JP3782551B2 - 鎮痛組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、疼痛を伴う創部や粘膜部に直接かつ局所的に外用薬として投与可能であり、長時間持続的な鎮痛効果を発揮し、しかも副作用をほとんど起こさない安全な鎮痛組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の医療現場では、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上の観点から、ペイン・コントロール(痛みの抑制)が重要な概念として定着しつつある。
これまでに、創傷や手術後の疼痛を抑えるための鎮痛薬として様々な薬剤が臨床的に用いられているが、これらの多くは中枢神経系作用薬である。すなわち、投与の形態は内服、注射、肛門内挿入など様々であるものの、いずれの場合も薬剤がまず投与部位から血液中に吸収され、続いて全身を循環する。このときの血中薬剤濃度の上昇により大脳皮質における痛みの認識が阻害され、痛みが一時的に除去または緩和されるのである。
【0003】
これ対し、疼痛の発生部位または発生予測部位の末梢神経に対して局所的な麻酔効果を示す薬剤として、局所麻酔薬が知られている。局所麻酔薬についてはその用途に応じて様々な剤型が開発されており、例示すれば浸潤麻酔,伝達麻酔,静脈内局所麻酔に使用される注射液、上気道粘膜に噴霧して用いるスプレー剤、胃カメラ等の消化器系の内視鏡検査時に口に含ませたり飲み込ませて粘膜を麻酔するためのビスカス、痛みのある創部や粘膜部位への注射針刺入時の除痛や歯科の表面麻酔を行うための軟膏、泌尿器科的操作時に尿道へ注入したり、内視鏡挿入や気管内挿管時に器具側に塗布されるゼリー等がある。
目下の臨床現場で最も多く用いられている局所麻酔薬は、アミド型局所麻酔薬に属するリドカインである。ただし、リドカインは即効性には優れてはいるものの、その投与目的が診療・検査時の疼痛の一時的な除去または緩和にあり、薬効が長時間持続するものではない。
【0004】
また、他のアミド型局所麻酔薬として、オキセサゼインが知られている。この薬剤は、化学名を2,2′−[(2−ヒドロキシエチル)イミノ]ビス[N−(1,1−ジメチル−2−フェニルエチル)−N−メチルアセトアミド]と称し、日本薬局方解説書(廣川書店)によると、エステル型局所麻酔薬であるコカインの500倍、同じくエステル型局所麻酔薬であるプロカインの4000倍の強い麻酔作用を持つとされ、現状で入手できる局所麻酔薬の中では最も強力である。
【0005】
オキセサゼインには、強酸性下での活性維持という、他の局所麻酔薬にみられないユニークな特性がある。
塩基性局所麻酔薬には、酸性下で薬効の低下または消失を来たすものが多い。これは、個々の薬剤のpKa(酸解離定数Kaの−log)に起因して周囲環境のpHが下がるとイオン化する分子の割合が高まり細胞膜透過性が低下するからであり、多くの局所麻酔薬はpH4〜8の範囲でしか薬効を現さない。これに対してオキセサゼインは、元来が弱塩基性であってイオン化しにくく、pH1.0〜2.0の強酸性下でも遊離塩基型を維持して活性を示すことが、ペンシルバニア・メディカル・ジャーナル(Pennsylvania Medical Journal)第65巻,p.1369〜1372(1962年)に記載されている。
現状でオキセサゼインが食道炎,胃炎,十二指腸潰瘍,過敏性大腸症等の疾患における疼痛,酸症状,あい気,悪心,嘔吐,胃部不快感,便意逼迫を改善するための内服薬として用いられているのは、上記の特性による。しかし、内服薬以外の剤型によるオキセサゼインの実用化は進んでいない。これは、この薬物が水に難溶であり使いづらいことが一因である。
【0006】
ところで、局所麻酔薬は一般に経皮吸収性に劣るため、局所麻酔薬を外用薬として使用可能とするためには、この吸収性を改善することが不可欠である。オキセサゼインについても、外用薬として用いようとする試みがこれまでに幾つかなされている。
たとえば特開平8−259464号公報には、油脂またはそれと混和しえる親油性基剤に溶解または分散させた塩基性局所麻酔薬と、溶媒に溶解または分散させた塩基性局所麻酔薬の塩酸塩とを均一に混和してなる局所麻酔組成物が開示されている。つまりこの組成物は、局所麻酔薬と局所麻酔薬の塩酸塩とを所定の配合比率で含むものである。実施例では、リドカインと塩酸ジブカインを併用し、これらを白色ワセリン,中鎖脂肪酸トリグリセリド,その他を含む基剤に1.3〜3%の濃度に溶解または分散させた組成物を調整し、その麻酔作用をモルモット角膜を用いて確認している。
なお、上記公報には使用可能な塩基性局所麻酔薬としてオキセサゼインが例示されているが、オキセサゼイン塩酸塩は使用可能な塩基性局所麻酔薬の塩酸塩としては例示されていない。
【0007】
一方、特開平7−145047号公報には、使用する局所麻酔薬をオキセサゼインに限定し、これを支持体の片面に形成される粘着基剤の層の内部で完全に溶解させた局所麻酔用経皮吸収テープが開示されている。この公報によると、粘着基剤中に局所麻酔剤が析出していると皮膚透過に有効な溶解した局所麻酔剤濃度が下がり、麻酔の即効性に欠け、また析出した局所麻酔剤は経皮吸収製剤の皮膚への粘着力を下げることが問題とされている。上記公報ではこの問題を解決するために、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤に可塑剤としてミリスチン酸イソプロピルを添加し、粘着基剤中におけるオキセサゼインの溶解性を高めている。実施例に記載される経皮吸収テープの粘着剤層中のオキセサゼインの含有率は、0.12〜0.38%である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、局所麻酔薬は末梢神経の伝導を遮断して疼痛を除去する目的に用いられるものであり、非中毒量であれば中枢神経への影響は極めて少ないため、その全身作用については忘れられがちである。しかしながら、局部麻酔薬の投与量が増加して血中濃度が中毒量に近づいてくると、局部麻酔薬は血液から脳関門を通過して脳実質や脳脊髄液中に移行し、中枢神経の刺激症状や痙攣を起こす。さらに量が多ければ意識喪失や呼吸停止を引き起し、死を招くこともある。
【0009】
このような局所麻酔薬中毒の見地からすると、麻酔作用が元々極めて強いオキセサゼインの吸収効率を故意に上昇させた状態で外用薬として用いることには、大きな危険が伴う。
前述の特開平8−259464号公報ではオキセサゼインの塩酸塩については言及されていないが、これは、オキセサゼインの塩を容易に形成できないことと関連しているものと推測される。しかし、仮にオキセサゼインの塩酸塩を用いたとしたら、前述のペンシルバニア・メディカル・ジャーナルにも記載されているように、これは他の多くの局所麻酔薬の塩と異なり、有機溶媒に易溶である。動物の細胞膜はリン脂質や糖タンパクから構成される一種の有機溶媒と考えられるので、上記の事実はオキセサゼインの塩酸塩が容易に経皮吸収され得ることを意味している。
【0010】
しかも、オキセサゼインはたとえばリドカインのような他の局所麻酔剤と異なり血中濃度半減時間が極めて長いことが知られており、このような薬物が細胞膜を通過して次々と体内に取り込まれることは、血中薬物濃度を蓄積的に増大させ、容易に中毒量に達する可能性につながる。特に、創傷や手術による傷口等のような皮膚の欠損部、あるいは粘膜のようにもともと角質化層が存在しない部位は外用薬の吸収性が高いので、皮膚への塗布時に誤って上述のような部位に経皮吸収性を高めたオキセサゼインを含む外用薬が付着することは、人体にとって非常に危険である。
【0011】
従来から提案されているようなリドカイン等の局所麻酔薬の塩酸塩を溶解または分散させた組成物については、このような危険性を強く認識する必要はなかった。なぜなら、健康状態の人体の体液が弱アルカリ性であるのに対して炎症巣や傷口では組織のpHが弱酸性側に傾いているため、酸性下でイオン化率の高まる局所麻酔薬では吸収率が大幅に低下する上、血中薬物濃度の半減期も比較的短かったからである。しかしこれでは、上述のような皮膚の欠損や負傷、あるいは痔疾患に代表される粘膜の病変あるいは炎症に伴う激しい疼痛の緩和に局所麻酔薬が役立たないことになり、患者のQOLも向上しない。実際、本発明者は、痔疾患の鎮痛用に市販されているリドカイン含有の座剤が臨床的にほとんど効き目を現さないことを確認している。
【0012】
一方、前述の特開平7−145047号公報に記載されるオキセサゼイン含有の局所麻酔用経皮吸収テープには、創傷部や粘膜に直接貼付することができないという問題がある。また、このテープの粘着剤層にはミリスチン酸イソプロピルに相溶性を有する粘着剤としてアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、あるいはシリコン系重合体が使用され、しかも粘着凝集力の低下を補ったり局所麻酔薬の経皮吸収性を向上させるために充填剤,有機酸,界面活性剤をはじめとする様々な添加剤が併用される。しかし、国民的なアレルギー増加傾向が問題となる中で、このように多くの添加物を複雑に組み合わせた製剤を使用するためには、その成分すべてについてアレルギー・テストを行う必要があり、実用的な製剤とは言い難い。
【0013】
このように、オキセサゼインを外用薬として用いれば、強力かつ長時間持続する鎮痛効果が得られるという発想と期待は以前からあったものの、いずれも安全性に大きな問題があることに加えて人体への施用箇所にも制限があり、実用に供し得るものではなかった。そこで本発明は、オキセサゼインを安全な外用薬として用いることを可能とする鎮痛組成物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、オキセサゼインを非溶解状態でこれと相溶しない分散媒中に保持させることにより、外用薬として安全に使用可能な鎮痛組成物を提供可能であることを見出し、本発明を提案するに至ったものである。
すなわち本発明の鎮痛組成物は、遊離塩基型のオキセサゼインを、これと相溶しない生体付着性分散媒中に分散させたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者は、「オキセサゼインを基剤に溶解させて経皮吸収性を高める」とする従来の発想を転換し、「オキセサゼインを基剤に溶解させない形態で保持する」ことにより、本来的に徐放性を備えた安全なオキセサゼインの外用薬を提案するものである。基剤に溶解しないオキセサゼインの形態とは、遊離塩基型である。
本発明の鎮痛組成物によるオキセサゼイン鎮痛効果の発現機構は、おおよそ次のとおりである。本組成物が表皮の欠損部位や粘膜へ施用されると、身体の動きや体温による基剤の流動性の上昇および患部組織内への浸透に助けられながらオキセサゼインの微粒子が移動し、患部組織の細胞へ到達した微粒子が細胞膜と順次相溶して細胞内に取り込まれる。細胞内ではオキセサゼインがわずかにイオン化し、このイオン化したものが強力な麻酔作用を現す。つまり、本発明ではオキセサゼインが基剤に溶解していないため、患部組織細胞がオキセサゼインを吸収するタイミングが一律ではなく、したがってオキセサゼインの血中濃度が中毒量を超える危険がない。つまり、本組成物は本質的に徐放性を備えたものであり、鎮痛効果の長時間持続性と安全性、および薬剤の安定性に優れるものである。
【0016】
本発明の鎮痛組成物の有効成分であるオキセサゼインとしては、その純物質の結晶粉末を用いることが特に好適であるが、より簡便には市販の錠剤や顆粒を用いても良い。いずれを用いるにしても、外用薬としての使用にあたって患者が物理的な違和感を覚えることのないよう、オキセサゼインを微粉末状態で生体付着性分散媒中に分散させることが重要である。
純物質の結晶粉末は最初から微粉末状で入手できる場合が多いので、このような場合には格別の処理を経ることなく用いて良い。
一方、市販のオキセサゼイン含有錠剤やオキセサゼイン含有顆粒を使用する場合には、これらを乳鉢で微粉砕してから使用する。微粉砕物の平均粒径は100μm以下とすることが好ましい。平均粒径の下限は特に規定されるものではないが、あまり細かすぎても取扱い性が劣化するので、通常は1μm未満まで細かくする必要はない。
【0017】
オキセサゼインは、生体付着性分散媒に対して0.5〜20重量%の範囲で分散されていることが好適である。実際の分散量については用途に応じて適宜決定すれば良いが、上記範囲より少ない場合には十分な薬効や即効性が期待できず、また上記範囲より多い場合には外用薬としての使用感が損なわれたり、アレルギー症状が現れる虞れがある。
なお、上記の分散量は一見すると、前述の特開平7−145047号公報に記載された経皮吸収テープの粘着剤層中のオキセサゼイン含有率に比べてかなり多いが、先に述べた本発明品の優れた徐放性のおかげで何ら人体に有害なものではなく、むしろ鎮痛効果の長時間持続性を実現する上で好ましいものである。
【0018】
上記生体付着性分散媒としては、軟膏基剤が挙げられる。軟膏基剤を使用した場合の本発明の鎮痛組成物とは、すなわちオキセサゼイン軟膏である。上記軟膏基剤としては、油脂類,ロウ類,パラフィン等の油性基剤、水中油形基剤,油中水形基剤,親水ワセリン等の乳剤性基剤、あるいはマクロゴールなどの水溶性基剤を用いることができる。また、上記軟膏基剤には、たとえばリドカインのような他の薬効成分を含有するものであっても良い。
【0019】
ただし、遊離塩基型のオキセサゼインは前述のように経皮吸収性の薬物ではないため、たとえばリウマチの痛みのごとく皮膚表面から深い患部で発生している疼痛を緩和するために上記のオキセサゼイン軟膏を皮膚に塗っても、鎮痛効果は期待できない。したがって、本発明の鎮痛組成物、すなわち外用薬としてのオキセサゼインの薬効が期待できる身体部位は、粘膜や歯肉のごとく上皮細胞層の表面が角化していない部位、あるいは角化していても負傷や手術による傷口が発生した部位であり、緩和または除去可能な疼痛もこれらの部位で発生しているものに限られる。このため、たとえば痔,擦過傷,褥創(床ずれ),組織壊死に伴う疼痛や術後の疼痛の緩和には、上記軟膏が極めて有効である。
【0020】
なお、上述のようなオキセサゼインの適用可能部位を考えると、本発明の鎮痛組成物の剤型を座剤あるいは点眼剤とすることも有効である。座剤を調製するための分散媒としては、イソカカオ(花王株式会社製),ファーマゾール(日本油脂株式会社製)等の油性基剤、あるいはマクロゴール,グリセロゼラチン等の水溶性基剤を用いることができる。いずれの剤型においても、生体付着性分散媒1gあたり5〜800mgのオキセサゼインを用途に応じて分散させれば良い。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
実施例1〜実施例4
本実施例では、市販のオキセサゼイン顆粒または別途入手した純オキセサゼイン結晶粉末を用いて軟膏を調製し、痔,褥創,糖尿病性血行障害、皮膚移植治療のための採皮による疼痛を訴える患者に施用した。
【0022】
軟膏の調製方法は以下のとおりである。
まず、市販のオキセサゼイン顆粒(エーザイ株式会社製;商品名ストロカイン顆粒,5%散)を乳鉢で粉砕し、平均粒径を約1〜30μmとした。純オキセサゼイン結晶粉末を使用する場合には、この粉末の平均粒径が十分に小さいため、微粉砕は特に行う必要はない。
次に、一例としてワセリンとラノリンとを重量比2:1で混合して60℃の湯煎にかけ、この混合物にたとえば1重量%の濃度となるようにバルサムを添加して軟膏基剤を調製した。上記バルサムは、軟膏基剤の硬度を調節するために添加れるもので、取扱い性や使用感を考慮し、また季節的な気温変動に応じて適宜変化させることができる。
一部の実施例については、この基剤に対してさらに20容量%の局方オリーブ油を混合した。この基剤に、上記オキセサゼイン顆粒の微粉砕物もしくは純オキセサゼイン結晶粉末を均一に練り込み、その後室温まで冷却した。
【0023】
比較例1
比較のために軟膏基剤を使用せず、市販のオキセサゼイン顆粒をそのまま鎮痛組成物として使用した。
【0024】
比較例2
ここでは、軟膏基剤として上記のような油性の混合基剤の代わりにセルロース・ゼリーを用いた。セルロース・ゼリーを60℃の湯煎にかけて液状とし、微粉砕化されたオキセサゼイン顆粒を混合した。
【0025】
実施例1〜実施例4、および比較例1と比較例2で調製された軟膏と用例について、表1にまとめた。
【0026】
【表1】
Figure 0003782551
【0027】
実施例1では、市販の5%散顆粒を軟膏基剤に分散させて2.5%散軟膏を調製した。この軟膏約3gを手指にとって痔核患者の患部に直接塗布するか、またはこの軟膏約3gを塗布したガーゼを丸めて肛門内に挿入したところ、5〜10分で疼痛の軽減効果が現れ、しかもこの効果が6〜12時間持続した。患者は、この軟膏を1日に数回患部に塗布することにより、疼痛から開放された日常生活を送ることができた。
また、外傷あるいは火傷の皮膚移植治療のために自身の大腿部から10cm×10cmの皮膚を採皮した形成外科の入院患者9例について、上記軟膏5gを塗布したガーゼをその採皮部位に貼付したところ、9例すべての疼痛を極めて効果的に軽減させることができた。
【0028】
ただし、実施例1の処方では市販の5%散顆粒と軟膏基剤の混合比が1:1となるため、触感に若干のザラつきがあった。そこでより快適な使用感を得るために、実施例2では軟膏を軟化させる働きのあるオリーブ油を添加した軟膏基剤を用いて3%散軟膏を調製した。この軟膏を痔疾患の手術後の傷口に塗布したところ、352症例中、88%に相当する310例の症例で鎮痛効果が認められた。上記3%散軟膏は実施例1の2.5%散軟膏よりもオキセサゼイン含有量が高いにもかかわらず、その触感は滑らかであった。
【0029】
実施例3では、6%散軟膏を2種類の疾患の患者に施用した。
最初のグループは、褥創による足指先の疼痛を強く訴える患者20名である。この軟膏を患部に塗布することにより、17名に鎮痛効果が現れた。
第二のグループは、糖尿病性血行障害による足指の壊死による疼痛を訴える患者8名である。この軟膏を患部に塗布することにより、5名に鎮痛効果が現れた。
【0030】
実施例4では、純物質の結晶粉末をそのまま軟膏基剤に分散させて10%散軟膏を調製した。ここでは、オキセサゼイン終濃度が10%と高いにもかかわらず、触感上のザラつきはほとんど認められなかった。これは、市販の5%散顆粒の重量の95%が賦形剤,結合剤,崩壊剤としてのデンプンやマルトースの粉末で占められているのに対し、純物質の結晶粉末にはこれらの添加剤が一切含まれておらず、少量を分散させるだけで容易に終濃度の高い軟膏が調製できるからである。
また、前述の実施例1の2.5%散軟膏を施用した皮膚移植治療患者9例について、この10%散軟膏も施用したところ、さらに優れた鎮痛効果が得られた。
【0031】
なお、上記いずれの実施例においても軟膏の使用に伴う副作用は観察されなかった。これは、オキセサゼインの血中濃度が中毒量を超えることがなく、また、局所に作用し得る分量のみを使用すれば良いのでオキセサゼインの使用量が元来少なくて済み、しかも非溶解状態で患部に施用される薬物が患部組織に長時間滞在できるからである。
【0032】
一方比較例1では、市販のオキセサゼイン5%散顆粒をそのまま患部に付着させるだけでも、約15分後に鎮痛効果が現れた。しかし、軟膏基剤を使用していないために、肛門部における顆粒の感触が患者に不快感を与えた。
一方、比較例2では、軟膏基剤としてセルロース・ゼリーを用い、実施例と同様に優れた効果が示された。ただし、セルロース・ゼリーは保水力に劣り、時間の経過と共に乾燥してしまう。1時間後にはペースト状態を維持しておらず、患部への付着性が劣化した。
【0033】
以上、本発明の具体的な実施例について述べたが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
たとえば、オキセサゼインを分散させる軟膏基剤やオキセサゼインの終濃度は、用途に応じて適宜変更、選択することが可能である。また、施用の対象となる疾患も上述のものに限られず、怪我による疼痛も本発明の鎮痛組成物により除去または緩和させることが可能である。
また、軟膏を手指にとって患部に塗布する代わりに、この軟膏の1回分使用量を充填した使い捨てチューブ、あるいは予め軟膏をガーゼ部分に塗布した救急絆創膏等の供給形態をとれば、用量の遵守や衛生管理の観点から極めて好ましい。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の鎮痛組成物を使用すれば、局所麻酔薬中で最も強力な麻酔効果を持つオキセサゼインを、安全な外用薬として実用化することが可能となる。この鎮痛組成物は、鎮痛効果に長時間持続性があり、副作用が少なく、しかも投与に際して疼痛を伴わないため、多くの患者を疼痛の苦痛から開放してQOLを向上させることができ、臨床上極めて大きな意義を有するものである。

Claims (7)

  1. 局所麻酔剤として遊離塩基型のオキセサゼインのみを含み、前記麻酔剤がこれと相溶しない、油脂類、ロウ類、パラフィンからなる群から選択される1又は2以上の成分のみからなる油性基剤に分散されてなる鎮痛組成物であって、ゲル化剤を含む鎮痛組成物、およびビタミンEとスクワランを共に含む鎮痛組成物を除く、前記組成物。
  2. 前記オキセサゼインが結晶粉末として前記油性基剤中に分散されてなる、請求項1記載の鎮痛組成物。
  3. 前記結晶粉末の平均粒径が100μm以下である、請求項2記載の鎮痛組成物。
  4. 前記オキセサゼインがオキセサゼイン含有製剤の微粉砕物として前記油性基剤中に分散されてなる、請求項1記載の鎮痛組成物。
  5. 前記オキセサゼインが前記油性基剤に対して0.5〜20重量%の範囲で分散されてなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鎮痛組成物。
  6. 前記油性基剤がワセリン、ラノリンまたはオリーブ油を含むものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鎮痛組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の鎮痛組成物であって、創部または粘膜部適用用である、前記鎮痛組成物。
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