JP4157485B2 - セメント組成物及び急硬グラウト材 - Google Patents
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Description
そして、これら用途に用いるグラウト材は短時間で強度発現することや材料分離が無いことなど、その要求はますます厳しいものとなっている。
水質汚濁防止法では、下水や河川等の公共用水域に排出される水の排水及び地下に浸透する水を規制する目的で、人体に悪影響をおよぼす有害物質について排水基準値が定められている。
しかしながら、この用途に用いるモルタル充填材の六価クロムの溶出に関して、抜本的な対策は施されていないのが実状である。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
CA化合物のCaO/Al2O3モル比は、0.75〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。0.75未満では充分な初期強度発現性が得られない場合があり、CaO/Al2O3モル比が3を超えると充分な流動性や可使時間が得られない場合がある。
CA化合物を得る方法としては、CaO原料とAl2O3原料等をロータリーキルンや電気炉等によって熱処理して得る方法が挙げられる。
CA化合物を製造する際のCaO原料としては、例えば、石灰石や貝殻等の炭酸カルシウム、消石灰等の水酸化カルシウム、及び生石灰等の酸化カルシウムを挙げられる。
また、Al2O3原料としては、例えば、ボーキサイトやアルミ残灰と呼ばれる産業副産物のほか、アルミ粉等が挙げられる。
CA化合物を工業的に得る場合、不純物が含まれることがあり、その具体例としては、例えば、Li2O、Na2O、K2O、MgO、TiO2、MnO、Fe2O3、SiO2、P2O5、S、及びFなどが挙げられる。これらの不純物の存在は本発明の目的を実質的に阻害しない範囲、例えば、不純物の合計が10%以下では特に問題とはならない。
また、CA化合物としては、4CaO・Al2O3・Fe2O3、6CaO・2Al2O3・Fe2O3、及び6CaO・Al2O3・2Fe2O3などのカルシウムアルミノフェライト、2CaO・Fe2O3やCaO・Fe2O3などのカルシウムフェライト、ゲーレナイト2CaO・Al2O3・SiO2やアノーサイトCaO・Al2O3・2SiO2などのカルシウムアルミノシリケート、メルビナイト3CaO・MgO・2SiO2、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiO2、及びモンチセライトCaO・MgO・SiO2などのカルシウムマグネシウムシリケート、トライカルシウムシリケート3CaO・SiO2、ダイカルシウムシリケート2CaO・SiO2、ランキナイト3CaO・2SiO2、及びワラストナイトCaO・SiO2などのカルシウムシリケート、カルシウムチタネートCaO・TiO2、遊離石灰、並びに、リューサイト(Na2O、K2O)・Al2O3・SiO2などを含む場合がある。本発明ではこれらの結晶質又は非晶質が混在することも可能である。
CA化合物の粒度は特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で、3,000〜9,000cm2/gが好ましく、4,000〜8,000cm2/gがより好ましい。3,000cm2/g未満では初期強度発現性が充分でない場合があり、9,000cm2/gを超えると流動性や可使時間の確保が困難になる場合がある。
セッコウ類の粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン値で3,000〜9,000cm2/gが好ましく、4,000〜8,000cm2/gがより好ましい。3,000cm2/g未満では寸法安定性が悪くなる場合があり、9,000cm2/gを超えると流動性の確保が困難になる場合がある。
セッコウ類の使用量は、CA化合物とセッコウ類からなる急硬成分100部中、30〜70部が好ましく、40〜60部がより好ましい。30部未満では可使時間の確保が困難になる場合があり、70部を超えると初期強度の発現性が充分でない場合や寸法安定性が悪くなる場合がある。
徐冷スラグ粉の成分は高炉水砕スラグと同様の組成を有しており、具体的には、CaO、Al2O3、SiO2、及びMgOなどを主要な化学成分とし、その他の成分として、Na2O、TiO2、MnO、Fe2O3、及びP2O5などが挙げられる。
また、化合物としては、ゲーレナイト2CaO・Al2O3・SiO2とアケルマナイト2CaO・MgO・2SiO2の混晶である、いわゆるメリライトを主成分とし、その他、ダイカルシウムシリケート2CaO・SiO2、ランキナイト3CaO・2SiO2、及びワラストナイトCaO・SiO2などのカルシウムシリケート、メルビナイト3CaO・MgO・2SiO2、及びモンチセライトCaO・MgO・SiO2などのカルシウムマグネシウムシリケート、アノーサイトCaO・Al2O3・2SiO2、リューサイト(Na2O、K2O)・Al2O3・SiO2、スピネルMgO・Al2O3、マグネタイトFe3O4、並びに、硫化カルシウムCaSや硫化鉄FeSなどの硫化物等を含む場合がある。これら硫化物は徐冷スラグを粉砕することにより粒子表面に露出し、水と接した際にチオ硫酸イオンや亜硫酸イオンとして溶出し、六価クロム還元性能を発揮する。
本発明では、徐冷スラグ粉のうち、例えば、硫化物、多硫化物、イオウ、チオ硫酸、及び亜硫酸等のように非硫酸態イオウとして存在するイオウ(以下、単に非硫酸態イオウという)を0.5%以上含むものを粉末化した徐冷スラグ粉を用いる。非硫酸態イオウが0.5%未満では、本発明の効果、即ち、六価クロムの還元性能が充分に得られない場合がある。非硫酸態イオウは、0.5%以上であり、0.7%以上が好ましく、0.9%以上がより好ましい。非硫酸態イオウ量は、全イオウ量、単体イオウ量、硫化物態イオウ量、チオ硫酸態イオウ量、及び硫酸態イオウ量(三酸化イオウ)を、山口と小野の方法により定量することによって、また、硫酸態イオウ量(三酸化イオウ)と硫化物態イオウ量については、JIS R 5202に定められた方法により定量することによって求められる(「高炉スラグ中硫黄の状態分析」、山口直治、小野昭紘、製鉄研究、第301号、pp.37-40、1980参照)。
本発明で使用する徐冷スラグ粉のガラス化率は30%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。ガラス化率が30%を超えると、本発明の効果、即ち、六価クロムの還元性能が充分に得られない場合がある。ガラス化率が高い場合、ほぼ同量の非硫酸態イオウを含有していても、結晶質である徐冷スラグに比しガラス化率の高いスラグ粉はチオ硫酸イオンなどの溶出が少なく、六価クロムの還元性能は小さい。本発明でいうガラス化率(X)は、X(%)=(1−S/S0)×100として求められる。ここで、Sは粉末X線回折法により求められる徐冷スラグ粉中の主要な結晶性化合物であるメリライト(ゲーレナイト2CaO・Al2O3・SiO2とアケルマナイト2CaO・MgO・2SiO2の混晶)のメインピークの面積であり、S0は徐冷スラグ粉を1,000℃で3時間加熱し、その後、5℃/分の冷却速度で冷却したもののメリライトのメインピークの面積を表す。
徐冷スラグ粉の粉末度は特に限定されるものではないが、ブレーン値で、4,000cm2/g以上が好ましく、5,000cm2/g以上がより好ましく、6,000cm2/g以上が最も好ましい。ブレーン値が4,000cm2/g未満では、本発明の効果、即ち、六価クロムの還元性能が充分に得られない場合がある。
徐冷スラグ粉の使用量は特に限定されるものではないが、通常、結合材100部中、5〜50部が好ましく、10〜30部がより好ましい。5部未満では本発明の効果が充分に得られない場合があり、50部を超えて使用すると強度発現性が悪くなる場合がある。
ここで、水硬性化合物としては、アウイン、カルシウムフェライト、カルシウムアルミノフェライト、カルシウムシリケート、及びカルシウムアルミネートなどが挙げられ、そのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
膨張材の粒度は、ブレーン値で4,000〜12,000cm2/gが好ましく、6,000〜10,000cm2/gがより好ましい。4,000cm2/g未満ではブリーディングの抑制効果が充分でなく、また、12,000cm2/gを超えると充分な収縮補償効果が得られないだけでなく、流動性の保持性が悪くなることがある。
膨張材の使用量は、結合材100部中、1〜5部が好ましく、1.5〜3部がより好ましい。1部未満では寸法安定性の付与効果とブリーディングの抑制効果が充分でなく、5部を超えると、流動性の低下が大きくなる場合や過剰な膨張を起こす場合がある。
凝結調整剤の使用量は特に限定されるものではないが、通常、結合材100部に対して、0.1〜2部が好ましく、0.3〜1部がより好ましい。0.1部未満では可使時間の確保が困難な場合があり、2部を超えると強度発現性が悪くなる場合がある。
なお、凝結調整剤は、通常、セメントとセメント混和材に配合されるが、セメント混和材中に含有させることも可能である。
細骨材の使用量は、結合材100部に対して、50〜250部が好ましい。50部未満では単位容積当りの結合材量が多くなり、経済的に不利になるばかりでなく、例えば、袋体に取付けたモルタル注入口の簡易型逆止弁の間隙を骨材により充分充填できず、セメントミルク成分が流出してしまい、正常な動作をしない場合があり、また逆に、250部を超えると材料分離抵抗性や流動性を確保することが難しい場合がある。
混合装置としては、既存のいかなる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
セメント :市販の普通ポルトランドセメント3銘柄の等量混合物、比重3.15
CA化合物:CaO/Al2O3モル比1.70、ブレーン値5,000cm2/g
セッコウ類:市販の無水セッコウ、ブレーン値4,000cm2/g
スラグA :徐冷スラグ粉、非硫酸態イオウ0.9%、ブレーン値6,000cm2/g、ガラス化率5%、比重3.00
スラグB :徐冷スラグ粉、スラグAを水に浸漬してエイジングし、非硫酸態イオウを0.7%にしたもの、ブレーン値6,000cm2/g、ガラス化率5%、比重3.00
スラグC :徐冷スラグ粉、スラグAを水に浸漬してエイジングし、非硫酸態イオウを0.5%にしたもの、ブレーン値6,000cm2/g、ガラス化率5%、比重3.00
スラグD :高炉水砕スラグ粉、非硫酸態イオウ0.6%、ブレーン値6,000cm2/g、ガラス化率97%、比重2.90
膨張材イ :遊離石灰−アウイン−無水セッコウ系膨張材、ブレーン値8,000cm2/g
石灰石微粉末:新潟県青海鉱山産石灰石の粉砕品、ブレーン値6,000cm2/g、比重2.71
凝結調整剤:試薬1級のクエン酸25部と試薬1級の炭酸カリウム75部の混合物
細骨材 :新潟県青海鉱山産石灰石粉砕品、最大粒径4.0mm、粗粒率2.62
水 :水道水
流動性:土木学会規準(JSCE-F 541)のJ14漏斗によるモルタルの流下時間の練上り直後値と30分後の値、流下時間が2.5〜7秒が好ましく、2.5〜5秒がより好ましい。7秒を超えると袋体に急硬グラウト材を充填するときの作業性が損なわれる場合がある。
可使時間:自記温度記録計使用、練上りからモルタルの温度が2℃上昇するまでの時間
圧縮強度:材齢2時間後の一軸圧縮強度を測定。
六価クロム溶出量:混練直後のまだ固まらない状態と、固化後の硬化体について、環境庁告示第46号に記載の方法に準拠して測定、ただし、混練直後のまだ固まらない状態の六価クロム溶出量は、モルタル50gを採取し、純水500ccを加えて振とうし、6時間後に固液分離して液相中の六価クロム濃度を測定
材料分離抵抗性:練上り後15分間静置し容器底部への骨材の沈降の程度を触感で判定。◎は材料分離なし、○は微小の材料分離が認められるが使用上問題がない、×は材料分離有り。
耐漏洩性 :地山変形防止工法に用いる袋体にモルタルを充填し、充填終了後、0.1MPa圧力を保ち、モルタル注入口に取付けられた簡易型逆止弁からの逆流の程度で判定、◎は漏洩なし、○は漏洩が微量あるが使用上問題がない、×は多量に漏洩
膨張材ロ :遊離石灰−アウイン−カルシウムアルミノフェライト−無水セッコウ系膨張材、ブレーン値8,000cm2/g
ブリーディング:土木学会基準JSCE-F 522(ポリエチレン法)に準じ測定
膨張量 :JIS A 6202 に準じ測定、ただし、養生は20℃封緘養生とした。マイナス(-)は収縮、プラス(+)は膨張を示す。
Claims (2)
- セメント、CaO/Al 2 O 3 モル比が0.75〜3であり、ブレーン比表面積値が3,000〜9,000cm 2 /gであるカルシウムアルミネート化合物、ブレーン比表面積値が3,000〜9,000cm 2 /gである無水セッコウ、非硫酸態イオウの含有量が0.5%以上であり、ガラス化率が30%以下であり、ブレーン比表面積値が4,000cm 2 /g以上である高炉徐冷スラグ粉末、及びブレーン比表面積値が4,000〜12,000cm 2 /gであり、遊離石灰−アウイン−無水セッコウ系及び/又は遊離石灰−アウイン−カルシウムアルミノフェライト−無水セッコウ系である膨張材からなる結合材において、カルシウムアルミネート化合物と無水セッコウからなる急硬成分が結合材100部中10〜50部、高炉徐冷スラグ粉末が結合材100部中5〜50部、膨張材が結合材100部中1〜5部である結合材と、結合材100部に対し凝結調整剤0.1〜2部を含有してなるセメント組成物。
- 請求項1に記載のセメント組成物と、結合材100部に対して50〜250部の細骨材、及び水/結合材比が60%以下である水からなる急硬グラウト材。
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