JP7422274B2 - 艶消し塗膜形成用組成物およびその製造方法、ならびに塗装金属板の製造方法 - Google Patents

艶消し塗膜形成用組成物およびその製造方法、ならびに塗装金属板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、艶消し塗膜形成用組成物およびその製造方法、ならびに塗装金属板の製造方法に関する。
塗装金属板は、一般に、耐久性、耐候性および意匠性に優れ、例えば外装建材に好適に用いられている。外装建材用の塗装金属板の中でも、長期耐久性を要求される塗装金属板には、フッ素樹脂塗膜を有する塗装金属板が好適である。
フッ素樹脂塗膜を有する塗装金属板として、ステンレス鋼板と、当該ステンレス鋼板上に配置された、ポリフッ化ビニリデンおよびアクリル樹脂を含む塗膜と、を有する塗装金属板が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、鋼板と、当該鋼板上に配置されたフッ素樹脂、アクリル樹脂、無機焼成顔料、および有機顔料を含有するフッ素系着色層と、を有する塗装金属板も知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2001-009367号公報 特開2008-087242号公報
フッ素樹脂は、結晶化が経時的に進行することが知られている。すなわち、フッ素樹脂は、ガラス転移温度(たとえばポリフッ化ビニリデンであれば-40℃程度)以上の温度域で分子が比較的運動しやすいという性質と、結晶化しやすいという性質と、を有する。そのため、フッ素樹脂は、上記のガラス転移温度以上の温度域において、不規則な分子配列構造(非晶質構造)から規則的な分子配列構造(結晶構造)に変化しやすい。
また、フッ素樹脂は、結晶化すると、分子鎖同士の結合力が強固になる、という性質も有する。そのため、フッ素樹脂系の塗膜は、フッ素樹脂の結晶化が経時的に進行することにより、延性が低下することがある。
例えば、塗膜(フッ素樹脂)の延性が高い製造直後に成形加工を行うと、塗膜の破断(塗膜割れ)が生じにくい。しかしながら、製造後、長期間保管した後に成型加工を行うと、塗膜(フッ素樹脂)の延性が十分ではなく、塗膜が破断してしまうことがある。また特に、塗膜中に艶消し剤を含む場合、艶消し剤を起点として、塗膜割れが発生しやすかった。つまり、フッ素樹脂を含む艶消し塗膜では、塗膜形成から時間が経過した後、塗膜割れが生じやすかった。
さらに、一般的な艶消し剤を塗膜中に含むと、艶消し剤の凝集物が視認されやすく、塗膜の意匠性が損なわれることもあった。さらに、艶消し剤を含む組成物は、チキソトロピー性が高く、塗布し難い場合も多かった。
そこで本発明は、経時で割れが生じ難く、凝集物が視認され難い艶消し状の塗膜を形成可能であり、かつ塗布しやすい艶消し塗膜形成用組成物の提供を目的とする。また、本発明は、艶消し塗膜形成用組成物の製造方法の提供、ならびに当該艶消し塗膜形成用組成物を用いた塗装金属板の製造方法の提供も目的とする。
本発明は、以下の艶消し塗膜形成用組成物を提供する。
平均粒子径が4.0μm以上であるフッ素樹脂粒子と、アクリル樹脂と、着色顔料と、を含み、ISO1524に準拠して測定される分散度が、20μm以上100μm以下である、艶消し塗膜形成用組成物。
本発明は、以下の艶消し塗膜形成用組成物の製造方法も提供する。
フッ素樹脂を乾式粉砕し、平均粒子径が4.0μm以上であり、かつJIS K5101-12-1に準拠して測定される見かけ密度が0.30g/ml以下であるフッ素樹脂粒子を得る工程と、アクリル樹脂、着色顔料、および溶媒を含む顔料分散液を得る工程と、前記フッ素樹脂粒子および前記顔料分散液を、撹拌混合する工程と、を含む、艶消し塗膜形成用組成物の製造方法。
本発明は、以下の塗装金属板の製造方法も提供する。
金属板と、前記金属板上に形成された艶消し塗膜と、を有する塗装金属板の製造方法であって、上述の艶消し塗膜形成用組成物を金属板上に塗布する工程を含む、塗装金属板の製造方法。
本発明の艶消し塗膜形成用組成物によれば、艶消し剤を含まないにも関わらず、艶消し状の塗膜が得られ、さらには、得られる艶消し状の塗膜が経時で割れ難い。したがって、意匠性に優れ、かつ長期保存後に加工しても、加工性が良好な塗装金属板が得られる。
艶消し塗膜を形成するためには、塗膜表面に凹凸を設けることが一般的である。そのため、フッ素樹脂を含む塗膜においても、艶消し状の塗膜を得るために、シリカ粒子やガラスビーズ等の光沢調整剤が用いられてきた。しかしながら、光沢調整剤を含む塗膜は、曲げ加工を行った際に光沢調整剤を起点として塗膜割れが生じやすかった。そして、塗膜割れが生じると、割れた部分から水分や、酸素、海塩粒子等が侵入しやすく、塗装金属板(特に金属板)が腐食しやすい。そのため、光沢調整剤を含めることなく、フッ素樹脂塗膜の表面に凹凸を付与可能な方法が求められている。また、大きな凝集物が塗膜に含まれると、当該凝集物が視認されて、塗膜の意匠性が損なわれやすかった。またさらに、当該塗膜を形成するための組成物には、塗布しやすいことも求められていた。
ここで、光沢調整剤を含めることなく艶消し塗膜を形成する方法として、粒子径が小さいフッ素樹脂粒子と光沢調製剤のかわりに粒子径が大きいフッ素樹脂粒子を混合して使用する方法も考えられるが、一般的な粉砕法では、二次粒子の径を揃えることが難しく、二次粒子の径が大きな粒子だけでなく、粒子径が小さい粒子も含まれやすかった。そして、粒子径が小さい粒子によって、組成物のチキソトロピー性が大きくなりやすく、このようなフッ素樹脂粒子を用いた組成物は塗布し難いことがあった。一方で、塗膜を形成した際に粒子径が大きな粒子が視認されやすくなり、塗膜の意匠性が損なわれることもあった。
これに対して、本発明者らは、平均粒子径が4.0μm以上であるフッ素樹脂粒子と、アクリル樹脂と、着色顔料と、を含む艶消し塗膜用形成組成物(以下、単に「組成物」とも称する)であって、当該組成物のISO1524(JIS K5600-2-5)に準拠して測定される分散度が20μm以上100μm以下である場合に、光沢調整剤を用いなくても、艶消し塗膜が得られることを見出した。
フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂は、表面張力が相対的に低く、アクリル樹脂は、表面張力が相対的に高い。そのため、フッ素樹脂粒子と、アクリル樹脂とを含む組成物から塗膜を形成すると、当該塗膜を加熱(焼き付け)する過程で、空気と接する表面のフッ素樹脂粒子とアクリル樹脂とが相分離する(ハジキを生じる)。そして、アクリル樹脂を主成分とする海相(連続相)と、フッ素樹脂粒子を主成分とする島相(分散相)と、からなる海島構造が形成される。またこのとき、フッ素樹脂粒子を主成分とする島相が凹、アクリル樹脂を主成分とする海相が凸となるような凹凸形状が形成されると考えられる。
そして、フッ素樹脂粒子の平均粒子径が4.0μm以上であると、上記凹凸が十分に大きくなり、得られる塗膜の光沢度が低下して、艶消し状になりやすい。また、組成物の分散度が100μm以下であると、塗膜を形成した際に視認される粒状の成分が少なくなり、得られる塗膜の意匠性が良好になりやすい。さらに、組成物の分散度が20μm以上であると、組成物のチキソトロピー性が適度になり、塗布性が良好になる。
なお、本発明の組成物は、後述のように、フッ素樹脂粒子を乾式粉砕により調製し、当該フッ素樹脂粒子と他の成分とをメディアを使用しない方法で混合することによって得られる。以下、本発明の組成物、およびその製造方法について詳しく説明する。
1.組成物
本発明の組成物は、艶消し塗膜を形成するために用いられ、例えば金属板上に艶消し塗膜を形成するために好適に用いられる。ただし、当該組成物を塗布する基板は、金属板に限定されない。
本発明の組成物は、フッ素樹脂粒子、アクリル樹脂、および着色顔料を少なくとも含んでいればよく、例えば溶媒等の他の成分を含んでいてもよい。
(1)フッ素樹脂粒子
フッ素樹脂粒子は、平均粒子径が4.0μm以上であり、かつフッ素を含む樹脂を含んでいればよい。フッ素樹脂粒子(二次粒子)の平均粒子径は、上述の分散度を達成可能な粒子径であればよいが、4.0~8.0μmが好ましく、4.0~5.5μmがより好ましい。ここで、フッ素樹脂粒子の平均粒子径とは、体積基準粒度分布における累積頻度%径の50%粒子径(d50)をいう。
より具体的には、以下の手法で測定される値である。
1)分散媒としてのイオン交換水に、フッ素樹脂粒子を分散させて、粒子分散液を得る。この粒子分散液を、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950V2にセットし、前処理として超音波を60分間照射し、分散処理として超音波を2分間照射する。
2)次いで、この粒子分散液の体積基準粒度分布を測定し、累積頻度%径としてd50を求める。
なお、上記累積頻度%径から求められるフッ素樹脂粒子(二次粒子)の10%粒子径(d10)は、1.0~4.0μmが好ましく、2.0~4.0μmがより好ましい。また、フッ素樹脂粒子(二次粒子)の90%粒子径(d90)は、5.0~15.0μmが好ましく、6.0~14.0μmがより好ましい。これらが当該範囲であると、組成物が上述の分散液が満たされやすくなる。
さらに、上記フッ素樹脂粒子に含まれるフッ素樹脂は、フッ化ビニリデン由来の構造単位を含むことが好ましい。フッ化ビニリデンに由来する構造単位を含むと、得られる塗膜において、フッ素樹脂粒子が結晶化し難い。さらに、得られる塗膜の耐久性や耐薬品性、耐熱性、耐摩耗性、耐候性、耐食性および耐汚染性等が良好になる。
フッ素樹脂は、フッ化ビニリデン(VDF)の単独重合体であってもよく、フッ化ビニリデン(VDF)とそれと共重合可能な他のフッ化モノマーとの共重合体であってもよい。
他のフッ化モノマーの例には、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等が含まれる。このうち、結晶性の制御をより容易にする観点では、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)が好ましい。
上記共重合体における、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位の含有量は、特に制限されないが、耐候性を損なうことなく、経時的な結晶化を少なくする観点では、フッ化ビニリデンに由来する構造単位とヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位の合計に対して1~15質量%が好ましい。ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位の含有量が1質量%以上であると、経時的な結晶化が少なくなる。一方、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位の含有量が15質量%以下であると、耐候性が損なわれ難くなる。フッ化ビニリデンに由来する構造単位とヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位の合計量は、フッ素樹脂を構成する全構造単位に対して100質量%であることが好ましい。
フッ素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10万~70万が好ましく、20万~50万がより好ましい。フッ素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で測定できる。
組成物中のフッ素樹脂粒子の量は、特に制限されないが、フッ素樹脂粒子とアクリル樹脂との合計に対して60~95質量%が好ましい。フッ素樹脂粒子の含有量が60質量%以上であると、得られる塗膜の耐候性や耐食性、耐汚染性等が高まりやすい。一方、フッ素樹脂粒子の量が95質量%以下であると、アクリル樹脂によって、フッ素樹脂の結晶化が十分に抑制される。また、組成物から得られる塗膜と、金属板との密着性が良好になり、塗装金属板の加工性が損なわれ難くなる。上記観点から、フッ素樹脂粒子の含有量は、フッ素樹脂粒子とアクリル樹脂の合計に対して70~90質量%がより好ましい。
(2)アクリル樹脂
アクリル樹脂は、フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂の結晶化を抑制したり、着色顔料の分散性を高めたり、組成物から得られる塗膜と金属板との密着性を高めたりするために用いられる。
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む重合体が好ましく、メタクリル酸メチルの単独重合体、またはメタクリル酸メチルと他のモノマーとの共重合体がより好ましい。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、メタクリル、アクリル、またはこれらの両方をいう。
メタクリル酸メチルと共重合可能な他のモノマーの例には、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;スチレン、メチルスチレン等のビニル類;アクリロニトリルが含まれる。
また、耐候性の観点から、アクリル樹脂は、紫外線吸収基をさらに有することが好ましい。紫外線吸収基を有するアクリル樹脂は、例えば3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチルメタクリラート等のような紫外線吸収基含有(メタ)アクリレートを、他の単量体(例えばメタクリル酸メチル)と共重合させる方法によって得ることもできる。アクリル樹脂は、これら由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
なお、耐候性の高い塗装金属板が求められる場合、組成物中のアクリル樹脂のガラス転移温度は高いことが好ましい。この場合、アクリル樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を主成分とする重合体であることが好ましく、当該重合体における、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量は、当該重合体を構成する全構造単位に対して50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
一方、加工性の高い塗装金属板が求められる場合、組成物中のアクリル樹脂のガラス転移温度は低いことが好ましい。この場合、アクリル樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、アクリル酸エチルに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸と炭素数1~6のアルコールとのエステル化合物(ただし、メタクリル酸メチルを除く)に由来する構造単位とを含む共重合体が好ましい。メタクリル酸メチルに由来する構造単位は、上記共重合体に適度な硬度を付与し、アクリル酸エチルに由来する構造単位やエステル化物に由来する構造単位は、上記共重合体に適度な柔軟性を付与する。また、アクリル酸エチルに由来する構造単位やエステル化物に由来する構造単位は、フッ素樹脂粒子中のフッ素樹脂との相溶性を高める。一方で、エステル化合物は、フッ素樹脂粒子中のフッ素樹脂との相溶性を適度に低下させる。したがって、これらの構造単位を含むと、アクリル樹脂とフッ素樹脂との相溶性が適度に調整される。
当該共重合体において、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量は、10~50質量%であり、アクリル酸エチルに由来する構造の含有量は、40~80質量%であり、上記エステル化合物に由来する構造単位の含有量は、10~50質量%が好ましい。さらには、上記共重合体は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量は、10~30質量%であり、アクリル酸エチルに由来する構造単位の含有量は60~80質量%であり、上記エステル化合物に由来する構造単位の含有量は、10~30質量%が好ましい。
一方で、加工性および耐候性を兼ね備えた塗装金属板が求められる場合、アクリル樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、アクリル酸エチルに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸と炭素数1~6のアルコールとのエステル化合物に由来する構造単位とに加えて、紫外線吸収基含有(メタ)アクリレートに由来する構造単位をさらに含む共重合体であってもよい。
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず、例えば0~110℃である。塗膜の耐候性を高めやすくする観点では、アクリル樹脂のTgは高いことが好ましく、例えば50~110℃が好ましく、70~110℃がより好ましい。一方、フッ素樹脂の経時的な結晶化を抑制して、塗膜の割れを抑制しやすくし、塗装金属板の加工性を高めやすくする観点では、ガラス転移温度は低いほうが好ましく、例えば40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。アクリル樹脂のTgは、示差熱分析(DTA)によって測定することができる。
アクリル樹脂のTgは、アクリル樹脂のモノマー組成によって調整できる。アクリル樹脂のTgを高くするためには、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量を多くすることが好ましく、アクリル酸エチルに由来する構造単位の含有量は少なくすることが好ましい。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000~200000が好ましく、20000~150000がより好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量は、前述と同様の方法で測定することができる。
アクリル樹脂の含有量は、上述のフッ素樹脂粒子とアクリル樹脂の合計に対して5~40質量%が好ましい。アクリル樹脂の含有量が5質量%以上であると、フッ素樹脂の結晶化を十分に抑制でき、さらには得られる塗膜と金属板との密着性も高まる。その結果、塗装金属板の加工性が十分に高まる。アクリル樹脂の含有量が40質量%以下であると、耐候性や耐食性および耐汚染性などのフッ素樹脂の特性が損なわれにくい。上記観点から、アクリル樹脂の含有量は、フッ素樹脂粒子とアクリル樹脂との合計に対して10~30質量%がより好ましい。
(3)着色顔料
着色顔料は、得られる塗膜に色調を付与するための成分であり、通常粒子状である。着色顔料は、塗料用の着色顔料として一般に入手できる有機系着色顔料および無機系着色顔料のいずれであってもよい。
無機系着色顔料の例には、酸化チタン、酸化クロム、カーボンブラック、鉄黒、酸化鉄イエロー、チタンイエロー、ベンガラ、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、コバルトグリーン、およびモリブデン赤が含まれる。
有機系着色顔料の例には、キナクリドンレッド、リソールレッドB、ブリリアントスカーレットG、ピグメントスカーレット3B、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、レーキレッドD、パーマネントレッド4R、ボルドー10B、ファストイエローG、ファストイエロー10G、パラレッド、ウォッチングレッド、ベンジジンイエロー、ベンジジンオレンジ、ボンマルーンL、ボンマルーンM、ブリリアントファストスカーレット、バーミリオンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ファストスカイブルー、およびアニリンブラックが含まれる。
着色顔料は、金属成分を含む複合酸化物焼成顔料であってもよい。焼成顔料の例には、CoAl、CoCrAl、CoCrZnMgAl、CoNiZnTi、CoCrZnTi、NiSbTi、CrSbTi、FeCrZnNi、MnSbTi、FeCr、FeCrNi、FeNi、FeCrNiMn、FeZn、CoCr、MnCo、およびSnZnTiが含まれる。
また、着色顔料は、メタリック顔料であってもよい。メタリック顔料の例には、Alフレーク、樹脂被覆Alフレーク、金属酸化物被覆Alフレーク、Niフレーク、Cuフレーク、およびステンレス鋼フレークが含まれる。
また、着色顔料は、パール顔料であってもよい。パール顔料の例には、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、および酸化チタン-酸化鉄被覆雲母が含まれる。
着色顔料は、一種単独で用いられてもよく、二種類以上で用いられてもよい。
着色顔料の平均粒子径は、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、0.01~1.5μmがさらに好ましく、0.01~0.5μmが特に好ましい。着色顔料の平均粒子径が当該範囲であると、得られる塗膜において、凝集物が視認され難い。さらに、上述のフッ素樹脂粒子によって得られる塗膜の表面状態に影響を及ぼし難い。また、着色顔料の平均粒子径が上記範囲内であると、塗膜に、ムラなく十分な色調を付与しやすい。
着色顔料の平均粒子径は、上述のフッ素樹脂粒子の平均粒子径と同様に求めることができる。
着色顔料の含有量は、着色顔料の粒径や、発色性等に応じて適宜選択されるが、例えば組成物の固形分に対して10~40質量%が好ましい。
(4)その他
組成物は、フッ素樹脂粒子、アクリル樹脂、および着色顔料以外に、本発明の目的および効果を損なわない範囲において、他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例には、溶媒、硬化剤、硬化触媒、親水化剤等が含まれる。
溶媒は、アクリル樹脂を溶解可能であることが好ましい。溶媒の例には、トルエン、キシレン等の炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;セロソルブ等のエーテル;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトンが含まれる。中でも、アクリル樹脂を溶解可能であり、かつフッ素樹脂粒子との親和性も高いことから、イソホロンが好ましい。
また、アクリル樹脂等を架橋させるために、硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤の例には、メラミン化合物やイソシアネート化合物等が含まれる。
また、組成物の硬化または架橋を促進させるための硬化触媒を含んでいてもよく、硬化触媒は、触媒作用を有する公知の成分から適宜選択される。
親水化剤は、塗膜の表面の親水性を高めるための成分であり、塗膜に親水化剤が含まれると、塗膜の耐雨筋汚れ性等が良好になる。親水化剤の例には、テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物等が含まれる。
なお、組成物は、光沢調整剤粒子を実質的に含有していない。具体的には、組成物における、光沢調整剤粒子の含有量は、組成物の固形分に対して1質量%以下、好ましくは0質量%である。
なお、光沢調整剤粒子とは、シリカ粒子やガラスビーズ等の粒子であって、着色顔料やフッ素樹脂粒子とは異なるものをいう。光沢調整剤粒子は、通常、色調に影響を与えない透明~半透明の粒子であって、得られる塗膜に凹凸を形成し、光沢を低下させる粒子であり、上述のフッ素樹脂粒子以外の粒子であって、上述の方法で測定される平均粒子径が3μm以上の粒子等をいう。
(5)組成物の物性
上述のように、組成物のISO 1524に準拠して測定される分散度は、20μm以上100μm以下であり、40~90μmが好ましく、50~80μmがより好ましい。
また、組成物のB型粘度計にて25℃、60rpmで測定される粘度V60に対する、B型粘度計にて25℃、6rpmで測定される粘度Vの比(V/V60)は、1.2以上4以下が好ましく、1.5以上3.8以下がより好ましく、2.0以上3.5以下がさらに好ましい。
(6)組成物の調製方法
上述の物性を有する組成物は、1)フッ素樹脂を乾式粉砕し、平均粒子径が4.0μm以上であり、かつJIS K5101-12-1に準拠して測定される見かけ密度が0.30g/ml以下であるフッ素樹脂粒子を得る工程と、2)アクリル樹脂、着色顔料、および溶媒を含む顔料分散液を得る工程と、3)フッ素樹脂粒子、および顔料分散液を、撹拌混合する工程と、を行うことによって得られる。なお、必要に応じて、撹拌混合後の組成物をろ過したりする工程等を含んでいてもよい。
1)フッ素樹脂を乾式粉砕する工程
フッ素樹脂を乾式粉砕する工程では、フッ素樹脂を準備し、これを乾式粉砕装置によって、平均粒子径が4.0μm以上であり、かつJIS K5101-12-1に準拠して測定される見かけ密度が0.30g/ml以下となるように粉砕する。なお、本工程で使用するフッ素樹脂は、上述のフッ素樹脂粒子が含むフッ素樹脂と同様である。乾式粉砕法でフッ素樹脂を粉砕すると、湿式粉砕法で粉砕する場合と比べて、平均粒子径が大きくなりやすい。また、当該乾式粉砕法で粉砕すると、粒度分布が狭くなりやすく、粒子径が過度に大きい粒子や、過度に小さい粒子等が少なくなる。
なお、乾式粉砕は、フッ素樹脂を溶媒等に浸漬させず、固体のフッ素樹脂を気相中で粉砕可能な方法であればよいが、メディアによる粉砕を伴わない方法が特に好ましい。また、乾式粉砕時に、フッ素樹脂に熱がかかりにくい方法であることが好ましく、乾式粉砕時の雰囲気温度は、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。乾式粉砕時の雰囲気温度が過度に高いと、粉砕後のフッ素樹脂粒子どうしが凝集したりして、所望の見かけ密度や平均粒子径とすることが難しくなる。なお、乾式粉砕にかける時間は、原料となるフッ素樹脂の種類や大きさ等に応じて適宜選択される。
温度を過度に高めず、かつメディアによる粉砕を行わずに、フッ素樹脂を十分に粉砕可能な乾式粉砕装置の例には、ジェットミルが含まれる。
乾式粉砕後のフッ素樹脂粒子の平均粒子径(二次粒子径)は、4.0μm以上であればよいが、4.0~8.0μmがより好ましく、4.0~5.5μmがより好ましい。フッ素樹脂粒子の平均粒子径が当該範囲であると、艶消し塗膜が得られやすくなる。当該平均粒子径の測定方法は、上述と同様の方法である。一方、見かけ密度は、JIS K5101-12-1に準拠して測定される値であり、0.30g/ml以下であればよく、0.20~0.30g/mlがより好ましく、0.20~0.26g/mlがより好ましい。見かけ密度は、フッ素樹脂粒子に粒径の大きい粒子が含まれると、大きくなる傾向にある。見かけ密度が大きすぎると、フッ素樹脂の二次粒子同士が凝集した状態で顔料分散液と撹拌混合されるため、大きな凝集体を形成し、塗膜を形成した際に粒子径が大きな粒子が視認されやすくなり、塗膜の意匠性が損なわれる。一方で、見かけ密度が小さすぎると、撹拌混合工程において、フッ素樹脂粒子が液面に浮いてしまい、分散効率が悪くなる。
なお、上記乾式粉砕後、必要に応じて、フッ素樹脂粒子を分級したりして、上述の平均粒子径や見かけ密度を満たすように、調整してもよい。
2)顔料分散液を得る工程
アクリル樹脂と、着色顔料と、溶媒と、を含む顔料分散液を得る方法は特に制限されないが、アクリル樹脂と着色顔料とを粉砕混合することが好ましい。アクリル樹脂と着色顔料とを粉砕混合することで、これらを均一に分散可能となり、さらには硬度が固い着色顔料の粗粒子を微細化させることができる。
粉砕混合は、任意の方法で行うことができる。例えば(ビーズを用いた)ビーズミルによって行うことができる。ビーズミルとは、原料を粉砕しながら混合するミルであり、原料を入れた容器中にビーズ(メディア)を充填して回転させて、原料を摺りつぶして粉砕および分散を行う装置である。そのようなビーズミルには、アトライター、ボールミル、振動ミル、SCミル等が含まれる。
ビーズミルは、溶媒中でアクリル樹脂や着色顔料を微細化する湿式ビーズミルであってもよい。また、空気中または不活性ガス中でアクリル樹脂や着色顔料を微細化する乾式ビーズミルであってもよい。比較的小さい粒子径に粉砕しやすい観点では、湿式ビーズミルが好ましい。
すなわち、顔料分散液の調製は、例えばアクリル樹脂と、着色顔料とを粉砕混合(乾式)した後、これらを溶媒に溶解させたり分散させたりする方法であってもよい。また、アクリル樹脂と、着色顔料とを、溶媒の存在下で粉砕混合(湿式粉砕)する方法で行ってもよい。さらに、あらかじめ溶媒に分散させたアクリル樹脂と着色顔料とを粉砕混合(湿式粉砕)する方法であってもよい。中でも、アクリル樹脂と着色顔料とを良好に混合させやすく、かつ比較的小さい粒子径に粉砕しやすい観点から、あらかじめ溶媒に分散させたアクリル樹脂と、着色顔料とを粉砕混合して、顔料分散液を得ることが好ましい。
3)撹拌混合する工程
上述の1)で得られたフッ素樹脂粒子と、2)で得られた顔料分散液と、必要に応じて他の成分(例えば溶媒等)と、を撹拌混合して、組成物を得る。
撹拌混合とは、攪拌機(ミキサー)による混合であり、ビーズ(メディア)による粉砕を伴わない混合をいう。そのような撹拌混合では、フッ素樹脂粒子がさらに粉砕され難いため、得られる塗膜において、フッ素樹脂粒子由来の凹凸が十分に生じやすくなる。
撹拌混合条件(攪拌翼先端速度(周速)、撹拌時間)は、フッ素樹脂粒子にせん断力がかかり難い比較的緩やかな条件が好ましい。周速は、例えば8m/s以下であることが好ましく、1.5~6m/sであることがより好ましい。撹拌時間は、周速にもよるが、例えば30~180分間であることが好ましく、30~60分間であることがより好ましい。周速や撹拌時間が上限値以下であると、粒子径の小さいフッ素樹脂粒子が生成され難く、塗膜表面の凹凸が大きくなりやすい。さらに、組成物の塗布性が良好になりやすい。
2.塗装金属板の製造方法
上述の組成物を用いて塗装金属板を用いて塗装金属板を製造する方法について説明する。当該塗装金属板の製造方法では、金属板上に、上記組成物を塗布する工程と、これを焼き付ける工程と、を含んでいればよい。
(1)組成物を塗布する工程
金属板は、公知の金属板から選ぶことができる。金属板の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn-Al合金めっき鋼板、Zn-Al-Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板および銅板が含まれる。
金属板は、耐食性および軽量化の観点から、めっき鋼板またはステンレス鋼板であることが好ましく、さらに費用対効果の観点から、めっき鋼板であることが好ましい。また、金属板は、耐食性をより高める観点などから、溶融55%Al-Zn合金めっき鋼板、Zn-Al-Mg合金めっき鋼板またはアルミニウムめっき鋼板であることが好ましい。これらのうち、亜鉛系めっき鋼板が好ましく、Zn-Al-Mg合金めっき鋼板などのマグネシウムを含む亜鉛系めっき鋼板がより好ましい。
金属板の厚みは、塗装金属板の用途に応じて適宜設定されうる。例えば、塗装金属板の用途が外装建材である場合は、金属板の厚みは、例えば0.2~3.0mmであることが好ましく、加工性をより高める観点から、0.25~2.0mmであることが好ましい。
金属板上への組成物の塗布は、ロールコート、カーテンフローコート、スプレーコート、浸漬コートなどの公知の方法によって行うことができる。
(2)塗膜の焼き付け工程
次いで、金属板上に塗布した組成物の塗膜を、加熱(焼き付け)する。
塗膜の加熱(焼き付け)は、組成物から溶媒を揮発させるとともに、焼き付けして、組成物の塗膜を固化させる。組成物が硬化剤や硬化触媒を含む場合は、組成物中から溶媒を揮発させるとともに、焼き付けして塗膜(具体的には基材樹脂)を硬化させる。
塗膜の加熱(焼き付け)は、フッ素樹脂粒子が十分に溶融(または融着)する温度であればよい。具体的には、フッ素樹脂粒子の融点をTm(℃)としたとき、焼き付け温度は、(Tm+25)℃以上が好ましい。なお、フッ素樹脂粒子の分解を抑制する観点では、300℃以下が好ましい。なお、焼き付け温度は、組成物が塗布された金属板の到達温度とする。例えば、組成物が塗布された金属板の到達温度は、130~300℃が好ましく、180~280℃がより好ましい。
そして、塗膜の加熱(焼き付け)を行う過程で、上述のように表面に凸凹が形成される。そして、加熱(焼き付け)した塗膜を冷却して、フッ素樹脂粒子と、アクリル樹脂と、着色顔料とを含む艶消し塗膜を形成する。
なお、冷却の際、加熱(焼き付け)した塗膜を、フッ素樹脂の溶融温度以上の温度(200℃)からフッ素樹脂の分子運動が低下して結晶が成長しにくくなる温度(70℃)まで、130℃/秒以上の冷却速度で冷却することが好ましい。なお、粗大な結晶が生じることによる加工性の低下を抑制する観点からは、冷却速度はより速いことが好ましく、250℃/秒以上であることが好ましい。
塗膜の冷却は、空冷、水冷、放冷、冷却部材への接触およびこれらの組み合わせなどの公知の方法によって行うことができる。
塗膜の冷却は、塗膜の加熱(焼き付け)の直後に行ってもよいし、溶融温度よりも低い温度で加熱(焼き付け)した塗膜を溶融温度以上の温度まで加熱した後に行ってもよい。
(3)その他の工程について
塗装金属板の製造方法は、必要に応じて上記以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。当該他の工程の例には、金属板上に化成処理皮膜を形成する化成処理工程、下塗り層を形成する工程等が含まれる。これらは、組成物を塗布する工程前に行われる。
(化成処理工程)
化成処理工程は、金属板上に化成処理層を形成する工程である。化成処理層は、塗装金属板の密着性や耐食性を向上させる目的で、金属板上に直接、すなわち金属板と艶消し塗膜との間に配置される。化成処理層は、金属板の表面に接して形成された層であり、化成処理層の例には、非クロメート系皮膜、およびクロメート系皮膜が含まれる。これらは、いずれも防錆処理による皮膜である。
非クロメート系皮膜は、耐食性を高める観点および塗装金属板の製造および使用における環境への負荷を軽減する観点から好ましく、クロメート系皮膜は、耐食性を高める観点から好ましい。
非クロメート系皮膜の例には、Ti-Mo複合皮膜、フルオロアシッド系皮膜、リン酸塩皮膜、樹脂系皮膜、樹脂およびシランカップリング剤系皮膜、シリカ系皮膜、シリカおよびシランカップリング剤系皮膜、ジルコニウム系皮膜、ならびに、ジルコニウムおよびシランカップリング剤系皮膜などが含まれる。
そのような化成処理層は、化成処理皮膜を形成するための水性の化成処理液を、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法等の公知の方法で金属板の表面に塗布し、塗布後に金属板を水洗せずに乾燥させることによって形成できる。当該金属板の乾燥温度および乾燥時間は、生産性の観点から、例えば、金属板の到達温度で60~150℃、2~10秒間であることが好ましい。
(下塗り層形成工程)
下塗り層は、塗装金属板における艶消し塗膜の密着性や耐食性を高めるために、金属板と艶消し塗膜との間に形成される。下塗り層は、金属板の表面あるいは化成処理層の表面に形成される。
下塗り層を形成する工程は、下塗り層用の塗料(下塗り層用の樹脂組成物)の塗布およびそれによる膜の固化(または硬化)によって行うことができる。
下塗り層用の塗料は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物でありうる。熱可塑性樹脂の例には、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、変性シリコン樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂および塩化ビニル樹脂などが含まれる。
また、下塗り層用の塗料は、硬化性樹脂と、硬化剤とを含む樹脂組成物であってもよい。硬化性樹脂の例には、エポキシ樹脂、硬化性ポリエステル樹脂(例えば、水酸基含有ポリエステル樹脂)、硬化性アクリル樹脂(例えば水酸基含有アクリル樹脂)、フェノール樹脂が含まれる。エポキシ樹脂は、アミノ基等を有する変性エポキシ樹脂であってもよい。
硬化剤は、硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択される。例えば、水酸基を有する硬化性樹脂などの硬化剤の例には、メラミン化合物およびイソシアネート化合物が含まれる。エポキシ樹脂の硬化剤の例には、アミン化合物、イミダゾール化合物などが含まれる。
下塗り層用の樹脂組成物は、防錆顔料粒子、着色顔料、メタリック顔料粒子、パール顔料粒子、体質顔料粒子、および光沢調整剤粒子などの添加剤をさらに含んでいてもよい。
防錆顔料粒子の例には、変性シリカ、バナジン酸塩、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、およびポリリン酸アルミニウムなどを含む非クロム系の防錆顔料の粒子、ならびに、クロム酸ストロンチウム、クロム酸亜鉛、クロム酸バリウム、クロム酸カルシウムなどを含むクロム系防錆顔料の粒子等が含まれる。着色顔料やメタリック顔料は、前述と同様のものを用いることができる。体質顔料粒子の例には、硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムの粒子が含まれる。光沢調整剤粒子の例には、シリカ、炭酸カルシウムなどの無機材料の粒子、ならびに、アクリル樹脂などの樹脂材料の粒子が含まれる。樹脂組成物は、必要に応じて溶媒および添加剤をさらに含んでいてもよい。
下塗層用樹脂組成物は、上述した材料を均一に混合、分散させることによって調製される。当該塗料の塗膜は、例えば、金属板の到達温度で180~260℃の温度で金属板を加熱することにより金属板に焼き付けられ、作製される。
2.塗装金属板
本発明の塗装金属板は、上記塗装金属板の製造方法によって得られる。すなわち、本発明の塗装金属板は、金属板と、その上に配置された艶消し層とを有する。
2-1.艶消し塗膜
艶消し塗膜は、金属板の表面に接して、または他の層を介して配置されている。艶消し塗膜は、塗装金属板の耐候性をより高める観点から、塗装金属板の最表面を構成する層であることが好ましい。
艶消し塗膜は、フッ素樹脂粒子と、アクリル樹脂と、着色顔料とを少なくとも含む。フッ素樹脂粒子は、艶消し塗膜形成の際の加熱(焼き付け)によって、一部が融着していてもよい。そのようなフッ素樹脂粒子の凝集融着物では、各フッ素樹脂粒子の表面の少なくとも一部がアクリル樹脂で被覆されているか、または、凝集しているフッ素樹脂粒子同士の隙間にアクリル樹脂が浸入している。
フッ素樹脂粒子の凝集融着物であるかどうかは、例えば艶消し塗膜の断面を透過型電子顕微鏡などで染色法により観察することにより確認することができる。例えば、凝集融着物の断面の一部に、アクリル樹脂に由来する成分を検出することで、例えばアクリル樹脂で被覆されたフッ素樹脂粒子の凝集物が融着したものであると判断することができる。
フッ素樹脂粒子の凝集融着物は、前述の通り、艶消し塗膜の表面の凸凹を形成している。すなわち、艶消し塗膜は、アクリル樹脂を主成分とする海相(連続相)と、フッ素樹脂粒子(もしくはその凝集融着物)を主成分とする島相(分散相)との海島構造を有するとともに、フッ素樹脂粒子(もしくはその凝集融着物)が凹、アクリル樹脂が凸となるような凸凹形状を有する。それにより、艶消し塗膜は、光沢調整剤粒子を実質的に含有しなくても(例えば光沢調整剤粒子の含有量が、艶消し塗膜に対して1質量%以下、好ましくは0質量%であっても)、表面に凹凸形状を形成することができる。そのため、良好な艶消し効果を発現しつつ、塗装金属板の曲げ加工などを行っても、艶消し塗膜の割れを抑制できる。
また、フッ素樹脂粒子の凝集融着物は、その周りのアクリル樹脂などと強固に接着されているため、艶消し塗膜の表面が擦れても脱落しにくく、それによる腐食なども生じにくい。さらに、光沢調整剤粒子を用いた場合、得られる艶消し塗膜の表面には、光沢調整剤粒子に起因する凸が形成されるため、艶消し塗膜の表面の触感がザラザラしやすい。これに対し、本発明の塗装金属板の製造方法で得られる艶消し塗膜の表面には、フッ素樹脂粒子の凝集融着物に起因する凹部が形成されやすいため、艶消し塗膜の表面がソフトな感触となる。
(光沢度)
塗装金属板の艶消し塗膜の表面の60度鏡面光沢度Gs(60°)は、特に制限されないが、艶消し効果により意匠性を高める観点では、40以下が好ましく、30以下であることがより好ましい。60度鏡面光沢度Gs(60°)は、ISO2813:1994(JIS Z 8741:1997)に準拠して測定することができる。
(厚み)
艶消し塗膜の厚みは、塗装金属板の用途に応じて適宜設定され、例えば10~50μmであることが好ましい。艶消し塗膜の厚みが50μm以下であると、艶消し塗膜を作製する際の塗料の塗布量を多くする必要がなくなり、塗料の膜を加熱し、固化させる際に、ワキ(泡状のフクレや穴)などの塗装欠陥を発生しにくくすることができる。
艶消し塗膜の厚みは、艶消し塗膜の複数個所(例えば、任意に選ばれる10箇所)における底面から表面までの距離の平均値で表すことができる。
なお、艶消し塗膜の厚みは、着色顔料の含有量、色調および紫外線遮蔽度、ならびに塗装金属板の成形加工時における加工度等を考慮して、適宜決めることができる。
例えば、艶消し塗膜中の着色顔料の色調明度(JISに定めるL値)が低い場合、および、顔料粒子の紫外線遮蔽度が高い場合などは、着色顔料による艶消し塗膜の発色性(その下地の色に対する色隠蔽性)およびその下地への紫外線遮蔽率が高くなる。そのため、これらの場合は、艶消し塗膜の厚みは、より小さくすることができる。また、加工度が低い場合など、艶消し塗膜に求められる延性が低くなるため、艶消し塗膜の厚みを小さくすることができる。
一方で、艶消し塗膜とその下地との長期密着性を維持する(界面破断を長期間抑制する)観点では、艶消し塗膜の紫外線透過率を低くすることが好ましく、そのためには、艶消し塗膜の厚みを大きくすることが好ましい。
このように、艶消し塗膜の厚みの下限値は、一概には言えないが、例えば、加工度が4T曲げ加工度相当であって、着色顔料(例えば酸化チタン粒子)のL値が80超であれば、艶消し塗膜の厚みは、20μm以上であることが好ましく、25μm以上がより好ましい。また、上記加工度で、かつ着色顔料(例えば鉄-クロム系焼成顔料粒子)のL値が70以下であれば、艶消し塗膜の厚みは、15μm以上であることが好ましく、18μm以上であることがより好ましい。
なお、他の層を配置する場合には、艶消し塗膜の厚みは、他の層の存在を考慮して決めることができる。例えば、塗装金属板が下塗り層と艶消し塗膜とを有する場合は、艶消し塗膜の厚みは、意匠性、耐食性および経時加工性を高める観点から、例えば10~35μmであることが好ましい。
2-2.その他の層
塗装金属板は、前述の通り、艶消し塗膜以外の他の層をさらに有していてもよい。他の層の例には、化成処理層、下塗り層等が含まれる。
化成処理層の例には、非クロメート系皮膜、およびクロメート系皮膜が含まれる。非クロメート系皮膜の付着量は、その種類に応じて適宜に決めることができる。例えば、Ti-Mo複合皮膜の付着量は、全TiおよびMo換算で10~500mg/mであることが好ましく、フルオロアシッド系皮膜の付着量は、フッ素換算または総金属元素換算で3~100mg/mであることが好ましく、リン酸塩皮膜の付着量は、リン元素換算で0.1~5g/mであることが好ましく、樹脂系皮膜の付着量は、樹脂換算で1~500mg/mであることが好ましく、樹脂およびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Si換算で0.1~50mg/mであることが好ましく、シリカ系皮膜の付着量は、Si換算で0.1~200mg/mであることが好ましく、シリカおよびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Si換算で0.1~200mg/mであることが好ましく、ジルコニウム系皮膜の付着量は、Zr換算で0.1~100mg/mであることが好ましく、ジルコニウムおよびシランカップリング剤系皮膜の付着量は、Zr換算で0.1~100mg/mであることが好ましい。
クロメート系皮膜の例には、塗布型クロメート処理皮膜、およびリン酸-クロム酸系処理クロメート防錆処理皮膜が含まれる。これらのクロメート系皮膜の付着量は、いずれも、クロム元素換算で20~80mg/mであることが好ましい。
下塗り層は、前述の通り、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物、または硬化性樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物の硬化物で構成される。下塗り層の厚みは、特に制限されないが、例えば1~10μmであることが好ましく、3~7μmであることがより好ましい。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
1.艶消し塗膜形成用組成物の調製
1-1.フッ素樹脂粒子の準備
(フッ素樹脂粒子1~5の準備)
フッ素樹脂(アルケマ社製、Kynar Flex LBG、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンの共重合体)を、ジェットミル(ホソカワミクロン社製、カウンタジェットミル100AFG)によって、表1に示す平均粒子径を有するように乾式粉砕した。なお、ジェットミルによる乾式粉砕時の温度は、50℃以下とし、フッ素樹脂粒子1~5を得た。
(フッ素樹脂粒子6の準備)
フッ素樹脂(アルケマ社製、Kynar Flex LBG、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンの共重合体)を、そのまま、フッ素樹脂粒子6とした。
(フッ素樹脂粒子7の準備)
フッ素樹脂(アルケマ社製、Kynar Flex LBG、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンの共重合体)を、アイメックス社製レディーミルRMB-04(ガラスビーズ1mmφ)にて水中で湿式粉砕した。その後、粉砕物を真空乾燥し、フッ素樹脂粒子7とした。
表1に記載のフッ素樹脂粒子の粒子径(10%粒子径(d10)、50%粒子径(d50)、および90%粒子径(d90))、当該フッ素樹脂粒子の粒子径の標準偏差、および当該フッ素樹脂粒子の見かけ密度は、以下の方法で測定した。なお、粒子径のうちd50の値を平均粒子径として取扱う。
・粒子径の測定方法、および標準偏差の特定
各フッ素樹脂粒子の粒子径は、分散媒としてのイオン交換水に、フッ素樹脂粒子を分散させて粒子分散液を得た。当該粒子分散液を、堀場製作所社製、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-950V2)にセットし、前処理として超音波を60分間照射し、分散処理として超音波を2分間照射した。次いで、当該粒子分散液の体積基準粒度分布を測定し、累積頻度%径としてd10、d50、d90を求めた。併せて、粒子径の標準偏差も算出した。
・見かけ密度の測定
JIS K5101-12-1に準拠して測定した。
Figure 0007422274000001
1-2.アクリル樹脂の準備
アクリル樹脂として、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸エチル(EA)およびアクリロニトリル(AN)を質量比50:42:8で重合し、アクリル樹脂とした。当該アクリル樹脂の紫外線吸収基含有比(アクリル樹脂に対する含有比)は、1.5質量%であり、重量平均分子量(Mw)は、22000であり、ガラス転移温度は38℃であった。
アクリル樹脂1の重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度(Tg)は、それぞれ以下の方法で測定した。
・重量平均分子量
アクリル樹脂の重量平均分子量は、JIS K0124:2011に準じ、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した。
・ガラス転移温度
アクリル樹脂のガラス転移温度を、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、ISO3146(JIS K7121:2012)に準拠して測定した。
1-3.着色顔料および光沢調整剤の準備
着色顔料および光沢調整剤粒子には、以下の市販品を用いた。
着色顔料:酸化チタン(テイカ株式会社製JR-805、平均粒子径0.29μm)
光沢調整剤1:シリカ粒子(富士シリシア化学社製サイリシア436)、平均粒子径4μm
光沢調整剤2:ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製EMB20)、平均粒子径10μm
光沢調整剤3:アクリル粒子(JXTGエネルギー社製ENEOSユニパウダーNMB-1020)、平均粒子径10μm
1-4.艶消し塗膜形成用組成物の調製
(艶消し塗膜形成用組成物1の調製)
(1)顔料分散液1の調製
固形分として、アクリル樹脂1と酸化チタン(着色顔料)とを、アクリル樹脂:酸化チタン=7:15(質量比)となるように配合した。この固形分と溶剤成分(イソホロン)とを、固形分:溶剤成分=1:1(質量比)となるようにさらに配合して、アイメックス株式会社製レディーミルRMB-04で、周速6m/sで30分間混合(粉砕混合)した。次いで、得られた混合物を、500メッシュのフィルターでろ過して凝集粒子を当該混合物から除去して、顔料分散液1を得た。ビーズ(メディア)としては、ジルコニア0.5mmφを用いた。
(2)艶消し塗膜形成用組成物1の調整
得られた顔料分散液1に、フッ素樹脂粒子と同質量のイソホロンを加え、撹拌機(東京理化器械社製NZ-1100)を用いて撹拌翼先端速度(周速)1.5m/sで撹拌しながら、フッ素樹脂粒子1を、フッ素樹脂粒子:アクリル樹脂=4:1(質量比)となるように配合し、30分間撹拌混合して、艶消し塗膜形成用組成物1を得た。
(艶消し塗膜形成用組成物2~4、6~9、11~14、16~19、21~24、26~29、31~37の調製)
フッ素樹脂粒子の種類、光沢調整剤粒子の添加の有無、および撹拌混合条件(周速、時間)を表2または表3に示されるように変更した以外は艶消し塗膜形成用組成物1と同様にして艶消し塗膜形成用組成物を得た。
(艶消し塗膜形成用組成物5、10、15、20、25、30、および38の調製)
混合物を、アイメックス社製レディーミルRMB-04(ジルコニアビーズ0.5mmφ使用)を用いて、表2または表3に示される周速および時間、粉砕混合した以外は、艶消し塗膜形成用組成物1と同様に艶消し塗膜形成用組成物を得た。
(艶消し塗膜形成用組成物39の調製)
艶消し塗膜形成用組成物として、市販の日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製ディックフローC白色(フッ素樹脂:アクリル樹脂=70:30質量比)を用いた。
2-5.評価
得られた艶消し塗膜形成用組成物について、以下の方法でTI値および分散度を測定した。
(TI値)
各艶消し塗膜形成用組成物について、B型粘度計にて25℃、60rpmで測定される粘度V60と、B型粘度計にて25℃、6rpmで測定される粘度Vとを測定した。そして、これらの比(V/V60)を算出し、これをTI値とした。
(分散度)
ISO 1524に準拠して分散度を測定した。
(塗膜の光沢度)
塗膜の光沢度は、下記塗装原板上に、艶消し塗膜形成用組成物を塗布して艶消し塗膜を形成し、その光沢度を測定した。
・塗装原板の作製
(1)金属板の準備
板厚0.4mm、両面めっき付着量180g/mの溶融Zn-6%Al-3Mg合金めっき鋼板をアルカリ脱脂した。
(2)化成処理層の形成
次いで、アルカリ脱脂しためっき鋼板の表面に、下記組成の非クロメート防錆処理液を塗布し、塗布後のめっき鋼板を水洗することなく100℃で乾燥させた。それにより、Ti換算で10mg/mの付着量の非クロメート防錆処理(化成処理層の形成)を行った。
ヘキサフルオロチタン酸 55g/L
ヘキサフルオロジルコニウム酸 10g/L
アミノメチル置換ポリビニルフェノール 72g/L
水 残り
(3)下塗り層の形成
次いで、めっき鋼板の上記の非クロメート防錆処理後の表面に、下記組成を有するエポキシ樹脂系下塗り塗料を塗布した後、めっき鋼板の到達温度が200℃となるように加熱し、乾燥膜厚が5μmの下塗り塗膜を形成し、クロメートフリーのめっき鋼板を得た。これを塗装原板とした。なお、クリアー塗料は、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製「NSC680」(エポキシ樹脂と、イソシアネート系硬化剤とを含む塗料)である。
リン酸塩混合物 23質量%(対固形分)
硫酸バリウム 15質量%(対固形分)
シリカ 1質量%(対固形分)
クリアー塗料 残り
・艶消し塗膜の形成
下塗り層上に、上述の艶消し塗膜形成用組成物1を塗布した。その後、めっき鋼板の到達温度が240℃となるように加熱した。次いで、これを20℃の水中に浸漬して水冷した後、水中から取り出してガーゼで水分をふき取り、23℃の室内で乾燥させた。このとき、200℃~70℃の冷却速度は、250℃/秒であった。このようにして、塗装原板の下塗り層上に、厚み20μmの艶消し塗膜を有する塗装金属板1を作製した。
・光沢度の測定
得られた塗装金属板の60度鏡面光沢度Gs(60°)を、ISO2813(JIS Z8741:1997)に準拠して測定した。
(ブツの確認)
得られた塗装金属板の表面200mm×250mmを拡大鏡(10倍)で観察し、0.5μm以上の凝集物(ブツ)が生じているかを確認し、その個数を特定した。
(加工性)
塗膜の加工性は、上述の光沢度の測定と同様に、塗装原板上に、艶消し塗膜形成用組成物を塗布して艶消し塗膜を形成し、その加工性を評価した。
(1)初期(塗装直後)
得られた塗装金属板を塗膜形成後2時間以内に、塗膜を外側にして試験板と同一厚さの板をはさみ、23℃で180°に折り曲げた。このとき、塗膜にクラックが生じない最少の板はさみ枚数Tを記録した。はさみ枚数Tが小さいほど、加工性は良好であることを意味する。
(2)保管後
得られた塗装金属板を60℃の環境下に7日間静置した後、前述と同様にして、180°曲げ試験を行い、塗膜にクラックが生じない最少の板はさみ枚数Tを記録した。
Figure 0007422274000002
Figure 0007422274000003
平均粒子径が4.0μm以上であるフッ素樹脂粒子と、アクリル樹脂と、着色顔料と、を含み、かつ分散度が20μm以上100μm以下である艶消し塗膜形成用組成物では、得られた塗膜の光沢度が十分に低かった(No.6~9、11~14、16~19、21~24)。また、フッ素樹脂粒子の平均粒子径が4.0μm以上、かつ見かけ密度が0.30以下となるようにフッ素樹脂を乾式粉砕し、これをアクリル樹脂や着色顔料等と撹拌混合をした場合、上述の艶消し塗膜形成用組成物が得られた。
これに対し、平均粒子径が4.0μm未満のフッ素樹脂粒子を調製した場合には、光沢度が高まった(No.1~5)。つまり、フッ素樹脂粒子によって、表面に十分な凹凸を形成できず、艶消し塗膜とすることができなかったと考えられる。一方、平均粒子径が4.0μm以上、かつ見かけ密度が0.30以下となるようにフッ素樹脂粒子を調製したとしても、アクリル樹脂や着色顔料等と粉砕混合した場合には、分散度が20μm未満となり、この場合も光沢度が高まった(No.5、10、15、20、25、30、38)。フッ素樹脂粒子をアクリル樹脂等と混合する際に、フッ素樹脂粒子が解砕されてしまい、塗膜中のフッ素樹脂粒子の平均粒子径が小さくなったと考えられる。
また、未粉砕のフッ素樹脂粒子を用いた場合、光沢度は低下したものの、表面にフッ素樹脂粒子の塊(ブツ)が多数観察された(No.26~29、31~33)。また、湿式粉砕のフッ素樹脂粒子を用いた場合には、多数の塊(ブツ)が確認された(No.34~37)。粉砕後のフッ素樹脂粒子中に、大粒径のものが含まれていたことに加えて、見かけ密度が0.3g/ml以上であるため、撹拌混合工程で凝集体を形成したためと考えられる。
また、所定の大きさのフッ素樹脂粒子を用いて艶消し塗膜形成用組成物を作製した場合(たとえば、No.6~9、11~14、16~19、21~24)には、塗装金属板の曲げ加工性が、時間が経過しても非常に良好であった。これに対し、光沢調整剤を含む組成物を用いて作製した塗装金属板では、時間とともに加工性が低下した(No.31~33、および39)。当該結果から、光沢調整剤を起点として、塗膜割れが発生し、加工性が低下することがわかる。
本発明の艶消し塗膜形成用組成物は、艶消し剤を含まないにも関わらず、艶消し塗膜が得られる。したがって、得られる艶消し塗膜が経時で割れ難い。よって、フッ素樹脂を含む艶消し塗膜を有する塗装金属板のさらなる普及が、特に外装建材の材料としてのさらなる普及が期待される。

Claims (9)

  1. 平均粒子径が4.0μm以上であるフッ素樹脂粒子と、
    連続相形成用のアクリル樹脂と、
    着色顔料と、
    を含み、ISO1524に準拠して測定される分散度が、20μm以上100μm以下であり、かつ
    前記フッ素樹脂粒子の量が、前記フッ素樹脂粒子および前記アクリル樹脂の合計に対して60質量%以上95質量%以下である、
    艶消し塗膜形成用組成物。
  2. 前記フッ素樹脂粒子が、フッ化ビニリデン由来の構造を有する樹脂を含む、
    請求項1に記載の艶消し塗膜形成用組成物。
  3. 前記着色顔料の平均粒子径が3.0μm以下である、
    請求項1または2に記載の艶消し塗膜形成用組成物。
  4. B型粘度計にて25℃、60rpmで測定される粘度に対する、B型粘度計にて25℃、6rpmで測定される粘度の比が、1.2以上4以下である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の艶消し塗膜形成用組成物。
  5. フッ素樹脂を乾式粉砕し、平均粒子径が4.0μm以上であり、かつJIS K5101-12-1に準拠して測定される見かけ密度が0.30g/ml以下であるフッ素樹脂粒子を得る工程と、
    アクリル樹脂、着色顔料、および溶媒を含む顔料分散液を得る工程と、
    前記フッ素樹脂粒子および前記顔料分散液を、撹拌混合する工程と、
    を含む、
    艶消し塗膜形成用組成物の製造方法。
  6. 前記撹拌混合は、メディアによる粉砕を伴わない、
    請求項5に記載の艶消し塗膜形成用組成物の製造方法。
  7. 前記乾式粉砕時の雰囲気温度が、50℃以下である、
    請求項5または6に記載の艶消し塗膜形成用組成物の製造方法。
  8. 前記乾式粉砕を、ジェットミルで行う、
    請求項5~7のいずれか一項に記載の艶消し塗膜形成用組成物の製造方法。
  9. 金属板と、前記金属板上に形成された艶消し塗膜と、を有する塗装金属板の製造方法であって、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の艶消し塗膜形成用組成物を金属板上に塗布する工程を含む、
    塗装金属板の製造方法。
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