JP3607532B2 - チタン材料の脱酸素方法 - Google Patents

チタン材料の脱酸素方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属カルシウムおよび塩化カルシウムを用いたチタン材料の脱酸素方法に関し、さらに詳しくは、医療等に用いられる結束用の線材、または半導体用のスバッタリングターゲット材等に好適な、低酸素金属チタンおよび低酸素チタン合金を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
チタンは優れた比強度、靱性および耐食性を有するとともに、人体親和性の特性を発揮することから、医療等に用いられる結束用線材、または半導体用のスバッタリングターゲット材として広く使用されている。しかし、これらの特性は含有される不純物の影響が大きく、特に酸素が不純物として含有されると、靱性が著しく劣化し、チタンの加工性、耐食性を低下させることになる。このため、チタン材料において、低酸素化技術が重要な技術となっている。
【0003】
現在、チタンの製造方法では、工業的に操業されているものとしてクロール法が汎用されており、中間原料である四塩化チタン(TiCl4)のチタン化合物から還元反応によって純チタンを製造している。この製造方法では還元反応に酸素が関与しないが、原料や反応容器からの持ち込み、反応後の切断、細粒化にともなうチタンの酸素汚染が避けられない。このような酸素汚染を抑制するため、従来から製造プロセス上改善が加えられ、酸素濃度か300ppm以下の純金属チタンが工業的に製造されるようになっている。
【0004】
さらに、このように酸素を含有したチタン材料を直接的に脱酸して、低酸素のチタン材料を製造することができる。例えば、特開平4−99829号公報で提案されるように、金属チタンおよびチタン合金に脱酸素剤である金属カルシウムを接触させることによって、チタン材料中の酸素を取り除くこと、すなわち、チタン材料の脱酸素を直接行うことが可能であることが知られている。
【0005】
ところが、この提案の方法で、金属カルシウムを接触させるために、チタン材料と金属カルシウム蒸気とを接触させることにすると、チタン材料の表面で脱酸素反応で生成した酸化カルシウムが蓄積することになるため、熱力学的な平衡関係から脱酸素限界が数百ppm程度に留まることになる。
【0006】
一方、金属カルシウムを溶解させた溶融塩化カルシウム中にチタン材料を浸漬させ脱酸素を行わせる方法を採用すると、脱酸素反応で生成した酸化カルシウムはチタン材料の表面に留まることなく、溶融塩化カルシウム中に溶解するようになる。このため、より効率的に脱酸素を行うことができ、脱酸素限界を30ppm以下のレベルにまで改善することが可能になる。
【0007】
しかしながら、上述のチタン材料を浸漬させて脱酸素する方法では、脱酸素反応がチタン材料の表面において行われることから、チタン材料に含有される酸素の表面への拡散が脱酸素反応の律速となる。このため、工業的に採用できる処理時間において効果的に脱酸素を行うためには、処理されるチタン材料の厚みが制限されることになる。言い換えると、工業的に大量のチタン材料の脱酸素を実施するには、被処理材の板厚を極めて薄く限定する必要があるため、反応容器への被処理材の充填率が低くなり、所定の被処理材を浸漬するために、多量の塩化カルシウムが必要になる。
【0008】
このように、チタン材料を浸漬させる方法では、チタン材料の脱酸素に際して多量の塩化カルシウムを要するようになると、製造コストの増大が顕著となる。さらに、この方法では、処理を完了した後に、冷却によって固化した塩化カルシウムを破砕、または水で溶解して被処理材を取り出すことが必要になる。このようなことからも、工業的規模で実施することが困難かつ非能率的なものとなる。
【0009】
また、医療用、半導体用に用いられる高純度のチタン材料を前提にする場合には、処理に際し酸素以外の不純物元素による汚染防止が重要になる。提案のチタン材料を浸漬させて脱酸素する方法では、被処理材と処理容器とが溶融塩化カルシウムを介して接触するため、処理容器の材料から溶融塩化カルシウム中に溶解した不純物元素が被処理材に移動して、被処理材を汚染させる恐れがある。また、使用されるカルシウムおよび塩化カルシウムが多量になると、これらの試薬に不純物として含まれる成分によって、被処理材が汚染されることも考慮しなければならない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述の通り、従来から提案されているチタン材料の直接的な脱酸素方法では、脱酸素限界を30ppm以下まで改善することができるが、製造コストが増大するとともに、工業的規模で実施する際に困難かつ非能率的な作業も必要になる。さらに、高純度チタン材料を対象にすると、各種の不純物元素による汚染の恐れがある。
【0011】
本発明は、従来のチタン材料の脱酸素法における問題に鑑みてなされたものであり、酸素含有量が200ppm〜300ppm程度であるチタン材料、すなわち、低酸素レベルの金属チタンおよびチタン合金を対象として、不純物元素による汚染を生ずることなく、被処理材を直接的に脱酸素して、極低酸素金属チタンおよび極低酸素チタン合金を安価に製造する方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を達成するため、種々の検討を行った結果、チタン材料の脱酸素に関して、次のa)およびb)の知見を得ることができた。
【0013】
a) チタン材料の脱酸素を効果的に実施するには、脱酸素限界を下げることが必要である。これには、脱酸素過程でチタン材料の表面に生成する酸化カルシウムを蓄積させないようにするため、生成した酸化カルシウムを溶解しうる塩化カルシウム等のフラックスを併用するのが有効である。
【0014】
b) 従来提案のチタン材料を浸漬させる方法では、大量の塩化カルシウムが必要となり、製造コストの増大を招くことになる。これを回避するには、チタン材料の表面に薄い溶融塩化カルシウム層を形成し、さらに金属カルシウム蒸気を接触させることによって、被処理材の表面に付着した溶融塩化カルシウム中に金属カルシウムを溶解させるようにするのが有効である。これにより、チタン材料の脱酸素反応を促進させ、処理に必要な塩化カルシウムの量を大幅に減少することができる。
【0015】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記のチタン材の脱酸素方法を要旨としている。
【0016】
(1) 不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中でチタン材料とは別個に塩化カルシウムおよび金属カルシウムの溶融部を設けて、これらの蒸気を前記チタン材料に供給して擬縮させ、前記チタン材料の表面に金属カルシウムと溶融塩化カルシウムの混合溶融物の被膜を形成し、800℃以上に保持することを特徴とするチタン材料の脱酸素方法である(以下、第1の方法という)。
【0017】
(2) 不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中でチタン材料の表面に予め粉末状の塩化カルシウムを付着させた後、前記粉末状の塩化カルシウムを塩化カルシウムの融点以上に加熱することにより溶融塩化カルシウムの被膜を形成し、前記被膜に金属カルシウムの蒸気を接触させることにより、前記溶融塩化カルシウムの被膜に金属カルシウムを溶解させて、800℃以上に保持することを特徴とするチタン材料の脱酸素方法である(以下、第2の方法という)。
(3) 不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中でチタン材料を溶融塩化カルシウムに浸漬させた後取り出して溶融塩化カルシウムの被膜を形成し、前記被膜に金属カルシウムの蒸気を接触させることにより、前記溶融塩化カルシウムの被膜に金属カルシウムを溶解させて、 800 ℃以上に保持することを特徴とするチタン材料の脱酸素方法である
【0018】
本発明において、チタン材料とは金属チタンおよびチタン合金を包含する総称である。ここで、脱酸素の対象とされる金属チタンは、クロール法等で工業的に製造された純チタンを意図するものであり、その純度は、97%〜99.999%程度である。また、チタン合金は、合金例としてTiAl、Ti−6Al−4V等が例示される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の方法は、後述するように、密閉容器内で行われ、その雰囲気は不活性ガス雰囲気または真空雰囲気に調整され、チタン材料とは別個に塩化カルシウムおよび金属カルシウムの溶融部を設けて、これらの蒸気を前記チタン材料に供給して擬縮させ、チタン材料の表面に金属カルシウムと溶融塩化カルシウムの混合溶融物の被膜を形成して、所定温度以上に保持することを特徴としている。これにより、脱酸素過程で生成された酸化カルシウムを被処理材の表面に蓄積させることなく、脱酸素限界を下げることが可能になる。さらに、800℃以上に保持することにしているが、これは、脱酸素速度が固体チタン中の酸素の拡散速度によって決定されるためである。固体チタン中の酸素の拡散速度は温度が高いほど速くなるが、現実的に可能な時間で脱酸素を試みようとする場合には、チタンの変態温度以上で処理すると効率的であるので、好ましい。
【0020】
第2の方法では、チタン材料の表面に予め粉末状の塩化カルシウムを付着させた後、この粉末状の塩化カルシウムを塩化カルシウムの融点以上に加熱することにより溶融塩化カルシウムの被膜を形成し、この被膜に金属カルシウムの蒸気を接触させることにより、前記溶融塩化カルシウムの被膜に金属カルシウムを溶解させて、所定温度以上に保持することを特徴としている。これにより、脱酸素反応に必要な塩化カルシウムの量を大幅に減少することができる。
【0021】
ここでは、溶融塩化カルシウムの被膜を形成するため、塩化カルシウムを付着させた後、塩化カルシウムの融点以上に加熱することにしているが、具体的には、チタン表面を溶融塩化カルシウムの被膜でまんべんなく覆うことができればどのような手法であっても良い。溶融塩化カルシウムには、脱酸素剤であるカルシウムを溶解し、カルシウムとチタンとを接触させる媒介となると同時に、脱酸素反応によってチタン表面で生成した酸化カルシウムを溶解し、チタン表面から取り除くことによって効率的に脱酸素反応を進行させる作用がある。
【0022】
また、本発明の方法では、脱酸素処理を完了した後の被処理材の取り出し、洗浄が容易に実施することができこととなり、処理に用いた塩化カルシウムに含有される不純物による被処理材への汚染量も減少される。さらに、被処理材を被覆した溶融塩化カルシウムは、反応容器と部分的な接触、若しくはほとんど接触しないため、反応容器の材料から溶融塩化カルシウムを通して不純物汚染を低減することが可能になる。通常、容器材料からの汚染を防止するため、純チタン製の反応容器の使用も考えられるが、極めて高価な製作費用が必要になる。したがって、本発明の方法によれば、高価な反応容器の製作費用を必要としない。
【0023】
さらに、第2の方法では、溶融塩化カルシウムの被膜に金属カルシウムの蒸気を接触させる際に、単蒸留効果が得られ、処理に用いる塩化カルシウム中に予め不純物として含まれていた金属元素が、その蒸気圧の差異によって除去される。これにより、一層汚染の少ない条件で脱酸素を行うことが可能になる。
【0024】
本発明者らは、上記第1、第2の方法以外に、下記のチタン材料の脱酸素方法を採用しても、被処理材を直接的に脱酸素して、極低酸素金属チタンおよび極低酸素チタン合金を安価に製造できることを確認している。
【0025】
まず、チタン材料を溶融塩化カルシウムに浸漬させた後、溶融塩化カルシウムから取り出すことにより溶融塩化カルシウムの被膜を形成した後に、その被膜に金属カルシウムの蒸気を接触させることにより、前記溶融塩化カルシウムの被膜に金属カルシウムを溶解させて、これを800℃以上に保持する方法である。この方法によると、より均一にチタン表面に溶融塩化カルシウムを被覆させることが可能であり、均一な脱酸素効果を得ることができる。また、溶融塩化カルシウムに、予め金属カルシウムを溶解させておいても良い。
【0026】
次に、溶融塩化カルシウムをチタン材料に均一に滴下または噴霧若しくは散布することにより溶融塩化カルシウムの被膜を形成した後に、その被膜に金属カルシウムの蒸気を接触させることにより、前記溶融塩化カルシウムの被膜に金属カルシウムを溶解させて、これを800℃以上に保持する方法である。この方法によれば、被処理材であるチタン材料の初期酸素含有量が非常に高い場合であっても、脱酸素中に、適宜、溶融塩化カルシウムをチタン材料に滴下または噴霧することによって、脱酸素反応によって生成した酸化カルシウム濃度が高くなった溶融塩化カルシウムを洗い流し、チタン材料を被覆した溶融塩化カルシウム中の酸化カルシウム濃度を低くして、より効率的な脱酸効果を得ることができる。
【0027】
さらに、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気の反応容器内にチタン材料の充填部とは別個に塩化カルシウムおよび金属カルシウムの溶融部を設けて、この溶融部をチタン材料の充填部よりも高温に維持することによって、チタン材料の充填部に塩化カルシウムおよび金属カルシウムの蒸気を供給してチタン材料の表面にこれらの蒸気を擬縮させ、チタン材料の表面に金属カルシウムを溶解させた溶融塩化カルシウムの被膜を形成させて、800℃以上に保持する方法である。この方法によると、少量の塩化カルシウムを均一にチタン材料表面に付着させることが可能であり、塩化カルシウム蒸気を供給する容器を別に設けること等によって、過剰な塩化カルシウムの使用を減少することができる。
【0028】
また、上記第1、第2の方法では、脱酸フラックス剤として塩化カルシウムのみを採用しているが、塩化カルシウムの一部または全部をアルカリ金属塩または/およびアルカリ土類金属塩に置き換えられることを明らかにした。具体的には、アルカリ金属塩としては、LiCl、NaCl、KCl、LiF、NaFおよびKF等が該当し、アルカリ土類金属塩として、MgCl2、CaCl2、SrCl2およびBaCl2等が挙げられる。
【0029】
以下に、本発明の脱酸素方法による効果を、従来の比較例と対比しつつ、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
【0030】
【実施例】
図1〜図4は、実施例で用いた脱酸素装置の全体構成を示す図である。ここで用いた装置構成は、密閉容器1とその内部に収容される反応容器2と、さらに密閉容器1の内部を所定の温度条件で加熱することができるヒーター3とからなっている。そして、密閉容器1には、真空排気装置4および容器内に不活性ガスを投入する供給バルブ5が配置されている。密閉容器1の寸法は250mmφ×900mm高さであり、反応容器2の寸法は200mmφ×400mm高さであり、いずれもステンレス鋼製としている。
【0031】
(実施例1)
図1は、実施例1で用いた脱酸素装置と反応容器内の構成を説明する図である。図1に示すように、円筒容器2の底部に金属カルシウム(Ca)を15gを置き、その上に予め脱脂、洗浄した高純度金属チタンの切削ダライ(図中ではTiダライで示す)を600gを充填し、これらの上部から粉末状の塩化カルシウム(CaCl2)100gを均一にふりかける。粉末状の塩化カルシウムを均一にふりかけた後、反応容器2は、真空排気設備4に接続された密閉容器1内に載置される。その後、密閉容器1内に存在する水分を取り除くために、密閉容器1内を真空排気しながら徐々に750℃まで昇温して真空排気を停止する。次に、密閉容器1内に供給バルブ5を介して、アルゴンガス(Ar)を導入し大気圧として、さらに950℃まで昇温し、この状態で12h保持した。
【0032】
その後に装置を冷却して、反応容器2の内容物を取り出して水洗、酸洗浄することによって、金属チタンに付着した塩化カルシウム、酸化カルシウムおよび金属カルシウムを除去して乾燥させ、脱酸処理後の酸素含有量および金属不純物の含有量を分析して、その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
Figure 0003607532
【0034】
表1の結果から、一般材よりも低い酸素レベルの高純度金属チタンの脱酸素処理においても、効果的に脱酸素が行われていることが分かる。さらに金属不純物の含有量についても、処理前後で変化していないことから、反応容器からの汚染等が回避できている。
【0035】
さらに、実施例1において、粉末状の塩化カルシウムを均一にふりかける際に、粉末を均一に付着させるため、粉末のふりかけた後に、反応容器2ごと攪拌するのがよい。また、Tiダライを反応容器2に投入する際に、プレスでコンパクト形状に加工した後に投入するようにし、粉末状の塩化カルシウムを均一にふりかけるとともに、反応容器2ごと攪拌して、コンパクト内部まで粉末を付着させるようにするのがよい。反応容器への充填率を向上させるだけでなく、処理後に消耗電極として用いる場合にも有利となる。
【0036】
(実施例2)
図2は、実施例2で用いた脱酸素装置と反応容器内の構成を説明する図である。図2に示すように、反応容器2の底部に金属カルシウム(Ca)を15g、および粉末状の塩化カルシウム(CaCl2)を100gを置き、その上部に金属カルシウムおよび塩化カルシウムから分離できるように、モリブデン(Mo)製ネットを反応容器2の上部に設置し、予め脱脂、洗浄した高純度金属チタンの切削ダライ(Tiダライ)を600gを充填した。
【0037】
反応容器2を密閉容器1内に収容して、密閉容器1内に存在する水分を取り除くために、密閉容器1内を真空排気しながら徐々に750℃まで昇温し真空排気を停止する。次いで、密閉容器1内に供給バルブ5を介して、アルゴンガス(Ar)を導入し大気圧とした。金属カルシウム(Ca)および塩化カルシウム(CaCl2)が充填されている部分、具体的には、反応容器2の底部に対向する下段ヒーター3の加熱温度を1000℃まで昇温し、溶融部を設けてこの状態で5h保持した。この間、 Ti ダライの充填部に塩化カルシウムおよび金属カルシウムの蒸気を供給して Ti ダライの表面にこれらの蒸気を擬縮させ、 Ti ダライの表面に金属カルシウムと溶融塩化カルシウムの混合溶融物の被膜を形成した。その後、反応容器2の上部で、Tiダライの充填部に対向する中段ヒーター3の加熱温度を950℃まで昇温し、この状態で12h保持した。
【0038】
その後に装置を冷却して、反応容器2の内容物を取り出して水洗、酸洗浄することによって、金属チタンに付着した塩化カルシウム、酸化カルシウムおよび金属カルシウムを除去して乾燥させ、脱酸処理後の酸素含有量および金属不純物の含有量を分析して、その結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
Figure 0003607532
【0040】
実施例1の場合と同様に、表2の結果からも、低酸素の高純度金属チタンの脱酸素処理において有効であるとともに、反応容器からの汚染等が回避できていることが分かる。
【0041】
(比較例1)
図3は、比較例1で用いた脱酸素装置と反応容器内の構成を説明する図である。ここでは、反応容器2内に予め脱脂、洗浄した高純度金属チタンの切削ダライ(Tiダライ)を600gを金属カルシウム(Ca)15gと混合して充填して、密閉容器1に収容した。密閉容器1内に存在する水分を取り除くために、密閉容器1内を真空排気しながら徐々に800℃まで昇温してから、真空排気を停止する。次いで、密閉容器1内に供給バルブ5を介して、アルゴンガス(Ar)を導入し大気圧として、さらに950℃まで昇温し、この状態で12h保持した。
【0042】
その後に装置を冷却して、反応容器2の内容物を取り出して水洗、酸洗浄することによって、金属チタンに付着した塩化カルシウム、酸化カルシウムおよび金属カルシウムを除去して乾燥させ、脱酸処理後の酸素含有量および金属不純物の含有量を分析して、その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
Figure 0003607532
【0044】
表3から明らかなように、低酸素の高純度金属チタンの脱酸素処理において比較例1の方法は有効でなく、酸素含有量の低減が見られず、直接脱酸素の効果が得られていない。
【0045】
(比較例2)
図4は、比較例2で用いた脱酸素装置と反応容器内の構成を説明する図である。図4に示すように、反応容器2内に予め脱脂、洗浄した高純度金属チタンの切削ダライ(Tiダライ)を150gを金属カルシウム(Ca)50gと混合して充填し、反応容器2内のその充填高さを測定すると3cmであった。このときのTiダライの充填密度は0.16g/ccであった。これを浸漬させるために必要な塩化カルシウム(CaCl2)量は約2000gとなり、充填したTiダライの上部から粉末状の塩化カルシウムを2000gを軽くタップしながら充填した。充填後の塩化カルシウム充填高さを測定したところ6.5cmであった。
【0046】
このように充填密度の低いTiダライの脱酸素処理を行う場合には、被処理材であるTiダライを浸漬させるために被処理材の10倍以上の重量の塩化カルシウムを必要とする。具体的には、Tiダライ150gに対して、塩化カルシウム2000gとなる。また、一般的に使用されている塩化カルシウムの形状は、比較例2で使用したものと同様に粉末状であり、粉末状の塩化カルシウムの嵩密度が約1g/ccであり、溶融状態の密度の約半分であることから、初期充填の状態では被処理材充填部の2倍以上の反応容器の体積を必要とすることになる。したがって、比較例2の方法を工業的に実施するには、大量の塩化カルシウムを消費し、反応容器の体積の半分しか有効に利用できないという非効率的な面がある。
【0047】
上記の初期充填が終了した反応容器2を密閉容器1に収容した。密閉容器1内に存在する水分を取り除くために、密閉容器1内を真空排気しながら徐々に750℃まで昇温してから、真空排気を停止する。次いで、密閉容器1内に供給バルブ5を介して、アルゴンガス(Ar)を導入し大気圧として、さらに950℃まで昇温し、この状態で12h保持した。
【0048】
その後に装置を冷却して、反応容器2を取り出した。処理終了後の反応容器2の内部は、図4に示すように、固化した塩化カルシウム(CaCl2)中にTiダライが埋まり込んでいる状態であった。反応容器2の内容物を取り出すために、固化した塩化カルシウム(CaCl2)を水洗により除去しようとしたが、大部分の塩化カルシウムを水洗除去するためには約3時間を要した。
【0049】
ほぼ水洗除去した後、酸洗浄することによってTiダライに付着した塩化カルシウム(CaCl2)、酸化カルシウム(CaO)および金属カルシウム(Ca)を除去して乾燥させ、脱酸処理後の酸素含有量および金属不純物の含有量を分析して、その結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
Figure 0003607532
【0051】
比較例2の方法によれば、低酸素の高純度金属チタンの脱酸素処理において脱酸素が効果的に行われていることが確認できる。しかし、金属不純物の含有量に関して、脱酸素処理後において、例えばFe、Cr、AlおよびMnのように含有量が増加している元素があり、反応容器から溶融塩化カルシウム中に溶解した不純物か、使用されるカルシウム等に含まれる不純物によって、Tiダライが汚染されたことが推測される。
【0052】
【発明の効果】
本発明のチタン材料の脱酸素方法によれば、低酸素レベルの金属チタンおよびチタン合金を対象として、不純物元素による汚染を生ずることなく、被処理材を直接的に脱酸素して、極低酸素金属チタンおよび極低酸素チタン合金を安価に製造することができる。これにより、医療等に用いられる結束用の線材、または半導体用のスバッタリングターゲット材等に好適なチタン材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で用いた脱酸素装置と反応容器内の構成を説明する図である。
【図2】実施例2で用いた脱酸素装置と反応容器内の構成を説明する図である。
【図3】比較例1で用いた脱酸素装置と反応容器内の構成を説明する図である。
【図4】比較例2で用いた脱酸素装置と反応容器内の構成を説明する図である。
【符号の説明】
1…密閉容器、 2…反応容器、 3…ヒーター
4…真空排気装置、 5…不活性ガス用バルブ

Claims (3)

  1. 不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中でチタン材料とは別個に塩化カルシウムおよび金属カルシウムの溶融部を設けて、これらの蒸気を前記チタン材料に供給して擬縮させ、前記チタン材料の表面に金属カルシウムと溶融塩化カルシウムの混合溶融物の被膜を形成し、800℃以上に保持することを特徴とするチタン材料の脱酸素方法。
  2. 不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中でチタン材料の表面に予め粉末状の塩化カルシウムを付着させた後、前記粉末状の塩化カルシウムを塩化カルシウムの融点以上に加熱することにより溶融塩化カルシウムの被膜を形成し、前記被膜に金属カルシウムの蒸気を接触させることにより、前記溶融塩化カルシウムの被膜に金属カルシウムを溶解させて、800℃以上に保持することを特徴とするチタン材料の脱酸素方法。
  3. 不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中でチタン材料を溶融塩化カルシウムに浸漬させた後取り出して溶融塩化カルシウムの被膜を形成し、前記被膜に金属カルシウムの蒸気を接触させることにより、前記溶融塩化カルシウムの被膜に金属カルシウムを溶解させて、 800 ℃以上に保持することを特徴とするチタン材料の脱酸素方法
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