JP2003069236A - セラミック回路基板およびその製法 - Google Patents

セラミック回路基板およびその製法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】異なる焼成収縮開始温度を有する複数の絶縁層
を同時焼成しても基板の主面(xーy)方向における収
縮率を容易にかつ安価に小さくして、回路基板の寸法精
度を改善できる回路基板およびその製法を提供する。 【解決手段】SiO2:10〜40質量%、MgO:3
5〜60質量%、B23:10〜30質量%と、Ca
O、Al23、SrO、ZnO、TiO2、Na2O、B
aO、SnO2、P23、ZrO2およびLi2Oの群か
ら選ばれる少なくとも1種を0〜30質量%を含有する
低温側から焼成収縮する絶縁層A1a、1gと、絶縁層
A1a、1gと同成分からなり絶縁層A1a、1gより
も高温側から焼成収縮する絶縁層B1b〜1fとを積層
して一体焼成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミック回路基
板およびその製法に関し、特に、異なる焼成収縮開始温
度を有する複数の絶縁層を同時焼成して寸法精度を改善
したセラミック回路基板およびその製法に関する。
【0002】
【従来技術】従来、強度の弱い絶縁層を強度の強い絶縁
層で補強するためや回路基板の中に容量値の高いキャパ
シタを内蔵するために、絶縁層と、この絶縁層とは異な
る材料からなる異種材料絶縁層を積層したセラミック回
路基板が知られている(例えば、特開昭59ー1944
93号公報参照)。このような回路基板では、磁器のク
ラックやデラミネーションを防止するために、絶縁層と
異種材料絶縁層とは、焼成収縮率および熱膨張係数を一
致させるように材料を決定していた。
【0003】しかしながら、このようなセラミック回路
基板においては、クラックやデラミネーションを防止で
きるものの、焼成収縮率が大きいため、セラミック回路
基板内に形成された導体層の主面(x−y)方向におけ
る寸法精度が低下するという問題があった。特に、近年
においては、セラミック回路基板の小型薄型化のため、
ますます導体層の主面(x−y)方向における寸法精度
が要求されている。
【0004】そこで、近年においては、セラミック回路
基板の積層成形体をAl23基板等で挟持して焼成する
加圧焼成法(特開昭62−260777号公報)、セラ
ミック回路基板の積層成形体の表面に、この積層成形体
の焼成温度では焼結しないグリーンシートを積層し、焼
成後にそれを削り取る拘束焼成法(特開平4−2439
78号公報)によって焼成時の収縮を抑制し、寸法精度
を高めることが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た加圧焼成法では、Al23基板等により加圧する必要
があり、そのための設備やAl23基板等が必要であっ
た。また、拘束焼成法では、未焼結グリーンシートを除
去する工程が必要であり、しかも、除去したグリーンシ
ートは廃棄しなければならず、原料が無駄であった。
【0006】従って、本発明は、異なる焼成収縮開始温
度を有する複数の絶縁層を同時焼成しても基板の主面
(x−y)方向における収縮率を容易にかつ安価に小さ
くして、回路基板の寸法精度を改善できる回路基板およ
びその製法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のセラミック回路
基板は、少なくとも結晶化ガラスを含み焼成収縮開始温
度の異なる少なくとも2種の絶縁層A、Bを積層してな
る基板の表面および/または内部に導体層を形成してな
るセラミック回路基板であって、前記絶縁層のうち、低
温側で焼成収縮する絶縁層Aに含まれる前記結晶化ガラ
スが、SiO2:10〜40質量%、MgO:35〜6
0質量%、B23:10〜30質量%と、CaO、Al
23、SrO、ZnO、TiO2、Na2O、BaO、S
nO2、P23、ZrO2およびLi2Oの群から選ばれ
る少なくとも1種を0〜30質量%を含有するととも
に、高温側で焼成収縮する絶縁層Bに含まれる前記結晶
化ガラスが、SiO2:20〜50質量%、MgO:3
〜25質量%と、B23、CaO、Al23、SrO、
ZnO、TiO2、Na2O、BaO、SnO2、P
23、ZrO2およびLi2Oの群から選ばれる少なくと
も1種を0〜55質量%を含有することを特徴とする。
【0008】このような構成によれば、絶縁層として低
温側で焼成収縮して形成される絶縁層Aと絶縁層Aより
も高温側で焼成収縮して形成される絶縁層Bとを積層し
て用いることにより、これら複数の絶縁層を一体焼成し
た場合に、絶縁層Aが収縮を開始する際には、他の絶縁
層により主面(x−y)方向における収縮が妨げられ、
絶縁層Aが収縮を完了すると、この絶縁層Aにより絶縁
層Bの主面(x−y)方向における収縮が妨げられ、結
果的に、焼成中における主面(x−y)方向の焼成収縮
を抑制できる。このことにより、絶縁層A、Bの焼成収
縮挙動が異なる場合であっても、層間の接着性が高まり
クラックやデラミネーションを防止できる。
【0009】そして、同時焼成する際に、Al23基板
等により加圧する加圧焼成法に比較して、そのための設
備やAl23基板等の必要がなく、また、拘束焼成法に
比較して、焼成後にこの未焼結グリーンシートを除去す
る必要が無く、そのための原料を無駄にすることもない
ことから製造コストを低減できる。
【0010】上記セラミック回路基板では、絶縁層Aに
含まれるセラミックフィラーが、10〜60質量%であ
りかつ絶縁層Bに含まれるセラミックフィラーが、20
〜70質量%であることが望ましい。絶縁層Aおよび絶
縁層B間において結晶化ガラスに加えて絶縁層に含まれ
るセラミックフィラー量に差を持たせることにより、両
絶縁層の焼成収縮開始温度差をさらに顕著にすることが
できる。
【0011】上記セラミック回路基板では、絶縁層Aお
よび絶縁層Bとが積層された基板の主面方向の焼成収縮
率が5%以下であることが望ましい。このように基板全
体の焼成収縮率を5%以下とすることによりセラミック
回路基板の反り変形等を抑制し、寸法精度を高め歩留ま
りを向上できる。
【0012】上記セラミック回路基板では、絶縁層Aと
絶縁層Bとの間の焼成後の熱膨張係数差が2×10-6
℃以下であることが望ましい。両絶縁層の熱膨張係数差
が小さいほど焼成中および焼成後の反りが抑制されるこ
とからさらに寸法精度を高めることができる。
【0013】また、本発明のセラミック回路基板の製法
は、SiO2:10〜40質量%、MgO:35〜60
質量%、B23:10〜30質量%と、CaO、Al2
3、SrO、ZnO、TiO2、Na2O、BaO、S
nO2、P23、ZrO2およびLi2Oの群から選ばれ
る少なくとも1種を0〜30質量%を含有する結晶化ガ
ラス粉末を含み低温側から焼成収縮を開始する絶縁層A
成形体を形成するとともに、SiO2:20〜50質量
%、MgO:3〜25質量%と、B23、CaO、Al
23、SrO、ZnO、TiO2、Na2O、BaO、S
nO2、P23、ZrO2およびLi2Oの群から選ばれ
る少なくとも1種を0〜55質量%とされている結晶化
ガラス粉末を含み前記絶縁層A成形体よりも高温側から
焼成収縮を開始する絶縁層B成形体を形成する工程と、
前記絶縁層A成形体および前記絶縁層B成形体の表面お
よび/または内部に所定の導体層パターンを形成する工
程と、該導体層パターンが形成された前記絶縁層A成形
体および前記絶縁層B成形体とを複数積層して積層成形
体を形成する工程と、該積層成形体を焼成して、前記積
層成形体の主面方向の焼成収縮率を5%以下とする工程
とを具備する製法である。
【0014】このような構成によれば、上記の組成のよ
うに絶縁層成形体中に複数種の結晶化ガラス粉末を含有
させることにより、焼成収縮開始温度、焼成収縮する温
度範囲および最終焼成収縮率等の焼成収縮挙動の異なる
2種以上の絶縁層成形体を容易に形成でき、絶縁層成形
体として低温側で焼成収縮する絶縁層A成形体と高温側
とで焼成収縮する絶縁層B成形体とを積層して用いるこ
とにより、両絶縁層の主面(x−y)方向の焼成収縮を
抑制できる。
【0015】また、積層成形体の主面方向の焼成収縮率
を5%以下とすることにより、低温側絶縁層成形体およ
び高温側絶縁層成形体の相互の拘束力を効果的に発揮さ
せることができ焼成されたセラミック回路基板の反りを
抑え、寸法精度を向上できる。
【0016】上記セラミック回路基板の製法では、絶縁
層A成形体と絶縁層B成形体との間の焼成収縮開始温度
差が10℃以上であることが望ましい。この製法は、焼
成収縮する側の絶縁層を焼成収縮しない方の絶縁層が拘
束することにより焼成収縮率を低減することができるも
のであることから、互いの絶縁層が共に焼成収縮する温
度領域が狭いほど収縮の拘束の効果を大きくでき、特
に、焼成収縮開始温度差が10℃以上であれば両絶縁層
成形体の焼成収縮挙動を相互に容易に制御できる。
【0017】上記セラミック回路基板の製法では、絶縁
層B成形体の焼成収縮率が0.1%のとき、絶縁層A成
形体は、該絶縁層A成形体が有する最終収縮率の90%
以上に達していることが望ましい。このように焼成中の
両絶縁層成形体間の焼成収縮率差が大きいほど拘束力が
大きくなり、回路基板の最終的な焼成収縮率を容易によ
り小さくでき、寸法精度を高めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】図1は、本発明によるセラミック
回路基板の一例の概略断面図を示すもので、図1におい
て、セラミック回路基板10は、絶縁層1a〜1gが積
層された基板1と、この基板1の表裏面および/または
内部に形成された導体層3、導体層3間を接続するため
のビアホール導体4を有する。
【0019】基板1は、収縮開始温度が異なる絶縁層1
a〜1gによって形成され、この図1のセラミック回路
基板10では、絶縁層1a〜1gのうち、絶縁層A1
a、1gが、他の絶縁層B1b〜1fと焼成収縮開始温
度が異なるセラミック材料から形成されている。例え
ば、絶縁層A1a、1gの焼成収縮開始温度は絶縁層B
1b〜1fよりも低いものである。
【0020】この2種の絶縁層1a〜1gを形成するセ
ラミックスの焼成収縮挙動の概要について、図2の焼成
収縮曲線に基づき説明する。図2は焼成収縮挙動の異な
るセラミックスの加熱時の収縮曲線であり、横軸は温
度、縦軸は収縮率を示す。この収縮曲線によれば、焼成
収縮開始温度が異なる2つのセラミックスA、Bは、そ
れぞれ焼成収縮開始温度SA、SB(SA<SB)、焼成収
縮終了温度EA、EB(E A<EB)を有する。図1のセラ
ミック回路基板10に当てはめると、絶縁層A1a、1
gはセラミックスA、絶縁層B1b〜1fはセラミック
スBと当てはめられる。
【0021】本発明によれば、絶縁層A1a、1gおよ
び絶縁層B1b〜1fを積層して構成される基板1の主
面方向の焼成収縮率は5%以下であることが、セラミッ
ク回路基板10の反り変形等を抑制し、寸法精度を高め
歩留まりを向上できるという理由から望ましく、特に、
3%以下がより望ましい。
【0022】また、絶縁層A1a、1gと絶縁層B1b
〜1fとの間の熱膨張係数差は2×10-6/℃以下であ
ることが、両絶縁層A、B1a〜1gの熱膨張係数差が
小さいほど焼成中および焼成後の反りが抑制されるとい
う理由から望ましく、特に熱膨張係数の差は1×10-6
/℃以下が望ましい。
【0023】ここで、本発明のセラミック回路基板10
を構成する絶縁層1a〜1gのうち、絶縁層A1a、1
gに含まれる結晶化ガラスは、SiO2:10〜40質
量%、MgO:35〜60質量%、B23:10〜30
質量%と、CaO、Al23、SrO、ZnO、TiO
2、Na2O、BaO、SnO2、P23、ZrO2および
Li2Oの群から選ばれる少なくとも1種を0〜30質
量%を含有することが重要であり、特に、SiO2、M
gOおよびB23以外の成分は、CaO:0〜10質量
%、Ai23:0〜20質量%、SrO:0〜5質量
%、ZnO:0〜30質量%、TiO2:0〜10質量
%、Na2O:0〜3質量%、BaO:0〜30質量
%、SnO2:0〜4質量%、P25:0〜3質量%、
ZrO2:0〜1質量%、Li2O:0〜5質量%の範囲
の組成とされている。
【0024】一方、絶縁層B1b〜1fに含まれる結晶
化ガラスは、SiO2:20〜50質量%、MgO:3
〜25質量%と、B23、CaO、Al23、SrO、
ZnO、TiO2、Na2O、BaO、SnO2、P
23、ZrO2およびLi2Oの群から選ばれる少なくと
も1種を0〜55質量%を含有することが重要であり、
特に、SiO2およびMgO以外の成分は、B23:0
〜20質量%、CaO:0〜10質量%、Ai23:0
〜20質量%、SrO:0〜5質量%、ZnO:0〜3
0質量%、TiO2:0〜10質量%、Na2O:0〜3
質量%、BaO:0〜30質量%、SnO2:0〜4質
量%、P25:0〜3質量%、ZrO2:0〜1質量
%、Li2O:0〜5質量%の範囲の組成とされてい
る。
【0025】絶縁層A1a、1gおよび絶縁層B1b〜
1fに含まれるガラス組成を上記のような組成としたの
は、これらの絶縁層1a〜1gの収縮開始温度差を設け
かつ焼成温度範囲を異なるものとしつつも最終的な焼成
収縮率を同じ値とするためである。
【0026】ここで、絶縁層A1a、1gおよび絶縁層
B1b〜1fに含まれるガラス組成の中で、MgOとB
23の量を増すことにより、結晶化ガラスの軟化点が低
下し、絶縁層Aの焼成開始温度の低温下を図ることがで
き、一方、SiO2の量を増すことにより、結晶化ガラ
スの軟化点を高め、これにより焼成開始温度の高温化を
図ることができる。
【0027】そして、MgOとB23の量は、絶縁層B
1b〜1f中よりも絶縁層A1a、1gの方が多く、一
方、SiO2の量は、絶縁層A1a、1gよりも絶縁層
B1b〜1fの方が多いことが望ましい。
【0028】また、上記の結晶化ガラスとセラミックフ
ィラーによる組み合わせによれば、絶縁層A1a、1g
および絶縁層B1b〜1f同士の拘束力が高まり、両絶
縁層A、B1a〜1gが積層された主面方向の焼成収縮
率を5%以下とすることができ、また、絶縁層間の接着
性が強くなり、反り、剥がれ、デラミネーションを防止
できる。そして、基板の寸法精度を高めることができ
る。
【0029】一方、上記以外の組成のガラスの組み合わ
せでは、絶縁層A1a、1gおよび絶縁層B1b〜1f
同士の拘束力が弱く、両絶縁層A、B1a〜1gが接地
された主面方向の焼成収縮率を5%以下とすることが困
難であり、絶縁層1a〜1g間の接着性が弱くなり、反
り、剥がれ、デラミネーションが発生しやすくなる。
【0030】また、絶縁層1a〜1gには、上記ガラス
以外に、セラミックフィラーを含有してもよい、用いら
れるセラミックフィラーとしては、Al23、Si
2、MgTiO3、CaZrO3、CaTiO3、Mg2
SiO4、BaTi49、ZrTiO4、SrTiO3
BaTiO3、TiO2、ZrO2、La2Ti27、Nd
2Ti27から選ばれる1種以上が挙げられる。特に、
セラミックフィラーとしては、高強度化と理由からAl
23が好適に用いられ、上記以外のセラミック粉末を混
合して焼成を行うと、ガラスと反応してガラスの熱特性
が変化し、その結果焼成収縮挙動が変わり、焼成時の主
面(x−y)方向の拘束力が弱くなるからである。
【0031】そして、絶縁層A1a、1gに含まれるセ
ラミックフィラー量は、10〜60質量%、特には、2
0〜40質量%、一方、絶縁層B1b〜1fに含まれる
セラミックフィラー量は、20〜70質量%、特には、
30〜50質量%であることが望ましい。
【0032】このように絶縁層A1a、1gに含まれる
結晶化ガラス量を30〜90質量%、そして、セラミッ
クフィラー量を10〜60質量%としたのはこの範囲外
では、絶縁層A1a、1gの焼結性が劣化するためであ
る。とりわけ焼結性をさらに向上させるという観点から
結晶化ガラス成分は60質量%以上、一方、セラミック
フィラーは40質量%以下が望ましい。
【0033】本発明のセラミック回路基板の製法につい
て具体的に説明する。
【0034】先ず、本発明の絶縁層A成形体中に含まれ
る結晶化ガラス粉末の組成は、SiO2:10〜40質
量%、MgO:35〜60質量%、B23:10〜30
質量%と、CaO、Al23、SrO、ZnO、TiO
2、Na2O、BaO、SnO 2、P23、ZrO2および
Li2Oの群から選ばれる少なくとも1種を0〜30質
量%とすることが重要であり、特に、特に、SiO2
MgOおよびB23以外の成分は、CaO:0〜10質
量%、Ai23:0〜20質量%、SrO:0〜5質量
%、ZnO:0〜30質量%、TiO2:0〜10質量
%、Na2O:0〜3質量%、BaO:0〜30質量
%、SnO2:0〜4質量%、P25:0〜3質量%、
ZrO2:0〜1質量%、Li2O:0〜5質量%の範囲
の組成とされている。
【0035】一方、絶縁層B成形体中に含まれる結晶化
ガラス粉末の組成は、SiO2:20〜50質量%、M
gO:3〜25質量%と、B23、CaO、Al23
SrO、ZnO、TiO2、Na2O、BaO、Sn
2、P23、ZrO2およびLi 2Oの群から選ばれる
少なくとも1種を0〜55質量%とすることが重要であ
り、特に、SiO2およびMgO以外の成分は、B
23:0〜20質量%、CaO:0〜10質量%、Ai
23:0〜20質量%、SrO:0〜5質量%、Zn
O:0〜30質量%、TiO2:0〜10質量%、Na2
O:0〜3質量%、BaO:0〜30質量%、Sn
2:0〜4質量%、P25:0〜3質量%、ZrO2
0〜1質量%、Li2O:0〜5質量%の範囲の組成と
されている。
【0036】そして、これらの結晶化ガラス粉末とセラ
ミックフィラーとを混合して焼成収縮挙動の異なる2種
のセラミック材料を調製し、これら2種のセラミック材
料と有機バインダと有機溶剤および必要に応じて可塑剤
とを混合しセラミックスラリを調製する。このセラミッ
クスラリを用いてドクターブレード法などによりテープ
成形を行い、所定寸法に切断し絶縁層A成形体および絶
縁層B成形体となるセラミックグリーンシートを作製す
る。
【0037】次に、このセラミックグリーンシートにパ
ンチングなどによって貫通孔を形成し、その貫通孔内に
導体ペーストを充填したり、表面導体層や内部導体層を
導体ペーストを用いてスクリーン印刷法などによって被
着形成する。
【0038】このようにして得られた各セラミックグリ
ーンシートを所定の積層順序に応じて積層して積層成形
体を形成した後、焼成する。
【0039】焼成にあたっては、昇温して、セラミック
スA(絶縁層A)の収縮開始温度S Aに達した後、除々
に昇温するか、または収縮開始温度SA、あるいは収縮
開始温度SA以上、セラミックスB(絶縁層B)の収縮
開始温度SBよりも低い温度で、一時的に炉内温度を保
持してセラミックスA(絶縁層A)が最終収縮率の90
%以上焼成が進行するまで保持する。この時、セラミッ
クスA(絶縁層A)は、その温度で焼成収縮しないセラ
ミックスB(絶縁層B)によって主面(x−y)方向へ
の収縮が抑制され、Z方向に焼成収縮する。
【0040】その後、セラミックスA(絶縁層A)が最
終収縮率の90%以上収縮した後、セラミックスB(絶
縁層B)の収縮開始温度SBに昇温して焼成する。この
焼成によって、セラミックスB(絶縁層B)は、焼結が
ほぼ完了したセラミックスA(絶縁層A)によって主面
(x−y)方向への焼成収縮が抑制され、Z方向に焼成
収縮する。その結果、セラミックスA(絶縁層A)およ
びセラミックスB(絶縁層B)ともに主面(x−y)方
向への焼成収縮が抑制され、Z方向に焼成収縮した寸法
精度の高い基板を作製することができる。
【0041】ここで、絶縁層B成形体の焼成収縮率が
0.1%のとき、絶縁層A成形体は、この絶縁層A成形
体が有する最終収縮率の90%以上に収縮が進行してい
ることとしたのは、全体の体積収縮率が90%未満の場
合には主面(x−y)方向の収縮が大きくなり、配線導
体の寸法精度が悪くなるからである。ここで、焼成収縮
が高温側の絶縁層が0.1%体積収縮するということ
は、Z方向のみの収縮であってもよい。とりわけ、焼成
収縮率の低減の観点から全体の体積収縮率は95%以上
が望ましい。
【0042】また、絶縁層1a〜1gの収縮開始温度差
は10℃以上、特に20℃以上であることが望ましい。
これは、互いのセラミックスが共に焼成収縮する温度領
域が減少するほど収縮の拘束の効果が大きくなるためで
ある。なお、ここでは収縮開始温度とは、絶縁層1a〜
1gが0.1%焼成収縮した時点の温度とし、焼成収縮
終了温度とは、焼成収縮が最終焼成体積収縮率の99%
進行した時点の温度を意味する。
【0043】尚、本発明のセラミック回路基板10の製
法では、焼成収縮挙動もしくは焼成収縮開始温度、焼成
収縮終了温度の異なる材料から形成される絶縁層1a〜
1gが複数積層されており、それらの誘電率は等しくて
も良いが、目的によっては異なっていても良く、焼成挙
動が異なる2種のセラミックスは、例えば、焼成収縮挙
動の相違のみならず、目的に応じて比誘電率が異なる、
強度が異なる、誘電損失が異なるなどの他の特性が異な
っていても良い。
【0044】また、焼成収縮挙動が異なる2種のセラミ
ックスA−Bの積層形態としては、図1では、ABBB
BBA、AABABAA、AABBAAA、ABAAA
AAでもよく、また、AとBとを反対に入れ換えても良
い。
【0045】
【実施例】表1および表2に示すような、焼成収縮開始
温度が異なる絶縁層A、絶縁層Bを形成するセラミック
スAとセラミックスBを形成する材料それぞれに、有機
バインダとしてエチルセルロースと、有機溶剤として2
・2・4トリメチル3・3ペンタジオールモノイソブチ
レートを添加してなるスラリを調製し、これをドクター
ブレード法により薄層化し、基板用のセラミックグリー
ンシートを作製した。
【0046】次に、絶縁層BとなるセラミックスBを含
むセラミックグリーンシートの所定の位置にパンチング
等により貫通孔を形成し、この貫通孔にAgを含む導電
性ペーストを充填し、また、この導電性ペーストを用い
て、スクリーン印刷により所定の導体層パターンを形成
した。
【0047】一方、最上層、最下層の絶縁層Aとなるセ
ラミックスAを含むセラミックグリーンシートに、表層
導体となるAgからなる導電性ペーストを用いて所定形
状の導体層パターンを印刷形成した。
【0048】導電性ペーストが充填され、所定形状の導
体層パターンが形成された絶縁層Bとなるセラミックス
Bを含むセラミックグリーンシートを複数積層するとと
もに、最上層および最下層に、表層導体となる導体膜形
成した絶縁層Aとなるグリーンシートを積層し、積層成
形体を作製した。
【0049】この後、大気中400℃で脱バインダ処理
し、さらに910℃で焼成し、図1に示すようなセラミ
ック回路基板10を作製した。尚、絶縁層1a〜1gの
厚みは0.15mmであり、セラミック回路基板10の
大きさは、縦10mm、横10mm、厚み1.2mmで
あった。
【0050】尚、積層成形体と焼成後のセラミック回路
基板10に対して、所定のポイント間の長さを測定する
ことにより、主面(x−y)方向のセラミック回路基板
10の収縮率を測定した。尚、各試料について10個の
試料を作製し、それぞれの収縮率を測定し、10個の試
料の収縮率の最大収縮率と最小収縮率の差を収縮ばらつ
きとして評価した。また、基板を研磨して金属顕微鏡を
用いて断面を研磨することにより、基板におけるクラッ
ク、デラミネーションの有無を評価した。
【0051】また、セラミックスAとセラミックスBを
形成する材料に、ワックスを添加し、圧力1t/cm2
でプレスすることにより圧粉体を形成し、この圧粉体に
対して空気中で熱機械分析(TMA)による室温〜10
00℃の温度範囲により各セラミックスの焼成収縮開始
温度SA、SB、焼成収縮終了温度EA、EB熱膨張係数を
評価した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】この表3から、表1、2に示した本発明の
結晶化ガラス組成を含有する絶縁層により構成した試料
A、B、F〜Oでは主面(x−y)方向の収縮率が5%
以下であり、クラックやデラミネーションが無かった。
また、絶縁層Aの焼成収縮終了温度EAと絶縁層Bの焼
成収縮開始温度SBとの差が20℃以下とした試料A、
G、HおよびIではxーy収縮率を3%以下に抑えるこ
とができた。そして、特に、絶縁層Aの収縮終了温度E
Aと絶縁層Bの収縮開始温度SBとの差を0℃とした試料
Aでは、(x−y)収縮率が0%となり無収縮基板を作
製できた。また、絶縁層Aおよび絶縁層Bの熱膨張差を
1.6×10 6/℃以下とした試料では焼成におけるク
ラックやデラミネーションが無かった。
【0056】
【発明の効果】本発明のセラミック回路基板では、絶縁
層として絶縁層Aと絶縁層Bとを積層して、これら複数
の絶縁層を一体焼成することにより、基板の収縮率を低
減できる。また、前記絶縁層と異種材料絶縁層の間の熱
膨張係数差を小さくすることにより、クラックやデラミ
ネーションの生じない基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック回路基板の概略断面図を示
す。
【図2】本発明における焼成収縮挙動が異なるセラミッ
クスAとセラミックスBの焼成収縮曲線を示す。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・・・・・・・・・基板 1a、1g・・・・・・・・・・・・・絶縁層A 1b、1c、1d、1e、1f・・・・絶縁層B 3・・・・・・・・・・・・・・・・・導体層 10・・・・・・・・・・・・・・・・セラミック回路
基板
フロントページの続き Fターム(参考) 4G062 AA08 AA11 BB01 DA04 DA05 DB01 DB02 DB03 DB04 DB05 DB06 DC01 DC02 DC03 DC04 DC05 DC06 DD01 DD02 DD03 DD04 DD05 DD06 DE01 DE02 DE03 DE04 DE05 DE06 DF01 EA01 EA02 EA03 EA04 EA05 EA06 EB01 EB02 EB03 EB04 EB05 EB06 EC01 ED03 ED04 ED05 ED06 EE01 EE02 EE03 EE04 EE05 EE06 EF01 EF02 EF03 EF04 EF05 EF06 EG01 EG02 EG03 EG04 EG05 EG06 FA01 FA10 FB01 FB02 FB03 FB04 FB05 FB06 FC01 FC02 FC03 FC04 FC05 FC06 FD01 FE01 FE02 FE03 FE04 FE05 FE06 FF01 FG01 FH01 FJ01 FK01 FL01 GA01 GA10 GB01 GC01 GD01 GE01 HH01 HH03 HH05 HH07 HH09 HH11 HH13 HH15 HH17 HH20 JJ01 JJ03 JJ05 JJ07 JJ10 KK01 KK03 KK05 KK07 KK10 MM07 MM27 MM28 NN29 PP02 PP03 PP09 5E346 AA12 AA15 AA24 AA38 BB01 CC18 DD02 DD34 EE24 EE29 FF18 GG03 GG04 GG08 GG09 HH11

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも結晶化ガラスを含み焼成収縮開
    始温度の異なる少なくとも2種の絶縁層A、Bを積層し
    てなる基板の表面および/または内部に導体層を形成し
    てなるセラミック回路基板であって、 前記絶縁層のうち、低温側で焼成収縮する絶縁層Aに含
    まれる前記結晶化ガラスが、SiO2:10〜40質量
    %、MgO:35〜60質量%、B23:10〜30質
    量%と、CaO、Al23、SrO、ZnO、Ti
    2、Na2O、BaO、SnO2、P23、ZrO2およ
    びLi2Oの群から選ばれる少なくとも1種を0〜30
    質量%を含有するとともに、 高温側で焼成収縮する絶縁層Bに含まれる前記結晶化ガ
    ラスが、SiO2:20〜50質量%、MgO:3〜2
    5質量%と、B23、CaO、Al23、SrO、Zn
    O、TiO2、Na2O、BaO、SnO2、P23、Z
    rO2およびLi 2Oの群から選ばれる少なくとも1種を
    0〜55質量%を含有することを特徴とするセラミック
    回路基板。
  2. 【請求項2】絶縁層Aにセラミックフィラーが、10〜
    60質量%含まれかつ絶縁層Bにセラミックフィラー
    が、20〜70質量%含まれることを特徴とする請求項
    1記載のセラミック回路基板。
  3. 【請求項3】絶縁層Aおよび絶縁層Bとが積層された基
    板の主面方向の焼成収縮率が5%以下であることを特徴
    とする請求項1または2に記載のセラミック回路基板。
  4. 【請求項4】絶縁層Aと絶縁層Bとの間の焼成後の熱膨
    張係数差が2×10-6/℃以下であることを特徴とする
    請求項1乃至3のうちいずれか記載のセラミック回路基
    板。
  5. 【請求項5】SiO2:10〜40質量%、MgO:3
    5〜60質量%、B2 3:10〜30質量%と、Ca
    O、Al23、SrO、ZnO、TiO2、Na2O、B
    aO、SnO2、P23、ZrO2およびLi2Oの群か
    ら選ばれる少なくとも1種を0〜30質量%を含有する
    結晶化ガラス粉末を含み低温側から焼成収縮を開始する
    絶縁層A成形体を形成するとともに、 SiO2:20〜50質量%、MgO:3〜25質量%
    と、B23、CaO、Al23、SrO、ZnO、Ti
    2、Na2O、BaO、SnO2、P23、ZrO2およ
    びLi2Oの群から選ばれる少なくとも1種を0〜55
    質量%とされている結晶化ガラス粉末を含み前記絶縁層
    A成形体よりも高温側から焼成収縮を開始する絶縁層B
    成形体を形成する工程と、前記絶縁層A成形体および前
    記絶縁層B成形体の表面および/または内部に所定の導
    体層パターンを形成する工程と、該導体層パターンが形
    成された前記絶縁層A成形体および前記絶縁層B成形体
    とを複数積層して積層成形体を形成する工程と、該積層
    成形体を焼成して、前記積層成形体の主面方向の焼成収
    縮率を5%以下とする工程とを具備することを特徴とす
    るセラミック回路基板の製法。
  6. 【請求項6】絶縁層A成形体と絶縁層B成形体との間の
    焼成収縮開始温度差が10℃以上であることを特徴とす
    る請求項5に記載のセラミック回路基板の製法。
  7. 【請求項7】絶縁層B成形体の焼成収縮率が0.1%の
    とき、絶縁層A成形体は、該絶縁層A成形体が有する最
    終収縮率の90%以上に達していることを特徴とする請
    求項5または6に記載のセラミック回路基板の製法。
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