JP4193984B2 - 金属製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、金属酸化物をCaにより還元してチタンなどの金属を生成する、酸化物直接還元法による金属製造装置に関する。
金属チタンの工業的な製法としてはクロール法が一般的である。クロール法では、還元工程−真空分離工程を経て金属チタンが製造される。還元工程では、反応容器内で四塩化チタン(TiCl4 )がMgにより還元され、スポンジ状の金属チタンが製造される。真空分離工程では、反応容器内のスポンジ状の金属チタンから未反応Mg及び副生物(MgCl2 )が除去される。
クロール法による金属チタンの製造では、高純度の製品が製造される。しかし、製造コストが嵩み、製品価格が非常に高くなる。即ち、高価で高品質なものしか製造できない制約がある。しかしながら、構造材などとしては、純度は多少低くても、安価なものが求められる。このような事情から、純度が比較的低い金属チタンを低コストで連続的に製造する方法の開発が企画されており、その一つとして考えられているのが酸化チタンをCaで還元する酸化物直接還元法である。
従来の代表的な酸化物直接還元法としては、特許文献1に記載されたオルソンの方法がある。この方法では、図8に示すように、CaCl2 の溶融塩中にTiO2 粉末を投入し、TiO2 をCaで還元し、Tiを生成する。同時に、CaCl2 の溶融塩中で、鉄陰極及び黒鉛陽極を用いてCaOの電気分解を行う。
米国特許第2845386号明細書
オルソンの方法では、TiO2 粉末の表面にCaOが副生する。そのCaOはCaCl2 中に溶解する性質があるため、TiO2 粉末の表面に生成したCaOはCaCl2 中に溶解していき、TiO2 粉末の表面ではTiO2 とCaの反応が継続的に進行する。加えて、CaOを含むCaCl2 の溶融塩が電気分解されることにより、化学式1に示す反応により、CaCl2 中からCaOが除去される。即ち、この方法では、TiO2 粉末の表面に生成したCaOがCaCl2 中に溶解すること、及びそのCaOがCaCl2 中から逐次除去され蓄積しないことにより、TiO2 からのTiの生成反応が継続する。
Figure 0004193984
しかしながら、オルソンの方法には次の問題がある。この方法では、CaOを含むCaCl2 の溶融塩が電気分解されることにより、CaCl2 中からCaOが除去される。即ち、この方法では、TiO2 粉末の表面に生成したCaOがCaCl2 中に溶解すること、及びそのCaOがCaCl2 中から除去され蓄積しないことにより、TiO2 からTiが継続的に生成される。しかし、その一方では、CaOの電解に伴って溶融塩中にCaC2 が生成する(化学式1参照)。CaC2 はTi中にTiCを混入させ、Tiの品質を劣化させる。
このように、オルソンの方法は能率的であるが、CaCl2 の溶融塩中に生成するCaC2 により製品品質が劣化する点で致命的である。このため、酸化物直接還元法は未だ実用化されていないのが現状である。
本発明の目的は、金属酸化物をCaで還元する酸化物直接還元法でありながら、生産性が高く、しかも炭素汚染を生じない金属製造装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の金属製造装置は、CaCl2 を主成分としCaを含有する溶融塩を保持し、当該溶融塩に投入される金属酸化物を溶融塩中のCaにより還元して金属を生成する還元室と、溶融塩中に生成した金属を溶融塩から分離する手段と、金属を分離除去された後の溶融塩を保持し、該溶融塩を塩素ガスにより塩化処理して、溶融塩中の副生CaOを塩化する塩化室と、塩化処理された後の溶融塩の一部又は全部を還元反応領域の外で保持し、該溶融塩を電気分解して、CaCl2 からCa及び塩素を生成する電解室と、該電解室から前記還元室へ生成Ca又は該Caを含有する溶融塩を移送する手段とを具備しており、前記溶融塩が前記還元室、塩化室及び電解室を循環すると共に、前記塩化室は前記還元室と合体した構成である。
本発明の金属製造装置は又、CaCl2 を主成分としCaを含有する溶融塩を保持し、当該溶融塩に投入される金属酸化物を溶融塩中のCaにより還元して金属を生成する還元室と、溶融塩中に生成した金属を溶融塩から分離する手段と、金属を分離除去された後の溶融塩を保持し、該溶融塩を塩素ガスにより塩化処理して、溶融塩中の副生CaOを塩化する塩化室と、塩化処理された後の溶融塩の一部又は全部を還元反応領域の外で保持し、該溶融塩を電気分解して、CaCl2 からCa及び塩素を生成する電解室と、該電解室から前記還元室へ生成Ca又は該Caを含有する溶融塩を移送する手段とを具備しており、前記溶融塩が前記還元室、塩化室及び電解室を循環すると共に、前記電解室は前記還元室と合体した構成である。
本発明の金属製造装置においてはCaCl 2 を主成分としCaを含有する溶融塩中に金属酸化物を投入し、該金属酸化物を溶融塩中のCaにより還元して金属を生成する還元工程と、溶融塩中に生成した金属を溶融塩から分離する分離工程と、金属を分離した後の溶融塩を塩素ガスにより塩化処理して、溶融塩中の副生CaOを塩化する塩化工程と、塩化処理した後の溶融塩の一部又は全部を電気分解して、CaCl 2 からCa及び塩素を生成し、生成されたCa又はCaを含有する溶融塩を前記還元工程へ送る電解工程とを経て金属が生成され、例えば金属チタンの場合は、化学式2に示す反応によりそのチタンが生成される。
Figure 0004193984
即ち、還元工程では、投入される酸化チタンが溶融塩中のCaで還元されることにより、金属チタンが連続的に生成し、CaOが副生する。したがって、還元後の溶融塩は、金属チタンの他に副生したCaOを含んだCaCl2 となる。
分離工程では、溶融塩中に生成した金属チタンを溶融塩から分離する。塩化工程では、金属チタンを分離した後の溶融塩を塩素ガスにより塩化処理することにより、副生したCaOからCaCl2 が生成される。これにより、溶融塩はCaOを殆ど含まず、実質的にCaCl2 のみとなる。
実質的にCaCl2 からなる塩化処理後の溶融塩は全部又は一部が電解工程へ送られ、その後Caが溶融塩中に再び生成される。その結果、Ca及びCaCl2 が還元工程に循環される。かくして、金属の連続製造が可能になる。
本発明の特徴的な構成の第1は、還元反応領域の外で電気分解を行うことである。第2は、電気分解の前に溶融塩中のCaOを塩化することである。第1及び第2の構成により、CaOの蓄積が防止されると共に、CaOの電解に起因するCaC2 の発生が防止され、生成金属の炭素汚染が防止される。
このように、第1及び第2の構成を組み合わせることにより、還元工程にCaOが蓄積せず、還元反応が継続されると共に、CaOに起因したCaC2 、TiCによる製品汚染が防止される。
また、本発明では、電気分解の陽極で塩素ガスが発生し、酸素ガスが発生しない有利さがある。即ち、この種の電気分解では通常、陽極材として黒鉛を使用するため、陽極で酸素ガスが発生すると、結果的に炭酸ガスが発生する(図8参照)。この電気分解で陰極側に発生するCaは還元力が強いために金属酸化物を還元するが、溶融塩中に炭酸ガスが存在する場合にはCaC2 を生成する。CaC2 が生成金属中に炭化金属を混入させ生成金属の品質を低下させることは前述したとおりである(化学式1参照)。これに対して本発明では、黒鉛陽極で塩素ガスが発生し、酸素ガス、即ち炭酸ガスが発生しない点からも生成金属の炭素汚染が防止されるし、黒鉛陽極が消耗しないために安定した電解条件が得られる。
溶融塩が循環する3つの工程(還元工程、塩化工程及び電解工程)では、CaCl2 の融点(780℃)以上に溶融塩温度を管理する必要がある。ちなみにCaの融点は848℃であるが、CaCl2 に溶融させれば848℃以下でも溶解が可能である。厳密な溶解度は温度によって変化するものの、CaはCaCl2 に1.5重量%程度溶解可能であり、CaOはCaCl2 に8重量%程度溶解可能である。
還元工程では、粉末状、顆粒状或いは塊状の酸化チタンが溶融塩中に投入される。還元後の溶融塩から分離された金属チタンも粉末状、顆粒状或いは塊状であり、溶融塩で濡れている。分離工程では、沈降分離、圧縮押し固めなどの物理的方法により金属チタンを分離するのが合理的である。金属チタンを沈降分離等によりある程度固めて取り出せば、後は通常の溶解法、例えばプラズマ溶解法等によりインゴットとすることができる。還元効率の点からは原料の酸化チタンは粉末が好ましい。
溶解工程では、ルツボは無底ルツボ、有底ルツボのいずれを使用してもよい。無底ルツボを使用することにより連続鋳造が可能になる。
酸化チタンの粒径が小さい場合など、生成金属チタンの粒径も小さくなるため、還元工程での沈降分離が効率的にできない場合もある。このような場合には、例えば有底容器で還元工程を行い、静置分離により生成チタンが高濃度に懸濁した溶融塩を容器底部から抜き出し、別の場所で圧縮などにより溶融塩から生成チタンを分離する方法が合理的である。残った溶融塩を塩化工程へ送ることにより、溶融塩の利用効率が上がる。
塩化工程では、溶融塩中に塩素ガスをバブリングさせればよい。これにより連続的かつ完全な塩化処理が可能である。
還元工程で生成した金属チタン中にCaOが残留すると、溶解時にCaO中の酸素がチタンに入り、チタン中の酸素濃度が高くなる。これを防止するためには、塩化処理後のCaOが含まれていないCaCl2 を分離工程付近に注入し、溶融塩から分離されたチタンをそのCaCl2 でリンスするリンス工程が有効である。前述したとおり、CaCl2 にはCaOが8重量%程度溶解するので、金属チタン中に残留したCaOは投入されたCaCl2 により溶解除去される。
電解工程では、陰極側でCaが発生し、陽極側で塩素ガスが発生する。電解槽内の陰極部から抜き出されるCa含有のCaCl2 中のCa濃度はできるだけ高い方が還元工程での還元能力が高まるので好ましい。電解槽でCa濃度が溶解度を超えた場合、超えた分のCaが固体として懸濁するか分離浮上するが、Caが懸濁した状態でCaCl2 を還元工程へ送ってもよい。還元工程でCaが消費されれば、懸濁していたCaがCaCl2 に溶解していき、還元に寄与するからである。
塩化工程から電解工程へはCaCl2 の全部を移送する必要はない。その一部を移送してもよい。その場合、残りのCaCl2 は電解工程を経ずに塩化工程から還元工程へ直送すればよい。塩化工程から電解工程へCaCl2 の一部を移送する意味は次のとおりである。
CaのCaCl2 への溶解度は小さい。このため、Caが溶解したCaCl2 を還元工程へ送る場合は、多量のCaCl2 をサイクルさせる必要が生じ、この点において製造効率が低下する。電解工程から還元工程へ溶融Caを単体で移送すれば、多量のCaCl2 をサイクルさせる必要はなくなる。還元工程では電解工程からのCaを液面に溜めておけば、Ca層からCaCl2 層へCaが溶解することでCa濃度を高めることができる。つまり、CaCl2 層において溶解CaによりTiO2 が還元されたとき、その消費Ca分はCa層からCaCl2 層への溶解という形で補給されることになるのである。
また、本発明の金属製造装置においては、塩化室が還元室と合体している。また電解室が還元室と合体している。
電解室は、陽極側と陰極側を分離する隔壁を設けた構成が好ましい。隔壁の目的は、陽極側で発生する塩素ガスが陽極側へ侵入しないようにすること、及び陰極側で発生するCaが陽極側へ戻らないようにすることである。このため、隔壁は多孔質のセラミック板(隔膜)を使用すればよい。一方、塩化工程から供給されるCaCl2 を陽極側へ連続的に投入しつつ、陰極側からCa含有のCaCl2 を連続的に抜き出すなどすれば、陽極側から陰極側への定常的な流れ(フロー)が形成される。そうすれば、隔壁に多孔質板を用いずとも、少量の溶融塩が流通できる隙間や孔を液面下に設けた緻密な板(スリット付き金属板など)を使用しても、多孔質板を使用した場合と同様にCa分離効果が得られる。
電解室内の陽極側で発生する塩素ガスは塩化工程に用いる。
塩化室を還元室と合体させたり、電解室を還元室と合体させるのは、装置を小型化するためである。ここで合体とは、特定の室の隣に別の室を続けて設置するという意味であり、両室間を仕切る隔壁はあってもなくてもよく、隔壁がない場合が後述する一体化である。還元室に合体させた電解室の陰極側は、両室間を仕切る隔壁を取り除いて還元室と一体化させることができる。また、この電解室は、筒状に形成された還元室の周囲に環状に形成することができ、より具体的には、陽極を兼ねる外筒と、陰極を兼ね、溶融塩の流通が可能で且つ内側が還元室とされた内筒との組み合わせにより構成できる。
本発明の金属製造装置は、金属酸化物をCaにより還元する酸化物直接還元法において、還元領域外で電気分解を行い、且つ電気分解に供する溶融塩からCaOを除去することにより、従来の酸化物直接還元法で問題となる生産性の低さ及び炭素による製品汚染を回避できる。したがって、酸化物還元法の実用化に大きな効果を発揮する。また、塩化室を還元室と合体させたり、電解室を還元室と合体させているので、装置が小型である。
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態の基礎となるチタン製造設備の構成図である。
本チタン製造設備は、塔状の還元室1と、その下部に連結された横向きの分離装置2とを備えている。還元室1は、CaCl2 を主成分とし且つCaを含む溶融塩を収容している。還元室1には、原料である酸化チタン(TiO2 )の粉末が継続的に投入される。これにより、溶融塩中に投入されたTiO2 が溶融塩中のCaにより還元され、金属チタン(Ti)が生成される。同時にCaOが副生する。生成Ti及び副生CaOは、共に沈降分離され、若干量のCaCl2 と共に分離装置2内に流入する。
ここで、還元室1内には酸化チタンと共に、CaCl2 を主成分とし且つCaを含む溶融塩が上方から追加供給される。一方、下部からは、分離装置2により溶融塩が側方へ抜き出される。これにより、還元室1内には溶融塩の下向き流が形成される。この溶融塩流により、前述した生成Ti、副生CaOの沈降分離が促進される。
分離装置2は、流入した生成Ti、副生CaOを多く含む溶融塩を円筒状の孔あき筒体内でスクリュウ3により物理的に圧縮する。これにより、生成Tiから溶融塩を絞り取り、その生成Tiを押し固める。押し固められた多孔質状の生成Tiは、分離装置2から順次排出され、溶解装置4で溶解される。分離装置2で溶融塩を圧縮分離される生成Tiは、CaCl2 を主成分としCaOを含まない溶融塩によりリンス処理される。具体的には、後述する塩化室7で塩化処理された溶融塩を使用する。これにより、生成Ti中に残留するCaOがそのCaCl2 に溶解し、生成Tiから除去される。
溶解装置4は、ここではプラズマ装置を使用しており、不溶性雰囲気中で生成Tiの固まりを溶かして溶融金属を一旦一次水冷モールド5に溜める。一次水冷モールド5では溶融Tiが沈み、溶融塩が浮く。溶融Tiは水冷二次モールド6に流し込まれ、鋳造されてTiインゴットとされる。溶解装置4で溶融される生成Tiは、溶融塩を圧縮分離したとはいえ、若干量の溶融塩を含んでいる。溶融金属を一旦一次水冷モールド5に溜めることにより、この溶融塩を浮上分離できる。分離された溶融塩は後述する塩化槽7へ送る。
分離装置2で生成Tiから分離された溶融塩は、一次水冷モールド5で浮上分離された溶融塩と共に、塩化室7へ送られる。これらの溶融塩は、副生CaOを多量に含んでいる。塩化室7では、導入される溶融塩中に塩素ガスをバブリングする。これにより、溶融塩中のCaOがCaCl2 に変化し、溶融塩中のCaOが塩化されることになる。こうしてCaOを含まない実質的にCaCl2 からなる溶融塩が生成される。
この溶融塩は次に電解室8へ送られる。一部がリンス処理のために分離装置4へ送られることは前述したとおりである。電解室8では、導入された溶融塩を、黒鉛陽極及び鉄陰極を用いて電気分解する。室内の陽極側で塩素ガスが発生し、陰極側でCaが生成される。これにより、CaCl2 を主成分としCaを含む溶融塩が生成される。塩化室7では除去目的物であるCaOが塩化される。還元室1ではCaを含む溶融塩が必要である。電解室8により、このCaを含む溶融塩が生成され、還元室1へ送られる。かくして、CaCl2 及びCaの外部からの補充が実質不要となる。
この電解室8では、陽極側と陰極側が多孔質状の隔壁9により仕切られている。塩化室7から送られてくる溶融塩は陽極側へ導入され、Caを含む溶融塩は陰極側から抜き取って還元室1へ送られる。これにより、陽極側から陰極側へ向かう流れが形成される。その結果、陰極側から陽極側への溶融塩の逆流が阻止される。また、陽極側から陰極側への塩素ガスの侵入が防止される。
図2は本発明の実施形態の基礎となる別のチタン製造設備の構成図である。
本チタン製造設備は、塩化室7で塩化処理を終えた溶融塩の一部を電解室8へ送り、残りの溶融塩のほぼ全部を還元室1へ戻す点、及び電解室7から還元室1へのCaの移送を金属状態で行う(CaをCaCl2 に溶解させて移送する方法を併用してもよい)点が、図1に示した製造設備と相違する。そして電解室8では、塩化室7からの溶融塩が陽極側へ導入され、陰極側の液面に生じるCaが単独又は若干のCaCl2 と共に還元室1へ送られる。還元室1へ移送されたCaは、室内の溶融塩の液面に浮上し、CaCl2 へ溶解する。このため、塩化室7から電解室8を経て還元室1へ移送される溶融塩又はCaの移送量が少ないにもかかわらず、還元室1内のCaCl2 中のCa濃度が高レベルに維持される。
塩化室7から電解室8へ一部の溶融塩を移送することにより、製造効率が上がることは前述したとおりである。
図3は本発明の第1実施形態を示すチタン製造設備の構成図である。
第1実施形態のチタン製造設備は、図2に示したチタン製造設備と比べて、還元室1に塩化室7を合体させた点が相違する。他の構成は、図2に示したチタン製造設備と実質同一である。
詳しく説明すると、塩化室7は縦型の還元室1の側方に隔壁10を介して形成されている。還元室7では、室内のCaCl2 に差し込まれた投入管11により、そのCaCl2 中に酸化チタンが上方から投入される。CaCl2 中のCaによる還元によって酸化チタンから生成されたチタンは、還元室1の底に沈降し、下方へ抜き出されて下方の分離装置2へ送られる。
副生したCaOを含むCaCl2 は、下部で還元室1から塩化室7に流入し、下部から注入する塩素ガスにより塩化処理されることにより、CaOが塩化される。また、塩化室7内を上昇する塩素ガス流れ(ガスリフト)により、CaCl2 は塩化室7を上昇する。分離装置2で金属チタンから分離されたCaCl2 も、塩化室7の下部に導入される。一方、塩化室7で副生する酸素ガスは上方へ抜き出される。
塩化室7を出たCaCl2 の大半は、塩化室7の上部から還元室1に還流する。残りのCaCl2 は電解室8へ移送される。電解室8では、導入されたCaCl2 からCaが生成される。電解室8で生成されたCaは、単独又は若干量のCaリッチのCaCl2 と共に還元室1へ移送される。副生する塩素ガスは塩化室7へ送られる。還元室1へ導入されたCaは、室内のCaCl2 上に層を形成する。前述した投入管11は、CaCl2 上のCa層を貫通してCaCl2 に酸化チタンを投入するためのものである。
還元室1に塩化室7を合体させたチタン製造設備では、両室間でのCaCl2 の授受が容易となる。また、塩化室7を出たCaCl2 の全部を電解室8へ移送することも可能である。
図4は本発明の第2実施形態を示すチタン製造設備の構成図である。
第2実施形態のチタン製造設備は、第1実施形態のチタン製造設備と比べて、電解室8を還元室1に合体させた点が相違する。他の構成は、第1実施形態のチタン製造設備と実質同一である。
詳しく説明すると、電解室8は、還元室1を挟んで塩化室7の反対側に形成されており、両者の間に隔壁は設けられていない。この電解室8は黒鉛陽極12と鉄陰極13とを備えており、陽極側と陰極側は隔壁9により分離されている。陰極側は還元室1の側に位置し、隔壁なしで還元室1に連続している。隔壁9は、第1実施形態の場合と同様、溶融塩を通過させる構造になっている。
塩化室7から移送されるCaCl2 は陽極側に導入される。陽極側で副生する塩素ガスは塩化室7へ送られる。陽極側に導入されたCaCl2 は隔壁9を通過して陰極側へ移動する。即ち、隔壁9が溶融塩を通過させるために、陽極側への溶融塩の供給に伴って陽極側から陰極側へ向かう浴流れが電解室8内に形成される。
電解室8の陰極側では、鉄陰極13の表面にCaが生成する。生成したCaは浴流れに乗って浮上しつつ還元室1の側へ移動する。陰極13から還元室1の側にかけての浴面近傍にはCa溜め14が設けられている。Ca溜め14は底部が開放した箱体であり、陰極13の表面で生成されて還元室1の側へ移動するCaを捕捉し浴面に露出するのを防止する。Ca溜め14に溜められたCaは還元室1内のCaCl2 に溶解し、還元室1内での還元反応に使用される。
ここで、Ca溜め14は陰極13と同様に鉄で構成されており、陰極13と同電位(陰極13と一体構造)としてもよい。Ca溜め14の狙いはCa層を浴面に露出させないことである。陰極13より還元室側の液面上を不溶性ガス雰囲気に維持できる場合はCa層を浴面に露出させても支障ないが、操業上の要求で空気の混入が避けられない場合にCa層が浴面に露出すると酸化によりCaOが生成されてしまう。これはどうしても回避せねばならない現象であり、この現象を回避するための手段がCa溜め14である。
なお、隔壁9の上部は陰極13の側に張り出し陰極13と接触しているが、これは陰極13の表面で発生するCaが陰極13と隔壁9の間に溜まるのを阻止するための構造である。
還元室1に電解室8を合体させたチタン製造設備では、電解室8から還元室1へのCaの移送が容易となる。特に、電解室8内のCaが生成される陰極側は還元室1と一体化できるため、両室間から隔壁を排除できる。このため、設備が特に簡略化され、小型化される。
図5は本発明の第3実施形態を示すチタン製造設備の構成図である。
第3実施形態のチタン製造設備は、第2実施形態のチタン製造設備と比べて、電解室8から隔壁9を排除した点が相違する。他の構成は、第2実施形態のチタン製造設備と実質同一である。
詳しく説明すると、還元室1に一体化された電解室8では、前述したとおり、陽極側に溶融塩が導入されるため、陽極12の側から陰極13の側へ溶融塩の流れが形成される。このため、陽極側と陰極側の間を仕切る隔壁9を省略しても、溶融塩の逆流による効率低下は防止される。ただし、陰極13は、隔壁9と同様に溶融塩が通過可能な構造とされる。また、陰極13の上方には、耐火物などの耐塩素ガス材からなるカーテンウォール形式の隔壁15が設けられている。即ち、この隔壁として陰極13を液面上に延長することが考えられるが、この場合は陰極13の延長部が陽極側で発生する塩素ガスにより腐食する問題がある。このため、陰極13とは別の隔壁15が必要になる。
電解室8において陽極側と陰極側を仕切る隔壁9を省略することにより設備構成か一層簡略化される。なお、陰極13の還元室側にCa溜め14は設けられていない。このため、陰極13より還元室側の液面上は不溶性ガス雰囲気に維持されている。
図6及び図7は本発明の第4実施形態を示す金属チタン製造設備の構成図である。
第4実施形態のチタン製造設備は、第3実施形態のチタン製造設備と比べて、還元室1を円筒状に形成し、電解室8をその外側に円筒状に形成した点が相違する。他の構成は、第3実施形態のチタン製造設備と実質同一である。
詳しく説明すると、還元室1の外側に円筒状に設けられた電解室8は、外壁を兼ねる円筒形状の陽極12と、内壁を兼ねる円筒形状の陰極13とを有している。還元室1の側方に配置された塩化室7で得られたCaO及びCaを含まないCaCl2 は、全量が陽極12と陰極13の間に環状空間に導入される。内側の陰極13は還元室1の円筒状外壁の一部を兼ねており、その内側は還元室1と一体化されている。
この陰極13は、周方向に所定間隔で設けられたスリットにより溶融塩を外側から内側へ通過させる構成になっている。各スリットは、半径線に対して傾斜すると共に、内側から外側へ向けて間隔が漸次増大する構成になっている。この構成により、陰極13の外側及び内側に旋回流が形成されると共に、外側から内側への溶融塩の流れが促進される。
陰極13の上方には、耐火物などの耐塩素ガス材からなる円筒状の隔壁15が連続して設けられている。設置目的は第5実施形態の場合と同じである。
円筒形状の陰極13の外面側に旋回流が発生すること、更には陰極13の内側に流入した溶融塩は旋回しながら還元室1を降下することにより、陰極13の表面で生成したCaがその内側へスムーズに引き込まれる。陰極13の内側に流入したCaは還元室1内のCaCl2 上に浮上し、CaCl2 に溶け込む。CaCl2 に溶け込んだCaが還元室1での還元反応に寄与することは前述したとおりである。
還元室1に合体された電解室8を、その還元室1の外側に環状に形成することにより、電解室8における陽極12及び陰極13の面積を大きくでき、より効率的な設備設計が可能になる。なお、ここでは塩化室7で得たCaCl2 の全量を電解室8へ導入しているが、その一部を導入することも可能である。
なお、本発明での生成金属としては、前記チタンの他に、タングステン、ニオブ、タンタル、クロム、ジルコニウム、ネオジウムを挙げることができる。
本発明の実施形態の基礎となるチタン製造設備の構成図である。 本発明の実施形態の基礎となる別のチタン製造設備の構成図である。 本発明の第1実施形態を示すチタン製造設備の構成図である。 本発明の第2実施形態を示すチタン製造設備の構成図である。 本発明の第3実施形態を示すチタン製造設備の構成図である。 本発明の第4実施形態を示すチタン製造設備の構成図で立面図である。 本発明の第4実施形態を示すチタン製造設備の構成図で平面図である。 従来の製造方法のイメージ図である。
符号の説明
1 還元室
2 分離装置
3 スクリュウ
4 溶解装置
5 一次水冷モールド
6 二次水冷モールド
7 塩化室
8 電解室
9,10 隔壁
11 投入管
12 陽極
13 陰極
14 Ca溜め

Claims (7)

  1. CaCl2 を主成分としCaを含有する溶融塩を保持し、当該溶融塩に投入される金属酸化物を溶融塩中のCaにより還元して金属を生成する還元室と、溶融塩中に生成した金属を溶融塩から分離する手段と、金属を分離除去された後の溶融塩を保持し、該溶融塩を塩素ガスにより塩化処理して、溶融塩中の副生CaOを塩化する塩化室と、塩化処理された後の溶融塩の一部又は全部を還元反応領域の外で保持し、該溶融塩を電気分解して、CaCl2 からCa及び塩素を生成する電解室と、該電解室から前記還元室へ生成Ca又は該Caを含有する溶融塩を移送する手段とを具備しており、前記溶融塩が前記還元室、塩化室及び電解室を循環すると共に、前記塩化室は前記還元室と合体した構成である金属製造装置。
  2. CaCl2 を主成分としCaを含有する溶融塩を保持し、当該溶融塩に投入される金属酸化物を溶融塩中のCaにより還元して金属を生成する還元室と、溶融塩中に生成した金属を溶融塩から分離する手段と、金属を分離除去された後の溶融塩を保持し、該溶融塩を塩素ガスにより塩化処理して、溶融塩中の副生CaOを塩化する塩化室と、塩化処理された後の溶融塩の一部又は全部を還元反応領域の外で保持し、該溶融塩を電気分解して、CaCl2 からCa及び塩素を生成する電解室と、該電解室から前記還元室へ生成Ca又は該Caを含有する溶融塩を移送する手段とを具備しており、前記溶融塩が前記還元室、塩化室及び電解室を循環すると共に、前記電解室は前記還元室と合体した構成である金属製造装置。
  3. 前記電解室の陰極側が前記還元室と一体化している請求項2に記載の金属製造装置。
  4. 前記電解室は、陽極側に投入された溶融塩が陰極を経て還元室へ流動可能に構成されている請求項3に記載の金属製造装置。
  5. 陰極より還元室側にCaを液中に滞留させるCa溜まりを有する請求項4に記載の金属製造装置。
  6. 前記電解室は、筒状に形成された還元室の周囲に環状に形成されている請求項3に記載の金属製造装置。
  7. 前記電解室は、陽極を兼ねる外筒と、陰極を兼ね、溶融塩の流通が可能で且つ内側が還元室とされた内筒とを有する請求項6に記載の金属製造装置。
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