JP2004107129A - 炭酸化硬化体用セメント組成物、炭酸化硬化体用セメントコンクリート組成物、及び炭酸化硬化体の製造方法 - Google Patents

炭酸化硬化体用セメント組成物、炭酸化硬化体用セメントコンクリート組成物、及び炭酸化硬化体の製造方法 Download PDF

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Katsuichi Miyaguchi
宮口 克一
Akitoshi Araki
荒木 昭俊
Satoru Teramura
寺村 悟
Minoru Morioka
盛岡 実
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Abstract

【課題】セメントコンクリートを主成分とした、曲げ強度の高い炭酸化硬化体を提供する。
【解決手段】(1) ポリマー混和剤、(2) γ−2CaO・SiO、及び(3)セメントを含む結合材を含有することを特徴とする炭酸化硬化体用セメント組成物。本発明の炭酸化硬化体用セメント組成物及び炭酸化硬化体用セメントコンクリート組成物は、水和時のクラックよる不良品が発生しにくく、炭酸化初期の曲げ強度と圧縮強度のバランスが優れるという特徴を有する。該炭酸化硬化体は、運搬や施工中での衝撃による端部又は角部の破損に対して強いという特徴を有するため、主として土木・建築分野において、大型の建築物に使用される板材、カーテンウォール、パネル材、及びコンクリート製埋設型枠等に適する。
【選択図】  なし

Description

【発明の属する技術分野】
本発明は、主として土木材料・建築材料分野において、比較的大型の建築物に使用される大型の板材、例えばカーテンウォール、ALC等のパネル材、及びコンクリート製埋設型枠等の建材用に用いられる、炭酸化硬化体用セメント組成物、炭酸化硬化体用セメントコンクリート、及び炭酸化硬化体の製造方法に関する。なお、本発明でいうセメントコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、及びコンクリ−トの総称であり、本発明における部及び%は特に規定しない限り質量基準で示す。
【0001】
【従来の技術とその課題】
セメントに水を添加して得られる従来のセメント硬化体は、大型の板材、例えばカーテンウォール、パネル材、及びコンクリート製埋設型枠等の用途に用いるためには、曲げ強度が約5N/mm程度と小さく、取扱い時に欠けやすいという課題があった。
大型の建築物にパネル材として使用される板材、例えばALC(Autoclaved Lightweight Concrete)等では、横持ちという観点から十分な抗折強度を必要とし、運搬や施工中での端部又は角部の破損に対しても強度を必要とする。
【0002】
これまで曲げ強度を必要とする用途に用いるセメント硬化体を製造するためには、蒸気養生又はオートクレーブ養生等の高温高圧養生を行う方法(高橋、蟻塚、セメント技術年報14、pp299〜309,1960 参照)、減水剤等を用いて水/セメント比を低下させる方法(特公昭61−025670号公報)等が有効とされてきた。
【0003】
しかし、通常のコンクリートを蒸気養生又は高温高圧下で養生すると、セメント硬化体に幅1mm以下の微小なひび(以下、マイクロクラックという)が入りやすかった。また、マイクロクラックがなく、高い圧縮強度が得られるセメント硬化体であっても、曲げ強度が低いという課題があった。また、水/セメント比を低くする方法であっても、セメント硬化体の曲げ強度が4〜7N/mm程度と低いため、製造時や取扱い時に板材の端部が欠けやすい等、作業性が悪く、セメント硬化体の運搬等で慎重に取扱う必要があった。
【0004】
通常のセメント硬化体は破壊靱性が低いので、一度マイクロクラックが入ると、これを破壊源としてクラックが進展するため、セメント硬化体の機械強度が著しく低下する。このため、機械強度が要求される用途、例えば土木材料・建築材料分野における大型板材では、マイクロクラックが入った製品はただちに不良品とされた。したがって土木材料・建築材料分野における大型板材用途でセメント硬化体の歩留まりを向上させるためには、マイクロクラックの発生を抑制する効果がある製法及び材料が必要とされてきた。
【0005】
そこで水硬性を有するビーライト(α型、α’型、及びβ型の2CaO・SiOの総称)を38%以上含むセメントを水で混練し、硬化させた後に炭酸化させる方法が提案されている(特開平10−194798号公報)。この方法で作製した炭酸化したセメント硬化体は、たしかに圧縮強度及び長期炭酸化後の曲げ強度が高いという特徴を有するが、炭酸化を7日行っても曲げ強度が15N/mmと低いという課題を有していた。この発明により得られたセメント硬化体は、圧縮強度及び長期炭酸化後の曲げ強度が優れていた。しかし、納期短縮の要求に応えるため、圧縮強度を多少犠牲にしても、初期の曲げ強度が高い材料が必要とされてきた。
【0006】
このようなビーライト含有セメントの炭酸化したセメント系硬化体の初期強度不足や曲げ強度不足を補う方法として、有機高分子系炭酸化促進剤等を添加する方法等が知られている(特開2001−261467号公報)。また、本出願人らは、アクリル酸等の重合体の繰り返し単位を含む有機高分子を添加する方法をビーライトセメントに添加して炭酸硬化体とする方法を出願した(特願2002−173698号)。しかしながら、さらに強度アップを図りつつ、マイクロクラックの防止を両立できるような技術が求められている。
【0007】
そこで本発明者らは、前記課題を解消すべく鋭意検討した結果、特定のセメント組成物を用い、成形後に炭酸化することにより、初期炭酸養生後の曲げ強度、特に7日目の曲げ強度が高く、圧縮強度と初期炭酸養生後の曲げ強度のバランスが良く、かつ、マイクロクラックの少ない炭酸化硬化体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は(1)ポリマー混和剤、(2)γ−2CaO・SiO、及び(3)セメントを含む結合材を含有することを特徴とする炭酸化硬化体用セメント組成物であり、セメントを含む結合材及びγ−2CaO・SiOからなる無機成分粉末のブレーン比表面積が3,000cm/g以上であることを特徴とする該炭酸化硬化体用セメント組成物であり、該炭酸化硬化体用セメント組成物及び水を含有することを特徴とする炭酸化硬化体用セメントコンクリート組成物であり、該炭酸化硬化体用セメントコンクリート組成物を硬化させたセメント硬化体を炭酸化することを特徴とする炭酸化硬化体の製造方法であり、表面から少なくとも厚さ2mm以上を炭酸化させることを特徴とする該炭酸化硬化体の製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明で用いるポリマー混和剤は特に制限されないが、有機高分子系炭酸化促進剤として用いられるものが好ましく、例えば、水性ポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂(粉末エマルション)、水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0010】
なお、本発明における有機高分子系炭酸化促進剤とは、炭酸化養生におけるセメント系硬化体の初期(具体的には、少なくとも、温度20℃、湿度60%、炭酸ガス濃度10%の雰囲気下において、炭酸化養生の開始時点から、概ね2〜3週間後までの期間)の炭酸ガス吸収量を増加させることのできる作用を有する有機高分子の総称である。
【0011】
水性ポリマーディスパージョンは、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性エマルションや、スチレンブタジエンゴム等の合成ゴムラテックスが挙げられる。再乳化形粉末樹脂(粉末エマルション)においては、例えば、ポリアクリル酸エステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニルビニルバーサテート(VAVeoVa)等が挙げられる。水溶性ポリマーにおいては、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0012】
ポリマー混和剤の添加量は、固形分に換算して、セメント組成物中のセメント100部に対して、通常、外割で2〜15部、好ましくは5 〜10部である。添加量が2 部未満であると、マイクロクラックが発生しやすくなることがあり、15部を超えると、曲げ強度及び圧縮強度が低下し、かつ高コストとなることがある。
【0013】
本発明で使用するγ− 2CaO・SiOは2CaO・SiOで表される化合物のうちで、低温相として知られる非水硬性物質であり、高温相で水硬性を有するα−2CaO・SiO、α’−2CaO・SiO、及びβ−2CaO・SiOとは化学的な性質や結晶構造が異なった物質である。セメントクリンカやビーライトセメント中に存在する2CaO・SiOはβ− 2CaO・SiOであり、γ− 2CaO・SiOは含まれない。
【0014】
本発明のγ−2CaO・SiOを工業的に製造する方法は特に限定されないが、一般的には(1)CaO源として生石灰、消石灰、及び/又は炭酸カルシウムなどのカルシウム源、(2)酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び/又はボーキサイトなどのアルミニウム源を熱処理する方法等が挙げられる。熱処理温度は特に限定されるものではなく、使用する原料によっても異なるが、通常、850℃〜1,600℃程度の範囲で行えばよく、1,000℃〜1,500℃程度が熱処理効率の面から好ましい。
【0015】
γ−2CaO・SiOの粒度はブレーン比表面積値で3,000〜8,000cm/gが好ましく、4,000〜6,000cm/gがより好ましい。ブレーン比表面積値が3,000cm/g以下では、中性化抑制効果が充分に得られない場合があり、ブレーン比表面積値が8,000cm/gを超えると過剰な粉砕動力が必要となる場合がある。
【0016】
本発明のγ− 2CaO・SiOを工業的に製造する際には、不純物の存在は特に限定されるものではなく、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とならない。その具体例としては、例えば、Al、MgO、TiO、MnO、NaO、S、P、及びFe等が挙げられる。
【0017】
また、製鋼スラグ、例えば還元期スラグ、銑鉄スラグ、転炉スラグ、及びステンレススラグ等の中にはγ−2CaO・SiOを含有するものがあり、これらを用いてもよい。
【0018】
これらのスラグには、トライカルシウムシリケート3CaO・SiO、ランキナイト3CaO・2SiO、及びワラストナイトCaO・SiOなどのγ−2CaO・SiO以外のカルシウムシリケート、メルヴィナイト3CaO・MgO・2SiO、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiO、及びモンチセライトCaO・MgO・SiOなどのカルシウムマグネシウムシリケート、ゲーレナイト2CaO・Al・SiO及びアノーサイトCaO・Al・2SiOなどのカルシウムアルミノシリケート、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiOとゲーレナイト2CaO・Al・SiOの混晶であるメリライト、MgO・SiO及び2MgO・SiOなどのマグネシウムシリケート、遊離石灰、遊離マグネシア、カルシウムフェライト2CaO・Fe、カルシウムアルミノフェライト4CaO・Al・Fe、リューサイト(KO、NaO)・Al・SiO、スピネルMgO・Al、並びにマグネタイトFe等が含まれており、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、これらの化合物を含む物質を用いることも可能である。。
【0019】
本発明の炭酸化硬化体用セメント組成物はγ−2CaO・SiO含有量が5〜60%である必要があり、10〜40%であることが好ましい。γ−2CaO・SiO含有量が5%未満では炭酸化が困難で強度増強が期待できず、また60%を超えると炭酸化は可能であるが、炭酸化しても充分な曲げ強度が得られない場合がある。
【0020】
本発明では、セメント、γ− 2CaO・SiO、及びポリマー混和剤の混合方法は、特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、予めその一部、或いは全部を混合しておいても差支えない。
【0021】
本発明に用いるセメントは、特に制限されないが、ポルトランドセメントを含有するものが好ましく、例えば普通セメント、早強セメント、超早強セメント、中庸熱セメント、及び低熱セメント等の各種ポルトランドセメントが挙げられる。また、これらのセメントに、潜在性水硬性物質である高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを配合した各種混合セメント等を結合材の一部として用いてもよく、これらのセメントを1種又は2種以上混合してもよい。
【0022】
なお、本発明では、セメント及び潜在水硬性物質を、まとめて結合材と呼ぶことにする。なお、γ−2CaO・SiOは非水硬性物質なので、結合材には含めないものとする。
【0023】
本発明に用いる結合材及びγ−2CaO・SiOは、ポリマー混和剤への分散性が良いものが好ましい。本発明の炭酸化硬化体用セメント組成物からポリマー混和剤や後述の各種添加剤等の有機物を除いた、結合材及びγ−2CaO・SiO等からなる無機成分粉末のブレーン比表面積値は3,000cm/g以上が好ましく、6,000〜10,000cm/gがより好ましい。無機成分粉末の比表面積値が3,000cm/g未満では材料分離の原因となる場合や曲げ強度が不足する場合があり、10,000cm/gを超えると粉砕動力が必要となり、コスト増の原因となる。
【0024】
有機物を含む本炭酸化硬化体用セメント組成物を用い、結合材及びγ−2CaO・SiOからなる無機成分粉末の比表面積を測定する際には、本炭酸化硬化体用セメント組成物又は無機成分粉末を空気又は酸素雰囲気下で、あらかじめ400〜1,000℃で30分以上加熱し、水分及び有機物を十分に除去しておくことが好ましい。
【0025】
本発明において、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良く、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差支えない。
【0026】
混合装置としては、既存のいかなる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサ等の使用が可能である。また、本発明における無機成分粉末を微粉化する装置は特に制限されないが、ボールミル、タワーミル、及びローラーミル等が挙げられる。
【0027】
本炭酸化硬化体用セメント組成物に水分を添加して混練し所定の形状に成形する。この際の水/結合材比(W/C比)は特に限定されないが、30〜60%が好ましく、40〜55%がより好ましい。30%未満では混練できない場合があり、60%を超えると炭酸化が進行しても強度増進につながらない場合がある。
【0028】
本発明の炭酸化硬化体用セメント組成物を水和させてセメント硬化体を成形する方法としては、加圧成形、流し込み成形、及び遠心成形等があり、作業効率の点から流し込み成形及び遠心成形が好ましく、複雑な形状を成形できる流し込み成形が最も好ましい。
【0029】
本発明で使用するセメントコンクリートのスランプ値やフロー値は特に限定されないが、流込成形で複雑な形状を有する製品を作製する場合には、JIS A 1101で規定された方法によるスランプ値で5cm以上、スランプコーンを引抜いた際のコンクリートのフロー値で22cm以上の流動性を有するものが好ましく、そのためにはナフタレン系、メラミン酸系、ポリカルボン酸系、又は高分子リグニン系等の高性能減水剤や高性能AE減水剤等を併用することが好ましい。
【0030】
また、成形して得られたセメント硬化体の養生方法は特に限定されず、通常の常温養生の他に、水中養生、湿空養生、又は蒸気養生等の加温養生等も可能である。また、養生と同時に炭酸化を行うことも可能である。養生期間は水/セメント比、セメント中のγ−2CaO・SiO含有量、及び配合等により異なるが、加温養生で2〜24時間程度であり、常温養生では3〜28日程度であり、養生時間が短い加温養生が好ましい。
【0031】
炭酸化の方法としては、(1)加温しながら炭酸化する方法、(2)炭酸ガス分圧の高い雰囲気で暴露する方法、(3)高湿度雰囲気下で炭酸化する方法、(4)炭酸水等の炭酸イオンや重炭酸イオンを含有する水にセメント硬化体を浸漬し炭酸化する方法等が考えられる。これらの方法の中では、経済性や生産性等の面から、(1)〜(3)の方法を1種又は2種以上併用するのが好ましい。
【0032】
また、雰囲気ガスとしては炭酸ガス以外に、空気、窒素、酸素、水蒸気、ヘリウム、又はアルゴン等、炭酸ガス以外のガスを本発明の目的を阻害しない範囲内で混合して用いることができる。
【0033】
炭酸化では、加温する場合には蒸気養生及びオートクレーブ養生等では雰囲気温度30〜180℃が好ましく、40〜160℃がより好ましい。30℃未満では生産性が不十分の場合があり、180℃を超えるとポリマーが変質して着色し、外観不良の原因となる場合がある。養生後、セメント硬化体を水中に浸しておき、水分をセメント硬化体内部に十分に湿潤状態としておくことが好ましい。また、雰囲気温度が100℃を超える場合は、スチーム存在下で炭酸化することが好ましい。
【0034】
炭酸化における炭酸ガス濃度及び圧力は特に限定されるものではないが、全ガス圧及び炭酸ガス濃度の積として算出される炭酸ガス分圧が0.0005〜1MPaであることが好ましく、0.01〜0.3MPaがより好ましい。炭酸ガス分圧が0.0005MPa未満では炭酸化が促進されず、不経済である。また、炭酸ガス分圧が1MPaでは炭酸化時間は数分で終了するため、これより高い炭酸ガス分圧にするのは不経済である。
【0035】
また、室温での炭酸化における相対湿度については特に限定されるものではないが、相対湿度で40%〜90%が好ましく、60〜85%がより好ましい。40%未満では炭酸化の速度が遅く不経済であり、90%を超えると結露し、炭酸化硬化体の表面が浸食されるために製品の外観が悪くなることがある。
【0036】
炭酸化硬化体の炭酸化深さを調べるためには、炭酸化硬化体が高アルカリ性から中性側に漸次移行することを利用する。すなわち、炭酸化硬化体を切断し、切断面にフェノールフタレイン溶液を噴霧すると、未炭酸化部は赤色に呈色し、炭酸化した部分は呈色しないため、炭酸化硬化体の表面から着色部までの深さを測定して炭酸化深さを測定すればよい。
【0037】
炭酸化硬化体の炭酸化深さは特に限定されないが、表面から2mm以上であることが好ましく、5mm以上がより好ましい。2mm以上炭酸化されていれば、曲げ強度の顕著な向上が認められる。さらに、炭酸化硬化体の全体にわたって炭酸化された場合はこの効果が一層顕著になる。
【0038】
また、本発明では、骨材、分散剤、界面活性剤、凍結防止剤、AE剤、凝結遅延剤、減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、及び顔料等の公知の添加物を1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することができる。
【0039】
【実施例】
以下の実験例に基づき詳細に説明する。
【0040】
実験例1
ポリマー混和剤として、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョンを用い、実験No.1−1〜実験No.1−9はポリマー全体の含有量をセメントに対して外割で10%、実験No.1−9では1%、実験No.1−10では5%とし、セメントを含有する表1の配合の各種セメント組成物を調製した。セメント組成物中のγ− 2CaO・SiO含有量を表1に示すように変化させ、セメント組成物/砂比が1/2、水/無機成分粉末比が1/1のモルタルを調製した。
【0041】
該モルタルを型枠に詰め、温度20℃、相対湿度80%の試験室で8時間養生を行った後、昇温速度15℃/時間、最高温度50℃、保持時間4時間の条件で蒸気養生を実施し、材令24時間で脱型して4×4×16cmの供試体を作製した。
【0042】
この供試体を大気圧、炭酸ガス濃度10%(炭酸ガス分圧約0.01MPa)、温度40℃、相対湿度60%の環境で材令7日まで炭酸化を行い、中性化深さ及び曲げ強度を測定した結果を表1に示す。なお、比較のため、20℃の水中で材令7日まで養生した場合(以下、標準養生という)、及びγ−2CaO・SiOを添加していないセメント組成物を用いた場合と比較した結果を表1に示す。
【0043】
<使用材料>
ポリマー混和剤A:エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、市販品、固形分量40%γ−2CaO・SiO:試薬1級の炭酸カルシウム2モルと二酸化ケイ素1モルを配合して混合粉砕した後、電気炉において1,450℃で3時間焼成し、炉外に取出して自然放冷により冷却して合成した。この時ダスティングし、ブレーン比表面積1,800cm/gまで粉化した。これをブレーン比表面積4,000cm/gまでさらに粉砕したものを用いた
セメントα:普通ポルトランドセメント、(電気化学工業社製)、ボールミルで粉砕してブレーン比表面積6,000cm/gに調整したもの
砂    :新潟県姫川産、主成分は珪石
水    :水道水
減水剤  :ポリカルボン酸系、市販品
【0044】
<測定方法>
圧縮強度:JIS A 1171規格に準じて4×4×16cm供試体を作製し、強度を測定
中性化深さ:供試体表面を垂直に割裂したセメントコンクリート断面に、フェノールフタレインの1%水溶液を塗布し、赤色に呈色しなかった部分の表面から深さを測定し、4点の平均値をとった
曲げ強度:4×4×16cmの供試体を作製し、JIS A 1106に準じて測定した
【0045】
【表1】
Figure 2004107129
【0046】
実験例2
セメントαに対し、ポリマー混和剤Aをセメントに対して外割、固形分で10%添加し、表2に示すように水/結合材比を変化させて炭酸化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
Figure 2004107129
【0048】
実験例3
セメントαを使用し、ポリマー混和剤Aを用い、セメントαに対して外割、固形分換算で10%添加して、γ−2CaO・SiOを表3に示すように変え、炭酸化し、マイクロクラックの有無を調べたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0049】
<測定方法>
マイクロクラック:脱型後の供試体を目視により観察
【0050】
【表3】
Figure 2004107129
【0051】
実験例4
セメントαを使用し、ポリマー混和剤を表4に示すように変え、セメントに対して、外割、固形分換算で10%添加したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0052】
<使用材料>
ポリマー混和剤B:市販のアクリル酸エステル系樹脂エマルジョン、固形分量45%
ポリマー混和剤C:市販の酢酸ビニルビニルバーサテート系再乳化形樹脂粉末
ポリマー混和剤D:市販のエチレン酢酸ビニル系再乳化型樹脂粉末
【0053】
【表4】
Figure 2004107129
【0054】
実験例5
セメントα及びポリマー混和剤Aをセメントαに対して外割、固形分換算10%使用し、表5に示すように炭酸化条件を変化させ、マイクロクラックの有無を調べたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表5に示す。
【0055】
【表5】
Figure 2004107129
【0056】
実験例6
試薬1級の炭酸カルシウム2モルと二酸化ケイ素1モルを配合して混合粉砕した後、電気炉において1,450℃で3時間焼成し、炉外に取出して自然放冷により冷却して合成した。この時ダスティングし、ブレーン比表面積1,800cm/gまで粉化したγ−2CaO・SiO粗粉を作製し、セメントα100部及び合成したγ−2CaO・SiO粗粉25部の混合粉(γ−2CaO・SiO含有量20%)とし、表6に示したブレーン比表面積までボールミル粉砕し、セメント及びγ−2CaO・SiOからなる無機成分粉末の微粉とした。
【0057】
また、ポリマー混和剤Aを、セメントに対して外割、ポリマー固形成分換算で10%使用し、2m×2m×5cmの板状セメント硬化体を複数作製し、脱型後、うち1枚を切断し、炭酸化し、マイクロクラックの有無を調べた後に供試体としたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表6に示す。
【0058】
<使用材料>
炭酸カルシウム:和光純薬工業(株)製、試薬1級
二酸化ケイ素:和光純薬工業(株)製、試薬1級
【0059】
【表6】
Figure 2004107129
【0060】
【発明の効果】
本発明の炭酸化硬化体用セメント組成物及び炭酸化硬化体用セメントコンクリート組成物は、水和時のクラックよる不良品が発生しにくく、炭酸化初期の曲げ強度と圧縮強度のバランスが優れるという特徴を有する。該炭酸化硬化体は、運搬や施工中での衝撃による端部又は角部の破損に対して強いという特徴を有するため、主として土木・建築分野において、大型の建築物に使用される板材、カーテンウォール、パネル材、及びコンクリート製埋設型枠等に適する。

Claims (5)

  1. (1) ポリマー混和剤、(2) γ−2CaO・SiO、及び(3)セメントを含む結合材を含有することを特徴とする炭酸化硬化体用セメント組成物。
  2. セメントを含む結合材及びγ−2CaO・SiOからなる無機成分粉末のブレーン比表面積が3,000cm/g以上であることを特徴とする請求項1記載の炭酸化硬化体用セメント組成物。
  3. 請求項1又は請求項2記載の炭酸化硬化体用セメント組成物及び水を含有することを特徴とする炭酸化硬化体用セメントコンクリート組成物。
  4. 請求項3記載の炭酸化硬化体用セメントコンクリート組成物を硬化させた後、該炭酸化硬化体用セメントコンクリート組成物を硬化させてなるセメント硬化体を炭酸化することを特徴とする炭酸化硬化体の製造方法。
  5. 表面から少なくとも厚さ2mm以上を炭酸化させることを特徴とする請求項4記載の炭酸化硬化体の製造方法。
JP2002270972A 2002-09-18 2002-09-18 炭酸化硬化体用セメント組成物、炭酸化硬化体用セメントコンクリート組成物、及び炭酸化硬化体の製造方法 Pending JP2004107129A (ja)

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