JP2005008599A - 局所麻酔組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塩基性オキセサゼイン又はその塩が、脂肪酸トリグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油類、ポリオール類、高級アルコール類、脂肪酸エステル類、脂肪酸類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、蜜蝋、クロタミトン、酢酸トコフェロール、精製ラノリン及びトリベノシドから選ばれる1種又は2種以上の医薬上許容しうるキャリアに溶解されていることを特徴とする局所麻酔組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩基性オキセサゼイン又はその塩が、脂肪酸トリグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油類、ポリオール類、高級アルコール類、脂肪酸エステル類、脂肪酸類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、蜜蝋、クロタミトン、酢酸トコフェロール、精製ラノリン及びトリベノシドから選ばれる1種又は2種以上の医薬上許容しうるキャリアに溶解されていることを特徴とする局所麻酔組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
局所麻酔剤は、痔疾患、口内炎、歯周病、虫歯、抜歯あるいは手術等による粘膜や皮膚等の局所的なかゆみや疼痛を処置するために用いられている。代表的な局所麻酔薬としてはリドカインが知られているが、リドカインは即効性に優れてはいるものの、抗不整脈作用を有しており、その用法によってはショック等の重篤な副作用をもたらす懸念がある。また、リドカインが表面麻酔効果を発揮する時間は凡そ2時間程度と短く、充分なる持続的な疼痛効果が期待できない。そのため、リドカインよりも安全性が高く、かつ持続時間も長い局所麻酔薬を配合した製剤の開発が望まれている。
【0003】
また、局所麻酔剤として塩基性オキセサゼインが配合された皮膚外用剤としては、「欠損皮膚を除く皮膚の表面より内側の疼痛を治療するための、塩基性オキセサゼインを有効成分とする皮膚外用剤」が知られている(特許文献1)。しかしながら、この皮膚外用剤は、欠損皮膚を除く皮膚の表面より内側の疼痛、例えば帯状ヘルペス痛を治療することを目的としており、その適用が限定されている。
さらに、「遊離塩基型のオキセサゼインが、これと相容しない生体付着性分散媒体中に分散されてなる鎮痛組成物」に関する発明が知られている(特許文献2)。しかしながら、この鎮痛組成物においては、主成分である塩基性オキセサゼインが溶解されておらず、分散されているので患部からの吸収性や保存条件によっては製剤中の薬物の含量が不均一となり、期待した有効性が発揮できないことがある。
【0004】
直腸の局所的疾患である痔疾患には、痔核、裂肛等があり、患部の痛み、かゆみ、腫れ、出血等を伴い、特に患部の疼痛は患者に極度の苦痛を与える。従来の痔疾用剤には、坐剤または軟膏剤等に局所麻酔剤を単独で配合して用いている製品があるが、その効果は一般的に比較的短時間で消失し充分とはいえない。また、切傷、すり傷、かき傷、にきび、とびひ、面ちょう等の皮膚上の創傷面、あせも、ただれ、かぶれ、じんましん、虫刺され、水虫、たむし等の疾患、あるいは抜歯、手術等に伴う局所的な痛み及びかゆみの緩解は、患者の苦痛を軽減するとともに、その痛み及びかゆみを回避するために爪または外的因子により疾患部を損傷させる行為を抑制する上で重要であり、これらの目的で局所麻酔剤を配合した製剤が使用されているが、その効果は通常短時間で消失することから充分とは言えない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−97134
【特許文献2】特開平11−12169
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、各種疼痛及びかゆみの抑制に非常に有効であって、その作用効果において優れた即効性及び持続性を示し、良好な製剤均一性を有し、改善された経粘膜あるいは経皮吸収性を奏し、あるいは低濃度で有効であるオキセサゼイン局所麻酔薬を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記問題を解決するため鋭意研究を行った結果、有効成分である塩基性オキセサゼイン又はその塩を特定のキャリアに溶解させることにより、優れた上記特性を有する局所麻酔組成物が得られることを見出して本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)塩基性オキセサゼイン又はその塩が、脂肪酸トリグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油類、ポリオール類、高級アルコール類、脂肪酸エステル類、脂肪酸類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、蜜蝋、クロタミトン、酢酸トコフェロール、精製ラノリン及びトリベノシドから選ばれる1種又は2種以上の医薬上許容しうるキャリアに溶解されていることを特徴とする局所麻酔組成物、
(2)さらに副腎皮質ステロイドを含有することを特徴とする上記(1)に記載の局所麻酔組成物。
(3)塩基性オキセサゼイン又はその塩が、医薬上許容しうるキャリアに対して0.1〜10質量%配合されていることを特徴とする上記(1)に記載の局所麻酔組成物、
(4)キャリアが炭化水素を含まないことを特徴とする上記(1)に記載の局所麻酔組成物、
(5)脂肪酸トリグリセリド類が、ハードファット、カカオ脂、オリーブ油、ゴマ油、大豆油及び中鎖脂肪酸トリグリセリドから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)に記載の局所麻酔組成物、
(6)グリセリン脂肪酸エステル類が、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル及びモノイソステアリン酸グリセリルから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)に記載の局所麻酔組成物、
(7)ソルビタン脂肪酸エステル類が、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン及びセスキイソステアリン酸ソルビタンから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)に記載の局所麻酔組成物、
に関する。
【0009】
また、本発明は、
(8)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類が、POE(5)硬化ヒマシ油、POE(20)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油及びPOE(60)硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)に記載の局所麻酔組成物、
(9)ポリオール類が、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)に記載の局所麻酔組成物、
(10)高級アルコール類が、セタノール及び/又はヘキシルデカノールであることを特徴とする上記(1)に記載の局所麻酔組成物、
(11)局所麻酔組成物が軟膏、坐剤、ゲル、ローション、クリーム、乳剤、液剤又はスプレー剤であることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の局所麻酔組成物、
(12)直腸内、膣内及び口腔内のいずれかの粘膜に投与することを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の局所麻酔組成物、
(13) 肛門、膣及び口部周辺の損傷部位、それらの術後創又はそれらの疾患に適用することを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の局所麻酔組成物、
(14) 局所麻酔組成物を痔疾患の疼痛又はかゆみに適用することを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の局所麻酔組成物、
(15) 口内炎、歯周病又は虫歯の疼痛に適用することを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の局所麻酔組成物、
(16)手術、抜歯又は処置前後の疼痛の防止に適用することを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の局所麻酔組成物、
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明における局所麻酔剤の有効成分である塩基性オキセサゼインは、化学名を2,2′−[(2−ヒドロキシエチル)イミノ]ビス[N−(1,1−ジメチル−2−フェニルエチル)−N−メチルアセトアミド]と称し、日本薬局方解説書によればコカインの500倍、プロカインの4000倍の強い麻酔作用を持つ化合物として知られている。塩基性オキセサゼインを配合した内服薬(錠剤、顆粒)が、食道炎、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎等の疾患に伴う疼痛等に有効な胃粘膜局所麻酔剤として市販されている。
【0011】
塩基性オキセサゼインには、強酸性下でも活性が維持されるという、他の局所麻酔薬にみられないユニークな特性がある。局所麻酔薬のなかには、酸性下で薬効の低下または消失を来たすものが多い。これは、個々の薬剤のpKaに起因して周囲環境のpHが下がるとイオン化する分子の割合が高まり細胞膜透過性が低下するからであり、多くの局所麻酔薬はpH4〜8の範囲でしか薬効を示さない。これに対して塩基性オキセサゼインは、元来が弱塩基性であってイオン化しにくく、pH1.0〜2.0の強酸性下でも遊離塩基型を維持して活性を示すことが知られている。前記したように塩基性オキセサゼインを配合した経口剤(錠剤、顆粒)が、食道炎、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎等の疾患に伴う疼痛等に有効な胃粘膜局所麻酔剤として市販されているが、経口剤以外の剤型による塩基性オキセサゼインの実用化はまだ成功を見ていない。これは、塩基性オキセサゼインが水に難溶であり使い難いことに起因すると考えられる。
【0012】
本発明の塩基性オキセサゼイン局所麻酔組成物は、有効成分である塩基性オキセサゼイン又はその塩(例えば塩酸塩)が医薬上許容しうるキャリアに溶解されていることを特徴とする。
当該局所麻酔組成物は、その剤型に応じ、それ自体公知の方法で製造することができるが、塩基性オキセサゼイン又はその塩を医薬上許容しうるキャリアに溶解させてから所望の剤型に成型することが好ましい。塩基性オキセサゼイン又はその塩をキャリアに溶解する場合には、使用するキャリアの種類によって変わりうるが、一般に加温下、好ましくは約60〜75℃で溶解するのがよい。
【0013】
塩基性オキセサゼイン又はその塩の溶解に使用する医薬上許容しうるキャリアとしては、塩基性オキセサゼイン又はその塩を、必要ならば加温下、溶解できるものであって、室温に冷却した場合、有効成分がキャリア中に析出してこないものであれば特に制限はなく、例えば脂肪酸トリグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油類、ポリオール類、高級アルコール類、脂肪酸エステル類、脂肪酸類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、蜜蝋、クロタミトン、酢酸トコフェロール、精製ラノリン及びトリベノシドが挙げられる。これらのキャリアは、単独で、あるいは2種以上の混合物として使用することができる。なお、これらのキャリアは、市販されているものも使用することができる。また、炭化水素キャリア、例えば白色ワセリン、流動パラフィン等を高濃度で含有していると塩基性オキセサゼインの結晶が析出してくることがあるので、本発明組成物は、医薬上許容しうるキャリアにはそのような炭化水素のキャリアを含有していないことを一つの特徴としている。
【0014】
脂肪酸トリグリセリド類の具体例としては、ハードファット(例えば、商品名:イソカカオMO5R)、カカオ脂、オリーブ油、ゴマ油、大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(例えば、商品名:ミグリオール812、ココナードMT;花王製)等が挙げられる。
【0015】
グリセリン脂肪酸エステル類の具体例としては、モノミリスチン酸グリセリル(例えば、商品名:MGM、ニッコール製)、モノステアリン酸グリセリル(例えば、商品名:MGS−B、MGS−F20、MGS−F75;ニッコール製)、モノオレイン酸グリセリル(例えば、商品名:MGO;ニッコール製)、モノイソステアリン酸グリセリル(例えば、商品名:MGOIS;ニッコール製)等が挙げられる。
【0016】
ソルビタン脂肪酸エステル類の具体例としては、モノラウリン酸ソルビタン(例えば、商品名:SL−10;ニッコール製)、モノパルミチン酸ソルビタン(例えば、商品名:SP−10;ニッコール製)、トリステアリン酸ソルビタン(例えば、商品名:SS−30;ニッコール製)、モノオレイン酸ソルビタン(例えば、商品名:SO−10;ニッコール製)、トリオレイン酸ソルビタン(例えば、商品名:SO−30;ニッコール製)、セスキオレイン酸ソルビタン(例えば、商品名:SO−15R;ニッコール製)、セスキイソステアリン酸ソルビタン(例えば、商品名:SI−15R;ニッコール製)等が挙げられる。
【0017】
ポリオキシエチレン硬化ひまし油類の具体例としては、POE(5)硬化ヒマシ油(例えば、商品名:HCO−5;ニッコール製)、POE(20)硬化ヒマシ油(例えば、商品名:HCO−20;ニッコール製)、POE(40)硬化ヒマシ油(例えば、商品名:HCO−40;ニッコール製)、POE(60)硬化ヒマシ油(例えば、商品名:HCO−60;ニッコール製)等を挙げることができる。
【0018】
ポリオール類の具体例としては、2個以上の水酸基を有する化合物が挙げられ、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。
【0019】
高級アルコール類の具体例としては、例えばセタノール、ヘキシルデカノール等が挙げられる。
【0020】
脂肪酸エステル類の具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソイプロピル等が例示される。
【0021】
脂肪酸類の具体例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0022】
ポリグリセリン脂肪酸エステル類の具体例としては、モノオレイン酸ジグリセリル(例えば、商品名:DGMO−C;ニッコール製)、モノオレイン酸ヘキサグリセリル(例えば、商品名:Hexaglyn 1−O;ニッコール製)、モノラウリン酸デカグリセリル(例えば、商品名:Decaglyn 1−L;ニッコール製)、モノオレイン酸デカグリセリル(例えば、商品名:Decaglyn 1−O;ニッコール製)、モノリノール酸デカグリセリル(例えば、商品名Decaglyn 1−LN;ニッコール製)、ペンタオレイン酸デカグリセリル(例えば、商品名Decaglyn 5−O;ニッコール製)、デカオレイン酸グリセリル(例えば、商品名Decaglyn 10−O;ニッコール製)等が挙げられる。
【0023】
ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類の具体例としては、モノステアリン酸POE(5)グリセリル(例えば、商品名:TMGS−5;ニッコール製)、モノオレイン酸POE(15)グリセリル(例えば、商品名:TMGO−15;ニッコール製)、等が挙げられる。
【0024】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類の具体例としては、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(例えば、商品名:TS−10;ニッコール製)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(例えば、商品名:TO−10M;ニッコール製)等が挙げられる。なお、括弧内の数値は酸化エチレンのモル付加数を意味する。
【0025】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類の具体例としては、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2EO)(例えば、商品名:MYS−2、ニッコール製)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10EO)(例えば、商品名:MYS−10、ニッコール製)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40EO)(例えば、商品名:MYS−40、ニッコール製)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(2EO)(例えば、商品名:MYO−2、ニッコール製))等が挙げられる。
【0026】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル類の具体例としては、POE(2)ラウリルエーテル(例えば、商品名:BL−2;ニッコール製)、POE(4.2)ラウリルエーテル(例えば、商品名:BL−4.2;ニッコール製)、POE(9)ラウリルエーテル(例えば、商品名:BL−9EX;ニッコール製)、POE(2)セチルエーテル(例えば、商品名:BC−2:ニッコール製)、POE(7)セチルエーテル(例えば、商品名:BC−7;ニッコール製)、POE(25)セチルエーテル(例えば、商品名:BC−25TX;ニッコール製)等が挙げられる。
【0027】
上記キャリアのうち、好ましいキャリアとしては、脂肪酸トリグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油類、ポリオール類、高級アルコール類、蜜蝋、クロタミトン、精製ラノリン、酢酸トコフェロール及びトリベノシド等が挙げられる。
また、有効成分である塩基性オキセサゼイン又はその塩が、医薬上許容しうるキャリアに対して、一般に約0.1〜10質量%配合され、好ましくは約0.25〜2.5質量%である。
【0028】
本発明の局所麻酔組成物には、局所麻酔剤以外の薬物を1種又はそれ以上配合することができる。そのような薬物は特に制限されるものではないが、例えば、抗炎症作用を有する副腎皮質ステロイドであるプレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾンまたはグリチルレチン酸等を、ビタミン剤である酢酸トコフェロール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、エルゴカルシフェノール、塩酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサミン、リン酸ピリドキサミン、塩酸ピリドキサール、リン酸ピリドキサール、リボフラビンまたは酪酸リボフラビン等を、消炎解熱鎮痛剤としてアスピリン、アセトアミノフェン、フェナセチン、ジクロフェナックナトリウム、インドメタシン、メフェナム酸、アミノピリンまたはイブプロフェン等を、鎮痒、創傷治癒剤である塩化リゾチーム、アラントインまたはアルクロキサ等を、サルファ剤であるスルファジアジン、スルフィソミジン、スルフィソミジンナトリウムまたはホモスルファミン等を、抗生物質または抗真菌剤であるエリスロマイシン、テトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、硫酸ストレプトマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸フラジオマイシン、硫酸カナマイシン、クロトリマゾール、ミコナゾールまたは硝酸ミコナゾール等を、及び/又は殺菌剤であるアクリノール、アルキルポリアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩化ベルベリン、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン液、フェノールまたはレゾルシン等を配合することができる。これらの局所麻酔薬以外の薬効成分のうち、好ましいのは抗炎症作用を有する副腎皮質ステロイド、特に好ましいのは酢酸プレドニゾロンである。痔疾患は痛み・痒みの症状以外に腫れや出血といった症状を伴うことから、腫れと出血を緩和させることが期待できる酢酸プレドニゾロンとオキセサゼインとの併用は、痔疾患の治療に効果的である。
【0029】
本発明の局所麻酔組成物の剤型としては、直腸内、膣内及び口腔内のいずれかの粘膜あるいは皮膚に、さらに詳しくは肛門、膣及び口部周辺の損傷部位、それらの術後創又はそれらの疾患(例えば痔疾、口内炎、歯周病、虫歯など)に適用可能なものであれば特に限定されるものではないが、軟膏、坐剤、ゲル、ローション、クリーム、乳剤、液剤、スプレー剤等の形態が挙げられ、好ましいのは軟膏又は坐剤である。
【0030】
これらの製剤は、その剤型に応じて適宜、製造することができる。例えば、軟膏あるいは坐剤を製造する場合、医薬上許容しうるキャリアと塩基性オキセサゼイン又はその塩を混合し、加温(約60〜75℃)して両成分を溶解した後、該溶液を室温まで冷却し、適宜成型することによって製造できる。また、ゲル、ローション、クリーム剤、乳剤、液剤、スプレー剤を製造する場合も、上記キャリアと塩基性オキセサゼイン又はその塩の溶解液を適宜、それ自体公知の方法で成型して目的の製剤とすることができる。さらに必要に応じて、溶解補助剤、pH調節剤、保湿剤、防腐剤、粘凋化剤、界面活性剤、溶媒などを適宜添加してもよい。
【0031】
こうして得られる本発明の局所麻酔組成物は、有効成分である塩基性オキセサゼイン又はその塩が医薬上許容しうるキャリアに溶解された状態で製剤化されているので、有効成分が安定かつ均一な状態で存在する。そのため、こうした組成物を局所に適用した場合、局所の粘膜や皮膚の表面に有効成分を均一に接触させることができるので、従来技術の分散製剤と異なり、吸収や作用発現の遅速、持続時間などを制御するのが容易となる。これにより、本発明の局所麻酔組成物は局所麻酔作用の即効性かつ持続性、製剤保存安定性及び均一性、改善された経粘膜及び経皮吸収性、副作用がない、あるいは低濃度での薬効発揮という多くの優れた特性を有する。
【0032】
本発明の局所麻酔組成物中の塩基性オキセサゼイン又はその塩の含有量は、患者の症状、剤型等によって、適宜選択可能であるが、一般に約0.25〜5質量%、好ましくは、約0.5〜2.5質量%である。軟膏の場合、成人に対して1日1〜2回、適量を患部に塗布すればよく、また坐剤の場合は、1回1個を、1日1〜2回肛門内に挿入して使用することができる。
【0033】
本発明の好ましい局所麻酔組成物としては軟膏が例示され、その好ましい組成は、軟膏約100g当たり、塩基性オキセサゼイン約0.5〜2.5g、酢酸プレドニゾロン約0.03〜0.2g、パルミチン酸デキストリン約4〜10g、メチルポリシロキサン約0.03〜0.15g及び中鎖脂肪酸トリグリセリド約87.15g〜95.44gである。
【0034】
また、本発明の好ましい局所麻酔組成物としては坐剤が例示され、その好ましい組成は、坐剤1個(1.75g)当たり、塩基性オキセサゼイン約8.75〜43.75mg、酢酸プレドニゾロン約0.5〜3.5mg、クロタミトン約8.75〜87.5mg、トリステアリン酸ソルビタン約15〜140mg及びハードファット約1475.25〜1717mgである。
【0035】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
塩基性オキセサゼイン(0.5g)とパルミチン酸デキストリン(6g)を室温下で中鎖脂肪酸トリグリセリド(93.5g)に分散し、90℃に加温して塩基性オキセサゼインとパルミチン酸デキストリンを溶解したのち、室温にまで冷却して0.5%(w/w)溶解型の塩基性オキセサゼイン軟膏を得た。
【0037】
実施例2
塩基性オキセサゼイン(1g)とパルミチン酸デキストリン(6g)を室温下で中鎖脂肪酸トリグリセリド(93g)に分散し、90℃に加温して塩基性オキセサゼインとパルミチン酸デキストリンを溶解したのち、室温にまで冷却して1%(w/w)溶解型の塩基性オキセサゼイン軟膏を得た。
【0038】
実施例3
【0039】
[製造方法]
塩酸オキセサゼインを中鎖脂肪酸トリグリセリドに加えて60℃に加温して溶解し、この液を40〜50℃に冷やし、パルミチン酸デキストリンを加えて均一に分散した。これを90℃まで加温して溶解し、70℃付近まで冷却する。別に一部の中鎖脂肪酸トリグリセリドを70℃に加温して酢酸プレドニゾロンを均一に分散し、先の液にこれを加えて均一に混和し、メチルポリシロキサンを消泡剤として加えた。これを70℃から50℃付近まで攪拌しながら冷却し、軟膏チューブに充填し、室温で冷却して上記組成の軟膏を得た。
[用法用量]
1日1〜2回、適量を患部に塗布する。
【0040】
実施例4
【0041】
[製造方法]
クロタミトン、トリオレイン酸ソルビタン、一部のハードファットを60℃に加温して混和し、これに塩基性オキセサゼインを加えて溶かした。予め60℃に加温したハードファットの一部を用いて酢酸プレドニゾロンを均一に分散して、先の液に加えて均一に攪拌し、これを坐剤の型に流し込み冷却して固化させて上記組成の坐剤を得た。
[用法用量]
1日1〜2回、1個を肛門内に挿入する。
【0042】
実施例5〜24
種々の医薬上許容しうるキャリアに塩基性オキセサゼインを配合した実施例5〜24及び比較例1〜3を次表に示す。なお、表中、各成分の配合量はグラム単位である。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
比較例1
パルミチン酸デキストリン(6g)を室温下で流動パラフィン(93.5g)に分散し、90℃に加温してパルミチン酸デキストリンを溶解させ、60℃以下まで冷却した後に塩基性オキセサゼイン(0.5g)を加えて分散し、更に室温まで冷却した。
【0046】
比較例2
パルミチン酸デキストリン(6g)を室温下で流動パラフィン(93g)に分散し、90℃に加温してパルミチン酸デキストリンを溶解させ、60℃以下まで冷却した後に塩基性オキセサゼイン(1g)を加えて分散し、更に室温まで冷却した。
【0047】
比較例3
白色ワセリン(74.5g)を70℃で加熱溶解し60℃まで冷却したものに、予め室温で流動パラフィン(25g)に塩基性オキセサゼイン(0.5g)を分散し、この分散液を先の液に混ぜ合わせ室温まで冷却した。
【0048】
試験例1 溶解性試験
各基剤にオキセサゼインを溶解した疎水性組成物とし、1週間25℃で放置したときの状態を試験した。
1週間後に顕微鏡によりオキセサゼインの結晶の有無を観察し、溶解状態にあるものを○、結晶として析出を認めたものを×として評価した。
【0049】
【表3】
【0050】
試験例2 局所麻酔作用
実施例1、2及び比較例1、2についてモルモットの角膜反射を利用して表面麻酔作用試験を行った。その結果、分散製剤である比較例1、2よりも溶解製剤である実施例1、2のほうが作用持続時間の延長が認められた。
【0051】
試験方法
モルモットの右目角膜をマンドリン線で刺激し、反射があることを確認した後、被験物質20mg/eyeをガラス棒を用いて角膜に塗布した。その後、塗布1時間後までは5分間隔で、1〜8時間後までは10分間隔、8時間以降は30分おきに角膜をそれぞれ5回刺激し、5回とも角膜反射が認められた時点まで測定をおこなった。5回とも反射が認められるようになるまでの時間を作用持続時間として算出した。結果を次表に示す。なお、表中、OXZは、オキセサゼインを表す。
【0052】
【表4】
【0053】
試験例3 含量均一性試験
実施例2、5、11、16及び比較例3について保存状態における含量均一性試験を実施した。アルミニウム製軟膏チューブに充填したものを50℃でキャップ部を下向きに1日間保存したときのオキセサゼインの含量分布をHPLCを用いて測定した。軟膏チューブの口側から先端、末端部として2箇所について測定を行いその差を比較した。
【0054】
【表5】
測定はn=3として行い、その平均値の差を求めた。
【0055】
HPLC条件
測定条件
カラム:ステンレス管に平均粒子径5μmのオクタデシルシリル化シリカゲルカラム I.D.=4.6×150mm
カラム温度:40℃
移動相:PBS(リン酸緩衝液):アセトニトリル=2:3、pH7.5
ただし、PBSは▲1▼10mM KH2PO4:▲2▼10mM K2HPO4= 19:81で混合する。微調整については、▲1▼又は▲2▼を加えることによりおこなう。
RT:オキセサゼイン 約10分
測定波長:208nm
【0056】
【発明の効果】
本発明の局所麻酔剤は、各種疼痛及びかゆみの抑制に非常に有効である、その作用効果において優れた即効性及び持続性を示す、良好な保存安定性及び製剤均一性を有する、改善された経粘膜あるいは経皮吸収性を有する、副作用を起こさない、低濃度で有効である等の優れた効果を有する。
Claims (16)
- 塩基性オキセサゼイン又はその塩が、脂肪酸トリグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油類、ポリオール類、高級アルコール類、脂肪酸エステル類、脂肪酸類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、蜜蝋、クロタミトン、酢酸トコフェロール、精製ラノリン及びトリベノシドから選ばれる1種又は2種以上の医薬上許容しうるキャリアに溶解されていることを特徴とする局所麻酔組成物。
- さらに副腎皮質ステロイドを含有することを特徴とする請求項1に記載の局所麻酔組成物。
- 塩基性オキセサゼイン又はその塩が、医薬上許容しうるキャリアに対して0.1〜10質量%配合されていることを特徴とする請求項1に記載の局所麻酔組成物。
- キャリアが炭化水素を含まないことを特徴とする請求項1に記載の局所麻酔組成物。
- 脂肪酸トリグリセリド類が、ハードファット、カカオ脂、オリーブ油、ゴマ油、大豆油及び中鎖脂肪酸トリグリセリドから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の局所麻酔組成物。
- グリセリン脂肪酸エステル類が、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル及びモノイソステアリン酸グリセリルから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の局所麻酔組成物。
- ソルビタン脂肪酸エステル類が、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン及びセスキイソステアリン酸ソルビタンから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の局所麻酔組成物。
- ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類が、POE(5)硬化ヒマシ油、POE(20)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油及びPOE(60)硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の局所麻酔組成物。
- ポリオール類が、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の局所麻酔組成物。
- 高級アルコール類が、セタノール及び/又はヘキシルデカノールであることを特徴とする請求項1に記載の局所麻酔組成物。
- 局所麻酔組成物が軟膏、坐剤、ゲル、ローション、クリーム、乳剤、液剤又はスプレー剤であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の局所麻酔組成物。
- 直腸内、膣内及び口腔内のいずれかの粘膜に投与することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の局所麻酔組成物。
- 肛門、膣及び口部周辺の損傷部位、それらの術後創又はそれらの疾患に適用することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の局所麻酔組成物。
- 局所麻酔組成物を痔疾患の疼痛又はかゆみに適用することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の局所麻酔組成物。
- 口内炎、歯周病又は虫歯の疼痛に適用することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の局所麻酔組成物。
- 手術、抜歯又は処置前後の疼痛の防止に適用することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の局所麻酔組成物。
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