JP3871506B2 - 耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、シールリングやチップシールなどに使用される耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物および対アルミニウム金属摺接用シール部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、四フッ化エチレン樹脂(以下、PTFEと略記する。)を主成分とする成形体は、弾性率が小さく、取扱いの容易性(ハンドリング)や安定したシール性および動摩擦係数が低く安定している特性を有しており、シールリングやチップシールのような摺動性シールとして用いられている。
【0003】
また、テトラフルオロエチレンと一部変性テトラフルオロエチレンとからなる変性テトラフルオロエチレン共重合体は、変性PTFE樹脂とも呼ばれる周知の樹脂である。
【0004】
そして、変性PTFE樹脂を主成分としてガラス繊維、炭素繊維などの繊維状充填剤や、黒鉛、マイカ、タルクなどの鱗片状充填剤を配合して弾性率を高め、耐クリープ性をある程度改善することができることが特開平5−239440号公報に開示されている。
【0005】
上記の充填剤配合の変性PTFE樹脂組成物は、摺動相手材がアルミニウム合金である場合に、高面圧の摺動条件でこれを損傷(異常摩耗)させることがあった。
【0006】
このような不具合を避けるためには、前述の充填剤の添加量を減らす試みがなされたが、耐クリープ性や耐摩耗性が低下するばかりで充分な効果が得られなかった。また、繊維状充填剤の一種である芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)は、アルミニウム合金に摺接してもこれを損傷しない特性の繊維であるが、耐クリープ性を改善する効果はないものである。
【0007】
また、アルミニウム合金の摺動摩耗を防止するために、モース硬度の低いウィスカを樹脂に配合する技術が、特開平6−184385号公報に開示されているが、開示された技術では所定のウィスカによる補強効果が充分でないので、高温雰囲気で高面圧の摺動条件では、成形体のクリープ変形率が非常に大きくなる欠点があり、また摩耗しやすいものであった。
【0008】
高圧下の使用条件でアルミニウム合金に摺接してもこれを損傷し難い組成物としては、炭素繊維を低硬度のウィスカ、膨張黒鉛または炭素粉末と併用して添加したものが特開平11−71493号公報等に開示されている。
【0009】
ところで、シールリングのような摺動性シール部材を装着した装置類は、装置全体の小型化や高性能化などの要請があり、以前より高圧の条件下でも良好に摺動できる特性が要求されるようになってきた。
【0010】
そして、特開平11−71493号公報に開示された充填剤の組み合わせでは、針状のウィスカと鱗片状の膨張黒鉛の形状的要因のためか、摺動面のアルミニウム合金の損傷を防止できない。また、炭素粉末は、耐クリープ性や耐摩耗性を向上させる効果が不充分であった。
【0011】
具体的なシール部材に要求されているシール性を具体的に説明すると、冷媒を代替フロンに変更する熱機関において、シールリング、チップシールの仕様は、冷媒の常温での蒸気圧が1MPaから1.7MPaになり、100℃を越える条件では5MPa以上になった。特に、近年注目されている炭酸ガスを冷媒としたコンプレッサーに至っては、10〜16MPaの仕様となっている。また、高層化する建築物の屋上の水タンクから、階下へ導通する配管内の水圧は、従来建築物における配管内水圧の2〜3倍にもなる。また、自動車等の車両用油圧装置については、その負荷が大きくなる傾向があり、特にトラックなどのパワーステアリングに係わる油圧系統では、シール部材の所要面圧が車両重量規制の緩和に伴って従来の14MPaを越える高圧になってきている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述のような従来のPTFE系樹脂組成物からなるシールリング、チップシールその他のシール部材では、クリープ変形量が大きくて、近年要求される高圧条件に耐えてシール性を充分に発揮させることはできず、特にせん断方向にクリープ変形し(連れ込まれ)やすくて異常摩耗も起こりやすいという問題点があった。
【0013】
そして、トラックやバスなどの自動車用油圧装置においては、100℃程度の高温条件でシール性が求められるので、上記したようなクリープ変形は確実に起こると考えられ、これを防止する手段が要望されている。
【0014】
また、油圧シリンダなどに装着されるシールリングなどの摺接用シール部材においては、通常、軸やシリンダのいずれかをアルミニウム合金で形成して切削加工性を確保すると共に装置の軽量化を図っているが、このようなシール部材で潤滑油に接して摺動するアルミニウム金属面は、潤滑油に接しない無潤滑条件(いわゆる乾燥摩擦条件)で摺動する場合に比べ、却って損傷され易いものである。
【0015】
なぜなら、高面圧によって摺動面に潤滑油が充分に供給されないことがあり、また何らかの理由で摺動面に非常に希薄な油膜が形成されている場合には、乾燥摩擦面で通常に起こるPTFE組成物から摺動相手材への潤滑物質の移着が起こらないからである。このような場合に摺動面に固体潤滑剤または液体潤滑剤のいずれも供給されなくなり、アルミニウム金属は摩耗損傷することになる。
【0016】
一方、フロン代替冷媒、空気、ヘリウム、天然ガスなどの各種ガスを圧縮するコンプレッサーでは、常温で面圧が10MPaに達しない使用条件が予定されていても、実際には無潤滑シールが摩擦発熱によって摺動面および雰囲気温度が100℃以上で使用される場合があり、この場合には無潤滑シールがクリープ変形してシール性が充分に発揮されないことが予想される。
【0017】
特に、シール部材に摺接する相手材が熱伝導率の低いステンレス鋼の場合には、相手材へ潤滑物質は移着するが、ステンレス鋼の蓄熱性により摺動面および雰囲気温度が高くなる。また、相手材がアルマイトなどの皮膜処理を施したアルミニウム合金である場合は、表面粗さが小さいので移着が起こらず、皮膜が損傷してアルミニウム合金基材まで傷つけることになる。
【0018】
そこで、本願の各請求項に係る発明の課題は、上記した問題点を解決して15MPaに達するかまたはそれ以上の高面圧での摺動条件においても、クリープ変形量が小さくシール性を充分に発揮でき、しかも潤滑油の供給される摺動状態で摺動相手のアルミニウム合金材を摩耗損傷しない特性のある耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物を提供することである。
【0019】
また、本願の各請求項に係る他の課題としては、常温で面圧が4MPa以上の無潤滑摩擦条件において、シール性が充分に発揮できるようにクリープ変形を小さくし、しかもアルマイトなどで皮膜処理したアルミニウム合金やステンレス鋼に摺接した場合においても摺動面を摩耗損傷させない耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物とすることである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、テトラフルオロエチレンと一部変性テトラフルオロエチレンとの共重合体からなる変性四フッ化エチレン樹脂100体積部に対し、炭素繊維5〜40体積部、モース硬度4以下の粒状無機化合物2〜30体積部を配合してなる耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物としたのである。この耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物は、100℃雰囲気にてASTM D621の圧縮クリープ特性の24時間最大変形率が15%以下となる物性を有するものであることが好ましい。
【0021】
また、前記の従来のシール部材に関する課題を解決するために、上記した耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物の成形体を対アミニウム金属摺接用シール部材としたのである。
【0022】
前記変性四フッ化エチレン樹脂は、下記の化2の式で表わされる変性四フッ化エチレン樹脂を採用することができる。
【0023】
【化2】
Figure 0003871506
【0024】
(式中、m、nは整数、m>>nであり、Xはパーフルオロアルキルエーテル基またはフルオロアルキル基その他のフルオロアルキルを有する側鎖基である。)
前記の炭素繊維は、平均繊維長0.03〜1mm、アスペクト比5〜100の炭素繊維を採用することが好ましい。
【0025】
前記の粒状無機化合物は、粒状の硫酸カルシウムまたは粒状の酸化亜鉛を採用することが好ましい。
【0026】
変性四フッ化エチレン樹脂は、テトラフルオロエチレンと一部変性テトラフルオロエチレンとの共重合体からなり、一部変性テトラフルオロエチレンであるコポリマーの分子構造は、TFE分子構造から変性部分の分子構造が突き出しているため、コポリマー同士の突出部分が引っ掛かりを持つようになっている。
【0027】
そのため、変性四フッ化エチレン樹脂は、通常の(変性していない)PTFEよりも分子鎖同士が滑り難く、強度および弾性係数が高く、耐クリープ性にも優れている。
【0028】
そして、この発明では繊維状補強材として、炭素繊維と所定硬度のウィスカを併用することにより、炭素繊維は変性PTFEの全体をマクロ的に補強し、ウィスカは前記繊維間をミクロ的に補強し、これら2種類の繊維補強材が互いの弱点を補うように作用して、組成物の耐クリープ性および耐摩耗性を相乗的に向上させていると考えられる。
【0029】
【発明の実施の形態】
この発明に用いる変性四フッ化エチレン樹脂は、前記化2の式で表わされる重合体からなり、この樹脂は、PTFE本来の特性を保持していて、溶融加工性を有しない程度に変性されたPTFEであり、変性量を多くした場合のテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のような溶融成形可能な熱可塑性フッ素樹脂とは、コモノマーが異なるものである。
【0030】
すなわち、変性四フッ化エチレン樹脂を構成するコモノマーの組成を表わす化2の式中のm、nは、m>>nであり、上記したようにPTFEが本来有する非溶融特性を実質上保持するように、整数値nに比べて整数値mの値はかなり大きいm>nの関係である。
【0031】
化2の式中のXは、TFEと共重合可能な1価の基であり、この基は成形温度で熱分解されないものであれば特に基の種類を限定使用したものではなく、例えば−O−Rf(Rf:パーフルオロアルキル基)で示されるパーフルオロアルキルエーテル基、−CF3などのフルオロアルキル基、またはその他のフルオロアルキルを有する側鎖基を採用できる。
【0032】
このような変性四フッ化エチレン樹脂の重合法は、モールディングパウダーを重合する場合に採用される懸濁重合法、ファインパウダーを重合する乳化重合法の何れでもよく、分子量は約50万から1000万であることが好ましく、より好ましくは100万から700万である。
【0033】
上述の条件を満足する市販の変性四フッ化エチレン樹脂の例としては、三井・デュポンフロロケミカル社製:テフロンTG−70J、ダイキン工業社製:ポリフロンM111、同社製:ポリフロンM112、ヘキスト社製:ホスタフロンTFM1600、同社製:ホスタフロンTFM1700などが挙げられる。
【0034】
この発明に用いる炭素繊維は、その原材料からピッチ系またはPAN系のいずれのものであってもよいが、2000℃またはそれ以上の高温で焼成されて黒鉛(グラファイト)化されたものよりも、1000℃程度で焼成された炭化品のものが、摺動相手のアルミニウム合金を摩耗損傷しにくいので好ましい。炭素繊維の大きさは、平均繊維長0.03〜1mm、好ましくは0.05〜0.2mm、平均繊維径はφ20μm以下、好ましくはφ5〜15μm、アスペクト比は5〜100、好ましくは5〜30である。上記した範囲未満の平均繊維長または平均繊維径の炭素繊維では、基材の補強効果が乏しくて組成物に充分な耐クリープ性や耐摩耗性の補強効果が得られず、前記範囲を越える平均繊維長または平均繊維径のものでは、組成物の成形性が阻害されると共に、摺動相手のアルミニウム合金を摩耗損傷する可能性も高くなって好ましくない。
【0035】
上記した条件を満足する市販の炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維として、呉羽化学工業社製:クレカミルド M101S、同M107S、同M201S、同M207Sなど、または大阪ガスケミカル社製:ドナカーボン S241、同S244、同SG241、同SG241、同SG244などがある。また、同様のPAN系炭素繊維として、東邦レーヨン社製:ベスファイト HTA−CMF0160−OH、同HTA−CMF0040−OHなど、または東レ社製:トレカ MLD−30、同MLD−300などがある。
【0036】
次に、この発明に用いるモース硬度4以下の粒状無機化合物は、樹脂組成物の特性改善のための添加物として周知の無機化合物のうち、崩壊しやすいように所定硬度条件を満足する粒状のものであればよく、例えば硫酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウムなどからなる粉粒状無機化合物が挙げられる。ウィスカによるアルミニウム合金の摺動摩擦による損傷性を考慮すると、モース硬度は3以下であることが好ましい。
【0037】
粒状無機化合物の平均粒径は、100μm以下(例:1〜100μm)であり、好ましくは10〜50μmのものである。粒径1μm未満の極端に小粒径の無機化合物を用いると、組成物に充分な耐クリープ性および耐摩耗性が備わらないからである。また、100μmを超える大粒径の無機化合物を組成物に配合すると、ミクロ的な補強効果が得られないので好ましくない。
【0038】
このようにPTFE組成物中に所定硬度の粒状無機化合物と炭素繊維とを併用して添加すると、炭素繊維は基材を比較的粗いネットワークで補強し、粒状無機化合物は、前記ネットワークを縫うようにミクロ的に補強するので、組成物の耐クリープ性および耐摩耗性が著しく向上すると考えられる。また、粒状無機化合物は、炭素繊維に比べて小さいので、摩擦面での分布密度が高くなる。そして、このような所定モース硬度の粒状無機化合物によって、摩擦面における大部分の摩擦せん断力を受けるため、摺動相手のアルミニウム合金(JIS H2118で規定されるダイカスト用アルミニウム合金など)は、摩耗および損傷され難くなるのである。
【0039】
以上の条件を満足していてより好ましい粒状無機化合物の具体例としては、硫酸カルシウムの無水塩型のもの、または半水塩型のものが挙げられ、特に好ましいものは無水塩型のものである。また、硫酸マグネシウムは、無水塩型のもの、または七水和物のものが挙げられるが、無水塩型のものが好ましい。
【0040】
この発明に使用可能な粒状無機化合物(市販品)を列記すると、以下の通りである。
▲1▼[硫酸カルシウム(モース硬度2〜3)]
ノリタケ社製:D−101A(無水塩型)、D−200(無水塩型)、FT−2(半水塩型)
▲2▼[酸化亜鉛(モース硬度4)]
正同化学工業社製:酸化亜鉛1種、2種、3種
▲3▼[炭酸カルシウム(モース硬度3)]
日窒工業社製:NA600
▲4▼[硫酸マグネシウム(モース硬度2〜3)]
和光純薬社製:試薬
前記したように、変性PTFE樹脂100体積部に対し、炭素繊維の配合割合は、5〜40体積部であり、モース硬度4以下の粒状無機化合物の配合割合は、2〜30体積部である。
【0041】
なぜなら、炭素繊維の配合割合が40体積部を越えると、成形性が悪くなり、摺動相手のアルミニウム金属を摩耗損傷する可能性も高くなるからである。炭素繊維の配合割合が5体積部未満では組成物を補強する効果が乏しくなり、充分な耐クリープ性や耐摩耗性が得られなくなる。
【0042】
また、粒状無機化合物の配合割合が、30体積部を越える多量では、組成物の成形性が悪くなり、耐摩耗性も所要程度より低下する。また、粒状無機化合物の配合割合が、2体積部未満では組成物に所要の補強効果がなくなり、アルミニウム金属を摩耗損傷する可能性も高くなり、所要の摺動特性が得られないからである。
【0043】
因みに、この発明の効果を阻害しないならば、以下に列挙するような周知の樹脂用添加材を配合してもよい。
(1)着色剤:炭化粉末、酸化チタン、コバルトブルーなど
(2)電気特性向上剤:炭化粉末、酸化亜鉛、酸化チタンなど
(3)熱伝導性向上剤:黒鉛、金属酸化物粉末。
【0044】
以上述べた諸原材料を混合し、混練する手段は、特に限定するものではなく、粉末原料のみをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、リボンブレンダー、レディゲミキサー、ウルトラヘンシェルミキサーなどにて乾式混合すればよい。さらに、湿式法などにより成形方法に合致する所定粒径に造粒することが好ましい。
【0045】
この発明の耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物でもってシールリング、チップシールなどの対アルミニウム金属摺接用シール部材を成形するには、樹脂成形に一般的に採用される以下の成形法を採用できる。たとえば、フリーベーキング法、ホットモールディング法、アイソスタチックモールディング、連続ラム押出し、ペースト押出し法、ダイレクトモールドなどである。
【0046】
なお、この発明の耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物からなる成形品の適用品としては、炭酸ガス、天然ガス、空気、ヘリウムガス、フロン代替冷媒などが使用されているコンプレッサー用シール、高層マンションまたは公共ビルディングなどの高層建築物用の高水圧シール、トラック、バス、自動車などのパワーステアリングシールなどが挙げられる。さらに、ショベルカー、フォークリフト、ブルドーザーまたは釘打ち機等の建設機械関連のシール軸受としても使用可能である。
【0047】
また、安全性を考慮するならば、前述の100℃雰囲気で負荷圧力が15MPaを越えるようなシール用途ばかりでなく、より穏やかな条件で用いるシール部材であってもよい。また、接触する相手の材質が、鋼、鋳鉄などのアルミニウム合金より硬度の高い材質の場合であっても、前記組成物をシール部材等の成形体として使用可能である。
【0048】
【実施例および比較例】
実施例および比較例に用いる原材料を一括して以下に示す。なお、原材料に括弧書きした番号は、表中の原材料番号と一致している。
(1)変性四フッ化エチレン樹脂−1[変性PTFE−1]
三井デュポンフロロケミカル社製:テフロンTG70J
(1')変性四フッ化エチレン樹脂−2[変性PTFE−2]
ダイキン工業社製:ポリフロンM111
(1'')変性四フッ化エチレン樹脂−3[変性PTFE−3]
ヘキスト社製:ホスタフロンTFM1700
(2)四フッ化エチレン樹脂[PTFE]
三井デュポンフロロケミカル社製:テフロン7J
(3)炭素繊維(ピッチ系)−1[CF−1]
呉羽化学工業社製:クレカミルド M101S(炭素化、平均繊維長100μm、平均繊維径14.5μm)
(4)炭素繊維(PAN系)−2[CF−2]
東邦レーヨン社製:ベスファイト HTA−CMF0160−OH(炭素化、平均繊維長160μm、平均繊維径7μm)
(5)炭素繊維(ピッチ系)−3[CF−3]
呉羽化学工業社製:クレカミルド M107S(炭素化、平均繊維長700μm、平均繊維径14.5μm)
(6)炭素繊維(ピッチ系)−4[CF−4]
呉羽化学工業社製:クレカミルド M101T(炭素化、平均繊維長100μm、平均繊維径18μm)
(7)炭素繊維(ピッチ系)−5[CF−5]
呉羽化学工業社製:クレカミルド M201S(黒鉛化、平均繊維長100μm、平均繊維径14.5μm)
(8)硫酸カルシウム[粒状硫酸カルシウム]
ノリタケ社製:D101A(無水塩型)(モース硬度2〜3、平均粒径25μm)
(9)酸化亜鉛[粒状酸化亜鉛]
正同化学工業社製:酸化亜鉛2種、(モース硬度4、粒径45μm以下)(10)チタン酸カリウムウィスカ[チタン酸カリウムウィスカ]
大塚化学社製:ティスモN(モース硬度4、平均繊維長10〜20μm)(11)硫酸カルシウムウィスカ[硫酸カルシウムウィスカ]
大日精化工業社製:フランクリンファイバーA−30(無水塩型)(モース硬度2〜3、平均繊維長50〜60μm)
(12)黒鉛[黒鉛] 日本黒鉛社製:ACP
(13)アルミナ[アルミナ粉末]
アドマテックス社製:アドマファインAO−509(モース硬度9、平均粒径10μm)
【0049】
〔実施例1〜10、比較例1〜7〕
表1および表2に示す配合割合で原材料をヘンシェル乾式混合機を用いてドライブレンドし、プレス機を用いてφ30×100(mm)の棒素形材を予備成形し、370℃で4時間フリーベーキング法により焼成した。これらの素材を切削加工してφ17×φ21×4(mm)の摩擦摩耗試験機用のリング状試験片、12.7×12.7×12.7(mm)の圧縮クリープ用の試験片を作製した。
【0050】
摩擦摩耗試験としては、▲1▼油潤滑摩擦摩耗試験および▲2▼無潤滑摩擦摩耗試験を行ない、▲1▼の試験では、スラスト型試験機を用い、試験条件は100℃のATFオイル中に摺接相手材のアルミニウム合金(ADC12:JIS H2118 12種)、周速6m/分、面圧15MPaで10時間供試し、試験終了直前の動摩擦係数、樹脂試験片の摩耗量、相手材の摩耗量を表3および表4に示した。
【0051】
また、▲2▼の無潤滑摩擦摩耗試験ではスラスト型試験機を用い、試験条件は大気中に摺接相手材の硬質アルマイト(下地はA5056)、周速32m/分、面圧6MPaで20時間供試し、試験終了直前の動摩擦係数、樹脂試験片の摩耗量、相手材の摩耗量を表3または表4に示した。
【0052】
圧縮クリープ試験は、ASTM D621に準拠し、常温および100℃の雰囲気で面圧13.7MPaで圧縮し、24時間後の最大変形率(%)と、さらにその後24時間経過後の変形率(永久変形率:%)を求めた。
【0053】
【表1】
Figure 0003871506
【0054】
【表2】
Figure 0003871506
【0055】
【表3】
Figure 0003871506
【0056】
【表4】
Figure 0003871506
【0057】
表3および表4の結果からも明らかなように、変性PTFEに炭素繊維などを配合した比較例1〜5は、100℃での圧縮クリープ試験における最大変形率が15%以下ではあったが、摩擦摩耗試験で相手材を著しく損傷した。また、充填剤として粒状無機化合物のみを配合した比較例6は、摺動相手材を摩耗損傷させないが、耐摩耗性および耐クリープ性が共に劣っていた。また、変性PTFEに代えてPTFEを配合した比較例7は、100℃での圧縮クリープ試験における最大変形率が大きく、不満足な結果であった。
【0058】
これに対して、実施例の組成物は、100℃雰囲気にてASTM D621の圧縮クリープ特性の24時間最大変形率が15%以下であり、オイル雰囲気条件での摩擦摩耗試験で相手材(ADC12)をほとんど損傷することなく、低摩擦特性および耐摩耗性に優れていた。
【0059】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように、変性四フッ化エチレン樹脂に、炭素繊維、および所定硬度の粒状無機化合物をそれぞれ所定量配合した樹脂組成物としたので、15MPaを越えるような高面圧での摺動条件において、クリープ変形量が小さくシール性を充分に発揮でき、しかも潤滑油に接する摺動状態で、摺動相手のアルミニウム合金材を摩耗損傷しない耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物であるという利点がある。
【0060】
また、この発明の耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物は、常温で面圧6MPa以上の潤滑油に接しない無潤滑条件(いわゆる乾燥摩擦条件)の摺動条件において、クリープ変形が小さくてシール性を充分に発揮し、しかも摺接する相手材が、熱伝導率の低いステンレス鋼や表面粗さの小さいアルマイト等の皮膜処理をしたアルミニウム合金等である場合にも相手材を摩耗損傷しないという利点もある。

Claims (7)

  1. 下記の化1の式で表わされる変性四フッ化エチレン樹脂100体積部に対し、炭素繊維5〜40体積部、平均粒径10〜50μmでありかつモース硬度4以下の硫酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウムおよび硫酸マグシウムからなる群から選ばれる一種以上の粒状無機化合物2〜30体積部を配合してなる耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物。
    Figure 0003871506
    (式中、m、nは整数であり、PTFEが本来有する非溶融特性を実質上保持するように整数値nに比べて整数値mの値はかなり大きいm>nの関係である。Xはパーフルオロルキルエーテル基またはフルオロアルキル基を有する側鎖基である。)
  2. 性四フッ化エチレン樹脂100体積部に対し、炭素繊維5〜40体積部、モース硬度4以下の粒状無機化合物2〜30体積部を配合してなり、100℃雰囲気にてASTMD621の圧縮クリープ特性の24時間最大変形率が15%以下である請求項1に記載の耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物。
  3. 炭素繊維が、平均繊維長0.03〜1mm、アスペクト比5〜100の炭素繊維である請求項1または2に記載の耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物。
  4. 硫酸カルシウムが、無水塩型の硫酸カルシウムである請求項1〜のいずれか1項に記載の耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物。
  5. 硫酸マグネシウムが、無水塩型の硫酸マグネシウムである請求項1〜のいずれか1項に記載の耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物の成形体からなる対アルミニウム金属摺接用シール部材。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の耐圧摺動性四フッ化エチレン樹脂組成物からなるシールリングまたはチップシール。
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