JP2003041083A - 変性ポリテトラフルオロエチレン組成物 - Google Patents

変性ポリテトラフルオロエチレン組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 引張弾性率、耐圧縮クリープ特性等の機
械的特性に優れ、摺動材やシール材等の用途に好適な変
性ポリテトラフルオロエチレン組成物を提供する。 【解決手段】 共重合可能な単量体を1重量%以下の割
合で共重合させたテトラフルオロエチレン共重合体に、
比表面積が1.0〜2.0m/gの炭素繊維を好まし
くは5〜20重量%の割合で配合した変性ポリテトラフ
ルオロエチレン組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来の炭素繊維入
りポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)組成
物の機械的特性、特に引張弾性率、耐圧縮クリープ特性
を改善した充填材含有変性PTFE組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】PTFEは低摩擦係数であるとともに耐
熱性・耐薬品性に優れているため、耐摩耗性や耐クリー
プ性を改善する目的で充填材を含有させて摺動材やシー
ル材として多く使用されている。ここで使用されるPT
FEは圧縮成形用粉末であるモールディングパウダーで
あり、一方充填材としてはガラス繊維、炭素繊維、グラ
ファイト、二硫化モリブデン、ブロンズ粉末などの無機
充填材、又は芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリフ
ェニレンサルファイドなどの有機充填材が知られてい
る。
【0003】しかしながら近年の機器のコンパクト化と
それに伴う高圧化によって、これら従来からの摺動材や
シール材料は、運動する部材間にPTFEがはみ出して
損傷あるいは変形してしまうため、密封性を長時間維持
できないという問題が発生した。
【0004】これに対して、たとえば特開平5−239
440号公報では、かかるはみ出し変形にはPTFEと
して共重合可能な単量体で変性された共重合体を用いる
ことが有効であると記載されている。
【0005】しかしながら、従来の充填材含有PTFE
モールディングパウダーから成形された摺動材やシール
材においては、PTFE自身が非粘着性の特性を強く有
していることからPTFEと添加された充填材との間で
の密着性に乏しく、摺動面やシール面において荷重が掛
かった場合にPTFEと充填材とのズレが生じるため、
充填した材料の性質を活かせないという問題点を有して
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、充填
材とPTFE間の密着性を向上させることで充填材の特
性をPTFE成形品に充分に付与し、成形品の弾性率が
高く延伸破断しにくいPTFE組成物を提供することを
目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、テト
ラフルオロエチレンと1重量%以下の割合の共重合可能
な単量体との共重合体である変性ポリテトラフルオロエ
チレン(以下、変性PTFEという)に、比表面積が
1.0〜2.0m/gの炭素繊維を配合してなる変性
PTFE組成物に関する。このような変性PTFE組成
物を圧縮成形し、その後焼成することにより得られる成
形品は、変性PTFEと炭素繊維との密着性が向上して
いるため高弾性率を示し、かつ延伸破断しにくい。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる変性PTFE
は、テトラフルオロエチレン(TFE)と共重合可能な
単量体が1.0重量%以下共重合した共重合体である。
ここに共重合可能な単量体としては、例えば、炭素数3
〜6個のパーフルオロアルケン(例えばヘキサフルオロ
プロピレン)、アルキル基の炭素数が1〜6個のパーフ
ルオロ(アルキルビニルエーテル)(例えばパーフルオ
ロ(プロピルビニルエーテル))、クロロトリフルオロ
エチレン等を挙げることができる。これら単量体を1.
0重量%以下共重合した変性PTFEは、TFE単独重
合体同様、溶融加工性を有しない。
【0009】本発明の変性PTFE組成物を製造するに
際しては、上記変性PTFEのモールディングパウダー
が使用されるが、これらは公知の懸濁重合法により得ら
れる変性PTFE粉末であってもよく、また公知の懸濁
重合法により得られる変性PTFE粉末を造粒した後、
平均粒径100μm以下に粉砕したものであってもよ
い。変性PTFEモールディングパウダーの粒径は通常
5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。こ
のように微粉化された変性PTFEモールディングパウ
ダーは、炭素繊維と均一に混合するのに有利である。
【0010】本発明においては、上記変性PTFEに比
表面積が1.0〜2.0m/g、好ましくは1.0〜
1.5m/gの炭素繊維を配合するものである。ここ
に比表面積が上記範囲より小さい炭素繊維を使用した場
合には、引張弾性率や耐圧縮クリープ特性に優れたPT
FE組成物を得ることが難しく、また比表面積が上記範
囲より大きい炭素繊維を使用した場合には、変性PTF
Eと炭素繊維の密着性が強すぎて引張試験における伸び
が小さくなるので、いずれも好ましくない。
【0011】本発明に用いられる炭素繊維は、例えばフ
ェノール系樹脂、レーヨン、ポリアクリルニトリル、石
炭ピッチ、石油ピッチなどを原料として紡糸、不融化
し、炭素化あるいはさらに黒鉛化された繊維であり、炭
素化後あるいは黒鉛化の前後などにおいて粉砕すること
により適当な大きさの繊維とされる。これらの中では石
油ピッチ系の炭素繊維の使用が好ましく、また1500
℃以上の高温で焼成された炭素繊維あるいは黒鉛化され
た炭素繊維の使用が好ましい。炭素繊維の比表面積は、
例えば高温焼成や黒鉛化の前後における粉砕の程度を制
御することにより、所望の範囲のものとするができる。
【0012】これら炭素繊維としてはまた、平均繊維径
が5〜20μm、とくに10〜16μm程度のものを使
用することが好ましい。すなわち繊維径が小さすぎる炭
素繊維を使用すると、均一分散しにくいため、繊維の凝
集が起こりやすく、また単位面積当たりの充填量が増え
ることにより、マトリックスを形成している変性PTF
Eの強度やクリープ特性を損なうことがある。また平均
繊維径が過大な炭素繊維を使用した場合、シール材料用
途においてシール装置の相対運動面がアルミ材のような
軟質材料である場合に、相手材料の磨耗が大きくなる傾
向となる。
【0013】さらに炭素繊維としてはまた、平均繊維長
が50〜200μm程度のものを使用することが好まし
い。すなわちあまり繊維長の短い炭素繊維を使用すると
補強効果を充分に発揮することができず、またあまり繊
維長の長いもの、例えば500μm以上のような繊維長
を有する炭素繊維を使用すると、伸び値の減少を招き、
柔軟性を損なう結果となる。
【0014】変性PTFEに対する炭素繊維の配合割合
は、変性PTFE組成物中、5〜20重量%、とくに8
〜15重量%の範囲とすることが好ましい。炭素繊維の
配合量が少なすぎると変性PTFE組成物から得られる
成形品の耐摩擦性、耐クリープ性等の改善効果が少な
く、またその配合量が過多になると成形品の伸びなどの
物性が低下する。
【0015】本発明の変性PTFE組成物には、引張弾
性率の改良等のために少量の熱溶融性フッ素樹脂、好ま
しくはTFEとこれと共重合可能な単量体との共重合体
を配合することができる。上記共重合可能な単量体とし
ては、例えば、炭素数3〜6個のパーフルオロアルケン
(例えばヘキサフルオロプロピレン)、アルキル基の炭
素数が1〜6個のパーフルオロ(アルキルビニルエーテ
ル)(例えばパーフルオロ(プロピルビニルエーテ
ル))、クロロトリフルオロエチレン等のフルオロビニ
ル化合物及びエチレンなどを例示することができる。こ
のような熱溶融性フッ素樹脂としては、具体的には、テ
トラフルオロエチレン・パ−フルオロ(アルキルビニル
エーテル)共重合体(以下、PFAという)、テトラフ
ルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体
(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロ
プロピレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)
共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン・エチレ
ン共重合体(ETFE)、などを代表例として挙げるこ
とができる。
【0016】上記TFEとフルオロビニル化合物との共
重合体においては、フルオロビニル化合物の共重合割合
が0.5〜20モル%程度のものが使用でき、また37
2℃、5000g荷重におけるメルトフローレート(M
FR)が0.5〜20g/10分、とくに0.5〜10
g/10分程度のものが好ましい。またTFEとエチレ
ンの共重合体においてはエチレンの共重合割合が30〜
70モル%程度のものの使用が好ましく、297℃、2
160g荷重におけるMFRが1〜20g/10分、と
くに1〜10g/10分程度のものが好ましい。
【0017】これら熱溶融性フッ素樹脂としては、粒径
が100μm以下、好ましくは10〜50μmのものを
配合するのが好ましい。また熱溶融性フッ素樹脂の配合
割合は、変性PTFE組成物中、0.1〜20重量%、
とくに1〜10重量%の範囲とするのが効果的である。
【0018】本発明の変性PTFE組成物にはまた、本
発明の目的を損なわない範囲において、必要に応じ、一
般にフッ素樹脂粉末の充填材として配合されている平均
粒径200μm以下の無機又は有機の粉末や繊維を配合
することができる。例えば、ガラス充填材(例えばガラ
ス繊維またはガラス球)、アルミナ粉末、硫酸カルシウ
ム、炭酸カルシウムまたは青銅粉末等のような親水性充
填材、チタン酸カリウム繊維、タルク、酸化亜鉛粉末、
カーボン繊維、二硫化モリブデン、グラファイト粉末等
のような半親水性充填材、ポリイミド、ポリアミド、芳
香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等のよう
な有機充填材などが利用できる。
【0019】本発明の変性PTFE組成物における上記
各配合成分の混合に際しては、V型ブレンダー、タンブ
ラー、ヘンシェルミキサー等通常の公知の混合方法が採
用される。例えばヘンシェルミキサーを用い、回転数約
200〜1000rpm、時間約4〜15分間といった
ブレンド方法が用いられる。
【0020】本発明の変性PTFE組成物を各種形状の
成形品に成形する方法は、とくに限定されるものではな
く、公知のPTFE粉末の圧縮成形法を適用すればよ
い。このようにして得られた成形品は延伸破断しにく
く、変形しにくい等の効果を得ることができる。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお実施例、比較例で使用された物性測定方法は下記の
とおりである。
【0022】[物性測定方法] (1)比表面積測定 マイクロメリテックス製フローソーブII 2300型を
使用してBET一点法により比表面積(m/g)を求
めた。
【0023】(2)引張試験 (東洋ボールドウィン製
テンシロンUTM型機) ASTM−D1708に従って試験片を打ち抜き、試験
に用いた。
【0024】(3)圧縮クリープ 外径50mm、高さ100mmのビレットから切削する
ことによりASTM−D621に規定される試験片を得
て、120℃で圧縮クリープを測定した。
【0025】[実施例1]平均粒径35μmの変性PT
FEモールディングパウダー(0.05重量%のパーフ
ルオロ(プロピルビニルエーテル)で変性したPTF
E)90重量%と炭素繊維(比表面積1.5m/g、
平均繊維径14.5μm、平均繊維長100μm)10
重量%からなる組成物をヘンシェルミキサーで回転数4
50rpm、時間10分間の条件で均一に混合した。
【0026】得られた組成物を700kg/cmで予
備成形し、370℃で3時間焼成し、直径50mm、高
さ100mmの円筒状成形物を得た。これから外径50
mm、厚さ2mmの円盤を切削加工し、これからAST
M−D1708記載のマイクロダンベルにて試験片を打
ち抜き、引張試験を行った。結果を表1に示す。
【0027】[実施例2]実施例1で用いた変性PTF
Eモールディングパウダー85重量%と炭素繊維(比表
面積1.5m/g、平均繊維径14.5μm、平均繊
維長100μm)10重量%と平均粒径30μmのPF
A パウダー(三井・デュポンフロロケミカル(株)製:
MP−103)5重量%とからなる組成物をヘンシェル
ミキサーで均一に混合した。得られた組成物を実施例1
と同様に成形し、その物性を測定した。結果を表1に示
す。
【0028】[実施例3]実施例1において、炭素繊維
として比表面積2.0m/g、平均繊維径14.5μ
m、平均繊維長100μmのものを用いた以外は同様に
して組成物を調製し、これを成形してその物性を評価し
た。結果を表1に示す。
【0029】[比較例1]実施例1で用いた変性PTF
Eモールディングパウダー90重量%と炭素繊維(比表
面積0.5m/g、平均繊維径14.5μm、平均繊
維長100μm)10重量%とからなる組成物をヘンシ
ェルミキサーで均一に混合した。得られた組成物を実施
例1と同様に成形し、その物性を測定した。結果を表1
に示す。
【0030】[比較例2]平均粒径35μmのPTFE
(TFE単独重合体)モールディングパウダー90重量
%と炭素繊維(比表面積0.5m/g、平均繊維径1
4.5μm、平均繊維長100μm)10重量%とから
なる組成物をヘンシェルミキサーで均一に混合した。得
られた組成物を実施例1と同様に成形し、その物性を測
定した。結果を表1に示す。
【0031】[比較例3]実施例1において、炭素繊維
として比表面積2.5m/g、平均繊維径14.5μ
m、平均繊維長100μmのものを用いた以外は同様に
して組成物を調製し、これを成形してその物性を評価し
た。結果を表1に示す。
【0032】[比較例4]比較例2において、炭素繊維
として比表面積1.5m/g、平均繊維径14.5μ
m、平均繊維長100μmのものを用いた以外は同様に
して組成物を調製し、これを成形してその物性を評価し
た。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】比表面積が1.0〜2.0m/gであ
る炭素繊維を配合した本発明の変性PTFE組成物は、
変性PTFEと充填材の密着性に優れているため弾性
率、耐圧縮クレープ特性等が向上し、高圧下での使用に
おいても変形の少ない成形体を得ることが可能である。
従って、摺動材やシール材、例えばシールリング等の用
途に適している。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 テトラフルオロエチレンと1.0重量%
    以下の割合の共重合可能な単量体との共重合体に、比表
    面積が1.0〜2.0m/gの炭素繊維を配合してな
    る変性ポリテトラフルオロエチレン組成物。
  2. 【請求項2】 炭素繊維が5〜20重量%の割合で配合
    されてなる請求項1記載の変性ポリテトラフルオロエチ
    レン組成物。
  3. 【請求項3】 熱溶融性フッ素樹脂を0.1〜20重量
    %の割合で配合してなる請求項1又は2記載の変性ポリ
    テトラフルオロエチレン組成物。
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