JP7192609B2 - 塗装金属板 - Google Patents
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このように、経時的に結晶化した塗膜は、塗膜降伏点は高く、塗膜伸びは低い。そのため、顔料粒子を含まない塗膜では、塗装金属板の成形加工時の変形による塗膜の割れを生じないが;塗膜が顔料粒子を含む場合は、塗装金属板の成形加工時の変形により、樹脂と顔料粒子との界面に空隙を生じやすく、それが起点となって割れを生じやすい。つまり、長期間保管後の塗膜の割れを抑制するためには、長期保管中の経時的な結晶化を少なくすること;それにより、塗膜降伏点の増大や塗膜伸びの低下を少なくすることが望まれる。
本発明の塗装金属板は、金属板と、その上に配置された樹脂層とを有する。
金属板は、公知の金属板から選ぶことができる。金属板の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn-Al合金めっき鋼板、Zn-Al-Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板および銅板が含まれる。
樹脂層は、金属板の表面に接して、または他の層を介して配置されている。
基材樹脂は、含フッ素共重合体と、アクリル樹脂とを含む。
含フッ素共重合体は、樹脂層を構成する基材樹脂の主成分であり、その含有量は、基材樹脂に対して50質量%以上であることが好ましい。
アクリル樹脂は、含フッ素共重合体の結晶化を抑制する観点、顔料粒子の分散性を高める観点、および、基材樹脂の密着性を高める観点などから、樹脂層に含有される。
顔料粒子は、基材樹脂中に分散されている。
樹脂層の厚みは、塗装金属板の用途に応じて適宜設定され、例えば5~50μmであることが好ましい。樹脂層の厚みが50μm以下であると、樹脂層を作製する際の塗料の塗布量を多くする必要がなくなり、塗料の膜を加熱し、固化させる際に、ワキ(泡状のフクレや穴)などの塗装欠陥を発生しにくくすることができる。樹脂層の厚みは、10~35μmであることがより好ましい。
樹脂層は、含フッ素共重合体を主成分とする海相(連続相)と、アクリル樹脂を主成分とする島相(分散相)とを有する海島構造を有しうる。本発明では、含フッ素共重合体とアクリル樹脂とが良好に相溶するため、島相(分散相)が微分散している。それにより、含フッ素共重合体を主成分とする海相(連続相)の経時的な結晶化を高度に抑制することができると考えられる。
塗装金属板は、必要に応じて上記樹脂層以外の他の層をさらに有していてもよい。当該他の層の例には、化成処理層、下塗り層、および中塗り層が含まれる。例えば、塗装金属板は、金属板と、化成処理層と、下塗り層と、上記樹脂層とをこの順に有することが好ましく;金属板と、化成処理層と、下塗り層と、中塗り層と、上記樹脂層とをこの順に有することがより好ましい。つまり、樹脂層は、上塗り層として機能することが好ましい。
化成処理層は、塗装金属板の密着性や耐食性を向上させる目的で、金属板上に直接、すなわち金属板と樹脂層との間に配置されうる。化成処理層は、金属板の表面に接して形成された層であり、塗装前処理によって金属板の表面に付着した組成物で構成される。化成処理層の例には、非クロメート系皮膜、およびクロメート系皮膜が含まれる。これらは、いずれも防錆処理による皮膜である。
下塗り層は、塗装金属板における上記樹脂層の密着性や耐食性を高める観点から、金属板と樹脂層との間に配置されうる。下塗り層は、金属板の表面あるいは化成処理層の表面に形成される。
中塗り層は、塗装金属板における層間の密着性や耐食性を高める観点から、下塗り層と樹脂層との間に配置されうる。
塗装金属板は、公知の塗膜の作製方法で製造することができる。例えば、塗装金属板は、1)金属板上に、樹脂層用塗料(樹脂塗料)の塗膜を形成する工程と、2)当該樹脂塗料の塗膜を固化させる(焼き付ける)工程と、3)固化させた(焼き付けた)塗膜を急冷して結晶化させる工程と、を経て製造することができる。
樹脂塗料は、上記各成分を、溶剤に分散または溶解させたものでありうる。溶剤の例には、トルエン、キシレンなどの炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、セロソルブなどのエーテル、および、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトンが含まれる。
得られた樹脂塗料の塗膜を固化させる(焼き付ける)。
固化させた(焼き付けした)塗膜を急冷して結晶化させて、樹脂層を得る。
塗装金属板の製造方法は、必要に応じて上記以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。当該他の工程の例には、化成処理皮膜を形成する化成処理工程、下塗り層を形成する工程、および中塗り層を形成する工程の一以上が含まれる。
(金属板の準備)
板厚0.4mm、両面めっき付着量180g/m2の溶融Zn-6%Al-3Mg合金めっき鋼板をアルカリ脱脂した。
次いで、アルカリ脱脂しためっき鋼板の表面に、下記組成の非クロメート防錆処理液を塗布し、塗布後のめっき鋼板を水洗することなく100℃で乾燥させた。それにより、Ti換算で10mg/m2の付着量の非クロメート防錆処理(化成処理層の形成)を行った。
ヘキサフルオロチタン酸 55g/L
ヘキサフルオロジルコニウム酸 10g/L
アミノメチル置換ポリビニルフェノール 72g/L
水 残り
次いで、めっき鋼板の上記の非クロメート防錆処理後の表面に、下記組成を有するエポキシ樹脂系下塗り塗料を塗布した後、めっき鋼板の到達温度が200℃となるように加熱し、乾燥膜厚が5μmの下塗り塗膜を有する、クロメートフリーのめっき鋼板を得た。これを塗装原板とした。なお、クリアー塗料は、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製「NSC680」(アミン変性エポキシ樹脂と、イソシアネート系硬化剤とを含む塗料)である。
リン酸塩混合物 23質量%(対固形分)
硫酸バリウム 15質量%(対固形分)
シリカ 1質量%(対固形分)
クリアー塗料 残り
2-1.材料の準備
(フッ素樹脂)
フッ素樹脂1:ポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製「Kynar500」)
フッ素樹脂2:フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体(VDF/HFP=94/6質量比)(アルケマ社製「Kynar Flex LBG」、重量平均分子量450000)
フッ素樹脂3:フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体(VDF/HFP=85/15質量比)(アルケマ社製「Kynar Flex 2751」、重量平均分子量400000)
アクリル樹脂として、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、およびアクリル酸エチル(EA)を異なる配合比で含む重合物を常法で合成し、アクリル樹脂1~5とした。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、JIS K 0124-2011に準じ、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した。
アクリル樹脂のガラス転移温度を、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012に準拠して測定した。
顔料粒子:酸化チタン(テイカ株式会社製「JR-805」、平均粒径:0.29μm)
(フッ素樹脂塗料1~16の調製)
フッ素樹脂とアクリル樹脂とを表2に示す質量比で配合し、さらに、塗料溶剤成分(イソホロン)および固形分の全質量に対して30質量%となる量の上記顔料粒子を配合して混合した。その後、得られた混合物を500メッシュのフィルターでろ過して凝集粒子を当該混合物から除去して、フッ素樹脂塗料1~16を調製した。
(塗装金属板1~16の作製)
上記作製した塗装原板の下塗り層上に、表3に示されるフッ素樹脂塗料を塗布した後、めっき鋼板の到達温度が250℃となるように加熱した。次いで、これを20℃の水中に浸漬して水冷した後、水中から取り出してガーゼで水分をふき取り、23℃の室内で乾燥させた。このとき、200℃~70℃の冷却速度は、250℃/秒であった。このようにして、塗装原板の下塗り層上に、厚み20μmのフッ素樹脂塗料の塗膜(樹脂層)を有する塗装金属板1~16を作製した。
得られた塗装金属板1~16の塗膜降伏点、塗膜伸びおよび加工性を、以下の方法で評価した。
(1)初期(塗装直後)
得られた塗装金属板から樹脂層を剥離した後、幅5mm、長さ40mmの大きさにカットして、サンプルとした。このサンプルについて、標線間距離25mmとして、ISO 527:JIS K 7161に準拠して引張試験を行い、塗膜降伏点(N/mm2)と塗膜伸び(%)を測定した。引張速度は10mm/分とした。測定温度は23℃であった。
得られた塗装金属板を60℃の環境下に7日間静置した後、前述と同様にして、塗膜降伏点と塗膜伸びを測定した。
(1)初期(塗装直後)
得られた塗装金属板を製造後2時間以内に、塗膜を外側にして試験板と同一厚さの板をはさみ、23℃で180°に折り曲げた。このとき、塗膜にクラックが生じない最少の板はさみ枚数Tを記録した。はさみ枚数Tが小さいほど、加工性は良好であることを意味する。
得られた塗装金属板を60℃の環境下に7日間静置した後、前述と同様にして、180°曲げ試験を行い、塗膜にクラックが生じない最少の板はさみ枚数Tを記録した。
得られた塗装金属板を所定の大きさにカットし、試験片とした。この試験片について、JIS B 7753に準じてサンシャインウェザーメーター試験を4000時間実施した。試験終了後、得られた試験片の60度鏡面光沢度を測定し、初期光沢度に対する光沢保持率を求めた。光沢保持率が高いほど、耐候性が高いことを意味する。
Claims (7)
- 金属板と、その上に配置された樹脂層とを有する塗装金属板であって、
前記樹脂層は、基材樹脂と、顔料粒子とを含み、
前記基材樹脂は、フッ化ビニリデンに由来する構造単位とヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位とを含む含フッ素共重合体と、アクリル樹脂とを含み、かつ
前記樹脂層において、前記含フッ素共重合体の含有量は、前記基材樹脂に対して50質量%以上であり、
前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40℃以下である、
塗装金属板。 - 前記アクリル樹脂の含有量は、前記含フッ素共重合体と前記アクリル樹脂の合計に対して5~40質量%である、
請求項1に記載の塗装金属板。 - 前記フッ化ビニリデンに由来する構造単位と前記ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位の合計に対する、前記ヘキサフルオロプロピレンに由来する構造単位の含有量は1~15質量%である、
請求項1または2に記載の塗装金属板。 - 前記アクリル樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、アクリル酸エチルに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸と炭素数1~6のアルコールとのエステル化合物に由来する構造単位とを含む共重合体である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の塗装金属板。 - 前記アクリル樹脂の重量平均分子量は、50000~200000である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の塗装金属板。 - 前記顔料粒子の含有量は、前記樹脂層に対して10~50質量%である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の塗装金属板。 - 前記金属板と、化成処理層と、下塗り層と、前記樹脂層とがこの順に積層されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の塗装金属板。
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