JP4108533B2 - ポルトランドセメントクリンカおよびそれを用いたセメント組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるポルトランドセメントクリンカおよびセメント組成物に関する。なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。また、本発明で言うセメントコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、コンクリートを総称するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
セメント産業では、各種産業における副産物の積極的な受け入れと品質の確保を両立することが責務となっている。これは、副産物をポルトランドセメントの原料として利用することが社会的にも期待され大きな関心が寄せられていること、また、その反面、ポルトランドセメントに要求される性能は益々高度化し、多様化しているためである。
【0003】
ポルトランドセメントの原料となるポルトランドセメントクリンカは、エーライトと呼ばれるトライカルシウムシリケート3CaO・SiO2と、ビーライトと呼ばれるα型やα’型やβ型のダイカルシウムシリケート2CaO・SiO2からなるカルシウムシリケートを主成分とし、アルミネート相と呼ばれる3CaO・Al2O3と、フェライト相と呼ばれるカルシウムアルミノフェライト(4CaO・Al2O3・Fe2O3、6CaO・2Al2O3・Fe2O3、6CaO・Al2O3・2Fe2O3が知られている)を含んでいる。これらの化合物はいずれも水硬性を有することが知られている。
【0004】
しかしながら、副産物を原料として積極的に利用すると、ポルトランドセメントクリンカの組成などが変化し、品質の確保が困難となっているのが実状である。例えば、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を主原料として製造される環境調和型セメントを例にとると、流動性の制御や中性化抵抗性が確保しにくいという課題を有している。これは、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰にアルミ分や鉄分が多く含まれるため、得られるポルトランドセメントクリンカは、アルミ分によるアルミネート相や鉄分によるフェライト相が通常のポルトランドセメントよりも著しく多くなるためである。アルミネート相やフェライト相は水和活性が高いため、これらの含有量が多くなると、そのポルトランドセメントクリンカを使用したセメントコンクリートの流動性の経時変化は大きくなる。また、アルミネート相やフェライト相が多いと中性化抵抗性も低下するという課題を有するものであった。
【0005】
また、ダイカルシウムシリケート2CaO・SiO2にはα型、α’型、β型、およびγ型などの多形があることが知られている。その中で、γ型のダイカルシウムシリケート(以下γ-2CaO・SiO2という)は、水硬性を持っていないため、これまでセメント業界でこの化合物が利用されることはなかった。むしろ、セメント製造において、γ-2CaO・SiO2の副生を抑制する製造方法の確立が図られてきた。通常、ポルトランドセメントクリンカ中に存在するダイカルシウムシリケートはβ-2CaO・SiO2を主体とし、そのほか、α'-2CaO・SiO2あるいはα-2CaO・SiO2など、γ-2CaO・SiO2以外のダイカルシウムシリケートを含むことが報告されている。
【0006】
本発明者らは、セメント産業でこれまで利用されることがなかったγ-2CaO・SiO2に着目し、この化合物が優れた中性化抵抗性があることを発見し、セメント混和材やセメント組成物として出願した(特許文献1参照)。
【0007】
このセメント混和材はγ-2CaO・SiO2を含むものであり、これをポルトランドセメントや各種の混合セメント、特に高炉セメントに混和してセメント組成物とすることで、中性化抵抗性に優れるセメント組成物とすることが可能であることを知見したのである。
【0008】
しかしながら、この方法では、ポルトランドセメントクリンカを焼成し、それとは別に、γ-2CaO・SiO2を含むセメント混和材を別途焼成・調製し、それらを後で混合してセメント組成物やセメントコンクリートとする必要があった。もし、ポルトランドセメントクリンカを製造する際に、ポルトランドセメントクリンカ組成物中にγ-2CaO・SiO2を含ませることができれば、上記のようにポルトランドセメントクリンカと、γ-2CaO・SiO2を含むセメント混和材を別々に焼成する必要がなくなり、一度の焼成で済むため、焼成の切替えが不要となり、また、混合操作も必要ないので、利便性や経済性に優れる製造方法となる。
【0009】
そこで、本発明者は、γ-2CaO・SiO2を含むセメント組成物についてさらに研究を重ねた結果、ポルトランドセメントクリンカを製造する際に特定組成の配合とすることによって、ポルトランドセメントクリンカ中にγ-2CaO・SiO2を含ませることができ、そのポルトランドセメントクリンカを原料としてポルトランドセメントやセメント組成物を調製すると、中性化抵抗性ばかりでなく、流動性保持能力にも優れ、しかも非常に低発熱性となることを知見した。
【0010】
また、一方で、セメント業界では、セメント規格の国際化が検討されている。この国際規格はヨーロッパ規格(EN規格)を基本思想としている。EN規格は32.5N/mm2クラス、42.5N/mm2クラス、および52.5N/mm2クラスに大別されている(非特許文献1参照)。
【0011】
一方、日本では、JIS規格に基づいてポルトランドセメントの品質が設計されてきた。その結果、画一的な仕様の下で強度発現性が良好なポルトランドセメントが良いと評価されてきた。
【0012】
その結果、日本のポルトランドセメントはEN規格で分類すると、42.5N/mm2クラスあるいは52.5N/mm2クラスのポルトランドセメントに相当するものしか存在しない状態になっており、設計強度があまり高くないセメントコンクリートを配合設計しようとしても、多くの場合に過剰強度となる傾向にあるのが現状である。
【0013】
過剰強度の防止は、それに伴う過剰な水和発熱を防止する観点から、また、硬化前後の収縮率をできる限り小さくし、硬化後のヒビ割れを防止する観点から重要である。
【0014】
一方、強度発現性に優れるポルトランドセメントを用いて、単位重量あたりのセメント量を少なくすることにより、設計強度があまり高くないセメントコンクリートを配合設計することも考えられるが、この場合には、極度に単位セメント量が少ない配合とする必要があるため、材料分離しやすく、ブリーディング率の大きいセメントコンクリート、いわゆる「シャブコン」になりやすいという課題を有していた。
【0015】
そして、このようなセメントコンクリートを用いてセメントコンクリート構造物を構築すると、巨視的な欠陥が発生しやすく、耐久性のあるセメントコンクリート構造物を構築することが困難になるという課題を有していた。
【0016】
このように、EN規格は、設計強度があまり高くないセメントコンクリートを配合設計しやすい32.5N/mm2クラスのポルトランドセメントが準備されているのが特徴である。
【0017】
現在のEN規格品セメントの主流は石灰石混合セメントである。石灰石混合セメントは、ポルトランドセメントに多量の石灰石微粉末を混合したもので、過剰強度の防止と材料分離抵抗性の向上の両立を実現できるセメントである。つまり、このようなセメント組成物を得るためには、ある種のフィラーを含むことが欠かすことのできない材料設計手法となっている。
【0018】
つまり、水硬性を持たないγ-2CaO・SiO2をポルトランドセメントに含有させることによって、設計強度があまり高くないセメントコンクリートを配合設計しやすい32.5N/mm2クラスのセメントが材料設計できるのである。
【0019】
しかしながら、石灰石微粉末を用いたEN規格品セメントは、中性化により劣化しやすいものであり、また、ポルトランドセメントの原料となる石灰石を消費するため、他の材料を使用すべきとの声が多かった。
【0020】
そこで本発明者は、γ-2CaO・SiO2を含有するポルトランドセメントクリンカに着目し、該ポルトランドセメントクリンカおよびそれを用いたセメント組成物について検討を加えた結果、熱ひびわれを抑制することができる。また、乾燥収縮も低減することができることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0021】
【特許文献1】
国際公開第JP02/08382号パンフレット
【非特許文献1】
後藤孝治、羽原俊祐、セメント規格の国際化−欧州規格の概要と方向性−、セメント・コンクリート、No.631、pp1〜8、1999
【0022】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、セメント組成物 100 部中、 Al 2 O 3 含有量および Fe 2 O 3 含有量の合計が 5% 以下で間隙相量が 10% 以下であり、かつ、 Fe 2 O 3 量が 2 %以下である、γ -2CaO ・ SiO 2 を 10 〜 70% 含有してなるポルトランドセメントクリンカ 55 〜 85 部と、セッコウ類 1 〜 7 部と、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカより選ばれる1種または2種以上 10 〜 40 部とからなるブレーン比表面積が 2,500cm 2 /g 以上のセメント組成物であり、ポルトランドセメントクリンカがβ -2CaO ・ SiO 2 を含まない該セメント組成物であり、コンクリートを材齢 28 日まで 20 ℃水中養生を施した後、 30 ℃・相対湿度 60 %・炭酸ガス濃度 5 %の環境で 12 週間促進中性化を行った後、モルタル断面にフェノールフタレイン 1 %アルコール溶液を噴霧して表面から着色部までの深さを測定した中性化深さが 3.5cm 以下、コンクリートの断熱温度上昇が 29.5 ℃以下、コンクリートの練り上がりのスランプ値から 90 分経過後のスランプ値を差し引いたスランプロス量が 1.5cm 以下である、該セメント組成物である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明者らは、γ-2CaO・SiO2を含有するポルトランドセメントであれば、中性化抵抗性や流動性保持能力などの本発明の効果があることを見出した。すなわち、2CaO・SiO2であっても、β-2CaO・SiO2を含有してγ-2CaO・SiO2を含有しないものについては本発明の対象とはならず、γ-2CaO・SiO2を含有することが必要である。
【0025】
本発明のポルトランドセメントクリンカは少なくとも10%のγ-2CaO・SiO2を含有することが必要であり、20%以上含有することが好ましい。また、γ-2CaO・SiO2の含有量の上限値は特に限定されないが、通常、70%程度である。γ-2CaO・SiO2の含有量が70%を超えると、初期強度発現性が悪くなる傾向にある。
【0026】
γ-2CaO・SiO2や他の化合物の組成は、得られたポルトランドセメントクリンカを構成する化合物を粉末X線回折法によって同定し、さらに、化学成分値からボーグ式によって算出すことができる。また、粉末X線回折法を用いた内部標準法により、あるいは、リートベルト法などによって求めることも可能である。
【0027】
本発明のポルトランドセメントクリンカの成分は特に限定されるものではないが、具体的には、CaO、SiO2、Al2O3、Fe2O3などを主要な化学成分とし、その他、MgO、TiO2、Na2O、K2O、S、塩素などが挙げられる。ただし、Al2O3、Fe2O3、Na2O、K2O、Sの存在はクリンカ中にγ-2CaO・SiO2を含有させる観点から好ましくない。すなわち、これらの不純物はγ-2CaO・SiO2の生成を阻害し、β-2CaO・SiO2、α'-2CaO・SiO2あるいはα-2CaO・SiO2などのγ-2CaO・SiO2以外のダイカルシウムシリケートの生成を促すためである。
【0028】
特に、Al2O3とFe2O3の合計量は、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。Al2O3とFe2O3の合計量が5%を超えると、γ-2CaO・SiO2が生成しにくくなる。また、流動性保持能力が充分でなくなる場合もある。
【0029】
さらに、Al2O3とFe2O3の合計量は5%以下かつFe2O3の含有量が2%以下であることが好ましく、Fe2O3の含有量が1%以下であることがより好ましい。これは、特にFe2O3の存在がγ-2CaO・SiO2の生成を阻害し、β-2CaO・SiO2、α'-2CaO・SiO2あるいはα-2CaO・SiO2などのγ-2CaO・SiO2以外のダイカルシウムシリケートの生成を促すためである。
【0030】
本発明のポルトランドセメントクリンカは、その構成化合物として、エーライトおよび/またはビーライトと、γ-2CaO・SiO2を必須としている。γ-2CaO・SiO2の含有量は前述した通り、10%以上が好ましく、γ-2CaO・SiO2の含有量は20%以上がより好ましい。ただし、γ-2CaO・SiO2の含有量が10%以上を確保していれば、ビーライトが含まれていても何ら差し支えない。また、アルミネート相と、フェライト相も含まれる。
【0031】
また、本発明のポルトランドセメントクリンカに含まれるアルミネート相(3CaO・Al2O3)とフェライト相(4CaO・Al2O3・Fe2O3、6CaO・2Al2O3・Fe2O3、6CaO・Al2O3・2Fe2O3)の合計が10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。アルミネート相とフェライト相を総称して間隙相と呼ばれる。間隙相の量が10%を超えると、γ-2CaO・SiO2が生成しにくくなる。
【0032】
本発明では、間隙相の量やFe2O3量は特に限定されないが、γ-2CaO・SiO2の含有量が高いポルトランドセメントクリンカを得るためには、間隙相の量が10%以下であり、かつ、Fe2O3量が2%以下の両方の条件を満たすことが好ましい。
【0033】
通常、現在市販されている普通、早強、超早強、低熱、中庸熱などの各種ポルトランドセメントのアルミネート相とフェライト相の含有量はそれぞれ5〜10%程度であり、アルミネート相とフェライト相からなる間隙相は少なくとも15%程度含まれている。ビーライトを主体とする低熱ポルトランドセメントは、間隙相の少ないセメンとして知られているが、それでも間隙相は10%以上含まれ、ことに、フェライト相は8%以上含まれている。すなわち、フェライト相が4CaO・Al2O3・Fe2O3を主体とするのであれば、Fe2O3量が2.6%以上含まれていることになる。これは、γ-2CaO・SiO2への変態を抑制するために勘案された組成となっている。
【0034】
したがって、本発明のポルトランドセメントクリンカはアルミネート相とフェライト相からなる間隙相が少ないという特徴を有しており、特にフェライト相の含有量と深く関連するFe2O3量は通常2%以下とすることが好ましい。
【0035】
本発明のポルトランドセメントクリンカは、CaO原料とSiO2原料を配合して焼成することによって得られる。CaO原料としては、例えば、石灰石、生石灰、及び消石灰などが挙げられる。また、SiO2原料としては、例えば、シリカヒュームや籾殻灰やシリカダストなどのシリカ質副産物やケイ石などが挙げられる。これらの原料にCaO原料やSiO2原料を配合して原料調製を行い、これを焼成することによって、工業的に安価な本発明のポルトランドセメントクリンカが製造可能である。
【0036】
本発明のポルトランドセメントクリンカの焼成方法は特に限定されるものではないが、通常、ロータリーキルンや電気炉などによって行うことができる。特に電気炉を用いることによって、ビーライトの生成を抑制することができる。ただし、ロータリーキルンでも充分に本発明の目的とする化合物組成のポルトランドセメントクリンカを得ることが可能である。そして、電気炉はバッチ操業であるのに対して、ロータリーキルンは連続操業が可能であり、製造コストが安価であるという好ましい面もあり、一義的に製造設備の優劣を論じるものではなく、目的や状況に応じて適宜選択できる。
【0037】
焼成温度は特に限定されるものではないが、通常、1,000℃〜1,800℃程度で行うことが好ましく、1,200℃〜1,600℃程度がより好ましい。1,000℃未満では、原料の焼成反応が充分でなく、目的とする化合物組成のセメントクリンカが得られない場合があり、逆に、1,800℃を超えるような条件では、製造コストが高くなり、また、焼成設備への負荷が大きくなるので好ましくない。
【0038】
本発明において、本発明のポルトランドセメントクリンカを粉砕し、セッコウ類などを添加することによってセメント組成物とすることができる。また、さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒュームなどの潜在水硬性物質を配合してもよい。セッコウ類の配合量は特に限定されるものではないが、通常、本発明のポルトランドセメントクリンカ、セッコウ類および潜在水硬性物質の合計100部に対して1〜7部の範囲が好ましく、2〜5部がより好ましい。セッコウ類の配合量が1部未満では流動性保持能力が不足したり、強度発現性が不足する場合があり、セッコウ類の配合量が7部を超えると寸法安定性が悪くなる場合がある。潜在水硬性物質の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、50部以下の範囲で配合することが好ましく、30部以下の範囲で配合することがより好ましい。50部を越えて配合すると、初期の強度発現性や中性化抵抗性が充分に得られない場合がある。
【0039】
本発明に用いるセッコウ類としては、無水セッコウ、半水セッコウ、および二水セッコウのいずれも使用可能であるが、二水セッコウが広く用いられている。また、セッコウ類の粒度は特に限定されないが、ブレーン比表面積で2,000cm2/g以上が好ましく、3,000〜8,000cm2/gがより好ましい。ブレーン比表面積2,000cm2/g未満では強度発現性が不足することがあり、8,000cm2/gを超えると、過剰な粉砕動力が必要となることがある。
【0040】
本発明のセメント組成物の混合方法は特に限定されず、ポルトランドセメントクリンカ、セッコウ類、および潜在水硬性物質類の一部、あるいは全部を別々に粉砕した後に混合しても良い。
【0041】
本発明のセメント組成物のブレーン比表面積は特に限定されるものではないが、2,500cm2/g以上が好ましく、3,000cm2/g〜8,000cm2/gがより好ましく、4,000cm2/g〜6,000cm2/gが最も好ましい。ブレーン比表面積が2,500cm2/g未満では、材料分離抵抗性が得られなかったり、中性化抵抗性が充分でない場合がある。また、8,000cm2/gを超えるように粉砕するには、粉砕動力が大きくなり不経済であり、また、セメントが風化しやすくなり、品質の経時的な劣化が大きくなる傾向がある。
【0042】
本発明において水の使用量は特に限定されるものではなく、通常の使用範囲が使用される。具体的には、本発明のセメント組成物100部に対して水の量は25〜60部が好ましい。25部未満では充分な作業性が得られない場合があり、60部を超えると強度発現性が充分でないばかりか、中性化抵抗性が顕著に認められない場合がある。
【0043】
本発明のセメント組成物を公知のセメントと併用することは何ら差し支えない。その具体例としては、例えば、普通、早強、超早強、低熱、および中庸熱などの各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、またはシリカを混合した各種混合セメント、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰などを原料として製造された廃棄物利用セメント、いわゆるエコセメント(R)、および石灰石粉末などを混合したフィラーセメントなどが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が使用可能である。
【0044】
本発明では、本発明のセメント組成物のほかに、砂や砂利などの骨材、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末や都市ゴミや下水汚泥の焼却灰やそれらの溶融スラグなどの混和材料、膨張材、急硬材、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン、凝結調整剤、ベントナイトなどの粘土鉱物、および、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体などの添加剤など、通常のセメント材料に用いられる公知公用の添加剤、混和材料、および骨材などを1種または2種以上、本発明の目的を阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0045】
【実施例】
以下、本発明の実験例に基づいてさらに説明する。
【0046】
実験例1
石灰石と珪石微粉末を主原料とし、さらに副原料を添加して表1に示す組成のポルトランドセメントクリンカを製造した。ポルトランドセメントクリンカの製造はロータリーキルンを用いて、焼点温度1,500℃で熱処理することによって行った。得られたポルトランドセメントクリンカの構成化合物を粉末X線回折法によって同定し、さらに、化学成分値からボーグ式によって算出した。なお、γ-2CaO・SiO2とβ-2CaO・SiO2が共生したポルトランドセメントクリンカでは、γ-2CaO・SiO2とβ-2CaO・SiO2の標準物質を合成し、それを用いて内部標準法によって存在比率を求めた。その結果を表1に併記した。
【0047】
<使用材料>
石灰石:青海鉱山産、比重2.71g/cm3。
珪石微粉末:新潟県姫川産。
副原料:Al2O3原料はアルミ残灰を使用し、Fe2O3原料はカラミを使用した。
【0048】
【表1】
注:化合物組成欄の化合物名について
Alite:3CaO・SiO2 、γC2S:γ-2CaO・SiO2 、βC2S:β-2CaO・SiO2
C3A :3CaO・Al2O3、 C4AF:4CaO・Al2O3・Fe2O3
【0049】
実験例2
実験例1で合成したポルトランドセメントクリンカをブレーン比表面積4,000cm2/gに粉砕し、このポルトランドセメントクリンカ粉末とセッコウ類と混和材を表2に示す割合で混合してセメント組成物を調製した。表2に示すセメント組成物を使用し、単位セメント組成物量が330kg/m3、空気量4.5±1.0%、スランプ18±2.5cm、材齢28日の圧縮強度が30±1.0N/mm2となるように、水/セメント組成物比、s/a(細骨材率)、および減水剤使用量を設定してコンクリートを調製した。このコンクリートを用いて、促進中性化を行い、中性化深さをもとに中性化抵抗性を評価した。また、スランプの経時変化(スランプロス)によって流動性保持能力を評価し、さらに、断熱温度上昇量を測定して水和発熱量を評価した。
【0050】
<使用材料>
混和材イ:高炉水砕スラグ微粉末、関東エスメント社製、ブレーン比表面積4,000cm2/g。比重2.90。
混和材ロ:フライアッシュ、東北フライアッシュ社製、II種、ブレーン比表面積4,000cm2/g。比重2.40。
混和材ハ:シリカヒューム、SKW社製、ブレーン比表面積170,000cm2/g。比重2.20。
混和材ニ:石灰石微粉末、青海鉱山産石灰石の粉砕品、ブレーン比表面積4,000cm2/g。比重2.71。
混和材ホ:γ-2CaO・SiO2、試薬の炭酸カルシウムと二酸化ケイ素を2対1のモル比で混合し、1,450℃で3時間焼成し、炉内で徐冷することにより合成、ブレーン比表面積4,000cm2/g。比重2.99。
水 :水道水
セッコウ類 :二水セッコウ、市販品
減水剤 :リグニン系、市販品
細骨材 :新潟県姫川産、比重2.62。
粗骨材 :新潟県姫川産、比重2.64。
【0051】
<測定方法>
圧縮強度:JIS A 1108に準じて測定した。
断熱温度上昇量:空気循環式の断熱温度上昇試験装置(東京理工社製)を用いて断熱温度上昇量を測定し、水和発熱量を評価した。ただし、練り上がり温度を20±2℃とし、練り上がり温度から最高到達温度の差で評価した。
中性化深さ:材齢28日まで20℃水中養生を施した後、30℃・相対湿度60%・炭酸ガス濃度5%の環境で12週間促進中性化を行った。促進中性化後、モルタル断面にフェノールフタレイン1%アルコール溶液を噴霧して表面から着色部までの深さを測定して中性化深さを確認し、中性化抵抗性を評価した。
スランプロス:練り上がりのスランプ値から90分経過後のスランプ値を差し引いて、スランプロス量と定義し、流動性保持能力を評価した。
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
本発明のポルトランドセメントクリンカを用いることによって、流動性保持能力に優れ、水和発熱量が小さく、しかも中性化抵抗性に非常に優れるセメント組成物が得られる。また、γ-2CaO・SiO2を含有してなるセメント混和材は、ポルトランドセメントクリンカ及びポルトランドセメントを別々に焼成する必要があったが、本発明では、焼成は1回でよく、低環境負荷型のポルトランドセメントクリンカおよびセメント組成物などとすることができるなどの効果を奏する。
Claims (3)
- セメント組成物 100 部中、 Al 2 O 3 含有量および Fe 2 O 3 含有量の合計が 5% 以下で間隙相量が 10% 以下であり、かつ、 Fe 2 O 3 量が 2 %以下である、γ -2CaO ・ SiO 2 を 10 〜 70% 含有してなるポルトランドセメントクリンカ 55 〜 85 部と、セッコウ類 1 〜 7 部と、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカより選ばれる1種または2種以上 10 〜 40 部とからなるブレーン比表面積が 2,500cm 2 /g 以上のセメント組成物。
- ポルトランドセメントクリンカがβ -2CaO ・ SiO 2 を含まない請求項1に記載のセメント組成物。
- コンクリートを材齢 28 日まで 20 ℃水中養生を施した後、 30 ℃・相対湿度 60 %・炭酸ガス濃度 5 %の環境で 12 週間促進中性化を行った後、モルタル断面にフェノールフタレイン 1 %アルコール溶液を噴霧して表面から着色部までの深さを測定した中性化深さが 3.5cm 以下、コンクリートの断熱温度上昇が 29.5 ℃以下、コンクリートの練り上がりのスランプ値から 90 分経過後のスランプ値を差し引いたスランプロス量が 1.5cm 以下である、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
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