JP2004342963A - 積層型電子部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基体1の長手方向の両端面であって積層方向に平行をなす面に端部電極3、4が形成される。コイル2の始端部と終端部が前記端部電極3、4に接続される。コイル2を構成する各ターンのコイルパターンは同一形状をなす。積層方向に投影して見て、端部電極3、4近傍の巻回部分2bのパターン幅bを、他の部分2aのパターン幅aに比較して広く(b>a)形成する。端部電極近傍の巻回部分のパターン幅bを変えることにより、インピーダンスピーク値の周波数特性を微調整する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層体でなる基体の内部にコイルを形成し、基体の長手方向の両端面に端部電極を設けた積層型電子部品に係わり、特にそのインピーダンスのピーク値の周波数特性を調整する構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の積層型電子部品である直方体状をなすチップビーズは、図9に示すように、磁性体からなる基体1の内部に形成されたヘリカル状のコイル22の幅は、短手方向に対向するように形成される部分22aのパターン幅aが、長手方向に対向するように形成される部分22bのパターン幅bと同じ幅(a=b)である。23、24は基体21の長手方向の両端に設けられた端部電極である。
【0003】
このような積層型電子部品において、各種電子機器で発生するノイズを取り除くため、各種電子機器ごとに異なるノイズの周波数帯域に合わせたインピーダンスピーク値の周波数特性(インピーダンスのピークがどの周波数で現れるかについての特性)が必要とされる。
【0004】
しかしながら、近年の電子機器の高周波化に伴い、ユーザーのインピーダンス特性に対する要求が多種多用になってきている。このことを図10の例で説明すると、それまでのユーザーの要求する積層型電子部品の周波数特性がAで示すようにインピーダンスピーク値が500MHzであったものが、特性Bに示すようにインピーダンスピーク値を700MHz程度に上げてほしいという要求が新たに発せられる場合がある。その場合には特性Aが得らえる積層型電子部品で用いた磁性体材料と同じ磁性体材料を用い、巻数を変える等の手段で対処してインピーダンスピーク値が700MHzとなるB特性を得てきたが、B特性のインピーダンスピーク値を超えた値を要求されると、A特性のものでは特性が得られなくなり、その特性は、インピーダンスピーク値が1300MHz程度のC特性が得られる磁性体材料の巻数調整でも得られない。
【0005】
このため、新たに磁性体材料を開発する必要が生じる。しかし、この新たな特性の積層型電子部品を提供するための磁性体材料の開発には信頼性を確保する意味においても時間がかかる上、磁性体材料が多種になることによって生産管理も複雑化し困難になってくる。
【0006】
このような不具合を解消しうる手段として、特許文献1には、コイルの幅を、ターン単位で変えることにより、所望の特性を得る積層型電子部品が開示されている。また、特許文献2には、積層方向の両端または一端のコイルパターンを他の部分のコイルパターンと異ならせたものが開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特許第3040689号公報
【特許文献2】
特開2003−17327号公報。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許文献1、2に記載の積層型電子部品は、1種の積層型電子部品に2種以上のコイルターンが必要になるため、印刷によりコイル用印刷パターン数が増加する上、印刷工程が複雑化し、設備も大型化して製造コストを上昇させるという問題点がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、磁性体材料を変えることなく、かつターン単位でのコイルパターンを変えることなく、経済的にインピーダンスピーク値の周波数特性を調整できる積層型電子部品を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1)発明の積層型電子部品は、直方体状をなす基体の内部に、積層構造によりヘリカル状コイルが形成され、前記基体の長手方向の両端面であって積層方向に平行をなす面に端部電極が形成され、前記コイルの始端部と終端部が前記端部電極に接続された積層型電子部品であって、
積層方向に投影して見て、前記コイルを構成する各ターンのコイルパターンが同一であり、
前記端部電極近傍の巻回部分のパターン幅bを、他の部分のパターン幅aに比較して広く(b>a)形成し、
前記端部電極近傍の巻回部分のパターン幅bを変えることにより、インピーダンスピーク値の周波数特性を微調整したことを特徴とする。
【0011】
(2)また、本発明の積層型電子部品は、前記コイルを積層方向に見て基体の長手方向のコイルの内径を一定にして、前記端部電極の巻回部分のパターン幅を変えてインピーダンスピーク値の周波数特性を微調整したことを特徴とする。
【0012】
(3)また、本発明の積層型電子部品は、前記コイルの各ターン間の絶縁体層の厚さを変えることにより、インピーダンス値を微調整したことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の積層型電子部品の一実施の形態を、積層方向に見て投影した場合の透視図、図2は本発明による積層型電子部品を、コイルパターンを変えて示す断面図である。
【0014】
本実施の形態の積層型電子部品は、信号中の高周波成分を除去するチップビーズと称されるものであり、磁性体でなる直方体状の基体1内に積層構造によりコイル2を形成し、コイル2の始端部、終端部を基体1の長手方向の両端に設けた端部電極3、4に接続してなる。これらの端部電極3、4は基体1の端部への導体ペーストのディップや印刷により塗布した後、焼成することにより形成される。これらの端部電極3、4を形成する端面は、コイル2の巻心方向に対して平行である。端部電極3、4は、基体1の端面のみならず、その端面に隣接する四面にも延出して形成される。
【0015】
この積層型電子部品は、図3に示すようなスクリーン印刷法あるいは図4に示すようなシート積層法によって製造される。図3に示すスクリーン印刷法による場合には、磁性体粉末を樹脂製バインダーや溶剤と共に混合して作製された磁性体ペーストをスクリーン印刷等により例えば約300μmの厚みになるように印刷し、乾燥を行うことにより、磁性体層5aを形成する。次に端部電極3に接続するためのコイル用導体パターンの始端部6aを形成するため、銀等の導体粉末を混入した導体ペーストの印刷を、例えば20μmの厚みで行う。
【0016】
次に連続的なコイル状導体を形成するために、異なる層のコイル用導体パターンどうしを絶縁する目的で、1個分の面積に対して1/2以上の面積にわたり、コイル用導体パターン6bを、導体ペーストの印刷、乾燥により形成する。以下、磁性体ペーストの印刷による磁性体層5b〜5fと、コイル用導体パターン6c〜6eの交互印刷、乾燥を行い、積層工程を終了する。終端部の導体パターン6eは、端部電極4に接続されるものである。
【0017】
以上のような積層工程により、多数固取りの積層型チップビーズがグリーン状態で完成した後、焼成後の寸法が例えば1005(長さ:1.0mm、幅と高さ:0.5mm)となるように単体に切断し、870℃で焼成後、端部電極3、4を塗布して焼付けし、端部電極3、4に電気めっきを施して完成する。
【0018】
なお、端部電極3、4への電気めっきは、銅とニッケルと錫、ニッケルと錫、ニッケルと金、ニッケルとパラジウムと金、ニッケルとパラジウムと銀、あるいはニッケルと銀等で行うことが好ましい。
【0019】
図4に示すシート積層法による場合は、ドクターブレード法等により形成した上下端の磁性体グリーンシート7a、7mと、その間の、それぞれコイル用導体パターン8a〜8kを形成した磁性体グリーンシート7b〜7lとを、各コイル用導体パターン8a〜8kの端部どうしがスルーホール9によって接続されるように重ね、その後は単体への切断、焼成、端部電極3、4の焼付け、電気めっきにより作製する。
【0020】
いずれの製造方法による場合も、図3、図4に示すように、コイル用導体パターン6a〜6eや、8a〜8kの前記端部電極3、4の近傍となる部分2bのパターン幅bが、他の部分、すなわち短手方向に対向する部分2aのパターン幅aより大(b>a)となるように形成する。
【0021】
そして、各ターンのコイルパターンは同じとして、この端部電極3、4の近傍となる部分2bのパターン幅bを変えることにより、インピーダンスピークが現れる周波数を調整する。この場合、図1に短手方向のコイルの内径D1とパターン幅aは一定とすることが好ましい。その理由は、コイル2は、短手方向に対向する部分2aについては、チップ側面の限界に近い位置に形成されているので、内径D1やパターン幅aを変更する余裕に乏しいからであり、またこの内径D1を小さくすると、インピーダンスが確保しにくくなるからである。
【0022】
また、長手方向のコイルの内径D2は一定とすることが、インピーダンスをほぼ一定にしたままピーク値のみを調整する意味で好ましい。このため、図2に示す例においては、コイル2の長手方向の内径D2は一定にし、コイル2の長手方向の外径がD31、D32、D33と変わるように端部電極2bの部分のパターン幅bを変えることにより、インピーダンスピーク値をほとんど変えることなく、インピーダンスピーク値の周波数特性を調整することが可能となる。すなわち、コイルの端部電極3、4に近い部分の面積を変えることにより、コイル2と端部電極3、4との間の浮遊容量を変えることができ、もってインピーダンスピーク値をあまり変化させないで、インピーダンスピーク値の周波数特性を調整することができる。
【0023】
このような調整を行えば、コイルの端部電極3、4近傍の巻回部分の幅を変える磁性体材料や巻数を変えることなく、かつターン単位でコイルパターンを変えることなく、もって印刷パターン等のコイル形成パターンを増加させることなく、インピーダンスピーク値の周波数特性を調整できる。このため、磁性体材料を増やすことなく、多種の特性の積層型電子部品を提供でき、材料管理の困難化を防ぐことができる。また、1種のチップについては、コイル始端部、終端部以外ではターン単位では1種のパターンが形成されるため、積層型電子部品の製造工数や製造設備を増やすことなく、積層型電子部品を製造することができ、コスト高となることを防ぐことができる。
【0024】
上述のようにパターン幅bを変えることでインピーダンスピーク値の周波数特性を調整する場合、コイルのパターンとしては、図1に示したように矩形のみならず、図5(A)に示すような楕円形や、図5(B)に示すような長円形のものとして形成した場合にも同様のインピーダンスピーク値の周波数特性を調整することができる。
【0025】
また、同じコイルパターンを有するものについて、図6(A)、(B)に示すように、各ターン間の磁性体層の幅t1、t2を変えることにより、インピーダンスピーク値の周波数を一定にしたままで、インピーダンスピーク値を調整することも可能となり、インピーダンスピーク値の周波数特性のみならず、インピーダンスピーク値そのものの調整も可能となる。
【0026】
【実施例】
磁性体の完成組成がFe2O3=40.0モル%、NiO=50.0モル%、CuO=8.0モル%、ZnO=2.0モル%となるように主成分としての各原料を秤量し、その100重量部に対し、副成分としてCo3O4を0.5重量部添加した。これらをボールミルを用いて湿式混合し、スプレードライヤーにより乾燥した。次にこの混合粉体を760℃で仮焼成した。その後、この仮焼成粉末をボールミルを用いて湿式粉砕し、スプレードライヤーにより乾燥し、Ni−Cu−Zn系フェライト粉末を得た。次に、前記Ni−Cu−Zn系フェライト粉末100重量部に対して、エチルセルロース4重量部、テルピオネール78重量部を加え、3本ロールにて混練して磁性体ペーストを作製した。
【0027】
この磁性体ペーストを用い、スクリーン印刷法により、前記1005のサイズのチップを得た。また、コイルのターン数は8とした。また、コイルパターンは図1の矩形とし、印刷パターンの厚さは20μmとし、パターン幅a=70μmで一定とし、コイルの短手方向の内径D1=150μm、長手方向の内径D2=510μmとした。また、パターン幅b=80μm、100μm、130μmの3種類にて試作を行った。
【0028】
図7(A)は前記パターン幅bを変えた場合のインピーダンスピーク値の周波数特性を示す図であり、曲線Dはパターン幅b=80μm、曲線Eはパターン幅b=100μm、曲線Fはパターン幅b=130μmの場合の周波数特性である。
【0029】
パターン幅b=80μmの場合のインピーダンスピーク値の周波数は約1160MHz、パターン幅b=100μmの場合のインピーダンスピーク値の周波数は約980MHz、パターン幅b=130μmの場合のインピーダンスピーク値の周波数は約810MHzであった。また、各パターン幅bにおいて、インピーダンスピーク値はほぼ一定で約680Ωであった。このように、パターン幅bを変えることで、インピーダンスピーク値をほとんど変えることなく周波数調整が可能となることが判明した。
【0030】
図7(B)はパターン幅の比b/aの値と、インピーダンスピーク値が現れる周波数との相関図である。この図から分かるように、パターン幅bの拡大に伴い、周波数が低下する。
【0031】
本発明によるパターン幅bの変化によるインピーダンスピーク値の周波数の調整量は、得られる周波数帯域にもよるが、インピーダンスピーク値が1GHz前後であれば、おおよそ10MHz以上の微調整が可能である。
【0032】
また、前記実施例において、パターン幅a=70μm、パターン幅b=130μmのパターンを用い、コイルターン間の磁性体層の厚さt(図6におけるt1またはt2)を20μm、17μm、14μmの3種類にて試作を行った。図8はこのように磁性体層の厚さを変えた場合の周波数特性の変化を示す図である。
【0033】
図8において、曲線Fは磁性体層厚さt=20μmの場合(インピーダンスピーク値は約660Ω)、曲線Gは磁性体層厚さt=17μmの場合(インピーダンスピーク値は約750Ω)、曲線Hは磁性体層厚さt=14μmの場合(インピーダンスピーク値は約870Ω)の周波数特性である。また、インピーダンスピーク値が現れる周波数はいずれの場合も前記のごとく約810MHzであった。このように、磁性体厚さを変えることにより、インピーダンスピーク値を調整することも可能であり、この場合もターン毎のコイルパターンを同じにすることができる。本発明による場合のインピーダンスピーク値の調整量は、1GHz前後の場合、50Ω以上である。
【0034】
なお、本発明を実施する場合、磁性体層には、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライトやNi−Cu系フェライトが好適に用いられる。勿論本発明に用いられる磁性体層はこれらの磁性体材料に限定されない。また、高周波用の積層型電子部品には、基体1として磁性体ではないものを用いることもできる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、コイルの端部電極近傍の巻回部分のパターン幅を変えることにより、インピーダンスピーク値の周波数特性の調整を可能にしたので、基体を構成する材料を変えることなく、ユーザーの要求に応じた特性の積層型電子部品を提供することができる。このため、基体材料の種類を増加させることが必要でなくなり、製造上の管理が容易となる。
【0036】
また、1種類の積層型電子部品については1ターン分のコイルパターンは同一でよいため、印刷パターン等のコイルパターン形成用のパターンの種類を増加させる必要がなくなり、製造工数の増加や、製造設備の大型化を招くことがなく、コスト低減に寄与することができる。特に本発明は、多種少量生産において、材料の新たな選定や設備の変更、新設を要することなく実施できるため、経済的効果や開発期間短縮の効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による積層型電子部品の一実施の形態を積層方向に見た透視図である。
【図2】(A)〜(C)はそれぞれ本実施の形態におけるパターン幅の変更を説明する断面図である。
【図3】本実施の形態の積層型電子部品を印刷法により製造する場合の工程図である。
【図4】本実施の形態の積層型電子部品をシート積層法により製造する場合の工程図である。
【図5】(A)、(B)は本発明の他の実施の形態のコイルパターンを示す透視図である。
【図6】(A)、(B)は本実施の形態において、磁性体層の厚みの変更を説明する断面図である。
【図7】(A)本発明において、端部電極近傍のコイルパターンの幅を変更した場合のインピーダンスの周波数特性図、(B)はパターン幅の比とインピーダンスピーク値との相関図である。
【図8】本発明において、コイルパターン間の磁性体層の厚さを変更した場合のインピーダンスの周波数特性図である。
【図9】従来の積層型電子部品のコイルパターンを示す透視図である。
【図10】図9に示す従来の積層型電子部品の問題点を説明するインピーダンスの周波数特性図である。
【符号の説明】
1:基体、2:コイル、2a:短手方向に対向する部分、2b:端部電極近傍の部分、3、4:端部電極、5a〜5m:磁性体層、6a〜6k:コイル用導体パターン、7a〜7m:磁性体グリーンシート、8a〜8k:コイル用導体パターン、9:スルーホール
Claims (3)
- 直方体状をなす基体の内部に、積層構造によりヘリカル状コイルが形成され、前記基体の長手方向の両端面であって積層方向に平行をなす面に端部電極が形成され、前記コイルの始端部と終端部が前記端部電極に接続された積層型電子部品であって、
積層方向に投影して見て、前記コイルを構成する各ターンのコイルパターンが同一であり、
前記端部電極近傍の巻回部分のパターン幅bを、他の部分のパターン幅aに比較して広く(b>a)形成し、
前記端部電極近傍の巻回部分のパターン幅bを変えることにより、インピーダンスピーク値の周波数特性を微調整した
ことを特徴とする積層型電子部品。 - 請求項1に記載の積層型電子部品において、
前記コイルを積層方向に見て基体の長手方向のコイルの内径を一定にして、前記端部電極の巻回部分のパターン幅を変えてインピーダンスピーク値の周波数特性を微調整した
ことを特徴とする積層型電子部品。 - 請求項1または2に記載の積層型電子部品において、
前記コイルの各ターン間の絶縁体層の厚さを変えることにより、インピーダンス値を微調整した
ことを特徴とする積層型電子部品。
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