JP6645606B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
上記のような摺勤部品に用いられる材料として、寸法安定性、耐クリープ性、耐摩耗性などを改善する目的で充填材を配合した樹脂材料が用いられてきた。
(A)熱可塑性樹脂の少なくとも50重量%以上がフッ素樹脂からなること、
(B)炭素繊維は出発原料にメソフェーズピッチを用いた黒鉛化炭素繊維であること、
(C)炭素繊維の真密度は1.7〜2.5g/ccであること、
(D)炭素繊維に含まれる黒鉛結晶のc軸方向、ab軸方向の結晶子サイズがともに20nm以上であること、
(E)炭素繊維は複合材料中に5〜50重量%の割合で混合されること
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、摩耗係数が小さく、アルミニウム製物品と接触した場合に上記アルミニウム製物品の表面を傷つけにくい樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、融点が290℃以上である結晶性樹脂、c軸方向の結晶子サイズが30.0Å以下の黒鉛糸(A)、及び、c軸方向の結晶子サイズが100.0Å超の黒鉛糸(B)を含むことを特徴とする樹脂組成物である。
摩耗係数が小さいにもかかわらず、柔らかいアルミニウム製物品を傷つけにくい樹脂組成物を提供することは、困難であると思われた。しかしながら、本発明の樹脂組成物が上述の優れた効果を奏する理由は、結晶子サイズが小さい黒鉛糸が上記樹脂組成物を摩耗しづらくすると同時に、結晶子サイズが大きい黒鉛糸が上記樹脂組成物の放熱性を向上させることによって、上記アルミ製物品との摩擦により生じる熱を外部に放出して、上記アルミ製物品に与える損傷を小さくするからであると考えられる。
上記ポリエーテルケトン樹脂としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン等が挙げられる。
上記融点は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求めた値である。
また、上記PTFEは、非溶融加工性及びフィブリル化性を有する高分子量PTFEであってもよいし、溶融加工性を有し、フィブリル化性を有しない低分子量PTFEであってもよいが、非溶融加工性及びフィブリル化性を有する高分子量PTFEであることが好ましい。
CF2=CF−ORf1 (1)
(式中、Rf1は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(1)において、Rf1が炭素数4〜9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf1が下記式:
パーフルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロブチルエチレン[PFBE]、パーフルオロヘキシルエチレン、(パーフルオロオクチル)エチレン等が挙げられる。
上記溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め測定温度(380℃)で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定することができる。
本明細書において、標準比重(SSG)は、ASTM D 4895−89に準拠して、水中置換法に基づき測定することができる。
本明細書において、MFRは、ASTM D 1238に準拠し、温度372℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
上記c軸方向の結晶子サイズは、X線回折計を使用し、X線回折に現れる(002)面からの反射を測定し、学振法にて求める。
具体的には、c軸方向の結晶子サイズは、X線回折計(Rigaku, Ultima III)を使用して、X線回折測定を行い、測定物質を石英製のサンプルホルダーの凹部に平らに詰め、X線源をCu−Kα線、出力を40kV、20mAに設定し、X線回折に現れる(002)面からの反射を測定し、学振法にて求めることができる。
上記平均繊維長は、走査型電子顕微鏡の200倍像を任意で10視野分撮影し、200本の繊維長を計測して、数平均繊維長を求める。
上記平均繊維径は、走査型電子顕微鏡の200倍像を任意で10視野分撮影し、200本の繊維長を計測して、数平均繊維径を求める。
上記半価幅比の上限は特に限定されないが、例えば、100であってよい。
上記X線回折の測定は、c軸方向の結晶子サイズと同様の方法で行う。
半価幅比の下限は特に限定されないが、例えば、1であってよい。
上記X線回折の測定は、c軸方向の結晶サイズと同様の方法で行う。
上記平均繊維長は、走査型電子顕微鏡の200倍像を任意で10視野分撮影し、200本の繊維長を計測して、数平均繊維長を求めた。
上記平均繊維径は、走査型電子顕微鏡の200倍像を任意で10視野分撮影し、200本の繊維径を計測して、数平均繊維径を求めた。
上記比重は、ブタノール置換法(JIS R 7222)に準拠して求めることができる。
特に耐摩耗性に優れる観点からは、質量比(A/B)は、7.0/3.0〜9.9/0.1であることが好ましい。また、質量比(A/B)は、7.5/2.5〜9.9/0.1であることがより好ましく、8.0/2.0〜9.9/0.1であることが更に好ましく、9.0/1.0〜9.9/0.1であることがより更に好ましい。質量比(A/B)が9.5/0.5〜9.9/0.1のように黒鉛糸(B)の割合が少ない場合であっても、摩耗係数を大きく改善することができる。
摩耗係数と相手材への影響とのバランスの点からは、質量比(A/B)が、5.0/5.0〜1.0/9.0であることも好ましい。より好ましくは、5.0/5.0〜3.0/7.0である。
上記他の成分は、樹脂組成物の50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、40質量%以下である。
上記シールリングは、使用する耐熱性樹脂等に応じた通常の方法で成形することができる。成形方法としては、射出成形、押出成型、圧縮成形等が挙げられる。
耐熱性樹脂としてPTFEを用いる場合、PTFE、黒鉛糸(A)及び(B)を上記の混合機にて混合して樹脂組成物を得た後、圧縮成形などの成形法により成形し、成形体を350〜380℃で0.5〜10時間焼成した後、得られた焼成体を切削加工等により加工することで所望の成形体(シールリング等)を得てもよい。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、商品名:ポリフロンM−18F、ダイキン工業株式会社製、標準比重(SSG):2.164、融点:344.9℃
(2)ピッチ系異方性黒鉛糸
商品名:GRANOC、グレード:XN−100−15M、日本グラファイトファイバー株式会社製、標準シリコンとの半価幅比:3、c軸方向の結晶子サイズ 244Å
(3)ピッチ系等方性黒鉛糸
商品名:クレカチョップ、グレード:M2007S、株式会社クレハ製、標準シリコンとの半価幅比:46、c軸方向の結晶子サイズ 17Å
上記PTFEのSSG及び融点、並びに、黒鉛糸(A)及び(B)の標準シリコンとの半価幅比、c軸方向の結晶子サイズは上述した方法で求めた値である。
実施例1〜9、比較例1〜2の各樹脂組成物80gを成形圧力68.6MPaで加圧成形した後、370℃で焼成し、円柱状成形体(外径30mm、高さ50mm)を得た。この成形体から摩耗係数測定用の試験片(外径25.6mm、内径20mm、高さ15mm)を作製し、オリエンテック(株)製の摩擦摩耗試験機MODEL EFM−III−F/ADXを用いて
荷重:0.45MPa
速度:1.0m/s
温度:室温
相手材:アルミニウムダイキャストADC12
相手材表面粗さ:Ra0.6μm
の条件下に摩擦摩耗試験を行い、試験前後の試験片重量変化より摩耗係数を算出した。
相手材表面粗度変化率は摩擦摩耗試験前の相手材摺動面の表面粗度(Ra前)と試験後の相手材摺動面表面粗度(Ra後)を次式により算出した。
相手材表面粗度変化率(%)=(Ra後―Ra前)×100/Ra前
試験後の相手材摺動面表面粗度は、試験後の相手材を410℃の電気炉で3時間加熱し、デシケーター内で2時間放冷し、この相手材の摺動面をMitutoyo社製表面粗度測定機 SURFTEST SV−600を使用し、JIS B 0601−1994に準拠して、測定することで得た。
懸濁重合により得られたポリテトラフルオロエチレン樹脂の粉末(ポリフロンPTFE M−18F、ダイキン工業株式会社製)90質量部と、充填材としてピッチ系異方性黒鉛糸(GRANOC XN−100−15M、日本グラファイトファイバー株式会社製)10質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合し、ポリテトラフルオロエチレン組成物を得た。
懸濁重合により得られたポリテトラフルオロエチレン樹脂の粉末(ポリフロンPTFE M−18F、ダイキン工業株式会社製)90質量部と、充填材としてピッチ系異方性黒鉛糸(GRANOC XN−100−15M、日本グラファイトファイバー株式会社製)9質量部、ピッチ系等方性黒鉛糸(クレカチョップ M2007S、株式会社クレハ製)1質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合し、ポリテトラフルオロエチレン組成物を得た。
実施例1と同様に、表1に記載の配合量にて混合した。
懸濁重合により得られたポリテトラフルオロエチレン樹脂の粉末(ポリフロンPTFE M−18F、ダイキン工業株式会社製)90質量部と、充填材としてピッチ系等方性黒鉛糸(クレカチョップ M2007S、株式会社クレハ製)10質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合し、ポリテトラフルオロエチレン組成物を得た。
例えば、実施例1〜4では、比較例1と比較して、相手材表面粗度変化率を大きくせずに、摩耗係数を小さくできていることがわかる。
また、実施例5〜8では、相手材表面粗度変化率が比較例2と同等になっているものの、比較例1及び比較例2のいずれと比較しても小さい摩耗係数を有する成型体が得られており、c軸方向の結晶子サイズが30.0Å以下の黒鉛糸と、c軸方向の結晶子サイズが100.0Å超の黒鉛糸を併用したことによる効果が十分に発揮されていることがわかる。
Claims (4)
- 融点が290℃以上である結晶性樹脂、
c軸方向の結晶子サイズが30.0Å以下の黒鉛糸(A)、及び、
c軸方向の結晶子サイズが100.0Å超の黒鉛糸(B)
を含み、
前記黒鉛糸(A)は、ピッチ系等方性黒鉛糸、ピッチ系等方性炭素糸、PAN系炭素糸、又は、PAN系黒鉛糸であり、
黒鉛糸(B)は、ピッチ系異方性黒鉛糸である
ことを特徴とする樹脂組成物。 - 黒鉛糸(A)及び黒鉛糸(B)の合計含有量が、前記樹脂組成物に対して、3〜40質量%である請求項1記載の樹脂組成物。
- 黒鉛糸(A)及び黒鉛糸(B)の含有量の質量比(A/B)が、1.0/9.0〜9.9/0.1である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
- 前記結晶性樹脂は、フッ素樹脂、及び、ポリエーテルケトン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2又は3記載の樹脂組成物。
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