以下、本発明の一実施の形態に係る塗装金属板を説明する。上記塗装金属板は、金属板と、当該金属板上に配置される上塗り塗膜とを有する。
上記金属板は、本実施の形態における効果が得られる範囲において、公知の金属板から選ぶことができる。当該金属板の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板などが含まれる。上記金属板は、耐食性、軽量化および対費用効果の観点から、めっき鋼板であることが好ましい。当該めっき鋼板は、特に、耐食性の観点、および外装建材としての適性の観点から、溶融55%Al―Zn合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板またはアルミニウムめっき鋼板であることが好ましい。
上記金属板は、その表面に化成処理皮膜を有することが、塗装金属板の密着性および耐食性を向上させる観点から好ましい。化成処理は、金属板の塗装前処理の一種であり、化成処理皮膜は、当該塗装前処理によって形成される組成物の層である。上記金属板は、非クロメート防錆処理が施されていることが、塗装金属板の製造および使用における環境への負荷を軽減する観点から好ましく、クロメート防錆処理が施されていることが、耐食性をさらに高める観点から好ましい。
上記非クロメート防錆処理による上記化成処理皮膜の例には、Ti−Mo複合皮膜、フルオロアシッド系皮膜、リン酸塩皮膜、樹脂系皮膜、樹脂およびシランカップリング剤系皮膜、シリカ系皮膜、シリカおよびシランカップリング剤系皮膜、ジルコニウム系皮膜、および、ジルコニウムおよびシランカップリング剤系皮膜、が含まれる。
上記の観点から、上記金属板における、当該Ti−Mo複合皮膜の付着量は、全TiおよびMo換算で10〜500mg/m2であることが好ましく、上記フルオロアシッド系皮膜の付着量は、フッ素換算または総金属元素換算で3〜100mg/m2であることが好ましく、上記リン酸塩皮膜の付着量は、リン元素換算で0.1〜5g/m2であることが好ましい。
また、上記樹脂系皮膜の付着量は、樹脂換算で1〜500mg/m2であることが好ましく、上記樹脂およびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Si換算で0.1〜50mg/m2であることが好ましく、上記シリカ系皮膜の付着量は、Si換算で0.1〜200mg/m2であることが好ましく、上記シリカおよびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Si換算で0.1〜200mg/m2であることが好ましく、上記ジルコニウム系皮膜の付着量は、Zr換算で0.1〜100mg/m2であることが好ましく、上記ジルコニウムおよびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Zr換算で0.1〜100mg/m2であることが好ましい。
また、上記クロメート防錆処理の例には、塗布型クロメート処理、および、リン酸―クロム酸系処理、が含まれる。上記の観点から、上記金属板における当該クロメート防錆処理による皮膜の付着量は、クロム元素換算で20〜80g/m2であることが好ましい。
上記上塗り塗膜は、フッ素樹脂で構成される。上塗り塗膜は、フッ素樹脂を主成分として含有していれば、他の樹脂をさらに含有していてもよい。たとえば、上塗り塗膜は、上塗り塗膜中の樹脂成分の50〜85質量%のフッ素樹脂および残余のアクリル樹脂から構成されていてもよい。樹脂成分中の樹脂は、互いに結合していてもよいし、結合していなくてもよい。
上記フッ素樹脂は、耐久性や耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性などに優れ、中でも、高い加工性および機械的強度を有することから、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)であることが好ましい。
上記アクリル樹脂は、塗膜密着性の向上に寄与する。アクリル樹脂は、ポリフッ化ビニリデンと相溶性を有する熱可塑性アクリル樹脂または熱硬化性アクリル樹脂であることが好ましい。当該アクリル樹脂の例には、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル(EA)、アクリル酸ブチル(BA)、メタクリル酸ブチル(BMA)などのアクリル系モノマーのポリマー、または当該アクリル系モノマーを含むモノマーのコポリマーが含まれる。
上記上塗り塗膜は、ポリフッ化ビニリデンおよびアクリル樹脂からなる樹脂成分を主成分として構成されていることが、上記の観点から好ましい。この場合、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とアクリル樹脂(AR)との質量比(PVDF:AR)は、50:50〜85:15の範囲内であることが好ましい。ポリフッ化ビニリデンの質量比が低すぎると、耐候性や耐食性、耐汚染性などのフッ素樹脂の特性を十分に発揮させることができないことがあり、ポリフッ化ビニリデンの質量比が高すぎると、上塗り塗膜の密着性が低下し、塗装金属板の加工性が低下してしまうことがある。
上記上塗り塗膜の膜厚Tは、3〜40μmである。上塗り塗膜の膜厚Tは、厚すぎると塗装不良(ワキ)の発生や生産性の低下および製造コストの上昇などの原因となることがあり、薄すぎると所期の意匠性や所期の平坦部耐食性が得られないことがある。たとえば、生産性が良好であり、所期の光沢と発色を呈し、かつ少なくとも10年の外装建材としての実使用が可能な塗装金属板を得るためには、上塗り塗膜の膜厚Tは、上記の観点から、例えば10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。また、上記の理由から、上塗り塗膜の膜厚Tは、35μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。上塗り塗膜の膜厚Tは、例えば上塗り塗膜の複数個所における底面から表面までの距離の平均値である。
また、塗装金属板が上塗り塗膜以外の他の塗膜を有する場合には、上塗り塗膜の膜厚Tは、当該他の塗膜の存在をさらに考慮して決めることが可能である。たとえば、塗装金属板が後述する下塗り塗膜と上塗り塗膜とを有する場合には、上塗り塗膜の膜厚Tは、意匠性、耐食性および加工性の観点から、10〜30μmであることが好ましい。また、塗装金属板が下塗り塗膜と後述する中塗り塗膜と上塗り塗膜とを有する場合には、上塗り塗膜の膜厚Tは、上記の観点から、3〜15μmであることが好ましい。
上記上塗り塗膜の膜厚Tは、塗装金属板の意匠性の観点から、上塗り塗膜の色が明るいとより厚いことが好ましく、上塗り塗膜の色が濃いとより薄くすることが可能である。一概には言えないが、例えば、上塗り塗膜のL値が70以下であれば、上塗り塗膜の膜厚Tは20μm以下とすることができ、上塗り塗膜のL値が80超であれば膜厚Tは、25μm以上であることが好ましい。
あるいは、上記上塗り塗膜の膜厚Tは、塗装金属板の意匠性の観点から、上塗り塗膜の色が、上塗り塗膜形成前の鋼板の表面(例えば後述する下塗り塗膜)の色に近いほど薄くすることが可能である。一概には言えないが、例えば、上塗り塗膜のL値と当該塗膜形成前の鋼板の表面の色のL値との差の絶対値ΔLが10以下であれば上塗り塗膜の膜厚Tを11μm以下することができ、ΔLが20以下であれば膜厚Tを13μm以下とすることができ、ΔLが50以下であれば膜厚Tを15μm以下とすることができる。
なお、上記L値は、市販の分光測色計(例えばコニカミノルタオプティクス株式会社製「CM3700d」)による測定結果からハンター色差式により算出して求めることができる。
上記上塗り塗膜は、光沢調整剤を含有する。当該光沢調整剤は、塗装金属板における所期の光沢を実現する目的や、製造ロット間での光沢のバラツキを調整する目的などで、上塗り塗膜の表面を適度に粗すために上塗り塗膜中に配合され、光沢を伴う所期の外観を塗装金属板にもたらす。
上記光沢調整剤の個数平均粒径Rは、1.0μm以上である。光沢調整剤が小さすぎると上塗り塗膜の光沢が高すぎ、所期の意匠性が得られないことがある。このように、光沢調整剤の当該個数平均粒径Rは、塗装金属板の所期の意匠性(光沢度)に応じて後述の式を満たす範囲において適宜に決めることが可能であるが、大きすぎると上塗り塗膜の光沢が低すぎ、所期の意匠性が得られなくなる。たとえば、平坦部耐食性とともに、60°における光沢度が20〜85の塗装金属板を得る観点から、光沢調整剤の個数平均粒径Rは、2.0μm以上であることが好ましく、3.0μm以上であることがより好ましく、5.0μm以上であることがさらに好ましく、7.0μm以上であることがより一層好ましい。当該個数平均粒径は、上塗り塗膜の断面の観察により確認することが可能であり、あるいは、画像解析法およびコールター法で(例えば、ベックマン・コールター社製 精密粒度分布測定装置「Multisizer4」を用いて)測定することが可能である。
また、塗装金属板が上塗り塗膜以外の他の塗膜を有する場合には、上記光沢調整剤の個数平均粒径Rは、上塗り塗膜の膜厚Tに応じて決めることが可能である。たとえば、塗装金属板が下塗り塗膜と上塗り塗膜とを有する場合には、上記光沢調整剤の個数平均粒径Rは、所期の光沢による意匠性、耐食性および加工性の観点から、2.0μm以上であることが好ましい。また、塗装金属板が下塗り塗膜と後述する中塗り塗膜と上塗り塗膜とを有する場合には、上記光沢調整剤の個数平均粒径Rは、上記の観点から、1.0μm以上であることが好ましい。
上記上塗り塗膜における上記光沢調整剤の含有量は、0.01〜15体積%である。当該含有量が多すぎると上塗り塗膜の光沢が低すぎ、また加工部密着性が低下する。当該含有量が少なすぎると当該光沢が制御できないため、多くても少なくても所期の意匠性が得られないことがある。たとえば、60°における光沢度が20〜85の塗装金属板を得るためには、上塗り塗膜中における光沢調整剤の含有量は、0.05体積%以上であることが好ましく、0.1体積%以上であることがより好ましい。また、上記の理由から、上塗り塗膜中における光沢調整剤の含有量は、13体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましい。当該含有量は、上塗り塗膜の灰分の測定や上塗り塗膜の溶解による光沢調整剤の回収、複数箇所での元素識別した断面像についての画像解析などによって確認することが可能である。
上記光沢調整剤は、細孔を有する粒子(以下、「細孔粒子」とも言う)である。細孔粒子の例には、一次粒子が化学的に接合した凝集体、一次粒子が物理的に接合した集合体、および多孔質粒子が含まれる。当該多孔質粒子は、少なくとも粒子の内部に多孔質構造を有する。上記光沢調整剤は、上記細孔粒子のみから構成されていてもよいし、細孔粒子以外の粒子を含んでいてもよい。当該細孔粒子は、無機粒子であっても有機粒子であってもよく、後述する式を満足する範囲において、光沢調整剤として用いられる公知の細孔粒子から選ぶことができる。当該細孔粒子の材料の例には、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ポリアクリロニトリル、および、炭酸カルシウム−リン酸カルシウム複合体、が含まれる。上記光沢調整剤は、塗装金属板の光沢の高い調整作用を有する観点から、シリカ粒子であることが好ましい。
上記塗装金属板は、上記光沢調整剤の個数平均粒径をR(μm)、上記上塗り塗膜の膜厚をT(μm)、上記光沢調整剤の個数基準の累積粒度分布(以下、「個数粒度分布」とも言う)における97.5%粒子径をD97.5(μm)としたときに、下記式を満足する。ただし、前記光沢調整剤の個数粒度分布の上限粒径をRu(μm)としたときに、当該Ruは、1.2T以下である。「上限粒径(Ru)」は、個数粒度分布における粒度分布曲線が、個数平均粒径R以上でベースラインと重なるときの粒径である。
D97.5/T≦0.9
D97.5は、本発明の効果が得られる上記光沢調整剤の粒径の実質的な指標となる。D97.5/Tが大きすぎると、上塗り塗膜の実使用に伴う減耗によって上記細孔粒子が露出し、所期の平坦部耐食性が得られないことがあり、D97.5/Tが小さすぎると所期の光沢度が得られないことがある。
たとえば、60°における光沢度が20〜85の塗装金属板を得る観点から、D97.5/Tは、0.15以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることがさらに好ましい。また、たとえば、外装建材としての実使用年数が少なくとも10年以上である塗装金属板を得る観点から、D97.5/Tは、0.7以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。
一方、当該個数粒度分布では、D97.5よりも大きな粒子は、当該粒子全ての個数の約2.5%程度しか含まれない。したがって、「D97.5/T≦0.9」を満たす個数粒度分布における個数平均粒径R以上の粒径において、当該粒度分布曲線が特定のシャープさを呈する光沢調整剤は、そのまま、本発明に適用することが可能である。すなわち、「D97.5/T≦0.9」を満たす個数平均粒径R以上の個数粒度分布における粒度分布曲線と当該個数粒度分布におけるベースラインとの重複点(Ru)が1.2T以下である上記光沢調整剤は、本発明に適用され得る。
上限粒径Ru(μm)が1.2T以下であっても(0.9T超であっても)十分な平坦部耐食性が発現される理由は、以下のように考えられる。まず、上塗り塗膜では、光沢調整剤の上には上塗り塗膜の樹脂組成物が被さるので、1.2Tまでの粒径の光沢調整剤であれば、通常、上塗り塗膜の表面に露出しないため、と考えられる。また、上記光沢調整剤において0.9Tよりも大きな粒径の粒子は、上記Rよりも大きい範囲の実際の上記個数粒度分布が正規分布からずれたとしても、正規分布からさほどに大きくずれるとは考えられにくいので、多くても全体の2.5%以上は存在しないと考えられる。このため、上記光沢調整剤における0.9Tよりも大きな粒径の粒子は、平坦部耐食性に実質的な影響を及ぼすには少なすぎる、と考えられる。さらに、上記光沢調整剤は、一般に異形であり、通常、ある程度扁平である。上塗り塗膜中の上記光沢調整剤は、後述の上塗り塗料の塗布によって、通常、光沢調整剤の長軸方向が鉛直方向よりも水平方向により向きやすいので、上塗り塗膜中の上記光沢調整剤における膜厚方向における粒径は、その光沢調整剤の長径(例えば1.2T)よりも通常は小さくなるため、と考えられる。
上記Ruが大きすぎると、上塗り塗膜の実使用に伴う減耗によって上記細孔粒子が露出し、所期の平坦部耐食性が得られないことがある。外装建材としての実使用年数が少なくとも10年以上である塗装金属板を得る観点から、RuはT未満であることが好ましく、0.9T以下であることがより好ましく、0.7T以下であることがさらに好ましい。R、D97.5およびRuは、上記光沢調整剤の個数粒度分布から求めることが可能である。
なお、上記光沢調整剤の個数粒度分布における、平均粒径Rよりも小さい側については、上記の粒度分布の条件を満足する範囲において、いかなる態様であってもよい。
上記の粒度分布に係る条件を満足する上記光沢調整剤には、市販品またはその分級品を用いることが可能である。
なお、上記塗装金属板を製造するにあたり、上記光沢調整剤が前述の粒子の大きさの条件を満足しないこと(例えば1.2Tよりも大きな粒径を有する粗大粒子が存在することなど)があり、あるいは、製造の過程で上記の条件から外れることがある。この場合、後述するローラーミルによる処理のように、後述の上塗り塗料中で当該粗大粒子を粉砕する工程を行うことが、上記の塗装金属板を得る観点から好適である。
上記上塗り塗膜は、本実施の形態における効果が得られる範囲において、前述した樹脂および光沢調整剤以外の他の成分をさらに含有していてもよい。たとえば、上塗り塗膜は、着色剤をさらに含有していてもよい。着色剤の例には、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック、鉄黒、酸化鉄イエロー、チタンイエロー、ベンガラ、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、コバルトグリーン、モリブデン赤などの無機顔料;CoAl、CoCrAl、CoCrZnMgAl、CoNiZnTi、CoCrZnTi、NiSbTi、CrSbTi、FeCrZnNi、MnSbTi、FeCr、FeCrNi、FeNi、FeCrNiMn、CoCr、Mn、Co、SnZnTiなどの金属成分を含む複合酸化物焼成顔料;Alフレーク、樹脂コーティングAlフレーク、Niフレーク、ステンレスフレークなどのメタリック顔料;および、キナクリドンレッド、リソールレッドB、ブリリアントスカーレットG、ピグメントスカーレット3B、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、レーキレッドD、パーマネントレッド4R、ボルドー10B、ファストイエローG、ファストイエロー10G、パラレッド、ウォッチングレッド、ベンジジンイエロー、ベンジジンオレンジ、ボンマルーンL、ボンマルーンM、ブリリアントファストスカーレット、バーミリオンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ファストスカイブルー、アニリンブラックなどの有機顔料;が含まれる。上記着色剤は、上記光沢調整剤に対して十分に小さく、例えば、上記着色剤の個数平均粒径は、0.01〜1.5μmである。また、上塗り塗膜における着色剤の含有量は、例えば、2〜20体積%である。
また、上記上塗り塗膜は、体質顔料をさらに含有していてもよい。当該体質顔料の例には、硫酸バリウムおよび酸化チタンが含まれる。上記体質顔料は、上記光沢調整剤に対して十分に小さく、例えば、上記体質顔料の個数平均粒径は、0.01〜1μmである。また、上塗り塗膜における体質顔料の含有量は、例えば、0.1〜15体積%である。
また、上記上塗り塗膜は、塗装金属板の加工時における上塗り塗膜でのカジリの発生を防止する観点から、潤滑剤をさらに含有していてもよい。当該潤滑剤の例には、フッ素系ワックス、ポリエチレン系ワックス、スチレン系ワックスおよびポリプロピレン系ワックスなどの有機ワックス、および、二硫化モリブデンやタルクなどの無機潤滑剤、が含まれる。上塗り塗膜における潤滑剤の含有量は、例えば、0〜10体積%である。
上記上塗り塗膜は、上記金属板の表面や後述の下塗り塗膜の表面などに、上塗り塗膜用の塗料(上塗り塗料)を塗布し、乾燥させ、必要に応じて硬化させる公知の方法によって作製される。上塗り塗料は、前述した上塗り塗膜の材料を含有するが、本実施の形態の効果が得られる範囲において、当該材料以外の他の成分をさらに含有していてもよい。
たとえば、上塗り塗料は、硬化剤をさらに含有していてもよい。上記硬化剤は、上塗り塗膜を作製する際の硬化(焼付け)時に、前述のフッ素樹脂またはアクリル樹脂を架橋する。硬化剤の種類は、使用する樹脂の種類や焼付け条件などに応じて、前述した架橋剤や既知の硬化剤などから適宜選択することができる。
上記硬化剤の例には、メラミン化合物、イソシアネート化合物およびメラミン化合物とイソシアネート化合物の併用などが含まれる。メラミン化合物の例には、イミノ基型、メチロールイミノ基型、メチロール基型または完全アルキル基型のメラミン化合物が含まれる。イソシアネート化合物は、芳香族、脂肪族、脂環族のいずれでもよく、例としては、m−キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのブロック化合物が含まれる。
また、上塗り塗膜は、上塗り塗料の貯蔵安定性に影響しない範囲内において、硬化触媒をさらに適宜含有していてもよい。上塗り塗膜中における上記硬化剤の含有量は、例えば、10〜30体積%である。
また、上塗り塗膜は、耐候性を更に向上させるために10体積%以下の紫外線吸収剤(UVA)や光安定化剤(HALS)を適宜含有してもよい。さらには、上塗り塗膜は、雨筋汚れを防止するための親水化剤、例えば30体積%以下のテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物などを含んでいてもよい。
上記塗装金属板は、本実施の形態における効果を奏する範囲において、さらなる構成要素を有していてもよい。たとえば、上記塗装金属板は、塗装金属板における上塗り塗膜の密着性および耐食性を高める観点から、上記金属板および前記上塗り塗膜の間に下塗り塗膜をさらに有することが好ましい。上記下塗り塗膜は、金属板の表面、あるいは上記化成処理皮膜が作製されている場合は、当該化成処理皮膜の表面、に配置される。
上記下塗り塗膜は、樹脂で構成される。当該樹脂の例には、エポキシ樹脂、ポリエステル、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびフェノキシ樹脂が含まれる。
上記下塗り塗膜は、防錆顔料や、着色顔料、メタリック顔料などをさらに含有していてもよい。上記防錆顔料の例には、変性シリカ、バナジン酸塩、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、およびポリリン酸アルミニウムなどの非クロム系の防錆顔料やクロム酸ストロンチウム、クロム酸亜鉛、クロム酸バリウム、クロム酸カルシウムなどのクロム系防錆顔料が含まれる。上記着色顔料の例には、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、ベンガラ、チタンイエロー、コバルトブルー、コバルトグリーン、アニリンブラックおよびフタロシアニンブルーが含まれる。上記メタリック顔料の例には、アルミニウムフレーク(ノンリーフィングタイプ)、ブロンズフレーク、銅フレーク、ステンレス鋼フレークおよびニッケルフレークが含まれる。上記体質顔料の例には、硫酸バリウム、酸化チタン、シリカおよび炭酸カルシウムが含まれる。
上記の顔料の下塗り塗膜中における含有量は、本実施の形態における効果が得られる範囲において、適宜に決めることが可能であり、例えば上記下塗り塗膜における上記防錆顔料の含有量は、例えば10〜70体積%であることが好ましい。
また、上記塗装金属板は、塗装金属板における上塗り塗膜の密着性および耐食性を高める観点から、上記下塗り塗膜および上記上塗り塗膜の間に中塗り塗膜をさらに有していてもよい。
上記中塗り塗膜は、樹脂で構成される。当該樹脂の例には、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、ポリエステル、ポリエステル変性シリコーン、アクリル樹脂、ポリウレタンおよびポリ塩化ビニルが含まれる。上記中塗り塗膜も、上記下塗り塗膜と同様に、本実施の形態における効果が得られる範囲において、防錆顔料や着色顔料、メタリック顔料などの添加剤をさらに適宜に含有していてもよい。
図8Aは、上塗り塗料を塗布した直後の塗装金属板の断面を模式的に示す図であり、図8Bは、上記塗料を焼き付けた後の塗装金属板の断面を模式的に示す図である。図8Aおよび図8Bに示されるように、光沢調整剤15は、上塗り塗料を下地鋼板11(例えばめっき鋼板またはめっき鋼板および下塗り塗膜)に塗布した状態では、当該塗料の塗膜12の表面状態に実質的に影響を及ぼさない。このため、上記塗料の焼き付け前では、所期の光沢は、通常、発現されない。一方。上記塗料を焼き付けた後では、塗料中の揮発成分が揮発するので、上塗り塗膜22の膜厚Tは、塗膜12の厚さtよりも薄くなる。このため、光沢調整剤15による凸部が上塗り塗膜22の表面に形成され、上塗り塗膜22が所期の光沢(本発明ではエナメル調の光沢)を発現する。
本実施の形態に係る塗装金属板は、クロメートフリーおよびクロメート系の塗装金属板である。「クロメートフリー」とは、上記塗装金属板が6価クロムを実質的に含有しないことを意味する。上記塗装金属板が「クロメートフリー」であることは、例えば、前述した金属板、化成処理皮膜、下塗り塗膜および上塗り塗膜のいずれにおいても、上塗り塗膜または下塗り塗膜を単独で作製した金属板から50mm×50mmの試験片4枚を切り出し、沸騰している純水100mLに10分間浸漬した後、当該純水中に溶出した6価クロムを、JIS H8625付属書の2.4.1の「ジフェニルカルバジッド比色法」に準拠する濃度の分析方法で定量したときに、検出限界以下であること、によって確認することが可能である。上記塗装金属板は、実使用において環境へ6価クロムを溶出せず、かつ、平坦部で十分な耐食性を発現する。なお、「平坦部」とは、上記金属板の上記上塗り塗膜で覆われており、曲げ加工、絞り加工、張り出し加工、エンボス加工、ロール成型等により変形していない部分を言う。
上記塗装金属板は、エナメル光沢を有する塗装金属板に好適である。エナメル光沢とは、60°における光沢度が20〜85であることを言う。当該光沢度が低すぎると、艶消し観が優勢となり、エナメル調の光沢が得られないことがあり、上記光沢度が高すぎると、光沢度が制御できず、塗装外観の再現性が得られない。上記光沢度は、光沢調整剤の平均粒径や上塗り塗膜における含有量などによって調整される。
上記塗装金属板は、艶消し剤のような、上記光沢調整剤とは異なる意図で配合される、上記光沢調整剤よりも大きな粒径の粒子(大粒子)を含有していないことが、上記のエナメル光沢のような、所期の意匠性を獲得する観点から好ましい。しかしながら、本実施の形態の効果が得られる範囲において、上記塗装金属板は、上記大粒子をさらに含有していてもよい。当該大粒子は、平坦部耐食性を維持する観点から、一次粒子であることが好ましい。
上記の塗装金属板は、上記フッ素樹脂および上記光沢調整剤を含有する上塗り塗料を上記金属板上に塗布する第1の工程と、当該上塗り塗料の塗膜を硬化して上記上塗り塗膜を形成する第2の工程と、を含む。
上記第1の工程において、上記上塗り塗料は、上記金属板の表面に直接塗布されてもよいし、上記金属板の表面に形成された上記化成処理皮膜に塗布されてもよいし、当該塗装金属板の表面または当該化成処理皮膜の表面に形成された上記下塗り塗膜に塗布されてもよい。
上記上塗り塗料は、例えば、前述した上塗り塗膜の材料を溶剤中に分散することによって調製される。当該塗料は、溶剤や架橋剤などを含んでいてもよい。上記溶剤の例には、トルエン、キシレンなどの炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;セロソルブなどのエーテル;および、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン;が含まれる。
上記上塗り塗料は、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、スプレーコート、浸漬コートなどの公知の方法によって塗布される。上記上塗り塗料の塗布量は、上塗り塗膜の所期の膜厚Tに応じて適宜に調整される。
上記上塗り塗料に含有される上記光沢調整剤は、前述した大きさの条件を満足する。上記上塗り塗料において上記光沢調整剤が前述の大きさの条件を満足しない場合には、上記上塗り塗料に、当該上塗り塗料中の粒子を粉砕する処理を施すことによって、上記条件を満足する上記上塗り塗料を得ることが可能である。上記の「粒子を粉砕する処理」の例には、ローラーミルによる処理が含まれる。より具体的には、上記Ruが1.2Tを下回るように、当該ローラーミルのローラー間のクリアランスおよび処理時間を適切に設定することによって、上記条件を満足する上記上塗り塗料を得ることが可能である。
上記第2の工程は、例えば、上記上塗り塗料を金属板に焼き付ける公知の方法によって行うことが可能である。たとえば、第2の工程において、上塗り塗料が塗布された金属板は、その到達温度が200〜250℃となるように加熱される。
上記塗装金属板の製造方法は、本発明の効果が得られる範囲において、前述した第1の工程および第2の工程以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。当該他の工程の例には、化成処理皮膜を形成する工程、下塗り塗膜を形成する工程、および、中塗り塗膜を形成する工程、が含まれる。
上記化成処理皮膜は、当該皮膜を形成するための水性化成処理液を、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法などの公知の方法で上記金属板の表面に塗布し、塗布後に上記金属板を水洗せずに乾燥させることによって形成することが可能である。当該金属板の乾燥温度および乾燥時間は、生産性の観点から、例えば、金属板の到達温度で60〜150℃、2〜10秒間であることが好ましい。
上記下塗り塗膜は、下塗り塗膜用の塗料(下塗り塗料)の塗布によって作製される。当該下塗り塗料は、溶剤や架橋剤などを含んでいてもよい。上記溶剤の例には、上記上塗り塗料の溶剤として例示した化合物が含まれる。また、上記架橋剤の例には、前述した樹脂を架橋する、メラミン樹脂やイソシアネート樹脂などが含まれる。下塗り塗料は、前述した材料を均一に混合、分散させることによって調製される。
下塗り塗料は、例えば、上塗り塗料について前述した公知の方法で、1〜10μm(好ましくは3〜7μm)の乾燥膜厚が得られる塗布量で金属板に塗布される。当該塗料の塗膜は、例えば金属板の到達温度で180〜240℃の温度で金属板を加熱することにより金属板に焼き付けられ、作製される。
上記中塗り塗膜も、下塗り塗膜と同様に、中塗り塗膜用の塗料(中塗り塗料)の塗布によって作製される。当該中塗り塗料も、中塗り塗膜の材料以外に、上記溶剤や上記架橋剤などを含んでいてもよい。中塗り塗料は、前述した材料を均一に混合、分散させることによって調製される。中塗り塗料は、例えば上記の公知の方法で、当該塗料の乾燥膜厚と下塗り塗膜の膜厚との総和で3〜20μm(好ましくは5〜15μm)となる塗布量で下塗り塗膜に塗布されることが、加工性の観点から好ましい。当該塗料の塗膜は、例えば金属板の到達温度で180〜240℃の温度で金属板を加熱することにより金属板に焼き付けられ、作製される。
上記塗装金属板の用途は、外装用が好適である。「外装用」とは、屋根、壁、役物、看板および屋外設置機器などの、外気に露出する部分であって、日光やその反射光に照射され得る部分に使用されることを言う。外装用の塗装金属板の例には、外装建材用の塗装金属板などが含まれる。
上記塗装金属板は、曲げ加工、絞り加工、張り出し加工、エンボス加工、ロール成型などの公知の加工によって、外装建材などの外装建材に成形される。このように当該外装建材は、上記塗装金属板によって構成される。当該外装建材は、上記の効果が得られる範囲において、他の構成をさらに含んでいてもよい。たとえば、上記外装建材は、当該外装建材の実使用における適切な設置に供される構成をさらに有していてもよい。このような構成の例には、外装建材を建物に固定するための部材や、外装建材同士を連結するための部材、および、外装建材の取り付け時の向きを示すマーク、断熱性を向上させるための発泡シートや発泡層などが含まれる。これらの構成は、前述の外装用塗装金属板に含まれていてもよい。
上記塗装金属板では、上記光沢調整剤(細孔粒子)は、十分に上塗り塗膜中に閉じ込められる。また、上記上塗り塗膜中の光沢調整剤の、上塗り塗膜の膜厚方向における粒径は、その粒子形状が扁平であるほど、十分に小さくなりやすい。さらに、約97.5個数%、と大部分の上記光沢調整剤が、上塗り塗膜の膜厚Tに対して、「0.9T」と十分に小さな粒径かそれ以下の粒径を有する。よって、外装の用途での実使用によって上塗り塗膜の樹脂が上塗り塗膜の表面から徐々に減耗しても所期の使用年数以内であれば上記細孔粒子が露出しないように、上記の上塗り塗膜を設計することが可能である。
したがって、所期の使用年数以内における上記細孔粒子の割れや崩壊および上記上塗り塗膜からの脱落が防止され、所期の使用年数の間、雨水などの腐食因子が金属板に到達し得ない。このため、上記塗装金属板は、クロメートフリーであれば(上記金属板が非クロメート防錆処理されていれば)、クロメート処理された従来の塗装金属板と少なくとも同等の平坦部耐食性を発現し、クロメート処理されていれば、クロメート処理された従来の塗装金属板と同等かそれ以上の平坦部耐食性を発現する。本実施の形態における塗装金属板の「クロメート処理」の例には、上記金属板のクロメート防錆処理の他に、クロメート系防錆顔料を含有する下塗り塗膜の採用、が含まれ、「クロメート処理された塗装金属板」の例には、非クロメート防錆処理された金属板とクロメート系防錆顔料を含有する下塗り塗膜とを有する塗装金属板、クロメート防錆処理された金属板とクロメート系防錆顔料を含有しない下塗り塗膜とを有する塗装金属板、および、クロメート防錆処理された金属板とクロメート系防錆顔料を含有する下塗り塗膜とを有する塗装金属板、が含まれる。
以上の説明から明らかなように、本実施の形態によれば、金属板と、当該金属板上に配置される上塗り塗膜とを有し、当該上塗り塗膜が、フッ素樹脂で構成され、かつ細孔を有する粒子(細孔粒子)を光沢調整剤として含有し、上記上塗り塗膜における上記光沢調整剤の含有量は、0.01〜15体積%であり、当該光沢調整剤の個数平均粒径をR(μm)、上記上塗り塗膜の膜厚をT(μm)、上記光沢調整剤の個数粒度分布における97.5%粒子径をD97.5(μm)、上記光沢調整剤の個数粒度分布における上限粒径をRu(μm)としたときに、下記式を満足することから、クロメートフリーであっても十分な平坦部耐食性を有する塗装金属板を提供することができる。
D97.5/T≦0.9
Ru≦1.2T
R≧1.0
3≦T≦40
また、上記RuがT未満であることは、塗装金属板の平坦部耐食性をより高める観点、あるいは、十分な平坦部耐食性を有する塗装金属板のさらなる長寿命化の観点、からより一層効果的である。
また、上記金属板には非クロメート防錆処理が施されており、上記塗装金属板がクロメートフリーであることは、塗装金属板の使用または製造における環境の負荷を軽減する観点からより一層効果的であり、上記金属板にはクロメート防錆処理が施されていることは、塗装金属板の平坦部耐食性をさらに高める観点から、より一層効果的である。
また、上記前記光沢調整剤がシリカ粒子であることは、所期の意匠性を有する塗装金属板を安価に製造する観点からより一層効果的である。
また、上記塗装金属板が上記金属板および上記上塗り塗膜の間に下塗り塗膜をさらに有することは、塗装金属板における上塗り塗膜の密着性および耐食性を高める観点からより効果的であり、上記下塗り塗膜および上記上塗り塗膜の間に中塗り塗膜をさらに有することは、上記の観点からより一層効果的である。
また、上記上塗り塗膜がポリフッ化ビニリデンとアクリル樹脂とからなる主成分としての樹脂成分によって構成されていることは、耐候性や耐食性、耐汚染性などのフッ素樹脂の特性と、上塗り塗膜の密着性などのアクリル樹脂の特性との両方を発現させる観点からより一層効果的である。
また、上記塗装金属板の60°における光沢度が20〜85であると、所期の意匠性と十分な平坦部耐食性との両方を実現される。
また、上記塗装金属板が外装用塗装金属板であることは、実使用時におけるクロムの溶出による環境への負荷を軽減する観点から、より一層効果的である。
また、上記塗装金属板で構成されている外装建材は、クロメートフリーであっても10年間以上の実使用において優れた平坦部耐食性を奏することが可能である。
また、前述した、上記金属板と、上記金属板上に配置される上塗り塗膜とを有する塗装金属板を製造する方法は、上記フッ素樹脂および上記光沢調整剤を含有する上塗り塗料を上記金属板上に塗布する工程と、上記上塗り塗料の塗膜を硬化して上記上塗り塗膜を形成する工程と、を含み、上記上塗り塗膜における上記光沢調整剤の含有量は、0.01〜15体積%であり、上記光沢調整剤は、細孔を有する粒子であり、上記光沢調整剤の個数平均粒径をR(μm)、上記上塗り塗膜の膜厚をT(μm)、上記光沢調整剤の個数粒度分布における97.5%粒子径をD97.5(μm)、上記光沢調整剤の個数粒度分布の上限粒径をRu(μm)、としたときに、下記式を満足する上記光沢調整剤を用いる。よって、クロメートフリーであっても、クロメート防錆処理された金属板を含む塗装金属板と同等以上の優れた平坦部耐食性を有する塗装金属板を提供することができる。
D97.5/T≦0.9
Ru≦1.2T
R≧1.0
3≦T≦40
上記製造方法において、上記上塗り塗料には、上記上塗り塗料中の粒子を粉砕する処理が施されていると、上塗り塗膜中に意図せずに不規則に存在する粗大粒子が上塗り塗料から実質的に除かれるので、塗装金属板の平坦部耐食性を高める観点からより一層効果的である。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[塗装原板1〜5の作製]
両面付着量150g/m2の溶融55%Al−Zn合金めっき鋼板をアルカリ脱脂した(塗装原板1)。次いで、当該めっき鋼板のめっき層の表面に、塗装前処理として、20℃の、下記非クロメート防錆処理液を塗布し、当該めっき鋼板を水洗することなく100℃で乾燥し、Ti換算で10mg/m2の付着量の非クロメート防錆処理されためっき鋼板(塗装原板2)を得た。
(非クロメート防錆処理液)
ヘキサフルオロチタン酸 55g/L
ヘキサフルオロジルコニウム酸 10g/L
アミノメチル置換ポリビニルフェノール 72g/L
水 残り
また、塗装原板2の表面に、エポキシ樹脂系の下記下塗り塗料を塗布し、上記めっき鋼板の到達温度が200℃となるように上記化成処理鋼板を加熱し、乾燥膜厚が5μmの下塗り塗膜を有するクロメートフリーの上記めっき鋼板(塗装原板3)を得た。
リン酸塩混合物 15体積%
硫酸バリウム 5体積%
シリカ 1体積%
クリアー塗料 残り
また、上記クロメートフリー処理液に代えてクロメート処理液である日本ペイント株式会社製の「サーフコートNRC300NS」(「サーフコート」は同社の登録商標)を用いて、クロム換算で20mg/m2の付着量のクロメート防錆処理をし、次いで、上記クロメート防錆処理されためっき鋼板の表面に、エポキシ樹脂系の下記下塗り塗料を塗布し、上記めっき鋼板の到達温度が200℃となるように上記化成処理鋼板を加熱し、乾燥膜厚が5μmの下塗り塗膜を有するクロメート系の下塗り塗膜を有するめっき鋼板(塗装原板4)を得た。
クロム酸ストロンチウム 15体積%
硫酸バリウム 5体積%
シリカ 1体積%
クリアー塗料 残り
なお、上記下塗り塗料において、上記クリアー塗料は、日本ファインコーティングス株式会社製「NSC680」である。また、上記下塗り塗料において、上記リン酸塩混合物は、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、および、トリポリリン酸アルミニウム、の混合物である。また、上記シリカは、体質顔料であり、その平均粒径は5μmである。さらに、上記体積%は、下塗り塗料中の固形分に対する割合である。
また、塗装原板3の表面に、ポリエステル系の下記中塗り塗料を塗布し、上記めっき鋼板の到達温度が220℃となるように上記化成処理鋼板を加熱し、上記下塗り塗膜の上に、乾燥膜厚が15μmの中塗り塗膜を有するクロメートフリーの上記めっき鋼板(塗装原板5)を得た。
カーボンブラック 7体積%
シリカ粒子1 1体積%
フッ素樹脂系の塗料 残り
上記フッ素樹脂系の塗料は、日本ファインコーティングス株式会社製のクリアー塗料「ディックフローC」であり、フッ素樹脂(PVDF/AR)系の塗料である。カーボンブラックは着色顔料である。上記体積%は、中塗り塗料中の固形分に対する割合である。
また、上記シリカ粒子1(シリカ1)は、例えば分級品またはその混合物であり、正規分布様の粒度分布を有する。シリカ粒子1の個数平均粒径Rは7.0μmであり、個数粒度分布におけるD97.5は22.0μmである。また、個数粒度分布における上限粒径Ruは、23.5μmである。
下記の成分を下記の量で混合し、上塗り塗料を得た。
カーボンブラック 7体積%
シリカ粒子1 1体積%
クリアー塗料1 残り
上記クリアー塗料1は、日本ファインコーティングス株式会社製のクリアー塗料「ディックフローC」であり、フッ素樹脂(PVDF/AR)系の塗料である。カーボンブラックは着色顔料である。下記体積%は、上塗り塗料中の固形分に対する割合である。
[塗装金属板1の作製]
上記上塗り塗料を塗装原板3の下塗り塗膜の表面に塗布し、塗装原板3における上記めっき鋼板の到達温度が220℃となるように塗装原板3を加熱し、乾燥膜厚Tが25μmの上塗り塗膜を作製した。こうして、塗装金属板1を作製した。
なお、塗装金属板1を切断してその断面を露出させ、エポキシ樹脂の塊内に封入し、上記断面をさらに研摩し、当該断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、得られた複数箇所の画像を処理、分析することによって、シリカ粒子1の粒度分布を求めたところ、R、D97.5およびRuは、上記の数値と実質的に同じであることが確認された。
[塗装金属板2、3の作製]
上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが22μmとなるように変更した以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板2を作製した。また、上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが20μmとなるように変更した以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板3を作製した。
[塗装金属板4〜11の作製]
上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子2を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板4を作製した。シリカ粒子2は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは7.0μmであり、D97.5は22.0μmであり、Ruは、25.0μmである。
また、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子3を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板5を作製した。シリカ粒子3は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは7.0μmであり、D97.5は22.0μmであり、Ruは、29.5μmである。
また、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子4を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板6を作製した。シリカ粒子4は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは7.0μmであり、D97.5は22.0μmであり、Ruは、31.8μmである。
また、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子5を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板7を作製した。シリカ粒子5は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは7.0μmであり、D97.5は22.0μmであり、Ruは、33.8μmである。
また、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子6を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板8を作製した。シリカ粒子6は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは5.0μmであり、D97.5は7.6μmであり、Ruは、9.5μmである。
また、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子7を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板9を作製した。シリカ粒子7は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは3.0μmであり、D97.5は5.6μmであり、Ruは、9.5μmである。
また、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子8を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板10を作製した。シリカ粒子8は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは1.5μmであり、D97.5は4.1μmであり、Ruは、9.5μmである。
また、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子9を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板11を作製した。シリカ粒子8は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは0.5μmであり、D97.5は2.1μmであり、Ruは、9.5μmである。
[塗装金属板12、13の作製]
上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが15μmとなるように変更した以外は、塗装金属板8と同様にして、塗装金属板12を作製した。また、上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが10μmとなるように変更した以外は、塗装金属板8と同様にして、塗装金属板13を作製した。
[塗装金属板14、15の作製]
上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子10を用い、上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが3μmとなるように変更した以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板14を作製した。シリカ粒子10は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは1.0μmであり、D97.5は2.0μmであり、Ruは、2.6μmである。
また、上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが2μmとなるように変更した以外は、塗装金属板14と同様にして、塗装金属板15を作製した。
[塗装金属板16〜19の作製]
上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが35μmとなるように変更した以外は、塗装金属板8と同様にして、塗装金属板16を作製した。また、上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが38μmとなるように変更した以外は、塗装金属板8と同様にして、塗装金属板17を作製した。また、上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが40μmとなるように変更した以外は、塗装金属板8と同様にして、塗装金属板18を作製した。また、上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが41μmとなるように変更した以外は、塗装金属板8と同様にして、塗装金属板19を作製した。
[塗装金属板20〜26の作製]
上塗り塗料中のシリカ粒子を配合しない以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板20を作製した。また、上塗り塗料中の光沢調整剤にシリカ粒子1に代えてシリカ粒子11を用い、上塗り塗料中のシリカ粒子の含有量を0.005体積%に変更した以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板21を作製した。シリカ粒子11は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは7.0μmであり、D97.5は12.3μmであり、Ruは、20.0μmである。
また、上塗り塗料中のシリカ粒子の含有量を0.01体積%に変更した以外は、塗装金属板21と同様にして、塗装金属板22を作製した。また、上塗り塗料中のシリカ粒子の含有量を0.1体積%に変更した以外は、塗装金属板21と同様にして、塗装金属板23を作製した。また、上塗り塗料中のシリカ粒子の含有量を10体積%に変更した以外は、塗装金属板21と同様にして、塗装金属板24を作製した。また、上塗り塗料中のシリカ粒子の含有量を15体積%に変更した以外は、塗装金属板21と同様にして、塗装金属板25を作製した。また、上塗り塗料中のシリカ粒子の含有量を20体積%に変更した以外は、塗装金属板21と同様にして、塗装金属板26を作製した。
[塗装金属板27〜29の作製]
上塗り塗料中の光沢調整剤にシリカ粒子1に代えてシリカ粒子11を用い、塗装原板3に代えて塗装原板1に上塗り塗膜を形成する以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板27を作製した。また、塗装原板1に代えて塗装原板2に上塗り塗膜を形成する以外は、塗装金属板27と同様にして、塗装金属板28を作製した。また、塗装原板1に代えて塗装原板4に上塗り塗膜を形成する以外は、塗装金属板27と同様にして、塗装金属板29を作製した。
[塗装金属板30、31の作製]
上塗り塗料中の光沢調整剤にシリカ粒子11に代えてシリカ粒子2を用いた以外は塗装金属板29と同様にして、塗装金属板30を得た。また、上塗り塗料中の光沢調整剤にシリカ粒子11に代えてシリカ粒子3を用いた以外は塗装金属板29と同様にして、塗装金属板31を得た。
[塗装金属板32、33の作製]
上塗り塗料のシリカ粒子1に代えてポリアクリロニトリル(PAN)粒子を用いた以外は塗装金属板1と同様にして、塗装金属板32を得た。当該PAN粒子は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは7.0μmであり、D97.5は12.3μmであり、Ruは、20.0μmである。また、上塗り塗料のシリカ粒子1に代えて炭酸カルシウム−リン酸カルシウム複合体(CaCPC)粒子を用いた以外は塗装金属板1と同様にして、塗装金属板33を得た。当該CaCPC粒子は、例えば分級品またはその混合物であり、Rは7.0μmであり、D97.5は12.3μmであり、Ruは、20.0μmである。
[塗装金属板34の作製]
塗装原板3に代えて塗装原板5を用い、シリカ1に代えてシリカ10を用い、かつ上塗り塗料の塗布量を、乾燥膜厚Tが10μmとなるように変更した以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板34を作製した。
[評価]
塗装金属板1〜34のそれぞれについて、下記の測定および試験を行った。
(1)60度光沢度(G60)
塗装金属板1〜34のそれぞれの、JIS K5600−4−7(ISO 2813:1994)で規定される60°における鏡面光沢度(G60)を日本電色株式会社製 光沢計VG−2000によって測定した。
(2)塗装外観
塗装金属板1〜34のそれぞれの、乾燥後の上塗り塗膜の外観を、以下の基準により評価した。
(評価基準)
G:光沢異常および塗膜欠陥が認められず、フラットであり、またエナメル外観が認められる
NG1:光沢が高すぎる
NG2:光沢が低すぎる
NG3:塗膜焼付け時の、揮発成分による塗膜膨れが見られる
NG4:隠蔽性不足
(3)加工部密着性
作製から24時間後の塗装金属板1〜34のそれぞれに2T曲げ(密着曲げ)加工を施し、当該2T曲げ部のセロハンテープ剥離試験を行い、上塗り塗膜における当該試験を施した部分に対する剥離した部分の面積比率(%)に応じて、以下の基準により評価した。A〜Cであれば、実用上問題ない。
(評価基準)
A:塗膜のクラックが認められない(0%)
B:塗膜のクラックが0%超3%以下
C:塗膜のクラックが3%超5%以下
NG:塗膜の5%を超える剥離が認められる
(4)平坦部耐食性
塗装金属板1〜34のそれぞれについて、まずJIS K5600−7−7(ISO 11341:2004)に規定されているキセノンランプ法促進耐候性試験を1,000時間行い、次いで、JIS H8502に規定されている「中性塩水噴霧サイクル試験」(いわゆるJASO法)を720時間行った。上記二つの試験の実施を1サイクルとし、塗装金属板1〜35のそれぞれについて、1サイクル(実使用の耐久年数が5年程度に相当)試験品と、2サイクル(実使用の耐久年数10年程度に相当)試験品のそれぞれを水洗し、目視、および、10倍ルーペによる拡大観察によって、塗装金属板の平坦部における塗膜の膨れの有無を観察し、以下の基準により評価した。AまたはBであれば、実用上問題ない。
(評価基準)
A:膨れが認められない
B:拡大観察で僅かに微小な膨れが認められるが、目視では当該膨れが認められない
C:目視で膨れが認められる
塗装金属板1〜34の、塗装原板の種類、光沢調整剤の種類、R、D97.5、Ru、T、光沢調整剤の含有量、D97.5/Tの値、Ru/Tの値、および、実施例または比較例の別、を表1および表2に示す。また、塗装金属板1〜34の上記評価の結果を表3に示す。
(5)平坦部耐食性
塗装金属板4、29、30および31のそれぞれについて、平坦部耐食性に係る前述の試験を3サイクル(実使用の耐久年数15年程度に相当)まで行い、3サイクル試験品のそれぞれを水洗し、目視、および、10倍ルーペによる拡大観察によって、塗装金属板の平坦部における塗膜の膨れの有無を観察し、前述の基準により評価した。結果を表4に示す。
[参考実験1]
シリカ粒子1から粒径が0.7Tμm(T=25μm)以上の粒子を除去し、17.5μm以上の粒子を実質的に含まないシリカ粒子1を得た。これをシリカ粒子12とする。そして、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子12を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板35を作製した。
また、粒径R’が0.8Tμm(20.0μm)以上の粒子を除去し、20.0μm以上の粒子を実質的に含まないシリカ粒子Aを別途用意し、97.5体積部のシリカ粒子12に2.5体積部のシリカ粒子Aを混合して、0.7T以下のシリカ粒子12の97.5体積部と、0.8T以下のシリカ粒子Aの2.5体積部とから構成されるシリカ粒子(含有比率:97.5/2.5)を得た。これをシリカ粒子13とする。そして、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子13を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板36を作製した。
また、粒径R’が0.9Tμm(22.5μm)以上の粒子を除去し、22.5μm以上の粒子を実質的に含まないシリカ粒子Bを別途用意し、97.5体積部のシリカ粒子12に2.5体積部のシリカ粒子Bを混合して、0.7T以下のシリカ粒子12の97.5体積部と、0.9T以下のシリカ粒子Bの2.5体積部とから構成されるシリカ粒子を得た。これをシリカ粒子14とする。そして、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子14を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板37を作製した。
また、粒径R’が1.0Tμm(25.0μm)以上の粒子を除去し、25.0μm以上の粒子を実質的に含まないシリカ粒子Cを別途用意し、97.5体積部のシリカ粒子12に2.5体積部のシリカ粒子Cを混合して、0.7T以下のシリカ粒子12の97.5体積部と、1.0T以下のシリカ粒子Cの2.5体積部とから構成されるシリカ粒子を得た。これをシリカ粒子15とする。そして、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子15を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板38を作製した。
また、粒径R’が1.1Tμm(27.5μm)以上の粒子を除去し、27.5μm以上の粒子を実質的に含まないシリカ粒子Dを別途用意し、97.5体積部のシリカ粒子12に2.5体積部のシリカ粒子Dを混合して、0.7T以下のシリカ粒子12の97.5体積部と、1.1T以下のシリカ粒子Dの2.5体積部とから構成されるシリカ粒子を得た。これをシリカ粒子16とする。そして、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子16を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板39を作製した。
また、粒径R’が1.2Tμm(30.0μm)以上の粒子を除去し、30.0μm以上の粒子を実質的に含まないシリカ粒子Eを別途用意し、97.5体積部のシリカ粒子12に2.5体積部のシリカ粒子Eを混合して、0.7T以下のシリカ粒子12の97.5体積部と、1.2T以下のシリカ粒子Eの2.5体積部とから構成されるシリカ粒子を得た。これをシリカ粒子17とする。そして、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子17を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板40を作製した。
また、粒径R’が1.3Tμm(32.5μm)以上の粒子を除去し、32.5μm以上の粒子を実質的に含まないシリカ粒子Fを別途用意し、97.5体積部のシリカ粒子12に2.5体積部のシリカ粒子Fを混合して、0.7T以下のシリカ粒子12の97.5体積部と、1.3T以下のシリカ粒子Fの2.5体積部とから構成されるシリカ粒子を得た。これをシリカ粒子18とする。そして、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子18を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板41を作製した。
塗装金属板35〜41について、前述した方法で平坦部耐食性を評価した。塗装金属板35〜41の、塗装原板の種類、光沢調整剤の種類、R、D97.5、カット値、添加したシリカ粒子の主成分の粒径R’、T、光沢調整剤の含有量、二種のシリカ粒子の含有比率、および、平坦部耐食性の評価結果、を表5に示す。
[参考実験2]
シリカ粒子17におけるシリカ粒子12とシリカ粒子Eとの含有比率を変更して、0.7T以下のシリカ粒子12の97.0体積部と、1.2T以下のシリカ粒子Eの3.0体積部とから構成されるシリカ粒子を得た。これをシリカ粒子19とする。そして、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子19を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板42を作製した。
また、シリカ粒子17におけるシリカ粒子12とシリカ粒子Eとの含有比率を変更して、0.7T以下のシリカ粒子12の96.5体積部と、1.2T以下のシリカ粒子Eの3.5体積部とから構成されるシリカ粒子を得た。これをシリカ粒子20とする。そして、上塗り塗料中の光沢調整剤に、シリカ粒子1に代えてシリカ粒子20を用いた以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板43を作製した。
塗装金属板42、43について、前述した2サイクルの試験方法で平坦部耐食性を評価した。塗装金属板40、42および43の、塗装原板の種類、光沢調整剤の種類、R、D97.5、カット値、添加したシリカ粒子の主成分の粒径R’、T、光沢調整剤の含有量、二種のシリカ粒子の含有比率、および、平坦部耐食性の評価結果、を表6に示す。
[参考実験3]
塗装金属板41の上塗り塗料を、シリカ粒子Fを粉砕する条件でローラーミルによって処理した後に用いた以外は、塗装金属板41と同様にして、塗装金属板44を作製した。そして、塗装金属板44について、前述した方法で平坦部耐食性を評価したところ、1サイクルおよび2サイクルのいずれの判定もBであった。
表3から明らかなように、塗装金属板1、4、5、8〜10、12〜14、16〜18、22〜25および27〜34は、いずれも、エナメル調の光沢の意匠性を有し、十分な加工部密着性を有し、かつ10年間の実使用に相当する平坦部耐食性を有している。
これに対して、塗装金属板2、3、6および7は、平坦部耐食性が不十分であった。これは、光沢調整剤が上塗り塗膜の膜厚Tに対して大きすぎ、上塗り塗膜の光劣化によって耐久試験中に上塗り塗膜から露出してしまったため、と考えられる。
また、塗装金属板11は、光沢が高すぎ、所期の意匠性(エナメル調の光沢)が得られなかった。これは、光沢調整剤の粒径が小さすぎたため、と考えられる。
また、塗装金属板15は、隠蔽性が不足しており、すなわち上塗り塗膜の下地(下塗り塗膜)が目視で観察され得る程にしか上塗り塗膜の視認性が発現されておらず、所期の意匠性が得られなかった。このため、平坦部耐食性の評価試験を行うに値しないと判断し、当該評価試験を実施しなかった。上記の隠蔽性が不十分であった理由は、上塗り塗膜の膜厚が薄すぎ、光沢調整剤の粒径が上塗り塗膜の膜厚Tに対して相対的に大きすぎたため、と考えられる。
また、塗装金属板19は、上塗り塗膜の焼付け時に、揮発成分による塗膜膨れが発生した。そのため、平坦部耐食性の評価試験を行うことができなかった。これは、上塗り塗膜の膜厚が厚すぎたため、と考えられる。
また、塗装金属板20、21は、光沢が高すぎ、所期の意匠性(エナメル調の光沢)が得られなかった。塗装金属板20の光沢が高すぎたのは、上塗り塗膜に光沢調整剤が含有されていないためであり、塗装金属板21の光沢が高すぎたのは、光沢調整剤の含有量が少なすぎて光沢が十分に調整されなかったため、と考えられる。
また、塗装金属板26は、光沢が低すぎ、また、加工部密着性が不十分であった。そのため、平坦部耐食性の評価試験を行うことができなかった。これは、上塗り塗膜における光沢調整剤の含有量が多すぎたため、と考えられる。
また、塗装金属板27〜29は、いずれも、塗装原板の種類(下塗り塗膜の有無などの構成)によらず、所期の意匠性(エナメル光沢)を発現するとともに、加工密着性および平坦部耐食性を十分に有していた。これは、平坦部耐食性が上塗り塗膜によってもたらされるため、と考えられる。
また、塗装金属板30、31は、いずれも、クロムフリーの塗装原板を有する以外は同じ構成を有する塗装金属板4、5に比べて、平坦部耐食性により優れていた。これは、塗装原板のクロメートによる防錆処理により、耐食性がより高められたため、と考えられる。
また、塗装金属板32、33のいずれも、光沢調整剤の種類によらず、所期の意匠性(エナメル光沢)を発現するとともに、加工密着性および平坦部耐食性を十分に有していた。これは、無機粒子または有機粒子の別を問わず、細孔を有する粒子であっても、上塗り塗膜の表面から露出しなければ、十分な平坦部耐食性が発現されるため、と考えられる。
また、塗装金属板34は、いずれの評価においても優れた結果を示した。これは、塗装金属板34が中塗り塗膜を有するので、中塗り塗膜による意匠性および機能性が付与され、その結果、上塗り塗膜のみによって発現される意匠性および機能性よりもより良好な特性が発現されたため、と考えられる。
また、表4から明らかなように、塗装金属板29、30および31は、いずれも、塗装金属板4よりも、平坦部耐食性をより長期間維持する。これは、塗装金属板29、30および31における塗装原板4が、下塗り塗膜にクロメート系防錆顔料を含有し、かつめっき鋼板にクロメート防錆処理が施されていることから、塗装金属板4における塗装原板3に比べて高い耐食性を長期に亘り呈するため、と考えられる。
また、表5および表6から明らかなように、光沢調整剤が、上塗り塗膜の膜厚の1.2倍(1.2T)までの粒子であれば、0.9Tよりも大きな粒子を、0.9T以下の粒子の少なくとも2.5体積%までであれば含有していても、塗装金属板の平坦部耐食性に実質的な悪影響が及ぼされないことがわかる。これは、上塗り塗膜の膜厚Tに比べてわずかに大きい粒子は、その長径が上塗り塗料の塗布方向に沿う向きに配置されやすく、少量であれば、所期の使用期間、上塗り塗膜の樹脂によって十分に被覆され続けるため、と考えられる。
また、光沢調整剤は、その粒度分布から外れた位置に検出されるような大きな粒子(粗大粒子)をわずかであるが含むことがある。このような粗大粒子は、表5から明らかなように、耐久使用中に上塗り塗膜から露出して、塗装金属板の平坦部耐食性を損なう原因となる、と考えられる。しかしながら、上記粗大粒子を含む上塗り塗料に適当な粉砕工程を施すと、十分な平坦部耐食性を有する塗装金属板が得られ得る。これは、上記粗大粒子が、上塗り塗料中で、塗装金属板が所期の平坦部耐食性を示すのに十分な程度まで小さく粉砕されるため、と考えられる。