JP4563562B2 - セメント組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、初期養生時に大きな膨張量が得られ、長期間安定した膨張量が得られるセメント組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、膨張材の使用量をコンクリート1m3当たり35〜80Kgと多くして、ヒューム管、鋼管ライニング、矢板及びボックスカルバート等のコンクリート二次製品にケミカルプレストレスを導入する方法や、膨張材の使用量をコンクリート1m3当たり30Kg程度と少なくして、壁、屋根スラブ及び床材等の一般建築物や、水槽やプール等の水理構造物、舗装、床版及びボックスカルバート等の一般構造物の拘束膨張量を150〜250×10-6にして、乾燥収縮防止や硬化収縮の補償等をする方法が知られている。また最近では、一般構造物に拘束膨張量250×10-6を超える膨張量でケミカルプレストレスを積極的に導入する方法が試みられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法では、初期養生時に安定した大きな膨張量が得られず、蒸気養生終了後や所定の型枠設置期間後も長期に亘り膨張が継続し、鉄筋拘束が弱い部分や、鉄筋の降伏点以上の膨張量で膨張する部分で、ひび割れや強度低下を生じる場合があり、高強度と高膨張の両方の性能を安定的に得るには、セメントを低熱セメントを選択する必要があった。
【0004】
本発明者は、種々検討した結果、特定の膨張材を特定の配合で使用することによって、前記課題を解消できる知見を得て本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、CaO原料、Al原料、Fe原料及びCaSO4原料を熱処理して得られる物質であって、珪酸率0.5未満で、膨張材100部中、遊離石灰30〜60部、カルシウムアルミノフェライト10〜40部及び無水セッコウ10〜40部を含有する膨張材の単位量が15〜100kg/mであることを特徴とするセメント組成物であり、硬化体が初期材齢に拘束膨張試験方法で250×10−6を超える膨張量を有することを特徴とする該セメント組成物であり、セメント組成物に使用するセメントが低熱ポルトランドセメントである該セメント組成物であり、CaO原料、Al 原料、Fe 原料及びCaSO 4 原料を熱処理して得られる物質であって、珪酸率0.5未満で、膨張材100部中、遊離石灰30〜60部、カルシウムアルミノフェライト10〜40部及び無水セッコウ10〜40部を含有する膨張材の単位量が15〜100kg/m であるセメント組成物を使用することを特徴とする、初期材齢の膨張量が拘束膨張試験方法で250×10 −6 を超える硬化体の製造方法である
ここで、セメント組成物とは、セメント、モルタル、コンクリートを総称するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明の膨張材とは、CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料を熱処理して得られる物質であって、遊離石灰、カルシウムアルミノフェライト及び無水セッコウを含有してなるものであり、その割合については特に限定されるものではないが、膨張材100部中、遊離石灰は30〜60部が好ましく、40〜50部がより好ましい。カルシウムアルミノフェライトは10〜40部が好ましく、15〜35部がより好ましい。無水セッコウは10〜40部が好ましく、20〜35部がより好ましい。
なお、本発明で使用する配合割合を示す部は、質量単位を表す。
【0008】
本発明のカルシウムアルミノフェライトとは、CaO−Al23−Fe23系化合物を総称するものであり、特に限定されるものではないが、一般的に、CaOをC、Al23をA、Fe23をFとすると、C4AF、C62F及びC6AF2等の化合物がよく知られている。通常は、C4AFとして存在していると考えて良い。以下、カルシウムアルミノフェライトをC4AFと略記する。
【0009】
本発明の膨張材を製造する際、CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料を熱処理して、遊離石灰、C4AF及び無水セッコウからなるクリンカーを合成して製造することが好ましい。遊離石灰、C4AF及び無水セッコウを別々に合成し、混合してセメント混和材を製造しても本発明の効果は得られない。即ち、CaO原料、Al23原料、Fe23原料を熱処理して、遊離石灰とC4AFからなるクリンカーを合成し、これに無水セッコウを混合して製造した場合や、CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料を熱処理して、遊離石灰、C4AFからなるクリンカーを合成し、これに無水セッコウを混合して製造した場合等には本発明の効果は得られない。CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料を熱処理して、遊離石灰、C4AF及び無水セッコウからなるクリンカーを合成したかどうかは、例えば、粉砕物中の100μm以上の粗粒子を顕微鏡観察(SEM−EDS)等を行い、その粒子中に遊離石灰、C4AF及び無水セッコウが混在していることを確認することによって判別できる。
【0010】
原料の熱処理方法は、特に限定されるものではないが、電気炉やキルン等を用いて、1100〜1600℃の温度で焼成することが好ましく、1200〜1500℃がより好ましい。1100℃未満では、得られたセメント混和材の膨張性能が十分でなく、1600℃を超えると無水セッコウが分解する場合がある。
【0011】
CaO原料としては、石灰石や消石灰等が挙げられ、Al23原料としては、ボーキサイトやアルミ残灰等が挙げられ、Fe23原料としては、銅カラミや市販の酸化鉄が挙げられ、CaSO4原料としては、二水セッコウ、半水セッコウ及び無水セッコウ等が挙げられる。これら原料中には不純物が存在する。その具体例としては、SiO2、MgO、TiO2、P25、Na2O、K2O、フッ素、塩素等が挙げられ、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならない。
【0012】
これらのうちで、特にSiO2は珪酸率で0.5未満の範囲であることが好ましい。膨張材中の珪酸率が0.5を超えると優れた膨張性能が得られない場合がある。本発明でいう珪酸率とは、膨張材中のSiO2量、Al23量及びFe23量より次式から算出される。
珪酸率=SiO2/(Al23+Fe23
また、膨張材中のSiO2量は、5.0%以下が好ましく、3.0%以下がより好ましい。5.0%を超えると優れた膨張性能が得られない場合がある。
【0013】
膨張材の粒度は特に限定されるものではないが、通常、2000〜4000cm2/gが好ましい。2000cm2/g未満では未反応物が長期間残存し、耐久性を低下させる場合があり、4000cm2/gを超えると水和反応が早く、所定の膨張が得られない場合がある。
【0014】
膨張材の使用量は、単位量として15〜100kg/m3が好ましい。15kg/m3 未満では硬化体が初期材齢に250×10-6以上の膨張量が得られず、100kg/m3を超えると膨張量が大きすぎて強度低下する場合がある。
【0015】
本発明では、硬化体が初期材齢に拘束膨張試験方法で250×10-6を超える膨張量を有することが好ましい。初期材齢の膨張量が250×10-6未満では、硬化体が長期に亘って良好な安定性が得られない場合がある。ここで、硬化体とは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等の硬化体を総称するものである。また、拘束膨張試験方法とは、JIS A 6202コンクリート用膨張材付属書2膨張コンクリートの拘束膨張及び収縮試験方法である。
【0016】
本発明で使用するセメントには、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱のポルトランドセメントや、これらに高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカを混合した混合セメント、並び石灰石微粉末等を混合したフィラ−セメントが使用可能である。
【0017】
骨材は、川砂、陸砂、砕砂及び海砂等の細骨材や川砂利、砕石及び人工軽量骨材等の粗骨材が使用可能である。通常のコンクリートに使用できるものであれば特に限定されるものではない。
【0018】
減水剤は、コンクリートの流動性を改善したり、単位水量を低減させるために使用するもので、高耐久性、高強度発現性及び高流動性のコンクリートを得ることが可能となる。減水剤の種類としては、高性能AE減水剤、高性能減水剤及びAE減水剤等が使用可能である。具体的には、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物系、メラミンスルホン酸のホルマリン縮合物系、及びポリスチレンスルホン酸塩系、ヒドロキシポリアクリレート、αβ−不飽和ジカルボン酸とオレフィンの共重合体、ポリエチレングリコールモノアルケニルエーテルとマレイン酸系単量体、メタクリル酸単量体から導かれる共重合体、及びスチレン−アクリル酸エステル−マレイン酸系共重合体等のポリカルボン酸系、並びに変性リグニンスルホン酸化合物系等が挙げられ、一部架橋反応で高分子化したものを含み、これらのうちの一種又は二種以上の使用が可能である。これらのうち、ポリカルボン酸系減水剤、特に、分子中のオキシエチレン単位が10〜60モル存在するポリカルボン酸系減水剤が、低水セメント比でのフレシュコンクリートの作業性が良好であり好ましい。
【0019】
減水剤の使用量は、セメントと膨張材の合計 100部に対して、固形分換算で0.01〜4部が好ましく、0.05〜2部がより好ましい。0.01部未満では所定の流動性が得にくく、4部を超えると分離や強度不足を生じる場合がある。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0021】
実施例1
セメントαと膨張材の合計単位量を550kg/m3 とし、表1に示す量のセメントと膨張材、及びセメントと膨張材の合計100部に対して、148部の細骨材と159部の粗骨材をミキサに投入し、10秒間空練りし、その後、水29部と表1に示す量の減水剤を投入し、90秒間練り混ぜ、コンクリートを調製した。コンクリートのスランプは12±2cm、空気量は2.0±0.5%、温度は20℃であった。
調製したコンクリートを成形し、前置き5時間、昇温速度15℃/H、60℃で蒸気養生を行い、8時間後徐冷、材齢1日後に脱型し、20℃の水中養生を行った。その硬化体の膨張量を測定した。結果を表1に併記する。表中の安定性の良とは、蒸気養生直後(初期材齢)の膨張量を基準とした6ヶ月後(長期材齢)の膨張量の比が1.3未満のことを言い、不良とは1.3を超えることを言う。
1.3以上では、長期に亘り膨張が継続し、硬化体にひび割れや強度低下が生じる場合がある。
【0022】
<使用材料>
セメントα:普通ポルトランドセメント、市販品
膨張材A:カルシウムサルホアルミネート系膨張材、市販品
膨張材B:カルシウムアルミノフェライト系膨張材 (本発明)、CaO原料(試薬1級炭酸カルシウム)、Al23原料(試薬1級酸化アルミニウム)、Fe23原料(試薬1級酸化第二鉄)及びCaSO4原料(試薬1級二水セッコウ)を配合し、混合粉砕した後、1350℃で熱処理して、遊離石灰部50部、C4AF25部、無水セッコウ25部からなるクリンカーを合成し、ボールミルを用いて、ブレーン比表面積3500±300cm2/gに粉砕して膨張材を調製した。膨張材を粉末X線回折法(以下、XRD)で同定し、構成化合物を調べた。
膨張材の化合物組成は、化学組成とXRDの同定結果を基に計算により算出した。化学組成はJIS R 5202に準じて求めた。
減水剤A:ポリアルキレン基と酸無水物基を有するポリカルボン酸系減水剤、市販品
細骨材:陸砂、5mm下、比重2.70
粗骨材:砕石、Gmax20mm、比重2.60
【0023】
<測定方法>
スランプ:JIS A 1101に準じ測定
空気量:JIS A 1128に準じて測定
膨張量:JIS A 6202 B法に準じ測定、直後は蒸気養生直後、6ヶ月後は、蒸気養生後に水中養生を行い6ヶ月後に測定
【0024】
【表1】
Figure 0004563562
【0025】
表1より、本発明の膨張材を単位量15〜100kg/m3配合したセメント組成物を使用した硬化体は、初期材齢に250×10-6を超える膨張量が得られ、しかも膨張量が長期に亘って安定していることが判る。
【0026】
実施例2
セメントと膨張材の単位量を各々485kg/m3と65kg/m3とし、表2に示すセメントの種類と、減水剤の種類と量を変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0027】
<使用材料>
セメントβ:早強ポルトランドセメント、市販品
セメントγ:高炉B種ポルトランドセメント、市販品
セメントδ:低熱ポルトランドセメント、市販品
減水剤B:ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤、市販品
【0028】
【表2】
Figure 0004563562
【0029】
表2より、本発明のセメント組成物を使用した硬化体は、セメントの種類に依らず、初期材齢に大きな膨張量が得られ、しかも膨張量が長期に亘って安定していることが判る。
【0030】
【発明の効果】
本発明のセメント組成物を使用した硬化体は、セメントの種類に依らず初期材齢に大きな膨張量が得られ、膨張量が長期に亘り安定し、膨張による強度低下やひび割れが無く、高ケミカルプレストレスと高強度を安定的に維持することが可能となる。

Claims (4)

  1. CaO原料、Al原料、Fe原料及びCaSO4原料を熱処理して得られる物質であって、珪酸率0.5未満で、膨張材100部中、遊離石灰30〜60部、カルシウムアルミノフェライト10〜40部及び無水セッコウ10〜40部を含有する膨張材の単位量が15〜100kg/mであることを特徴とするセメント組成物。
  2. 硬化体が初期材齢に拘束膨張試験方法で250×10−6を超える膨張量を有することを特徴とする請求項1に記載のセメント組成物。
  3. セメント組成物に使用するセメントが低熱ポルトランドセメントである請求項1又は2に記載のセメント組成物。
  4. CaO原料、Al 原料、Fe 原料及びCaSO 4 原料を熱処理して得られる物質であって、珪酸率0.5未満で、膨張材100部中、遊離石灰30〜60部、カルシウムアルミノフェライト10〜40部及び無水セッコウ10〜40部を含有する膨張材の単位量が15〜100kg/m であるセメント組成物を使用することを特徴とする、初期材齢の膨張量が拘束膨張試験方法で250×10 −6 を超える硬化体の製造方法。
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