米国特許第4,163,742号明細書(Mansure)には、耐クリープ性を改善するために、炭素繊維を溶融加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマー樹脂とブレンドすることが開示されている。このコポリマー樹脂は、380℃において104〜107ポアズの溶融粘度を有し、これは372℃において約0.1〜50g/10分のメルトフローレートに相当し、繊維は少なくとも2mmの平均長さを有する。このブレンド方法は、粒子形態の樹脂を炭素繊維とともに水と水混和性有機溶媒との混合物中で混合した後、濾過し、乾燥させて、樹脂/繊維ブレンドの濾過ケーキを形成し、圧縮成形することを含む。最大50重量%の炭素繊維を含有するブレンド組成物が開示されている。米国特許第4,414,356号明細書(Michel)には、同じブレンドおよび圧縮成形方法の実施が開示されているが、表面処理しないためには、同様に少なくとも2mmの平均長さを有する炭素繊維が必要とされる。
米国特許第4,422,992号明細書(Michel)には、上記のMansureの方法が、許容できる連続商業生産には役に立たないことが開示されている。このMichelの方法は、(a)Mansureの文献に開示されているメルトフロー特性を有する溶融加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマーと、(b)連続炭素繊維とをツインスクリュー押出機中に同時供給するステップを含み、押出機によって繊維が1.5〜3mmの長さに切断される。繊維の補強特性に妥協するために、より短い繊維が開示されている。押出機によって、切断された繊維とコポリマー樹脂とが溶融ブレンドされ、得られたブレンドを直径2〜4mmダイ開口部から押し出すことによって、詰まりが防止され、コポリマー樹脂のマトリックス中で押出方向に炭素繊維が配列されることで炭素繊維によって得られる補強が最大化される。ブレンドの炭素繊維含有率は20〜35重量%、好ましくは30〜35重量%である。
米国特許第5,604,285号明細書(Miyamoriら)には、炭素繊維と金属粉末との両方を溶融加工可能なフルオロポリマーに加えることで、機械的強度を維持しながら摩擦係数を減少させることが開示されている。開示されている10〜30マイクロメートルの平均繊維直径および8〜300マイクロメートル、好ましくは20〜300マイクロメートルの平均アスペクト比から求めると、炭素繊維の長さは80〜3000マイクロメートルである。フルオロポリマーは、アンモニアと反応させてアミド末端基を形成することによって、または−CF3末端基を形成することが知られているフッ素化によってのいずれかで安定化された末端基を有する。射出成形もまた開示されている。
米国特許第5,705,120号明細書(Ueno)には、ポリテトラフルオロエチレンと炭素繊維との間のぬれ性が不十分なことが開示されており、50マイクロメートル〜5mmの長さを有し、炭素/酸素の比、ハロゲンの存在、またはその両方のいずれかによって特徴付けられる表面処理を有するグラファイト繊維と呼ばれる熱処理された炭素繊維によってこの欠点に対処している。Uenoの文献に開示されるフッ素樹脂混合物は、1〜60重量%の特殊処理したグラファイト繊維を含有する。製造方法として圧縮成形および押出成形および射出成形が開示されており、フッ素樹脂と繊維成分とを均一に混合することの重要性に言及されている。圧縮成形のみが実施例において使用されている。
コポリマー自体によって得られるよりも実質的に高い耐クリープ性を有し、かつ経済的な製造によって作製することができる溶融加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマーが必要とされている。
本発明は、約7g/10分以下のメルトフローレート(MFR)を有する溶融加工可能なフルオロポリマーを粉砕(milled)炭素繊維と溶融ブレンドするステップと、得られた溶融ブレンドから物品を形成するステップとを含み、前記溶融ブレンドの炭素繊維含有率が、前記炭素繊維および前記コポリマーの総重量を基準にして約15〜35重量%である方法によって、この要求を満たす。溶融ブレンドは、炭素繊維をフルオロポリマー中に混入するための経済的な方法の1つであるが、その理由は、この方法は、押出成形および溶断と組み合わせて使用して射出成形機に供給可能となるペレットを形成することができるからである。あるいは、最終製品の形状を形成するために押出成形を使用することができる。
この低MFRの意味は、コポリマーが高溶融粘度、すなわち372℃において7.6×104ポアズ(7.6×106Pa・s)を有することである。好ましくは、フルオロポリマーのMFRは約4g/10分以下である。このため、溶融ブレンドプロセスによって、フルオロポリマーの高粘度溶融物中に高比率の炭素繊維を均一に混入することが困難となる。混入の均一性は、ブレンドから成形された物品を観察することによって確認される。たとえば、内部流体圧力のシールとして使用される場合、シールには膨張力が作用するが、ブレンドから成形された環状物品は、圧力シールを維持し、すなわちクリープ破壊を起こさない。
短炭素繊維を使用することで、商業的に経済的な基準でこの溶融ブレンドを首尾良く行えることを発見した。粉砕炭素繊維は短炭素繊維である。粉砕プロセスによって、炭素繊維製造プロセスで得られた長い繊維が短繊維に破壊される。本発明において使用される炭素繊維は、好ましくは約1600マイクロメートル以下、好ましくは、約400マイクロメートル以下の平均長さを有する。
耐クリープ性の尺度の1つは引張弾性率である。高引張弾性率は、耐クリープ性が高いことを示している。本発明においては、短炭素繊維が使用されるかどうかにかかわらず、引張弾性率が実質的に改善される。好ましくは、炭素繊維を加えることによって、フルオロポリマーの引張弾性率が少なくとも20%増加する。より好ましくは、このブレンドは、フルオロポリマーがパーフルオロポリマーである場合に、23℃において少なくとも約800MPaの引張弾性率を有する。
ブレンドプロセスにおいて使用される炭素繊維は、好ましくは表面処理されておらず、コポリマーは、好ましくは、重合反応中に生じる実質的にすべての極性末端基を変換する処理が行われていない、すなわち重合時のままである。したがって、フルオロポリマーは、好ましくは少なくとも約10個の重合時極性末端基/炭素原子106個を含有する。
フルオロポリマーと炭素繊維とのブレンドの溶融加工が、通常よりも高い温度、すなわち溶融加工可能なフルオロポリマーの標準的な圧縮温度よりも少なくとも20℃高い温度で行われる場合に、本発明の方法によって、最高の結果が得られ、たとえば引張弾性率の大きな増加および最高の耐クリープ性が得られる。標準的な圧縮成形温度については本明細書において後により詳細に説明する。
本発明の別の一実施形態は、約7g/10分以下のMFRを有するフルオロポリマーのマトリックスと、上記マトリックス中に分散した15〜35重量%の粉砕炭素繊維とを含む組成物である。この炭素繊維は、前述のような繊維長さと、表面処理されていないこととをさらなる特徴とすることができる。フルオロポリマーは、前述のようなMFR、および重合時の極性末端基が存在することをさらなる特徴とすることができる。本発明の組成物は、前述のような引張弾性率の改善をさらなる特徴とすることができる。
本発明において使用される溶融加工可能なフルオロポリマーポリマーに関して、これらは一般に:ポリマー骨格を構成する炭素原子に結合する一価原子がすべてフッ素原子であるパーフルオロポリマーと、フッ素の一価原子に加えて、水素原子もポリマー骨格を構成する炭素原子に結合することができるハイドロフルオロポリマーとの2つに分類される。ポリマー末端基中、すなわちポリマー骨格(鎖)の末端の基中には、他の原子が存在することができる。本発明において使用されるフルオロポリマーはフルオロプラスチックであって、フルオロエラストマーではない。
パーフルオロポリマーであるフルオロポリマーの例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの3〜8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィンなどの1種類以上の重合性過フッ素化コモノマーとのコポリマー、および/または線状または分岐アルキル基が1〜5個の炭素原子を有するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)が挙げられる。好ましいPAVEモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、およびパーフルオロ(ブチルビニルエーテル)(PBVE)が挙げられる。コポリマーは、製造元によりMFAと呼ばれることもあるTFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)コポリマーなどの数種類のPAVEモノマーを使用して製造することができる。好ましいパーフルオロポリマーは、HFP含有率が約5〜17重量%であるTFE/HFPコポリマーであり、より好ましくは、HFP含有率が約5〜17重量%であり、PAVE、好ましくはPEVEの含有率が約0.2〜4重量%であり、コポリマーを合計100重量%にするための残分がTFEである、TFE/HFP/PAVE(PEVEまたはPPVEなど)である。第3のコモノマーが存在する場合もしない場合もあるTFE/HFPコポリマーは、一般にFEPと呼ばれている。一般にPFAとして知られているTFE/PAVEコポリマーは、PAVEがPPVEまたはPEVEである場合には少なくとも約2重量%のPAVEを含み、典型的には約2〜15重量%のPAVEを含有する。PAVEがPMVEを含む場合、その組成は、約0.5〜13重量%のパーフルオロ(メチルビニルエーテル)および約0.5〜3重量%のPPVE、合計100重量%となる残分がTFEであり、前述したようにMFAと呼ぶことができる。好ましいパーフルオロポリマーはPFAおよびFEPである。
本発明において使用することができるハイドロフルオロカーボンポリマーに関して、これらのポリマーは、ポリマー鎖中に−CH2−および−CF2−の繰り返し単位を有し、好ましくはポリマー鎖中に−CH2−CH2−および−CF2−CF2−の繰り返し単位を有する。このようなポリマーは少なくとも35重量%のフッ素を含有する。ハイドロフルオロポリマーの例としては、フッ化ビニリデンポリマー(PVDF)のコポリマー、TFEとHFPとフッ化ビニリデンとのコポリマーであるTHVポリマー、およびエチレンとTFE)とのコポリマーであるETFEが挙げられる。典型的にはETFEは、パーフルオロブチルエチレン(CH2=CH(C4F9)またはPFBE)、ヘキサフルオロイソブチレン(CH2=C(CF3)2)またはHFIB)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、またはヘキスフルオロプロピレン(hexfluoropropylene)(HFP)などの少なくとも1種類の他のモノマーの重合から誘導される単位を含有する。この第3のモノマーであるターモノマーは、エチレンおよびTFEの総モル数を基準にして0.1〜10モル%の量で存在する。エチレン対TFEのモル比は、約30:70〜70:30、好ましくは約35:65〜65:35、より好ましくは約40:60〜60:40の範囲内となる。ETFEポリマーは、米国特許第3,624,250号明細書、米国特許第4,123,602号明細書、米国特許第4,513,129号明細書、および米国特許第4,677,175号明細書に記載されている。
本発明において使用されるフルオロポリマーは、重合反応中に、使用される開始剤、連鎖移動剤、および/またはアンモニウム緩衝剤によって生じる極性末端基を有する。これらの末端基は極性であり、最も一般的な末端基安定化化学処理である−CF2H末端基が得られる加湿加熱処理、および−CF3末端基が得られるフッ素化によって得られる非極性の安定な末端基とは対照的である。極性末端基は、イオン性であること、または水素結合が可能であることの1つ以上を特徴とし、炭素/ハロゲン結合は含有せず、極性末端基の例は、カルボン酸(−COOH)およびその誘導体、たとえばエステル(−COCH3)、アミド(−CONH2)、および酸フッ化物(−COF)、アルコール(−CH2OH)、およびビニル(−CF=CF2)である。極性末端基が存在することで、炭素繊維のフルオロポリマー中への分散が促進され、結果として得られるブレンドの引張弾性率が改善される。
好ましくは、少なくとも約20個の重合時極性末端基/炭素原子106個が存在する。好ましい末端基は−COOHである。好ましくは、フルオロポリマーは、少なくとも約10個/炭素原子106個、より好ましくは、少なくとも約20個/炭素原子106個の−COOH末端基を含有する。フルオロポリマーをフッ素に曝露することによるフルオロポリマー末端基の安定化によって、典型的には、実質的にすべての重合時末端基が−CF3安定末端基に変換される。米国特許第4,626,587号明細書(MorganおよびSloan)には、FEPのフッ素処理の効果が開示されている。表IIIには、それぞれ−CF=CF2末端基数が多く、1つは−COOH末端基数が多い、3つのFEPポリマーのフッ素化結果が示されており、−CF=CF2末端基数は大きく減少しており、51個の−COOH末端基(モノマー)は7個に減少している。米国特許第4,743,658号明細書(ImbalzanoおよびKerbow)には、少なくとも80(合計)/炭素原子106個の末端基:−COF、−CH2OH、および−CONH2を有するPFAのフッ素化処理によって、これらの末端基(合計)が6個以下/炭素原子106個まで減少することが示されている。米国特許第3,085,083号明細書(Schreyer)には、FEPの加湿加熱処理によって、不安定な末端基が安定な−CF2H末端基に変換されることが開示されている。Schreyerの表1において、FEPのアンモニアとの反応によって、−COOH末端基が実質的に消失することも開示されている。本発明において使用されるフルオロポリマーに望ましい末端基数は、PFAなどのフルオロポリマーの末端基処理を行わないことによって、または不安定な末端基から−CF3安定性末端基の変換が不完全なフッ素処理によって得ることができる。フッ素処理を行わない場合は、FEPの加湿加熱処理を行い、これも不完全に行うことによって、重合時の極性末端基を維持することができる。
本発明において使用されるフルオロポリマーは溶融加工可能であり、すなわち押出成形および射出成形などの一般的な成形技術によって溶融加工可能であり、有用となる靱性を示す物品が形成される。この靱性は、低メルトフローレート(MFR)を有する溶融物を形成する高分子量のフルオロポリマーによって得られる。したがって、本発明において使用されるフルオロポリマーは、約7g/10分以下のMFRを有する。MFRは、ASTM D−1238−94aに準拠し、米国特許第4,380,618号明細書に開示される詳細な条件に従い、樹脂に標準的な温度において測定され(たとえば、最も一般的な溶融加工可能なフルオロポリマー(FEPおよびPFA)に適用可能なASTM D 2116−91aおよびASTM D 3307−93が参照され、どちらもPlastometer(登録商標)中の樹脂溶融温度として372℃が指定される)、ETFEの場合にはASTM D 3159で297℃が指定される。したがって、MFRは、溶融ポリマーがPlastometer(登録商標)のオリフィスから押し出されるg/10分の単位の速度である。好ましくは本発明において使用されるフルオロポリマーのMFRは、約4g/10分以下であり、より好ましくは約3g/10分以下である。これらの最大MFRのそれぞれに関して、好ましくはMFRは少なくとも0.5g/10分、より好ましくは少なくとも1g/10分である。
低MFRは高溶融粘度となるために溶融加工が困難となるので、溶融加工を容易にするために、ほとんどのフルオロポリマーは、より高いMFRを有するようにされる。室温および高温の両方における高い耐クリープ性のために必要な高引張弾性率を実現するために、本発明は、粉砕炭素繊維とともに低MFRフルオロポリマーを使用することが必要である。典型的には、低MFRフルオロポリマーの引張弾性率は23℃において約600MPa以下となる。
フルオロポリマーに加えられる炭素繊維としては、有機フィラメント材料の炭化から誘導されるPAN系炭素繊維、およびピッチ系炭素繊維、すなわちピッチから紡糸される繊維から誘導される炭素繊維が挙げられる。好ましくは炭素繊維は23℃において少なくとも約150GPa(21750000psi)、好ましくは23℃において少なくとも約400GPaの高引張弾性率を有する。好ましくは、炭素繊維の直径は約5〜15マイクロメートルであり、短繊維の長さは、粉砕炭素繊維として販売される炭素繊維製造元によって粉砕されて得ることができる長さである。好ましくは、炭素繊維の平均長さは約300マイクロメートル以下、より好ましくは約200マイクロメートル以下である。炭素繊維の平均繊維長さは、拡大下で繊維長さを測定することによって製造元/供給元により測定される。炭素繊維は表面処理されていない。したがって、これらの繊維は、表面コーティングを有さず、たとえばサイジング、および酸化またはハロゲン化などによって炭素原子表面の化学的性質を変化させるその他の表面処理が行われていない。
好ましくは、フルオロポリマーとのブレンドの炭素繊維含有率は、炭素繊維およびフルオロポリマーの総重量を基準にして約15〜30重量%、より好ましくは約18〜28重量%である。
単に、混合能力を有する押出機にフルオロポリマーと炭素繊維とを別々に供給することによって、炭素繊維をフルオロポリマーとブレンドすることができる。これは、押出機スクリューが混合セクションを有するツインスクリュー押出機またはシングルスクリュー押出機であってよい。フルオロポリマーは、粉末形態またはあらかじめ押出成形され押出物がペレット形態に溶断されたペレット形態であってよい。炭素繊維は、結果として得られる溶融ブレンド中で所望の濃度が得られる量で、混合セクションの押出機上流中に計量供給することができる。好ましくは、炭素繊維は、押出機バレル中に強制供給される、すなわちオーガーによって加圧下で炭素繊維が押出機バレル内部に供給される。溶融フルオロポリマーと加えられた炭素繊維との混合によって、結果として得られるフルオロポリマーマトリックス中に炭素繊維が均一に分散される。典型的には、溶融ブレンドは押出成形され、溶断されてペレットが得られ、このペレットは最終的な溶融加工、最も頻繁には射出成形によって使用することができる。
得られる成形品は、高い引張弾性率を示し、このことが、フルオロポリマーマトリックス中に炭素繊維が均一に分散していることを裏付けている。フルオロポリマーがパーフルオロポリマーである場合には、23℃において、引張弾性率は好ましくは少なくとも800MPaである。マトリックスを形成するフルオロポリマーは高温においては、引張弾性率は、23℃における引張弾性率の好ましくは少なくとも25%である。PFAの場合、この測定の場合の高温は200℃である。
フルオロポリマーと炭素繊維とのブレンドに付与される性質の改善に、成形温度が影響を与えることを発見した。驚くべきことに、フルオロポリマー単独の引張試験片の作製に使用される標準的な圧縮成形温度よりも成形温度が高い場合に、性質の改善が実質的に大きくなる。各フルオロポリマーにより変動する標準的な圧縮成形温度は、最適な成形温度、すなわち最適な引張試験結果を得るための成形温度であり、個々のフルオロポリマーに関してASTM規格において以下のように開示されている。
他の溶融加工可能なフルオロポリマーの圧縮成形温度は、それぞれのASTM規格中に見られる。溶融加工(成形)温度、すなわち溶融温度が標準的な圧縮成形温度よりも少なくとも20℃高い場合、少なくとも引張弾性率の改善は、フルオロポリマー単独の引張弾性率よりも少なくとも50%高いことを発見した。したがってPFAの場合、好ましい成形(溶融)温度は少なくとも400℃であるが、ポリマーの分解が起こるほど高温ではない。PFAは、約420℃の溶融温度でポリマーの分解なしに成形することができる。
引張弾性率は、ASTM規格において開示される引張試験片作製で規定される380℃の圧縮成形温度の代わりに420℃が使用されることを除けば、23℃においてASTM D 3307に記載されるように圧縮成形試験片で測定される。
この実施例で使用されるフルオロポリマーは、約3.5重量%のPPVEを含有し、2g/10分のMFRを有し、および以下の末端基数/炭素原子106個:3個の−COF、16個の−CONH2、および61個の−COOH(モノマーおよびダイマーとして)を有するPFAである。このPFAは直径2.5mmおよび長さ2.5mmの平均サイズを有するペレットの形態であり、23℃において578MPaおよび200℃において37MPaの引張弾性率を示す。
この実施例で使用される炭素繊維は、表面処理されておらず、約7マイクロメートルの平均直径、約94マイクロメートルの平均長さ、および228GPa(33,100,000psi)の引張弾性率を有する粉砕炭素繊維である。
ブレンドの引張弾性率は、23℃において966MPaであり、200℃において311.5MPaである。23℃の引張弾性率の改善は67%である。
射出成形に供給するのに好都合な形態のブレンドを調製するために、PFAペレットがツインスクリュー押出機に供給され、押出機内で到達する溶融温度は約370℃である。炭素繊維は押出機オーガーを使用することによって供給されることで、強制的に炭素繊維が押出機バレルに供給されて、押出スクリューによって混合セクション中に強制的に供給されたフルオロポリマーと接触し、粉砕炭素繊維はPFAマトリックス中に均一に分散するようになる。冷却された押出物は直径2.5mmおよび長さ2.5mmのペレットに切断される。PFAおよび炭素繊維の押出機中への供給速度は、炭素繊維とPFAとの総重量を基準にしてPFA中26重量%の炭素繊維含有率が得られるように制御される。このブレンドのMFRは0.65g/10分である。
この溶融ブレンドが2mmを超える平均長さを有する切断された炭素繊維を使用して行われる場合、押し出されたストランドが切断前に破壊することで示されるように、炭素繊維がフルオロポリマーと均一にブレンドされないため、射出成形機に供給するための均一に成形されたペレットがブレンドから形成されなくなる。得ることができるペレットは、溶融ブレンドによる金型充填に一貫性がなくなるという意味で射出成形が困難となる。
420℃の溶融温度においてペレットを環型に射出成形し、内部流体圧力を維持するために環がクリープに抵抗する必要がある条件下で、この形状をそのような内部流体圧力にさらすことに成功する。対照的に、同じ炭素繊維と、同じ方法および同じ量でブレンドした14g/10分のMFRを有するPFAから420℃で同じ環を成形する場合、得られる環は、環の端部から加圧された液体が漏れることによって明らかなように、得られた環は内部圧力を維持することができない。MFRが2のPFAを含有するブレンドから作製した環を380℃の温度で射出成形すると、その環は同じ内部圧力を維持することができない。