JP2015182462A - 塗装金属板および外装建材 - Google Patents

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Taketo Hara
丈人 原
矢野 宏和
Hirokazu Yano
矢野  宏和
健二 坂戸
Kenji Sakado
健二 坂戸
高橋 和彦
Kazuhiko Takahashi
和彦 高橋
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Abstract

【課題】外装用の塗装金属板であって、クロメートフリーでありながら優れた平坦部耐食性を有する塗装金属板を提供する。【解決手段】本発明に係る塗装金属板は、外装用のクロメートフリーの塗装金属板であり、特定の金属板上に配置される上塗り塗膜を有する。当該上塗り塗膜は、0.01〜15体積%の細孔粒子を光沢調整剤として含有する。光沢調整剤の個数平均粒径をR(μm)、上塗り塗膜の膜厚をT(μm)、光沢調整剤の個数粒度分布の標準偏差をσとしたときに、上記塗装金属板は、下記式を満足する。(R+2σ)/T≰0.7R≧2.09≰T≰19σ<0.3T【選択図】なし

Description

本発明は、外装用の塗装金属板および外装建材に関する。
塗装金属板は、汎用性、意匠性、耐久性などにおいて優れており、様々な用途で使用されている。外装建材の用途の塗装金属板には、通常、主に意匠性の観点から、光沢調整剤が、当該塗装金属板の表面の上塗り塗膜に配合されている。当該外装建材用の塗装金属板における上記光沢調整剤には、シリカが通常使用されている。当該シリカの粒径は、通常、平均粒径で規定されている。上記塗装金属板における上記光沢調整剤としてのシリカの平均粒径は、色や用途にもよるが、通常、3〜30μmである(例えば、特許文献1(段落0018)参照)。
特開2011−148107号公報
外装建材用の塗装金属板では、クロメート系塗装鋼板が使用されている。当該クロメート系塗装鋼板では、成型加工性や切断端面部の耐食性を向上するための取組みが為されており、クロメート系塗装鋼板は、長期に渡る耐久性を有していた。一方、近年では外装建材の技術分野においても、環境保全に対する強い関心が寄せられている。このため、環境へ悪影響を及ぼすか、またはその可能性が懸念される成分の使用を禁止する法的規制が検討されている。たとえば、塗装金属板において、防錆成分として汎用されている6価クロム成分については、近い将来、全面的に使用を禁止することが検討されている。クロメートフリー塗装鋼板についても、塗装前処理や防錆顔料の適正化など種々の検討が行われ、成形加工部や切断端面部では、クロメート系塗装鋼板と遜色がない特性が得られるようになった。
しかしながら、クロメート系塗装鋼板では、平坦部耐食性は大きな問題とならなかったが、クロメートフリー塗装鋼板では平坦部での腐食が顕著となることがあり、特に、シリカを上記光沢調整剤に用いた場合、図1に示されるように、実使用において、想定した使用年数よりも早くに、平坦部でしみ状錆や塗膜膨れなどの腐食が発生することがあった。
本発明は、クロメートフリーでありながら優れた平坦部耐食性を有する塗装金属板および外装建材を提供することを課題とする。
本発明者らは、平坦部での前述した腐食の原因について鋭意検討した。図2は、クロメートフリーの塗装金属板の平坦部における腐食している部分の顕微鏡写真である。図2中、A部は、上塗り塗膜から光沢調整剤としてのシリカ粒子が露出している部分であり、B部は、シリカ粒子が上塗り塗膜から脱落した部分である。また、図3は、上記塗装金属板のA部の、図2中の直線Lに沿っての断面の反射電子顕微鏡写真であり、図4は、上記塗装金属板のB部の、図2中の直線Lに沿っての断面の反射電子顕微鏡写真である。図3は、上塗り塗膜の表面に露出したシリカ粒子にはクラックが発生している様子を明確に示しており、図4は、シリカ粒子が脱落した上塗り塗膜の穴が、金属板の腐食の起点になっていることを明確に示している。
上記のように、本発明者らは、シリカのような凝集粒子を光沢調整剤に用いた場合、当該腐食は、上塗り塗膜の、光沢調整剤が割れ、崩壊し、あるいは脱落した部分で生じること、を確認し、また、実使用によって減耗していく上塗り塗膜から露出した光沢調整剤が割れ、崩れて、上塗り塗膜から脱落すること、を確認した。
また、本発明者らは、光沢調整剤についても検討した結果、平均粒径で規定されているシリカには、上塗り塗膜の厚さに対して当該平均粒径よりもかなり大きな粒子が含まれていることを確認した。たとえば、本発明者らは、上記光沢調整剤に用いられる市販のシリカのうち、平均粒径が3.3μmであるシリカを電子顕微鏡で観察したところ、粒径が約15μmのシリカが含まれていることを確認した(図5)。
そして、本発明者らは、こうした大粒径の凝集粒子が耐食性の低下をもたらすことに着目し、上塗り塗膜の膜厚に対する特定の粒径の光沢調整剤を用いることによって、従来の金属板におけるクロメート系の化成処理および下塗り塗膜中の含クロム防錆顔料の使用による耐食性と同等かそれ以上の耐食性が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の塗装金属板および外装建材に関する。
[1]金属板と、前記金属板上に配置される上塗り塗膜とを有する、クロメートフリーの塗装金属板であって、前記上塗り塗膜は、細孔を有する粒子を光沢調整剤として含有し、前記上塗り塗膜における前記光沢調整剤の含有量は、0.01〜15体積%であり、前記光沢調整剤の個数平均粒径をR(μm)、前記上塗り塗膜の膜厚をT(μm)、前記光沢調整剤の個数粒度分布の標準偏差をσとしたときに、下記式を満足する、塗装金属板。
(R+2σ)/T≦0.7
R≧2.0
9≦T≦19
[2]前記金属板および前記上塗り塗膜の間に下塗り塗膜をさらに有する、[1]に記載の塗装金属板。
[3]外装用塗装金属板である、[1]または[2]に記載の塗装金属板。
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載の塗装金属板で構成されている外装建材。
本発明では、想定される使用年数における光沢調整剤の露出や割れなどが予防される。このため、外装用の塗装金属板であって、クロメートフリーでありながら、クロムにより防錆されていた塗装金属板と同等以上の優れた平坦部耐食性を有する塗装金属板が提供される。
5年の実使用でクロメートフリーの塗装金属板の平坦部に発生した腐食部(塗膜膨れ)の顕微鏡写真である。 クロメートフリーの塗装金属板の平坦部における腐食している部分の顕微鏡写真である。 図2に示す塗装金属板のA部の、図2中の直線Lに沿っての断面の反射電子顕微鏡写真である。 図2に示す塗装金属板のB部の、図2中の直線Lに沿っての断面の反射電子顕微鏡写真である。 平均粒径が3.3μmであるシリカ粉末の電子顕微鏡写真である。 図6Aは、上塗り塗膜用の塗料を塗布した直後の塗装金属板の断面を模式的に示す図であり、図6Bは、上記塗料を焼き付けた後の塗装金属板の断面を模式的に示す図である。
以下、本発明の一実施の形態に係る塗装金属板を説明する。上記塗装金属板は、金属板と、当該金属板上に配置される上塗り塗膜とを有する。
上記金属板は、本実施の形態における効果が得られる範囲において、公知の金属板から選ぶことができる。当該金属板の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板などが含まれる。上記金属板は、耐食性、軽量化および対費用効果の観点から、めっき鋼板であることが好ましい。当該めっき鋼板は、特に、耐食性の観点、および外装建材としての適性の観点から、溶融55%Al―Zn合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板またはアルミニウムめっき鋼板であることが好ましい。
上記金属板は、その表面に化成処理皮膜を有することが、塗装金属板の密着性および耐食性を向上させる観点から好ましい。当該化成処理皮膜の例には、Ti−Mo複合皮膜、フルオロアシッド系皮膜、リン酸塩皮膜、樹脂系皮膜、樹脂およびシランカップリング剤系皮膜、シリカ系皮膜、シリカおよびシランカップリング剤系皮膜、ジルコニウム系皮膜、および、ジルコニウムおよびシランカップリング剤系皮膜、が含まれる。
上記の観点から、上記金属板における、当該Ti−Mo複合皮膜の付着量は、全TiおよびMo換算で10〜500mg/mであることが好ましく、上記フルオロアシッド系皮膜の付着量は、フッ素換算または総金属元素換算で3〜100mg/mであることが好ましく、上記リン酸塩皮膜の付着量は、リン元素換算で0.1〜5g/mであることが好ましい。
また、上記樹脂系皮膜の付着量は、樹脂換算で1〜500mg/mであることが好ましく、上記樹脂およびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Si換算で0.1〜50mg/mであることが好ましく、上記シリカ系皮膜の付着量は、Si換算で0.1〜200mg/mであることが好ましく、上記シリカおよびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Si換算で0.1〜200mg/mであることが好ましく、上記ジルコニウム系皮膜の付着量は、Zr換算で0.1〜100mg/mであることが好ましく、上記ジルコニウムおよびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Zr換算で0.1〜100mg/mであることが好ましい。
上記化成処理皮膜は、当該皮膜を形成するための水性化成処理液を、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法などの公知の方法で上記金属板の表面に塗布し、塗布後に上記金属板を水洗せずに乾燥させることによって形成することが可能である。当該金属板の乾燥温度および乾燥時間は、生産性の観点から、例えば、金属板の到達温度で60〜150℃、2〜10秒間であることが好ましい。
上記上塗り塗膜は、通常、樹脂で構成される。当該樹脂は、意匠性や耐候性などの観点から、適宜に選ばれる。当該樹脂の例には、ポリエステル、アクリル樹脂およびウレタン樹脂が含まれる。
上記上塗り塗膜の膜厚Tは、9〜19μmである。上塗り塗膜の膜厚Tは、厚すぎると塗装不良(ワキ)の発生や生産性の低下および製造コストの上昇などの原因となることがあり、薄すぎると所期の意匠性や所期の平坦部耐食性が得られないことがある。たとえば、生産性が良好であり、所期の光沢と発色を呈し、かつ少なくとも10年の外装建材としての実使用が可能な塗装金属板を得るためには、上塗り塗膜の膜厚Tは、上記の観点から、例えば10μm以上であることが好ましく、11μm以上であることがより好ましい。また、上記の理由から、上塗り塗膜の膜厚Tは、17μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。上塗り塗膜の膜厚Tは、例えば上塗り塗膜の複数個所における底面から表面までの距離の平均値である。
上記上塗り塗膜の膜厚Tは、塗装金属板の意匠性の観点から、上塗り塗膜の色が明るいとより厚いことが好ましく、上塗り塗膜の色が濃いとより薄くすることが可能である。一概には言えないが、例えば、上塗り塗膜のL値が70以下であれば、上塗り塗膜の膜厚Tは13μm以下とすることができ、上塗り塗膜のL値が80超であれば膜厚Tは、15μm以上であることが好ましい。
あるいは、上記上塗り塗膜の膜厚Tは、塗装金属板の意匠性の観点から、上塗り塗膜の色が、上塗り塗膜形成前の鋼板の表面(例えば後述する下塗り塗膜)の色に近いほど薄くすることが可能である。一概には言えないが、例えば、上塗り塗膜のL値と当該塗膜形成前の鋼板の表面の色のL値との差の絶対値ΔLが10以下であれば上塗り塗膜の膜厚Tを11μm以下することができ、ΔLが20以下であれば膜厚Tを13μm以下とすることができ、ΔLが50以下であれば膜厚Tを15μm以下とすることができる。
なお、上記L値は、市販の分光測色計(例えばコニカミノルタオプティクス株式会社製「CM3700d」)による測定結果からハンター色差式により算出して求めることができる。
上記上塗り塗膜は、光沢調整剤を含有する。当該光沢調整剤は、上塗り塗膜の表面を適度に粗すために上塗り塗膜中に配合され、光沢を伴う所期の外観を塗装金属板にもたらす。また、製造ロット間での光沢のバラツキを調整するためにも使用される。
上記光沢調整剤の個数平均粒径Rは、2.0μm以上である。光沢調整剤が小さすぎると上塗り塗膜の光沢が高すぎ、所期の意匠性が得られないことがある。このように、光沢調整剤の当該個数平均粒径Rは、塗装金属板の所期の意匠性(光沢度)に応じて後述の式を満たす範囲において適宜に決めることが可能であるが、大きすぎると上塗り塗膜の光沢が低すぎ、所期の意匠性が得られなくなる。たとえば、平坦部耐食性とともに、60°における光沢度が20〜85の塗装金属板を得るためには、光沢調整剤の個数平均粒径Rは、3μm以上であり、5μm以上であり、あるいは7μm以上である。当該個数平均粒径は、上塗り塗膜の断面の観察により確認することが可能であり、あるいは、画像解析法およびコールター法で(例えば、ベックマン・コールター社製 精密粒度分布測定装置「Multisizer4」を用いて)測定することが可能である。
上記上塗り塗膜における上記光沢調整剤の含有量は、0.01〜15体積%である。当該含有量が多すぎると上塗り塗膜の光沢が低すぎ、また加工部密着性が低下する。当該含有量が少なすぎると当該光沢が制御できないため、多くても少なくても所期の意匠性が得られないことがある。たとえば、60°における光沢度が20〜85の塗装金属板を得るためには、上塗り塗膜中における光沢調整剤の含有量は、0.05体積%以上であることが好ましく、0.1体積%以上であることがより好ましい。また、上記の理由から、上塗り塗膜中における光沢調整剤の含有量は、13体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましい。当該含有量は、上塗り塗膜の灰分の測定や上塗り塗膜の溶解による光沢調整剤の回収、複数箇所での元素識別した断面像についての画像解析などによって確認することが可能である。
上記光沢調整剤は、細孔を有する粒子(以下、「細孔粒子」とも言う)である。細孔粒子の例には、一次粒子が化学的に接合した凝集体、一次粒子が物理的に接合した集合体、および多孔質粒子が含まれる。当該多孔質粒子は、少なくとも粒子の内部に多孔質構造を有する。上記光沢調整剤は、上記細孔粒子のみから構成されていてもよいし、細孔粒子以外の粒子を含んでいてもよい。当該細孔粒子は、無機粒子であっても有機粒子であってもよく、後述する式を満足する範囲において、光沢調整剤として用いられる公知の細孔粒子から選ぶことができる。当該細孔粒子の材料の具体例には、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ポリアクリロニトリル、および、炭酸カルシウム−リン酸カルシウム複合体、が含まれる。
上記塗装金属板は、上記光沢調整剤の個数平均粒径をR(μm)、上記上塗り塗膜の膜厚をT(μm)、上記光沢調整剤の個数粒度分布の標準偏差をσとしたときに、下記式を満足する。
(R+2σ)/T≦0.7
R+2σは、上記光沢調整剤の個数粒度分布が正規分布である場合には、R+2σは、数平均粒径R以上の大きな粒径を有する粒子のうちの約95.45%の粒子の粒径の最大値を示す。このように、R+2σは、上記光沢調整剤の粒径の実質的な最大値を示している。(R+2σ)/Tが大きすぎると、上塗り塗膜の実使用に伴う減耗によって上記細孔粒子が露出したときに所期の平坦部耐食性が得られないことがあり、(R+2σ)/Tが小さすぎると所期の光沢度が得られないことがある。たとえば、外装建材としての実使用年数が少なくとも10年以上であり、かつ、60°における光沢度が20〜85の塗装金属板を得るためには、(R+2σ)/Tは、0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましい。また、上記の理由から、(R+2σ)/Tは、0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。Rおよびσは、上記光沢調整剤の個数粒度分布から求めることが可能である。
上記光沢調整剤は、上記式を満足する範囲では、上塗り塗膜の膜厚Tに対して十分に小さな粒子で構成され得るが、光沢調整剤の上塗り塗膜からの早期の露出を防止する観点から、当該光沢調整剤の個数粒度分布における粒径の最大値が上塗り塗膜の膜厚T未満であることが好ましく、0.7T以下であることがより好ましく、0.6T以下であることがさらに好ましい。当該最大値を含む上記粒度分布を有する光沢調整剤は、市販品から適宜に選ぶことが可能であり、また、下記の分級などによって調整することも可能である。
上記光沢調整剤は、外装建材の実使用において減耗する上塗り塗膜からの露出を防止する観点から、当該光沢調整剤の粒度分布をより鋭くするための分級や、当該光沢調整剤中の粗大粒子を除去する処理などが施されていてもよい。上記分級は、例えばふるいや強制渦遠心式精密空気分級機などによって行われる。上記粗大粒子のカット処理は、0.3T〜0.7Tの粒径の上記粗大粒子を分離、除去する公知の方法、あるいは、当該粗大粒子を粉砕する公知の方法、によって行うことが可能である。
上記上塗り塗膜は、本実施の形態における効果が得られる範囲において、前述した樹脂および光沢調整剤以外の他の成分をさらに含有していてもよい。たとえば、上塗り塗膜は、着色剤をさらに含有していてもよい。着色剤の例には、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック、鉄黒、酸化鉄イエロー、チタンイエロー、ベンガラ、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、コバルトグリーン、モリブデン赤などの無機顔料;CoAl、CoCrAl、CoCrZnMgAl、CoNiZnTi、CoCrZnTi、NiSbTi、CrSbTi、FeCrZnNi、MnSbTi、FeCr、FeCrNi、FeNi、FeCrNiMn、CoCr、Mn、Co、SnZnTiなどの金属成分を含む複合酸化物焼成顔料;Alフレーク、樹脂コーティングAlフレーク、Niフレーク、ステンレスフレークなどのメタリック顔料;および、キナクリドンレッド、リソールレッドB、ブリリアントスカーレットG、ピグメントスカーレット3B、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、レーキレッドD、パーマネントレッド4R、ボルドー10B、ファストイエローG、ファストイエロー10G、パラレッド、ウォッチングレッド、ベンジジンイエロー、ベンジジンオレンジ、ボンマルーンL、ボンマルーンM、ブリリアントファストスカーレット、バーミリオンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ファストスカイブルー、アニリンブラックなどの有機顔料;が含まれる。上記着色剤は、上記光沢調整剤に対して十分に小さく、例えば、上記着色剤の個数平均粒径は、0.01〜1.5μmである。また、上塗り塗膜における着色剤の含有量は、例えば、2〜20体積%である。
また、上記上塗り塗膜は、体質顔料をさらに含有していてもよい。当該体質顔料の例には、硫酸バリウム、酸化チタンなどが含まれる。上記体質顔料は、上記光沢調整剤に対して十分に小さく、例えば、上記体質顔料の個数平均粒径は、0.01〜1μmである。また、上塗り塗膜における体質顔料の含有量は、例えば、0.1〜15体積%である。
また、上記上塗り塗膜は、塗装金属板の加工時における上塗り塗膜でのカジリの発生を防止する観点から、潤滑剤をさらに含有していてもよい。当該潤滑剤の例には、フッ素系ワックス、ポリエチレン系ワックス、スチレン系ワックスおよびポリプロピレン系ワックスなどの有機ワックス、および、二硫化モリブデンやタルクなどの無機潤滑剤、が含まれる。上塗り塗膜における潤滑剤の含有量は、例えば、0〜10体積%である。
上記上塗り塗膜は、上記金属板の表面や後述の下塗り塗膜の表面などに、上塗り塗膜用の塗料を塗布し、乾燥させ、必要に応じて硬化させる公知の方法によって作製される。上塗り塗膜用の塗料は、前述した上塗り塗膜の材料を含有するが、本実施の形態の効果が得られる範囲において、当該材料以外の他の成分をさらに含有していてもよい。
たとえば、上塗り塗膜用の塗料は、硬化剤をさらに含有していてもよい。上記硬化剤は、上塗り塗膜を作製する際の硬化(焼付け)時に、前述のポリエステルまたはアクリル樹脂を架橋する。硬化剤の種類は、使用する樹脂の種類や焼付け条件などに応じて、前述した架橋剤や既知の硬化剤などから適宜選択することができる。
上記硬化剤の例には、メラミン化合物、イソシアネート化合物およびメラミン化合物とイソシアネート化合物の併用などが含まれる。メラミン化合物の例には、イミノ基型、メチロールイミノ基型、メチロール基型または完全アルキル基型のメラミン化合物が含まれる。イソシアネート化合物は、芳香族、脂肪族、脂環族のいずれでもよく、例としては、m−キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのブロック化合物が含まれる。
また、上塗り塗膜は、上塗り塗膜用の塗料の貯蔵安定性に影響しない範囲内において、硬化触媒をさらに適宜含有していてもよい。上塗り塗膜中における上記硬化剤の含有量は、例えば、10〜30体積%である。
また、上塗り塗膜は、耐候性を更に向上させるために10体積%以下の紫外線吸収剤(UVA)や光安定化剤(HALS)を適宜含有してもよい。さらには、上塗り塗膜は、雨筋汚れを防止するための親水化剤、例えば30体積%以下のテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物などを含んでいてもよい。
上記上塗り塗膜用の塗料は、例えば、前述した上塗り塗膜の材料を溶剤中に分散することによって調製される。当該塗料は、溶剤や架橋剤などを含んでいてもよい。上記溶剤の例には、トルエン、キシレンなどの炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;セロソルブなどのエーテル;および、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン;が含まれる。
上記上塗り塗膜用の塗料は、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、スプレーコート、浸漬コートなどの公知の方法によって塗布される。上塗り塗膜は、上塗り塗膜用の塗料が塗布された金属板を、その到達温度が200〜250℃となるように加熱することで上記上塗り塗膜用の塗料を金属板に焼き付けることによって作製される。上塗り塗膜の膜厚Tは、例えば、上記塗料の塗布量によって適宜に調整される。
上記塗装金属板は、本実施の形態における効果を奏する範囲において、さらなる構成要素を有していてもよい。たとえば、上記塗装金属板は、塗装金属板における上塗り塗膜の密着性および耐食性を高める観点から、上記金属板および前記上塗り塗膜の間に下塗り塗膜をさらに有することが好ましい。上記下塗り塗膜は、金属板の表面、あるいは上記化成処理皮膜が作製されている場合は、当該化成処理皮膜の表面、に配置される。
上記下塗り塗膜は、樹脂で構成される。当該樹脂の例には、エポキシ樹脂、ポリエステル、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびフェノキシ樹脂が含まれる。
上記下塗り塗膜は、防錆顔料や、着色顔料、メタリック顔料などをさらに含有していてもよい。上記防錆顔料の例には、変性シリカ、バナジン酸塩、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、およびポリリン酸アルミニウムなどの非クロム系の防錆顔料が含まれる。上記着色顔料の例には、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、ベンガラ、チタンイエロー、コバルトブルー、コバルトグリーン、アニリンブラックおよびフタロシアニンブルーが含まれる。上記メタリック顔料の例には、アルミニウムフレーク(ノンリーフィングタイプ)、ブロンズフレーク、銅フレーク、ステンレス鋼フレークおよびニッケルフレークが含まれる。上記体質顔料の例には、硫酸バリウム、酸化チタン、シリカおよび炭酸カルシウムが含まれる。
上記の顔料の下塗り塗膜中における含有量は、本実施の形態における効果が得られる範囲において、適宜に決めることが可能であり、例えば上記下塗り塗膜における上記防錆顔料の含有量は、例えば10〜70体積%であることが好ましい。
上記下塗り塗膜は、下塗り塗膜用の塗料の塗布によって作製される。当該塗料は、溶剤や架橋剤などを含んでいてもよい。上記溶剤の例には、トルエン、キシレンなどの炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;セロソルブなどのエーテル;および、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン;が含まれる。また、上記架橋剤の例には、前述した樹脂を架橋する、メラミン樹脂やイソシアネート樹脂などが含まれる。下塗り塗膜用の塗料は、前述した材料を均一に混合、分散させることによって調製される。
下塗り塗膜用の塗料は、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、スプレーコート、浸漬コートなどの公知の方法で、1〜10μm(好ましくは3〜7μm)の乾燥膜厚が得られる塗布量で金属板に塗布される。当該塗料の塗膜は、例えば金属板の到達温度で180〜240℃の温度で金属板を加熱することにより金属板に焼き付けられ、作製される。
図6Aは、上塗り塗膜用の塗料を塗布した直後の塗装金属板の断面を模式的に示す図であり、図6Bは、上記塗料を焼き付けた後の塗装金属板の断面を模式的に示す図である。図6Aおよび図6Bに示されるように、光沢調整剤15は、上塗り塗膜用の塗料を下地鋼板11(例えばめっき鋼板またはめっき鋼板および下塗り塗膜)に塗布した状態では、当該塗料の塗膜12の表面状態に実質的に影響を及ぼさない。このため、上記塗料の焼き付け前では、所期の光沢は、通常、発現されない。一方。上記塗料を焼き付けた後では、塗料中の揮発成分が揮発するので、上塗り塗膜22の膜厚Tは、塗膜12の厚さtよりも薄くなる。このため、光沢調整剤15による凸部が上塗り塗膜22の表面に形成され、上塗り塗膜22が所期の光沢(本発明ではエナメル調の光沢)を発現する。
本実施の形態に係る塗装金属板は、クロメートフリーの塗装金属板である。「クロメートフリー」とは、上記塗装金属板が6価クロムを実質的に含有しないことを意味する。上記塗装金属板が「クロメートフリー」であることは、例えば、前述した金属板、化成処理皮膜、下塗り塗膜および上塗り塗膜のいずれにおいても、上塗り塗膜または下塗り塗膜を単独で作製した金属板から50mm×50mmの試験片4枚を切り出し、沸騰している純水100mLに10分間浸漬した後、当該純水中に溶出した6価クロムを、JIS H8625付属書の2.4.1の「ジフェニルカルバジッド比色法」に準拠する濃度の分析方法で定量したときに、検出限界以下であること、によって確認することが可能である。上記塗装金属板は、実使用において環境へ6価クロムを溶出せず、かつ、平坦部で十分な耐食性を発現する。なお、「平坦部」とは、上記金属板の上記上塗り塗膜で覆われており、曲げ加工、絞り加工、張り出し加工、エンボス加工、ロール成型等により変形していない部分を言う。
上記塗装金属板の用途は、外装用が好適である。「外装用」とは、屋根、壁、役物、看板および屋外設置機器などの、外気に露出する部分であって、日光やその反射光に照射され得る部分に使用されることを言う。外装用の塗装金属板の例には、外装建材用の塗装金属板などが含まれる。
上記塗装金属板は、エナメル光沢を有する塗装金属板に好適である。エナメル光沢とは、60°における光沢度が20〜85であることを言う。当該光沢度が低すぎると、艶消し観が優勢となり、エナメル調の光沢が得られないことがあり、上記光沢度が高すぎると、光沢度が制御できず、塗装外観の再現性が得られない。上記光沢度は、光沢調整剤の平均粒径や上塗り塗膜における含有量などによって調整される。
上記塗装金属板は、上記光沢調整剤よりも大きな粒径の粒子を含有していないことが、上記のエナメル光沢のような、所期の意匠性を獲得する観点から好ましい。
上記塗装金属板では、上記光沢調整剤(細孔粒子)は、完全に上塗り塗膜中に包含される。また、細孔粒子の実質的な最大粒子は、上塗り塗膜の膜厚に対して十分に小さい。よって、外装の用途での実使用によって上塗り塗膜の樹脂が上塗り塗膜の表面から徐々に減耗しても所期の使用年数以内であれば上記細孔粒子が露出しないように、上記の上塗り塗膜を設計することが可能である。したがって、所期の使用年数以内における上記細孔粒子の割れや崩壊および上記上塗り塗膜からの脱落が防止され、所期の使用年数の間、雨水などの腐食因子が金属板に到達し得ない。このため、上記塗装金属板は、クロメートフリーでありながら、クロメート系の防錆成分を含有する塗装金属板と同等かそれ以上の平坦部耐食性を発現する。
以上の説明から明らかなように、本実施の形態によれば、金属板と、当該金属板上に配置される上塗り塗膜とを有し、当該上塗り塗膜が細孔を有する粒子(細孔粒子)を光沢調整剤として含有し、上記上塗り塗膜における上記光沢調整剤の含有量は、0.01〜15体積%であり、当該光沢調整剤の個数平均粒径をR(μm)、上記上塗り塗膜の膜厚をT(μm)、上記光沢調整剤の個数粒度分布の標準偏差をσとしたときに、下記式を満足することから、クロメートフリーでありながら優れた平坦部耐食性を有する塗装金属板を提供することができる。
(R+2σ)/T≦0.7
R≧2.0
9≦T≦19
また、上記塗装金属板が上記金属板および上記上塗り塗膜の間に下塗り塗膜をさらに有することは、塗装金属板における上塗り塗膜の密着性および耐食性を高める観点からより一層効果的である。
また、上記塗装金属板が外装用塗装金属板であることは、実使用時におけるクロムの溶出による環境への負荷を軽減する観点から、より一層効果的である。
また、上記塗装金属板で構成されている外装建材は、クロメートフリーでありながら10年間以上の実使用において優れた平坦部耐食性を奏することが可能である。
上記塗装金属板は、曲げ加工、絞り加工、張り出し加工、エンボス加工、ロール成型などの公知の加工によって、外装建材などの外装建材に成形される。このように当該外装建材は、上記塗装金属板によって構成される。当該外装建材は、上記の効果が得られる範囲において、他の構成をさらに含んでいてもよい。たとえば、上記外装建材は、当該外装建材の実使用における適切な設置に供される構成をさらに有していてもよい。このような構成の例には、外装建材を建物に固定するための部材や、外装建材同士を連結するための部材、および、外装建材の取り付け時の向きを示すマーク、断熱性を向上させるための発泡シートや発泡層などが含まれる。これらの構成は、前述の外装用塗装金属板に含まれていてもよい。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[塗装原板1〜3の作製]
両面付着量150g/mの溶融55%Al―Zn合金めっき鋼板をアルカリ脱脂し、当該めっき鋼板のめっき層の表面に、塗装前処理として、20℃の、クロメート処理液である日本ペイント株式会社製の「サーフコートNRC300NS」(「サーフコート」は同社の登録商標)を塗布し、当該めっき鋼板を水洗することなく100℃で乾燥し、クロム換算で20mg/mの付着量のクロメート処理鋼板を得た。また、上記クロメート処理液に代えて下記クロメートフリー処理液を塗布し、当該めっき鋼板を水洗することなく100℃で乾燥し、Ti換算で10mg/mの付着量のクロメートフリーの化成処理鋼板を得た。
(クロメートフリー処理液)
ヘキサフルオロチタン酸 55g/L
ヘキサフルオロジルコニウム酸 10g/L
アミノメチル置換ポリビニルフェノール 72g/L
水 残り
上記クロメートフリーの化成処理鋼板の表面に、エポキシ樹脂系の下記下塗り塗料1を塗布し、上記めっき鋼板の到達温度が200℃となるように上記化成処理鋼板を加熱し、乾燥膜厚が5μmのクロメートフリーの下塗り塗膜1を有するクロメートフリーの塗装原板1を得た。また、下塗り塗料1に代えて下記下塗り塗料2を用いた以外は塗装原板1と同様にして、乾燥膜厚が5μmのクロメートフリーの下塗り塗膜2を有するクロメートフリーの塗装原板2を得た。さらに、上記クロメートフリーの化成処理鋼板に代えて上記クロメート処理鋼板を用い、下塗り塗料1に代えて下記下塗り塗料3を用いた以外は塗装原板1と同様にして、乾燥膜厚が5μmのクロム含有の下塗り塗膜3を有する、クロムを含有する塗装原板3を得た。
(下塗り塗料1)
リン酸塩混合物 15体積%
硫酸バリウム 5体積%
シリカ 1体積%
クリアー塗料 残り
(下塗り塗料2)
バナジン酸カルシウム 15体積%
硫酸バリウム 5体積%
シリカ 1体積%
クリアー塗料 残り
(下塗り塗料3)
ストロンチウムクロメート 15体積%
硫酸バリウム 5体積%
シリカ 1体積%
クリアー塗料 残り
上記下塗り塗料1〜3において、上記クリアー塗料は、日本ファインコーティングス株式会社製「NSC680」である。また、上記下塗り塗料1において、上記リン酸塩混合物は、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、および、トリポリリン酸アルミニウム、の混合物である。さらに、上記体積%は、下塗り塗料中の固形分に対する割合である。
[上塗り塗料の調製]
下記組成の上塗り塗料1〜3を調製した。上塗り塗料1は、下記クリアー塗料が日本ファインコーティングス株式会社製の「CAクリアー塗料」であり、上塗り塗料2は、下記クリアー塗料が同社製の「QKクリアー塗料」であり、上塗り塗料3は、下記クリアー塗料が同社製の「NSC3300クリアー塗料」である。カーボンブラックは着色顔料である。下記体積%は、上塗り塗料中の固形分に対する割合である。
(上塗り塗料)
カーボンブラック 7体積%
光沢調整剤(種類および配合量は表1〜5に記載)
クリアー塗料 残り
[塗装金属板1〜10の作製]
光沢調整剤としてシリカ粒子A(シリカA)を0.01体積%で配合した上塗り塗料1を、塗装原板1の下塗り塗膜1の表面に塗布し、塗装原板1における上記めっき鋼板の到達温度が220℃となるように塗装原板1を加熱し、乾燥膜厚Tが11μmの上塗り塗膜を作製した。こうして、塗装金属板1を作製した。
シリカ粒子Aは、東ソー・シリカ株式会社製「ニップジェル AZ−400」(「ニップジェル」は同社の登録商標)の、粒径が0.4T以上の粒子を強制渦遠心式精密空気分級機によってカットした粉体である。「ニップジェル AZ−400」は、湿式ゲル法によって作製されており、前述の細孔粒子に該当する。ベックマン・コールター社製「Multisizer4」で50μm径のアパーチャーチューブを用いて求めたところ、膜厚Tが11μmのときのシリカ粒子Aの平均粒径Rは2.5μmであり、標準偏差σは、1.0μmである。
シリカ粒子Aの配合量を表1に記載されているように変更した以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板2〜4をそれぞれ作製した。また、乾燥膜厚Tを表1に記載されているように変更した以外は、塗装金属板2と同様にして、塗装金属板5〜7をそれぞれ作製した。膜厚Tが9μmのときのシリカ粒子Aの平均粒径Rは2.0μmであり、標準偏差σは0.8μmである。膜厚Tが15μmのときのシリカ粒子Aの平均粒径Rは2.8μmであり、標準偏差σは1.6μmである。膜厚Tが19μmのときのシリカ粒子Aの平均粒径Rは3.0μmであり、標準偏差σは2.3μmである。また、塗装原板の種類を表1に記載されているように変更した以外は、塗装金属板2と同様にして、塗装金属板8を作製した。また、上塗り塗料の種類を表1に記載されているように変更した以外は、塗装金属板2と同様にして、塗装金属板9、10をそれぞれ作製した。
なお、塗装金属板2を切断してその断面を露出させ、エポキシ樹脂の塊内に封入し、上記断面をさらに研摩し、当該断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、得られた複数箇所の画像を処理、分析することによって、シリカ粒子Aの粒度分布を求めたところ、Rおよびσは、上記の数値と実質的に同じであることが確認された。
[塗装金属板11〜20の作製]
光沢調整剤としてシリカ粒子B(シリカB)を0.01体積%で配合した上塗り塗料1を用いる以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板11を作製した。
シリカ粒子Bは、富士シリシア化学株式会社製「サイリシア 300P」の、粒径が0.3T以上の粒子を強制渦遠心式精密空気分級機によってカットした粉体である。「サイリシア 300P」は、湿式ゲル法によって作製されており、前述の細孔粒子に該当する。シリカ粒子Bの平均粒径Rは2.0μmであり、標準偏差σは、0.5μmである。
シリカ粒子Bの配合量を表2に記載されているように変更した以外は、塗装金属板11と同様にして、塗装金属板12〜14をそれぞれ作製した。また、乾燥膜厚Tを表2に記載されているように変更した以外は、塗装金属板12と同様にして、塗装金属板15〜17をそれぞれ作製した。膜厚Tが9μmのときのシリカ粒子Bの平均粒径Rは2.0μmであり、標準偏差σは0.4μmである。膜厚Tが15μmのときのシリカ粒子Bの平均粒径Rは2.2μmであり、標準偏差σは0.9μmである。膜厚Tが19μmのときのシリカ粒子Bの平均粒径Rは2.2μmであり、標準偏差σは0.9μmである。また、塗装原板の種類を表2に記載されているように変更した以外は、塗装金属板12と同様にして、塗装金属板18を作製した。また、上塗り塗料の種類を表2に記載されているように変更した以外は、塗装金属板12と同様にして、塗装金属板19、20をそれぞれ作製した。
[塗装金属板21、22の作製]
光沢調整剤としてシリカ粒子Bに加えてポリアクリロニトリル(PAN)粒子A(PAN−A)をそれぞれ0.5体積%で配合した上塗り塗料1を用いる以外は、塗装金属板12と同様にして、塗装金属板21を作製した。
PAN粒子Aは、東洋紡株式会社製「タフチック ASF−7」(「タフチック」は同社の登録商標)の、粒径が0.55T以上の粒子を強制渦遠心式精密空気分級機によってカットした粉体である。「タフチック ASF−7」は、スプレードライ法で作製された粒子を粉砕することによって作製されており、前述の細孔粒子に該当する。膜厚Tが11μmのときのPAN粒子Aの平均粒径Rは5.0μmであり、標準偏差σは、0.6μmである。
また、PAN粒子Aに代えて炭酸カルシウム−リン酸カルシウム複合体(CaCPC)を用いる以外は、塗装金属板21と同様にして、塗装金属板22を作製した。
CaCPC粒子は、丸尾カルシウム株式会社製「ボロネックス」(「ボロネックス」は同社の登録商標)の、粒径が0.55T以上の粒子を強制渦遠心式精密空気分級機によってカットした粉体である。「ボロネックス」は、花弁状多孔質構造を有し、前述の細孔粒子に該当する。膜厚Tが11μmのときのCaCPC粒子の平均粒径Rは5.0μmであり、標準偏差σは、0.5μmである。
[塗装金属板23〜31の作製]
光沢調整剤としてPAN粒子Aを0.01体積%で配合した上塗り塗料1を用いる以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板23を作製した。
PAN粒子Aの配合量を表3に記載されているように変更した以外は、塗装金属板23と同様にして、塗装金属板24〜26をそれぞれ作製した。また、乾燥膜厚Tを表3に記載されているように変更した以外は、塗装金属板24と同様にして、塗装金属板27、28をそれぞれ作製した。膜厚Tが15μmのときのPAN粒子Aの平均粒径Rは6.2μmであり、標準偏差σは1.0μmである。膜厚Tが19μmのときのPAN粒子Aの平均粒径Rは6.7μmであり、標準偏差σは1.9μmである。また、塗装原板の種類を表3に記載されているように変更した以外は、塗装金属板24と同様にして、塗装金属板29を作製した。また、上塗り塗料の種類を表3に記載されているように変更した以外は、塗装金属板24と同様にして、塗装金属板30、31をそれぞれ作製した。
[塗装金属板32〜40の作製]
光沢調整剤としてCaCPC粒子を0.01体積%で配合した上塗り塗料1を用いる以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板32を作製した。
CaCPC粒子の配合量を表3に記載されているように変更した以外は、塗装金属板32と同様にして、塗装金属板33〜35をそれぞれ作製した。また、乾燥膜厚Tを表3に記載されているように変更した以外は、塗装金属板33と同様にして、塗装金属板36、37をそれぞれ作製した。膜厚Tが15μmのときのCaCPC粒子の平均粒径Rは5.4μmであり、標準偏差σは1.4μmである。膜厚Tが19μmのときのCaCPC粒子の平均粒径Rは5.5μmであり、標準偏差σは1.5μmである。また、塗装原板の種類を表3に記載されているように変更した以外は、塗装金属板33と同様にして、塗装金属板38を作製した。また、上塗り塗料の種類を表3に記載されているように変更した以外は、塗装金属板33と同様にして、塗装金属板39、40をそれぞれ作製した。
[塗装金属板41〜57の作製]
光沢調整剤を配合していない上塗り塗料1を用いる以外は、塗装金属板2と同様にして、塗装金属板41を作製した。
光沢調整剤としてシリカ粒子C(シリカC)を1体積%配合した上塗り塗膜1を用いる以外は、塗装金属板41と同様にして、塗装金属板42を作製した。
シリカ粒子Cは、日産化学工業株式会社製「ライトスター LA−OS26BK」であり、前述の細孔粒子に該当する。膜厚Tが11μmのとき、シリカ粒子Hの平均粒径Rは0.7μmであり、標準偏差σは、0.2μmである。
シリカ粒子Cに代えてシリカ粒子D(シリカD)を用いる以外は、塗装金属板42と同様にして、塗装金属板43を作製した。
シリカ粒子Dは、東ソー・シリカ株式会社製「ニップジェル AZ−410」であり、前述の細孔粒子に該当する。「ニップジェル AZ−410」は、湿式ゲル法によって作製されている。膜厚Tが11μmのときのシリカ粒子Dの平均粒径Rは4.2μmであり、標準偏差σは、3.8μmである。
シリカ粒子Dの配合量を表4に記載されているように変更した以外は、塗装金属板42と同様にして、塗装金属板44〜46をそれぞれ作製した。また、乾燥膜厚Tを表4に記載されているように変更した以外は、塗装金属板43と同様にして、塗装金属板47、48をそれぞれ作製した。膜厚Tが7μmおよび25μmのときのシリカ粒子Dの平均粒径Rはいずれも4.2μmであり、標準偏差σはいずれも3.8μmである。また、塗装原板の種類を表4に記載されているように変更した以外は、塗装金属板43と同様にして、塗装金属板49、50をそれぞれ作製した。また、上塗り塗料の種類を表4に記載されているように変更した以外は、塗装金属板43と同様にして、塗装金属板51、52をそれぞれ作製した。
[塗装金属板53〜57の作製]
シリカ粒子Dに代えてシリカ粒子E(シリカE)を用いる以外は、塗装金属板43と同様にして、塗装金属板53を作製した。
シリカ粒子Eは、東ソー・シリカ株式会社製「ニップジェル BY−001」であり、前述の細孔粒子に該当する。「ニップジェル BY−001」は、湿式ゲル法によって作製されている。膜厚Tが11μmのときのシリカ粒子Eの平均粒径Rは13.0μmであり、標準偏差σは、10.7μmである。
シリカ粒子Eに代えてシリカ粒子F(シリカF)を用いる以外は、塗装金属板53と同様にして、塗装金属板54を作製した。
シリカ粒子Fは、湿式ゲル法とその後の有機物での処理とによって作製された東ソー・シリカ株式会社製「ニップジェル AZ−460」であり、前述の細孔粒子に該当する。膜厚Tが11μmのときのシリカ粒子Fの平均粒径Rは4.4μmであり、標準偏差σは、3.7μmである。
また、シリカ粒子Fに代えてシリカ粒子G(シリカG)を用いる以外は、塗装金属板54と同様にして、塗装金属板55を作製した。
シリカ粒子Gは、乾式燃焼法によって作製された日本アエロジル株式会社製「ACEMATT TS100」であり、前述の細孔粒子に該当する。膜厚Tが11μmのときのシリカ粒子Gの平均粒径Rは9.5μmであり、標準偏差σは、1.8μmである。
また、シリカ粒子Gに代えてシリカ粒子H(シリカH)を用いる以外は、塗装金属板55と同様にして、塗装金属板56を作製した。
シリカ粒子Hは、乾式燃焼法とその後の有機物での処理とによって作製された日本アエロジル株式会社製「ACEMATT 3300」であり、前述の細孔粒子に該当する。膜厚Tが11μmのときのシリカ粒子Hの平均粒径Rは9.5μmであり、標準偏差σは、2.7μmである。
また、光沢調整剤としてシリカ粒子Bを1体積%で配合した上塗り塗料1を用い,乾燥膜厚Tを表4に記載されているように変更した以外は、塗装金属板12と同様にして、塗装金属板57を作製した。膜厚Tが5μmのときのシリカ粒子Bの平均粒径Rは1.3μmであり、標準偏差σは0.2である。
[塗装金属板58〜65の作製]
光沢調整剤としてポリアクリロニトリル(PAN)粒子B(PAN−B)を1.0体積%で配合した上塗り塗料1を用いる以外は、塗装金属板24と同様にして、塗装金属板58を作製した。
PAN粒子Bは、東洋紡株式会社製「タフチック ASF−7」であり、前述の細孔粒子に該当する。膜厚Tが11μmのときのPAN粒子Bの平均粒径Rは7.0μmであり、標準偏差σは、2.4μmである。
PAN粒子Bの配合量を表5に記載されているように変更した以外は、塗装金属板58と同様にして、塗装金属板59〜61をそれぞれ作製した。また、塗装原板の種類を表5に記載されているように変更した以外は、塗装金属板58と同様にして、塗装金属板62、63をそれぞれ作製した。また、上塗り塗料の種類を表5に記載されているように変更した以外は、塗装金属板58と同様にして、塗装金属板64、65をそれぞれ作製した。
[塗装金属板66の作製]
光沢調整剤としてポリアクリロニトリル(PAN)粒子C(PAN−C)を1.0体積%で配合した上塗り塗料1を用いる以外は、塗装金属板24と同様にして、塗装金属板66を作製した。
PAN粒子Cは、東洋紡株式会社製「タフチック A−10」である。「タフチック A−10」は、両面の中央部に凹部または貫通孔を有する略円盤形状の粒子であり、前述の細孔粒子に該当する。膜厚Tが11μmのときのPAN粒子Cの平均粒径Rは10.0μmであり、標準偏差σは、7.0μmである。
[塗装金属板67〜70の作製]
シリカIを調製した。まず、攪拌機付き反応槽に市販の3号ケイ酸ソーダ(SiO:21.9質量%、NaO:7.1質量%、SiO/NaO=3.19)を100g(全液量中のSiO濃度として7質量%)量り採り、水100g加えた後、50℃に調節し、ゆっくり攪拌しながらアクリルアミドポリマー水溶液(10質量%水溶液、重量平均分子量:50万)を65g加えて十分に分散させる。当該水溶液の添加量は、SiOに対してポリアクリルアミド無水物が30質量%となる量である。
次いで、上記の混合液に、予め50℃に調節した5質量%硫酸を加えて、当該混合液のpHを10に調整した後、攪拌を止め、そのまま100時間静置させる。その後、攪拌、分散し、沈澱物と母液を濾別し、得られたケーキを水中で再分散し、十分分散後、pHが2.0になるまで5質量%硫酸を加え、分散液のpHが2.0でほぼ安定したら、そのまま24時間攪拌し、当該分散液を濾過、水洗し、さらにケーキをリパルプし、15質量%の球状シリカ粒子スラリーにする。
次いで、上記スラリーを濾過後、得られたケーキを110℃の恒温乾燥機で一夜乾燥後、サンプルミルで粉砕し、シリカ粒子I(シリカI)を得た。シリカ粒子Iは、前述の細孔粒子に該当する。シリカ粒子Iの粒度分布をベックマン・コールター社製「Multisizer4」を用いて、50μm径のアパーチャーチューブを用いて測定したところ、膜厚Tが11μmのときのシリカ粒子Iの平均粒径Rは2.7μmであり、標準偏差σは、1.2μmである。また、シリカ粒子Iの、個数粒度分布における最大値(粒度分布曲線とベースラインとの交点)は5.7μmであり、このように11μm(0.5T)未満であった。
光沢調整剤としてシリカ粒子Iを0.01体積%で配合した上塗り塗料1を用いる以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板67を作製した。また、シリカ粒子Iの配合量を表6に記載されているように変更した以外は、塗装金属板67と同様にして、塗装金属板68〜70をそれぞれ作製した。
[塗装金属板71〜74の作製]
光沢調整剤としてシリカ粒子J(シリカJ)を0.01体積%で配合した上塗り塗料1を用いる以外は、塗装金属板1と同様にして、塗装金属板71を作製した。
シリカ粒子Jは、東ソー・シリカ株式会社製「ニップジェル BY−601」(「ニップジェル」は同社の登録商標)の、粒径が0.7T以上の粒子を強制渦遠心式精密空気分級機によってカットした粉体である。「ニップジェル BY−601」は、湿式ゲル法によって作製されており、前述の細孔粒子に該当する。ベックマン・コールター社製「Multisizer4」で50μm径のアパーチャーチューブを用いて求めたところ、膜厚Tが11μmのときのシリカ粒子Jの平均粒径Rは4.3μmであり、標準偏差σは、1.7μmである。
シリカ粒子Jの配合量を表1に記載されているように変更した以外は、塗装金属板71と同様にして、塗装金属板72〜74をそれぞれ作製した。
[評価]
塗装金属板1〜74のそれぞれについて、下記の測定および試験を行った。
(1)60度光沢度
塗装金属板1〜74のそれぞれの、JIS K5600−4−7(ISO 2813:1994)で規定される60°における鏡面光沢度(G60)を日本電色株式会社製 光沢計VG−2000によって測定した。
(2)塗装外観
塗装金属板1〜74のそれぞれの乾燥後の塗膜の外観を、以下の基準により評価した。
(評価基準)
○:光沢異常および塗膜欠陥が認められず、フラットなエナメル外観が認められる
×:以下に示すD1〜D5のいずれかの異常が認められる
D1:光沢を制御できていない
D2:光沢が高すぎる
D3:光沢が低すぎる
D4:塗膜の凹凸感が強く、フラットなエナメル外観が得られない
D5:塗膜焼付け時の、揮発成分による塗膜膨れが見られる(厚膜の場合に発生)
(3)加工部密着性
塗装金属板1〜74のそれぞれに0T曲げ(密着曲げ)加工を施し、当該0T曲げ部のセロハンテープ剥離試験を行い、以下の基準により評価した。
(評価基準)
○:塗膜の剥離が認められない
×:塗膜の剥離が認められる
(4)平坦部耐食性
塗装金属板1〜74のそれぞれについて、まずJIS K5600−7−7(ISO 11341:2004)に規定されているキセノンランプ法促進耐候性試験を1,000時間行い、次いで、JIS H8502に規定されている「中性塩水噴霧サイクル試験」(いわゆるJASO法)を720時間行った。上記二つの試験の実施を1サイクルとし、塗装金属板1〜74のそれぞれについて、1サイクル(実使用の耐久年数が5年程度に相当)試験品と、2サイクル(実使用の耐久年数10年程度に相当)試験品のそれぞれを水洗し、目視、および、10倍ルーペによる拡大観察によって、塗装金属板の兵站部における塗膜の膨れの有無を観察し、以下の基準により評価した。
(評価基準)
◎:膨れが認められない
○:拡大観察で僅かに微小な膨れが認められるが、目視では当該膨れが認められない
×:目視で膨れが認められる
塗装金属板1〜74の材料、物性値および評価結果を表1〜6に示す。
表1〜表6から明らかなように、塗装金属板1〜40および67〜74は、(R+2σ)/Tが0.7以下であることから、エナメル調の光沢の意匠性を有し、十分な加工部密着性を有し、かつクロメートフリーであるにも関わらず10年間の実使用に相当する平坦部耐食性を有している。特に、上記の塗装金属板における平坦部耐食性は、塗装金属板49および62との対比から明らかなように、含クロメート化成処理を金属板に施し、防錆顔料としてクロムを含有する塗装金属板の平坦部耐食性と同等か、それ以上である。
また、表1〜表3から明らかなように、光沢調整剤(細孔粒子)の個数平均粒径Rが少なくとも2μm以上であれば、上記の式を満たす範囲において、光沢の調整に有効であることが明らかである。
また、塗装金属板2と5〜7、および、12と15〜17から明らかなように、上塗り塗膜の膜厚Tが9〜19μmの範囲において、所期の光沢度が得られ、かつ、加工部密着性および平坦部耐食性のいずれも十分であることがわかる。
また、塗装金属板1〜4、11〜14、23〜26および32〜35から明らかなように、上記光沢調整剤の上塗り塗膜における配合量が0.01〜15体積%であれば、塗装金属板の、JIS K5600に規定されている60°における鏡面光沢度を、概ね20〜85に調整することが可能である。
また、塗装金属板71〜74から明らかなように、光沢調整剤(シリカ粒子J)の(R+2σ)/Tが0.7以下であれば、加工部密着性、平坦部耐食性および意匠性のいずれもが十分に発現されることがわかり、塗装金属板67〜70から明らかなように、分級や粗大粒子のカットなどの粒度分布の調整をしなくても、光沢調整剤(シリカ粒子I)が「(R+2σ)/Tが0.7以下」の条件を満たせば、加工部密着性、平坦部耐食性および意匠性のいずれもが十分に発現されることがわかる。
これに対して、表4および表5に示されるように、(R+2σ)/Tが0.7を超える塗装金属板では、いずれも、10年間の実使用に相当する平坦部耐食性が得られなかった。特に、塗装金属板46および61から明らかなように、上記光沢調整剤の上塗り塗膜における配合量が多すぎると、加工部密着性が不十分となり、また、エナメル調の光沢が得られず、意匠性も不十分であった。また、塗装金属板47、48、53、55、56および66から明らかなように、(R+2σ)/Tが大きくなると、あるいは塗装金属板57から明らかなように上塗り塗膜の膜厚Tが小さく(9μm未満と)なると、塗膜の凹凸が大きくなり、エナメル調の外観が得られない、または5年間の実使用に相当する平坦部耐食性すら得られないことがわかる。
本発明に係る塗装金属板では、上塗り塗膜からの光沢調整剤の露出、崩壊および脱落に起因する平坦部での耐食性の低下が防止される。よって、外装の用途で長期にわたって使用されても所期の外観と耐食性を長期にわたって呈する塗装金属板が得られる。したがって、本発明によって、外装用の塗装金属板のさらなる長寿命化および利用のさらなる促進が期待される。
11 下地鋼板
12 塗膜
15 光沢調整剤
22 上塗り塗膜

Claims (14)

  1. 金属板と、前記金属板上に配置される上塗り塗膜とを有する、クロメートフリーの塗装金属板であって、
    前記金属板は、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板および銅板からなる群から選ばれるいずれかであり、
    前記上塗り塗膜は、細孔を有する粒子を光沢調整剤として含有し、
    前記上塗り塗膜における前記光沢調整剤の含有量は、0.01〜15体積%であり、
    前記光沢調整剤の個数平均粒径をR(μm)、前記上塗り塗膜の膜厚をT(μm)、前記光沢調整剤の個数粒度分布の標準偏差をσとしたときに、下記式を満足する、塗装金属板。
    (R+2σ)/T≦0.7
    R≧2.0
    9≦T≦19
    σ<0.3T
  2. 金属板と、前記金属板上に配置される上塗り塗膜とを有する、クロメートフリーの塗装金属板であって、
    前記金属板は、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板および銅板からなる群から選ばれるいずれかであり、
    前記上塗り塗膜は、細孔を有する粒子を光沢調整剤として含有し、
    前記上塗り塗膜における前記光沢調整剤の含有量は、0.01〜15体積%であり、
    前記光沢調整剤の個数平均粒径をR(μm)、前記上塗り塗膜の膜厚をT(μm)としたときに、前記光沢調整剤の個数粒度分布における粒径の最大値が0.7T以下であり、下記式を満足する、塗装金属板。
    R≧2.0
    9≦T≦19
  3. 前記光沢調整剤の個数粒度分布における粒径の最大値は0.6T以下である、請求項2に記載の塗装金属板。
  4. 前記金属板および前記上塗り塗膜の間に下塗り塗膜をさらに有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装金属板。
  5. 前記光沢調整剤は、シリカである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装金属板。
  6. 前記上塗り塗膜のL値が70以下であり、かつ前記上塗り塗膜の膜厚Tが13μm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗装金属板。
  7. 前記上塗り塗膜のL値が80超であり、かつ前記上塗り塗膜の膜厚Tが15μm以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗装金属板。
  8. 前記上塗り塗膜のL値と前記上塗り塗膜を形成する前の前記金属板の表面の色のL値との差の絶対値ΔLが10以下であり、かつ前記上塗り塗膜の膜厚Tが11μm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗装金属板。
  9. 前記上塗り塗膜のL値と前記上塗り塗膜を形成する前の前記金属板の表面の色のL値との差の絶対値ΔLが20以下であり、かつ前記上塗り塗膜の膜厚Tが13μm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗装金属板。
  10. 前記上塗り塗膜のL値と前記上塗り塗膜を形成する前の前記金属板の表面の色のL値との差の絶対値ΔLが50以下であり、かつ前記上塗り塗膜の膜厚Tが15μm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗装金属板。
  11. 60°における光沢度が20〜85である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の塗装金属板。
  12. 外装用塗装金属板である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の塗装金属板。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の塗装金属板で構成されている外装建材。
  14. 前記外装建材を建物に固定するための部材、前記外装建材同士を連結するための部材、前記外装建材の取り付け時の向きを示すマーク、および、断熱性を向上させるための発泡シートまたは発泡層、からなる群から選ばれる一以上をさらに有する、請求項13に記載の外装建材。
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