JP6063024B2 - 塗装金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、耐汚れ付着性および耐傷付き性の両方に優れ、かつ艶消しの外観を示す塗装金属板に関する。
外装建材などとして金属板を使用する場合、耐食性や意匠性などを向上させるため、金属板に塗装を施すことが多い。これまで、耐食性や意匠性などの向上に好適な様々な塗料が開発されており、使用されている。
近年、自動車の排ガスや工場からの排煙などに起因する大気汚染により、油性のカーボン系汚染物質などによる塗装金属板の汚れが顕在化してきた。このような環境悪化に由来する汚れに対しては、従来の塗装金属板では耐汚れ付着性が不十分であった。このため、従来の塗装金属板を外装建材として使用した場合、比較的短期間のうちに汚れが目立つようになっていた。このような事情により、現在、耐汚れ付着性に優れる塗装金属板が求められている。
塗装金属板の耐汚れ付着性を向上させる技術として、塗膜表面を親水化する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、シラン化合物を配合した有機溶剤系塗料を用いて塗膜を形成することが開示されている。このようにして形成された塗膜の表面では、シラン化合物が濃化している。塗膜表面に濃化したシラン化合物は、環境中の水分によってアルコキシル基が加水分解され、ヒドロキシ基を有するようになる。これにより、塗膜表面が親水性となる。その結果、塗装金属板の表面に油性のカーボン系汚染物質が付着しにくくなり、塗装金属板の耐汚れ付着性が向上する。
特開2002−294154号公報
外装建材などとして使用される塗装金属板には、耐汚れ付着性に加えて、耐傷付き性や意匠性も求められる。そこで、本発明者らは、耐汚れ付着性に加えて耐傷付き性にも優れ、かつ艶消しの外観を示す塗装金属板を製造することを試みた。
多孔質シリカ粒子は、艶消し剤として様々な有機溶剤系塗料に配合されており、かつ塗膜の耐傷付き性を向上させうることもよく知られている。多孔質シリカ粒子を有機溶剤系塗料に配合する場合、多孔質シリカ粒子はそのままでも容易に有機溶剤系塗料に分散するため、表面が未処理の多孔質シリカ粒子をそのまま有機溶剤系塗料に配合するのが一般的である。
そこで、本発明者は、シラン化合物を含む有機溶剤系塗料に表面が未処理の多孔質シリカ粒子を配合することで、耐汚れ付着性および耐傷付き性に優れた艶消しの塗膜を形成できるのではないかと考えた。しかしながら、シラン化合物に加えてさらにシリカ粒子を配合した塗料を使用して塗装金属板を製造したところ、塗膜表面の親水性が不十分であり、耐汚れ付着性を十分に向上させることができなかった。また、シリカ粒子を配合した塗料は、時間の経過とともに粘度が上昇してしまい、貯蔵安定性に劣っていた。
以上のように、従来のシラン化合物を含む有機溶剤系塗料に表面が未処理の多孔質シリカ粒子を配合した塗料を用いても、耐汚れ付着性および耐傷付き性の両方に優れ、かつ艶消しの外観を示す塗装金属板を製造することができなかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、耐汚れ付着性および耐傷付き性の両方に優れ、かつ艶消しの外観を示す塗装金属板を提供することを目的とする。
本発明者は、シラン化合物を含む有機溶剤系塗料に表面が未処理の多孔質シリカ粒子を配合すると、塗膜表面の親水性が向上せず、かつ塗料の貯蔵安定性が低下してしまう理由について鋭意検討した。その結果、本発明者は、多孔質シリカ粒子の表面に存在するヒドロキシ基がシラン化合物と反応することが原因であることを見出した。
そして、本発明者は、配合する多孔質シリカ粒子の表面を有機樹脂で被覆することで、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の塗装金属板に関する。
[1]金属板の表面に、有機溶剤系塗料を塗布し、乾燥させることで形成された塗膜を有する塗装金属板であって:前記有機溶剤系塗料は、有機樹脂と、シラン化合物またはシラン化合物の縮合物と、有機樹脂被覆シリカ粒子と、前記有機樹脂被覆シリカ粒子以外の顔料と、脱水剤とを含み;前記塗膜は、前記有機樹脂と、前記シラン化合物またはシラン化合物の縮合物と、前記有機樹脂被覆シリカ粒子と、前記顔料とを含み、JIS K5101−17−2に準拠して測定される、前記有機樹脂被覆シリカ粒子および前記顔料の混合物の懸濁液のpHは、5.5〜8.5の範囲内であり、前記懸濁液中における前記有機樹脂被覆シリカ粒子と、前記顔料との比率は、前記有機溶剤系塗料における前記有機樹脂被覆シリカ粒子と、前記顔料との比率と同じである;塗装金属板。
[2]前記有機樹脂被覆シリカ粒子は、数平均粒径が1〜15μmの多孔質シリカ粒子の表面を有機樹脂で被覆した多孔質粒子である、[1]に記載の塗装金属板。
[3]前記塗膜は、前記塗膜に含まれる有機樹脂100質量部に対して前記有機樹脂被覆シリカ粒子を1〜20質量部含む、[1]または[2]に記載の塗装金属板。
[4]前記シラン化合物は、一般式R 4−nSi(OR[ただし、R:アルキル基またはアルコキシル基、R:アルキル基、n:3または4]で表されるシラン化合物である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の塗装金属板。
本発明によれば、耐汚れ付着性および耐傷付き性の両方に優れ、かつ艶消しの外観を示す塗装金属板を提供することができる。本発明の塗装金属板は、耐汚れ付着性、耐傷付き性および意匠性に優れており、例えば外装建材などに好適である。
本発明の塗装金属板は、金属板(塗装原板)と、金属板の表面に形成された塗膜とを有する。本発明の塗装金属板は、耐傷付き性を付与し、かつ艶消しの外観とするために配合する多孔質シリカ粒子の表面が有機樹脂で被覆されていることを主たる特徴とする。
以下、本発明の塗装金属板の各構成要素について説明する。
[塗装原板]
塗装原板となる金属板の種類は、特に限定されない。塗装原板の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板などが含まれる。金属板は、必要に応じて、脱脂、酸洗、クロメート処理、クロムフリー処理、リン酸塩処理などの公知の塗装前処理が施されていてもよい。
[塗膜]
塗膜は、金属板の表面に形成されている。塗膜は、1層構成であってもよいし、下塗り塗膜/上塗り塗膜の2層構成であってもよいし、下塗り塗膜/中塗り塗膜/上塗り塗膜の3層構成であってもよい。いずれの場合であっても、この後説明する耐傷付き性および耐汚れ付着性に優れる艶消しの塗膜が最表層に形成される。下塗り塗膜および中塗り塗膜の組成および膜厚は、特に限定されず、付与したい性質(例えば耐食性や塗膜密着性など)に応じて適宜選択すればよい。また、下塗り塗膜に配合される防錆顔料の種類も、特に限定されず、クロム系およびクロムフリー系のいずれでもよい。
最表層に形成された塗膜(以下、単に「塗膜」ともいう)は、有機樹脂(ベース樹脂)と、シラン化合物またはその縮合物(親水化剤)と、有機樹脂被覆シリカ粒子と、顔料とを含む。
ベースとなる有機樹脂の種類は、特に限定されず、プレコート金属板用に使用されている公知の有機樹脂から適宜選択すればよい。ベースとなる有機樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。そのような有機樹脂の例には、ポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂との混合樹脂や、溶剤可溶型フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂などが含まれる。また、熱硬化性樹脂の例としては、平均分子量が数千程度のレギュラーポリエステル樹脂(OH価:1〜250KOHmg/g)および硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物が含まれる。硬化剤は、焼付け時に有機樹脂間を架橋する。硬化剤の種類は、使用する有機樹脂の種類や、焼付け条件などによって既知のものを適宜選択することができる。硬化剤の例には、メラミン化合物やイソシアネート化合物が含まれる。硬化剤としてメラミン化合物を使用する場合、イミノ基型またはメチロールイミノ基型のメラミン化合物よりも、メチロール基型または完全アルキル基型のメラミン化合物を使用する方が好ましい。メチロール基型および完全アルキル基型のメラミン化合物は、イミノ基型メラミン化合物およびメチロールイミノ基型メラミン化合物と比較して、シラン化合物との反応性が低く、塗料の貯蔵安定性などの点で有利である。また、塗料の貯蔵安定性に影響しない範囲内であれば、硬化触媒を適宜添加してもよい。
シラン化合物またはその縮合物は、塗膜表面に濃化して存在しており、塗膜表面を親水化して耐汚れ付着性を付与する。シラン化合物またはその縮合物を配合した塗料を金属板の表面に塗布し、焼き付けると、シラン化合物またはその縮合物は、形成される塗膜の表面に移動し、濃化する。塗膜表面に濃化したシラン化合物またはその縮合物は、環境中の水分によってアルコキシ基が加水分解され、ヒドロキシ基を有するようになる。これにより、多数のヒドロキシ基が表面に存在する、親水性および耐汚れ付着性に優れた塗膜となる。
シラン化合物としては、一般式R 4−nSi(OR[ただし、R:アルキル基またはアルコキシル基、R:アルキル基、n:3または4]で表されるものが使用される。このようなシラン化合物の例には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどが含まれる。これらのシラン化合物(モノマー)に水および触媒を添加して脱水縮合を生じさせることで、シラン化合物の縮合物(オリゴマー)を調製することができる。塗料への相溶性、塗料の貯蔵安定性および塗膜表面への親水性付与のバランスを考慮すると、シラン化合物の縮合物の重合度は、平均して1〜5程度であることが好ましい。
シラン化合物またはその縮合物の配合量は、ベースとなる有機樹脂に対して1〜20質量%の範囲内が好ましい。シラン化合物またはその縮合物の配合量が1質量%未満の場合、塗膜表面を十分に親水化できず、耐汚れ付着性を十分に付与することができないおそれがある。一方、シラン化合物またはその縮合物の配合量が20質量%超の場合、塗膜の加工性が低下してしまい、加工時にクラックが発生しやすくなるおそれがある。
有機樹脂被覆シリカ粒子は、塗膜中に分散しており、塗膜の耐傷付き性を向上させるとともに、塗膜の外観を艶消しにする。有機樹脂被覆シリカ粒子は、数平均粒径が1〜15μmの多孔質シリカ粒子の表面を有機樹脂で被覆したものである。
前述の通り、本発明の塗装金属板は、耐傷付き性の向上および塗膜の外観を艶消しにするために塗膜に配合される多孔質シリカ粒子の表面を有機樹脂で被覆することを特徴とする。このように多孔質シリカ粒子の表面を有機樹脂で被覆することで、シラン化合物またはその縮合物による親水性付加機能の低下および塗料の貯蔵安定性の低下を防止することができる。
多孔質シリカ粒子は、その表面に多数のヒドロキシ基を有しており、かつその比表面積が非常に大きい。したがって、耐傷付き性の向上および塗膜の外観を艶消しにすることを目的として、シラン化合物またはその縮合物を含む塗料に多孔質シリカ粒子を配合すると、シラン化合物またはその縮合物と多孔質シリカ粒子のヒドロキシ基とが反応してしまう。その結果、塗料の粘度が増大して塗料の貯蔵安定性が低下してしまう。また、シラン化合物またはその縮合物が消費されてしまうため、耐汚れ付着性を十分に付与することができなくなる。
この問題について、本発明では、多孔質シリカ粒子の表面を有機樹脂で被覆することで、シラン化合物またはその縮合物と多孔質シリカ粒子のヒドロキシ基との反応を抑制している。これにより、シラン化合物またはその縮合物と多孔質シリカ粒子のヒドロキシ基との反応による、親水性付加機能の低下および塗料の貯蔵安定性の低下を防止することができる。
多孔質シリカ粒子の表面を被覆する有機樹脂の種類は、塗料の溶媒(有機溶剤)中で安定であり、かつ多孔質シリカ粒子の表面のヒドロキシ基を被覆することができれば特に限定されない。そのような有機樹脂の例には、アクリル樹脂やウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカルボン酸型樹脂などが含まれる。有機樹脂被覆シリカ粒子は、市販されているものを使用してもよいし、自ら調製してもよい。多孔質シリカ粒子の表面を有機樹脂で被覆する方法は、特に限定されず、例えば気相法や液相法、オートクレーブ法、メカノケミカル法などで被覆すればよい。メカノケミカル法の例には、ジェットミルなどで多孔質シリカ粒子を粉砕しながら、粉砕された粒子をコーティングする方法が含まれる。
有機樹脂被覆シリカ粒子の配合量は、ベースとなる有機樹脂に対して1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。有機樹脂被覆シリカ粒子の配合量が1質量%未満の場合、耐傷付き性を十分に向上させることができず、また塗膜の外観を艶消しにできないおそれがある。一方、有機樹脂被覆シリカ粒子の配合量が20質量%超の場合、加工性が低下したり、製造コストが増大したりするおそれがある。
顔料は、有機樹脂被覆シリカ粒子以外に配合される、着色顔料や体質顔料などである。顔料は、1種のみであってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
顔料の種類は、特に限定されず、後述するpHの条件を満たすように公知の顔料から適宜選択することができる。着色顔料の例には、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック、鉄黒、チタンイエロー、ベンガラ、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、コバルトグリーン、モリブデン赤などの無機顔料や;CoAl、CoCrAl、CoCrZnMgAl、CoNiZnTi、CoCrZnTi、NiSbTi、CrSbTi、FeCrZnNi、MnSbTi、FeCr、FeCrNi、FeNi、FeCrNiMn、CoCr、Mn、Co、SnZnTiなどの金属成分を含む複合酸化物焼成顔料;Al、樹脂コーティングAl、Niなどのメタリック顔料;リソールレッドB、ブリリアントスカーレットG、ピグメントスカーレット3B、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、レーキレッドD、パーマネントレッド4R、ボルドー10B、ファストイエローG、ファストイエロー10G、パラレッド、ウォッチングレッド、ベンジジンイエロー、ベンジジンオレンジ、ボンマルーンL、ボンマルーンM、ブリリアントファストスカーレット、バーミリオンレッド、フタロシアニンブロー、フタロシアニングリーン、ファストスカイブルー、アニリンブラックなどの有機顔料が含まれる。また、体質顔料の例には、クレー、タルク、硫酸バリウム、シリカなどが含まれる。
顔料の配合量は、ベースとなる有機樹脂に対して5〜150質量%の範囲内であることが好ましい。顔料の配合量が5質量%未満の場合、必要な色調が得られないおそれがある。一方、顔料の配合量が150質量%超の場合、加工性や塗装性などが低下するおそれがある。
上述の有機樹脂被覆シリカ粒子および顔料(着色顔料や体質顔料など)を含む顔料全体のpHは、5.5〜8.5の範囲内であることが好ましい。ここで「有機樹脂被覆シリカ粒子および顔料を含む顔料全体のpH」とは、JIS K5101−17−2(顔料試験方法−第17部:pH値−第2節:常温抽出法)に準拠して測定される、有機樹脂被覆シリカ粒子および顔料の混合物の懸濁液のpHを意味する。具体的には、二酸化炭素を除去した水に有機樹脂被覆シリカ粒子および顔料を加えて調製した5質量%懸濁液のpHを測定することにより求められる。
ここで問題となるのは、顔料全体のpHが5.5〜8.5の範囲内であるかどうかである。すなわち、複数の顔料のうちの1種の顔料のpHが5.5〜8.5の範囲外であったとしても、その他の顔料と組み合わせた顔料全体のpHが5.5〜8.5の範囲内であればよい。
顔料全体のpHを5.5〜8.5の範囲内とするのは、塗料中においてシラン化合物またはその縮合物が高分子化するのを抑制するためである。一般的に使用されている着色顔料や体質顔料の中には、塗料原料に由来する水分や外気から塗料中に吸収された水分に接触すると、水素イオンや水酸化物イオンの発生源となるものが多い。水酸化物イオンは、シラン化合物またはその縮合物のアルコキシ基をヒドロキシ基に置換する。その結果、シラン化合物またはその縮合物が脱水縮合し、高分子化してしまう。また、水素イオンは、シラン化合物またはその縮合物の脱水縮合を促進させて高分子化させてしまう。このように塗料中においてシラン化合物またはその縮合物が高分子化してしまうと、シラン化合物またはその縮合物は、分子量の増加による立体障害により、塗料の焼き付け時に塗膜表面に移動できなくなる。その結果、塗膜表面を親水化することができず、耐汚れ付着性を十分に付与できなくなる。また、塗料の粘度が過剰に増大してしまう。
これに対し、顔料全体のpHを5.5〜8.5の範囲内とすることで、顔料が水分と接触したとしても、水素イオンおよび水酸化物イオンの発生を顕著に抑制することができる。その結果、塗料の焼き付け時にシラン化合物またはその縮合物を塗膜表面に移動させることができ、塗膜表面の耐汚れ付着性を十分に付与することができる。
その他、塗装性、塗膜硬度、意匠性、耐食性を向上させる観点から、塗膜には、ガラスビーズ、ガラスフレーク、鱗片状酸化鉄粉、マイカなどの無機骨材;パールマイカ、鱗片状金属粉、金属被覆鱗片状粉末などの光輝性粉末;ポリアクリロニトリル(PAN)ビーズ、アクリルビーズ、ナイロンビーズ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子などの有機樹脂骨材;レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの各種添加剤;などを添加してもよい。たとえば、塗膜に数平均粒径が1〜15μmのPTFE粒子を配合することで、塗膜の耐傷付き性をさらに向上させることができる。これらの骨材粉末や添加剤なども、顔料と同じ理由で、中性(pH:5.5〜8.5)となるように組み合わせて使用することが好ましい。また、上記PTFE粒子と、PANビーズ、アクリルビーズおよびマイカからなる群から選択される1種もしくは2種以上の骨材とを併用することで、耐傷付き性をさらに向上させることができる。この際、PANビーズ、アクリルビーズ、マイカの数平均粒径は、それぞれ10μm以上であることが好ましい。
塗膜の膜厚は、特に限定されないが、通常3〜30μmの範囲内である。塗膜が薄すぎる場合、塗膜の耐久性および隠蔽性が不十分となるおそれがある。一方、塗膜が厚すぎる場合、製造コストが増大するとともに、焼付け時にワキが発生しやすくなるおそれがある。
塗膜は、一般的な方法で形成されうる。たとえば、有機樹脂と、シラン化合物またはその縮合物と、有機樹脂被覆シリカ粒子と、顔料と、脱水剤とを含む有機溶剤系塗料を金属板(塗装原板)の表面に塗布し、焼き付ければよい。
有機樹脂、シラン化合物またはその縮合物、有機樹脂被覆シリカ粒子、および顔料の種類および塗料中の配合量は、上述の塗膜の組成に応じて適宜設定すればよい。
脱水剤は、塗料に含まれる水分を除去する機能を担う。このように塗料中の水分を除去することで、脱水剤は、塗料中においてシラン化合物またはその縮合物が水分と反応して高分子化してしまうことを抑制する。前述の通り、シラン化合物またはその縮合物が高分子化してしまうと、塗料の粘度が上昇してしまい、貯蔵安定性が低下してしまう。また、塗料を焼き付ける際にシラン化合物またはその縮合物を塗膜表面に濃化させることが困難となり、塗膜表面の耐汚れ付着性を十分に向上させることができない。
脱水剤としては、シラン化合物のヒドロキシ基とは反応せず、水とのみ反応するものが好ましい。そのような脱水剤としては、オルトギ酸トリアルキル、オルト酢酸トリアルキル、オルトホウ酸トリアルキルなどが挙げられる。オルトギ酸トリアルキルの例には、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリブチルが含まれる。オルト酢酸トリアルキルの例には、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリブチルが含まれる。オルトホウ酸トリアルキルの例には、オルトホウ酸トリメチル、オルトホウ酸トリエチル、オルトホウ酸トリブチルが含まれる。これらの脱水剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
脱水剤の配合量は、ベースとなる有機樹脂に対して1〜200質量%の範囲内であればよい。脱水剤の配合量が1質量%未満の場合、塗料中の水分を十分に除去できないおそれがある。一方、脱水剤の配合量が200質量%超の場合、塗料の粘度が過度に低下し、塗装しにくくなるおそれがある。脱水剤を塗料に添加するタイミングは、特に限定されない。たとえば、脱水剤を顔料に接触させて、顔料表面の水分を予め脱水した後に、脱水剤および顔料の混合物を塗料に添加してもよい。また、有機樹脂を塗料(溶媒)に溶解する時または溶解した後に、脱水剤を添加してもよい。また、シラン化合物またはその縮合物と脱水剤との混合物を塗料に添加してもよい。このようにすることで、シラン化合物またはその縮合物の周囲に脱水剤が存在するため、塗料混練後であっても、シラン化合物またはその縮合物の縮合反応(高分子化)を抑制することができ、塗料の貯蔵安定性を高めることができる。このように、脱水剤は、塗料混練時に添加してもよいし、混練後に添加してもよい。なお、脱水剤は、塗料焼付け時に溶剤などとともに蒸発し、焼付け後の塗膜には残らない。
有機溶剤の種類は、各成分を溶解または分散させることができれば特に限定されない。有機溶剤の例には、キシレンなどの芳香族系溶剤、ヘキサンなどのアルカン系溶剤、アセトンなどのケトン系溶剤などが含まれる。
塗料の塗布方法は、特に限定されず、プレコート鋼板の製造に使用されている方法から適宜選択すればよい。塗布方法の例には、ロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ダイコート法などが含まれる。焼き付け条件は、例えば、到達板温150〜300℃で20〜120秒間焼き付ければよい。
以上のように、本発明の塗装金属板は、最表層の塗膜中にシラン化合物またはその縮合物と、有機樹脂被覆シリカ粒子とを配合しているため、耐汚れ付着性および耐傷付き性に優れており、かつ艶消しの外観を示す。
本発明では、多孔質シリカ粒子の表面を有機樹脂で被覆している。したがって、焼き付ける前の塗料において、シラン化合物またはその縮合物が消費されることも、高分子化することもない。したがって、塗料を焼き付ける際に、シラン化合物またはその縮合物を塗膜表面に適切に濃化させることができ、耐汚れ付着性を十分に付与することができる。また、時間が経過しても塗料の粘度が増加することはなく、塗料の貯蔵安定性が良好である。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
1.上塗り塗料の調製と評価
平均分子量3000のレギュラーポリエステル樹脂(バイロンG802;東洋紡績株式会社)10質量部をシクロヘキサノン100質量部に加え、加温して溶解させた。得られた溶液に、完全メチル化メラミン(サイメル303;日本サイテックインダストリーズ株式会社)およびメチロール化メラミン(サイメル370;日本サイテックインダストリーズ株式会社)をそれぞれレギュラーポリエステル樹脂に対して20質量部ずつ添加した。さらに、2種類の硬化触媒(キャタリスト4050およびキャタリスト296−9;いずれも日本サイテックインダストリーズ株式会社)をそれぞれレギュラーポリエステル樹脂に対して0.1質量部ずつ添加して、塗料No.1〜22および塗料No.27〜33のベース樹脂を調製した。
次いで、得られたベース樹脂に、オルト蟻酸エチルで適宜希釈したテトラメトキシシランのオリゴマー(シラン化合物の縮合物;メチルシリケート40またはメチルシリケート51;コルコート株式会社)、多孔質シリカ粒子(表面処理シリカ粒子または未処理シリカ粒子)、雨筋汚れが目立ちやすい白色のTiO顔料(タイペイクCR90;石原化学工業株式会社)およびオルトギ酸トリエチル(脱水剤)を配合して、No.1〜22およびNo.27〜31の上塗り塗料を調製した。また、比較のため、TiO顔料の代わりにpH9.5の炭酸カルシウム(サンライト SL2200;竹原化学工業株式会社)を添加したNo.32の上塗り塗料、およびTiO顔料とともにpH2.5のカーボンブラック(#2350;三菱化学株式会社)を添加したNo.33の上塗り塗料も作製した。
同様に、市販のアクリル樹脂系クリアー塗料(C951型;日本ファインコーティングス株式会社)に、オルト蟻酸エチルで適宜希釈したテトラメトキシシランのオリゴマー、多孔質シリカ粒子、TiO顔料およびオルトギ酸トリエチルを配合して、No.23〜26の上塗り塗料を調製した。
一部の上塗り塗料には、平均粒径5μmのPTFE粒子(ルブロンL5;ダイキン工業株式会社)または9μmのPTFE粒子(フルオンL150J;旭硝子株式会社)をさらに配合した。また、一部の上塗り塗料には、骨材として、ポリアクリロニトリル(PAN)微粒子(タフチックA20;東洋紡績株式会社)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子(タフチックARS650S;東洋紡績株式会社)、またはマイカ(MK300;コープケミカル株式会社)をさらに配合した。
調製した上塗り塗料の組成を表1および表2に示す。表1および表2に示されるシリカ粒子および顔料のpHは、JIS K5101−17−2に準拠して測定した。
表1および表2に示される、表面処理1のシリカ粒子、表面処理2のシリカ粒子および表面処理4のシリカ粒子は、それぞれ、多孔質シリカ粒子表面をアクリル樹脂で被覆した、サイリシア436、サイリシア446およびサイリシア476(いずれも富士シリシア化学株式会社)を使用した。また、表面処理3のシリカ粒子は、有機樹脂被覆多孔質シリカであるニップジェルAZ260(東ソー・シリカ株式会社)を使用した。未処理シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子のサイリシア430(富士シリシア化学株式会社)を使用した。各多孔質シリカ粒子の表面をX線電子分光法で元素分析した結果を表3に示す。
Figure 0006063024
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調製した各塗料について、貯蔵安定性を調べた。具体的には、各塗料を40℃で18日間保管して、保管前後の粘度変化を調べた。各塗料の粘度は、B型粘度計を用いて測定した。
たとえば、表面を有機樹脂で被覆した多孔質シリカを配合したNo.2の塗料では、初期粘度は495mPa・sであり、保管後の粘度は515mPa・sであった。このように、表面を有機樹脂で被覆した多孔質シリカを配合した塗料では、保管前後で粘度の変化はほとんどなかった。一方、未処理の多孔質シリカを配合したNo.29の塗料では、初期粘度は549mPa・sであり、保管後の粘度は1023mPa・sであった。このように、未処理の多孔質シリカを配合した塗料では、粘度が大幅に増加した。
2.塗装鋼板の作製と評価
塗装原板として、片面あたりのめっき付着量が125g/mの溶融55%アルミ−亜鉛めっき鋼板(板厚0.3mm)を準備した。
めっき鋼板の表面をアルカリ脱脂した後に、表面調整処理およびクロメート処理を施した。次いで、めっき鋼板の表面に、エポキシ系プライマー塗料(700Pプライマ;大日本インキ化学工業株式会社)を塗布し、最高到達板温200℃で20秒間焼き付けて、乾燥膜厚5μmの下塗り塗膜を形成した。
次いで、表1に示される上塗り塗料を下塗り塗膜の上に塗布し、最高到達板温215℃で30秒間焼き付けて、乾燥膜厚15μmの上塗り塗膜を形成した。なお、No.31の塗料については、粘度が非常に高くなってしまい、上塗り塗膜を形成することができなかった。
各塗装鋼板から試験片を切り出し、塗膜表面の親水性および耐汚れ付着性を調べた。親水性については、試験片を温水に30分間浸漬してアルコキシル基を加水分解した後、接触角測定器を用いて塗膜表面と水との静的接触角を測定した。耐汚れ付着性については、南に向けて垂直配置した各試験片の上に雨水が流れ落ちるように、長さ20cmの塩化ビニル製波板を角度15°で各試験片の上に取り付け、千葉県市川市で屋外暴露試験を行った。試験開始から3ヶ月後に、試験片から2m離れた位置から各試験片の表面を目視観察した。雨筋汚れが無い場合は「○」、若干の雨筋汚れが観察された場合は「△」、明確な雨筋汚れが観察された場合は「×」と評価した。
また、各塗装鋼板から試験片を切り出し、耐傷付き性についても調べた。直径125μmのダイヤモンド針を塗膜の表面に垂直に設置し、クレメンス型引掻き硬度試験機を用いて所定の荷重を加えながら引掻き、めっき層の金属面が見えた最小の荷重を評価値とした。評価値が550g以上の場合は「◎」、500g以上で550g未満の場合は「◎〜○」、450g以上で500g未満の場合は「○」、450g未満の場合は「×」と評価した。
また、各塗装鋼板から試験片を切り出し、艶消し度についても調べた。各試験片について、光沢計を用いて60°鏡面光沢度を測定した。
各塗装鋼板についての、親水性、耐汚れ付着性、耐傷付き性および艶消し度の評価結果を表4に示す。また、各塗料の貯蔵安定性の評価結果も表4に併せて示す。表4において、各塗料の貯蔵安定性については、保管前後の粘度の差が50mPa・s未満の場合は「○」、50mPa・s以上の場合は「×」と評価した。
Figure 0006063024
表4に示されるように、シラン化合物、脱水剤および顔料に加えて、さらに有機樹脂で表面を被覆した多孔質シリカ粒子を添加したNo.1〜26の塗料は、貯蔵安定性に優れており、かつ形成された塗膜の耐汚れ付着性、耐傷付き性および艶消し性にも優れていた。
これに対し、多孔質シリカ粒子を添加しなかったNo.27および28の塗料を用いて形成された塗膜は、耐傷付き性および艶消し性に劣っていた。また、未処理のシリカ粒子を添加したNo.29および30の塗料を用いて形成された塗膜は、貯蔵安定性に加え、耐汚れ付着性に劣っていた。これは、親水化剤のテトラメトキシシランのオリゴマーが、シリカ粒子表面のヒドロキシ基と反応して消費されてしまったためと考えられる。また、脱水剤を添加しなかったNo.31の塗料は、貯蔵安定性が悪く、塗膜を形成することができなかった。また、顔料混合物のpHが5.5〜5.8の範囲外であるNo.32および33の塗料も、貯蔵安定性に加え、耐汚れ付着性に劣っていた。
本発明の塗装金属板は、耐汚れ付着性、耐傷付き性および意匠性に優れており、例えば、屋根材や壁材などの外装建材として好適である。

Claims (4)

  1. 金属板の表面に塗が形成された塗装金属板であって
    記塗膜は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂またはこれらの組み合わせである有機樹脂、シラン化合物またはシラン化合物の縮合物と、有機樹脂被覆シリカ粒子と、酸化チタンとを含み、
    JIS K5101−17−2に準拠して測定される、前記有機樹脂被覆シリカ粒子および前記酸化チタンの混合物の懸濁液のpHは、5.5〜8.5の範囲内であり、
    前記懸濁液中における前記有機樹脂被覆シリカ粒子と、前記酸化チタンとの比率は、前記塗膜における前記有機樹脂被覆シリカ粒子と、前記酸化チタンとの比率と同じである、
    塗装金属板。
  2. 前記有機樹脂被覆シリカ粒子は、数平均粒径が1〜15μmの多孔質シリカ粒子の表面を有機樹脂で被覆した多孔質粒子である、請求項1に記載の塗装金属板。
  3. 前記塗膜は、前記塗膜に含まれる有機樹脂100質量部に対して前記有機樹脂被覆シリカ粒子を1〜20質量部含む、請求項1に記載の塗装金属板。
  4. 前記シラン化合物は、一般式R 4−nSi(OR[ただし、R:アルキル基またはアルコキシル基、R:アルキル基、n:3または4]で表されるシラン化合物である、請求項1に記載の塗装金属板。
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