JP4720455B2 - 亜鉛系めっき金属材料に適した表面処理液 - Google Patents
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Description
樹脂を主体とした表面処理は、一般に耐食性のよい皮膜を形成するが、鋼板を深絞り加工すると、表面に黒ずみが生じるという問題を抱えている。この黒ずみは、亜鉛系めっき鋼板を深絞り加工した際に、めっき層やその上の表面処理皮膜が金型とこすれて剥離し、加工品に付着して、その表面を汚したり、金型に蓄積した表面処理皮膜やめっき層が加工品の表面に疵を付けたりするために生じると考えられる。
「実質量の樹脂、ワックスおよびクロム化合物を含有しない」とは、これらの含有量がそれぞれリチウムシリケート100質量部に対して0.1質量部未満であることを意味する。樹脂、ワックスおよびクロム化合物の含有量は、いずれも0.05質量部未満であることが望ましく、より望ましくは0%である。
本発明の表面処理液は、各種の金属材料の表面処理に適用することができるが、その効果をより有効に発揮させる意味で好ましい金属材料は、亜鉛系めっき金属材料、特に亜鉛系めっき鋼板である。前述したように、亜鉛系めっき鋼板はめっきが軟らかいため、厳しいプレス加工時に黒ずみが発生し易いが、本発明に従って表面処理を施すことにより、厳しい深絞り加工を施す場合にも黒ずみ発生を防止でき、さらに耐食性の向上も図ることができる。以下では、基材が亜鉛系めっき鋼板である場合を例にとって説明する。
塗布後の加熱(皮膜の焼付け)も、通常実施される熱風式、赤外式、誘導加熱式等の方法によって実施すればよい。加熱は、基材である亜鉛系めっき鋼板の最高到達温度が50〜200℃の範囲となるように行うことが好ましい。この加熱温度が50℃未満では、焼付けが皮膜形成には不十分で、十分な耐食性が得ることができず、200℃を超えると、皮膜の耐食性の向上が得られなくなることがある。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm,目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比1のリチウムシリケートを10%、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.2%、およびシランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3%の量でそれぞれ含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、200℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成して、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比2.5のリチウムシリケートを10%、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.2%および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3%の量で含有す水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成して、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比4のリチウムシリケートを10%、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.2%および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、50℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比2.5のリチウムシリケートを20%、バナジン酸カリウムをバナジウム換算で0.04%および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを6%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が10g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比2.5のリチウムシリケートを1%、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.1%および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.3%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が0.05g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比2.5のリチウムシリケートを10%、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.2%および3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランを0.5%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比2.5のリチウムシリケートを10%、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.2%および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比0.5のリチウムシリケートを10%、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.2%および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比5のリチウムシリケートを10%、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.2%および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比2.5のリチウムシリケートを10%および3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比2.5のリチウムシリケートを10%およびバナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で10%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比2.5のリチウムシリケートを10%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比1のリチウムシリケートを10%、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.2%、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3%、およびアクリル樹脂を1%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、目付け量20g/m2)の片面のめっき層の上に、Si/Liモル比1のリチウムシリケートを10%、バナジン酸アンモニウムをバナジウム換算で0.2%、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3%、およびポリエチレンワックスを2%の量で含有する水溶液をスピンコーターで塗布し、100℃で焼付け、付着量が1g/m2の表面処理皮膜を形成し、表面処理亜鉛系めっき鋼板の試験片を作製した。
前述の実施例および比較例で得られた試験片を用いて塩水噴霧試験を行い、耐食性の評価を行った。試験は、JIS Z−2371規格に準拠した塩水噴霧装置を用いて、塩水濃度5%、槽内温度35℃、噴霧圧力200PSIの条件で試験を行い、48時間後の表面に発生した白錆の面積率を測定した。評価は次の5段階にて行った。○以上であれば、合格であると判断できる。
○ 白錆面積率5%未満、
△ 白錆面積率5%以上、10%未満、
× 白錆面積率10%以上、50%未満、
×× 白錆面積率50%以上。
次の条件で金型の手入れ無しに連続5個の円筒加工を実施した。この加工条件は、加工深さが大きく、高速の連続加工である小型モーターケースの加工を模したものであり、厳しい加工条件であると言える。
BH荷重:10kN、絞り速度:800mm/min、温度:25℃、
塗油:日本工作油製G6231F(速乾油)。
○ ろ紙の変色若干あり、加工品には疵が付かない;
△ ろ紙の変色大、加工品には疵が付かない;
× ろ紙の変色大、加工品に若干疵が付着する;
×× ろ紙の変色大、加工品への疵の付着大。
Claims (6)
- 水性媒質中に、Si/Liモル比が1〜2.5の範囲内であるリチウムシリケートと、該リチウムシリケート100質量部に対して5〜50質量部の量のシランカップリング剤および0.2〜10質量部(バナジウム金属として)の量のバナジウム化合物とを含有し、樹脂、ワックスおよびクロム化合物を、リチウムシリケート100質量部に対して0.1質量部未満を超える実質量で含有しないことを特徴とする、高速深絞り加工での黒ずみ発生が抑制されかつ耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板用表面処理液。
- 前記シランカップリング剤がエポキシ基含有シランカップリング剤である請求項1に記載の高速深絞り加工での黒ずみ発生が抑制されかつ耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板用表面処理液。
- 亜鉛系めっき層の上に乾燥表面処理皮膜を備える亜鉛めっき鋼板であって、該皮膜は、Si/Liモル比が1〜2.5の範囲内であるリチウムシリケートを主成分とし、かつ皮膜中のリチウムシリケート100質量部に対して5〜50質量部のシランカップリング剤および0.2〜10質量部(バナジウム金属として)のバナジウム化合物を含有し、樹脂、ワックスおよびクロム化合物を、リチウムシリケート100質量部に対して0.1質量部未満を超える実質量で含有しない皮膜であることを特徴とする、高速深絞り加工での黒ずみ発生が抑制されかつ耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
- 前記皮膜の付着量が0.05〜10g/m2の範囲内である、請求項3記載の高速深絞り加工での黒ずみ発生が抑制されかつ耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
- 亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面のめっき層の上に請求項1または2に記載の表面処理液を塗布した後、加熱して乾燥皮膜を形成することを特徴とする、表面処理された高速深絞り加工での黒ずみ発生が抑制されかつ耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
- 前記加熱を、亜鉛系めっき鋼板の最高到達温度が50℃以上、200℃以下の温度となるように行う、請求項5に記載の製造方法。
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