JP4046875B2 - すべり軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は四フッ化エチレン系樹脂樹脂組成物を成形してなるすべり材と、潤滑性被膜が表面に形成されてなる相手材との組み合わせによるすべり軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
四フッ化エチレン樹脂は耐熱性、耐薬品性、低摩擦性に優れた自己潤滑性材料として知られている。一方、耐摩耗特性、耐圧縮特性に劣ることから、ガラス繊維、炭素繊維、各種ウィスカなどの短繊維類、各種充填剤、補強剤、固体潤滑剤などを配合した四フッ化エチレン樹脂組成物が実用化されている(特公平03-2385 等)。
また、すべり軸受装置を構成する相手材としてアルミニウム合金あるいはステンレス等の軟質材あるいは樹脂材が用いられる場合、四フッ化エチレン樹脂組成物を成形してなるすべり材は、相手材を攻撃し、異常摩耗を発生させる場合がある。これは主にガラス繊維、炭素繊維等の繊維状充填剤の先端が軟質材を攻撃し、さらにその摩耗粉が研磨粉の働きをして悪化させると考えられている。対策として、繊維状充填剤を摺動方向に対して水平に並ぶように成形時に配向させる方法や、特に炭素繊維においては出発原料の異なるピッチ系、パン系の差、引張り弾性率の差および範囲限定、アスペクト比の限定(特開平02-219895 )、あるいは熱処理温度の限定等検討されたがいずれも十分でなかった。
比較的相手材への攻撃性が少ない有機繊維物であるアラミド繊維も、高荷重が負荷される条件では相手材を攻撃する傾向があり、また、耐圧縮特性への寄与効果がほとんどない。このため、製品の最低必要なレベルの耐圧縮特性を得ようとすれば別の充填剤の添加が必要となり、結局はその添加した充填剤が相手材を攻撃するという問題があった。
次に、りん片状の充填剤としてマイカ、タルク、黒鉛等も試されたが、相手材を攻撃することに改善はなく、球状充填剤として全芳香族ポリエステル樹脂やポリイミド樹脂硬化粉砕粉では相手材を攻撃することはなかったが耐摩耗性に対する補強性が十分に望めなかった(特開平04-258653 )。
上述したように、四フッ化エチレン樹脂組成物を成形してなるすべり材と従来の相手材との組み合わせによるすべり軸受装置は、高荷重の条件下では相互に相手材への攻撃性が少なく、かつ摺動特性に優れたものが得られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、乾燥摩擦条件での高分子材料をマトリクス材とするすべり材の摩擦係数は荷重に対する依存性が大きく、また、相手材種および相手材の表面あらさにも強く影響される。例えば、四フッ化エチレン樹脂組成物を成形してなるすべり材の場合、 15MPaの荷重で約 0.1、 30MPaの荷重で約 0.06 が摩擦係数の最小値とされている。
しかし、近年では装置の小型軽量化が求められ、それとともに用いられるすべり軸受装置もより低い摩擦係数が求められている。例えば、コンプレッサなどでは媒体の高圧化および駆動力の低減を目標とし、四フッ化エチレン樹脂組成物を成形してなるすべり材であっても、その摩擦係数を従来の約 1/2にするとともに、相手材への非攻撃性にも優れた四フッ化エチレン樹脂組成物を成形してなるすべり材を用いたすべり軸受装置が求められているが、高荷重の条件に使用できるすべり軸受装置はいまだ得られていないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、高荷重下、例えば 30MPaの荷重下で約 0.03 の摩擦係数を有するすべり材と相手材からなるすべり軸受装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、すべり材と、このすべり材と摺動する相手材とを備え、回転軸、直線または曲線上を往復する部分のすべり運動を拘束し、かつその負荷を受けて支持する機械要素を含むすべり軸受装置であって、上記すべり材は、四フッ化エチレン単位と、四フッ化エチレンのフッ素が他の有機基で置換された置換四フッ化エチレン単位とから構成される変性四フッ化エチレン樹脂100体積部に対して繊維状配合剤および粉末状配合剤の少なくとも一つの配合剤を5〜40体積部配合する樹脂組成物を成形してなり、上記相手材は、エポキシ樹脂またはフラン樹脂から選ばれた少なくとも一つの樹脂をマトリクスとする樹脂100体積部に対して、平均分子量50,000以下の含フッ素重合体またはポリシロキサンから選ばれた少なくとも一つの低分子量潤滑成分を5〜40体積部配合した潤滑性被膜が表面に形成されてなることを特徴とする。
また、上記すべり材と、このすべり材と摺動する相手材とを 30MPaの荷重下で摺動させたときに 0.05 以下の摩擦係数を有することを特徴とする。
【0007】
配合される粉末状配合剤が球状であることを特徴とする。
また、上記熱硬化性樹脂がフラン樹脂であることを特徴とする。
【0008】
上記すべり軸受装置において、四フッ化エチレン系樹脂を主成分とする樹脂に配合される配合剤が炭素質またはグラファイト質であることを特徴とする。
【0010】
本発明のすべり軸受装置は、すべり材が四フッ化エチレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物を成形してなり、相手材が熱硬化性樹脂をマトリクスとする樹脂内に低分子量の潤滑成分を配合した潤滑性被膜が表面に形成されることにより、 30MPa程度の高荷重下でも約 0.03 の摩擦係数を得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
四フッ化エチレン系樹脂を主成分とする樹脂の中で、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)は四フッ化エチレン(テトラフルオロエチレン)の単独重合体であって、アルゴフロン(Ausimont社製)、テフロン(Du Pont社製)、フルオン(ICI社製)、ポリフロン(ダイキン工業社製)等の商標名で市販されているフッ素樹脂であり、 310〜 390℃で軟化して圧縮成形および押出成形は可能であるが射出成形は不可能な樹脂である。さらに本発明においてPTFEは、粉状のものが均質に混合し易く好ましい。
【0012】
本発明においては、すべり軸受面の許容面圧を考慮し、変性四フッ化エチレン系樹脂(変性PTFE)が好ましい。
本発明に好適な変性PTFEは、四フッ化エチレン単位と、四フッ化エチレンのフッ素が他の有機基(−X)で置換された置換四フッ化エチレン単位とから構成される変性PTFEである。その一般式を化1に示す。有機基(−X)は特に限定するものではないが、パ−フルオロアルキルエーテル基あるいはフルオロアルキル基などが好ましい。化1に示す変性PTFEを用いた場合、耐クリープ特性が向上し、すべり面における許容面圧が 30MPa程度まで許容される。それに伴い、すべり面を小さくでき、すべり軸受装置を含む装置の小型化が可能となる。
【化1】
【0013】
PTFE、変性PTFEの重合方法は一般的なモールディングパウダーを重合する懸濁重合法、ファインパウダーを重合する乳化重合法のいずれも採用できるが、分子量は約 50 万から 1,000万が好ましく、さらに限定すれば 100万から 700万が好ましい。
上市されている変性PTFEを具体的に例示すると、テフロン TG70J(三井・デュポンフロロケミカル社製)、ポリフロンM111、M112(いずれもダイキン工業社製)、ホスタフロンTFM1600、TFM1700(いずれもHoechst社製)等を挙げることができる。
【0014】
PTFE、変性PTFEに配合することのできる配合剤は繊維状配合剤または粉末状配合剤単独あるいは混合物を用いることができる。以下に代表的な配合剤の例を述べる。
繊維状配合剤はガラス繊維あるいは炭素繊維が挙げられる。炭素繊維はピッチ系あるいはパン系炭素繊維のいずれでもよい。
炭素繊維の繊維長は 0.05mm以上、0.1mm以下のミルド繊維であることが好ましい。また、糸種は特に限定しないが、 2,000℃焼成あるいはそれ以上の温度での処理品(黒鉛化品)より 1,000℃焼成品(炭化品)の方が好ましい。また、低弾性を狙った低温焼成品あるいは高弾性を狙った高温焼成品いずれも使用することができる。繊維径はφ 20 μm 以下、好ましくは、φ 5μm 〜φ 15 μm であり、アスペクト比は 5〜 80 、好ましくは 20 〜 50 である。
上市されている炭素繊維を具体的に例示すると、ピッチ系炭素繊維としてクレカミルド M101S、M201S(いずれも呉羽化学社製)、ドナカーボン S241、S244(いずれも大阪ガスケミカル社製)、パン系炭素繊維としてベスファイト HTA−CMF0160−0H、HTA−CMF0070−0H(いずれも東邦レーヨン社製)等を挙げることができる。
【0015】
繊維状配合剤の他の例として、短繊維の各種ウィスカを挙げることができる。
ウィスカは、硫酸カルシウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硫酸マグネシウムウィスカ等が挙げられる。
上述の炭素繊維とウィスカとを併用すれば、炭素繊維は基材を大きく補強するのに対して、これらのウィスカはミクロ補強の役割を果たすので、すべり材の耐クリープ性、耐摩耗性が著しく向上する。また、ウィスカは炭素繊維に比べて短繊維であるため摩擦面での存在割合が大きく、ほとんどの摩擦せん断を受け持つために、潤滑性被膜が形成された相手材を損傷しない。しかし、ウィスカの繊維長が短かすぎると十分な耐クリープ性、耐摩耗性は得られず、繊維長は炭素繊維よりもわずかに短い 50 μm 前後であることが好ましい。これに該当するウィスカとしては、硫酸カルシウムウィスカの無水塩型、半水塩型が挙げられ、好ましくは無水塩型である。
上市されているウィスカを具体的には例示すると、硫酸カルシウムウィスカとしてフランクリンファイバーA−30(無水塩型)、フランクリンファイバーH−30(半水塩型)(繊維長 50〜 60μm 、大日精化工業社製)、チタン酸カリウムウィスカとしてティスモN(繊維長 10〜 20μm 、大塚化学社製)、タイブレック(繊維長 20μm 、川鉄鉱業社製)、酸化亜鉛ウィスカとしてパナテトラ(繊維長 2〜 50μm 、松下電器産業社製)、硫酸マグネシウムウィスカとしてモスハイジ(繊維長 10〜 30μm 、宇部興産社製)等を挙げることができる。
【0016】
粉末状配合剤は、有機化合物系粉末配合剤と無機化合物系粉末配合剤とを挙げることができる。
有機化合物系粉末配合剤は、PTFEの成形温度 380℃に耐えうる粉末であることが好ましい。例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂(三井化学社製)、熱硬化性ポリイミド樹脂(Furon社製,宇部興産社製)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(Victrex MC社製)、全芳香族ポリエステル樹脂(住友化学工業社製)、アラミド粉末、ポリアミドイミド樹脂(三菱化成社製)等を挙げることができる。また、成形性などを考慮すれば、熱硬化性樹脂を硬化後、 500℃以上の高温で熱処理、粉砕した有機化合物系粉末が好ましい。さらに 1,000℃以上で炭化処理したもの、 2,000℃以上で黒鉛化処理したものが好ましい。熱硬化性樹脂の例は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂などがある。粉砕後の平均粒径は 50μm 以下、好ましくは 25μm 以下であり、形状は球状が好ましい。特にフェノール樹脂をパラフォルム溶液中で硬化後、 500℃以上の高温で熱処理、粉砕された球状の粉末が好ましい。
市販されている球状の黒鉛化処理された粉末を例示すると、メソカーボンビーズ(大阪ガスケミカル社製)、ベルパール(鐘紡社製)、ユニベックス(ユニチカ社製)、マイクロカーボンビーズ(日本カーボン社製)等を挙げることができる。
【0017】
無機化合物系粉末は、二硫化モリブデン、酸化亜鉛、酸化チタン、黒鉛、金属酸化粉末、ガラスビーズ、シリカ粉末等を挙げることができる。
すべり軸受装置を考慮した場合、相手材への攻撃性および多方向への安定したすべり性より、配合剤は繊維状よりも粉末状が好ましい。また、その形状は球状であることが相手材への非攻撃性および低摩擦特性に優れ好ましい。具体的には黒鉛化処理された球状粉末が好ましい。
【0018】
配合剤の配合量は変性PTFEまたはPTFE 100体積部に対して 5〜 40 体積部であることが好ましい。配合剤が 40 体積部を越えると成形性に問題が生じたり、相手材の潤滑性被膜を損傷する場合がある。ただし、 5体積部未満であれば補強効果に乏しく、十分な耐クリープ性、耐摩耗性が得られない。
【0019】
以上述べたこの発明に用いる諸原料を混合・混練する手段は特に限定するものではなく粉末原料のみをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、リボンブレンダー、レディゲミキサー、ウルトラヘンシェルミキサー等にて乾式混合すればよい。さらに、湿式法などにより成形方法に合致する所定の粒径の粒状に造粒することが好ましい。
成形について述べれば、一般的に知られた方法を採用することができる。例示すれば、フリーベーキング、ホットモールディング、アイソスタチックモールディング、連続ラム押し出し成形、ペースト押し出し、ダイレクトモールド等を挙げることができる。
すべり材としてシート状で用いる場合、その一般的なシートを得る工程としては、フリーベーキングの後、スカイブにより所定のシート厚みとする。ハウジング等の保持部材にすべり材を接合するには、すべり材の片面をエッチングし、接着可能状態とする。その後、エポキシ系、フェノール系あるいはポリイミド系接着剤により保持部材と接合させる。
【0020】
次に上記すべり材と摺動する相手材の表面に形成される潤滑性被膜について説明する。潤滑性被膜はポリイミド系樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれた少なくとも一つの樹脂をマトリクスとする樹脂内に低分子量の潤滑成分を含有するコーティング剤を塗布および焼成することにより得られる。
マトリクス樹脂は、耐候性などを考慮し、ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性および熱硬化性ポリイミド樹脂等のポリイミド系樹脂、あるいは熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂などを溶剤に分散させたものが好ましい。特にフラン樹脂は、耐候性が特に優れており好ましい。
溶剤類を例示すれば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン、メチルグリコールアセテート、2−ニトロプロパン、エチレングリコールアセテート、トルエン、クレシル酸などが挙げられ、これらの混合物であってもよい。
また、マトリクス樹脂に混合させることのできる低分子量の潤滑成分とは平均分子量 50,000以下、好ましくは 10,000以下の含フッ素重合体およびポリシロキサンが好ましい。
【0021】
含フッ素重合体は、ポリフルオロアルキル重合体またはフルオロポリエーテル重合体などの含フッ素重合体が好ましい。
ここで、ポリフルオロアルキル重合体とは、例えば、CF3(CF2)7−、H(CF2)6−、CF2Cl (CF2)CF11−、(CF3)2CF(CF2)7−、CF2Cl (CF3)CF(CF2)7−などのポリフルオロアルキル基を有する重合体であり、フルオロポリエーテル重合体は、一般式、−CXF2X−O−(X は 1〜4 の整数)で示される単位を主要構造単位とし、数平均分子量が 1,000 〜50,000の重合体である。このような含フッ素重合体で、金属等の平滑部材に対して親和性の高い官能基、例えばグリシジル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフォン基、エステル基等を含有しているものがあるが、これらの官能基を有する含フッ素重合体はすべり特性や耐候性が満足しないおそれがあるため、官能基を有さない含フッ素重合体が好ましい。
【0022】
官能基を含まないポリオルガノシロキサン、例えば線状オルガノポリシロキサンブロックを主体とするポリシロキサンの一般式を化2に示す。また、その一例を化3に示す。
【化2】
(R´は同種もしくは異種の一価の有機基または水素を表す)
【化3】
(mは 5〜10,000、nは 2〜100 の整数を表す)
【0023】
ポリシロキサンの他の形態は、アルコキシシランもしくはカーボンファンクショナルシランを主体に構成されたオルガノシランである。これらのオルガノシランを組み合わせても、またこれらのオルガノシランにコロイド状シリカもしくはアクリルポリマーなどを配合したものであってもよい。好ましいオルガノシランとしては、例えば化4に例示することができる。
【化4】
なお、これらのオルガノシランの重合体の膜を被覆するときには、平滑部材表面に予めプライマーを塗布しておくことが必要である。
【0024】
上記の含フッ素重合体あるいはポリシロキサンの保持材として、有機化合物としてはシリコーン樹脂粉末、無機化合物としては一般的なカーボン粉末あるいは黒鉛粉末を配合してもよい。ただし、これらの配合剤の粒径は 1〜10μm が好ましい。
また、含フッ素重合体あるいはポリシロキサンの配合量は、マトリクス樹脂 100体積部に対して 5〜 40 体積部であることが好ましい。配合量が 40 体積部を越えると被膜の密着強度が低下したり、耐摩耗特性が低下する場合がある。また、 5体積部未満であると低摩擦係数が得られなくなる。
被膜の膜厚は 5μm 以上、30μm 以下が好ましい。なぜならば、 5μm 未満であれば、耐久性に劣り、30μm を越えると塗布作業性が困難となり、安定した被膜が得られにくい。
また、被膜の表面あらさは算術平均あらさRaにて 0.5〜2.5 μm が好ましく、すべり材が平坦な板の場合、全体の形状は凹形状より、むしろ、中央部への緩やかな凸形状(0.1〜1.0mm)が好ましい。
【0025】
以上述べた本発明に用いる諸原料を混合・混練する手段は特に限定するものではなくマトリクス樹脂、およびその他配合剤をボールタンブラミキサーなどに一括配合し、所定時間混練すればよい。また、被膜の形成方法は、一般的なスプレーコーティング後、焼成すればよい。
【0026】
本発明のすべり軸受装置は、低摩擦係数のすべり材を使用するので、荷重、速度などに依存することなく使用することができる。特に高荷重での効果が大きいと考える。また、潤滑条件は乾燥摩擦であっても、油などによる境界潤滑の条件でも接触部の低摩擦効果を得ることができる。本発明のすべり軸受装置は、例えば、具体的に次のような軸受装置に利用することができる。
コンプレッサにおいて媒体(冷媒、水、エア、特殊ガスなど)の漏れを防止するすべり軸受、自動車・二輪車等のオイルシール周辺のすべり軸受、ガソリン供給系オイルシール周辺のすべり軸受、吸排気系シール周辺のすべり軸受、トランスミッション周辺の軸受、ステアリング周辺の軸受、工作機器のスライド部のすべり軸受または回転部のすべり軸受、コンパクトディスクあるいはDVDなどの光ピックアップのすべり軸受、テープ類のガイドローラとなるすべり軸受、電子式複写機のトナー周辺のすべり軸受、電子式複写機の通紙部のすべり軸受、カップジュース自動販売機の切り替えバルブ用周辺のすべり軸受、家庭用浄水器・混合栓用周辺のすべり軸受、一般製造ラインの切り替えバルブ用周辺のすべり軸受、パン・餅等食品混練機用周辺のすべり軸受、上水・下水用止水バルブ類周辺のすべり軸受、工業用ピストン類のすべり軸受を例示することができる。
【0027】
【実施例】
実施例および比較例に用いる材料を以下に示す。また、これら材料を用いた実施例および比較例の配合割合を表1および表2に示す。
1.四フッ化エチレン系樹脂
(1)変性PTFE テフロンTG70J(三井・デュポンフロロケミカル社製)
(2)一般PTFE テフロン7J(三井・デュポンフロロケミカル社製)
2.配合剤
(1)CF−1(ピッチ系炭素繊維) クレカミルドM101S(呉羽化学社製)
(2)球状黒鉛 ベルパールC2000(鐘紡社製)
(3)硫酸カルシウムウィスカ フランクリンファイバーA−30(無水塩型)(大日精化工業社製)
(4)ガラス繊維 MF−KAC(旭ファイバーグラス社製)
(5)黒鉛 ACP(日本黒鉛社製)
3.マトリクス樹脂
(1)エポキシ樹脂
(2)フラン樹脂
4.低分子量潤滑成分
(1)含フッ素重合体 フォンブリンZ25(Ausimont社製)
(2)ポリシロキサン ジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製)
5.その他
(1)カーボンブラック FEF(東海カーボン社製)
(2)シリコーン粉末 E501(東レ・ダウコーニング社製)
【0028】
上記材料を用いてすべり材1〜すべり材10、および潤滑性被膜形成のためのコーティング材1〜コーティング材10を以下の方法で作製した。
すべり材は、表1に示す組成をヘンシェル乾式混合機を用いてドライブレンドし、プレス機を用いてφ124mm×φ64mm× 100mmの円筒素形材を予備成形し、 370℃× 4時間、フリーベーキング法にて焼成した。さらにスカイビング加工により 1mm×80mm×1,000mm のシート試験片を得た。シートの片面をアルカリ処理によりエッチングし、接着可能とした。ステンレス製治具( 20mm × 20mm × 10mm )の一面にエポキシ系接着剤を用いて、接合し、摩擦係数μ測定用のすべり材試験片とした。
【0029】
【表1】
【0030】
一方、コーティング材は、表2に示す組成をボールミルタンブラを用いて、混練し、コーティング液とした。ステンレス板( 40mm × 40mm ×180mm )の一面にスプレーコーティングし、 200℃で約 30 分間焼成し、潤滑性被膜が形成された平滑板とした。なお、膜厚は約 10 から 15 μm であった。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例1〜実施例14および比較例1〜比較例6
すべり材とコーティング材とを、表3に示すように組み合わせて、その摩擦摩耗試験を行なった。試験は往復動型試験機を用いた。試験条件は、すべり速度 15cm/sec、荷重 30MPa、 45MPa、ストローク±35mmで 300サイクルの往復動運転を行ない、10サイクル時および 300サイクル時の摩擦係数を測定した。また、一方向回転試験での摩擦係数と摩耗量を測定した。結果を表3に示す。
また、すべり材の圧縮特性を圧縮クリープにより求めた。圧縮クリープは、ASTM D621を参照し、常温にて面圧 30MPaおよび 45MPaで圧縮し、 24 時間後の最大変形率を求めた。結果を表1に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
表1および表3の結果から明らかなように、本発明のすべり軸受装置に用いるすべり材の圧縮クリープ特性は、 24 時間後の最大変形率が 30MPaで 15 %以下であり、 30MPaという高面圧でも使用できることが認められた。
また、本発明に係るコーティング材から得られる潤滑性被膜との組み合わせにより、実際の往復動の数十倍にあたる 300サイクルまで摩擦係数μは約 0.03 と小さく安定していた。
【0035】
【発明の効果】
本発明のすべり軸受装置は、すべり材が四フッ化エチレン系樹脂を主成分とする樹脂に繊維状配合剤および粉末状配合剤の少なくとも一つの配合剤を配合してなる樹脂組成物を成形してなり、相手材がポリイミド系樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれた少なくとも一つの樹脂をマトリクスとする樹脂内に低分子量の潤滑成分を配合した潤滑性被膜が表面に形成されてなるので、高荷重下でも低い摩擦係数を有するすべり軸受装置が得られる。
【0036】
また、四フッ化エチレン系樹脂が変性四フッ化エチレン樹脂であるので、耐クリープ特性が向上し、すべり面を小さくでき、すべり軸受装置を含む装置の小型化が可能となる。
【0037】
四フッ化エチレン系樹脂に配合する粉末状配合剤が球状であるので、また、特に熱硬化性樹脂がフラン樹脂であるので、高荷重下、特に 30MPa程度の荷重下において、低い摩擦係数、例えば 0.03値を有するすべり軸受装置が得られる。
【0038】
相手材に配合される低分子量の潤滑成分が含フッ素重合体およびポリシロキサンから選ばれた少なくとも一つの潤滑成分であるので、上記特性がより向上する。また、すべり材、相手材相互への攻撃性が少なく、かつ摺動特性に優れる。
Claims (4)
- すべり材と、このすべり材と摺動する相手材とを備え、回転軸、直線または曲線上を往復する部分のすべり運動を拘束し、かつその負荷を受けて支持する機械要素を含むすべり軸受装置であって、
前記すべり材は、四フッ化エチレン単位と、四フッ化エチレンのフッ素が他の有機基で置換された置換四フッ化エチレン単位とから構成される変性四フッ化エチレン樹脂100体積部に対して繊維状配合剤および粉末状配合剤の少なくとも一つの配合剤を5〜40体積部配合する樹脂組成物を成形してなり、
前記相手材は、エポキシ樹脂またはフラン樹脂から選ばれた少なくとも一つの樹脂をマトリクスとする樹脂100体積部に対して、平均分子量50,000以下の含フッ素重合体またはポリシロキサンから選ばれた少なくとも一つの低分子量潤滑成分を5〜40体積部配合した潤滑性被膜が表面に形成されてなることを特徴とするすべり軸受装置。 - 前記粉末状配合剤が球状であることを特徴とする請求項1記載のすべり軸受装置。
- 前記配合剤が炭素質またはグラファイト質であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のすべり軸受装置。
- 前記すべり材と、このすべり材と摺動する相手材とを 30MPaの荷重下で摺動させたときに 0.05 以下の摩擦係数を有することを特徴とする請求項1記載のすべり軸受装置。
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