JP4520321B2 - 吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法 - Google Patents
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Description
このような補修工事では、修復断面積が広い場合は吹付け工法が多く適用される。吹付けによる施工方法は、一般的に、練り混ぜたモルタルをポンプで圧送し、圧縮空気と混合し、モルタルを吹き飛ばして施工する方法であり、システムが機械化されているので施工スピードが速く、補修断面への付着性に優れ、鉄筋裏側への密実な充填も可能という利点がある。
ポリマーエマルジョンを混和することにより、耐久性を向上させたり、付着力を向上させたり、粉塵やリバウンドを低減させたりする効果を付与できるが、ポリマーエマルジョンは高価な材料であり吹付けモルタルとして高価である。また、ポリマーエマルジョンを混和した吹付け材料の1層あたりの吹付け厚みは、天井面に吹き付けた場合50mm未満であり、それ以上厚みを増すとダレや剥がれが発生したりする。
一方、吹付け厚みを増すため、ポリマーセメントモルタルにセメントの硬化を促進する急結剤を添加する吹付け方法があり、50mm以上の厚付けが可能である。安定した厚付け性を確保するためには急結剤の添加が必須であり、急結剤を使用しないで安定した厚付け性を確保することは困難である。
また、ポリマーエマルジョンを含有しないセメントモルタルに急結剤を混入する技術も知られており、50mm以上の厚付けが可能であるが、トンネル等の一次覆工、地山崩落防止、のり面保護等の用途に限られている。また、補修材料の長期的な耐久性能は求められていないのが実情である。
例えば、セメント:砂:フライアッシュまたはスラグ微粉末=1:2.7:0.1〜4.0:1.0であるモルタルに対して、ホルマイト系鉱物の解砕物が対セメント重量比で0.5〜5.0%で含有され、さらに減水剤が対セメント重量比で0.5〜5.0%で含有する吹付け材料(特許文献1参照)。
また、水硬性セメント100重量部に対して細骨材100〜400重量部およびモンモリロナイト鉱物0.01〜10重量部とを含有する吹付け材料(特許文献2参照)。
さらに、従来工法の場合、1回あたりの塗り厚さは壁面で20〜40mm、天井面で10〜20mm程度であり多層塗りをしなければならないので、これを改善した補修用セメント組成物(特許文献3参照)。
さらに、ポリマーエマルジョンは高価な材料であり、補修モルタル自体のコストも高くなる等の課題があった。また、ポリマーエマルジョンを含まず急結剤を併用する場合は、耐久性能が一般コンクリートに比べ劣るという課題があった。
また、急結剤を併用しない場合、ホルマイト系鉱物やモンモリロナイト系鉱物を配合することでダレやリバウンドが減り厚付け性は良好になるが、補修材料としての耐久性能や、天井面でも安定して90mm以上厚付けできる性能を持つ材料がなかった。
(2)結晶性シリカの含有率が1質量%以下のホルマイト系鉱物を使用することを特徴とする(1)の吹付け材料。
(3)膨張材を含有してなる(1)または(2)の吹付け材料。
(4)収縮低減剤を含有してなる(1)〜(3)のいずれかの吹付け材料。
(5)収縮低減剤が粉末状ポリオキシアルキレン誘導体であり、その一般式がX{O(AO)nR}mで示され、Xが2〜8個の水酸基を有する化合物の残基、AOが炭素数2〜18のオキシアルキレン基、Rが水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は炭素数2〜18のアシル基、nが30〜1000、mが2〜8で、前記オキシアルキレン基の60モル%以上がオキシエチレン基である(4)の吹付け材料。
(6)流動化剤及び/又は空気連行剤を含有する(1)〜(5)のいずれかの吹付け材料。
(7)繊維を含有する(1)〜(6)のいずれかの吹付け材料。
(8)凝結促進剤を含有する(1)〜(7)のいずれかの吹付け材料。
(9)(1)〜(8)のいずれかの吹付け材料を用いて1層あたりの吹付け厚さを90mm以上とする吹付け工法。
(10)(1)〜(8)のいずれかの吹付け材料を用いて補修したコンクリート。
ポゾラン微粉末の粒度は、特に限定されるものではないが、3000cm2/g以上が好ましい。
中でもヒドロキシエチルメチルセルロースが好ましい。ヒドロキシエチルメチルセルロース中のヒドロキシエトキシル基含有量は4〜20%で、この粉末を2%水溶液となるように熱水に混合後、分散した後、攪拌しながら冷却し30℃において光の透光度が45%以上のものが好ましい。このセルロース誘導体は、低温から高温領域の幅広い温度領域においてアルカリ中での溶解性に優れるため粘性付与効果にばらつきがないのが特徴であり、ホルマイト系鉱物と併用した場合、温度に左右されにくい安定的なチクソトロピック性を得ることができる。これに、他の水溶性高分子物質と呼ばれているもので、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース,カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸やそのナトリウム塩やカリウム塩、及びポリエチレンオキサイド等を併用することも可能である。
ホルマイト系鉱物の平均長さは、1〜3ミクロンのものが適度なチクソトロピック性を与える点で好ましい。また、結晶性シリカの含有率が1%以下のホルマイト鉱物を使用することが安全性の点で好ましい。
骨材は施工する現場で混合してもよいが、予めセメントと混合しておく場合は、骨材を乾燥させた乾燥骨材を使用すればよい。
軽量骨材の種類としては、特に限定されるものではないが、火力発電所から発生するフライアッシュバルーン、シラスシラスバルーン、黒曜石等の天然材料を原料とし焼成した発泡体、廃ガラス等のリサイクル材料を原料とし焼成したものが挙げられ、かさ密度0.7g/cm3以下のものであれば使用できる。
nの値が30未満であると融点が低くなり粉体で使用することが難しくなり、nの値が1000を超えると粘度が高くなり製造が難しくなる。
オキシエチレン基が60モル%未満であると融点が低くなり粉体で使用することが難しくなり、セメント溶液中での溶解性が悪くなる。
本発明の流動化剤の混合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、あらかじめセメントに、またはセメントや水に分散しておくことが好ましい。
繊維の種類としては、ビニロン繊維やプロピレン繊維に代表される高分子繊維類、鋼繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維に代表される無機繊維類が挙げられ、特に限定されるものではない。
凝結促進剤の種類としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、水酸化物、ギ酸塩、酢酸塩等が挙げられる。これらの中で、モルタルの練り混ぜや圧送に悪影響を与えにくい点でリチウム、ナトリウム、カリウムのケイ酸塩やギ酸塩の使用が好ましい。
凝結促進剤の添加によりモルタルの練り混ぜや圧送に悪影響を与えても、有機酸やリン酸塩等の凝結遅延剤を併用することで改善できるのであれば凝結遅延剤と併用して使用してもよい。
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品
骨材:新潟県青海町産石灰砂乾燥品、最大粒径1.2mm
軽量骨材:中国産フライアッシュバルーン、かさ密度0.42g/cm3、最大粒子径0.8mm
高分子増粘剤:ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエトキシ基含有量6%、30℃の透光度55%、市販品
ポゾラン微粉末A:高炉水砕スラグ、ブレーン比表面積7500cm2/g、市販品
ポゾラン微粉末B:高炉徐冷スラグ、ブレーン比表面積8000cm2/g
ポゾラン微粉末C:AとBの等量混合物
ポゾラン微粉末D:シリカフューム、市販品
ポゾラン微粉末E:フライアッシュ、ブレーン比表面積4500cm2/g
50リットルのパン型ミキサーにドライセメントモルタル50kg、水を所定量加え2分間練り混ぜた。練り混ぜたモルタルをホッパー付きのスクイズポンプ(電源100V、消費電力0.2KW、圧送距離:3m、圧送ホース径25mm)で圧送し、モルタル吐出口(ノズル径:10mm)手前で圧縮空気(0.7MPa、消費空気量:0.5m3/min)を挿入して吹き付けた。
流動性:JIS R 5201に規定されているフロー試験を実施した。
単位容積質量:JIS A 1171に準拠した。
圧縮強度:4×4×16mmの形枠に吹き付けて採取し、材齢7日、28日の圧縮強度を測定した。養生は採取後、温度20℃、相対湿度60%で所定材齢まで行った。測定はJISA 5201に準拠した。
付着強度:厚付け性評価で作製した試験体を吹き付けてから3日目にφ55mmのコアドリルで下地となる側溝ふたの界面より5〜10mm削孔し、材齢7日と28日における付着強度を建研式付着力試験機で測定した。
リバウンド率:天井面に設置したコンクリート製プレキャスト板に2分間吹き付けたときに落下した材料と吹付けに使用した全モルタル量との百分率。
厚付け性:縦400mm×横600mm×厚さ60mmのコンクリート製U形側溝ふたに厚み90mmとなるように吹き付けたときの厚付け性を評価した。吹き付けて24時間後の落下や浮きの有無を確認した。
中性化深さ:JIS A 1171に準拠した。
塩化物イオン浸透深さ:JIS A 1171に準拠した。
ホルマイト系鉱物A:アタパルジャイト、結晶性シリカ含有率1%未満、市販品
ホルマイト系鉱物B:セピオライト、市販品
膨張材:カルシウムサルホアルミネート系膨張材、市販品
硬化収縮率:JHS−416に準拠して測定した。
収縮低減剤:ポリオキシアルキレン誘導体、HO−(CH2CH2O)189−H、市販品
流動化剤:メチロールメラミン系流動化剤、市販品
空気連行剤:ポリオキシエチレンアルキルサルフェート系空気連行剤、市販品
凍結融解抵抗性:JSCE−G501に準拠し、300サイクル時の相対動弾性係数を求めた。
繊維A:ビニロン繊維、繊維長さ6mm、繊維径0.026mm、収束タイプ、市販品
繊維B:ビニロン繊維、繊維長さ6mm、繊維径0.2mm、非収束タイプ、市販品
初期ひび割れ:縦300mm×横300mm×厚さ60mmのコンクリート製平板に厚さ10mmとなるように吹き付け表面をコテで均し、温度5℃、湿度40%の環境下で24時間養生後のひび割れ発生の有無を観察した。
曲げタフネス:JSCE G 552に準拠した。養生方法は温度20℃、湿度60%の部屋で気中養生した。測定材齢は28日とした。
凝結促進剤:ケイ酸ナトリウム、市販品
凝結:JIS A 1147に準拠してプロクター貫入抵抗値より始発時間を測定した。
その結果、実験No.2-21の吹付け材料は、練混ぜ時間1.5分に対し、メチルセルロースを使用した吹付け材料は5分練り混ぜてもフローが159であった。
また、これら吹付け材料を実施例2と同様に吹付けたときのリバウンド率は、実験No.2-21は3.7%であるのに対し、メチルセルロースを使用したものは5.1%であった。
メチルセルロース:メトキシル基含有率29.5%、30℃における光の透光度39%
水/セメント比:54%、細骨材率:44.5%、セメント:312kg/m3、水:167kg/m3、細骨材:799kg/m3、粗骨材:989kg/m3
39.4N/mm2
Claims (10)
- セメントと、高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ、シリカフューム、フライアッシュのいずれか1種以上であるポゾラン微粉末と、ヒドロキシエチルメチルセルロースである高分子増粘剤及びホルマイト系鉱物と、かさ密度0.7g/m3を越える骨材の砂と、かさ密度0.7g/cm3以下の軽量骨材とを含有してなり、セメント100質量部に対して、ポゾラン微粉末3〜20質量部、高分子増粘剤0.02〜0.5質量部、ホルマイト系鉱物0.02〜5質量部、骨材の砂100〜260質量部、前記砂100質量部に対して軽量骨材を2〜15質量部である、吹付け材料。
- 結晶性シリカの含有率が1質量%以下のホルマイト系鉱物を使用することを特徴とする請求項1に記載の吹付け材料。
- 膨張材を含有してなる請求項1または2に記載の吹付け材料。
- 収縮低減剤を含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の吹付け材料。
- 収縮低減剤が粉末状ポリオキシアルキレン誘導体であり、その一般式がX{O(AO)nR}mで示され、Xが2〜8個の水酸基を有する化合物の残基、AOが炭素数2〜18のオキシアルキレン基、Rが水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は炭素数2〜18のアシル基、nが30〜1000、mが2〜8で、前記オキシアルキレン基の60モル%以上がオキシエチレン基である請求項4に記載の吹付け材料。
- 流動化剤及び/又は空気連行剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の吹付け材料。
- 繊維を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の吹付け材料。
- 凝結促進剤を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の吹付け材料。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の吹付け材料を用いて1層あたりの吹付け厚さを90mm以上とする吹付け工法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の吹付け材料を用いて補修したコンクリート。
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