JP2975215B2 - チップシール - Google Patents

チップシール

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JP2975215B2
JP2975215B2 JP18256292A JP18256292A JP2975215B2 JP 2975215 B2 JP2975215 B2 JP 2975215B2 JP 18256292 A JP18256292 A JP 18256292A JP 18256292 A JP18256292 A JP 18256292A JP 2975215 B2 JP2975215 B2 JP 2975215B2
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正弘 二上
尚幸 大賀
正行 有本
敏也 坂井
清 狗巻
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スクロール型コンプレ
ッサーや真空ポンプ用のチップシールに関し、詳しくは
成形加工が容易で寸法精度に優れ、かつ、耐摩耗性に優
れるチップシールに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高効率、低騒音のスクロール型コ
ンプレッサーが開発され、小型・軽量化できる特性を生
かしてルームエアコン,小型空気コンプレッサーや真空
ポンプ等に広く使用されるようになっている。このスク
ロール型コンプレッサーは、スクロール部が可動スクロ
ールと固定スクロールとで構成され、図1で示す可動ス
クロール1と固定スクロール2とを互いに接合させ、可
動スクロール1を揺動することにより空気や冷媒の送り
出しを行うもので、この冷媒としては、フロン12,フ
ロン22,フロン134aなどのハロゲン化炭化水素系
冷媒、プロパン,ブタンなどの炭化水素系冷媒、アンモ
ニア,SO2 などの元素および無機化合物系冷媒が使用
され、主にフロン系冷媒が使用される。
【0003】チップシールは、上記可動スクロール2と
固定スクロール1とが接合する各スクロール部上端の接
合面に設けた溝部1a,2aに取着して使用される。し
たがって、このチップシールには、耐摩耗性、耐熱性、
耐フロン性、耐油性、装着性、成形性、寸法精度などの
物理的性質を備えることが要求される。現在、チップシ
ール成形材料として、フッ素樹脂(PTFE)、ステン
レス、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が用い
られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記P
TFEは、シート状物を打ち抜いて成形されるので、加
工コストが高く、また、その剛性が低く上記スクロール
用のうず巻き形状が保持できないため、溝部に装着しに
くいという問題がある。また、ステンレスは、剛性が高
く、通常薄いチップシールを4〜6枚重ねて使用してい
るため、装着が困難であるとともに、相手のスクロール
金属を傷つけることがあり、さらに、機械加工を行うた
めコストが高いという問題がある。
【0005】そこで、流動性があるPPSや液晶ポリマ
ー(LCP)のような樹脂材料を用いて、金型成形によ
ってチップシールを作製することが検討されている。上
記PPSを金型で成形すると、バリが発生し、また、金
型のゲートが大きいために、これらを除去する二次加工
を必要とする欠点がある。さらに、例えばこのチップシ
ールを、フロンコンプレッサーに実装した場合、PPS
中に含有される成分が、フロンに抽出されるという問題
がある。
【0006】さらに最近では、LCPをスクロール部材
の表面に射出成形により被覆することが提案されている
(特開平1−277693号公報参照)。一般にLCP
は、流動性に優れるので、チップシールのような細長い
成形品が、容易に金型で射出成形でき、バリやゲートの
問題も解消できる。しかし、キャビティ内に充填された
材料が冷却する場合、冷却によって生じる収縮が起因と
なり射出成形品に凹みを生じる、所謂「ひけ」が発生
し、寸法精度が劣り、また、LCP自身が、耐摩耗性に
劣るので、チップシール用材料としては不十分である。
【0007】上記LCPの耐摩耗性を改良しようとする
ことが、試みられている。例えば、サーモトロピック液
晶ポリマーに、熱硬化性樹脂を炭素化してえられる球状
のガラス状炭素とフッ素樹脂とを特定割合配合した摺動
性樹脂組成物が開示されている(特開平4−4295号
公報参照)。ところが、上記公報の実施例を示す表で
は、フッ素樹脂にかえて黒鉛が使用されており、上記摺
動性樹脂組成物の作用効果が不明である。仮に黒鉛をフ
ッ素樹脂と読みかえても、上記摺動性樹脂組成物の成形
品は、ガラス状炭素が配合されているので、例えばスク
ロール用のうず巻き形状チップシールとして使用した場
合、摩耗が多く、また、ひけが大きく、スクロール型コ
ンプレッサー用チップシールに要求される幅,厚さの寸
法精度(±20μm)を満足しない。
【0008】本発明の目的は、上記問題を解決し、金型
成形が容易で寸法精度に優れ、かつ、耐摩耗性等のシー
ル材が具備すべき物理的性質に優れるチップシールを提
供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】一般に、プラスチックス
の摩耗特性を改善するために、フッ素樹脂、グラファイ
ト、二硫化モリブデン、カーボン繊維粉末、ガラス繊維
粉末等の一種または二種以上を混入させることは、常套
手段として知られている。本発明者らは、上記問題を解
消すべく、LCPに上記材料を配合して得られるチップ
シールの摺動特性を検討したところ、LCPは特異な傾
向を示すことが判明した。例えば、PPSにフッ素樹脂
を混入すると、摩耗特性が向上するが、LCPにフッ素
樹脂を混入しても摩耗特性は向上しないのである。
【0010】本発明者らは、上記知見に基づき更に研究
を重ねたところ、驚くべきことにLCPにフッ素樹脂と
特定の引張り弾性率を有するカーボン繊維とを併用した
ところ、得られるチップシールの摩耗特性が飛躍的に向
上することを見出し本発明を完成した。即ち、本発明の
チップシールは、液晶ポリマーとフッ素樹脂と1000
0kgf/mm2 以下の引張り弾性率を有するカーボン繊維よ
りなる摺動性組成物から成形されるもので、該摺動性組
成物が、液晶ポリマー5080重量、フッ素樹脂
30重量および10000kgf/mm2 以下の引張り
弾性率を有するカーボン繊維20重量よりなり
ましくは、液晶ポリマーがサーモトロピック液晶ポリ
マー、フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン粉末、
カーボン繊維がカーボン繊維粉末である。
【0011】
【作用】本発明によれば、液晶ポリマーにフッ素樹脂お
よび特定のカーボン繊維を配合するので、フッ素樹脂と
カーボン繊維との相乗作用によって、チップシールの耐
摩耗性を飛躍的に向上させることができる。また、カー
ボン繊維を配合しているので、金型成形時にひけが発生
することが大幅に抑制されて、チップシールの寸法精度
および耐摩耗性を著しく向上させることができる。した
がって、寸法精度が要求される、例えばスクロール型コ
ンプレッサー用のうず巻き状チップシールが、金型成形
で容易にえられるようになる。
【0012】以下、本発明についてより詳細に説明す
る。本発明のチップシールは、液晶ポリマーに、フッ素
樹脂と10000kgf/mm2以下の引張り弾性率を有する
カーボン繊維とを特定量配合した摺動性組成物から成形
されるものである。液晶ポリマーは、摺動性組成物の主
材料として用いられるもので、液晶形成能を有する分
子、例えば異方性のある板状あるいは棒状の形態を有す
る分子、を有する主鎖型と側鎖型の高分子として公知の
液晶性を示す芳香族ポリエステル,ポリエステルイミ
ド,ポリエステルアミド等が使用できる。具体的には、
前記の公開公報に開示されている種々の液晶ポリマーが
使用でき、本発明では、特に全芳香族ポリエステルのよ
うなサーモトロピック液晶ポリマーが好適に使用でき
る。
【0013】この液晶ポリマーは、摺動性組成物に対
0〜80重量%、特に好ましくは55〜70重量%を
配合する。この液晶ポリマーの配合量が、50重量%未
満であると、チップシールの機械的強度が低下するので
好ましくない。一方80重量%を越えると、チップシー
ルの摩耗特性やひけが改善できないので好ましくない。
【0014】また、フッ素樹脂としては、ポリテトラフ
ルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン
とパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体で
あるPFA、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロ
プロピレンとの共重合体であるFEP、テトラフルオロ
エチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロア
ルキルビニルエーテルとの共重合体であるEPE、エチ
レンとテトラフルオロエチレンとの共重合体であるET
FE、あるいはこれらのフッ素樹脂の変性タイプのフッ
素樹脂等が使用できる。なお、フッ素樹脂は、液状、固
体状のいかなる形態のものが使用できるが、特に平均粒
径1〜30μmを有するPTFE微粉末が好適に使用で
きる。
【0015】このフッ素樹脂は、摺動性組成物に対し1
0〜30重量%、特に好ましくは15〜20重量%を配
合する。このフッ素樹脂の配合量が、10重量%未満で
あると、チップシールの摩耗特性が改善できず好ましく
ない。一方30重量%を越えると、混合が困難になり、
またチップシールの機械的強度が低下して好ましくな
い。
【0016】また、カーボン繊維としては、広く知られ
ているPAN系やピッチ系の繊維などが使用できる。本
発明では、相手材を傷付ける度合いが小さい10000
kgf/mm2 以下の引張り弾性率を有するカーボン繊維を用
いる。このカーボン繊維は、摺動性組成物に対し3〜2
0重量%、特に好ましくは5〜15重量%を配合する。
このカーボン繊維の配合量が、重量%未満であると、
チップシールの摩耗特性やひけが改善されず好ましくな
い。一方20重量%を越えると、相手材を傷つける恐れ
があり好ましくない。このカーボン繊維は、繊維状の形
態で使用できるが、特に繊維状のものを粉砕して例えば
平均繊維長200μm程度、平均繊維径14.5μm程
の微粉末状としたものが好適に使用できる。
【0017】なお、本発明では、上記摺動性組成物に、
前記した摩耗特性を改善できる材料、例えばグラファイ
ト、二硫化モリブデン、ガラス繊維粉末等の一種または
二種以上を同時に混入させることができる。
【0018】本発明のチップシールは、上記摺動性組成
物を、射出成形等の方法で、用途に応じて任意の大き
さ、形状に成形してえられる。例えば、スクロール型コ
ンプレッサに用いるチップシールは、そのスクロール型
摺動部に装着するうず巻き状に成形すればよい。
【0019】本発明のチップシールは、液晶ポリマー
に、フッ素樹脂と10000kgf/mm2以下の引張り弾性
率を有するカーボン繊維とを特定量配合された摺動性組
成物から成形されるので、シール材が具備すべき他の物
理的性質にも優れ、とくにフッ素樹脂とカーボン繊維と
の相乗作用によって、チップシールの耐摩耗性が飛躍的
に向上する。
【0020】また、本発明のチップシールは、成形時の
バリやゲートの問題がなく二次加工を不要にでき、さら
に、ひけが大幅に改善されて寸法精度に優れ、容易に金
型成形でえられるようになる。したがって、高度の寸法
精度が必要なスクロール型コンプレッサ用のうず巻き状
チップシールが簡単に成形できるようになる。
【0021】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明をより具体的に
説明する。なお、本発明がこれに限定されるものではな
いことは言うまでもない。 実施例1〜 サーモトロピック系芳香族ポリエステル液晶ポリマー
(商品名エコノール 住友化学社製)、平均粒径15μ
mのポリテトラフルオロエチレンおよび引張り弾性率が
約3000kgf/mm2 のピッチ系カーボン繊維(商品名ク
レカチョップM202S 呉羽化学社製:平均繊維長2
00μm,平均繊維径14.5μm)を表1に示した割
合で溶融混練した。ついで、この混練物をノズル温度を
300〜400℃、シリンダー温度を前部が330〜4
00℃,中央部が320〜390℃,後部が310〜3
70℃とし、金型温度を80〜170℃とした条件で射
出成形を行い、図3に示す幅1.80mm、厚さ1.5m
m、全長約350mmのうず巻き状のチップシールを作製
した。得られたチップシールには、ひけやバリはみられ
なかった。なお、上記射出成形では、図2(a)で示す
ゲートを有する金型と図2(c)で示すA−A断面構造
のゲートを有する図2(b)に示す金型を使用した。
【0022】比較例1〜7 上記実施例において、LCPを必須材料とし、これにP
TFE、カーボン繊維、グラファイト、ガラス繊維を、
表1に示す割合で添加する以外は、上記実施例と同様に
してうず巻き状チップシールを作製した。
【0023】比較例8 PPS70重量部、PTFE30重量部を用いて、実施
例と同様にチップシールを作製しようとしたが、混練物
が金型の溝先端部にまで均一に流動せずチップシールは
成形できなかった。
【0024】(摩耗特性試験)実施例および比較例の各
組成物から、幅10mm,長さ100mm,厚さ3mmの板材
を射出成形し、これから厚さ2.8mm,φ6.2mmの試
験片を作製して、その摩耗係数を測定した。この結果、
表1に示す通りであった。なお、摩耗係数は、相手材と
してJISH4140で規定される4032アルミニウ
ム合金を用い、P=22kgf /cm2,V=120m/min ,
温度110℃,試験時間72時間で油潤滑下に行った。
【0025】
【表1】
【0026】上記表1から明らかなように、本発明のチ
ップシールは、成形時にひけの発生がなく、比較例のも
のに比べて顕著な低摩耗係数を有するものであり、相手
材を傷つけることもない優れたものであった。
【0027】
【発明の効果】本発明のチップシールは、シール材が具
備すべき物理的性質に優れ、とくに耐摩耗性に優れる。
また、金型成形加工で容易にえられるとともに、寸法精
度に優れ、相手材を傷つけることがほとんどない。した
がって、高度の寸法精度が必要な特にスクロール型コン
プレッサ用のうず巻き状チップシールが、容易にかつ安
価にえられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スクロール型コンプレッサーの分解図を示し、
(a)は固定スクロール、(b)は可動スクロールであ
る。
【図2】チップシール成型用金型のゲート構造を示すも
のである。
【図3】本発明の一実施例を示すうず巻状チップシール
の平面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI //(C10M 169/04 107:32 107:44 125:02 147:02 147:04) C10N 20:00 20:06 30:00 30:06 40:02 40:34 50:08 (72)発明者 有本 正行 和歌山県有田市箕島663番地 三菱電線 工業株式会社 箕島製作所内 (72)発明者 坂井 敏也 和歌山県有田市箕島663番地 三菱電線 工業株式会社 箕島製作所内 (72)発明者 狗巻 清 和歌山県有田市箕島663番地 三菱電線 工業株式会社 箕島製作所内 (56)参考文献 特開 昭57−105442(JP,A) 特開 平1−277693(JP,A) 特開 平3−273083(JP,A) 特開 昭64−60651(JP,A) 特開 平1−190981(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C09K 3/10 F16J 15/16 C10M 101/00 - 169/06 F04C 18/02 311

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液晶ポリマー50〜80重量%とフッ素
    樹脂10〜30重量%と10000kgf/mm2 以下の引張
    り弾性率を有するカーボン繊維3〜20重量%よりなる
    摺動性組成物から成形されてなるチップシール。
  2. 【請求項2】 液晶ポリマーがサーモトロピック液晶ポ
    リマー、フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン粉
    末、カーボン繊維がカーボン繊維粉末である請求項1記
    載のチップシール。
JP18256292A 1992-07-09 1992-07-09 チップシール Expired - Lifetime JP2975215B2 (ja)

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JPH06137285A (ja) * 1992-10-29 1994-05-17 Ntn Corp うず巻形チップシールの製造方法
JP2835575B2 (ja) * 1994-10-25 1998-12-14 大同メタル工業株式会社 スクロール型コンプレッサー用シール材
JP5876007B2 (ja) 2013-05-31 2016-03-02 三菱電線工業株式会社 樹脂組成物およびそれを用いたシール部材

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