JP4319957B2 - 耐食性に優れるプレコート金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、切断加工性と耐食性に優れた表面処理金属板に関するものであり、家電用、建材用、土木用、機械用、自動車用、家具用、容器用等において、切断加工時の端面塗膜密着性と防錆効果を発揮することを特徴とする。
家電用、建材用、自動車用等に、従来の加工後塗装されていたポスト塗装製品に代わって、着色した塗膜を被覆したプレコート金属板が使用されるようになってきている。この金属板は、金属用前処理を施した金属板に塗料を被覆したもので、塗料を塗装した後に切断し、プレス成形されて使用されることが一般的である。そのため、塗膜が被覆されていない金属が露出する切断端面部の耐食性とプレス加工時の塗膜剥離が、プレコート金属板の問題点となっていたが、金属用前処理としてクロメート処理を施し、且つ塗膜中に6価クロム系の防錆顔料を含有することでこれらの問題点が解決され、現在では汎用的に使用されている。
しかしながら、クロメート処理及び6価クロム系防錆顔料を含む塗料皮膜から溶出する可能性のある6価のクロムの環境問題から、最近では6価クロムを含まないノンクロメート化成処理、ノンクロメート塗料皮膜に対する要望が高まっている。特許文献1では、クロメート処理の代わりに、タンニン及びタンニン酸、シランカップリング剤、及び微粒シリカを同時に含む化成処理を用いることで、加工性部密着性と耐食性に優れるプレコート金属板を提供する技術が開示されている。一方、特許文献2では、6価クロム系防錆顔料の代わりにリン酸系防錆顔料とイオン交換シリカ系防錆顔料とを併用したポリエステル系並びにエポキシ系の塗料により、切断端面部の耐食性に優れたプレコート鋼板を提供する技術が開示されている。しかし、これらの技術は、従来の6価クロムを含むプレコート金属板と比べると、長期耐食性、特に塩水噴霧試験のようなウェット率の高い腐食環境における長期耐食性が劣る点が問題となっていた。例えば、特許文献1の技術と特許文献2の技術を用いて、ウェット率の高い腐食環境において耐食性を向上させようとした場合、これら特許文献に記載された塗膜中の防錆顔料添加量を大きく増加させる必要がある。しかし、塗膜中の防錆顔料添加量を大いに増大させると、金属板との塗膜密着性が損なわれるため、プレコート金属板を成形加工したときの加工部で塗膜が剥離し易くなったり、耐湿試験のような高湿度環境下にプレコート金属板が長期間曝されることで、塗膜表面からブリスターが発生したり、塗膜が剥離し易くなったりする。
特開2001-89868号公報 特開平9-12931号公報
本発明は、従来技術における上記問題点を解決し、長期の耐食性に優れ、且つ、優れた塗膜密着性を有するプレコート鋼板を提供することをその課題としている。更には、環境負荷物質である6価クロムを含まないプレコート金属板を提供することもその課題としている。
発明者らは、鋭意検討した結果、塩水噴霧試験に代表されるようなウェット率の高い腐食環境においては、Mgが腐食抑制に大きく寄与することを見いだした。そして、更に検討をしたところ、Si、P、Mgを必須成分として含む防錆塗膜を金属板に被覆することで、塗膜密着性を大きく落とさずに、ウェット率の高い腐食環境下での長期耐食性が大きく向上することを知見した。しかし、Si、P、Mgを必須成分として含む防錆塗膜を被覆したプレコート金属板であっても、塗膜樹脂の種類や物性、もしくは、金属板の種類や金属板に施しためっきの種類によっては塗膜密着性が担保できないものもあった。そこで、発明者らは、図1に示す試験装置を用いて、前記防錆塗膜を有する面に半円柱凸状ビード金型、他方の面に平金型を押し付け、これら金型に押し付け線圧Pを作用させた状態でサンプルをL方向に引き抜いたときに、塗膜が剥離しない限界押し付け線圧Plim30kg/mm以上となるように、防錆塗膜の樹脂としてエポキシ含有ポリエステル樹脂を選定することで、耐食性に優れ、且つ、塗膜密着性に優れたプレコート金属板を得ることを見出した。図1の試験装置で求めた限界押し付け線圧Plim30kg/mm以上となるような塗膜は密着力に優れるため、成形加工時の加工部塗膜密着性に優れるだけでなく、高湿度環境下での平面ブリスターの抑制及び塗膜密着性低下の抑制に効果を発揮することを見出した。
また、金属板表面の化成処理に特定のものを使用し、その上にエポキシ含有ポリエステル樹脂であるバインダー樹脂とSi、P、Mgを必須成分として含む防錆塗膜を被覆すると、限界押し付け線圧Plimが著しく向上する上に、ウェット率の高い腐食環境での耐食性が向上することも見出した。
特に、本発明で規定した化成処理は、従来、塗膜密着性に劣っていた溶融亜鉛めっき鋼板の塗膜密着性向上に大いに効果を発揮することを知見した。
ここで、プレコート金属板の金属板が鋼板の場合、鋼板上に亜鉛系のめっきを施し、この亜鉛付着量が高いものほど耐食性が向上することが一般に知られている。そして、亜鉛付着量の高い鋼板で汎用的なものとして、溶融亜鉛めっき鋼板が一般的に知られているが、溶融亜鉛めっき鋼板は、高温の溶融亜鉛中に鋼板を浸漬させて製造するため、めっき表面が酸化し易い。そのため、汎用的に製造されている溶融亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき表面は酸化膜で覆われているため、6価クロムを含むクロメート処理で処理しない限り、塗膜密着性を確保することが困難であると考えられており、6価クロムを含まないプレコート金属板では、塗膜密着性を確保することが困難であった。なお、従来より6価クロムを含まない化成処理として、リン酸亜鉛処理が知られているが、リン酸亜鉛処理を用いたプレコート金属板は、加工部で化成処理皮膜層であるリン酸亜鉛皮膜が破壊され易く、加工部の塗膜密着性に劣っているため、これも適用することは困難である。しかし、本発明によって、クロメート処理を用いない特定の化成処理を施した溶融亜鉛めっき鋼板をプレコート金属板の原板に用いても、塗膜密着性が損なわれないため、6価クロムを含まないプレコート金属板の耐食性が大きく向上することができた。
本発明は、かかる知見を基に完成させたものであって、本発明がその要旨とするところは、以下の通りである。
金属板の両面もしくは片面に化成処理膜(A)と防錆塗膜(B)と上塗塗膜(C)とを有するプレコート金属板において、少なくとも片面の該化成処理膜(A)が、シリカ、シランカップリング剤、タンニン、タンニン酸、ジルコニウム化合物又はチタニウム化合物から選ばれる3種以上と樹脂を含有する皮膜であり、少なくとも片面の該防錆塗膜(B)がエポキシ含有ポリエステル樹脂であるバインダー樹脂と、Si、P、Mgを塗膜成分として含有し、かつ、前記Siがカルシウムイオン交換シリカであり、Pがリン酸亜鉛もしくはリン酸2水素マグネシウムのいずれか一方であり、Mgがリン酸2水素マグネシウムもしくは酸化マグネシウムのいずれか一方であり、かつ、Crを含有しない塗膜であって、全防錆顔料の添加量が樹脂固形分100質量部に対して110質量部以上130質量部未満であり、かつ、該プレコート金属板の少なくとも片面の前記防錆塗膜を有する塗膜面に半径4mmの半円柱凸状ビード金型を、他方の面に平金型を配置し、これら金型をプレコート金属板に押し付けた状態で、前記半円柱の軸に対して直角方向に前記プレコート金属板を引き抜いた時に、前記防錆塗膜を有する塗膜面が剥離しない押し付け線圧(半円柱凸状ビード先端の圧力)が30kg/mm以上であることを特徴とする耐食性に優れるプレコート金属板。
本発明により、長期の耐食性に優れ、且つ、優れた塗膜密着性を有するプレコート鋼板を提供できる。さらに、環境負荷物質である6価クロムを含まなくても、ウェット率の高い腐食環境下での優れた耐食性を有し、且つ、様々な加工を施しても塗膜密着性に優れ、高湿度環境下において塗膜密着性が損なわないプレコート金属板を提供することも可能となった。従って、本発明は産業上の極めて価値の高い発明であると言える。
本発明は、金属板の両面もしくは片面に防錆塗膜を有するプレコート金属板において、少なくとも片面の該防錆塗膜が、エポキシ含有ポリエステル樹脂であるバインダー樹脂とSi、P、Mgを塗膜成分として含有し、かつ、Crを含有しない塗膜であって、且つ、該プレコート金属板の少なくとも片面の前記防錆塗膜を有する塗膜面に半径4mmの半円柱凸状ビード金型(図1に示すように、円柱を軸方向に半分に分割した半円柱の分割面を金型表面に貼付した形状の凸状ビードを有する金型)、他方の面に平金型を配置し、これら金型をプレコート金属板に押し付けた状態で、前記半円柱の軸(長さ方向)に対して直角の方向(径方向)に前記プレコート金属板を引き抜いたときに、前記防錆塗膜を有する塗膜面が剥離しない押し付け線圧(半円柱凸状ビード先端の圧力、以下、限界押し付け線圧とも言う)Plim30kg/mm以上であることを特徴とした耐食性に優れるプレコート金属板によって達せられる。
本発明の金属板に被覆する防錆塗膜は、樹脂をバインダーと防錆顔料もしくは防錆剤から構成され、防錆顔料もしくは防錆剤の成分としてSi、P、Mgが必須成分として含まれることが必要である。Si、P、Mgを含む防錆顔料もしくは防錆剤は、Si成分を含むものとしては、カルシウムイオン交換シリカを用い。市販のカルシウムイオン交換シリカとしては、GRACE社製の「SHIELDEXTM」等が挙げられる。P成分を含むものとしては、リン酸亜鉛、リン酸2水素マグネシウムのいずれかをを用いる。Mg成分を含むものとしては、酸化マグネシウム、リン酸2水素マグネシウムのいずれかを使用する。なお、これら全ての防錆剤及び防錆顔料の総量は、樹脂固形分100質量部に対して110質量部以上130質量部である。樹脂固形分100質量部に対して110質量部未満であると、耐食性が劣る恐れがあり、130質量部超では塗膜密着性に劣る恐れがある。
防錆塗膜に含まれるSi、P、Mgのそれぞれの割合は、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定することができる。ただし、Si、P、Mgの各成分が、乾燥塗膜中に一般に公知の物理分析、例えば、高周波放電式グロー放電発光分光分析、XPS、赤外分光光度計等にて検出できる程度の量が添加されている必要がある。
本発明のプレコート金属板の防錆塗料塗膜にはクロム系の防錆剤を含まない。クロムは環境負荷物質であるため、これを用いた防錆剤は、含まない。
本発明に用いるプレコート金属板は、図1に示す試験装置を用いて、前記防錆塗膜を有する塗膜面に半径4mmの半円柱凸ビード金型、他方の面に平金型を押し付け、これら金型に押し付け線圧Pを作用させた状態でサンプルを半円柱の軸(長さ方向)に対して直角の方向に引き抜いたときに塗膜が剥離しない限界押し付け線圧Plim30kg/mm以上と言う物理特性を満たしていなければならない。限界押し付け線圧Plim30kg/mm未満である場合、塗膜の加工部密着性や耐湿性が劣るため、不適である。限界押し付け線圧Plimが30kg/mm以上であると、塗膜の加工部密着性や耐湿性が更に向上し、より好適である。ここで、本発明で記載した物理特性は、図1に示した試験装置を用いた評価方法から求めることができる。なお、金型に押し付け線圧を作用させた状態でサンプルを引き抜く方向である「半円柱の軸(長さ方向)に対して直角の方向」とは、図1に示すL方向のことを意味する。更に、押し付け線圧Pとは、半円柱凸ビード金型をサンプルに押し付けたときの押し付け荷重Fを試験サンプル幅(サンプル幅が半円柱ビードの長さより短い場合)で割った値である。また、サンプル幅より半円柱凸ビードの長さが短い場合は、押し付け荷重Fを半円柱凸ビードの長さで割った値が押し付け線圧Pとなる。限界押し付け線圧Plimとは、塗膜に押し付け線圧が作用した状態でサンプルを引き抜いたときに塗膜が剥離しない限界の押し付け線圧のことで、塗膜表面にせん断方向の力が作用しても塗膜が剥離しない限界の線圧力を表している。そのため、限界押し付け線圧は、塗膜密着力の指標でもある。各金型の金属板サンプルと接する面の粗さはRaで0.1μm未満とする。金型表面の粗さが粗い場合は、結果にばらつきが出るため、不適である。また、金属板サンプルの引き抜き速度は150〜250mm/minが好適である。この範囲を超えると、試験結果にばらつきが出る恐れがある。本発明のプレコート板に被覆する防錆塗膜の樹脂バインダーは、一般に公知の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素系樹脂等の一般に公知の塗料用樹脂を用いることができ、いずれも市販のものを用いることができる。これら樹脂の種類は、特に規定するものではないが、防錆塗料の樹脂バインダーがポリエステル系の樹脂であると、加工性が優れるため、より好適である。特に、数平均分子量が3000〜30000、ガラス転移温度が0〜60℃のポリエステル樹脂は、加工性がより優れるため、より好適である。ここで、ポリエステル樹脂とは、樹脂中にエステル基を有する樹脂であり、オイルフリーポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、線状高分子ポリエステル樹脂、分岐型高分子ポリエステル樹脂と呼ばれているものである。これらポリエステル樹脂も市販のもの、例えば、東洋紡績社製の「バイロンTM」(東洋紡績社の登録商標)や、住化バイエルウレタン社製「デスモフェンTM」(住化バイエルウレタン社の登録商標)などを使用することができる。これらを複数混合しても良い。
これらポリエステル樹脂にエポキシ樹脂を添加すると、塗膜密着性が大きく向上するため、前記限界押し付け線圧Plim30kg/mm以上と言う物理特性を満たし易くなるため、より好適である。エポキシ樹脂は、一般に公知のエポキシ基を含む樹脂を使用することができ、市販のものを使用しても良い。市販のものとしては、大日本インキ化学工業社製のエポキシ樹脂「エピクロンTM」等を用いることができる。エポキシ樹脂の添加量は、特に規定するものではないが、多過ぎると塗膜の加工性が低下するため、必要に応じて適宜選定する必要がある。ポリエステル樹脂固形分100質量部に対してエポキシ樹脂固形分の添加量を0.1〜20質量部とすることが好適である。0.1質量部未満では密着性に効果のない恐れがあり、20質量部超では加工性が劣る恐れがある。
本発明のプレコート金属板に被覆する防錆塗膜の樹脂バインダーは、メラミン樹脂やイソシアネートを架橋剤として用いることができる。これら架橋剤は市販のもの、例えば、三井サイテック社製のメラミン樹脂「サイメルTM」、「マイコートTM」(何れも三井サイテック社の登録商標)、大日本インキ化学工業社製メラミン樹脂「ベッカミンTM」、「スーパーベッカミンTM」(何れも大日本インキ化学工業社の登録商標)、住化バイエル社製のイソシアネート「スミジュールTM」「デスモジュールTM」(何れも住化バイエルウレタン社の登録商標)、三井武田ケミカル社製のイソシアネート「タケネート」等を使用することができる。架橋剤の添加量は、特に規定するものではないが、メラミン樹脂の場合は、固形分比率でポリエステル樹脂等のメイン樹脂100質量部に対して5〜70質量部が好適である。5質量部未満であると、塗膜が未硬化となり、密着性が低下する恐れがあり、70質量部超では、塗膜が硬くなり過ぎて、加工性が低下する恐れがある。また、イソシアネートの場合の添加量は、[イソシアネートのNCO基当量]/[ポリエステル樹脂のOH基当量]=0.8〜1.2であると、より好ましい。[イソシアネートのNCO基当量]/[ポリエステル樹脂のOH基当量]の値が0.8未満もしくは1.2超では、皮膜生成時に皮膜が未硬化となる恐れがある。これら架橋剤を用いるときは、必要に応じて触媒を添加することができる。
また、本発明のプレコート金属板の防錆塗膜には、必要に応じて一般に公知の着色顔料、レベリング剤、顔料分散剤、ワックス、艶消し剤等を添加することができる。これら添加剤の種類や添加量は、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定することができる。
更に、本発明のプレコート金属板の防錆塗膜上に塗装する1層以上の上塗り塗膜は、一般に公知の上塗り塗料を塗装することができ、市販のものを使用することができる。市販のものの場合、プレコート用塗料であるとより好適である。また、前記防錆塗膜に用いた樹脂を使用すると、加工性等が向上し、より好適である。これら上塗り塗膜には、必要に応じて一般に公知の着色顔料、レベリング剤、顔料分散剤、ワックス、艶消し剤等を添加することができる。これら添加剤の種類や添加量は、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定することができる。
本発明のプレコート金属板の防錆塗膜やその上に塗装する上塗り塗膜の塗装方法は、一般に公知の塗布方法、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ローラーカーテンコート、ダイコート、エアースプレー、エアーレススプレー、電着塗装、粉体塗装、浸漬、バーコート、刷毛塗り等で行うことができる。ただし、ロールコートやカーテンフローコート、ローラーカーテンコートを完備した一般的コイルコーティングライン、シートコーティングラインと呼ばれる連続塗装ラインで塗装すると、塗装作業効率が良く大量生産が可能であるため、より好適である。上塗り塗料の乾燥焼付方法は、熱風オーブン、直火型オーブン、塩赤外線オーブン、誘導加熱型オーブン等の一般に公知の乾燥焼付方法を用いることができる。
本発明のプレコート金属板の防錆塗膜の膜厚は、特に規定するものではないが、乾燥膜厚にして2〜30μmがより好適である。2μm未満では耐食性が低下する恐れがあり、30μm超では塗装焼付時にワキと呼ばれる塗装欠陥が発生する恐れがある。より好ましくは5〜20μmである。また、1層以上の上塗り塗膜の膜厚も特に規定するものではないが、各層1〜30μmが好適である。1μm未満では上塗り塗膜としての機能(例えば、着色性等)が得られない恐れがあり、30μm超では塗装焼付時にワキと呼ばれる塗装欠陥が発生する恐れがある。
本発明のプレコート金属板に用いる金属板は、溶融亜鉛めっき鋼板であると、耐食性がより向上するためより好適である。溶融亜鉛めっき鋼板は、比較的純亜鉛に近いめっき層を有しているため、鋼板に対する犠牲防食効果が高く、且つ、亜鉛付着量の高いめっき鋼板を得ることが容易であるため、高い耐食性を得られることができるため、より好適である。更に、亜鉛系めっき鋼板の亜鉛付着量は片面当り40g/m2以上90g/m2未満が好適である。40g/m2未満であると耐食性が低下する恐れがあり、90g/m2以上では加工時にめっき割れを起こし、加工性が低下する恐れがある。また、本発明に用いる金属板は、予めアルカリ脱脂や湯洗して、表面の汚れ等を洗浄したものを用いるとより良い。
本発明のプレコート金属板は、化成処理膜を有する金属板であることが、耐食性や塗膜密着性を確保するために必要である。また、この化成処理膜は、環境負荷物質である6価クロムを含有しないクロムフリーの化成処理膜である。このクロムフリーの化成処理膜が、樹脂を必須成分として含み、且つ、シリカ、シランカップリング剤、タンニン、タンニン酸、ジルコニウム化合物又はチタニウム化合物のいずれか3種以上を含むと、塗膜密着性がより向上し、本発明で規定する塗膜が剥離しない限界押し付け線圧Plim30kg/mm以上となるため、成形加工時の加工部塗膜密着性が向上し、更には、高湿度環境下でのブリスター性や塗膜密着性に優れる。
クロムフリーの化成処理膜に樹脂を含まないと、成形加工時の塗膜密着性に劣る。また、シリカ、シランカップリング剤、タンニン、タンニン酸、ジルコニウム化合物又はチタニウム化合物のいずれか2種と樹脂のみでも塗膜密着性に劣る恐れがある。
樹脂は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の一般に公知のものを使用することができる。これらの樹脂は、水溶性もしくは水に分散したタイプであると、処理液の取り扱いが容易なため、より好適である。
本発明で用いる化成処理膜に含まれるシリカは、一般に公知のものを使用することができ、特に微細な粒径を持ったものは、化成処理処理液中に分散させた場合に安定を維持できるため、より好適である。市販のものを使用してもよい。市販のシリカとしては、例えば、「スノーテックスN」、「スノーテックスC」、「スノーテックスUP」、「スノーテックスPS」(何れも日産化学工業製)、「アデライトAT-20Q」(旭電化工業製)等のシリカゾル、又はアエロジル#300(日本アエロジル製)等の粉末シリカ等を用いることができる。
タンニン又はタンニン酸は、加水分解できるタンニンでも縮合タンニンでも良く、これらの一部が分解されたものでも良い。タンニン又はタンニン酸は、ハマメタタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランのタンニン、ジビジビのタンニン、アルガロビラのタンニン、バロニアのタンニン、カテキン等、特に限定するものではないが、「タンニン酸:AL」(富士化学工業製)を使用すると、塗膜の加工密着性は特に向上する。
シランカップリング剤は、例えばγ-(2 -アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2 -アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2 -アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2 -アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、オクタデシルジメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等を挙げることができるが、グリシジルエーテル基を有するγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを使用すると、塗膜の加工密着性は特に向上する。さらに、トリエトキシタイプのシランカップリング剤を使用すると、下地処理液の保存安定性を向上させることができる。これは、トリエトキシシランが水溶液中で比較的安定であり、重合速度が遅いためであると考えられる。
ジルコニウム化合物としては、炭酸ジルコニルアンモニウム、ジルコンフッ化水素酸、ジルコンフッ化アンモニウム、ジルコンフッ化カリウム、ジルコンフッ化ナトリウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムブトキシド1-ブタノール溶液、ジルコニウムn-プロポキシド等の一般に公知のものを使用することができる。
チタニウム化合物としては、チタンフッ化水素酸、チタンフッ化アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、チタンイソプロポキシド、チタン酸イソプロピル、チタンエトキシド、チタン2-エチル1-ヘキサノラート、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラn-ブチルチタンフッ化カリウム、チタンフッ化ナトリウム等の一般に公知のものを使用することができる。
これら化成処理中に含まれるシリカ、シランカップリング剤、タンニン、タンニン酸、ジルコニウム化合物又はチタニウム化合物のいずれか2種以上の含有物と樹脂との配合比率は、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定することができる。化成処理液が水溶性の場合、樹脂添加量が1.0〜100g/lで、シリカ、シランカップリング剤、タンニン、タンニン酸、ジルコニウム化合物又はチタニウム化合物のいずれか2種以上がそれぞれ0.01〜100g/l含まれる化成処理液を金属板に塗布して乾燥したものが優れる。樹脂添加量が1.0g/l未満では耐食性や塗膜密着性に効果を発揮しない恐れがあり、100g/l超では化成処理液としての安定性が悪くなりゲル化し易くなる。シリカ、シランカップリング剤、タンニン、タンニン酸、ジルコニウム化合物又はチタニウム化合物のいずれか2種以上の添加量も同様に0.01g/l未満では耐食性や塗膜密着性に効果を発揮しない恐れがあり、100g/l超では化成処理液としての安定性が悪くなりゲル化し易くなる。
化成処理皮膜の付着量も特に規定するものではないが、全固形分質量が10〜500mg/m2の範囲であると、より好適である。10mg/m2未満であると耐食性が劣ったり、塗膜密着性が低下する恐れがあり、500mg/m2超では塗膜密着性が低下する恐れがある。
化成処理液の塗装方法は、特に限定されず、一般に公知の塗装方法、例えば、ロールコート、リンガーロールコート、エアースプレー、エアーレススプレー、浸漬法等が採用できる。さらに、これらの塗布装置を完備した一般的コイルコーティングライン、シートコーティングラインと呼ばれる連続塗装ラインで塗布すると塗装作業効率が良く大量生産が可能であるため、より好適である。
1. 金属原板
実験の供試材には以下の金属原板を用いた。
溶融亜鉛めっき鋼板の低目付品(GI低):
板厚0.6mm、亜鉛付着量片面当り60g/m2(両面めっき)
溶融亜鉛めっき鋼板の高目付品(GI高):
板厚0.6mm、亜鉛付着量片面当り100g/m2(両面めっき)
電気亜鉛めっき鋼板(EG):
板厚0.6mm、亜鉛付着量換算で片面当り20g/m2(両面めっき)
2. 化成処理液
実験の供試材に用いる化成前処理液として以下のものを作成した。
化成処理液(A):
シランカップリング剤5g/L、水分散微粒シリカを1.0g/L、ジルコニウム化合物をジルコニウムイオンで0.5g/L、水系アクリル樹脂を25g/Lを含む水溶液を作製し、化成処理液とした。なお、シランカップリング剤にはγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、微粒シリカには日産化学社製「スノーテック-N」、ジルコニウム化合物には炭酸ジルコニルアンモニウム、水系アクリル樹脂にはポリアクリル酸を用いた。
化成処理液(B):
シランカップリング剤5g/L、チタニウム化合物をチタニウムイオンで0.5g/L、水系アクリル樹脂を25g/Lを含む水溶液を作製し、化成処理液とした。なお、シランカップリング剤にはγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、チタニウム化合物にはチタンフッ化水素酸、水系アクリル樹脂にはポリアクリル酸を用いた。
化成処理液(C):
水分散微粒シリカを1.0g/L、ジルコニウム化合物をジルコニウムイオンで0.5g/L、水系アクリル樹脂を25g/Lを含む水溶液を作製し、化成処理液とした。なお、シランカップリング剤にはγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、微粒シリカには日産化学社製「スノーテック-N」、ジルコニウム化合物には炭酸ジルコニルアンモニウム、水系アクリル樹脂にはポリアクリル酸を用いた。
化成処理液(D):
シランカップリング剤5g/L、水分散微粒シリカを1.0g/L、水系アクリル樹脂を25g/Lを含む水溶液を作製し、化成処理液とした。なお、シランカップリング剤にはγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、微粒シリカには日産化学社製「スノーテック-N」、水系アクリル樹脂にはポリアクリル酸を用いた。
化成処理液(E):
タンニン酸20g/L、シランカップリング剤40g/L、水分散微粒シリカ20g/L、ポリエステル樹脂20g/Lを含む水溶液を作製し、金属用前処理剤とした。なお、タンニン酸には富士化学工業社製「タンニン酸:AL」、シランカップリング剤にはγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、微粒シリカには日産化学社製「スノーテック-N」を用いた。
化成処理液(F):
タンニン酸20g/L、水分散微粒シリカ20g/L、ポリエステル樹脂20g/Lを含む水溶液を作製し、金属用前処理剤とした。なお、タンニン酸には富士化学工業社製「タンニン酸:AL」、微粒シリカには日産化学社製「スノーテック-N」を用いた。
化成処理液(G):
タンニン酸20g/L、ポリエステル樹脂20g/Lを含む水溶液を作製し、金属用前処理剤とした。なお、タンニン酸には富士化学工業社製「タンニン酸:AL」を用いた。
化成処理液(H):
微粒シリカ20g/L、ポリエステル樹脂20g/Lを含む水溶液を作製し、金属用前処理剤とした。なお、微粒シリカには日産化学社製「スノーテック-N」を用いた。
化成処理液(I):
シランカップリング剤40g/L、ポリエステル樹脂20g/Lを含む水溶液を作製し、金属用前処理剤とした。なお、シランカップリング剤にはγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた。
化成処理液(J):
ジルコニウム化合物をジルコニウムイオンで0.5g/L、水系アクリル樹脂を25g/Lを含む水溶液を作製し、化成処理液とした。なお、ジルコニウム化合物には炭酸ジルコニルアンモニウム、水系アクリル樹脂にはポリアクリル酸を用いた。
化成処理液(K):
市販の塗布クロメート処理である日本パーカライジング社製「ZM-1300AN」を用いた。
化成処理液(L):
市販のリン酸亜鉛処理である日本パーカライジング社製「パルボンド」を用いた。
3. 防錆塗料
東洋紡社製の非晶性ポリエステル樹脂である「バイロンTM 270」を有機溶剤(質量比でシクロヘキサノン:ソルベッソ150=1:1に混合したものを使用)に樹脂固形分濃度が30質量%となるように溶解した。次に硬化剤として三井サイテック社製のメラミン樹脂「サイメルTM 303」を添加した。メラミン樹脂の添加量は樹脂固形分の質量比でポリエステル樹脂固形分:メラミン樹脂固形分=80:20となるように添加した。また、このポリエステル樹脂とメラミン樹脂の混合溶液には、必要に応じて大日本インキ社製のエポキシ樹脂「エピクロンTM 1000」をポリエステル樹脂固形分100質量部に対して5質量部添加した。なお、「エピクロンTM 1000」は、事前に有機溶剤(質量比でシクロヘキサノン:ソルベッソ150=1:1に混合したものを使用)に混合した後に添加した。さらに、このポリエステル樹脂とメラミン樹脂の混合溶液に、三井サイテック社製の酸性触媒「キャタリストTM 600」を0.5質量%添加し、これらを攪拌することで、クリヤー塗料を得た。
これら次に、このクリヤー塗料中に、リン酸亜鉛系防錆顔料「EXPERTTM-NP500」(以下P-Znと称す)、必要に応じて試薬のリン酸2水素マグネシウム(以下P-Mgと称す)、試薬の酸化マグネシウム(以下Mgと称す)、グレイス社製のカルシウムイオン交換シリカ「シールデクスC303」(以下、Siと称す)を必要量添加し、攪拌することで防錆塗料を得た。また、比較として、市販のクロム酸ストロンチウム(以下、Crと称す)を添加した防錆塗料も作製した。なお、作製したプライマー塗料と作成添加した顔料種及び添加量の詳細を表1に示す。
Figure 0004319957
4. 上塗り塗料
市販のポリエステル系上塗り塗料である日本ペイント社製「FL100HQ」を使用した。色は白色系のものを使用した。
5. 裏面塗料
市販のポリエステル系上塗り塗料である日本ペイント社製「FL100HQ」を使用した。色はグレー色系のものを使用した。
6. プレコート金属板の作製
各種金属板をFC-4336(日本パ−カライジング製)の2質量%濃度、60℃温度の水溶液中に10秒間浸漬することで脱脂を行い、水洗後、乾燥した。そして、化成処理液(A)〜(K)をロールコーターにて金属板の両面に塗布し、熱風乾燥炉で乾燥して化成処理皮膜層を得た。化成処理液の付着量は、化成処理液(A)〜(J)の場合は、乾燥皮膜全体の付着量が100mg/m2となるように塗装した。化成処理液(K)の場合は、金属クロム換算で付着量が50mg/m2となるように塗装した。化成処理液(L)を用いた試験片は、化成処理液(L)中に脱脂した金属板を2分間浸漬し、熱風乾燥炉にて乾燥して化成処理皮膜層を得た。化成処理(L)の付着量は、リン酸亜鉛の付着量が2g/m2となるように被覆した。化成処理乾燥時の到達板温は60℃とした。次に、防錆塗料をロールコーターにて乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗装し、更に、他方の面には、裏面塗料をロールコーターにて塗装乾燥後の膜厚で5μmとなるように塗装し、熱風を吹き込んだ誘導加熱炉にて金属板の到達板温が210℃となる条件で乾燥硬化することで塗膜層を得た。乾燥焼付後に塗装された金属板へ水をスプレーにて拭きかけ、水冷した。更に、防錆塗膜上に上塗り塗料をロールコーターにて乾燥後の膜厚が15μmとなるように塗装し、熱風を吹き込んだ誘導加熱炉にて金属板の到達板温が230℃となる条件で乾燥焼付した。乾燥焼付後に塗装された金属板へ水をスプレーにて拭きかけ、水冷することで、供試材であるプレコート金属板を得た。
このようにして作製したプレコート金属板について、以下の評価試験を実施した。なお、いずれの試験についても、防錆塗膜有する面を評価面として試験を実施した。
A. 限界押し付け線圧の測定
図1に示す評価試験を実施した。前記防錆塗膜及び上塗り塗膜を有する面に半径4mmの半円柱凸ビード金型、他方の面に平金型を押し付け、これら金型に一定の押し付け線圧Pを加えた状態でサンプルをL方向に引き抜いた。なお、サンプルの幅が30mmのため、押し付け線圧Pにサンプルの幅を乗じた値を金型に加えることで必要な押し付け線圧を得ることができる。なお、本実験で各サンプルには10,20,30kg/mmの押し付け線圧をそれぞれ加えた。
そして、押し付け線圧P=10kg/mmでサンプルを引き抜いたときにプレコート金属板の塗膜が剥離せず、押し付け線圧P=20kg/mm及び30kg/mmで剥離した場合、Plimは「20未満」と評価した。押し付け線圧P=10kg/mmと20kg/mmでサンプルを引き抜いたときにプレコート金属板の塗膜が剥離せず、押し付け線圧P=30kg/mmで剥離した場合、Plimは「20以上30未満」と評価した。何れの押し付け線圧の条件でサンプルを引き抜いたときにもプレコート金属板の塗膜が剥離しなかった場合、Plimは「30以上」と評価した。また、何れの押し付け線圧の条件でサンプルを引き抜いたときにもプレコート金属板の塗膜が剥離してしまった場合、Plimは「10未満」と評価した。
なお、本測定の金型の表面粗度Raは0.08μmとし、プレコート金属板サンプルの引き抜き速度は200mm/minとした。
B. 塗膜加工性試験
作製したプレコート金属板を、180°折り曲げ加工を実施し、加工部の塗膜を20倍ルーペで観察し、塗膜の割れの有無を調べた。折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、0T加工した。
塗膜割れの評価は、塗膜割れの全くない時を○、塗膜に極小さな割れがある時を△、塗膜に目視でも明確な大きな割れが加工部全面にある時を×として評価した。
C. 耐食性試験
作製したプレコート金属板を70mm×150mmのサイズに切断し、長辺の端面部については、切断時の返り(バリ)が裏面塗料を塗装した面にくるように(下バリとなるように)切断し、また、短辺の端面部はテープにてシールすることで、耐食性試験用サンプルを作製した。そして、JIS K5400の9.1記載の方法に準拠して、塩水噴霧試験を実施した。塩水は、防錆塗膜を有する面に拭きかかかるように噴霧した。試験時間は500時間とした。なお、本実験では、塗膜の上から試験片の素地に達するようなカット傷は設けなかった。
試験終了後、端面にテープシールを施していない長辺の端面の平均膨れ幅を測定し、平均膨れ幅が2mm以下の場合に◎、2mm超3mm以下の場合に○、3mm超5mm以下の場合に△、5mm超の場合に×と評価した。
なお、端面の平均膨れ幅は、150mmある長辺を10mm毎の区画(全部で15区画)に分け、それぞれの区画での最大膨れ幅を測定し、各区画の最大膨れ幅を全区画数で除した値を平均膨れ幅をした。
D. 耐湿性試験
作製したプレコート金属板を70mm×150mmのサイズに切断し、全ての切断端面をテープにシールすることで耐食性試験用サンプルを作製した。そして、JIS K5400の9.2記載の方法に準拠して、耐湿性試験を実施した。耐湿性試験は1000時間実施した。なお、本実験では、塗膜の上から試験片の素地に達するようなカット傷は設けなかった。
試験後に、JIS.K5400.8.5.2に記載の付着性碁盤目テープ法を実施し、JIS同項の評価基準が6点以上の場合を◎、4点の場合を○、2点の場合を△、0点の場合を×と評価した。
以下評価結果について詳細を説明する。
Figure 0004319957
表2に作成したプレコート鋼板の評価結果を示す。本発明のプレコート鋼板(本発明例No.1〜1614)は、加工性、耐食性、耐湿性の何れにも優れる。特に、防錆塗膜のバインダー樹脂がエポキシを添加していないポリエステル樹脂の場合より、エポキシを添加したものの方が、限界押し付け線圧Plimが高くなり(本発明例-1と11との比較)、耐湿性も向上するため、より好適である。また、金属板に施す化成処理が樹脂を必須成分として含み、且つ、シリカ、シランカップリング剤、タンニン、タンニン酸、ジルコニウム化合物又はチタニウム化合物のいずれか2種以上を含むもの(本発明例-1〜14)は、1種しか含まないもの(本発明例-15〜18)やリン酸亜鉛系の化成処理(本発明例-19,20)より耐湿性が向上し、且つ加工性も良好であるため、より好適である。更には、金属板に施す化成処理が樹脂を必須成分として含み、且つ、シリカ、シランカップリング剤、タンニン、タンニン酸、ジルコニウム化合物又はチタニウム化合物のいずれか3種以上を含むもの(例えば、本発明例-1、5等)は、限界押し付け線圧Plimが更に高くなり、耐湿性がより向上するため、より好適である。また、全防錆剤の添加量が樹脂固形分100質量部に対して110質量部未満のもの(本発明例-7)は、耐食性が若干劣り、更には100質量部未満のもの(本発明例-12)は、更に耐食性が低下するため、防錆顔料添加量は樹脂固形分100質量部に対して100質量部以上が好ましく、より好ましくは110質量部以上である。また、防錆顔料の添加量が高過ぎると耐湿性が劣る傾向にあるため、樹脂固形分100質量部に対して160質量部のもの(本発明例-8)が限界であると考える。より好ましくは、130質量部以下である。また、金属板に亜鉛系めっき鋼板を用いた場合の亜鉛付着量は片面当り40g/m2以上90g/m2未満のものがより好適であり、亜鉛付着量が40g/m2未満のもの(本発明例-14)は耐食性が低下し、90g/m2超のもの(本発明例-13)は加工性が低下する傾向である。
一方、限界押し付け線圧Plimが20kg/mm未満のもの(比較例-22〜27)は、耐湿性に劣るため不適である。特に防錆塗料塗膜中にSi、P、Mgのいずれか1種もしくは2種しか塗膜成分として含有しないものは、限界押し付け線圧Plimが20kg/mm未満となり(比較例-22〜27)、耐湿性や加工性に劣るため不適である。また、防錆塗料塗膜中にSi、P、Mgのいずれか1種もしくは2種しか塗膜成分として含有しないものは、例え、限界押し付け線圧Plimが20kg/mm以上となっても耐食性に劣るため不適である(比較例-28)。
更に、また、化成処理にクロメート処理を用い、防錆塗膜にクロム系防錆顔料を使用したもの(比較例-21)は、環境負荷物質であるクロムを含むため不適である。
本発明に従い、該プレコート金属板の少なくとも片面の防錆塗膜を有する塗膜面に半径4mmの半円柱凸状ビード金型を、他方の面に平金型を配置し、これら金型をプレコート金属板に押し付けた状態で、半円柱の軸に対して直角方向に前記プレコート金属板を引き抜いた時に、防錆塗膜を有する塗膜面が剥離しない押し付け線圧(半円柱凸状ビード先端の圧力)を測定する装置及び方法を説明する図である。

Claims (1)

  1. 金属板の両面もしくは片面に化成処理膜(A)と防錆塗膜(B)と上塗塗膜(C)とを有するプレコート金属板において、少なくとも片面の該化成処理膜(A)が、シリカ、シランカップリング剤、タンニン、タンニン酸、ジルコニウム化合物又はチタニウム化合物から選ばれる3種以上と樹脂を含有する皮膜であり、少なくとも片面の該防錆塗膜(B)がエポキシ含有ポリエステル樹脂であるバインダー樹脂と、Si、P、Mgを塗膜成分として含有し、かつ、前記Siがカルシウムイオン交換シリカであり、Pがリン酸亜鉛もしくはリン酸2水素マグネシウムのいずれか一方であり、Mgがリン酸2水素マグネシウムもしくは酸化マグネシウムのいずれか一方であり、かつ、Crを含有しない塗膜であって、全防錆顔料の添加量が樹脂固形分100質量部に対して110質量部以上130質量部未満であり、かつ、該プレコート金属板の少なくとも片面の前記防錆塗膜を有する塗膜面に半径4mmの半円柱凸状ビード金型を、他方の面に平金型を配置し、これら金型をプレコート金属板に押し付けた状態で、前記半円柱の軸に対して直角方向に前記プレコート金属板を引き抜いた時に、前記防錆塗膜を有する塗膜面が剥離しない押し付け線圧(半円柱凸状ビード先端の圧力)が30kg/mm以上であることを特徴とする耐食性に優れるプレコート金属板。
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