JP2004107693A - セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】Snめっき膜の形成に際しBaの電子部品素体からの溶出が生じ難く、かつ電子部品素体同士のSnめっき膜によるくっつきが生じ難いめっき工程を備えたセラミック電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】Ba含有セラミックスを用いて構成された電子部品素体の外表面に電極が形成される工程を備え、電極がSnめっき膜を有し、該Snめっき膜が、スルファミン酸、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、ホウフッ酸及びフェノールスルホン酸からなる群から選択された少なくとも1種の酸のイオンと、Snイオンと硫酸イオンとを含み、Snイオン濃度が0.008〜0.84モル/L、硫酸イオン濃度が0.02〜0.31モル/Lであり、pHが4.1〜6.0であるSnめっき浴を用いて電気めっきにより形成される、セラミック電子部品の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】Ba含有セラミックスを用いて構成された電子部品素体の外表面に電極が形成される工程を備え、電極がSnめっき膜を有し、該Snめっき膜が、スルファミン酸、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、ホウフッ酸及びフェノールスルホン酸からなる群から選択された少なくとも1種の酸のイオンと、Snイオンと硫酸イオンとを含み、Snイオン濃度が0.008〜0.84モル/L、硫酸イオン濃度が0.02〜0.31モル/Lであり、pHが4.1〜6.0であるSnめっき浴を用いて電気めっきにより形成される、セラミック電子部品の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばセラミックコンデンサなどのセラミック電子部品の製造方法に関し、より詳細には、電極中にSnめっき膜を有し、該Snめっき膜の形成工程が改良されたセラミック電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品では、外部電極の半田付け性を高めるために、外部電極表面にSnめっき膜が形成されることが多い。Snめっき膜を電気めっきにより成膜するに際しては、従来、硫酸浴、スルファミン酸浴、アルカンスルホン酸浴、アルカノールスルホン酸浴、ホウフッ酸浴またはフェノールスルホン酸浴などが用いられていた(例えば、特許文献1参照)。例えば、スルファミン酸浴を用いる場合、めっき浴には、スルファミン酸Snが添加され、スルファミン酸イオンとSnイオンとがめっき浴中に含まれていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−13891号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載のようにスルファミン酸浴、アルカンスルホン酸浴などのめっき浴を用いた場合、セラミックスがBaを含有する場合、例えばチタン酸バリウム系セラミックスを用いたセラミックコンデンサにめっき膜を形成した場合、Baがめっき浴中に溶出してセラミックスが侵食され、絶縁抵抗の劣化等が生じるという問題があった。
【0005】
他方、硫酸浴を用いた場合には、めっき浴中に硫酸イオンとSnイオンが存在することになる。この場合には、Ba含有セラミックスを用いた場合であっても、Baの溶出がほとんど生じず、絶縁抵抗の低下等は生じ難い。しかしながら、被めっき物同士がくっつくようにめっきされることがあった。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、Ba含有セラミックスを用いて構成されており、電極中にSnめっき膜を有するセラミック電子部品の製造方法であって、セラミックスの侵食が生じ難いため絶縁抵抗などの特性の劣化が生じ難く、かつセラミック電子部品同士のくっつきが生じ難いめっき工程を備えたセラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、Ba含有セラミックスを用いて構成された電子部品素体を用意する工程と、前記電子部品素体の外表面に電極を形成する工程とを備え、前記電極が、Snめっき膜を有し、前記Snめっき膜が、Snイオンと、硫酸イオンと、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アルカノールスルホン酸イオン、ホウフッ酸イオン及びフェノールスルホン酸イオンからなる群から選択された少なくとも1種のイオンとを含み、Snイオン濃度が0.008〜0.84モル/L、硫酸イオン濃度が0.02〜0.31モル/Lであり、pHが4.1〜6.0であるSnめっき浴を用いて電気めっきを行うことにより形成される。
【0008】
本発明では、Snめっき浴が、Snイオンと、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アルカノールスルホン酸イオン、ホウフッ酸イオン及びフェノールスルホン酸イオンからなる群から選択された少なくとも1種のイオンと、硫酸イオンとを含み、Snイオン及び硫酸イオンの濃度が上記特定の範囲とされている。従って、硫酸イオンによりBa含有セラミックスからのBaの溶出が抑制される。また、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アルカノールスルホン酸イオン、ホウフッ酸イオン及び/またはフェノールスルホン酸イオンが存在し、pHが4.1〜6.0の範囲にあり、Snイオンの濃度が上記特定の範囲であるため、被めっき物としての電子部品素体同士のくっつきも生じ難い。
【0009】
本発明のある特定の局面では、上記硫酸イオンは、硫酸ナトリウムをめっき浴に添加することによりめっき浴に含まれている。もっとも、硫酸イオンをめっき浴中に含ませるにあたっては、硫酸錫以外の硫酸塩であれば硫酸ナトリウム以外の硫酸塩を用いてもよい。
【0010】
本発明のセラミック電子部品の製造方法の別の特定の局面では、電極は、下地電極と、下地電極上に形成された上記Snめっき膜とを有する。下地電極の形成により、Snめっき膜を下地電極上に確実に形成することができる。下地電極の形成方法は特に限定されない。下地電極として、例えば導電ペーストの焼付け等により形成された厚膜電極を形成した場合、下地電極により電極の信頼性が高められ、かつSnめっき膜により半田付け性が高められる。
【0011】
本発明のセラミック電子部品の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記電子部品素体として、チタン酸バリウム系誘電体セラミックスが用いられ、セラミック電子部品としてセラミックコンデンサが得られる。よって、本発明に従って、絶縁抵抗などの特性の劣化が生じ難く、かつめっきに際してセラミックコンデンサ同士のくっつきが生じ難い、セラミックコンデンサを提供することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を具体的な実施形態及び実施例に基づき説明する。
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法では、まず、Ba含有セラミックスを用いて構成された電子部品素体が用意される。Ba含有セラミックスとしては、特に限定されないが、例えばチタン酸バリウム系誘電体セラミックス、バリウムアルミシリカ系ガラスセラミックスなどが挙げられる。
【0013】
また、上記電子部品素体は、Ba含有セラミックスのみからなるものであってもよく、あるいはBa含有セラミックス内に複数の内部電極が設けられた積層型のセラミック焼結体であってもよい。
【0014】
本発明では、上記電子部品素体を用意した後に、上記電子部品素体の外表面に、Sn膜を有する電極が形成される。電極は、Snめっき膜を有する限り、その構造は特に限定されるものではない。すなわち、電極がSnめっき膜のみから形成されていてもよい。
【0015】
好ましくは、電極は、下地電極と、Snめっき膜とを有する。下地電極の形成方法は特に限定されず、例えば導電ペーストの焼付け、あるいは蒸着もしくはスパッタリング等の薄膜形成方法により形成され得る。
【0016】
下地電極が形成されている場合、下地電極上にSnめっき膜を確実に電気めっきにより形成することができる。
Snめっき膜の形成に際しては、Snイオンを0.008〜0.84モル/Lと、硫酸イオンを0.02〜0.31モル/Lと、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アルカノールスルホン酸イオン、ホウフッ酸イオン及びフェノールスルホン酸イオンからなる群から選択された少なくとも1種のイオンとを含み、pHが4.1〜6.0のSnめっき浴が用いられる。このめっき浴を用いることにより、後述の具体的な実施例から明らかなように、Ba含有セラミックス中のBaの溶出が上記特定の範囲の濃度の硫酸イオンの存在により抑制される。また、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオンなどの存在、並びにSnイオンの濃度が上記特定の範囲とされているため、電子部品素体同士のめっきに際してのくっつきも生じ難い。
【0017】
これを、具体的な実験例に基づいて説明する。
図1に示す積層セラミックコンデンサ1を製造した。まず、電子部品素体として、図1に示すセラミック焼結体2を用意した。セラミック焼結体2は、チタン酸バリウム系セラミックスからなる。セラミック焼結体2内には、複数のNi内部電極3〜6がセラミック層を介して重なり合うように配置されている。セラミック焼結体2の寸法は3.2×1.6×1.6mmとし、内部電極積層数は320枚、設計静電容量は10μFとした。
【0018】
上記セラミック焼結体2の端面2a,2bを覆うように、Cuペーストを塗布し、焼き付けることにより、電極層7a,7bを形成した。しかる後、電極層7a,7b上に、Niめっき膜8a,8bを電気めっき法により2.0μmの厚みに形成した。
【0019】
しかる後、上記電極層7a,7b及びNiめっき膜8a,8bからなる下地電極上に、下記のめっき浴を用いてSnめっき膜9a,9bを形成した。
めっき浴の構成
スルファミン酸錫…Aモル/L
硫酸ナトリウム…Bモル/L
グルコン酸ナトリウム…120モル/L
めっき浴温度=25℃
陰極電流密度=0.2A/dm2
上記めっき浴において、下記の表1に示すように、スルファミン酸錫の濃度A及び硫酸ナトリウムの濃度B並びにpHを種々変更し、Snめっき膜を形成し、試料番号1〜20の各積層セラミックコンデンサを得た。
【0020】
上記のようにして得られた各積層セラミックコンデンサについて、(1)Baの溶出、(2)高温負荷試験、(3)耐湿負荷試験、(4)めっきに際してのくっつき及び(5)めっき厚を以下の要領で評価した。
【0021】
(1)Baの溶出…ICP−AES(発光分光装置)でBaの量を測定することにより、セラミック焼結体からBaイオンが溶出しているか否かを評価した。
(2)高温負荷試験…積層セラミックコンデンサを85℃の温度で、定格電圧の2倍の電圧を2000時間印加した後、絶縁抵抗を測定した。高温負荷試験後の絶縁抵抗が1MΩ以下となった場合に高温負荷試験において不良とした。
【0022】
(3)耐湿負荷試験…70℃及び相対湿度95%の雰囲気で積層セラミックコンデンサに定格電圧を2000時間印加し、印加前後の絶縁抵抗を測定した。耐湿負荷試験後の絶縁抵抗が1MΩ以下である場合に不良品とした。
【0023】
(4)めっき膜のくっつき…めっき浴から取り出した際に、積層セラミックコンデンサ同士がSnめっき膜によりくっついているか否かを観察し、1000個の積層セラミックコンデンサ中のくっついている積層セラミックコンデンサの個数を求めた。
【0024】
(5)めっき厚み…得られた積層セラミックコンデンサを破断し、Snめっき膜の厚みを測定した。
結果を下記の表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1から明らかなように、硫酸イオンが0.02〜0.35モル/Lの割合で添加されている試料番号1〜16,18〜20では、Baの溶出が抑制されていることがわかる。これは、Baと硫酸イオンとの反応により、BaSO4の組成の不働態化皮膜が形成されたことによると考えられる。また、表1の結果から、Baの溶出を抑制するには、硫酸イオン濃度が0.02モル/L以上必要であることがわかる。また、硫酸イオン濃度が0.31モル/Lを超えると、めっき膜同士のくっつきが生じがちとなることがわかる。
【0027】
さらに、Snイオン濃度が0.008モル/L未満の場合には、耐候性が劣化し、0.84モル/Lを超えるとくっつきが生じた。
さらに、pHが4.1未満では、耐候性が劣化し、6.0を超えると、くっつきが生じた。
【0028】
【発明の効果】
上記のように、本発明に係るセラミック電子部品の製造方法によれば、スルファミン酸、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、ホウフッ酸及び/またはフェノールスルホン酸の各イオンと、Snイオンと硫酸イオンとを含み、Snイオンが0.008〜0.84モル/L、硫酸イオンが0.02〜0.31モル/L含有されており、pHが4.1〜6.0の範囲であるため、Snめっき膜の形成に際しBaの電子部品素体からの溶出が生じ難く、かつSnめっき膜同士のくっつきが生じ難い。従って、絶縁抵抗などの特性の劣化が生じ難く、かつSnめっき膜を確実に形成し得るセラミック電子部品の製造方法を提供することが可能となる。
【0029】
よって、本発明によれば、信頼性に優れ、かつ所望通りの特性を有するセラミック電子部品を安定に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体的な実施例において製造されたセラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサを示す正面断面図。
【符号の説明】
1…積層セラミックコンデンサ
2…セラミック焼結体(電子部品素体)
3〜6…内部電極
7a,7b…下地電極を構成する電極層
8a,8b…下地電極を構成するNiめっき膜
9a,9b…Snめっき膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばセラミックコンデンサなどのセラミック電子部品の製造方法に関し、より詳細には、電極中にSnめっき膜を有し、該Snめっき膜の形成工程が改良されたセラミック電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品では、外部電極の半田付け性を高めるために、外部電極表面にSnめっき膜が形成されることが多い。Snめっき膜を電気めっきにより成膜するに際しては、従来、硫酸浴、スルファミン酸浴、アルカンスルホン酸浴、アルカノールスルホン酸浴、ホウフッ酸浴またはフェノールスルホン酸浴などが用いられていた(例えば、特許文献1参照)。例えば、スルファミン酸浴を用いる場合、めっき浴には、スルファミン酸Snが添加され、スルファミン酸イオンとSnイオンとがめっき浴中に含まれていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−13891号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載のようにスルファミン酸浴、アルカンスルホン酸浴などのめっき浴を用いた場合、セラミックスがBaを含有する場合、例えばチタン酸バリウム系セラミックスを用いたセラミックコンデンサにめっき膜を形成した場合、Baがめっき浴中に溶出してセラミックスが侵食され、絶縁抵抗の劣化等が生じるという問題があった。
【0005】
他方、硫酸浴を用いた場合には、めっき浴中に硫酸イオンとSnイオンが存在することになる。この場合には、Ba含有セラミックスを用いた場合であっても、Baの溶出がほとんど生じず、絶縁抵抗の低下等は生じ難い。しかしながら、被めっき物同士がくっつくようにめっきされることがあった。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、Ba含有セラミックスを用いて構成されており、電極中にSnめっき膜を有するセラミック電子部品の製造方法であって、セラミックスの侵食が生じ難いため絶縁抵抗などの特性の劣化が生じ難く、かつセラミック電子部品同士のくっつきが生じ難いめっき工程を備えたセラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、Ba含有セラミックスを用いて構成された電子部品素体を用意する工程と、前記電子部品素体の外表面に電極を形成する工程とを備え、前記電極が、Snめっき膜を有し、前記Snめっき膜が、Snイオンと、硫酸イオンと、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アルカノールスルホン酸イオン、ホウフッ酸イオン及びフェノールスルホン酸イオンからなる群から選択された少なくとも1種のイオンとを含み、Snイオン濃度が0.008〜0.84モル/L、硫酸イオン濃度が0.02〜0.31モル/Lであり、pHが4.1〜6.0であるSnめっき浴を用いて電気めっきを行うことにより形成される。
【0008】
本発明では、Snめっき浴が、Snイオンと、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アルカノールスルホン酸イオン、ホウフッ酸イオン及びフェノールスルホン酸イオンからなる群から選択された少なくとも1種のイオンと、硫酸イオンとを含み、Snイオン及び硫酸イオンの濃度が上記特定の範囲とされている。従って、硫酸イオンによりBa含有セラミックスからのBaの溶出が抑制される。また、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アルカノールスルホン酸イオン、ホウフッ酸イオン及び/またはフェノールスルホン酸イオンが存在し、pHが4.1〜6.0の範囲にあり、Snイオンの濃度が上記特定の範囲であるため、被めっき物としての電子部品素体同士のくっつきも生じ難い。
【0009】
本発明のある特定の局面では、上記硫酸イオンは、硫酸ナトリウムをめっき浴に添加することによりめっき浴に含まれている。もっとも、硫酸イオンをめっき浴中に含ませるにあたっては、硫酸錫以外の硫酸塩であれば硫酸ナトリウム以外の硫酸塩を用いてもよい。
【0010】
本発明のセラミック電子部品の製造方法の別の特定の局面では、電極は、下地電極と、下地電極上に形成された上記Snめっき膜とを有する。下地電極の形成により、Snめっき膜を下地電極上に確実に形成することができる。下地電極の形成方法は特に限定されない。下地電極として、例えば導電ペーストの焼付け等により形成された厚膜電極を形成した場合、下地電極により電極の信頼性が高められ、かつSnめっき膜により半田付け性が高められる。
【0011】
本発明のセラミック電子部品の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記電子部品素体として、チタン酸バリウム系誘電体セラミックスが用いられ、セラミック電子部品としてセラミックコンデンサが得られる。よって、本発明に従って、絶縁抵抗などの特性の劣化が生じ難く、かつめっきに際してセラミックコンデンサ同士のくっつきが生じ難い、セラミックコンデンサを提供することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を具体的な実施形態及び実施例に基づき説明する。
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法では、まず、Ba含有セラミックスを用いて構成された電子部品素体が用意される。Ba含有セラミックスとしては、特に限定されないが、例えばチタン酸バリウム系誘電体セラミックス、バリウムアルミシリカ系ガラスセラミックスなどが挙げられる。
【0013】
また、上記電子部品素体は、Ba含有セラミックスのみからなるものであってもよく、あるいはBa含有セラミックス内に複数の内部電極が設けられた積層型のセラミック焼結体であってもよい。
【0014】
本発明では、上記電子部品素体を用意した後に、上記電子部品素体の外表面に、Sn膜を有する電極が形成される。電極は、Snめっき膜を有する限り、その構造は特に限定されるものではない。すなわち、電極がSnめっき膜のみから形成されていてもよい。
【0015】
好ましくは、電極は、下地電極と、Snめっき膜とを有する。下地電極の形成方法は特に限定されず、例えば導電ペーストの焼付け、あるいは蒸着もしくはスパッタリング等の薄膜形成方法により形成され得る。
【0016】
下地電極が形成されている場合、下地電極上にSnめっき膜を確実に電気めっきにより形成することができる。
Snめっき膜の形成に際しては、Snイオンを0.008〜0.84モル/Lと、硫酸イオンを0.02〜0.31モル/Lと、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アルカノールスルホン酸イオン、ホウフッ酸イオン及びフェノールスルホン酸イオンからなる群から選択された少なくとも1種のイオンとを含み、pHが4.1〜6.0のSnめっき浴が用いられる。このめっき浴を用いることにより、後述の具体的な実施例から明らかなように、Ba含有セラミックス中のBaの溶出が上記特定の範囲の濃度の硫酸イオンの存在により抑制される。また、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオンなどの存在、並びにSnイオンの濃度が上記特定の範囲とされているため、電子部品素体同士のめっきに際してのくっつきも生じ難い。
【0017】
これを、具体的な実験例に基づいて説明する。
図1に示す積層セラミックコンデンサ1を製造した。まず、電子部品素体として、図1に示すセラミック焼結体2を用意した。セラミック焼結体2は、チタン酸バリウム系セラミックスからなる。セラミック焼結体2内には、複数のNi内部電極3〜6がセラミック層を介して重なり合うように配置されている。セラミック焼結体2の寸法は3.2×1.6×1.6mmとし、内部電極積層数は320枚、設計静電容量は10μFとした。
【0018】
上記セラミック焼結体2の端面2a,2bを覆うように、Cuペーストを塗布し、焼き付けることにより、電極層7a,7bを形成した。しかる後、電極層7a,7b上に、Niめっき膜8a,8bを電気めっき法により2.0μmの厚みに形成した。
【0019】
しかる後、上記電極層7a,7b及びNiめっき膜8a,8bからなる下地電極上に、下記のめっき浴を用いてSnめっき膜9a,9bを形成した。
めっき浴の構成
スルファミン酸錫…Aモル/L
硫酸ナトリウム…Bモル/L
グルコン酸ナトリウム…120モル/L
めっき浴温度=25℃
陰極電流密度=0.2A/dm2
上記めっき浴において、下記の表1に示すように、スルファミン酸錫の濃度A及び硫酸ナトリウムの濃度B並びにpHを種々変更し、Snめっき膜を形成し、試料番号1〜20の各積層セラミックコンデンサを得た。
【0020】
上記のようにして得られた各積層セラミックコンデンサについて、(1)Baの溶出、(2)高温負荷試験、(3)耐湿負荷試験、(4)めっきに際してのくっつき及び(5)めっき厚を以下の要領で評価した。
【0021】
(1)Baの溶出…ICP−AES(発光分光装置)でBaの量を測定することにより、セラミック焼結体からBaイオンが溶出しているか否かを評価した。
(2)高温負荷試験…積層セラミックコンデンサを85℃の温度で、定格電圧の2倍の電圧を2000時間印加した後、絶縁抵抗を測定した。高温負荷試験後の絶縁抵抗が1MΩ以下となった場合に高温負荷試験において不良とした。
【0022】
(3)耐湿負荷試験…70℃及び相対湿度95%の雰囲気で積層セラミックコンデンサに定格電圧を2000時間印加し、印加前後の絶縁抵抗を測定した。耐湿負荷試験後の絶縁抵抗が1MΩ以下である場合に不良品とした。
【0023】
(4)めっき膜のくっつき…めっき浴から取り出した際に、積層セラミックコンデンサ同士がSnめっき膜によりくっついているか否かを観察し、1000個の積層セラミックコンデンサ中のくっついている積層セラミックコンデンサの個数を求めた。
【0024】
(5)めっき厚み…得られた積層セラミックコンデンサを破断し、Snめっき膜の厚みを測定した。
結果を下記の表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1から明らかなように、硫酸イオンが0.02〜0.35モル/Lの割合で添加されている試料番号1〜16,18〜20では、Baの溶出が抑制されていることがわかる。これは、Baと硫酸イオンとの反応により、BaSO4の組成の不働態化皮膜が形成されたことによると考えられる。また、表1の結果から、Baの溶出を抑制するには、硫酸イオン濃度が0.02モル/L以上必要であることがわかる。また、硫酸イオン濃度が0.31モル/Lを超えると、めっき膜同士のくっつきが生じがちとなることがわかる。
【0027】
さらに、Snイオン濃度が0.008モル/L未満の場合には、耐候性が劣化し、0.84モル/Lを超えるとくっつきが生じた。
さらに、pHが4.1未満では、耐候性が劣化し、6.0を超えると、くっつきが生じた。
【0028】
【発明の効果】
上記のように、本発明に係るセラミック電子部品の製造方法によれば、スルファミン酸、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、ホウフッ酸及び/またはフェノールスルホン酸の各イオンと、Snイオンと硫酸イオンとを含み、Snイオンが0.008〜0.84モル/L、硫酸イオンが0.02〜0.31モル/L含有されており、pHが4.1〜6.0の範囲であるため、Snめっき膜の形成に際しBaの電子部品素体からの溶出が生じ難く、かつSnめっき膜同士のくっつきが生じ難い。従って、絶縁抵抗などの特性の劣化が生じ難く、かつSnめっき膜を確実に形成し得るセラミック電子部品の製造方法を提供することが可能となる。
【0029】
よって、本発明によれば、信頼性に優れ、かつ所望通りの特性を有するセラミック電子部品を安定に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体的な実施例において製造されたセラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサを示す正面断面図。
【符号の説明】
1…積層セラミックコンデンサ
2…セラミック焼結体(電子部品素体)
3〜6…内部電極
7a,7b…下地電極を構成する電極層
8a,8b…下地電極を構成するNiめっき膜
9a,9b…Snめっき膜
Claims (4)
- Ba含有セラミックスを用いて構成された電子部品素体を用意する工程と、
前記電子部品素体の外表面に電極を形成する工程とを備え、
前記電極が、Snめっき膜を有し、
前記Snめっき膜が、Snイオンと、硫酸イオンと、スルファミン酸イオン、アルカンスルホン酸イオン、アルカノールスルホン酸イオン、ホウフッ酸イオン及びフェノールスルホン酸イオンからなる群から選択された少なくとも1種のイオンとを含み、Snイオン濃度が0.008〜0.84モル/L、硫酸イオン濃度が0.02〜0.31モル/Lであり、pHが4.1〜6.0であるSnめっき浴を用いて電気めっきを行うことにより形成される、セラミック電子部品の製造方法。 - 前記硫酸イオンが、硫酸ナトリウムをめっき浴に添加することによりめっき浴に含まれている、請求項1に記載のセラミック電子部品の製造方法。
- 前記電極が、下地電極と、下地電極上に形成された前記Snめっき膜とを有する、請求項1または2に記載のセラミック電子部品の製造方法。
- 前記電子部品素体が、チタン酸バリウム系誘電体セラミックスを用いて構成されており、セラミック電子部品としてセラミックコンデンサが得られる、請求項1〜3のいずれかに記載のセラミック電子部品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002268232A JP2004107693A (ja) | 2002-09-13 | 2002-09-13 | セラミック電子部品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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