JPH08209065A - 水性コーティング組成物 - Google Patents

水性コーティング組成物

Info

Publication number
JPH08209065A
JPH08209065A JP6282631A JP28263194A JPH08209065A JP H08209065 A JPH08209065 A JP H08209065A JP 6282631 A JP6282631 A JP 6282631A JP 28263194 A JP28263194 A JP 28263194A JP H08209065 A JPH08209065 A JP H08209065A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating composition
aqueous
weight
coating
parts
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP6282631A
Other languages
English (en)
Inventor
Taketoshi Odawa
武利 小田和
Toshihiro Okai
敏博 岡井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Paint Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paint Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Paint Co Ltd filed Critical Nippon Paint Co Ltd
Priority to JP6282631A priority Critical patent/JPH08209065A/ja
Priority to TW83111912A priority patent/TW272206B/zh
Priority to US08/360,024 priority patent/US5578669A/en
Priority to EP19940120440 priority patent/EP0659855A3/en
Priority to KR1019940036527A priority patent/KR950018349A/ko
Priority to US08/658,092 priority patent/US5753740A/en
Priority to US08/659,674 priority patent/US5853890A/en
Publication of JPH08209065A publication Critical patent/JPH08209065A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
  • Polyurethanes Or Polyureas (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 低温、短時間の強制乾燥条件下や短時間焼き
付け条件下でも、高度な加工性を有するとともに優れた
耐食性を発揮する強靱で密着性のよい被膜を得ることが
可能な、塗装下地用塗布型防錆コーテイング用としても
潤滑防錆コーテイング用としても使用可能である水性コ
ーテイング組成物を提供する。 【構成】 ポリウレタン樹脂エマルジョン100重量
部、及び、水性フェノール樹脂5〜100重量部を含有
してなる水性コーテイング組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建材、家庭電器製品、
自動車等に使用する鋼板の表面を処理するための水性コ
ーティング組成物に関する。さらに詳しくは、(1)表
面処理鋼板に対しては、加工潤滑性、耐食性等を付与す
る潤滑防錆コーティング組成物及び自動車用潤滑防錆コ
ーティング組成物として機能し、(2)表面処理を施さ
れていない鋼板や亜鉛メッキ鋼板に対しては、塗装下地
を形成する塗布型防錆コーティング組成物として機能す
る水性コーティング組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】冷延鋼板及び亜鉛系メッキ鋼板は、建
材、家庭電器製品、自動車等の用途に広く用いられてい
る。これらの鋼板は、通常、成形加工の後、塗装下地と
なる表面処理を施され、その後組み立て加工の前に塗装
に供される。上記成形加工の段階では、その加工性を良
好にするために、鋼板の表面にプレス油等の潤滑油類が
塗布される。しかし、潤滑油を用いると、プレス加工
後、表面処理又は塗装の前に潤滑油を脱脂する工程が必
須となり、経済上の不利があるうえ、この潤滑油は、プ
レス加工時に飛散し、作業環境を悪化させる等の問題が
あった。
【0003】このため、近年では、省資源、コスト低
減、作業環境改善等の目的で、潤滑油を用いないで潤滑
機能と防錆機能を有する被膜を鋼板表面に形成した表面
処理鋼板が提案された。特開平5−39458号公報に
は、特定のポリエチレン系ワックスからなる樹脂被膜を
鋼板表面に形成してプレス成形性等を改良する技術が開
示されている。また、特開平1−301332号公報に
は、特定量のクロメート被膜及び特定の樹脂混合物から
なる樹脂被膜を二重にコーティングすることで成形性を
獲得する技術が開示されている。
【0004】省力化の観点から、特開平3−27093
2号公報等には、潤滑性被膜に、上塗り塗膜との密着性
と耐食性とを持たせて、成形加工後、直接に上塗り塗料
を塗装して仕上げることができ、また自動車用鋼板等の
電着塗装をする必要のある用途のためには、コーティン
グに必要な導電性を持たせることができる潤滑防錆コー
ティング組成物に関する技術が開示されている。
【0005】このような潤滑防錆コーティング組成物の
製造においては、有機溶剤を使用すると、加工時の作業
環境の悪化、発火の危険、溶剤を外部に排出しないため
のアフターバーナーの設置の必要性等の問題があり、有
機溶剤を使用しない水性コーティング組成物の開発が進
められてきた。このような水性潤滑防錆コーティング組
成物の組成において、水性化のために樹脂の親水性基を
多くしたり、樹脂の乳化のために乳化剤等を含有させる
が、このことは水の浸透を早める結果となり、耐水性や
耐食性を低下させる原因となっており、水性化しても耐
水性、耐食性を低下させない技術手段が必要となってい
た。
【0006】近年、工業的規模での潤滑防錆表面処理板
製造ラインにおいては、省エネルギー化、処理の高速化
が進められており、例えば、150℃程度の比較的低温
で15秒程度の短時間でコーティング剤の塗布面を硬化
させ被膜強度を確保できるものでなければ要請に応えら
れないのが現状であった。
【0007】また、最近では、深絞りや高速の加工が行
われるようになってきた。このため金型の高温化等によ
り潤滑防錆表面処理鋼板の加工部の被膜が剥離して粉が
発生(パウダリング)し、加工部や金型に付着するため
に、カジリ等による加工性の低下、加工部の耐食性の低
下、仕上り外観の低下等の問題が生じていた。
【0008】そこで、低温、短時間の焼き付けで硬化度
が高く強固に金属板に密着した塗膜を得ることができ、
耐食性、耐水性、溶接性に優れ、電着塗装に適した導電
性を有し、また加工時におけるパウダリングの発生をも
防止しうる鋼板表面処理用の水性潤滑防錆コーティング
組成物を提供することが検討された。その結果、水性潤
滑防錆コーティング組成物を、(a)酸価が25〜10
0、水酸基価が35〜200、SP値が10.0〜1
1.0の水溶性アルキド樹脂及び水溶性アクリル樹脂の
うち少なくとも1種からなる樹脂ワニス、(b)オキサ
ゾリン化合物及び硬化開始温度が140℃以下のメラミ
ン樹脂のうち少なくとも1種からなる硬化剤、(c)ベ
ンゼンスルホン酸誘導体、そのアミン塩及びそのアンモ
ニウム塩、ナフタレンスルホン酸誘導体、そのアミン塩
及びそのアンモニウム塩、並びに、酸性りん酸アミン塩
及びアンモニウム塩よりなる群から選択された少なくと
も1種からなる強酸性触媒、の上記(a)〜(c)を限
定量配合すれば、上記目的に適う水性潤滑防錆コーティ
ング組成物が得られることが見いだされた。
【0009】ところで、例えば、現行の潤滑防錆コーテ
ィング剤を塗布し焼き付けるコイルコーティングライン
においては、ライントラブルの発生、ストリップシート
の切替え、塗料やコーティング剤の切替え等によりライ
ンスピードが一時的に低速となることが多い。このよう
な場合、一定温度のオーブン中に車体等の被塗物が一定
時間滞留することを原因としてオーバーベーク状態が発
生し、その後上塗り塗料塗装時に再度焼き付けを行う工
程を経るうちに硬化が過度となって、最終的に塗膜密着
性、折り曲げ加工性が低下する場合がある。上記(a)
〜(c)の限定量配合による水性潤滑防錆コーティング
組成物を使用した場合には、このような危険を回避する
ことができないことが判った。そこで、たとえオーバー
ベーク状態となっても、上塗り塗装後に、被膜密着性、
折り曲げ加工性が低下しないものを見出すべく検討がな
された。
【0010】その結果、(d)酸価が25〜100、水
酸基価が35〜200、SP値が10.0〜11.0の
水溶性アルキド樹脂及び水溶性アクリル樹脂のうち少な
くとも1種からなる樹脂ワニス、(e)オキサゾリン化
合物及び硬化開始温度が140℃以下のメラミン樹脂の
うち少なくとも1種からなる硬化剤、(f)ベンゼンス
ルホン酸誘導体、そのアミン塩及びそのアンモニウム
塩、ナフタレンスルホン酸誘導体、そのアミン塩及びそ
のアンモニウム塩、並びに、酸性りん酸アミン塩及びア
ンモニウム塩からなる群より選択された少なくとも1種
からなる強酸性触媒、(g)ポリウレタン樹脂エマルジ
ョン、の(d)〜(g)を限定量配合した水性潤滑防錆
コーティング組成物により目的が達成しうることが見出
され、提案された。
【0011】上に詳述した潤滑防錆コーティングとは別
に、鋼板表面に直接塗布する目的で塗布型防錆コーティ
ング組成物が使用されている。このような、鋼板表面の
塗装下地処理に用いられるりん酸亜鉛処理(以下「化成
処理」という)においては、不可避的にスラッジが発生
する。近年、環境問題、廃棄物問題等への関心の高まり
から、化成処理工程で副生するスラッジの廃棄費用が増
大しているので、化成処理時のスラッジレス化が望まれ
ていた。また、コストダウンの観点からも、上記スラッ
ジ廃棄費用だけではなく、分離、凝集沈殿等のスラッジ
処理に要するメンテナンス費用、化成処理に大きいスペ
ースが必要であることから生じる省スペース化の課題、
pH、酸度等の化成処理ライン液の管理の煩雑さ等の問
題点から、化成反応型のりん酸亜鉛処理に代わる塗装下
地処理方法が切望されていた。
【0012】りん酸亜鉛処理に代わる塗装下地処理とし
ては、塗布型クロメート処理、反応型クロメート処理が
実用化されており、これによれば、耐食性、密着性等の
下地適性、処理工程の省スペース化等の上記問題点は解
決する。しかしながら、上記クロメート処理では六価ク
ロムを含有しているので、労働衛生、作業環境、環境保
護等の立場から排出規制があり、そのための処理に費用
がかかる等の問題があった。
【0013】上記六価クロム等を使用しないノンクロム
型処理剤としては、種々提案されているが、炭素鋼、亜
鉛メッキ鋼の塗装下地処理に用いると、耐食性が悪くな
ることから、現在では化成処理の後処理、アルミニウム
缶処理等の特定の分野にしか適用されていない。
【0014】先に詳述した水性潤滑防錆コーティング組
成物も、その下地処理には塗布型クロメート処理、反応
型クロメート処理がほどこされており、処理工程では六
価クロムの管理を行い、廃棄処理の必要があった。そこ
で、りん酸亜鉛処理に係るスラッジ処理、廃液処理を不
要にしてスペース性を改善できる塗装下地用塗布型水性
防錆コーティング組成物としての機能を有し、同時に亜
鉛メッキ上のクロメート処理がなくても耐食性を保持で
きる潤滑性を備えた潤滑防錆コーティング組成物及び自
動車用防錆コーティング組成物としての機能をも実現で
きる組成物を見いだすべく検討がなされた。その結果、
(h)りん酸基による酸価が5〜35であるビスフェノ
ール型エポキシ樹脂のりん酸変性物を固形分で100重
量部、並びに、(i)オキサゾリン化合物、フェノール
樹脂、及び、硬化開始温度が140℃以下であるメラミ
ン樹脂からなる群より選択された少なくとも1種を固形
分で10〜500重量部を含有してなる組成物に、
(j)ベンゼンスルホン酸誘導体、そのアミン塩及びそ
のアンモニウム塩、ナフタレンスルホン酸誘導体、その
アミン塩及びそのアンモニウム塩、酸性りん酸アミン塩
及びアンモニウム塩、並びに、ホスホン酸誘導体、その
アミン塩及びそのアンモニウム塩からなる群より選択さ
れた少なくとも1種からなる酸性触媒を上記組成物固形
分全体の0.1〜5重量%、の(h)〜(j)で構成す
れば、上記目的が達成しうることが見いだされ、提案さ
れた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記(d)〜(g)を
限定量配合した水性潤滑防錆コーティング組成物は、加
工性に優れた機能を発揮し、特にオーバーベーク時の上
塗り密着性の確保に優れたものであった。しかし、これ
らの機能は、150℃で8秒の焼き付け条件を必要と
し、また、水性アルキド樹脂又は水性アクリル樹脂を含
有しているため、耐食性には改善の余地を残すものであ
った。
【0016】上記(h)〜(j)の構成による水性コー
ティング組成物をベースとした塗布型防錆コーティング
組成物は、鋼板や亜鉛メッキ鋼板等の塗装下地用の防錆
処理に充分な機能を発揮した。また、亜鉛メッキ鋼板の
潤滑防錆処理に使用した場合、クロメート処理の有無に
かかわらず、耐食性は充分に発揮できた。しかし、上記
塗布型防錆コーティング組成物は、130℃で5分以上
の焼き付け条件で充分硬化反応を起こさないとこれらの
機能を発現しにくく、化成処理、塗布型クロメート処理
等の塗装下地処理で通常行なわれている60〜110℃
で数分以内という強制乾燥の条件や、潤滑防錆処理で通
常行なわれている150℃、15秒以内という短時間焼
き付け条件のもとでは、充分な機能を発揮しにくいもの
であった。また、深しぼり等の高度加工において加工性
が不充分であった。
【0017】本発明は、上記に鑑み、低温、短時間の強
制乾燥条件下や短時間焼き付け条件下でも、高度な加工
性を有するとともに優れた耐食性を発揮する強靱で密着
性のよい被膜を得ることが可能な、塗装下地用塗布型防
錆コーティング用としても潤滑防錆コーティング用とし
ても使用可能である水性コーティング組成物及びこれを
用いた塗膜形成方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、水性コ
ーティング組成物を、ポリウレタン樹脂エマルジョン
()100重量部、及び、水性フェノール樹脂()
5〜100重量部を含有させて構成するところにある。
以下、本発明を詳述する。
【0019】本発明の第一の成分は、ポリウレタン樹脂
エマルジョンである。上記ポリウレタン樹脂エマルジ
ョンとしては、乳化剤を用いる強制乳化タイプと乳化剤
を用いない自己乳化タイプの双方を使用することができ
るが、本発明においては、乳化剤の残存による被膜の強
度変化や耐水性の減少等の問題がない点で、自己乳化タ
イプのポリウレタン樹脂エマルジョンを使用する方が好
ましい。自己乳化タイプのポリウレタン樹脂エマルジョ
ンは、ゲル構造を有しエマルジョンの水和安定性が良い
点でも、本発明には好ましい。
【0020】上記ポリウレタン樹脂エマルジョンとして
は、原料の種類により、ポリエーテル系、ポリエステル
系、ポリカーボネート系及びこれらの混合系等の各種の
ものを使用することができるが、硬化させた膜の硬化度
の要請から、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂よりポリ
エステル系ポリエステルが好ましく、ポリカーボネート
系ポリウレタン樹脂がより好ましい。上記ポリエーテル
系のポリウレタン樹脂エマルジョンとしては、例えば、
スーパーフレックス110(第一工業製薬社製)、スー
パーフレックスF−8438D(第一工業製薬社製)、
ハイドランHW950(大日本インキ化学工業社製)等
を挙げることができる。
【0021】上記ポリエステル系のポリウレタン樹脂エ
マルジョンとしては、例えば、スーパーフレックスF−
8123D(第一工業製薬社製)、ハイドランHW91
0(大日本インキ化学工業社製)、ハイドランHW92
0(大日本インキ化学工業社製)、ハイドランHW93
0(大日本インキ化学工業社製)、ハイドランHW94
0(大日本インキ化学工業社製)、ハイドランHW96
0(大日本インキ化学工業社製)等を挙げることができ
る。上記ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂エマル
ジョンとしては、例えば、スーパーフレックス460
(第一工業製薬社製)、スーパーフレックスF−812
4D(第一工業製薬社製)、ハイドランHW935(大
日本インキ化学工業社製)、ハイドランHW980(大
日本インキ化学工業社製)等を挙げることができる。こ
れらは、その1種又は2種以上を混合して使用すること
ができる。
【0022】上記ポリウレタン樹脂エマルジョンは、高
分子量化され、ガラス転移温度(以下「Tg」という)
が高いものが好ましい。上記ポリウレタン樹脂エマルジ
ョンのTgは、10〜80℃であることが好ましい。T
gがこの範囲内であると、本発明の水性コーティング組
成物を被膜化したときに、所望の被膜強度及び密着性
が、120〜180℃の広い乾燥、焼き付け温度範囲で
得ることができる。より好ましいTgの範囲は、20〜
80℃である。本発明においては、上記各種のポリウレ
タン樹脂エマルジョンを混合することにより所望のTg
を得ることができる。
【0023】上記ポリウレタン樹脂エマルジョンの分子
量は、10万以上であることが好ましい。分子量が10
万未満であると所望の被膜強度が得られず加工潤滑性が
低下する。また、耐溶剤性が低下することにより、強制
乾燥条件の低温、短時間で造膜された被膜に、加工後、
上塗りをかける場合、上塗りの溶剤や水により被膜が劣
化し耐食性が望めない。分子量が10万以上、好ましく
は数十万以上となると上記の問題点がなくなる。
【0024】本発明の第二の成分は、水性フェノール樹
脂()である。上記水性フェノール樹脂としては特に
限定されず、例えば、特開平4−283217号公報、
特開平5−93167号公報等に開示された製造方法等
によるもの、昭和高分子社製ショウノールBRL−12
5S、126A等の高水溶性レゾール型フェノール樹
脂;ショウノールBRL−117、134、1583、
230C、273Z、276O、280Z、204、2
19、1251、2534、113、116、120
Z、112A等の水溶性レゾール型フェノール樹脂;B
RE−174、N−2等の水性エマルジョン等を挙げる
ことができる。上記水性フェノール樹脂は、酸性触媒の
作用のもとで、60〜110℃で1分以下の強制乾燥条
件であっても強靱で密着性のよいコーティング膜を与
え、耐食性と加工性に優れたコーティング膜とすること
ができるので、本発明の必須の成分となる。
【0025】上記水性フェノール樹脂の含有量は、上記
ポリウレタン樹脂エマルジョン100重量部に対して、
5〜100重量部である。上記水性フェノール樹脂の含
有量が5重量部未満であると耐食性が不充分となり、1
00重量部を超えるとポリウレタン樹脂エマルジョンの
安定性に悪影響を及ぼすこととなるので、上記範囲内に
限定される。好ましくは10〜30重量部である。
【0026】本発明においては、第三の成分として、オ
キサゾリン化合物及び硬化開始温度が140℃以下であ
るメラミン樹脂からなる群より選択された少なくとも1
種()を含有することが好ましい。上記オキサゾリン
化合物は、次の一般式〔I〕の構造を有する。上記オキ
サゾリン化合物は、カルボキシル基を有する化合物と容
易に反応して下記のような開環付加反応を起こすので、
他の成分にカルボキシル基を含んでいる場合に用いるこ
とができる。
【0027】
【化1】
【0028】式中、R、R′は、各種重合体を表す。本
発明においては、Rがスチレン系重合体、アクリル−ス
チレン系共重合体であるものは、コーティング膜の強靱
性を付与しTgを大きくする点から好ましい。上記オキ
サゾリン化合物としては特に限定されないが、例えば、
日本触媒社製エポクロスK−1010E、エポクロスK
−1020E、エポクロスK−1030E、エポクロス
K−1050E等を挙げることができ、このうち、エポ
クロスK−1030E、エポクロスK−1050Eが、
Tgが高く強靱で高い密着性のコーティング膜を与える
ので好ましい。また、エポクロスK−1010E、エポ
クロスK−1020Eであっても、生成するコーティン
グ膜が所望の被膜になるように、添加量、硬化温度、触
媒を調整して用いることができる。
【0029】本発明で使用されるオキサゾリン化合物
は、Tgが40℃以上のものが好ましい。40℃未満で
あると、低温、短時間(150℃で15秒程度)の焼き
付け条件では、鋼板との密着性及び硬化度に優れたコー
ティング膜が得られない。より好ましくは100℃以上
である。
【0030】本発明の第三成分として使用することがで
きるメラミン樹脂は、硬化開始温度が140℃以下のも
のである。なお、本明細書中において、硬化開始温度
は、DSA(ダイナミック・スプリング・アナリシス
法)により、昇温速度3℃/分として、温度とEr(相
対動的弾性率)の変曲点から読み取ることにより測定し
たものを表す。このときの使用樹脂は、酸価39、水酸
基価140のアルキド樹脂であり、使用触媒は、ナフタ
レンスルホン酸系酸性触媒である。上記アルキド樹脂と
メラミン樹脂との配合比は、固形分比で7:3であり、
上記触媒の配合量は、上記アルキド樹脂とメラミン樹脂
との配合物固形分100重量部に対して2重量部であ
る。メラミン樹脂の硬化開始温度が140℃より高い
と、低温、短時間の焼き付け時間では、塗膜の硬化度が
不足する。なかでも、硬化速度の高いものが好ましい。
上記メラミン樹脂としては、イミノ若しくはメチロール
変性又はイミノメチロール混合変性メラミン樹脂が好ま
しい。ブトキシ変性メラミン樹脂は、水溶性樹脂との均
一混合性に劣り、塗料の安定性が低下するので好ましく
ない。
【0031】上記条件を満たすメラミン樹脂として、例
えば、サイメル327、サイメル328(三井サイテッ
ク社製)等のイミノ型メラミン樹脂;サイメル370
(三井サイテック社製)等のメチロール変性メラミン樹
脂又はサイメル701(三井サイテック社製)等のこれ
らの混合変性メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0032】本発明における上記第三成分の含有量は、
水性フェノール樹脂()5〜100重量部と合わせ
て、ポリウレタン樹脂エマルジョン()固形分の量1
00重量部に対し10〜200重量部である。10重量
部未満であると硬化不良となり、200重量部を超える
と硬化剤が未反応のまま残留し、硬化被膜の軟化、ガラ
ス転移温度の低下、密着性の低下、耐水耐食性低下の原
因となる。より好ましくは、10〜100重量部であ
る。
【0033】特願平6−210460号においては、ビ
スフェノール型エポキシ樹脂のりん酸変性物、メラミン
樹脂又はフェノール樹脂及び酸触媒からなる組成物の固
形分100重量部に対してポリウレタン樹脂エマルジョ
ン10〜80重量%を配合し、塗膜密着性、折り曲げ加
工性を重視する用途に用いる場合には、上記ポリウレタ
ン樹脂エマルジョンが10重量%未満であると上記性能
を獲得できず、80重量%を超えると耐食性、潤滑性を
損なった。より好ましくは15〜50重量%であった。
一方、本発明は、ビスフェノール型エポキシ樹脂のりん
酸変性物を含有せず、上記のように、ポリウレタン樹脂
エマルジョン100重量部を主成分とし、水性フェノー
ル樹脂5〜100重量部の配合により、耐食性と、60
〜110℃、1分以下での強制乾燥条件での低温、短時
間硬化の達成を可能とする技術思想に基づいている。
【0034】本発明の水性コーティング組成物は、更
に、第四の成分としてベンゼンスルホン酸誘導体、その
アミン塩及びそのアンモニウム塩、ナフタレンスルホン
酸誘導体、そのアミン塩及びそのアンモニウム塩、酸性
りん酸アミン塩及びアンモニウム塩、並びに、ホスホン
酸誘導体、そのアミン塩及びそのアンモニウム塩よりな
る群から選択された少なくとも1種からなる酸性触媒
()を含有するのが好ましい。上記酸性触媒は、フェ
ノール樹脂又はメラミン樹脂に作用し、60〜110
℃、1分以下という強制乾燥条件で、強固な密着性の優
れたコーティング膜を与え、従来技術の硬化条件(15
0℃で8〜15秒、130℃で5分)よりも低温、短時
間で同等以上の強靱で密着性のよいコーティング膜を得
ることができる機能をもっているので、本発明の第四の
成分とすることができる。120〜180℃の焼き付け
条件では、フェノール樹脂の特性から、特に酸性触媒を
必要とすることはないが、酸性触媒を用いると、更に硬
化度の高い被膜を得ることができる。通常は、酸性触媒
がなくても膜強度は充分であり、この場合には、酸性触
媒が膜中に残留することによる耐水性の低下が防止され
るという利点を得ることができる。
【0035】上記酸性触媒の塩を形成するカチオンとし
ては、アミン類、アンモニウムが、塗膜の加熱硬化時に
揮発しコーティング膜に残留しにくいので好ましい。ア
ルカリ金属、金属カチオンは、塗料中でイオン化しコー
ティング膜に残留し、水を吸収する原因となるので好ま
しくない。上記酸性触媒としては、例えば、ドデシルベ
ンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、り
ん酸二水素アンモニウム、りん酸一水素アンモニウム、
キャタリスト500(三井サイテック社製)、キャタリ
スト600(同)、キャタリスト4040(同)等を挙
げることができる。
【0036】上記酸性触媒のうち、酸性りん酸として
は、上記りん酸二水素アンモニウム、りん酸一水素アン
モニウム等の無機りん酸塩のほかに、りん酸基が樹脂に
結合したものであってもよく、例えば、ポリビニルアル
コールのりん酸変性物であってもよく、ビスフェノール
型エポキシ樹脂のりん酸変性物であってもよい。これら
を用いた場合には、上記低分子量の酸性触媒を添加しな
くともよいか又は極少量の添加でよい。上記酸性りん酸
としては、フィチン酸等の多価りん酸を用いてもよい。
この場合は、その物質自体が触媒機能以外に防錆機能を
有し、耐食性を強化させることができる。
【0037】本発明の第四の成分として用いられるホス
ホン酸誘導体、そのアミン塩又はそのアンモニウム塩
は、りん酸エステルではなく、炭素原子とりん原子が直
接結合したものである。上記ホスホン酸は、その構造か
らりん酸エステルに比べて加水分解しにくいので、本発
明の目的には好ましい。
【0038】上記ホスホン酸誘導体は、防錆効果を有
し、耐食性を強化させることができる。上記ホスホン酸
誘導体、そのアミン塩又はそのアンモニウム塩として
は、例えば、デイクエスト2000、デイクエスト20
10、デイクエスト2041(日本モンサント社製)を
アミン又はアンモニアで中和したもの等を挙げることが
できる。
【0039】上記酸性触媒()は、本発明の水性コー
ティング組成物固形分100重量部に対して、固形分と
して0.5〜5重量部を添加する。0.5重量部未満で
あると触媒作用が低下し、短時間又は低温硬化が困難と
なり、5重量部を超えると膜中に残留する量が多くなる
ことにより耐水性が低下するので、好ましくない。
【0040】本発明の水性コーティング組成物のpHは
7〜10が好ましい。pHが7未満であると水性フェノ
ール樹脂が自己縮合し、組成物の貯蔵安定性が悪くな
る。また、pHが10を超えると酸性触媒の効果が少な
く、硬化性が悪くなり、また、貯蔵安定性が悪くなる。
【0041】本発明においては、特願平5−34770
1号の願書に添付された明細書中及び特願平6−450
50号の願書に添付された明細書中に具体的に開示され
ている酸価が25〜100、水酸基価が35〜200、
SP値が10.0〜11.0の水溶性アルキド樹脂を他
の成分として添加することもできる。しかし、この成分
を用いると形成されるコーティング膜のTgが低下し、
強靱で密着性の良いコーティング膜が得られず、加工性
が保たれないので好ましくない。このTgの低下は、ア
ルキド樹脂のカルボキシル基に、上述のオキサゾリン化
合物を反応させ、かつオキサゾリン化合物の樹脂Tgを
高く設定することにより改善できる。このとき上記オキ
サゾリン化合物は、Tgが40℃以上でることが好まし
く、より好ましくは100℃以上である。上記オキサゾ
リン化合物は、スチレン系重合体、スチレン−アクリル
系共重合体を含有するものが好ましい。
【0042】本発明の水性コーティング組成物は、その
まま又は適切な添加物が添加されて、塗装下地用防錆コ
ーティング組成物、潤滑防錆コーティング組成物又は自
動車用潤滑防錆コーティング組成物として適用される。
上記塗装下地用防錆コーティング組成物とするときは、
ポリウレタン樹脂エマルジョン()及び水性フェノー
ル樹脂()を含有する水性コーティング組成物(以下
「組成物A」という)、又は、ポリウレタン樹脂エマル
ジョン()及び水性フェノール樹脂()に第三成分
()を含有する水性コーティング組成物(以下「組成
物B」という)に、必要に応じて酸性触媒()を含有
させ(以下組成物Aに酸性触媒()を含有させたもの
又は組成物Bに酸性触媒()を含有させたものを「組
成物C」という)、さらに防錆顔料及び微粒子状のシリ
カのうち少なくとも1種()を適宜含有させてもよ
い。以下(組成物A+)、(組成物B+)又は(組
成物C+)を含有したものを「組成物D」という。上
記防錆顔料は、その1gを脱イオン水100gに分散さ
せて作成した水分散液の導電率が600μS/cm以下
であるものが好ましい。組成物Dは、防錆コーティング
組成物として使用することができる。
【0043】上記組成物Dは、組成物A、組成物B又は
組成物C固形分100重量部に、上記防錆顔料及び上記
シリカの少なくとも1種を、固形分換算で1〜40重量
部含有させるのが好ましい。1重量部未満では耐食性が
低下し、40重量部を超えると耐食性において効果が飽
和するとともにコーティング膜の強度、透水性が低下す
る。より好ましくは1〜20重量部である。
【0044】上記防錆顔料としては、例えば、りん酸カ
ルシウム(例、菊地色素社製LFボウセイCP−Z)、
りん酸亜鉛等のりん酸塩系防錆顔料;モリブデン酸亜鉛
(例、菊地色素社製LFボウセイM−PSN、本荘ケミ
カル社製モリホワイト101)等のモリブデン酸塩系防
錆顔料;シアナミド亜鉛カルシウム(例、菊地色素社製
LFボウセイZK−S2)等を挙げることができる。
【0045】導電率が600μS/cmを超える防錆顔
料としては、例えば、鉛酸カルシウム、りん酸シリカ、
クロム酸亜鉛、クロム酸ストロンチウム、メタほう酸バ
リウム等を挙げることができるが、これらは、コーティ
ング膜の耐水性やブリスタを阻害するだけでなく、水溶
性樹脂の安定性を損なうので、本発明では使用すること
ができない。また、塩基性硫酸鉛やシアナミド鉛などの
鉛系防錆顔料は、毒性の点から、特別の場合を除いて本
発明には使用することができない。
【0046】本発明における上記シリカは、微粒子状又
はゾル等のコロイド状であって、防食塗料、特に薄膜型
防錆鋼板用コーティング剤として、通常使用されている
ものを用いることができるが、その水分散液のpHが6
〜9の乾式シリカ又はコロイダルシリカ等が好ましい。
乾式シリカは、その等酸点がpH4〜5の酸性領域にあ
るものが多いため、樹脂水溶液のpHを低下させようと
するので樹脂が水溶性とならずディスパージョン型とな
り、水性コーティング組成物が弱アルカリ性に設定して
ある場合には、その貯蔵安定性が悪くなり好ましくな
い。
【0047】上記湿式シリカとしては、水中でコロイド
状に安定化させたもの等を挙げることができ、例えば、
スノーテックスO(日産化学工業社製)、スノーテック
スN(同)、アデライトAT−20(旭電化工業社
製)、アデライトAT−30(同)、アデライトAT−
40(同)、アデライトAT−50(同)、アデライト
AT−20S(同)、アデライトAT−30S(同)、
アデライトAT−20N(同)、アデライトAT−20
A(同)、アデライトAT−30A(同)等を挙げるこ
とができる。
【0048】また上記乾式シリカとしては、フュームド
シリカ又は気相法シリカと呼ばれるものを挙げることが
でき、例えば、アエロジル380(日本アエロジル社
製)、アエロジル300(同)、アエロジル200
(同)等を挙げることができる。
【0049】本発明で使用される上記シリカは、りん酸
化合物、モリブデン化合物、ほう酸化合物等を用いてコ
ロイド化したものが好ましい。上記コロイド化粒子は、
シリカ及びアルミニウムシリケートを主成分とし、これ
らは雑イオンを含有しない高純度のものが好ましい。上
記乾式アルミニウムシリケートとしては、例えば、アエ
ロジルMOX170(日本アエロジル社製)、アエロジ
ルMOX80(同)、アエロジルCOK84(同)等を
挙げることができる。シリカ単独のものよりも、アルミ
ニウムシリケート等の方が効率よくコロイド化すること
ができる。
【0050】上記コロイド化において、上記乾式シリカ
又は乾式アルミニウムシリケートの量は、水を含む全量
1000重量部に対して好ましくは50〜200重量部
である。50重量部未満であると、これにより得られる
コロイド化粒子が再凝集を起こしやすく、コロイド化粒
子を含有する水性コーティング組成物により形成される
塗膜の耐食性が低下するので好ましくない。また200
重量部を超えると、これにより得られるコロイド化粒子
を含有する水性コーティング組成物により形成される塗
膜の耐食性が低下する傾向となるので好ましくない。よ
り好ましくは、100〜150重量部である。
【0051】上記シリカをコロイド化するためのコロイ
ド化助剤としては特に限定されず、水溶液中で大きな陰
イオンを形成する化合物であればよく、例えば、ピロり
ん酸、トリポリりん酸、テトラポリりん酸、ペンタポリ
りん酸、ヘキサポリりん酸、ヘプタポリりん酸、オクタ
ポリりん酸、ノナポリりん酸、デカポリりん酸、メタり
ん酸、トリメタりん酸、ヘキサメタりん酸、ウルトラポ
リりん酸等の縮合りん酸及びこれらのアンモニウム塩等
のりん酸化合物等を挙げることができる。
【0052】上記縮合りん酸及びりん酸化合物のアルカ
リ金属塩及びアルカリ土類金属塩もあるが、コーティン
グ膜中に金属イオンが含有されると腐食雰囲気下でのハ
ロゲンイオン(例えば、Cl- )のコーティング膜透過
を促進し、またシリカの陽イオン交換能も阻害し、得ら
れるコロイド化粒子を用いてなる水性コーティング組成
物により形成される塗膜の耐食性が極端に低下するの
で、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の使用は好
ましくない。
【0053】上記りん酸化合物のほか、例えば、モリブ
デン酸アンモニウム四水和物等のモリブデン酸化合物;
五ほう酸アンモニウム、メタほう酸等のほう酸化合物;
オルトけい酸、メタけい酸等のけい酸化合物等を挙げる
ことができる。ただし、けい酸化合物は水に微溶である
が、アンモニウム性アルカリ溶液に溶解させて使用する
ことができる。また、いおう含有陰イオンも、酸化還元
反応に対して化学的に活性であるが、コロイド化に使用
することは可能である。
【0054】上記コロイド化助剤の添加量は、特に制限
されるものではなく、目的とするコロイド化粒子の粒子
径にあわせて加減すればよく、例えば、コロイド化粒子
の粒子径を500nm以下とする場合には、シリカ又は
アルミニウムシリケートに対して、好ましくは2×10
-4〜2×100 モルである。添加量が2×10-4モル未
満であると、得られるコロイド化粒子が凝集によってす
ぐに網目構造状粒子に復元し粗大化するので好ましくな
い。また2×100 モルを超えると、これにより得られ
るコロイド化粒子を含有する水性コーティング組成物に
より形成される塗膜の耐食性が低下する傾向となるので
好ましくない。より好ましくは2×10-3〜2×10-2
モルの範囲である。
【0055】上記コロイド化粒子の分散媒である水は、
例えば、イオン交換水又は純水等の不純物質の少ないも
のが好ましい。
【0056】こうして得られたコロイド化粒子の粒子径
は、コロイド化助剤の添加量等の調整により所望の値の
ものとして造粒することができる。例えば、高耐食性プ
レコート鋼板の有機被膜用水性コーティング組成物に添
加する場合には、好ましくは500nm以下、より好ま
しくは150〜250nmの範囲である。
【0057】本発明の水性コーティング組成物を潤滑防
錆コーティング組成物とする場合には、組成物D100
重量部に、固形分換算で3〜15重量部のワックス
()を含有させたものが好ましい(以下このものを
「組成物E」という)。ワックスの含有量が3重量部未
満であると加工潤滑性が低下し、15重量部を超えると
上塗りとの付着性が低下するので好ましくない。上記ワ
ックスは、水に分散できるものであれば特に限定され
ず、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリ
ンワックス、ポリエチレン系ワックス(平均分子量20
00〜8000のポリエチレン系ワックスとしては、例
えば、楠本化成社製ディスパロンSE210−15T、
同社製ディスパロンSE480−10T、三井石油社製
ケミパールWF640、同社製ケミパールW700等が
ある。)、ポリプロピレン系ワックス、ポリブテン系ワ
ックス等を挙げることができる。また、上記ワックスの
他に、ポリテトラフルオロエチレン、他のふっ素樹脂、
ふっ化カーボン等のふっ素系固体潤滑剤;グラファイ
ト;金属石鹸等のうち水系組成物に混入できるものを使
用することができる。
【0058】本発明の水性コーティング組成物を自動車
用潤滑防錆コーティング組成物とする場合には、組成物
E100重量部に、メラミンシアヌレート化合物0.0
5〜25重量部を含有させるのが好ましい。メラミンシ
アヌレートの添加量が0.05重量部未満であると、後
述するように電着塗装時の印加電圧による素地金属界面
の密着性破壊を防止する効果が消失し、25重量部を超
えると、得られるコーティング膜の均一性や緻密さがな
くなり、薄膜コーティングの場合には、バリヤ効果を阻
害するので好ましくない。
【0059】上記メラミンシアヌレートはイソシアヌー
ル環含有平面構造を有する化合物であり、式(C69
93 )nで表され、例えば、2,4,6−トリアミ
ノ−1,3,5−トリアジン(以下「メラミン」とい
う)、2,4,6−トリヒドロキシ−1,3,5−トリ
アジン(以下「シアヌル酸」という)及びその互変異性
体との等モル付加化合物で、固体状態にあってはメラミ
ン分子とシアヌル酸分子が弱い水素結合状態でそれぞれ
交互に隣接し、以下のような平面構造を有した結晶を形
成しているものと推定される。
【0060】
【化2】
【0061】式中、●は炭素、○は窒素、◎は酸素、・
は水素、Mはメラミン分子、Cはシアヌル酸分子をそれ
ぞれ表す。また立体構造は、以下のように一定の面間隔
を有する積み重ね構造、いわゆるグラファイト型である
と推定される。
【0062】
【化3】
【0063】式中、M、Cは前記と同じ。これらのメラ
ミンシアヌレート化合物としては、例えば、特公昭60
−33850号公報に製造方法が記載され、日産化学工
業社製のMCシリーズ(MC−FW、MC−PW、MC
−BW、MC−UW、MC−420、MC−520、M
C−600等)として市販されているもの等を挙げるこ
とができる。なお、メラミンシアヌレートをクリア層に
含有させて自動車等のメタリック塗装においてマイカ塗
装と同様の真珠光沢を発現させることが特開平3−28
277号公報に記載されているが、本発明とは無関係で
ある。
【0064】上記メラミンシアヌレート化合物は、耐酸
性、耐アルカリ性が良好で、pH1〜14の範囲で化学
的変化がなく安定である。このことは、カチオン型電着
塗装時に、電着塗膜下はpH12程度にさらされるた
め、本発明のメラミンシアヌレート化合物を含有した自
動車用潤滑防錆コーティング組成物は、電着時の印加電
圧による素地金属界面の密着性破壊を防止する効果があ
る。
【0065】また、メラミンシアヌレート化合物は、水
に難溶性で耐熱性である。更に、一般の塗料に用いられ
る有機溶剤にも溶解せず、僅かにジメチルスルフォオキ
サイドに70℃で0.011g/100ml溶解するだ
けである。これは、電着塗装時、塗膜下に侵入する水に
溶解せず、電着阻害要因とはならない。
【0066】本発明の水性コーティング組成物には、本
発明の構成と矛盾しない範囲内において、その他の成分
として、更に、顔料、溶剤、その他の各種添加剤等を添
加することができる。
【0067】上記顔料としては特に限定されず、例え
ば、着色顔料、体質顔料等を挙げることができる。上記
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、フタロシアニ
ンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、イ
ンダンスロン、ペリレン、アンスラピリミジン、カーボ
ンブラック、ベンズイミダゾラン、黒鉛、黄色酸化鉄、
赤色酸化鉄等を挙げることができる。上記体質顔料とし
ては、例えば、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク
等を挙げることができる。上記顔料の含有量は、水性コ
ーティング組成物の樹脂固形分100重量部に対し、
0.5〜30重量部の範囲に設定するのが好ましい。
【0068】上記溶剤としては、例えば、水;メチルア
ルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコー
ル、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−ブ
チルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノ
ール等のアルコール系;アセトン、メチルエチルケト
ン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソ
ホロン、ジアセトンアルコール等のケトン系の親水性有
機溶剤及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0069】上記溶剤の添加量は、水性コーティング組
成物中に、水の場合には50〜80重量%、親水性有機
溶剤の場合には0〜80重量%の範囲であり、さらに該
溶剤の含有量は、製造時の水性コーティング組成物の樹
脂固形分に対し、20〜50重量%、さらに塗装時の水
性コーティング組成物の樹脂固形分に対し、10〜20
重量%の範囲に調節されていることが好ましい。
【0070】本発明において用いることができる上記添
加剤としては、例えば、消泡剤、レベリング剤、はじき
防止剤、グロス向上剤、沈降防止剤、湿潤剤(界面活性
剤)、潤滑剤、防腐剤、防塵剤等を挙げることができ
る。
【0071】本発明の水性コーティング組成物は、常法
により製造することができ、本発明の上記各成分の混合
には、塗料製造に慣用されているペイントシェイカー、
ディスパー、ボールミル、サンドグラインドミル、ニー
ダー、ディゾルバー等の装置を用い、溶媒として水を使
用して粘度調整して行うことができる。この際、エマル
ジョンを破壊しない範囲で親水性の有機溶媒を水と併用
することができる。
【0072】水性コーティング組成物へのコロイド化粒
子の添加は、コーティング組成物の製造過程(前添加)
又は完成されたコーティング組成物(後添加)に対して
行われる。上記水性コーティング組成物中へのコロイド
化粒子の添加は、上記ペイントシェイカー、ディスパ
ー、ボールミル、サンドグラインドミル、ニーダー、デ
ィゾルバー等の分散混合装置を用いて行われる。
【0073】本発明の水性コーティング組成物を、鋼板
や亜鉛メッキ鋼板の塗装下地としてのコーティングや、
無処理やクロメート処理を施した亜鉛メッキ鋼板の潤滑
防錆コーティングとして用いるときは、被塗物に塗布し
た後、60〜180℃で7〜60秒間強制乾燥する。乾
燥温度が60℃未満であるとコーティング膜が充分硬化
せず耐食性が不充分となり、180℃を超えると乾燥し
すぎてコーティング膜が割れたり剥がれやすくなり、ま
た、上塗りの付着性が低下する。乾燥時間が7秒未満で
あると乾燥が不充分であり、コーティング膜の耐食性が
悪くなり、60秒を超えると過度の乾燥状態となり、ま
た、製造工程上不都合でもある。好ましくは80〜15
0℃、7〜22秒であり、より好ましくは110〜13
0℃、8〜15秒である。
【0074】乾燥温度が60〜110℃、1分以下(例
7〜22秒)のような、いわゆる強制乾燥で造膜する場
合には、酸性触媒を成分として添加して使用する。乾燥
温度が60℃未満の場合は、短時間では水が揮発しにく
く、べたつきが残る。
【0075】乾燥温度を、焼き付け条件とする場合に
は、120〜180℃で行う。焼き付け温度が120℃
未満であると、メラミン樹脂の硬化が充分でなく耐食性
がわるくなり、180℃を超えるとオーバーベークとな
り加工性が低下したり、上塗りの密着性低下が起こりや
すい。好ましくは140〜150℃である。乾燥温度が
120〜180℃のような焼き付けの場合には、酸性触
媒を用いなくても充分硬化できる。この条件であって
も、酸性触媒を用いることができ、更に強靱で密着性の
よいコーティング膜を得ることができる。
【0076】上記の強制乾燥した膜は、乾燥後48時間
放置するのが好ましい。放置期間中に、フェノール樹脂
の縮合が酸性触媒により更に進み、硬化度が向上し、特
にMEKラビング性、コインスクラッチ性が向上する。
そして、潤滑性、アルカリ脱脂剤に浸漬したときの耐変
色、膜劣化性、上塗り密着性が向上し、150℃で焼き
付けした場合と同等の性能を発揮する。上記放置は、塗
布後の工程待ちを利用して行うことができる。
【0077】本発明の水性防錆コーティング組成物を鋼
板の塗装下地処理として用いる場合の塗布方法として
は、組成物A、組成物B、組成物C又は組成物Dを、そ
の不揮発残分が10〜20%になるように水で希釈して
脱脂した鋼面に塗布することができる。上記組成物のp
Hは、7.0〜9.0が好ましい。その塗布方法は、デ
ィッピング、スプレー、シャワー、ロール等通常の方法
を用いることができる。乾燥膜厚は好ましくは0.5〜
10μmである。0.5μm未満では塗布の均一性が損
なわれピンホールが発生しそこから腐食が起こりやす
く、10μmを超えるとひずみが発生しやすく湿潤密着
性には寄与しない。より好ましくは2〜5μmである。
また、上記組成物に、インヒビタ(チバガイギー社製、
イルガコア)等の防錆剤;フィチン酸、没食子酸等のキ
レート剤等を添加してもよい。
【0078】本発明の水性防錆コーティング組成物を亜
鉛メッキ面の塗装下地処理として用いる場合には、組成
物A、組成物B又は組成物Cに上記シリカを添加した組
成物Dが用いられる。亜鉛メッキの塗装では、通常は防
錆顔料の入ったプライマが塗装下地処理の上に塗布され
るので、防錆顔料はこの下地塗布には必要ないが、特に
防錆力が欲しい場合に、防錆顔料を添加してもよい。
【0079】また、本発明の水性コーティング組成物を
カラートタン、家電用等の折曲げ加工が重視される分野
で使用する場合には、密着性向上、折曲げ加工時の剥離
防止の目的で、ワックスを添加した水性潤滑防錆コーテ
ィング組成物Eを用いてもよい。この塗布方法として
は、上記水性潤滑防錆コーティング組成物を適当な濃度
に希釈し、ロールコーター等により乾燥膜厚が0.5〜
3μmとなるように亜鉛メッキ面に塗布することができ
る。膜厚が0.5μm未満ではピンホールが発生し耐食
性、湿潤密着性が低下し、3μmを超えると折曲げ加工
時に膜がはがれて塗膜密着性を損なうので、好ましくな
い。より好ましくは1〜3μmである。通常、このコー
ティングを施されて後、折り曲げ加工や深しぼり加工が
施され、必要ならアルカリ脱脂が行なわれ、その後、種
々の塗装が施される。
【0080】本発明の自動車用潤滑防錆コーティング組
成物は、自動車用亜鉛メッキ鋼板に乾燥膜厚が0.5〜
3μmとなるように塗布し、乾燥させる。塗装方法は特
に限定されず、エアースプレー塗装、エアレス塗装、静
電塗装等の通常の塗装方法を用いることができる。更
に、折り曲げ、プレス、しぼり加工が行なわれて後、そ
の上に乾燥膜厚が15〜40μmになるようにカチオン
又はアニオン電着塗装し、さらに必要により、アルキド
樹脂、ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂系中塗り塗料
を乾燥膜厚が20〜60μmになるように塗装し、次い
で、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はふっ素樹脂系
等の自動車上塗り塗装を用いることができる。
【0081】本発明の水性コーティング組成物を潤滑防
錆コーティングや自動車用防錆コーティングに応用する
場合、形成される硬化被膜には、硬化膜のTgと伸び率
との重要な二つの特性がある。上記硬化膜のTgは、4
0℃以上である。硬化膜のTgが40℃未満であると潤
滑特性を表わす動摩擦係数(μd )が0.1以上とな
り、折り曲げ加工やプレスしぼり加工等の加工が円滑に
行なわれなくなる。好ましくは44℃以上であり、より
好ましくは50℃以上である。Tgが50℃を超えると
μd が飽和し、あまり低下しないが、この領域では、膜
の密着性を表すコインスクラッチ性が更によくなる。こ
の領域では、円筒浮きしぼり等の高度の加工がカジリ等
の害なく行うことができる。なお、動摩擦係数はバウデ
ンレーベン式動摩擦係数測定装置によって測定される。
ポリウレタンエマルジョン以外の、例えば、エチレンア
クリルエマルジョンでは、Tgが40℃以下となり、μ
d が大きく、潤滑性が悪い。
【0082】硬化膜のTgのみでは加工潤滑性を説明で
きないことがある。例えば、ある種のアクリルエマルジ
ョンでは、Tgが高いにもかかわらず造膜したときの伸
びがなく、加工時にパウダリングが発生することから、
硬化膜の伸び率も重要な特性である。上記硬化膜の伸び
率は、1.5〜6%である。1.5%未満であると伸び
が少なく、円筒深しぼり試験でパウダリングが発生す
る。6%を超えるとパウダリング性向上効果は飽和して
くるが、素地密着性が低下し、膜の剥離が発生する傾向
があり、加工性が低下する。好ましくは2〜6%であ
り、より好ましくは3〜6%である。
【0083】深しぼり等の高度の加工に必要な硬化膜の
要件としては、膜Tgが40℃以上、好ましくは50℃
以上であり、膜の伸び率が1.5%以上である。本発明
の水性潤滑防錆コーティングを、乾燥膜厚0.5〜3μ
mとなるように塗布し、酸性触媒存在下60〜110
℃、7〜22秒強制乾燥するか、酸性触媒なしで120
〜180℃、7〜22秒焼き付けするか、又は、酸性触
媒存在下120〜180℃、7〜22秒焼き付けするこ
とにより、上記要件を満たす膜を実現できる。
【0084】本発明の水性コーティング組成物によりコ
ーティングした金属素材(例えば亜鉛メッキ鋼板等)
に、必要により上記コーティング膜上に、さらに塗装を
行うことができる。塗装は、下塗り塗装(プライマーコ
ート)をしてから上塗り塗装してもよいし、単に上塗り
塗装(トップコート)を行ってもよい。
【0085】また、被塗物となる金属板には、素材を防
錆し、かつ塗料の密着性を改善するために予め塗装前に
前処理を施しておくこともでき、例えば、酸、アルカリ
洗浄等の脱脂処理等を挙げることができる。
【0086】耐食性を良くするためには、形成されたコ
ーティング膜上に、下塗り塗装(プライマーコート)を
することが望ましい。上記プライマーコートは、腐食作
用から素材を保護し、金属板表面、表面処理膜及び上塗
り塗膜に密着性を付与する機能を有する。下塗り塗膜の
厚さは、通常、乾燥時において3〜10μmである。焼
付けは、使用した塗料樹脂に最適な温度と時間の条件下
で短時間内に行う。
【0087】上塗り塗装(トップコート)における好ま
しい塗膜は、10〜50μm(乾燥時)である。この塗
膜が10μm未満では、着色力が乏しいために下塗り素
材を隠蔽することができず、また50μmを超える場合
には、高温短時間内の焼付けにおいてピンホール発生の
危険性を生じるので、好ましくない。焼付けの温度及び
時間は、使用する上塗り塗料に応じて最適な条件が設定
される。上塗り後、折り曲げ加工やプレス加工、しぼり
加工が行なわれる。
【0088】なお、本発明の水性コーティング組成物に
よって形成された塗膜と組み合わせる塗装系としては、
上記に限定されず、さらに樹脂のタイプとしても有機溶
剤型、水型、粉体型のいずれであってもよい。
【0089】本発明の水性コーティング組成物は、自動
車;冷蔵庫、洗濯機等の家電製品;玄関ドア等の建材等
の塗装に好適に使用することができる。
【0090】更に、本発明の潤滑防錆コーティング組成
物は、種々の金属材料における種々の腐食形態に対応し
て使用することができる。例えば、鋼板においては、シ
ート状の鋼板を脱脂した後、本発明の潤滑防錆コーティ
ング組成物をコーティングし、所望の形態に潤滑加工し
た後、必要な塗装を施して仕上げた場合、耐湿性や耐水
性(ブリスターや湿潤密着劣化)、塩水噴霧でのカット
からの塗膜剥離、錆の進行抑制等の目的に好適に使用す
ることができる。
【0091】また、他の用途としては、従来、シート状
の脱脂鋼板をりん酸亜鉛化成処理又は塗布型クロメート
処理剤を施した上にプライマーや上塗りをかけて仕上げ
るプレコートメタル製造工程において、化成処理の代替
防錆法として使用することができる。すなわち、潤滑性
と塗装下地耐食機能を持たせ、りん酸亜鉛スラッジ、化
成処理スペース、六価クロムの毒性等の化成処理の様々
な不利益を回避するために本発明の潤滑防錆コーティン
グ組成物を施すことができる。
【0092】金属材料の別の用途、すなわち、シート状
の鋼板を潤滑油等の存在下で潤滑加工し、脱脂した後、
りん酸処理を施して塗装仕上げするポストコートの場合
におけるりん酸塩処理の代替防錆処理としても使用可能
である。この場合、りん酸塩処理で副生するスラッジが
なくなり、化成処理スペースも軽減可能であるので有用
である。これらの金属材料は、一般工業分野の鋼製家具
その他の金属製品に使用される。
【0093】本発明の潤滑防錆コーティング組成物を使
用する対象となる鋼材には、従来の防錆処理が施されて
いてもよい。例えば、スチール製造メーカー等で製品を
結束する場合に使用する鋼製帯や荷造り用の帯はフープ
と呼ばれているが、この材料は酸化鉄等の被膜を施され
ているものが多い。この上に本発明の潤滑防錆コーティ
ング組成物をコーティングして処理を施し乾燥させた上
でフープ製品として仕上げることができる。この場合は
製品として巻き取る場合の滑り性が良好となり、巻き取
り過程での摩擦による製品のきずが防止されるととも
に、巻き取り生産性がよくなり、また、製品自体の耐食
性が更に向上することとなる。この場合には、上塗り塗
装は通常施さず、塗装下地の機能は付与しなくてもよ
い。
【0094】本発明の潤滑防錆コーティング組成物は、
鋼板以外のメッキ製品又はそれ以外の表面処理鋼板、ス
テンレススチールにも使用することができる。このよう
な用途としては、例えば、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛ベース
合金メッキ鋼板(例えば、亜鉛/アルミニウム、亜鉛/
ニッケル、亜鉛/すず、亜鉛/鉛、亜鉛/鉄、亜鉛/コ
バルト等の合金)、鉛ベース合金メッキ(例えば、ター
ンシートと呼ばれている鉛メッキ鋼板等)、アルミニウ
ム又はアルミニウム合金メッキ鋼板、すずメッキ鋼板、
銅メッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板等への使用を挙げる
ことができ、これらのメッキ鋼板の加工潤滑性、加工後
の耐食性付与、加工後の塗装下地付与に効果を発揮する
ことができる。なお、メッキ手法ではないが、気相での
金属コーティング、ティンフリースティール、その他の
表面処理鋼板(例えば、反応型クロメート処理、塗布型
クロメート処理、化成処理等)にも適用可能である。
【0095】亜鉛メッキ又は亜鉛合金メッキ、アルミニ
ウム合金メッキは、通常プレコートメタルとして、屋根
材、外装材、家電製品の筐体等のいわゆるカラー鋼板の
PCM分野、その他の一般工業分野の金属製品等に広く
適用されている。このような分野においては、使用環境
によって様々な腐食が生じる。例えば、屋根材や外装材
では、きず部分からの塗膜剥離や白錆、端面の塗膜剥離
が一般的にみられる。本発明の潤滑防錆コーティング組
成物は、従来使用されてきた化成処理に代わって使用す
ることができる。すなわち、本発明の潤滑防錆コーティ
ング組成物を、潤滑性と塗装下地耐食機能を持たせ、り
ん酸亜鉛スラッジ、化成処理スペース、六価クロムの毒
性等の化成処理の様々な不利益を回避する目的で施すこ
とができる。本発明の潤滑防錆コーティング組成物は、
シート状のメッキ製品に施され、通常、下塗り、上塗り
をかけて仕上げられる。この場合、加工潤滑性よりも、
塗装下地としての機能が発揮され、塗膜剥離の抑制に効
果を発揮することができる。
【0096】また、炊飯器等の家電製品、ストーブの筐
体、ストーブの燃料タンク、米びつ、容器等の分野にお
いては、上記の機能に加えて、器物加工物の潤滑防錆コ
ーティングとして有用である。すなわち、これらの分野
においては、高速深絞り加工等の高度の加工が行なわれ
るので、この工程での加工潤滑性に機能を発揮すること
ができ、更に、従来潤滑加工後の脱脂に有害な溶剤を使
用していた工程をなくするために好適に使用することが
できる。
【0097】自動車車体、自動車部品等においては、主
として亜鉛ニッケル系の合金メッキが用いられる。ま
た、鉛ベースの合金メッキ、アルミニウムメッキ、アル
ミニウム合金メッキ、すずメッキ等は特別の用途に使用
されることが多い。すなわち、鉛系メッキは、その化学
的不活性な性質を利用してターンシートとして燃料タン
ク等に使用される。この分野においては、燃料タンクの
加工に適した潤滑性と耐食性を備えたコーティング膜を
得る目的で本発明の潤滑防錆コーティング組成物を使用
することができる。また、アルミニウムメッキは耐熱性
がよいことから耐熱部品に使用されている。この場合、
複雑な形状物が多く、高度の加工になるので、本発明の
潤滑防錆コーティング組成物の使用が好適である。ま
た、すずメッキやティンフリースチール等は缶材等に用
いられているが、この場合も、成形加工と加工後の耐食
性が必要であり、本発明の潤滑防錆コーティング組成物
の使用が好適である。
【0098】本発明の潤滑防錆コーティング組成物は、
その特徴とするところが潤滑性及び密着性とこれから由
来する耐食性であるので、上記の様々な金属の加工と防
食に好適に適用することができる。
【0099】
【作用】本発明の水性防錆コーティング組成物におい
て、その必須成分を、自己乳化型ポリウレタン樹脂エマ
ルジョン、水性フェノール樹脂及び酸性触媒とすること
により、特願平5−347701号の願書に添付した明
細書、特願平6−45050号の願書に添付した明細書
に具体的に開示されている、酸価が25〜100、水酸
基価が35〜200、SP値が10.0〜11.0の水
溶性アルキド樹脂に比べて硬化膜のTgを高くすること
ができ、結果として強靱で密着性のよい防錆コーティン
グ膜が得られ、高度の加工潤滑性、耐食性を実現でき
る。また、特願平6−210460号の願書に添付した
明細書に具体的に開示されている(a)りん酸基による
酸価が5〜35であるビスフェノール型エポキシ樹脂の
りん酸変性物100重量部、並びに、(b)オキサゾリ
ン化合物、フェノール樹脂、及び、硬化開始温度が14
0℃以以下であるメラミン樹脂からなる群より選択され
た少なくとも1種10〜500重量部を含有してなる組
成物に、(c)ベンゼンスルホン酸誘導体、そのアミン
塩及びそのアンモニウム塩、ナフタレンスルホン酸誘導
体、そのアミン塩及びそのアンモニウム塩、酸性りん酸
アミン塩及びアンモニウム塩、並びに、ホスホン酸誘導
体、そのアミン塩及びそのアンモニウム塩、からなる群
より選択された少なくとも1種からなる酸性触媒を前記
組成物全体の0.1〜5重量%含有してなる水性コーテ
ィング組成物に比べて、より低温、短時間である60〜
110℃で7〜22秒の、いわゆる強制乾燥(低温短時
間)の条件で造膜でき、充分な膜強度及び密着性が得ら
れるので、製造ラインでのライン速度の高速化に対応で
き、かつ、加工性を充分確保できるものとなった。
【0100】特に、水性フェノール樹脂を特定量添加す
ることによって、フェノール性水酸基により金属表面へ
の密着性がよくなり、ビスフェノール型エポキシ樹脂を
用いなくてもコーティング膜の耐食性に優れ、更に、フ
ェノール樹脂の縮合反応により、60〜110℃、7〜
22秒という強制乾燥(低温短時間)で造膜でき、耐食
性、加工潤滑性が発揮される。更にまた、フェノール樹
脂の自己縮合反応により、焼き付け温度が120〜18
0℃の場合には、酸性触媒が不要となり、触媒残留によ
る耐水性の低下が抑制される。
【0101】ポリウレタン樹脂エマルジョンの高Tgと
高分子量のポリウレタン樹脂により、強靱なコーティン
グ膜が得られる。このコーティング膜は、膜Tgが40
℃以上、伸び率3%以上であって、この条件を満たせば
高度の加工潤滑性が得られる。また、オーバーベークし
たときの上塗り塗料の密着性がよくなり、コーティング
の焼き付け温度の適用幅が広くなる。
【0102】
【実施例】以下に参考例、実施例を掲げて本発明を更に
詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定されるも
のではない。
【0103】参考例1 石炭酸94部、37%ホルマリン405部及び水酸化ナ
トリウム水溶液211部を混合し、50℃で2時間反応
させた。塩酸で中和後、酢酸エチル/n−ブタノール=
1/1の混合溶剤で抽出して、固形分80%のレゾール
型フェノール樹脂溶液を得た。
【0104】参考例2 攪拌機、温度制御装置、デカンターを備えた容器に次の
組成の原料を仕込み、攪拌しながら加熱した。 大豆脂肪酸 34重量部 トリメチロールプロパン 34重量部 無水トリメリット酸 9重量部 イソフタル酸 25重量部 キシレン 1重量部 ジブチル錫オキサイド 0.5重量部 反応進行に伴って生成する水をキシレンと共沸させて除
去し、酸価39、水酸基価140になるまで加熱を継続
し、反応を終了させた。得られた樹脂を不揮発分70重
量%となるようにブチルセロソルブで希釈してアルキド
樹脂ワニスを得た。この樹脂ワニスをトリエチルアミン
で理論上100%中和し、脱イオン水にて不揮発分40
重量%になるように調整して水溶性アルキド樹脂ワニス
を得た。このものの実質酸価は、33であった。
【0105】実施例1〜4及び比較例1〜3 表1に示した配合比で組成物を混合し、水性コーティン
グ組成物を得た。表1中、ハイドランHW935は、大
日本インキ化学工業社製、ポリカーボネート系ポリウレ
タン樹脂エマルジョン、アルキド樹脂は、参考例2で得
られたもの、XU−8096.07は、ダウケミカルジ
ャパン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のりん酸
変性物(酸価=10、重量平均分子量=約10000、
ジメチルエタノールアミン(DMEA)中和100
%)、ショウノールN−2は、昭和高分子社製、レゾー
ル型水性フェノール樹脂(分子量180〜200)、サ
イメル328は、三井サイテック社製、イミノ系メラミ
ン樹脂(硬化開始温度108℃)、キャタリスト405
0は、三井サイテック社製、スルホン酸塩系酸性触媒を
表す。上記のように得られた実施例1〜4及び比較例1
〜3の水性コーティング組成物を、不揮発残分20%に
なるように水で希釈し、耐食性試験以外は塗布型クロメ
ート処理を施した電気亜鉛メッキ鋼板にバーコーターで
乾燥膜厚2〜3μmとなるように塗布し、表1に示した
条件で乾燥又は焼き付けし、試験片とした。表1中、乾
燥又は焼き付け条件は、Lは、80℃、10秒、Mは、
130℃、15秒、Hは、150℃、8秒を表す。
【0106】評価方法 1.MEKラビングテスト 上記試験片に対して、メチルエチルケトン(以下「ME
K」という)に浸したガーゼを荷重300gで圧着しな
がら塗布面にこすりつけ、膜が破壊されるまでの回数を
測定した。評価基準は以下のものとした。結果を表1に
示した。 ◎:20回以上 ○:10〜19回 △:5〜9回 △×:3〜4回 ×:1〜2回
【0107】2.コインスクラッチテスト 上記試験片に対して、10円硬貨により力をいれてキズ
をつけ、キズのつきやすさを評価した。評価基準は以下
のものとした。結果を表1に示した。 ◎:キズが全くつかない ○:キズが僅かにつく △:○と×との中間 ×:膜が完全に剥離する
【0108】3.耐食性 上記で得られた水希釈組成物(不揮発残分20%)を溶
剤脱脂した鋼板(JIS G 3141 SPCC−S
D)にバーコーターにて乾燥膜厚2〜3μmとなるよう
に塗布し、到達板温150℃で15秒間焼き付け、試験
片とした。上記試験片に対し、塩水噴霧試験を行い、発
錆状態が図1(ASTM D610−68による錆面積
判定図)において、0.3%のものになるまでの時間を
測定した。結果を表1に示した。
【0109】実施例5〜8及び比較例4、5塗装下地用防錆コーティング組成物への応用のための処
表2に示した配合比で組成物を混合し、固形分20%と
なるように希釈し、pHを7とし、塗装下地用水性防錆
コーティング組成物を得た。溶融亜鉛メッキ鋼板スキン
パスノンスパングル剤(クロメート処理なし)に上記組
成物を乾燥膜厚2〜3μmとなるように塗布し下地処理
したものに、プライマーとしてスーパーラックDIF−
P01(日本ペイント社製)プライマーを塗布し、トッ
プコートとしてニッペスーパーコート300HQ(日本
ペイント社製)を塗布し、塗装亜鉛メッキ鋼板を得た
(実施例7、8及び比較例5)。更に、上記組成物をS
Dダル鋼板に塗布して下地処理したものに、プライマー
としてスーパーラックDIF−P01プライマーを塗布
し、トップコートとしてニッペスーパーコート300H
Qを塗布し、塗装鋼板を得た(実施例5、6及び比較例
4)。
【0110】表2中、乾燥、焼き付け条件は、Lは、8
0℃、10秒、Mは、130℃、15秒、Hは、150
℃、8秒を表す。また、表2中、ネオタンUE1135
は、東亜合成化学工業社製、ポリカーボネート系ポリウ
レタン樹脂エマルジョン、アルキド樹脂は、参考例2で
得られたもの、フェノール樹脂は、参考例1で得られた
レゾール型のもの、サイメル327は、三井サイテック
社製、イミノ系メラミン樹脂(硬化開始温度108
℃)、アデライトAT20Nは、旭電化工業社製、コロ
イダルシリカ、LFボウセイM−PSNは、菊地色素社
製、モリブデン酸系防錆顔料、イルガコア252は、チ
バガイギー社製、防錆剤を表す。
【0111】評価方法 1.上塗り耐水性 上記で得られた塗装鋼板について、40℃の水道水に2
40時間浸せきした後、図2に示すような塗膜ブリスタ
ー(ふくれ)を評価した。図2中、No.2、4、6、
8は、ふくれの大きさを表し、F、M、MD、Dは、そ
れぞれのブリスターの大きさに応じてその密度を表す。
評価基準は以下のものとした。結果を表2に示した。 ○:ブリスターなし △:ブリスターF(ASTM密度基準) ×:ブリスターM(ASTM密度基準) ××:ブリスターMD,D(ASTM密度基準)
【0112】2.上塗り耐食性 JIS 2371に従い塩水噴霧試験を、実施例5、6
及び比較例4については480時間、実施例7、8及び
比較例5については1000時間行って塗布面の錆を観
察した。亜鉛メッキ鋼板(実施例7、8及び比較例5)
については、平面部耐食性を行った。評価基準は以下の
ものとした。結果を表2に示した。 ◎:異常なし ○:若干の白錆あり △:塗布面の1/2に白錆あり ×:全面に白錆あり 鋼板(実施例5、6及び比較例4)については、上記試
験片を脱脂し、鋭利なナイフ(カッターナイフ)で対角
線上に素地まで達するキズをつけ、塩水噴霧試験を10
0時間供した後、表面の水分を拭き取り乾燥し、粘着テ
ープをカットに沿って圧着し、急速に引き剥がした後の
剥離した塗膜の幅(mm)を測定した。評価基準は以下
のものとした。結果を表2に示した。 ○:剥離2mm未満 △:剥離2〜5mm ×:剥離5mm超過
【0113】実施例9〜18及び比較例6〜10水性潤滑防錆コーティング組成物への応用のための処方 表3及び表4に示した配合比で組成物を混合し、固形分
20%となるように希釈し、pHを8とし、水性潤滑防
錆コーティング組成物を得た。上記組成物を電気亜鉛メ
ッキ鋼板(塗布型クロメート処理あり)に乾燥膜厚が1
〜2μmとなるように塗布し処理したものに、さらにオ
ルガセレクト100ホワイト(メラミンアルキド水性型
塗料、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が25〜30μm
となるように塗布し、塗装鋼板を得た。表3及び表4
中、ハイドランHW950は、大日本インキ化学工業社
製、ポリエーテル型ポリウレタン樹脂エマルジョン、ス
ーパーフレックスF8123Dは、第一工業製薬社製、
ポリエステル型ポリウレタン樹脂エマルジョン、ハイド
ランHW960は、大日本インキ化学工業社製、ポリエ
ステル型ポリウレタン樹脂エマルジョン、スーパーフレ
ックスF8124Dは、第一工業製薬社製、ポリカーボ
ネート型ポリウレタン樹脂エマルジョン、アルキド樹脂
は、参考例2で得られたアルキド樹脂(酸価=39、水
酸基価=140、SP値=10.4)、フェノール樹脂
は、参考例1で得られた水性レゾール型フェノール樹
脂、アデライトAT30Aは、旭電化工業社製、コロイ
ダルシリカ、ケミパールWF640は、三井石油化学工
業社製、ポリエチレンワックス、プリマコール598の
乳化物はダウケミカル社製のエチレン−アクリル樹脂を
乳化したもの、EM1100は、日本ペイント社製、ポ
リアクリルエマルジョンを表す。
【0114】上記のようにして得られた実施例9〜18
及び比較例6〜10の水性潤滑防錆コーティング組成物
を、不揮発分20%になるように水で希釈し、バーコー
ターで乾燥膜厚2μmになるように鋼板に塗布し、表3
及び表4に示した条件で焼き付け乾燥させた。表3及び
表4中、焼き付け条件HHは、180℃、15秒、焼き
付け条件Hは、150℃、8秒、焼き付け条件Mは、1
40℃、10秒、焼き付け条件Lは、80℃、10秒を
表す。鋼板は、0.5mmの電気亜鉛メッキ鋼板を使用
し、NRC300(日本ペイント社製)でクロメート処
理をした。Crの付着量は、50mg/m2 であった。
【0115】評価方法 1.MEKラビングテスト MEKを含ませたガーゼを300gの荷重をかけて塗布
面に押しつけ、10往復摩擦をした後、塗膜の剥離状況
を観察した。評価基準は以下のものとした。結果を表3
及び表4に示した。 ◎:異常なし ○:わずかに痕跡あり △:1/2の鋼板が露出 ×:塗膜が溶解し鋼板が露出
【0116】2.円筒絞り試験によるパウダリング性 樹脂塗装面をダイス側にして加工をし、パウダリング
は、絞り部をテープ剥離し、剥離粉の程度から評価し
た。このときのプレス条件は、下記によった。 しわ抑え圧:3トン ポンチ径 :50mmφ ブランク径:95mmφ 絞り比 :1.92 絞り速度 :300mm/sec
【0117】パウダリングの評価は、下記の評価基準に
従った。結果を表3及び表4に示した。 ◎:剥離粉なし ○:剥離粉若干あり △:○と×の中間 ×:剥離粉が多量にあり
【0118】3.平面部耐食性 JIS 2371に従い塩水噴霧試験を1000時間行
って塗布面の錆を観察した。評価基準は以下のものとし
た。結果を表3及び表4に示した。 ◎:異常なし ○:若干の白錆あり △:塗布面の1/2に白錆あり ×:全面に白錆あり
【0119】4.上塗り適性 塗装鋼板の焼き付けを、到達板温180℃×20秒に
し、オルガセレクト120ホワイト(日本ペイント社
製)をスプレー塗装し、130℃で15分間焼き付けを
行った。塗装1日後、2mm巾のゴバン目100個を塗
膜に入れ、エリクセン試験機で3mm塗装板の裏側から
押し出し、市販の粘着テープで剥離し、密着性を、(テ
ープ剥離した後に残留したマス目の数)/100で表示
した。上塗の乾燥膜厚は、30±3μmであった。結果
を表3及び表4に示した。
【0120】5.膜Tg 膜Tgは、微小定荷重熱膨張測定装置(セイコーインス
トルメント社製SSC5000TMA)による段階降温
法により、最大設定温度80℃、フルスケール200μ
m、温度降下率5℃/13分にて変位の変曲点を読み取
ることにより測定した。結果を表3及び表4に示した。
【0121】6.動摩擦係数 動摩擦係数は、バウデンレーベン式動摩擦係数測定装置
によって測定した。結果を表3及び表4に示した。膜T
gが40℃以上で動摩擦係数が0.1以下となることが
判った。
【0122】7.コインスクラッチテスト 上記試験片に対して、10円硬貨に荷重(kg)をかけ
てキズをつけ、キズがつきはじめる荷重を測定した。評
価基準は以下のものとした。結果を表3及び表4に示し
た。膜Tgが50℃以上でこの荷重が5kg以上とな
り、キズが入りにくく加工潤滑性が良好となることが判
った。 ◎:荷重6〜7kgでキズがつく ○:荷重4〜5kgでキズがつく △:荷重2〜3kgでキズがつく ×:荷重1kgでキズがつく
【0123】8.膜伸び率 膜伸び率は、実施例11、14、18及び比較例6、
9、10の組成物をポリプロピレン板に塗布、焼き付け
して厚さ30μmに造膜したものを、JIS K712
7に準拠し、20℃、相対湿度70%において24時間
放置した後、引っ張り速度50mm/分で測定した。結
果を表3及び表4に示した。膜伸び率が3%以上になる
とパウダリング性が良好になることが判った。
【0124】実施例19自動車用水性潤滑防錆コーティング組成物への応用のた
めの処方 参考例1のフェノール樹脂固形分20重量部、イミノメ
チロール系メラミン(サイメル328、三井サイテック
社製)固形分10重量部、りん酸二水素アンモニウム固
形分2重量部、ハイドランHW935(大日本インキ化
学工業社製)固形分100重量部、アエロジルMOX1
70(日本アエロジル社製)をほう酸にてコロイダル化
したもの固形分15重量部、ケミパールWF640(三
井石油化学工業社製)固形分5重量部、メラミンシアヌ
レートMC−420(日産化学工業社製)固形分5重量
部を順次加えて、ディスパーにより均一に混合した。こ
れを固形分が20%となるように希釈し、pHを6.5
とし、自動車水性潤滑防錆コーティング組成物を得た。
上記組成物を亜鉛−ニッケル系電気メッキ鋼板(クロメ
ート処理有り)に乾燥膜厚1〜2μmとなるように塗布
し処理したものに、さらにカチオン電着塗料パワートッ
プU2550(日本ペイント社製)を乾燥膜厚が20〜
25μmとなるように塗布し、塗装鋼板を得た。
【0125】評価方法 1.MEKラビング 実施例9における方法と同様にして評価した。結果を表
5に示した。 2.円筒絞り試験によるパウダリング性 実施例9における方法と同様にして評価した。結果を表
5に示した。 3.上塗り適性 実施例9における方法と同様にして評価した。結果を表
5に示した。
【0126】4.上塗り耐食性 平面部耐食性を、JIS 2371に従い塩水噴霧試験
を表5に示した時間行って塗布面の錆を観察した。評価
基準は以下のものとした。結果を表5に示した。 ◎:異常なし ○:若干の白錆あり △:塗布面の1/2に白錆あり ×:全面に白錆あり
【0127】実施例から、膜Tgが40℃以上、好まし
くは50℃以上であり、かつ、膜伸び率が3%以上であ
るものが、動摩擦係数が小さく、また、スクラッチ性、
パウダリング性もよく、高度の加工潤滑性を有している
ことが判った。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
【表5】
【0133】
【発明の効果】本発明の水性コーティング組成物は、上
記組成を有するので、塗装下地用防錆コーティング組成
物、潤滑防錆コーティング組成物又は自動車用潤滑防錆
コーティング組成物として用いた場合、低温、短時間の
強制乾燥条件下でも高度の加工潤滑性、耐食性を有する
強靱で密着性のよい防錆コーティング膜を得ることがで
き、塗装ラインスピードの高速化に対応可能な水性コー
ティング組成物を提供することができる。また、高温の
焼き付け条件下では、酸性触媒が不要であるので、耐水
性の低下が抑制され、高度の加工性を有する塗装鋼板を
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ASTM、D610−68による表面錆発生状
態の評価の図。
【図2】ブリスター評価の図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09D 5/08 PQE 125/04 PFB 161/06 PHF PHG 161/28 PHJ PHK // C08G 18/44 NDW

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリウレタン樹脂エマルジョン()1
    00重量部、及び、水性フェノール樹脂()5〜10
    0重量部を含有してなることを特徴とする水性コーティ
    ング組成物。
  2. 【請求項2】 ポリウレタン樹脂エマルジョンが、自己
    乳化型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂エマルジョ
    ンである請求項1記載の水性コーティング組成物。
  3. 【請求項3】 水性フェノール樹脂が、水性レゾール型
    フェノール樹脂であり、水性コーティング組成物のpH
    が、7.0〜10.0である請求項1又は2記載の水性
    コーティング組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1、2又は3記載の水性コーティ
    ング組成物に、更に、オキサゾリン化合物及び硬化開始
    温度が140℃以下であるメラミン樹脂からなる群より
    選択された少なくとも1種()を、水性フェノール樹
    脂()との合計量が10〜200重量部となる配合量
    で含有してなることを特徴とする水性コーティング組成
    物。
  5. 【請求項5】 オキサゾリン化合物が、ガラス転移温度
    が40℃以上であり、スチレン系重合体又はスチレン−
    アクリル系共重合体を含有するものである請求項4記載
    の水性コーティング組成物。
  6. 【請求項6】 請求項4又は5記載の水性コーティング
    組成物100重量部に、更に、ベンゼンスルホン酸誘導
    体、そのアミン塩及びそのアンモニウム塩、ナフタレン
    スルホン酸誘導体、そのアミン塩及びそのアンモニウム
    塩、酸性りん酸アミン塩及びアンモニウム塩、並びに、
    ホスホン酸誘導体、そのアミン塩及びそのアンモニウム
    塩からなる群より選択された少なくとも1種からなる酸
    性触媒()0.5〜5重量部を含有してなることを特
    徴とする水性コーティング組成物。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の水性コーティング組成物
    100重量部に、更に、防錆顔料及び微粒子状シリカの
    うち少なくとも1種()1〜40重量部を含有してな
    ることを特徴とする水性防錆コーティング組成物。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の水性防錆コーティング組
    成物100重量部に、更に、ワックス()3〜15重
    量部を含有してなることを特徴とする水性潤滑防錆コー
    ティング組成物。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の水性潤滑防錆コーティン
    グ組成物100重量部に、更に、メラミンシアヌレート
    化合物()0.05〜25重量部を含有してなること
    を特徴とする自動車用水性潤滑防錆コーティング組成
    物。
  10. 【請求項10】 請求項1、2、3、4、5若しくは6
    記載の水性コーティング組成物、請求項7記載の水性防
    錆コーティング組成物、又は、請求項8若しくは9記載
    の水性潤滑防錆コーティング組成物を、被塗物に塗布
    し、60〜180℃で7〜60秒乾燥することを特徴と
    する塗膜形成方法。
  11. 【請求項11】 乾燥温度が、120〜180℃である
    請求項10記載の塗膜形成方法。
  12. 【請求項12】 被塗物が、鋼板又はクロメート処理若
    しくは無処理の亜鉛メッキ鋼板である請求項10又は1
    1記載の塗膜形成方法。
  13. 【請求項13】 請求項10、11又は12記載の塗膜
    形成方法により塗装され、ガラス転移温度が40℃以上
    であり、伸び率が2〜6%である塗膜が形成されてなる
    ことを特徴とする塗装物。
JP6282631A 1993-12-24 1994-10-20 水性コーティング組成物 Pending JPH08209065A (ja)

Priority Applications (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6282631A JPH08209065A (ja) 1994-10-20 1994-10-20 水性コーティング組成物
TW83111912A TW272206B (ja) 1993-12-24 1994-12-20
US08/360,024 US5578669A (en) 1993-12-24 1994-12-20 Water-based polyurethane coating composition
EP19940120440 EP0659855A3 (en) 1993-12-24 1994-12-22 Aqueous coating composition.
KR1019940036527A KR950018349A (ko) 1993-12-24 1994-12-24 수계 피복 조성물
US08/658,092 US5753740A (en) 1993-12-24 1996-06-04 Water-based coating composition
US08/659,674 US5853890A (en) 1993-12-24 1996-06-05 Water-based coating composition

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6282631A JPH08209065A (ja) 1994-10-20 1994-10-20 水性コーティング組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH08209065A true JPH08209065A (ja) 1996-08-13

Family

ID=17655037

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP6282631A Pending JPH08209065A (ja) 1993-12-24 1994-10-20 水性コーティング組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH08209065A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010520808A (ja) * 2007-03-09 2010-06-17 ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ポリマーを有する水性化合物を用いた金属表面の被覆方法、水性化合物、及び被覆基材の使用
JP2011503897A (ja) * 2007-11-13 2011-01-27 マクダーミッド インコーポレーテッド プリント回路基板におけるガルバニック腐食を制御するための組成物及び方法
JP2011057942A (ja) * 2009-09-14 2011-03-24 Kikusui Chemical Industries Co Ltd 水性防錆塗料
JP2012052163A (ja) * 2010-08-31 2012-03-15 Nisshin Steel Co Ltd 表面処理液、表面処理鋼板およびその製造方法
JP2013230613A (ja) * 2012-04-27 2013-11-14 Dainichiseika Color & Chem Mfg Co Ltd 遮熱フィルム、遮熱ガラス構造体及び窓ガラスの遮熱処理方法
KR102476307B1 (ko) * 2022-07-25 2022-12-12 구경환 우수한 강도 및 내부식성을 갖는 유체 저장탱크 및 이의 제조방법

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010520808A (ja) * 2007-03-09 2010-06-17 ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ポリマーを有する水性化合物を用いた金属表面の被覆方法、水性化合物、及び被覆基材の使用
JP2014087796A (ja) * 2007-03-09 2014-05-15 Chemetall Gmbh ポリマーを含有する水性組成物を用いた金属表面の被覆方法、水性組成物、及び被覆基材の使用
JP2011503897A (ja) * 2007-11-13 2011-01-27 マクダーミッド インコーポレーテッド プリント回路基板におけるガルバニック腐食を制御するための組成物及び方法
JP2011057942A (ja) * 2009-09-14 2011-03-24 Kikusui Chemical Industries Co Ltd 水性防錆塗料
JP2012052163A (ja) * 2010-08-31 2012-03-15 Nisshin Steel Co Ltd 表面処理液、表面処理鋼板およびその製造方法
JP2013230613A (ja) * 2012-04-27 2013-11-14 Dainichiseika Color & Chem Mfg Co Ltd 遮熱フィルム、遮熱ガラス構造体及び窓ガラスの遮熱処理方法
KR102476307B1 (ko) * 2022-07-25 2022-12-12 구경환 우수한 강도 및 내부식성을 갖는 유체 저장탱크 및 이의 제조방법

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5578669A (en) Water-based polyurethane coating composition
US6835459B2 (en) Conductive organic coatings
JP4500113B2 (ja) 高耐食性表面処理鋼板及びその製造方法
JP4940577B2 (ja) 高耐食性表面処理鋼板及びその製造方法
JP2009287079A (ja) 高耐食性表面処理鋼板
JP2788131B2 (ja) アルミニウムまたはアルミニウム合金表面への複合皮膜形成方法
JP4374034B2 (ja) 耐食性に優れる塗料組成物
JP4879792B2 (ja) 高耐食性表面処理鋼板
JP4832023B2 (ja) 耐熱性を備える表面処理鋼板
JPH0853644A (ja) 水性コーティング組成物
JP5161164B2 (ja) 耐食性に優れる塗料組成物
JP4534592B2 (ja) 溶接可能な自動車用高耐食性表面処理鋼板及びその製造方法
JPH08209065A (ja) 水性コーティング組成物
JP4319957B2 (ja) 耐食性に優れるプレコート金属板
KR0161782B1 (ko) 도료 조성물
JP4569101B2 (ja) プレコート鋼板用塗料組成物及びプレコート鋼板
JP3923418B2 (ja) ノンクロム処理亜鉛系めっき鋼板とその製造方法
JP2000160353A (ja) 耐食性に優れた有機被覆鋼板
JP2001271173A (ja) 亜鉛系メッキ鋼板用表面処理剤、及び亜鉛系メッキ鋼板
JPH07179813A (ja) 水性コーティング組成物
JP4246689B2 (ja) 耐食性に優れるプレコート金属板
JP3124266B2 (ja) 塗膜密着性と加工部の耐食性に優れ環境負荷の小さい塗装鋼板
JP5031420B2 (ja) 耐食性、導電性および耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板
JP4620949B2 (ja) 耐汚染性と耐溶剤性に優れるプレコート金属板
JP5441102B2 (ja) 高耐食性表面処理鋼板