JP3844458B2 - セメント混和材及びセメント組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるセメント混和材及びセメント組成物に関する。なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
【0002】
【従来の技術とその課題】
コンクリートの耐久性問題と関連して、ひび割れの低減が強く求められている。コンクリートのひび割れを誘発する要因としては、乾燥収縮や自己収縮が挙げられる。これら収縮を低減するために収縮低減剤が提案されている(特開平9-86998号公報)。一方、過剰強度の防止と材料分離抵抗性の付与を両立させるために、石灰石微粉末が利用されている。
【0003】
しかしながら、資源の少ない我が国にとって石灰石は貴重な天然資源であり、単にコンクリートに混和するだけの利用は資源の枯渇につながることから、工業原料としてもっと有効に利用するべきであるとの声が多いものであった。さらに、石灰石微粉末を混合したセメント硬化体は中性化抵抗性が十分でないという課題を有するものであった。中性化は鉄筋コンクリート構造物の耐久性と関連して重要である。今日では、収縮低減効果と中性化抵抗性を併せ持つ材料の開発が待たれているのが実状である。
【0004】
そこで、本発明者は種々検討を重ねた結果、γ-2CaO・SiO2が、中性化抵抗性を有することを見出した。また、収縮低減剤と組み合わせることにより収縮低減効果を発揮してより耐久性のあるコンクリート構造物の構築を可能にすることを知見して本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、γ-2CaO・SiO2と収縮低減剤を含有してなり、収縮低減剤がγ-2CaO・SiO2100部に対して、2〜67部であるセメント混和材であり、γ-2CaO・SiO2のブレーン比表面積値が3,000cm2/g以上であることを特徴とする該セメント混和材であり、セメント100 部及び該セメント混和材10 〜 200 部を含有してなることを特徴とするセメント組成物であり、セメント100 部、γ-2CaO・SiO2 6 〜 200 部、及び収縮低減剤1〜5部を含有してなるセメント組成物であり、セメントが高炉セメントである該セメント組成物である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するγ-2CaO・SiO2は2CaO・SiO2で表される化合物の中で、低温相として知られるものであり、高温相であるα-2CaO・SiO2やβ-2CaO・SiO2とは異なるものである。これらの化合物はいずれも2CaO・SiO2で同じ化学組成を有するが、結晶構造は異なっている。セメントクリンカ中に存在する2CaO・SiO2はβ-2CaO・SiO2である。β-2CaO・SiO2は水硬性を有するが、本発明におけるγ-2CaO・SiO2のような中性化抵抗性を示すものではない。
【0007】
γ-2CaO・SiO2の粒度は特に制限されないが、ブレーン比表面積値で3,000cm2/g以上が好ましく、4,000〜8,000cm2/gがより好ましい。ブレーン比表面積値が3,000cm2/g未満では、中性化抵抗性が充分に得られない場合がある。8,000cm2/gを超えても更なる効果の増進が期待できない。
【0008】
γ-2CaO・SiO2を工業的に製造する方法は特に限定されないが、一般的には(1)生石灰、消石灰、及び/又は炭酸カルシウムなどのカルシウム源、(2)酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び/又はボーキサイトなどのアルミニウム源を熱処理する方法などが挙げられる。
【0009】
熱処理温度は特に限定されるものではなく、使用する原料によっても異なるが、通常、850℃〜1600℃程度の範囲で行えばよく、1,000℃〜1,500℃程度が熱処理効率の面から好ましい。
【0010】
また、溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、又は還元期スラグなどの製鋼スラグやステンレススラグなどの、γ-2CaO・SiO2を含有するスラグ類を用いてもよい。
【0011】
本発明のγ-2CaO・SiO2を工業的に製造する際には、不純物の存在は特に限定されるものではなく、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題にならない。その具体例としては、例えば、Al2O3、MgO、TiO2、MnO、Na2O、S、P2O5、及びFe2O3などが挙げられる。
【0012】
また、共存する化合物としては、トライカルシウムシリケート3CaO・SiO2、ランキナイト3CaO・2SiO2、及びワラストナイトCaO・SiO2などのγ−2CaO・SiO2以外のカルシウムシリケート、メルヴィナイト3CaO・MgO・2SiO2、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiO2、及びモンチセライトCaO・MgO・SiO2などのカルシウムマグネシウムシリケート、ゲーレナイト2CaO・Al2O3・SiO2やアノーサイトCaO・Al2O3・2SiO2などのカルシウムアルミノシリケート、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiO2とゲーレナイト2CaO・Al2O3・SiO2の混晶であるメリライト、MgO・SiO2や2MgO・SiO2などのマグネシウムシリケート、遊離石灰、遊離マグネシア、カルシウムフェライト2CaO・Fe2O3、カルシウムアルミノフェライト4CaO・Al2O3・Fe2O3、リューサイト(K2O、Na2O)・Al2O3・SiO2、スピネルMgO・Al2O3、並びにマグネタイトFe3O4を含む場合がある。
【0013】
本発明に係る収縮低減剤とは、特に限定されるものではなく、いかなるものでも使用可能である。主成分で大別すると、低級アルコールアルキレンオキシド付加物系、アルコール系、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体系、ポリエーテル系、低分子量アルキレンオキシド共重合体系などが挙げられる。
【0014】
収縮低減剤は各社より市販されており、その代表例としては、例えば、電気化学工業社製商品名「エスケーガード」、エフ・ピー・ケー社製商品名「ヒビガード」、竹本油脂社製商品名「ヒビダン」、及び太平洋セメント社製商品名「テトラガード」などが挙げられる。
【0015】
本発明のセメント組成物の配合は特に制限されないが、セメント100部に対してγ-2CaO・SiO2を6〜200部で、好ましくは20〜120部、収縮低減剤を1〜5部、好ましくは2〜4部となるようにセメント及び本セメント混和材を配合することが好ましい。また、γ−2CaO・SiO2はセメントの一部として、配合することも可能である(要すれば、本明細書の実験例2参照)。
【0016】
本発明のセメント混和材中のγ-2CaO・SiO2と収縮低減剤の配合は、γ -2CaO ・ SiO 2 100 部に対して、収縮低減剤が2〜 67部であり、3〜25 部が好ましい。収縮低減剤が67 部を超えると、十分な中性化抵抗性が得られない場合がある。また、収縮低減剤が2部未満では、十分な収縮低減効果が得られない場合がある。
【0017】
本発明で使用するセメントは特に限定されないが、ポルトランドセメントを含有するセメントを用いることが好ましく、たとえば普通、早強、超早強、低熱、または中庸熱などの各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに高炉水砕スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、あるいは、ポルトランドセメントに石灰石粉末などを混合した石灰石フィラーセメントなどのうちの1種又は2種以上が好ましい。
【0018】
本発明のセメント混和材は、中性化抵抗性に乏しく、また、ひび割れ抵抗性に乏しい高炉セメントと併用すると特に有益であり、中性化抵抗性に乏しい高炉水砕スラグの配合量が多いB種又はC種と併用することが好ましい。
【0019】
本発明のセメント混和材及びセメントの配合は特に限定されないが、セメント100部に対して本セメント混和材を10〜200部程度使用するのが好ましく、20〜120部程度使用することがより好ましい。本セメント混和材量が10部未満では中性化に対する抵抗性が小さくなり、200部を越えると十分な強度が得られない場合がある。
【0020】
本発明のセメント組成物の粒度は、使用する目的及び用途に依存するため特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積値で3,000〜8,000cm2/gが好ましく、4,000〜6,000cm2/gがより好ましい。3,000cm2/g未満では強度発現性が十分に得られない場合があり、8,000cm2/gを超えると作業性が悪くなる場合がある。
【0021】
水の配合量は特に限定されるものではないが、通常、セメント及びγ-2CaO・SiO2の合計100部に対して20〜60部が好ましい。20部未満では混練物の成型が困難となる場合があり、60部を超えると十分な強度が得られない場合がある。
【0022】
本発明では、セメント、本セメント混和材、砂や砂利などの骨材の他に、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、AE高性能減水剤、高炉水砕スラグ微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、石灰石微粉末、フライアッシュ、及びシリカフュームなどの混和材料、膨張材、急硬材、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、ポリマー、凝結調整剤、ベントナイトなどの粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体などを1種又は2種以上、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0023】
本発明において、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良く、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
【0024】
混合装置としては、既存のいかなる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実験例に基づいて説明する。
【0026】
実験例1
表1に示す割合で収縮低減剤とγ-2CaO・SiO2を使用し、セメント100部に対し、γ−2CaO・SiO2及び砂の合計を300部とし、水セメント比が50%のモルタルを調製し、圧縮強度、長さ変化率、及び中性化深さを測定した。ただし、収縮低減剤は水の一部として配合した。結果を表1に併記した。
【0027】
<使用材料>
セメントa:市販の普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積値3,200cm2/g、比重3.15
γ-2CaO・SiO2 :炭酸カルシウム2モル及び二酸化ケイ素1モルを混合粉砕した後、電気炉で1450℃で3時間焼成し、炉外に取り出して自然放冷により冷却して合成した。この時ダスティングし、ブレーン比表面積値1,800cm2/gまで粉化した。これを更に4,000cm2/gまで粉砕した。
石灰石微粉末:新潟県青海鉱山産石灰石の粉砕品、ブレーン比表面積値4,000cm2/g、比重2.70
収縮低減剤A:電気化学工業社製、低分子量アルキレンオキシド共重合体系
砂 :JIS標準砂(ISO679準拠)
水 :水道水
【0028】
<測定方法>
圧縮強度:4×4×16cm供試体を作製し、JIS R 5201に準じて材齢28日強度を測定。
長さ変化率:JIS A 6202に準じて、材齢28日の長さ変化率を測定。但し、材齢1日で脱型し、材齢7日までは水中養生を行い、以後材齢28日までは20℃・相対湿度60%の環境で気乾養生を行った。
中性化深さ:4×4×16cm供試体を作製し、材齢28日まで20℃水中養生を施した後、30℃・相対湿度60%・炭酸ガス濃度5%の環境で促進中性化を行い、8週間後に供試体を輪切りし、断面にフェノールフタレインアルコール溶液を塗布し、外周部から着色部との距離を測定して中性化深さを測定し、中性化抵抗性を評価した。
【0029】
【表1】
注:表中の*はγ-2CaO・SiO2の代わりに石灰石微粉末を使用したことを示す。
【0030】
実験例2
セメントaとγ-2CaO・SiO2の単位量の合計が300kg/m3(100部)、単位収縮低減剤A量12kg/m3(4部)、単位水量が175kg/m3(58部)、s/a(細骨材率)=46%、及び空気量4.5±1.5%のコンクリートを調製し、γ-2CaO・SiO2の使用量を表2に示すように変えて実験を行った。これらのコンクリートの断熱温度上昇量、圧縮強度、長さ変化率、及び中性化深さを測定した。
【0031】
また、中性化抵抗性を検討するための比較例として、同一配合の場合にγ-2CaO・SiO2と圧縮強度がほぼ同等となるという特徴を有する石灰石微粉末を使用した場合についても同様の実験を行った。結果を表2に併記する。
【0032】
<使用材料>
砂 :新潟県姫川産、比重2.62
砂利 :新潟県姫川産、砕石、比重2.64
【0033】
<測定方法>
長さ変化率 :JIS A 6202に準じて、材齢28日の長さ変化率を測定。ただし、材齢1日で脱型し、材齢7日までは水中養生を行い、以後材齢28日までは20℃・相対湿度60%の環境で気乾養生を行った。
断熱温度上昇量:東京理工(株)社製の断熱温度上昇量測定装置を用いて打設温度20℃の条件で測定。
圧縮強度 :10cmφ×20cm供試体を作製し、JIS A 1108に準じて材齢28日強度を測定。但し、脱型は材齢7日に行い、以後20℃の水中養生を行った。
中性化深さ:10cmφ×20cm供試体を作製し、材齢14日まで20℃水中養生を施した後、30℃・相対湿度60%・炭酸ガス濃度5%の環境で促進中性化を行い、3ヶ月後に供試体を輪切りし、断面にフェノールフタレインアルコール溶液を塗布し、外周と赤色着色部との距離で中性化深さを測定し、中性化抵抗力を評価した。
【0034】
【表2】
注:γ-2CaO・SiO2欄のLSPは、γ-2CaO・SiO2の代わりに石灰石微粉末を使用したことを示す。
【0035】
実験例3
γ-2CaO・SiO2の単位量を60kg/m3(20部)、セメントの単位量240kg/m3(80部)とし、収縮低減剤の種類と量を表3に示すように変化した点以外は実験例2と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0036】
<使用材料>
収縮低減剤B:エフ・ピー・ケー社製、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体系
収縮低減剤C:太平洋セメント社製、低級アルコールのアルキレンオキシド付加物系
【0037】
【表3】
注:配合の「部」は300kg/m3を100部とした。
【0038】
実験例4
単位セメント量240kg/m3、γ-2CaO・SiO2の単位量60kg/m3とし、その合計300kg/m3を100部とし、単位収縮低減剤A量を12kg/m3(4部)とし、セメントの種類を表4に示すように変えたこと以外は実験例2と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0039】
<使用材料>
セメントb :市販の高炉セメントB種
セメントc :市販の高炉セメントC種
【0040】
【表4】
【0041】
実験例5
実験例1で作製したブレーン比表面積値1,800cm2/gのγ-2CaO・SiO2粉末を粉砕して作製した、粒度の異なるγ-2CaO・SiO2微粉を用い、実験No.1-4と同一の配合のモルタルを作製し、実験1と同じ測定方法を用いて中性化深さを測定し、中性化抵抗性を評価した。
【0042】
【表5】
【0043】
【発明の効果】
本セメント混和材及び本セメント組成物は中性化されにくく、水和硬化時の収縮量が小さく、ひび割れが少ないという特徴を有する。また、水和発熱量が小さいコンクリートが得られるなどの効果を奏するため、石灰石微粉末を混合したセメント及び高炉セメントに代わる材料として用いることが可能であり、建築及び土木分野におけるコンクリート構造物用に適する。
Claims (5)
- γ-2CaO・SiO2と収縮低減剤を含有してなり、収縮低減剤がγ-2CaO・SiO2100部に対して、2〜67部であるセメント混和材。
- γ-2CaO・SiO2のブレーン比表面積値が3,000cm2/g以上であることを特徴とする請求項1記載のセメント混和材。
- セメント100 部と、請求項1〜請求項2のうちの1項記載のセメント混和材10 〜 200 部とを含有してなるセメント組成物。
- セメント100 部、γ-2CaO・SiO2 6 〜 200 部、及び収縮低減剤1〜5部を含有してなるセメント組成物。
- セメントが高炉セメントであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のセメント組成物。
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