JP4482262B2 - スクロール型コンプレッサ用チップシール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスクロール型コンプレッサ用シール材に関し、特に炭酸ガスを冷媒とするスクロール型コンプレッサのチップシールに関する。
【0002】
【従来の技術】
スクロール型コンプレッサは、その圧縮機構部の断面を図1に示すように、鏡板1aとその表面に直立する渦巻形状のラップ1bとを有する固定スクロール1と、鏡板2aとその表面に直立する渦巻形状のラップ2bとを有する可動スクロール2とが、渦巻形状のラップ壁3において相互に偏心状態にかみ合わされて、それらの間に圧縮室4が形成されている。可動スクロール2が固定スクロール1の軸線の周りで公転することにより、圧縮室4が渦巻形状の中心側に移動してガス等の圧縮が行なわれる。
この圧縮室4の密閉性を確保するために、固定スクロール1および可動スクロール2のラップ端面には渦巻の延長方向に沿って溝が形成され、この溝内には対向する鏡板に摺接する渦巻形状のシール部材であるチップシール5が収容されている。図2はチップシール5の斜視図である。
図2に示すように、チップシール5は、渦巻形状の断面が四角形状であり、ラップ端面の溝内で隙間をもって収容され、溝と対向する鏡板の間で、ガス等の圧力により対向する鏡板に向かって溝底より浮上し、互いの渦巻壁の間をシールする。
【0003】
固定スクロール等のスクロール部材としては鋼材以外に、軽量化を図るためにアルミニウム合金が使用され、耐摩耗性の向上を目的とし摺接面に硬質クロムメッキ、カニゼンメッキ、アルマイト処理、タフラム処理などの表面処理を施す場合が多い。
【0004】
一方、近年の地球温暖化の観点から、冷媒を従来のR12などのフロン、R134aなどの代替フロンから、炭酸ガスなどの冷媒へ変更する必要に迫られている。炭酸ガスを冷媒とした場合、従来の冷媒に比較してガス圧縮圧力を高くする必要があるため、チップシールの仕様として、温度 120℃以上、場合によっては 150℃以上、吐出圧として圧力 8MPa 以上、場合によっては 10MPa 以上に耐えることが要求される。従来のフロンや代替フロンの場合、チップシールの仕様は 120℃〜 150℃、 2〜3MPa 程度で充分であった。
また、冷凍機油は、従来の鉱油からエステル油、ポリアルキレングリコール油(以下、PAG油と略称する)、カーボネート油などが使用され、チップシールもこれらに耐えることが要求される。
【0005】
従来、フロンや代替フロン用チップシールの材料として、四フッ化エチレン樹脂(以下、PTFEと略称する)および溶融フッ素樹脂を添加した、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂(以下、PEKと略称する)組成物(特公平7−030747)、炭素繊維、PTFE、金属粉末を添加したPEK組成物(特公平7−069015)等が知られている。
さらに、液晶ポリエステル樹脂を添加したPEK組成物(特開平8−267613、特開平9−20883)も知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、炭酸ガスを冷媒とするスクロール型コンプレッサでは、チップシールの仕様が温度 120℃以上、場合によっては 150℃以上、吐出圧として圧力 8MPa 以上、場合によっては 10MPa 以上となるため、従来のシール材では耐荷重性、耐摩耗性、相手材の非損傷性が充分でないという問題がある。また、耐荷重性や耐摩耗性等を満足したとしても、チップシールを形成するために充分な溶融流動性を得ることができないという問題がある。
例えば、特公平7−030747の場合は、充填材に補強効果がないため耐荷重性に乏しい。
特公平7−069015の場合は、充分な耐荷重性を得ることが可能であるが、溶融流動性に劣り、断面積が小さい場合にはチップシールを成形することができない。また、スクロール型コンプレッサにおいては、潤滑剤が稀薄な状態であり、しかも高速、高面圧の条件下では、摺動面に潤滑油が充分に供給されず、金属粉末により焼き付きを起こしてしまう。特に、摺接相手のスクロール部材がアルミニウム合金の場合には、アルミニウム合金を著しく損傷してしまう場合がある。
特開平8−267613、特開平9−20883の場合は、液晶ポリエステル樹脂が含まれることによってPAG油による強度低下が生じ、圧力 8MPa 以上、場合によっては 10MPa 以上となる炭酸ガスを冷媒とするスクロール型コンプレッサには使用することができない。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、耐荷重性、耐摩耗性、相手材の非損傷性に優れ、かつ成形性に優れ、炭酸ガスを冷媒とするスクロール型コンプレッサに使用できるシール材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のスクロール型コンプレッサ用渦巻形状チップシールは、吐出圧8MPa以上の炭酸ガスを冷媒とするスクロール型コンプレッサに用いられ、樹脂組成物を渦巻形状に成形してなるスクロール型コンプレッサ用渦巻形状チップシールであって、上記樹脂組成物が、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂とPAN系炭素繊維と成形時の混練過程で繊維化しない四フッ化エチレン樹脂のみからなり、樹脂組成物全体に対して、炭素繊維 5〜30 体積%およびPTFE 1〜30 体積%を含有してなり、樹脂組成物温度 380℃、せん断速度 1000 s -1 における上記樹脂組成物の溶融粘度が 50〜300 Pa・s であることを特徴とする。
【0009】
繊維状補強材として炭素繊維を配合することにより、上記樹脂組成物の耐荷重性、耐摩耗性を向上させる。そして、固体潤滑剤としてPTFEを添加することにより、潤滑油が稀薄な場合でも、焼き付くことはなく、シール材に低摩擦特性が付与される。
【0010】
溶融粘度を 50〜300 Pa・s とすることにより、チップシールを形成するための充分な溶融流動性が得られるとともに、チップシールの機械的特性を向上できる。
【0011】
上記炭素繊維がPAN系炭素繊維であることを特徴とする。
上記PTFEが混練過程で繊維化しないPTFEであることを特徴とする。
PAN系炭素繊維であることにより、高弾性率を有し、耐荷重性を著しく向上させる。
また、繊維化しないPTFEを配合することにより、成形時のせん断により繊維化することなく溶融粘度を増加させない。
【0012】
上記スクロール型コンプレッサの少なくと一方のスクロールがアルミニウム合金で形成され、シール材が該アルミニウム合金に摺接することを特徴とする。
上記スクロール型コンプレッサが炭酸ガスを冷媒とするコンプレッサであることを特徴とする。
【0014】
上述したPEK組成物を用いることにより、耐荷重性、耐摩耗性が向上し、また、所定の溶融粘度とすることで、断面積の小さいチップシールを形成するために充分な溶融流動性が得られ、炭酸ガスを冷媒とするアルミニウム合金製スクロール型コンプレッサに使用できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に使用できるPEKは、化1にそれぞれ示した繰り返し単位からなる重合体、またはそのような繰り返し単位とともに、例えば化2の式にそれぞれ示した繰り返し単位をPEK本来の特性を失わないように重合させた共重合体である。
【0016】
【化1】
Figure 0004482262
【化2】
Figure 0004482262
【0017】
PEKの市販品としては、化3で表される重合体からなるビクトレックス社製:ポリエーテルエーテルケトン樹脂、化4で表される重合体からなるビクトレックス社製:ポリエーテルケトン樹脂、または、化5の式で表される重合体からなるBASF社製:ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン樹脂(UItrapek)が挙げられる。これらは、上記した市販品のほか、特開昭54−90296号公報などに記載された周知の方法にしたがって製造できる。
【0018】
【化3】
Figure 0004482262
【化4】
Figure 0004482262
【化5】
Figure 0004482262
【0019】
上記PEKは、樹脂組成物温度 380℃、せん断速度 1000s-1における樹脂組成物の溶融粘度が 50〜300 Pa・s 、好ましくは 100〜300 Pa・s となるPEKを用いることが、渦巻形状のスクロール型コンプレッサ用シール材を成形するために好ましい。溶融粘度が 50 Pa・s 未満であると、PEKの分子量が小さくなりすぎ、シール材としての機械的特性、耐摩耗性が不充分となる。また射出成形時のバリの発生が増加する。溶融粘度が 300 Pa・s をこえると、スクロール型コンプレッサ用シール材の射出成形が困難となる。
好適な市販品としては、ビクトレックス社製のポリエーテルエーテルケトン樹脂である、PEEK 150P、151Gが挙げられる。
【0020】
本発明に使用できる炭素繊維は、原材料から分類されるピッチ系またはPAN系のいずれであってもよいが、高弾性率を有するPAN系炭素繊維が好ましい。その焼成温度は特に限定するものではないが、 2000℃またはそれ以上の高温で焼成されて黒鉛(グラファイト)化されたものよりも、 1000〜1500℃程度で焼成された炭化品のものが摺動相手のアルミニウム合金を摩耗損傷しにくいので好ましい。また、混練性、分散性、PEKとの接着性等を改良するために、エポキシ基等を含む処理剤で表面処理した炭素繊維を採用してもよい。
【0021】
炭素繊維の繊維径は 20μm 以下、好ましくは 3〜15μm、さらに好ましくは 5〜15μm である。 20μm をこえる太い炭素繊維では、耐荷重性の向上効果が乏しく、摺接相手材がアルミニウム合金の場合、アルミニウム合金を摩耗損傷する可能性が高くなって好ましくない。 3μm 以下では補強効果に乏しくなる。炭素繊維は、チョップドファイバー、ミルドファイバーのいずれであってもよく、その繊維長は特に限定されないが、充分な補強効果を得るために 0.05mm 以上の繊維長であるものが好ましい。
【0022】
本発明に使用できる市販の炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維として呉羽化学社製:クレカM−101S、同M−107S、同M−101F、同M−201S、同M−207S、同M−2007S、同C−103S、同C−106S、同C−203S、または大阪ガスケミカル社製:ドナカーボンS241、同S244、同SG341、同SG241、同SG244などがある。
【0023】
また、PAN系炭素繊維として、東邦レーヨン社製:ベスファイトHTA−CMF0160−OH、同HTA−CMF0040−OH、同HTA−C6、同HTA−C6−S、または東レ社製:トレカMLD−30、同MLD−100、同MLD−300、同T008、同T010等が例示できる。
【0024】
本発明に使用できるPTFEは、懸濁重合法によるモールディングパウダー、乳化重合法によるファインパウダー、再生PTFEのいずれを採用してもよいが、PEK組成物の流動性を安定させるためには、成形時の混練過程でせん断により繊維化しないで溶融粘度を増加させないPTFEが好ましい。繊維化しないPTFEとして再生PTFEがある。
【0025】
本発明において再生PTFEとは、熱処理(熱履歴が加わったもの)粉末、γ線または電子線などを照射した粉末をいう。例えば、モールディングパウダーまたはファインパウダーを熱処理した粉末、また、この粉末をさらにγ線または電子線を照射した粉末、モールディングパウダーまたはファインパウダーの成形体を粉砕した粉末、また、その後γ線または電子線を照射した粉末、モールディングパウダーまたはファインパウダーにγ線または電子線を照射した粉末などが挙げられる。また、凝集せず、PEKの溶融温度において、全く繊維化せず、内部潤滑効果があり、PEK組成物の流動性を安定し向上させることが可能なPTFEとして、γ線または電子線などを照射したPTFEを採用することがより好ましい。
【0026】
PTFEの市販品としては、喜多村社製:KTL−610、KTL−450、KTL−350、KTL−8N、KTL−400H、三井・デュポンフロロケミカル社製:テフロン7−J、TLP−10、旭硝子社製:フルオンG163、L150J、L169J、L170J、L172J、L173J、ダイキン工業社製:ポリフロンM−15、ルブロンL−5、ヘキスト社製:ホスタフロンTF9205、TF9207などが挙げられる。また、パーフルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキル基、またはその他のフルオロアルキルを有する側鎖基で変性されたPTFEであってもよい。
上記の中でγ線または電子線などを照射した再生PTFEとしては、喜多村社製:KTL−610、KTL−450、KTL−350、KTL−8N、KTL−8F、旭硝子社製:フルオンL169J、L170J、L172J、L173Jなどが挙げられる。
【0027】
本発明に使用できるモース硬度 3 以下の無機化合物とは、繊維状、板状、粒状等、形状を限定するものではないが、大きさが 100μm 以下のものが望ましい。大きさとは繊維状物であれば平均繊維長をいい、板状、粒状であれば平均粒径をいう。なお、炭素繊維間をミクロ補強するためには、繊維状物よりも板状物が、板状物よりも粒状物がより好ましく、大きさもより好ましくは 1〜50μm の範囲である。粒径が 1μm 未満と極端に小さいと組成物に充分な耐摩耗性が備わらない。そのような無機化合物としては、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられる。
硫酸カルシウムは無水塩型のもの、または半水塩型のものが挙げられるが、好ましい硫酸カルシウムは無水塩型のものである。また、硫酸マグネシウムは無水塩型のもの、または七水和物のものが挙げられるが、無水塩型のものが好ましい。
【0028】
本発明に好適に使用できる市販の無機化合物としては、モース硬度 2〜3 の硫酸カルシウムとしては、ノリタケ社製:D−101A(無水塩型)、D−200(無水塩型)、FT−2(半水塩型)、モース硬度 3 の炭酸カルシウムとしては、日窒工業社製:NA600、モース硬度 2〜3 の硫酸マグネシウムとしては、和光純薬工業社製:試薬硫酸マグネシウム等が例示できる。
【0029】
PEK組成物の配合割合は、樹脂組成物全体に対して、炭素繊維 5〜 30 体積%およびPTFE 1〜 30 体積%を必須成分として、残部をPEKとする。また、さらにモース硬度 3 以下の無機化合物を 1〜 20 体積%配合する。炭素繊維が 30 体積%をこえると、溶融流動性が著しく低下し、摺動相手金属のアルミニウム合金を摩耗損傷する可能性が高くなる。また、 5 体積%未満では組成物を補強する効果が乏しく、充分な耐摩耗性が得られない。PTFEが 30 体積%をこえると、耐摩耗性が所要の程度より低下する。また、 1 体積%未満では組成物に所要の潤滑性の付与効果に乏しく、充分な摺動特性が得られない。無機化合物が 20 体積%をこえると、溶融粘度が著しく増加するとともに、耐摩耗性が所要程度より低下する。また、 1 体積%未満では組成物のミクロ補強効果がなく、所要の耐摩耗性が得られず、アルミニウム合金を摩耗損傷する可能性も高くなる。
【0030】
また、上記PEK組成物の配合割合内で、炭素繊維、PTFEおよび無機化合物の配合割合の総計が 6 体積%以上、さらには 10 体積%以上であることが好ましい。 6 体積%未満ではチップシールとして求められる耐摩耗性、耐荷重性、潤滑性を付与することができない。上限は特に限定するものではなく、PEK組成物温度 380℃、せん断速度 1000s-1における溶融粘度が 50〜300 Pa・s となる範囲であればよい。
【0031】
なお、上記PEK組成物の特性を阻害しない程度に、以下に列挙するような周知の樹脂用添加剤を配合できる。例えば、黒鉛、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなどの摩擦特性向上剤、炭素粉末、酸化鉄、酸化チタンなどの着色剤、黒鉛などのクラッキング性向上剤、金属酸化物粉末などの熱伝導性向上剤を例示できる。
【0032】
以上の諸原材料を混合し、混練する手段は、特に限定するものではなく、粉末原料のみをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、リボンブレンダー、レディゲミキサー、ウルトラヘンシェルミキサーなどにて乾式混合し、さらに二軸押出し機などの溶融押出し機にて溶融混練し、成形用ペレット(顆粒)を得ることができる。また、充填材の投入は、二軸押出し機などで溶融混練する際にサイドフィードを採用してもよい。そして、成形方法としては、押出し成形、射出成形、加熱圧縮成形などを採用することができるが、製造効率などの点で射出成形が特に好ましい。また、成形品に対して物性改善のためにアニール処理等の処理を採用してもよい。
【0033】
本発明のスクロール型コンプレッサ用シール材は、温度 120℃以上、さらには 150℃以上、圧力 8MPa 以上、さらには 10MPa 以上に耐えることができるので、炭酸ガスを冷媒とするコンプレッサのチップシールに特に好適に使用できる。なお、従来のフロン、代替フロン、その他冷媒を使用するスクロールコンプレッサのチップシールとして使用できる。
また、本発明のスクロール型コンプレッサ用シール材は、斜板式、ロータリー式、リニア式、スクリュー式等のシール材としても使用することができる。
【0034】
【実施例】
実施例および比較例に用いる原材料を一括して以下に示す。なお、原材料に括弧書きした番号は、表中の原材料番号と一致させ、[ ]内は表中の略号である。
(1)芳香族ポリエーテルエーテルケトン樹脂[PEEK]
VICTREX社製:PEEK150P
(2)PAN系炭素繊維[CF−1]
東邦レーヨン社製:ベスファイトHTA−CMF0160−OH(繊維長さ 0.16mm、繊維径 7μm)
(3)PAN系炭素繊維[CF−2]
東レ社製:トレカMLD−30(繊維長さ 0.03mm、繊維径 7μm)
(4)ピッチ系炭素繊維[CF−3]
呉羽化学社製:クレカM−101S(繊維長さ 0.13mm、繊維径 14.5μm)
(5)ピッチ系炭素繊維[CF−4]
呉羽化学社製:クレカM−101T(繊維長さ 0.13mm、繊維径 18μm)
(6)ピッチ系炭素繊維[CF−5]
呉羽化学社製:クレカM−107S(繊維長さ 0.7mm、繊維径 14.5μm)
(7)ピッチ系炭素繊維[CF−6]
呉羽化学社製:クレカM−207S(繊維長さ 0.7mm、繊維径 14.5μm)
【0035】
(8)炭酸カルシウム粉末[CaCO3]
日窒工業社製:NA600(モース硬度 3、平均粒径 3μm)
(9)硫酸カルシウム粉末[CaSO4]
ノリタケ社製:D−101A(無水塩型、モース硬度 2〜3、粒径 25μm)
(10)PTFE[PTFE−1]
喜多村社製:KTL−610(再生PTFE:熱処理・粉砕・γ線照射タイプ)
(11)PTFE[PTFE−2]
喜多村社製:KT−400H(再生PTFE:熱処理・粉砕タイプ)
(12)PTFE[PTFE−3]
三井・デュポンフロロケミカル社製:テフロン7J(モールディングパウダー)
(13)溶融フッ素樹脂[PFA]
三井・デュポンフロロケミカル社製:テフロン7MP−10
(14)青銅粉[青銅粉]
福田金属箔粉工業社製:AT−350
【0036】
実施例1〜実施例および比較例1〜比較例7
原材料を表1に示す配合割合(体積%)でヘンシェル乾式混合機を用いてドライブレンドし、二軸押出し機を用いて溶融混練しペレットを作製した。このペレットから、樹脂温度 380℃、金型温度 180℃の条件で摩擦摩耗試験片用素材を射出成形し、切削加工にて摺動面に幅 2mm、深さ 2mm の溝を角度 45度で 4 本均等配置した、φ46mm(内径)×φ50mm(外径)× 11mm(幅)のリング状試験片を作製した。
【0037】
得られた試験片を用いて、以下に示す限界面圧試験、摩耗試験を測定して、またペレットにて溶融粘度を測定して、スクロール型コンプレッサ用シール材としての特性を評価した。
(1)限界面圧試験
リングオンディスク型試験機を用い、表2に示す試験条件下でS45C(機械構造用炭素鋼)、ADC12(アルミニウム合金:JIS H2118 12種)について面圧を 1 時間毎に 1 MPa 上げ、摩耗が 0.02mm 以上、または表面が溶融状態となる前の面圧を限界面圧とした。結果を表1に示す。
(2)摩耗試験
リングオンディスク型試験機を用い、表2に示す試験条件下で摩耗試験を実施し、20 時間後の摩耗量および摩擦係数を測定した。結果を表1に示す。
(3)溶融粘度
東洋精機社製キャピラグラフ、φ1mm×10mm 細管、樹脂温度 380℃、せん断速度 1000s-1における溶融粘度を測定した。結果を表1に示す。
(4)炭酸ガスエージング試験
実施例1〜実施例の樹脂組成物からなるペレットを樹脂温度 380℃、金型温度 180℃の条件で 12.7mm(幅)×128mm(長さ)×3.2mm(厚さ)の曲げ試験片を射出成形した。この曲げ試験片を用いて、表3に示す試験条件で炭酸ガスエージングした。「エージングなし」、「エージングあり」の曲げ試験片について、ASTM D790に準拠し、常温で曲げ強さを測定し、エージング後の変化率を表4に示した。
【0038】
【表1】
Figure 0004482262
【表2】
Figure 0004482262
【表3】
Figure 0004482262
【表4】
Figure 0004482262
【0039】
表1の結果からも明らかなように、PEKに炭素繊維のみを配合してなる比較例1および比較例2では、摩擦係数が大きく、焼き付きが起こり耐荷重性、耐摩耗性に劣っていた。PEKに炭素繊維、PTFE、青銅粉を配合してなる比較例3および比較例4は、S45C相手において 10MPa 以上の耐荷重性を有していたが、アルミニウム合金相手では相手材を損傷し、耐荷重性は低いものであった。また、温度 380℃、せん断速度 1000s-1における樹脂組成物の溶融粘度は 300 Pa・s より高く、チップシールを形成するに充分な溶融流動性が得られなかった。
【0040】
これに対して、所定の原材料を所定量配合した実施例1〜実施例は、 100℃をこえる高温オイル雰囲気でS45C鋼相手、アルミニウム合金相手の両条件において 10MPa 以上の耐荷重性を有し、相手材をほとんど損傷することなく、低摩擦特性および耐摩耗性に優れていた。また、温度 380℃、せん断速度 1000s-1におけるPEK組成物の溶融粘度は 300 Pa・s 以下であった。
また、実施例1〜実施例の材料は、15MPa、150℃エージング後の曲げ強さは低下しておらず、高圧・高温の炭酸ガス、潤滑油に侵されることはなく、十分使用可能である。
【0041】
【発明の効果】
本発明のスクロール型コンプレッサ用シール材は、炭素繊維 5〜 30 体積%およびPTFE 1〜 30 体積%を少なくとも含有するPEK組成物を、また、さらにモース硬度 3 以下の無機化合物を 1〜 20 体積%配合してなる樹脂組成物を渦巻形状に成形してなるので、8MPa以上、さらには 10MPa 以上の耐荷重性があり、耐摩耗性およびシール性に優れ、潤滑油が充分に供給されない場合においても、摺接アルミニウム合金を摩擦損傷しないチップシールが得られる。
【0042】
温度 380℃、せん断速度 1000s-1における上記PEK組成物の溶融粘度が 50〜300 Pa・s であるので、チップシールを形成するために充分な溶融流動性を得ることができる。
【0043】
さらに、PAN系炭素繊維を、また混練過程で繊維化しないPTFEを配合するので、チップシールとしての上記特性および溶融流動性がより向上する。
【0044】
本発明のスクロール型コンプレッサ用シール材は、8MPa以上、さらには 10MPa以上の耐荷重性があり、耐摩耗性およびシール性に優れ、潤滑油が充分に供給されない場合においても、摺接アルミニウム合金を摩擦損傷しないので、特に炭酸ガスを冷媒とするスクロール型コンプレッサのチップシールとして好適である。
【0045】
本発明のなるスクロール型コンプレッサ用チップシールは、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂を主成分に、炭素繊維および四フッ化エチレン樹脂を少なくとも含有する樹脂組成物を成形してなるので、吐出圧 8MPa 以上の、あるいは炭酸ガスを冷媒とするスクロール型コンプレッサに使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スクロール型コンプレッサの圧縮機構部の断面図である。
【図2】チップシールの斜視図である。
【符号の説明】
1 固定スクロール
2 可動スクロール
3 ラップ壁
4 圧縮室
5 チップシール

Claims (2)

  1. 吐出圧8MPa以上の炭酸ガスを冷媒とし、ポリアルキレングリコール油を冷凍機油とするスクロール型コンプレッサに用いられ、樹脂組成物を渦巻形状に成形してなるスクロール型コンプレッサ用渦巻形状チップシールであって、
    前記樹脂組成物が、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂とPAN系炭素繊維と成形時の混練過程で繊維化しない四フッ化エチレン樹脂のみからなり、樹脂組成物全体に対して、前記炭素繊維 5〜30 体積%および前記四フッ化エチレン樹脂 1〜30 体積%を含有してなり、
    樹脂組成物温度 380℃、せん断速度 1000 s -1 における前記樹脂組成物の溶融粘度が 50〜300 Pa・s であることを特徴とするスクロール型コンプレッサ用渦巻形状チップシール。
  2. 前記スクロール型コンプレッサの少なくとも一方のスクロールがアルミニウム合金で形成され、前記チップシールが該アルミニウム合金に摺接することを特徴とする請求項1記載のスクロール型コンプレッサ用渦巻形状チップシール。
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