JP4987491B2 - グラウト材及びそれを用いたグラウト工法 - Google Patents
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Description
本発明の粉末状乾燥収縮低減剤は、ポリマーエマルジョンを併用した場合、気泡を消す効果と中性化抵抗性をさらに向上させる効果を有する特定の粉末状乾燥収縮低減剤である。特許文献5、6は、セメント、ポリマーエマルジョン、乾燥収縮低減剤、膨張材、骨材、繊維、減水剤、及び消泡剤の記載があり、本発明の構成と同様であるが、用いる乾燥収縮低減剤を特定し、それ自体が材料分離低減効果,消泡効果、及び中性化抑制効果を付与することの記載がない。特許文献7は、消泡剤、気泡の安定性を向上させるための脂肪酸金属塩、金属アルミニウム粉末、ポリマーエマルジョンを配合するグラウト組成物の記載がある。しかしながら、本発明のような効果を有する乾燥収縮低減剤に関する記載はない。
(1)セメントと、アクリル酸エステル共重合体の再乳化型粉末樹脂であるポリマーディスパージョンと、膨張材と、一般式がX{O(AO)nR}mで示され、Xは2〜8個の水酸基を有する化合物の残基、AOは炭素数2〜18のオキシアルキレン基、Rは水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は炭素数2〜18のアシル基、nは30〜1000、mは2〜8であり、オキシアルキレン基の60モル%以上はオキシエチレン基である粉末状乾燥収縮低減剤と、ポリカルボン酸系分散剤に、ナフタレン系分散剤又はナフタレン系分散剤とメラミン系分散剤を配合した分散剤と、骨材とを含有してなり、水を練り混ぜて得られる混練り物の単位容積質量の比が1.05以上で、混練り物の硬化体の中性化深さの比が0.95以下であり、ポリマーディスパージョンがセメント100質量部に対して1〜10質量、膨張材がセメント100質量部に対して1〜10質量部、粉末状乾燥収縮低減剤がセメント100質量部に対して2〜8質量部、分散剤がセメント100質量部に対して0.1〜2質量部、骨材がセメント100質量部に対して100〜300質量部であることを特徴とするグラウト材。ここで、単位容積質量の比は、乾燥収縮低減剤を除いた混練り物の単位容積質量に対する乾燥収縮低減剤を加えた混練り物の単位容積質量の比であり、中性化深さの比は、乾燥収縮低減剤を除いた混練り物の硬化体の中性化深さに対する乾燥収縮低減剤を加えた混練り物の硬化体の中性化深さの比である。
(2)繊維を含有してなり、繊維がグラウト材100質量部に対して0.05〜3質量部である(1)のグラウト材。
(3)消泡剤を含有してなり、消泡剤がセメント100質量部に対して0.005〜0.15質量部である(1)又は(2)のグラウト材。
(4)水をセメント100質量部に対して30〜50質量部加え練り混ぜて、静置フロー値が210〜300mmを示す(1)〜(3)のうちのグラウト材。
(5)(1)〜(4)のうちのグラウト材に水を加え練り混ぜて充填箇所に流し込むグラウト工法。
本発明のグラウト材は、水を練り混ぜて得られる混練り物の単位容積質量の比が1.05以上で、混練り物の硬化体の中性化深さの比が0.95以下とすることにより、優れた強度特性や耐久性が得られるものである。ここで、単位容積質量の比とは、乾燥収縮低減剤を除いた混練り物の単位容積質量に対する乾燥収縮低減剤を加えた混練り物の単位容積質量の比であり、中性化深さの比とは、乾燥収縮低減剤を除いた混練り物の硬化体の中性化深さに対する乾燥収縮低減剤を加えた混練り物の硬化体の中性化深さの比である。
nの値が30未満であると融点が低くなり粉体で使用することが難しくなり、nの値が1000を超えると粘度が高くなり製造が難しくなる。
オキシエチレン基が60モル%未満であると融点が低くなり粉体で使用することが難しくなり、セメント溶液中での溶解性が悪くなる。
一般式X{O(AO)nR}mにおいて、Xは2〜8個の水酸基を有する化合物の残基であるが、水酸基を2〜8個有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、スチレングリコール、炭素数8〜18のアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルバイド、ソルビトールとグリセリンの縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール類、あるいはそれらの部分エーテル化物、又はエステル化物、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グリコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュークロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等の糖類、あるいはそれらの部分エーテル化物又はエステル化物等が挙げられる。
一般式X{O(AO)nR}mにおいて、AOで示される炭素数2〜18のオキシアルキレン基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、炭素数6〜18のα−オレフィンオキシド等に由来するもので、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基、炭素数6〜18のオキシアルキレン基等があり、2種以上が付加しているときは、ブロック状付加でもランダム状付加でもよい。
上記一般式において、Rで示される炭素数1〜18の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、アリル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソセチル基、オクタデシル基、イソステアリル基、オレイル基、ベンジル基、クレジル基、ブチルフェニル基、ジブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基等が挙げられる。
また、同じくRで示される炭素数2〜18のアシル基としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸,パルミチン酸、イソパルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸等に由来するアシル基が挙げられる。
粉末状乾燥収縮低減剤の使用量は、セメント100質量部に対して、2〜8質量部が好ましく、3〜6質量部がより好ましい。2質量部未満では、充分な収縮低減効果、消泡効果、中性化抑制効果が得られず、8質量部を超えると強度発現を阻害する場合がある。
ポリカルボン酸系分散剤に、メラミン系分散剤、ナフタレン系分散剤の中から選ばれる1種又は2種を併用する場合の配合割合は、ポリカルボン酸系分散剤100質量部に対して、100〜800質量部が好ましい。
本発明の分散剤は粉体及び液体いずれも使用可能であり、粉体の場合は予めプレミックスすることが可能である。
本発明では、初期ひび割れ抵抗性の向上や曲げ耐力を向上する目的で繊維類を配合して使用することが可能である。
繊維は、収束しているものとそうでないもの両方使用できるが、収束している繊維を使用する場合は、流動性を大きく低下させない0.05〜0.3質量部の範囲が好ましく、初期ひび割れ抵抗性の向上に対しても好ましい。また、曲げ耐力を向上するためには、収束していない太い径の繊維を0.5〜3質量部の範囲で用いた方が好ましい。
消泡剤の使用量は、セメント100質量部に対して、0.005〜0.15質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。0.005質量部未満では、消泡性の相乗効果が発揮できない場合があり、0.15質量部を超えると消泡効果が頭打ちとなる。
さらに、本発明は、粉末状乾燥収縮低減剤を使用することが肝要であり、粉末状乾燥収縮低減剤を添加せずに、単に消泡剤を添加して単位容積質量を同じにしたグラウト材と比べ、中性化深さが小さくなることが特徴である。
セメント100質量部に対して、骨材200質量部、膨張材4質量部、粉末状乾燥収縮低減剤B5質量部、分散剤A0.3質量部、ポリマーディスパージョンを表1に示すように変えグラウト材を調製した。このグラウト材中のセメント100質量部に対して、水を40質量部加えハンドミキサーで90秒間練混ぜグラウトモルタルを調製し、フロー、単位容積質量比、圧縮強度、付着強度、材料分離抵抗性、硬化収縮、塩化物イオン浸透抵抗性、中性化深さ比を評価した。結果を表1に示す。
セメント:普通ポルトランドセメント 市販品
骨材:新潟県青海産石灰砂乾燥品、粒径1.2mm以下砂100質量部に対して粒径1.2〜5mm砂125質量部の混合砂として使用
膨張材:カルシウムサルホアルミネート系膨張材、市販品
乾燥収縮低減剤B:HO−(CH2CH2O)189−H、市販品、粉体
ポリマーディスパージョン:再乳化型粉末樹脂、アクリル−スチレン系共重合体、市販品
分散剤A:市販のポリカルボン酸系分散剤100質量部に対して、市販のナフタレン系分散剤500質量部混合したもの、粉体
静置フロー:JIS R 5201に規定されているフローコーンにモルタル充填し、コーンを引き上げたときのモルタルの広がり幅を測定
単位容積質量比:乾燥収縮低減剤を除いた混練り物の単位容積質量に対する乾燥収縮低減剤を加えた混練り物の単位容積質量の比。単位容積質量の測定はJIS A 1171に準拠した。
圧縮強度:JIS A 1171に準拠、材齢28日
付着強度:JIS A 1171に準拠、材齢28日
材料分離抵抗性:土木学会基準のJSCE−F 522に規定されているプレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率及び膨張率試験で使用するポリエチレン袋に高さ20cmとなるようにグラウトモルタルを入れて、1時間静置後、上面から高さ5cm部分のモルタルと下面から5cm部分のモルタルを採取し、篩目90μmの篩を用いて洗い試験を実施した。その際篩に残った砂を乾燥させ質量を測定し、上面部と下面部の砂の比率を求め材料分離抵抗性を評価した。比率が0.95〜1.0であれば○、0.9〜0.95未満であれば△、0.9未満であれば×とした。
硬化収縮:JHS−416に準拠、測定材齢28日
塩化物イオン浸透抵抗性:JIS A 1171に準拠
中性化深さ比:乾燥収縮低減剤を除いた混練り物の硬化体の中性化深さに対する乾燥収縮低減剤を加えた混練り物の硬化体の中性化深さの比。中性化深さの測定はJIS A 1171に準拠した。
膨張材の量を表2に示すように変えたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
乾燥収縮低減剤の種類と量を変えた以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
乾燥収縮低減剤A:HO−(CH2CH2O)68−H、市販品、粉体
乾燥収縮低減剤C:n−C4H9O−(C2H4O)2−H、市販品、液体
分散剤の種類及び量を表4に示すように変えた以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に示す。なお、比較例としてポリカルボン酸系分散剤単独で使用した場合も同様に行った。
分散剤C:分散剤Aに使用したポリカルボン酸系分散剤100質量部に対して市販のリグニン系分散剤500質量部の混合物
分散剤D:分散剤Aに使用したポリカルボン酸系分散剤100質量部に対して分散剤Aに使用したナフタレン系分散剤200質量部、分散剤Bに使用したメラミン系分散剤250質量部の混合物
分散剤E:分散剤Aに使用したポリカルボン酸系分散剤100質量部に対して分散剤Bに使用したメラミン系分散剤200質量部、分散剤Cに使用したリグニン系分散剤250質量部の混合物
実験No.1-4のグラウト材100質量部に対し、表5に示す繊維の種類と量を加え、初期ひび割れ抵抗性、及び曲げタフネス試験を実施したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表5に示す。
繊維A:ビニロン繊維、繊維長さ6mm、繊維径0.2mm、市販品
繊維B:ビニロン繊維、繊維長さ6mm、繊維径0.026mm、市販品
初期ひび割れ抵抗性:縦30cm×横30cm×厚さ6cmのコンクリート平板にグラウトモルタルを流し込んだときに厚さ5cmとなるように型枠を設置し、グラウトモルタルを流し込み、温度5℃、風速2〜3mの条件で24時間放置後のひび割れの有無を確認した。ひび割れが全く無い場合を○、ひび割れが有りそのトータル長さが10cm以下の場合を△、ひび割れが有りそのトータル長さが10cmを超える場合を×とした。
曲げタフネス:JSCE G 552に準拠。養生方法はJIS A 1171に準拠。測定材齢は28日。
実験No.1-4のグラウト材のセメント100質量部に対して、表6に示す量の消泡剤を加えたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表6に示す。なお、比較のために、消泡効果が低い乾燥収縮低減剤を配合した実験No.3-13のグラウト材にも消泡剤を添加して試験を行った。
消泡剤:シリコーン系消泡剤、市販品
ポンプ圧送性:ホース内又はポンプ吸込み部で閉塞する場合を×、閉塞が無い場合を○とした。
充填率:縦100cm×横100cm×高さ5cmの全面塩化ビニル樹脂製の箱を作製し、高さ5cmの側面の中央部に注入口を設けグラウトモルタルを注入した。エア抜き孔は、注入口の対面側の上面に設けた。充填率は、予めJIS A 1171に準拠し測定した単位容積質量(表7に示す値)に対する注入した箇所のモルタルの質量と充填箇所容積から求めた単位容積質量の比率より算出した。
Claims (5)
- セメントと、アクリル酸エステル共重合体の再乳化型粉末樹脂であるポリマーディスパージョンと、膨張材と、一般式がX{O(AO)nR}mで示され、Xは2〜8個の水酸基を有する化合物の残基、AOは炭素数2〜18のオキシアルキレン基、Rは水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は炭素数2〜18のアシル基、nは30〜1000、mは2〜8であり、オキシアルキレン基の60モル%以上はオキシエチレン基である粉末状乾燥収縮低減剤と、ポリカルボン酸系分散剤に、ナフタレン系分散剤又はナフタレン系分散剤とメラミン系分散剤を配合した分散剤と、骨材とを含有してなり、水を練り混ぜて得られる混練り物の単位容積質量の比が1.05以上で、混練り物の硬化体の中性化深さの比が0.95以下であり、ポリマーディスパージョンがセメント100質量部に対して1〜10質量、膨張材がセメント100質量部に対して1〜10質量部、粉末状乾燥収縮低減剤がセメント100質量部に対して2〜8質量部、分散剤がセメント100質量部に対して0.1〜2質量部、骨材がセメント100質量部に対して100〜300質量部であることを特徴とするグラウト材。ここで、単位容積質量の比は、乾燥収縮低減剤を除いた混練り物の単位容積質量に対する乾燥収縮低減剤を加えた混練り物の単位容積質量の比であり、中性化深さの比は、乾燥収縮低減剤を除いた混練り物の硬化体の中性化深さに対する乾燥収縮低減剤を加えた混練り物の硬化体の中性化深さの比である。
- 繊維を含有してなり、繊維がグラウト材100質量部に対して0.05〜3質量部であることを特徴とする請求項1記載のグラウト材。
- 消泡剤を含有してなり、消泡剤がセメント100質量部に対して0.005〜0.15質量部であることを特徴とする請求項1又は2記載のグラウト材。
- 水をセメント100質量部に対して30〜50質量部加え練り混ぜて、静置フロー値が210〜300mmを示す請求項1〜3のうちの1項記載のグラウト材。
- 請求項1〜4のうちの1項記載のグラウト材に水を加え練り混ぜて充填箇所に流し込むグラウト工法。
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