JP4959609B2 - 極低温用耐摩耗性材料 - Google Patents
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Description
このPTFEに対して、ブロンズ粉および炭素繊維を添加して耐圧性、耐自己摩耗性および耐対金属摩耗性を向上した自動車の動力舵取り装置用オイルシールリングが下記特許文献1に開示されている。
同様に、下記特許文献2にも、PTFEに対してブロンズ粉および炭素繊維を添加した圧縮機用チップシールが開示されている。
一方、下記特許文献3には、母材がポリエーテルエーテルケトンとされているが、PTFEを添加した上で、酸化亜鉛ウィスカを添加する静電気拡散性摺動部材用樹脂組成物が開示されている。
すなわち、本発明にかかる極低温用耐摩耗性材料は、金属材料に対して摺動摩擦する部分に用いられる極低温用耐摩耗性材料であって、主成分とされる35重量%以上のポリテトラフルオロエチレンと、5重量%以上30重量%以下のブロンズ粉と、5重量%以上15重量%以下の炭素繊維と、5重量%以上20重量%以下の酸化亜鉛ウィスカと含むことを特徴とする。
さらに、本発明では、炭素繊維を添加することにより、より大きな強度が実現される。
炭素繊維の脱落を防止するために、酸化亜鉛ウィスカを添加する。この酸化亜鉛ウィスカは、さらに、例えば液体水素温度(20K)といった極低温環境下であっても、ブロンズ粉よりもPTFEの金属材料に対する移着効果を促進させる機能を備えている。
ブロンズ粉は、5重量%を下回ると所望の強度が得られないので5重量%以上添加することが好ましい。一方、ブロンズ粉は、30重量%を超えても強度および移着効果について大幅な向上が期待できないので、30重量%以下が好ましい。なお、ブロンズ粉は、20重量%程度が最も好ましい。
炭素繊維は、5重量%を下回ると強度の向上が得られないので5重量%以上が好ましい。一方、炭素繊維は、15重量%を超えると脱落が多くなり、脱落した炭素繊維が極低温用耐摩耗性材料を摩耗させることになるので、15重量%以下が好ましい。なお、炭素繊維は、10重量%程度が最も好ましい。
酸化亜鉛ウィスカは、5重量%を下回ると炭素繊維の脱落防止機能が得られないので、5重量%以上が好ましい。一方、酸化亜鉛ウィスカは、20重量%を超えても強度および移着効果について大幅な向上が期待できないので、20重量%以下が好ましい。なお、酸化亜鉛ウィスカは、10重量%程度が最も好ましい。
一方、炭素繊維による強度向上を考慮すると、少なくとも酸化亜鉛ウィスカと同等量の炭素繊維が添加されていることが好ましいので、酸化亜鉛ウィスカに対する炭素繊維の重量比は1.0以上が好ましい。
図1には、本実施形態にかかるシールリング(極低温用耐摩耗性材料)が好適に用いられる液体水素昇圧ポンプ1が示されている。
液体水素昇圧ポンプ1は、シリンダ5内に配置されたピストン7を備えている。シリンダ5は、低温環境での使用を考慮してSUS316Lが好適に用いられる。
ピストン7は、モータ9によって駆動され、シリンダ5内を往復動(矢印A参照)する。ピストン7の外周には、シールリング3が上下方向(往復動方向)に所定間隔を有して3つ設けられている。なお、シールリングの数は、2以下であっても良いし、4以上であってもよい(典型的には3〜5つ用いられる)。シールリング3は、C字状の円環形状とされている。シールリング3によって、ピストン7下方の圧縮空間10と、ピストン7上方の大気圧空間12とがシールされるようになっている。
シリンダ5の内周壁を形成するライナは、金属材料とされ、好ましくはステンレス(具体的にはSUS440C)、またはコバルトを主成分としクロム、タングステン等が添加された合金(例えばステライト(登録商標))が用いられる。このライナに対してシールリング3が往復摺動する。
シリンダ5内の圧縮空間10に連通するように、吸入通路14及び吐出通路15が形成されている。吸入通路14には、所定圧力差にて開閉動作する吸入弁17が設けられている。この吸入弁17は、吸入時に開となり液体水素を吸込み、圧縮時に閉となる。吐出通路15には、所定圧力差にて開閉動作する吐出弁18が設けられている。この吐出弁18は、吸入時に閉となり、圧縮時に開となり圧縮された液体水素を吐出する。
さらに大きな強度を実現するため、炭素繊維を添加することとした。
また、炭素繊維の脱落を防止するために、酸化亜鉛ウィスカを添加する。この酸化亜鉛ウィスカは、さらに、液体水素温度(20K)といった極低温環境下であっても、ブロンズ粉よりもPTFEの金属材料に対する移着効果を促進させる機能を備えている。
ブロンズ粉の組成は、Snが2〜15重量%、好ましくは3〜12重量%、Cuが85〜98重量%、好ましくは88〜92重量%とされている。
炭素繊維としては、ピッチ系が好適に用いられ、繊維長が10〜1000μm、好ましくは50〜200μm、繊維径が1〜50μm、好ましくは7〜15μmとされている。
酸化亜鉛ウィスカは、核部とこの核部から4軸方向に延びた針状結晶部からなるテトラポット形状とされ、特許文献3に開示されたものが好適に用いられる。酸化亜鉛ウィスカは、パナテトラという商品名の製品として入手することができる。針状結晶部の長さは3〜200μm、好ましくは5〜50μmとされ、核部の径は0.1〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとされている。
金属部材22の材料は、ライナに相当する材料としてSUS440Cを用いた。
摩耗測定時間は18時間とし、摩耗測定距離は25kmとした。
以下に示す表1及び図3には、試験結果が示されている。
比較例2は、母材となるPTFEにブロンズ粉を50重量%、酸化亜鉛ウィスカを10重量%添加したものである。比較例2では、液体窒素中および液体水素中にて10MPaの面圧を加えた試験を行った。液体窒素中の10MPaでの比摩耗量が比較例1とそれほど変わらなかったので、液体窒素中および液体水素中にて20MPaの面圧を加えた試験は行わなかった。
比較例3は、母材となるPTFEにブロンズ粉を30重量%、炭素繊維を10重量%添加したものである。比較例3では、液体窒素中にて20MPaの面圧を加えた試験のみを行った。これは、比較例1よりも大きな比摩耗量となったので、それ以上の試験は不要と判断したためである。
比較例4は、母材となるPTFEにブロンズ粉を20重量%、炭素繊維を20重量%、酸化亜鉛ウィスカを10重量%添加したものである。比較例4では、液体窒素中にて10MPaの面圧を加えた試験のみを行った。これは、比較例1よりも大きな比摩耗量となったので、それ以上の試験は不要と判断したためである。
一方、炭素繊維は、脱落すると自己摩耗を引き起こすおそれがある。このため、実施例1では、炭素繊維を保持して脱落防止の機能を有すると考えられる酸化亜鉛ウィスカを添加することとした。ただし、比較例4のように、酸化亜鉛ウィスカに比べて炭素繊維の量が重量比で2倍程度まで多くなると、酸化亜鉛ウィスカによる脱落防止機能の限界を超えて炭素繊維が脱落してしまい、比摩耗量が多くなったものと考えられる。したがって、実施例1のように、炭素繊維と酸化亜鉛ウィスカとの重量比は同程度とするのが好ましいといえる。
また、比較例1と比較例2とを比べれば分かるように、ブロンズ粉の減少による強度低下を酸化亜鉛ウィスカによって補うことができる。
3 シールリング(極低温用耐摩耗性材料)
5 シリンダ
7 ピストン
Claims (4)
- 金属材料に対して摺動摩擦する部分に用いられる極低温用耐摩耗性材料であって、
主成分とされる35重量%以上のポリテトラフルオロエチレンと、
5重量%以上30重量%以下のブロンズ粉と、
5重量%以上15重量%以下の炭素繊維と、
5重量%以上20重量%以下の酸化亜鉛ウィスカとを含み、
液体窒素温度以下で用いられることを特徴とする極低温用耐摩耗性材料。 - 金属材料に対して摺動摩擦する部分に用いられる極低温用耐摩耗性材料であって、
主成分とされる35重量%以上のポリテトラフルオロエチレンと、
5重量%以上30重量%以下のブロンズ粉と、
5重量%以上15重量%以下の炭素繊維と、
5重量%以上20重量%以下の酸化亜鉛ウィスカとを含み、
液体水素温度付近で用いられることを特徴とする極低温用耐摩耗性材料。 - 前記酸化亜鉛ウィスカに対する前記炭素繊維の重量比が、1.0以上1.5以下とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の極低温用耐摩耗性材料。
- ピストンの外周に設けられ、前記金属材料とされたライナとの間で往復摺動するシールリングとして用いられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の極低温用耐摩耗性材料。
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