子(F)の平均粒子径が0.5〜3μmであることを特徴とする、上記(9)に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
本発明の意匠性クロメートフリー着色塗装金属板は、環境負荷性の高い6価クロムを含まず、安価で、且つ、加工性、耐食性、耐傷付き性等に極めて優れている。このため、安価な高意匠、高付加価値環境対応型素材として非常に有望であり、各産業分野への寄与は非常に大きい。
PPIの定義に関する表面粗さの粗さ曲線を示す説明図である。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、金属板の少なくとも片面に、有機樹脂(A)を造膜成分とし、着色顔料(B)、およびシリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板であって、前記金属板の表面の粗さが、算術平均粗さRaで0.7〜1.5μm、且つ粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIで120〜300であり、前記着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μmであることを特徴とする。
より具体的に言えば、本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、塗膜の造膜成分であって着色塗装金属板の耐傷付き性、耐食性、加工性の向上に寄与する有機樹脂(A)と、塗膜に着色して塗装金属板に意匠性を付与する着色顔料(B)と、塗装金属板の耐食性、耐傷付き性の向上に寄与するシリカ粒子(C)を含む着色塗膜(α)を、基材である金属板の少なくとも片面に形成したものであり、金属板表面の粗さが、算術平均粗さRaで0.7〜1.5μm、且つ粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIで120〜300であるとともに、着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μmであることによって、耐食性、加工性を低下させることなしに、耐傷付き性を向上させたものである。本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、環境負荷性の高い6価クロムを含まないノンクロム有機皮膜を設けたものであり、このノンクロム有機皮膜を、専用の塗装設備が不可欠の有機溶剤を含まず、水系溶剤を含む塗料により形成して製造することができる。こうして、本発明によれば、加工性、耐食性、耐傷付き性を兼ね備えた、安価な高意匠性のクロメートフリー着色塗装金属板を提供することができる。
同じ厚さの着色塗膜と非着色(クリヤー)塗膜を比べた場合、塗膜の傷は、着色塗膜の方が目立ちやすい。その理由は、着色塗膜に傷が入ると、その傷が基材金属板に到達する傷の場合、傷部分に塗膜の色と異なる基材金属板の色が現れるからである。また、基材金属板に到達しない傷であっても、傷部分とそれ以外の部分に艶の差が生じ、意匠性を損なう場合もある。これらの傷は、淡彩系の着色よりも濃色系の着色の方が目立ちやすい。厚さの異なる同色の塗膜を比べた場合には、塗膜の傷は、薄い塗膜の方が目立ちやすい。これは、塗膜が薄いほど、傷により基材金属板表面の色が見えやすくなったり、傷部分とそれ以外の部分の艶の差が大きくなったりするからである。一方、塗膜への傷の入り方の面から見ると、一般的に、連続的な傷(線状の傷)よりも、不連続な傷(断続的あるいは斑点状の傷)の方が目立ちにくく、しかも隣り合う傷どうしの間隔があくほど目立ちにくい。
膜厚が10μm程度以下の、薄い着色塗膜の場合を考えると、塗膜の傷の目立ちやすさは、膜厚がもっと厚い塗膜に比べて基材金属板の表面形状の影響を強く受ける。膜厚が厚い塗膜では、基材金属板表面の凹凸は着色塗膜の外観に影響を及ぼさないが、薄い塗膜では、基材金属板表面の凹凸が着色塗膜の外観に大きく作用する。すなわち、薄い塗膜では、基材金属板表面に一定以上の凹凸を付与することで、着色塗膜表面の艶(光沢)を落とすことができ、塗膜の傷を目立ちにくくすることができる。また、基材金属板表面に一定以上の凹凸を付与することで、その凸部の上にある塗膜部分のみに傷が入るようになり、傷が不連続になり目立ちにくくなる。加えて、基材金属板表面の凸部間の距離が大きいほど、塗膜の傷は更に不連続になりやすく、傷は更に目立ちにくくなる。こうして、着色塗膜の膜厚が薄いほど、その金属板表面の凹凸の傷の目立ちにくさに及ぼす影響が顕著になる。その一方、塗膜を形成する金属板表面の凹凸は、塗装金属板の耐食性にも影響し、一定以下の凹凸に抑え、凸部の間隔も一定以下に抑える(凸部の頻度を小さくする)必要がある。これは、特に着色塗膜の膜厚が薄く、且つ基材金属板表面の凹凸が大きい場合、基材金属板表面の凸部の上の塗膜部分の厚さが極端に小さくなり、水や酸素等の腐食因子に対するバリヤー性が低下するためである。加えて、凸部の頻度が大きい場合、バリヤー性の乏しい部分の頻度も増えるためである。言い換えれば、クロメートフリー着色塗装金属板、特に塗膜の膜厚が薄いクロメートフリー着色塗装金属板の、耐食性、加工性を低下させることなしに、耐傷付き性を向上させるためには、金属板表面の凹凸を一定の範囲で制御し、且つ凸部間の距離を一定以上拡げることが必要である。また、凸部の頻度が小さすぎる場合は、着色塗膜表面の艶(光沢)が高くなり傷が目立ち易くなるため、一定以上の凸部頻度を大きくすることも必要である。このことを踏まえて検討を重ね、発明者らは、本願発明のクロメートフリー着色塗装金属板における上記の金属板表面の粗さの要件、すなわち、算術平均粗さRaが0.7〜1.5μm、且つ粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIが120〜300、との要件を見いだした。
一般に、塗装金属板において、金属板表面の粗さは、加工性にはあまり影響せず、耐食性と耐傷付き性に影響する。本発明のクロメートフリー着色塗装金属板では、金属板表面の算術平均粗さRaが0.7μm未満になると、着色塗装金属板の耐傷付き性が低下しやすく、Raが1.5μmを超えると、耐食性が低下する傾向にある。Raのより好ましい範囲は0.8〜1.4μm、更に好ましい範囲は0.9〜1.3μmである。粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIが300を超えると、着色塗装金属板の耐傷付き性と耐食性が低下しやすくなり、120未満になると着色塗装金属板の耐傷付き性が低下し易い(傷が目立ち易い)。PPIは、130〜270がより好ましく、140〜250が更に好ましい。
本発明において、金属板表面の算術平均粗さRaは、JIS B 0601(1994)に規定されている測定法に従って、基準長さ0.8mmを採用して測定する。Raは、例えば株式会社東京精密社のサーフコムシリーズなどを使って測定することができる。
粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIは、米国のThe Engineering Society for Advancing Mobility Land Sea Air and Space:SAE J911−JUN 86 “SURFACE TEXTURE MEASUREMENT OF COLD ROLLED SHEET STEEL”の規定に従って測定する。図1に示すSAE J911−JUN 86で定められたPPIの定義に関する表面粗さの粗さ曲線を用いて説明すると、所定の評価長さLnについて、当該粗さ曲線の平均線に対して一定の基準レベル(カットレベル)Hを設けて、負の基準レベルを越えたあとに正の基準レベルを越えたとき1カウントするようにカウントしたときのカウント総数が、カットレベルHにおけるPPIである。本発明においては、評価長さLnは金属板の任意の平面方向に対して直角方向の粗さ曲線の2.54cm(1インチ)部分の長さとし、カットレベルHは0.24μmとしている。PPIの測定には、例えば株式会社東京精密社のサーフコムシリーズなどを使用することができる。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の耐傷付き性は、塗膜の鉛筆硬度試験により評価した。具体的には、JIS K 5600−5−4に準拠して、試験板表面の塗膜に45°の角度で鉛筆芯で5回線を引き、消しゴムで線を消した後に、2回以上傷が入らない鉛筆硬度を測定し、鉛筆硬度がH以上のものを、傷が目立たず、すなわち耐傷付き性が良好であると評価した。鉛筆は三菱鉛筆社製のユニ鉛筆を使用し、20℃、4.903N(500gf)の荷重条件にて試験を行った。
前記着色塗膜(α)は、水系溶媒中に塗膜の構成成分(有機樹脂(A)、着色顔料(B)、およびシリカ粒子(C))を含む水系塗料組成物(X)を金属板の少なくとも片面に塗布し、加熱乾燥することで形成されることが好ましい。ここで水系溶媒とは、水が溶媒の主成分である溶媒であることを意味する。本願の溶媒中に占める水の量は50質量%以上であることが好ましい。本願の水系溶媒中に含まれる水以外の溶媒は有機溶媒でもよいが、労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則で定義される有機溶剤含有物(労働安全衛生法施行令の別表第六の二に掲げられた有機溶剤を重量の5%を超えて含有するもの)には該当しないものであることがより好ましい。このような水系溶媒を用いることによって、有機溶剤系塗料を使用するための塗装専用ラインを余分に通板する必要がなくなるために、製造コストを大幅に削減することが可能である上に、揮発性有機化合物(VOC)の排出も大幅に抑制できる等の環境面におけるメリットもある。
着色塗膜(α)の厚みは、2〜10μmである。前記着色塗膜(α)の厚みは、より好ましくは3〜7μmである。2μm未満であると、十分な意匠性(隠蔽性)や、耐食性、耐傷付き性が得られないことがある。10μm超であると、経済的に不利であるばかりか、着色塗膜(α)が水系塗料から形成される場合にワキ等の塗膜欠陥が発生することがあり、工業製品としての着色塗装金属板に必要な外観を安定して得ることができないことがある。また、本発明における着色塗膜(α)は、2〜10μmの膜厚において、本発明における金属板表面の粗さの要件、すなわち、算術平均粗さRaが0.7〜1.5μm、且つ粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIが120〜300、という要件の下で、優れた耐傷付き性を担保することができる。
着色塗膜(α)の厚みは、塗膜の断面観察や電磁膜厚計等の利用により測定できる。その他に、単位面積当りに付着した塗膜の質量を、塗膜の比重又は塗布溶液の乾燥後比重で除算して算出してもよい。塗膜の付着質量は、塗装前後の質量差、塗装後の塗膜を剥離した前後の質量差、または、塗膜を蛍光X線分析して予め皮膜中の含有量が分かっている元素の存在量を測定する等、既存の手法から適切に選択すればよい。塗膜の比重又は塗布溶液の乾燥後比重は、単離した塗膜の容積と質量を測定する、適量の塗布溶液を容器に取り乾燥させた後の容積と質量を測定する、または、塗膜構成成分の配合量と各成分の既知の比重から計算する等、既存の手法から適切に選択すればよい。
上記した各種測定方法の中でも、比重等が異なる塗膜でも簡便に精度よく測定できることから、塗膜の断面観察の利用が好適である。
前記着色塗膜(α)の断面観察の方法としては特に制限はないが、常温乾燥型エポキシ樹脂中に塗装金属板を塗膜厚み方向と垂直に埋め込み、その埋め込み面を機械研磨した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察する方法や、FIB(集束イオンビーム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法等が好適に使用可能である。
着色塗膜(α)の必須構成成分は、有機樹脂(A)、着色顔料(B)、およびシリカ粒子(C)である。有機樹脂は、塗膜の造膜成分であり、本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の耐傷付き性、耐食性、加工性の発現に寄与する。着色顔料は、塗膜の着色に必要な成分であり、本発明のクロメートフリー着色塗装金属板に意匠性を付与する。シリカ粒子は、本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の耐食性、耐傷付き性の改善に関与する。
着色塗膜の造膜成分である有機樹脂(A)としては、特定の種類に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、又はそれらの変性体等を挙げることができる。ここで変性体とは、これらの樹脂の構造中に含まれる反応性官能基に、その官能基と反応し得る官能基を構造中に含む「他の化合物」(モノマーや架橋剤など)を反応させた樹脂のことを指す。有機樹脂(A)は1種または2種以上混合して用いてもよいし、少なくとも1種の有機樹脂存在下で、少なくとも1種のその他の有機樹脂を変性することによって得られる有機樹脂を1種または2種以上混合して用いてもよい。
着色塗膜の造膜成分の含有量(有機樹脂(A)が後述する硬化剤(D)で硬化されていない場合は有機樹脂(A)のみの含有量、有機樹脂(A)が後述する硬化剤(D)で硬化されている場合は有機樹脂(A)と硬化剤(D)の合計量)は、塗膜中の55〜80質量%であることが好ましい。55質量%未満であると、着色塗装金属板の加工性が低下することがあり、80質量%超であると、着色塗装金属板の耐傷付き性が低下することがある。造膜成分のより好ましい含有量は60〜75質量%である。
有機樹脂(A)は、構造中にスルホン酸基を含むポリエステル樹脂(Ae)を含有することが、加工性、耐食性、耐傷付き性を高次元で両立させる上で好ましい。ポリエステル樹脂の構造中に含まれるエステル基は適度の凝集エネルギーを有しているため、塗膜のフィルム物性(伸びと強度のバランス)を高次元に高めることができる。すなわち、ポリエステル樹脂を塗膜の造膜成分として適用することは、加工性と耐傷付き性を高次元で両立する上で非常に有効である。加えて、ポリエステル樹脂に含まれるスルホン酸基は、基材である金属板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性向上にも寄与するため、加工性や耐傷付き性を高める上で好適である。また、塗膜を形成するための塗料組成物が水系である場合、スルホン酸基は高い親水性を有しているため、ポリエステル樹脂の水系塗料組成物中での安定性を高める(塗料組成物の固化、凝集物の発生等を防止する)上でも好適である。特に後述する硬化剤を併用する場合においては、塗料組成物のpH変動が大きくなり、塗料の安定性が低下する場合があるが、スルホン酸基を含むポリエステル樹脂を用いる場合は、塗料組成物のpH変動の影響を受けにくく、塗料安定性の低下を抑制することができる。なお、スルホン酸基を含むポリエステル樹脂は有機溶剤に溶解し難い(一部の極性溶剤にしか溶解しない)という特徴を有しているため、該樹脂は有機溶剤を溶媒とする有機溶剤系塗料組成物では実質的に使用することができない。また、硬化剤を用いる場合は、スルホン酸基含有化合物等の硬化触媒を併用することが一般的であるが、このような硬化触媒は塗膜の耐食性を低下させる懸念がある。これに対して、スルホン酸基を含むポリエステル樹脂は硬化触媒を用いなくても、低温乾燥硬化が可能であるため、硬化触媒を添加する必要がなく、硬化触媒添加による耐食性低下の懸念もない。したがって、有機溶剤を溶媒として用いた塗料にはスルホン酸基を含むポリエステル樹脂が適用できないため、これを用いて形成された塗膜の場合には、上記のスルホン酸による効果、特に耐食性と耐傷付き性を両立すると言う効果は期待できない。
前記ポリエステル樹脂(Ae)の含有量は、前記有機樹脂(A)中の60〜100質量%であることが好ましい。60質量%未満であると、着色塗装金属板の加工性、耐傷付き性、耐食性の改善効果が得られなくなる場合がある。前記ポリエステル樹脂(Ae)のより好ましい含有量は80〜100質量%である。
前記ポリエステル樹脂樹脂(Ae)は構造中に、更にビスフェノール構造を含むことが好ましい。ビスフェノール構造は高い凝集エネルギーを持つ上に、耐水性にも優れるため、ビスフェノール構造を含むことは耐傷付き性、耐食性を向上させる上で好ましい。
前記ポリエステル樹脂(Ae)としては、構造中にスルホン酸基を含んでいれば特に制限はないが、例えば、ポリカルボン酸成分およびポリオール成分からなるポリエステル原料を縮重合し、得ることができる。また、そこで得たポリエステル樹脂を水に溶解もしくは溶解することで水系化することもできる。
ポリカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、無水エンド酸等を挙げることができる。ポリカルボン酸成分は、1種を使用してもよく、あるいは複数種を使用してもよい。
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、トリエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール−A、ダイマージオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。ポリオール成分は、1種を使用してもよく、あるいは複数種を使用してもよい。
ポリエステル樹脂に前記スルホン酸基を導入する方法としては、特に制限はないが、例えば、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のジカルボン酸類、または2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキシルジオール等のグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
スルホン酸基は−SO3Hで表される官能基を指し、それがアルカリ金属類、アンモニアを含むアミン類等で中和されたものであっても構わない。中和する場合は、すでに中和されたスルホン酸基を樹脂中に組み込んでもよいし、スルホン酸基を樹脂中に組み込んだ後に中和してもよい。特にLi、Na、Kなどのアルカリ金属類で中和されたスルホン酸金属塩基が、着色塗膜と基材の金属板との密着性を高める上や、疎水表面を持つ着色顔料の塗布液への分散性を高める上で特に好ましく、スルホン酸Na塩基が更に好ましい。
前記スルホン酸基を導入するのに使用するスルホン酸基を含有するジカルボン酸またはグリコールの使用量は、全ポリカルボン酸成分または全ポリオール成分に対し、0.1〜10モル%であることが好ましい。0.1モル%未満であると、着色塗膜と基材の金属板との密着性の向上効果が得られないことがあり、また、水系溶媒を使用する場合に、有機樹脂の水に対する溶解性または分散性が低下することがあり、更に、着色顔料の分散性が低下し、形成した着色塗膜の意匠性が低下することがある。10モル%超であると、着色塗装金属板の耐食性が低下することがある。性能のバランスを考慮すると、0.5〜7モル%の範囲にあるのがより好ましい。
前記ビスフェノール構造を導入する場合の方法としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物などのグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
前記ビスフェノール構造を含有するグリコールの使用量は、全ポリオール成分に対し、1〜40モル%であることが好ましい。1モル%未満であると、着色塗装金属板の耐傷付き性、耐食性の向上効果が得られないことがある。40モル%超であると、着色塗装金属板の加工性が低下する場合がある。性能のバランスを考慮すると、5〜30モル%の範囲にあるのがより好ましい。
前記有機樹脂(A)が、前記ポリエステル樹脂(Ae)を含有する本発明の態様においては、構造中にウレア基を含むポリウレタン樹脂(Au)を更に含有することが、耐食性、耐傷付き性を向上させる上で特に好ましい。加工性と耐傷付き性、耐食性を両立するためには、塗膜の伸びと強度の両者に優れ、且つ基材である金属板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性を高めることが重要であるが、非常に高い凝集エネルギーを持つウレア基を含有するポリウレタン樹脂(Au)を、前記ポリエステル樹脂(Ae)と混合して使用することで伸びと強度の両者に優れ、且つ基材との密着性にも優れる塗膜設計が可能である。
前記塗膜(α)に前記ポリエステル樹脂(Ae)とともに前記ポリウレタン樹脂(Au)を含む場合、前記ポリエステル樹脂(Ae)と前記ポリウレタン樹脂(Au)の合計の含有量は、前記有機樹脂(A)中の60〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%である。60質量%未満であると、加工性、耐傷付き性、耐食性の改善効果が得られなくなる場合がある。
また、前記ポリエステル樹脂(Ae)と前記ポリウレタン樹脂(Au)の固形分質量比(Ae)/(Au)は、25/75〜90/10であることが好ましく、25/75〜75/25であることが更に好ましい。25/75未満であると加工性が低下する場合があり、90/10超であると耐食性、耐傷付き性の改善効果が得られない場合がある。
前記ポリウレタン樹脂(Au)としては、構造中にウレア基を含んでいれば特に制限は無いが、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、その後に更にアミノ基を含有する鎖伸長剤によって鎖伸長して得られるもの等を挙げることができる。
前記ポリオール化合物としては、1分子当たり2個以上のヒドロキシ基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、又はそれらの混合物が挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物としては、1分子当たり2個以上のイソシアネート基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、脂肪族イソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、又はそれらの混合物が挙げられる。前記鎖伸長剤としては、分子内に1個以上のアミノ基を含有する化合物であれば特に限定されず、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミンや、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンや、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミンや、ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン類や、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアルカノールアミン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、又は2種類以上の混合物で使用することが出来る。
有機樹脂(A)は、塗膜(α)の形成のために水系溶媒を含有する水系塗料組成物(X)を利用する場合には、水性の有機樹脂であることが好ましい。ここでいう「水性」とは、有機樹脂(A)を1質量%の濃度で水に溶解または分散させようとしたときに、加熱したり攪拌したりして均一化させる努力をした後に、25℃で24時間放置したときに樹脂が沈殿を生じることなく、明らかな界面(上層・下層界面のような)相分離もせずに溶液または分散液が均一であることをいう。
有機樹脂(A)は、着色塗装金属板の耐傷付き性や耐食性を改善する上で、硬化剤(D)で硬化された樹脂であることが好ましい。硬化剤(D)は、有機樹脂(A)を硬化させるものであれば特に制限はないが、例えば、メラミン樹脂やポリイソシアネート化合物を挙げることができる。メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られる生成物のメチロール基の一部またはすべてをメタノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールでエーテル化した樹脂である。ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることができる。ポリイソシアネート化合物のブロック化物を使用してもよく、例えば、前記ポリイソシアネート化合物のブロック化物であるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化物、イソホロンジイソシアネートのブロック化物、キシリレンジイソシアネートのブロック化物、トリレンジイソシアネートのブロック化物等を挙げることができる。硬化剤(D)は1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化剤(D)の使用量は、有機樹脂(A)100質量%に対し、5〜35質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、塗膜の焼付硬化が不十分で、着色塗装金属板の耐食性、耐傷付き性が低下することがあり、35質量%超であると、塗膜の焼付硬化が過剰になり、着色塗装金属板の耐食性、加工性が低下することがある。
耐傷付き性の観点から、硬化剤(D)はメラミン樹脂を含有することが好ましい。メラミン樹脂の含有量は、硬化剤(D)中に30〜100質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、耐傷付き性の改善効果が得られないことがある。
前記有機樹脂(A)にはアクリル樹脂を更に含有することが好ましい。アクリル樹脂を含有することで、基材である金属板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性が向上し、耐傷付き性が向上する。加えて、前記着色顔料(B)が後述するカーボンブラック(B1)のような疎水表面を持つ顔料である場合、顔料を水系溶媒中で均一に分散させ、形成された前記着色塗膜(α)に優れた意匠性を付与させる上でも、アクリル樹脂を含有することは好適である。
前記アクリル樹脂としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の単独もしくは2種以上を共重合したものや、それに更に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体;マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチル等のエチレン系不飽和ジカルボン酸のモノエステル単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの反応物等のヒドロキシル基含有エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ブチルアミノエチル等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル単量体;アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メトキシブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のその他のアミド基含有エチレン系不飽和カルボン酸単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の不飽和脂肪酸グリシジルエステル単量体;(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等を単独もしくは2種以上共重合したものを使用することができる。これらの単量体の重合方法としては特に限定されず、例えば、これらの単量体を水溶液中で重合開始剤を用いてラジカル重合する方法を挙げることができる。前記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用することができる。
前記アクリル樹脂の含有量は、前記有機樹脂(A)100質量%に対し、0.5〜20質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、形成した塗膜の意匠性(着色性、隠蔽性)が低下することがあり、20質量%超であると、塗膜の耐食性や加工性が低下することがある。前記アクリル樹脂のより好ましい含有量は、前記有機樹脂(A)100質量%に対し1〜15質量%、更に好ましくは2〜10質量%である。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板における着色塗膜(α)が含有する着色顔料(B)としては、特定の種類に限定されず、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、酸化鉛、コールダスト、タルク、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等の着色無機顔料や、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレン、アンスラピリミジン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド、等の着色有機顔料や、アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄粉、金属コーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングガラス粉等の光輝材等を挙げることができる。
塗膜(α)に濃色系の着色をする場合には、着色顔料(B)はカーボンブラック(B1)を含有する。カーボンブラック(B1)としては、特に限定されず、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等、公知のカーボンブラックを使用することができる。また、公知のオゾン処理、プラズマ処理、または液相酸化処理されたカーボンブラックも使用することができる。使用するカーボンブラックの粒子径は、塗布溶液中での分散性や塗膜品質、塗装性に問題がない範囲であれば特に制約はなく、具体的には一次粒子径で10〜120nmのものの使用が可能である。2〜10μm程度の薄膜での意匠性や耐食性を考慮すると、一次粒子径が10〜50nmの微粒子カーボンブラックを使用することが好ましい。このようなカーボンブラックを水系溶媒中に分散する場合、分散過程で凝集が起こるため、一次粒子径のまま分散することは一般的に難しい。すなわち、カーボンブラックは塗布溶液中では実際には一次粒子径よりも大きな粒子径を持った二次粒子の形態で存在し、塗布溶液から形成する着色塗膜(α)中でも同様の形態で存在する。薄膜での意匠性や耐食性を担保するためには、着色塗膜(α)中に分散するカーボンブラック(B1)の粒子径が重要であり、その平均粒子径が20〜300nmにあることが好ましい。
カーボンブラック(B1)は、着色塗膜(α)中の含有量をd質量%、着色塗膜(α)の厚みをbμmとしたとき、d≦15、b≦10、d×b≧20を満足する。意匠性(隠蔽性)を担保するためには、着色塗膜(α)中に含まれるカーボンブラックの絶対量を一定量以上確保することも肝要である。カーボンブラックの絶対量は、塗膜中に含まれるカーボンブラックの含有量(d質量%)と塗膜厚み(bμm)の積によって表すことができる。d×bが20未満であると、意匠性(隠蔽性)が低下することがある。dが15超であると、塗膜の造膜性が低下し、着色塗装金属板の耐食性や加工性が低下することがある。
着色塗膜(α)に淡彩系の着色をする場合、着色顔料(B)は二酸化チタン(B2)を含有する。二酸化チタン(B2)の粒子径は、150〜350nm程度が好ましい。150nm未満では、水性着色組成物中での二酸化チタン粒子どうしの凝集が起こり易いため、着色塗膜(α)を形成した後の意匠性(隠蔽性)が低下する場合があり、350nmを超えると、意匠性(隠蔽性)や加工性が低下する場合がある。二酸化チタン(B2)のより好ましい粒子径は200〜300nmである。二酸化チタン(B2)の着色塗膜(α)中の含有量は10〜70質量%である。10質量%未満であると、着色塗膜の意匠性(隠蔽性)が低下することがあり、70質量%超であると塗装金属板の加工性や耐食性が低下することがある。一般的に、着色塗膜(α)がカーボンブラック(B1)を含有し、濃色系の着色をされている場合は、着色がない場合や淡彩系の着色をされている場合よりも、塗膜に入った傷は目立ち易いという特徴を有している。二酸化チタン(B2)は,塗膜の耐傷付き性を底上げする効果を有している上に、外観を淡彩色に近づけ、傷を目立ちにくくする効果も有している。したがって、本発明のように膜厚が10μm以下の薄い着色塗膜で意匠性(隠蔽性)、加工性、耐食性を担保しながら、耐傷付き性を向上させるには、着色塗膜(α)中にカーボンブラック(B1)と二酸化チタン(B2)の双方を含有することが好ましい。この場合、カーボンブラック(B1)と二酸化チタン(B2)は塗膜中に質量比で0.5/9.5〜3/7の割合で存在することが好ましく、1/9〜2/8の質量比で存在するのがより好ましい。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板における着色塗膜(α)は、着色塗装金属板の耐食性、耐傷付き性を向上させる効果のあるシリカ粒子(C)を含むことが必要である。
シリカ粒子(C)としては、特に限定されず、例えば、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカなどのシリカ粒子を挙げることができる。市販品としては、例えば、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスIPA−ST(日産化学工業)、アデライトAT−20N、AT−20A(旭電化工業)、アエロジル200(日本アエロジル)、機能性球状シリカHPSシリーズ(東亜合成)、Nipsilシリーズ(東ソー・シリカ)等を挙げることができる。
本発明においては、着色塗膜(α)は、平均粒子径5〜50nmの球状シリカ粒子(C1)と平均粒子径0.3〜5μmの球状シリカ粒子(C2)の両方を含有することが好ましい。本発明における「球状」とは真球のみならず、球に近似した形状のことを指し、楕円体も含まれる。ただし、楕円体の場合は長径に対する短径の比が0.7以上であることが加工性、耐食性、耐傷付き性の観点から好ましく、0.8以上であることがより好ましい。平均粒子径5〜50nmの微粒子である球状シリカ粒子(C1)は、耐食性を向上させる効果が大きく、平均粒子径0.3〜5μmの比較的大きい粒子である球状シリカ粒子(C2)は、耐傷付き性を向上させる効果が大きい。着色塗膜(α)がそのような異なる特徴を有する粒子径の異なる粒子を同時に含有することで、着色塗装金属板の耐食性、耐傷付き性は相乗的に向上する。平均粒子径0.3〜5μmの比較的大きい球状シリカ粒子(C2)は、塗装金属板の艶を落とす効果も有しており、それにより着色塗膜(α)に傷が多少入っても目立ちにくくなるという利点も有している。球状シリカ粒子(C1)の平均粒子径を5nm未満にすることは、粒子の安定性の観点(安定性に欠けると、粒子の凝集や塗料組成物のゲル化等の問題が生じる)から技術的に困難であり、平均粒子径が50nm超であると耐食性の向上効果が小さい場合がある。球状シリカ粒子(C1)のより好ましい平均粒子径の範囲は8〜30nmである。球状シリカ粒子(C2)の平均粒子径が0.3μm未満であると、塗装金属板の耐傷付き性の向上効果が小さい場合があり、5μm超であると、加工性や耐食性が低下する場合がある。また、塗料組成物中での分散安定性も劣る(沈降等が生じる)場合もある。球状シリカ粒子(C2)のより好ましい平均粒子径の範囲は0.5〜3μmである。
シリカ粒子(C)として球状シリカ粒子(C1)と球状シリカ粒子(C2)を併用する場合、球状シリカ粒子(C1)の含有量は、着色塗膜(α)中に3〜30質量%であることが好ましい。3質量%未満であると、塗装金属板の耐食性、耐傷付き性向上効果が劣ることがあり、30質量%超であると、耐食性、加工性が劣ることがある。球状シリカ粒子(C1)のより好まし含有量は5〜20質量%である。
球状シリカ粒子(C2)の含有量は、着色塗膜(α)中に3〜20質量%であることが好ましい。3質量%未満であると、耐傷付き性の向上効果が劣ることがあり、20質量%超であると、耐食性、加工性が劣ることがある。球状シリカ粒子(C2)のより好ましい含有量は5〜15質量%である。
着色塗膜(α)中のシリカ粒子(C)の含有量は、10〜40質量%が好ましい。10質量%未満であると、塗装金属板の満足な耐食性、耐傷付き性の向上効果が得られないことがあり、40質量%超であると、耐食性、加工性がかえって低下しかねない。シリカ粒子(C)のより好ましい含有量は10〜30質量%である。
上記シリカ粒子(C)の含有量は、球状シリカ粒子(C1)と球状シリカ粒子(C2)を併用する場合にも当てはまる。すなわち、着色塗膜中の球状シリカ粒子(C1)と球状シリカ粒子(C2)の含有量の合計は、10〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。この場合、球状シリカ粒子(C1)と球状シリカ粒子(C2)の塗膜中の含有割合は質量比で30/70〜80/20の範囲内であることが好ましく、40/60〜50/50の範囲内であることがより好ましい。また、着色塗膜(α)中に含有される球状シリカ粒子(C1)と球状シリカ粒子(C2)との平均粒子径の比は1/350〜1/16の範囲内であることが好ましく、1/150〜1/30の範囲内であることがより好ましい。
本発明の着色塗装金属板の着色塗膜(α)は、アクリル樹脂、シリコン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子(E)を更に含有することが好ましい。樹脂粒子(E)は、着色塗装金属板の耐傷付き性を向上させる効果、塗膜の艶を落とし、塗膜に傷が多少入っても目立ちにくくする効果を有している。
アクリル樹脂の種類としては、特に限定はされず、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリメタクリル酸ブチル、非架橋ポリメタクリル酸メチル、非架橋ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸アルキルなどを挙げることができ、それらはスチレンとの共重合体であっても構わない。着色塗装金属板の耐傷付き性と加工性を高次元で両立させる上では、架橋ポリメタクリル酸メチルが特に好ましい。
シリコン樹脂の種類としては、特に限定はされず、例えば、ジメチルポリシロキサン、ポリオルガノシルセスキオキサンなどが挙げられる。着色塗装金属板の耐傷付き性と加工性を高次元で両立させる上では、ポリオルガノシルセスキオキサンが特に好ましい。
樹脂粒子(E)の平均粒子径は、特に限定はされないが、着色塗膜(α)中に樹脂粒子(E)が平均粒子径1〜5μmの球状粒子として分散されていることが好ましい。平均粒子径が1μm未満であると、着色塗装金属板の耐傷付き性の向上効果が得られないことがあり、平均粒子径が5μm超であると、塗布溶液中での分散安定性を担保することが難しく、粒子が沈降し、固形化する等の不具合を生じることがある。加えて、加工性も低下する場合がある。
着色塗膜(α)中に分散されている樹脂粒子(E)の平均粒子径をcμm、塗膜(α)の厚みをbμmとしたとき、0.3≦c/b≦1.2を満足することが好ましい。c/bが0.3未満であると、着色塗装金属板の耐傷付き性の向上効果が得られないことがあり、c/bが1.2超であると、耐食性、加工性が低下する場合がある。
樹脂粒子(E)の含有量は、着色塗膜(α)中に0.5〜15質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、着色塗装金属板の耐傷付き性の向上効果が得られないことがあり、15質量%超であると、耐食性、加工性が低下することがある。樹脂粒子(E)のより好ましい含有量は1〜10質量%である。
本発明の着色塗装金属板における着色塗膜(α)は、ポリエチレン樹脂粒子(F)を更に含有することが好ましい。着色塗膜(α)がポリエチレン樹脂粒子(F)を含有することで、着色塗膜の潤滑性が向上し、着色塗装金属板の耐傷付き性が向上する。ポリエチレン樹脂粒子(F)の平均粒子径は、特に限定はされないが、着色塗膜(α)中に樹脂粒子(F)が平均粒子径0.5〜3μmの球状粒子として分散されていることが好ましい。平均粒子径が0.5μm未満であると、着色塗装金属板の耐傷付き性の向上効果が得られないことがあり、平均粒子径が3μm超であると、耐食性が低下することがある。
ポリエチレン樹脂粒子(F)の含有量は、着色塗膜(α)中に0.5〜10質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、着色塗装金属板の耐傷付き性の向上効果が得られないことがあり、10質量%超であると、耐傷付き性、耐食性が低下する場合がある。ポリエチレン樹脂粒子(F)のより好ましい含有量は1〜7質量%である。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の塗膜(α)中には、着色顔料(B)とシリカ粒子(C)が、粒子状成分として存在する。必要に応じ、それら以外に、樹脂粒子(E)とポリエチレン樹脂粒子(F)の一方又は両方が存在することもある。
一般に、薄い塗膜中に含まれる粒子の形状や大きさを特定することは極めて困難である。とは言え、塗膜の形成に用いる塗料(塗膜の構成成分を含有している溶液又は分散液(着色組成物))中に含まれている粒子状成分は、塗膜の形成過程で何らかの物理的又は化学的変化(例えば、粒子どうしの結合や凝集、塗料溶媒への有意の溶解、他の構成成分との反応など)を被らない限り、塗膜形成後においても、塗料中に存在していたときの形状や大きさを保持していると見なすことができる。本発明で用いる粒子状成分である着色顔料(B)、シリカ粒子(C)、樹脂粒子(E)、ポリエチレン樹脂粒子(F)は、本発明の塗膜の形成に用いる塗料の水系溶媒には有意に溶解せず、且つ溶媒や他の塗膜構成成分と反応しないように選ばれる。また、これらの粒子状成分の塗料中での存在形態の保持性を高める目的で、必要に応じて、予め公知の界面活性剤や水溶性樹脂等の分散剤で水系溶媒中に分散したものを塗料の原料として使用することもできる。従って、本発明において規定している塗膜中に含まれるこれらの粒子状成分の粒子径は、塗膜の形成に用いた塗料中でのそれらの粒子径でもって表すことができる。
具体的に言えば、着色顔料(B)のカーボンブラック(B1)や二酸化チタン(B2)など、シリカ粒子(C)のうちの平均粒子径5〜50nmのシリカ粒子(C1)などの、比較的微細な粒子の径は、動的光散乱法(ナノトラック法)によって測定できる。動的散乱法によれば、温度と粘度と屈折率が既知の分散媒中の微粒子の径を簡単に求めることができる。本発明で用いる粒子状成分は、塗料の水系溶媒に有意に溶解せず、且つ溶媒や他の塗膜構成成分と反応しないように選ばれるので、所定の分散媒中で粒子径を測定して、それを塗料中における粒子状成分の粒子径として採用することができる。動的光散乱法では、分散媒中に分散しブラウン運動している微粒子にレーザー光を照射して粒子からの散乱光を観測し、光子相関法により自己相関関数を求め、キュムラント法を用いて粒子径を測定する。動的光散乱法による粒径測定装置として、例えば、大塚電子社製のFPAR−1000を使用することができる。本発明では、測定対象の粒子を含有する分散体サンプルを25℃で測定してキュムラント平均粒子径を求め、合計5回の測定の平均値を当該粒子の平均粒子径とする。動的光散乱法による平均粒子径の測定については、例えば、ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics)第57巻11号(1972年12月)第4814頁、に記載されている。
一方、シリカ粒子(C)のうちの平均粒子径が0.3〜5μmのシリカ粒子(C2)、樹脂粒子(E)、ポリエチレン樹脂粒子(F)などの、比較的大きな粒子の径としては、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)によって測定した粒度分布における積算値50%での粒子径を採用することができる。レーザー回折・散乱法は、粒子に光を照射したときに散乱される散乱光量とパターンが粒子径によって異なることを利用して、サブミクロン領域から数ミリメートル程度の粒子径を測定するのに広く用いられている。この場合も、本発明で用いる粒子状成分は、塗料の水系溶媒に有意に溶解せず、且つ溶媒や他の塗膜構成成分と反応しないように選ばれるので、測定した粒子径を塗料中における粒子状成分の粒子径として採用することができる。レーザー回折・散乱法による測定には、例えば、日機装社製のマイクロトラック粒度分析計などを使用することができる。本発明では、合計5回の測定の平均値を当該粒子の平均粒子径とする。
また、着色塗膜(α)中の粒子状成分(必須成分の着色顔料(B)、シリカ粒子(C)、任意成分である、アクリル樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子(E)、ポリエチレン樹脂粒子(F))は、着色塗膜(α)を断面から観察し、直接その形状や粒子径を測定することも可能である。粒子が真球状ではない場合は、その粒子の長径、短径を各々測定し、その平均値を粒子径として採用することができる。塗膜(α)の断面観察の方法としては特に制限はないが、常温乾燥型エポキシ樹脂中に塗装金属板を塗膜厚み方向と垂直に埋め込み、その埋め込み面を機械研磨した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察する方法や、FIB(集束イオンビ−ム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50nm〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法等が好適に使用可能である。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、着色塗膜(α)の下層に下地処理層(β)を有することが好ましい。下地処理層(β)は、特に限定されるものではないが、シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物から選ばれる少なくとも1種を含む下地処理層(β)を設けることで、着色塗膜(α)と基材金属板との密着性を更に高め、着色塗装金属板の耐食性を更に高めることができる。また、シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物を全て含む下地処理層(β)を設けることで、着色塗膜と基材金属板との密着性を特に高め、着色塗装金属板の耐食性を特に高めることができる。
下地処理層(β)に含まれるシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、信越化学工業社、東レ・ダウコーニング社、チッソ社、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社等から販売されているビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカブトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
下地処理層(β)に含まれる有機樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等、公知の有機樹脂を使用することができる。着色塗膜(α)と基材金属板との密着性を更に高めるためには、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂の少なくとも1種を使用することが好ましい。着色塗膜(α)中に含まれる有機樹脂(A)がポリエステル樹脂である場合は、それとの相容性を高め、着色塗膜の基材金属板への密着性を高める意味で、下地処理層(β)はポリエステル樹脂を含有することが特に好ましい。
下地処理層(β)に含まれるポリフェノール化合物は、ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物、またはその縮合物のことを指す。ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物としては、例えば、没食子酸、ピロガロール、カテコール等を挙げることができる。ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物の縮合物としては、特に限定されず、例えば、通常タンニン酸と呼ばれる植物界に広く分布するポリフェノール化合物等を挙げることができる。
タンニン酸は、広く植物界に分布する多数のフェノール性水酸基を有する複雑な構造の芳香族化合物の総称である。本発明の着色塗膜で使用するタンニン酸は、加水分解性タンニン酸でも縮合型タンニン酸でもよい。タンニン酸としては、特に限定されず、例えば、ハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等を挙げることができる。タンニン酸としては、市販のもの、例えば、「タンニン酸エキスA」、「Bタンニン酸」、「Nタンニン酸」、「工用タンニン酸」、「精製タンニン酸」、「Hiタンニン酸」、「Fタンニン酸」、「局タンニン酸」(いずれも大日本製薬株式会社製)、「タンニン酸:AL」(富士化学工業株式会社製)等を使用することもできる。
ポリフェノール化合物は1種で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
下地処理層(β)に含まれるシランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物から選ばれる少なくとも1種の含有量は、特に限定されないが、下地処理層中に10質量%以上含まれることが好ましい。10質量%未満の場合、含有量が少なく、着色塗膜の密着性や着色塗装金属板の耐食性の向上効果が得られないことがある。
下地処理層(β)の付着量は、特に限定されるものではないが、10〜1000mg/m2の範囲にあることが好ましい。10mg/m2未満では下地処理層(β)の十分な効果が得られず、1000mg/m2を超えると下地処理層(β)が凝集破壊しやすくなり基材金属板への密着性が低下することがある。安定した効果と経済性の観点から、より好ましい付着量範囲は50〜500mg/m2である。
下地処理層(β)は、下地処理層(β)を形成するためのコーティング剤を金属板の少なくとも片面に塗布し、加熱乾燥することで形成される。コーティング剤の塗布方法に特に制限はないが、公知のロールコート、スプレー塗布、バーコート、浸漬、静電塗布等を適宜使用することができる。焼付乾燥方法に特に制限はなく、あらかじめ金属板を加熱しておくか、塗布後に金属板を加熱するか、或いはこれらを組み合わせて乾燥を行ってもよい。加熱方法に特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用することができる。焼付乾燥温度については、到達温度で60℃〜150℃であることが好ましい。到達温度が60℃未満であると、乾燥が不十分で、塗膜と基材金属板との密着性や着色塗装金属板の耐食性が低下することがあり、150℃超であると、塗膜と基材金属板との密着性が低下することがある。より好ましい到達温度は70℃〜130℃である。
本発明において適用可能な金属板としては、着色塗膜(α)が形成される表面の粗さが、算術平均粗さRaで0.7〜1.5μm、且つ粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIで120〜300という条件を満たす限り、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、鉄基合金、アルミニウム、アルミニウム基合金、銅、銅基合金等の金属板を挙げられ、任意に金属板上にめっきしためっき金属板を使用することもできる。中でも本発明の適用において特に好適なものは亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板である。
亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−鉄めっき鋼板、亜鉛−クロムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコンめっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板、さらにはこれらのめっき層に少量の異種金属元素または不純物としてコバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、ビスマス、アンチモン、錫、銅、カドミウム、ヒ素等を含有したもの、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機物を分散させたものが含まれる。
アルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムまたはアルミニウムとシリコン、亜鉛、マグネシウムの少なくとも1種とからなる合金をめっきした金属板、例えば、アルミニウム−シリコンめっき鋼板、アルミニウム−亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−シリコン−マグネシウムめっき鋼板等が挙げられる。
更には以上のめっきと他の種類のめっき、例えば鉄めっき、鉄−りんめっき、ニッケルめっき、コバルトめっき等と組み合わせた複層めっき金属板にも適用可能である。めっき方法は特に限定されるものではなく、公知の電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等のいずれの方法でもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)金属板
使用した金属板の種類、算術平均粗さRa、粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIを、表1に示す。金属板の基材には、板厚0.5mmの軟鋼板を使用した。金属板は表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥して使用した。
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(2)下地処理層
下地処理層を形成するためのコーティング剤は、有機樹脂(表2)、シランカップリング剤(表3)、ポリフェノール化合物(表4)を表5に示す配合量で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。上記(1)で準備した金属板の表面に該コーティング剤を100mg/m2の付着量になるようにロールコーターで塗装し、到達板温度70℃の条件で乾燥させることで、必要に応じて下地処理層(E1〜E9)を形成させた。
Figure 0005927857
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(3)塗膜
塗膜を形成するための塗料組成物は、有機樹脂(A)の水分散体(下記製造例1〜5および表6)、硬化剤(D)(表7)、着色顔料(B)(表8)、シリカ粒子(C)(表9)、樹脂粒子(E)(表10)、ポリエチレン樹脂粒子(F)(表11)を表12〜15に示す配合量で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。製造例中、単に部とあるのは質量部を示し、単に%とあるのは質量%を示す。(2)で形成した下地処理層(下地処理層がない場合は金属板)の上層に、上記塗料組成物を所定の膜厚になるようにロールコーターで塗装し、所定の到達板温度になるように加熱乾燥し、塗膜を形成させた。
<水性有機樹脂製造例1>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(F1)を得た。
<水性有機樹脂製造例2>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸266部、アジピン酸199部、エチレングリコール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。窒素気流下、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸を23部、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート16部を投入し、30分間反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、イソプロピルアルコール23部、トリエチルアミン3.5部を投入し、213部のイオン交換水で水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(F2)を得た。
<水性有機樹脂製造例3>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール250部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物62部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(F3)を得た。
<水性有機樹脂製造例4>
テトラメチレングリコールおよびエチレングリコールから合成された平均分子量900のポリエーテルポリオール230部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸15部をN−メチル2−ピロリドン100部に加え、80℃に加温して溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート100部を加え、110℃に加温して2時間反応させ、トリエチルアミンを11部加えて中和した。この溶液をエチレンジアミン5部とイオン交換水570部とを混合した水溶液に強攪拌下において滴下して、固形分濃度30%のポリウレタン樹脂水分散体(F4)を得た。
<水性有機樹脂製造例5>
テトラメチレングリコールおよびエチレングリコールから合成された平均分子量900のポリエーテルポリオール80部、平均分子量700のビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物120部、および2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸12部をN−メチル2−ピロリドン100部に加え、80℃に加温して溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート100部を加え、110℃に加温して2時間反応させ、トリエチルアミンを11部加えて中和した。この溶液をエチレンジアミン5部とイオン交換水570部とを混合した水溶液に強攪拌下において滴下して、固形分濃度30%のポリウレタン樹脂水分散体(F5)を得た。
Figure 0005927857
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(4)塗装金属板
上記(1)〜(3)で作製した塗装金属板の塗膜構成および塗膜の膜厚、到達板温度を表13〜16に示す。
(5)評価試験
上記(4)で得られた塗装金属板(試験板)について、加工性、耐食性、耐傷付き性を下記に示す評価方法および評価基準にて評価した。その評価結果を表16〜19に示す。
(加工性)
試験板に180°折り曲げ加工を施し、折り曲げ部外側の外観を下記の評価基準で評価した。折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、0.5mmのスペーサーを間に挟んで実施した(一般に1T曲げと呼ばれる)。
5:塗膜に亀裂等の不具合がなく、均一な着色外観である。色落ちも認められない。
4:塗膜に極僅かの亀裂が認められるため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である(試験前の試験板を横に並べて何とか分かるレベル)。
3:塗膜に僅かの亀裂が認められるため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である(試験前の試験板を横に並べると容易に分かるレベル)。
2:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが認められる(試験板のみ見て何とか分かるレベル)。
1:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが著しい(試験板のみ見て容易に分かるレベル)。
(耐食性)
試験板の端面をテープシールした後、JIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験(SST)を72時間行い、錆発生状況を観察し、下記の評価基準で評価した。
5:錆発生なし。
4:錆発生面積が1%未満。
3:錆発生面積が1%以上、2.5%未満。
2:錆発生面積が2.5%以上、5%未満。
1:錆発生面積が5%以上。
(耐傷付き性)
JIS K 5600−5−4に準拠して、試験板表面の塗膜に45°の角度で鉛筆芯で5回線を引き、消しゴムで線を消した後に、2回以上傷が入らない鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度がH以上を、傷が目立たず、すなわち耐傷付き性が良好であると評価した。鉛筆は三菱鉛筆社製のユニ鉛筆を使用し、20℃、4.903N(500gf)の荷重条件にて試験を行った。
Figure 0005927857
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Figure 0005927857
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本発明の実施例はいずれの評価試験においても評点3点以上の優れた加工性、耐食性、及び鉛筆硬度H以上の優れた耐傷付き性を示した。また、いずれの実施例も、目視観察により、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)に優れることを確認した。なお、本発明の実施例に用いた塗料組成物を40℃で1ヶ月静置し貯蔵安定性を調査したところ、実施例33で用いた塗料組成物がゲル化していた。すなわち、カチオン性の官能基を含有したポリウレタン樹脂F6を使用したものは他の塗料組成物に比べ貯蔵安定性がやや不安定である。また、実施例69、74で用いた塗料組成物に沈降物が発生していた。すなわち、シリカ粒子(C)に粒子径6.8μmの比較的大きい球状シリカ粒子を用いたもの、及び樹脂粒子(E)に粒子径8μmの比較的大きい樹脂粒子を用いたものは、シリカ粒子や樹脂粒子の沈降が生じ、これらの分散安定性が他の塗料組成物に比べてやや劣っていた。とは言え、実施例33、69、74の塗膜の加工性、耐食性、耐傷付き性はいずれも良好であった。
一方、算術平均粗さRa、粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIの少なくとも一方が本発明の範囲を外れた比較例1〜9は耐食性、耐傷付き性のいずれか一方もしくは双方が劣っていた。シリカ粒子(C)を含有しない比較例10は耐食性、耐傷付き性が劣っていた。着色塗膜の膜厚が2μmに満たない比較例11も、耐食性、耐傷付き性が劣っていた。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想定し得ることは明らかであり、それらについても当然に発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (10)

  1. 金属板の少なくとも片面に、有機樹脂(A)を造膜成分とし、着色顔料(B)、およびシリカ粒子(C)を含んでなる着色塗膜(α)が形成されているクロメートフリー着色塗装金属板であって、
    前記金属板の表面の粗さが、算術平均粗さRaで0.7〜1.5μm、且つ粗さ曲線の平均線方向の長さ1インチ(2.54cm)当たりのピーク数PPIで120〜300であり、
    前記着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μmであって、
    更に前記金属板と前記着色塗膜(α)との間に、シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する下地処理層(β)を有し、
    前記着色顔料(B)がカーボンブラック(B1)と二酸化チタン(B2)のいずれか一方、或いは両方を含有し、
    カーボンブラック(B1)を含む場合、着色塗膜(α)中のカーボンブラック(B1)含有量をd質量%、着色塗膜(α)の厚みをbμmとしたとき、d≦15、b≦10、d×b≧20を満足し、
    二酸化チタン(B2)を含む場合、着色塗膜(α)中の二酸化チタン(B2)含有量が10〜70質量%であることを特徴とする、クロメートフリー着色塗装金属板。
  2. 前記有機樹脂(A)が硬化剤(D)で硬化された樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  3. 前記シリカ粒子(C)が、平均粒子径5〜50nmの球状シリカ粒子(C1)と平均粒子径0.3〜5μmの球状シリカ粒子(C2)とを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  4. 前記着色塗膜(α)が、アクリル樹脂、シリコン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子(E)を更に含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  5. 前記樹脂粒子(E)の平均粒子径が1〜5μmであることを特徴とする、請求項4に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  6. 前記有機樹脂(A)が、構造中にスルホン酸基を含むポリエステル樹脂(Ae)を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  7. 前記ポリエステル樹脂(Ae)が構造中に、更にビスフェノール構造を含むことを特徴とする、請求項6に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  8. 前記有機樹脂(A)が、構造中にウレア基を含むポリウレタン樹脂(Au)をさらに含有することを特徴とする、請求項6または7に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  9. 前記着色塗膜(α)が、ポリエチレン樹脂粒子(F)を更に含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  10. 前記ポリエチレン樹脂粒子(F)の平均粒子径が0.5〜3μmであることを特徴とする、請求項9に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
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