JP2812479B2 - ガラス繊維含有ポリテトラフルオロエチレン組成物およびその成形品 - Google Patents

ガラス繊維含有ポリテトラフルオロエチレン組成物およびその成形品

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の技術分野 本発明は、耐圧縮クリープ性、耐摩耗性および摩擦特
性に優れたガラス繊維入りポリテトラフルオロエチレン
組成物およびその成形品に関する。
発明の技術的背景およびその問題点 ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)は、耐熱性
および耐薬品性に優れるとともに、摩擦係数が小さく自
己潤滑性を有しているため、軸受、スライディングパッ
ドなどの摺動材、パッキン、ガスケットなどのシール
材、および管、バルブ、コックなどの成形品として広く
用いられている。
このようなPTFEは、それ自体では、耐摩耗性、耐圧縮
クリープ性などの機械的特性が必ずしも良好ではないた
め、たとえばPTFEを軸受などの高加重を受ける摺動材と
して用いる場合には、種々の充填剤を添加してPTFEの耐
摩耗性ならびに耐圧縮クリープ性を改善するなどの方法
がとられている。
ところで従来からPTFEの耐摩耗性ならびに耐圧縮クリ
ープ性を向上させるために添加される充填材としては、
ガラス粉末が用いられており、たとえば、PTFE粉末にガ
ラス粉末を10〜30重量%添加したPTFE組成物を所定形状
に成形することにより、PTFEが本来有する摩擦係数が低
く、耐熱性および耐薬品性が優れているという特性を有
するとともに、耐摩耗性ならびに耐圧縮クリープ性に優
れた成形品を得ることができ、たとえば、ガラス繊維粉
末を15重量%添加したPTFE組成物から製造した成形品で
は、摩耗速度が約1/1000に減少すると報告されている。
ところが、このようなガラス繊維含有PTFE組成物から
得た成形品は、PTFEとガラス繊維との密着性が乏しいた
め、未だ充分な耐圧縮クリープ性が得られていなかっ
た。また、このPTFE成形品は、同様の理由から製品中に
空隙(ボイド)が伴い易く、緻密性に欠るという不都合
も有しており、高加重を受ける摺動材またはシール材と
してはなお問題が残されていた。
さらに、ガラス繊維含有PTFE成形品にあっては、摺動
材として用いた場合に摩擦係数が不安定であるというガ
ラス繊維充填材に特有の問題点があった。
たとえば、上記のようなガラス繊維含有PTFE組成物か
ら得られる軸受を用い、鋼製の軸を回転摺動させた場
合、他の充填材を用いたPTFE製の軸受と比較して摩擦係
数が高く、かつその変動も大きかった。
このようなガラス繊維が充填材として添加されたPTFE
組成物からなる成形品の欠点を解決するため、特開昭52
−24,252号公報あるいは特公昭59−18,420号公報には、
PTFEにガラス繊維とともにポリフェニレンサルファイド
(PPS)を添加したPTFE組成物が開示されている。
しかしながら、ガラス繊維とともにポリフェニレンサ
ルファイドを含むPTFE組成物は、加圧圧縮して予備成形
品を調製し、この予備成形品を焼成して製品を製造しよ
うとする場合、焼成時に内部でPPS分解ガスが発生する
ため、特に予備成形品が肉厚であると逃げ道を失なった
分解ガスにより製品にクラックが入り易いという問題点
があった。
発明の目的 本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決
しようとするものであり、格別に優れた耐摩耗性ならび
に耐圧縮クリープ性を有するとともに、表面が緻密で優
れた摺動特性を有する成形品を製造することができ、成
形時にクラックが発生するなどの問題がないガラス繊維
含有PTFE組成物およびその成形品を提供することを目的
としている。
発明の概要 本発明に係るガラス繊維含有ポリテトラフルオロエチ
レン(PTFE)組成物は、平均粒径5〜500μmのPTFE粉
末45〜88重量%と、直径30μm以下であり、かつ繊維長
1000μm以下であるガラス繊維粉末10〜35重量%と、ポ
リオキシベンゾイルポリエステル樹脂2〜20重量%とを
配合してなることを特徴とする、ポリ(アリーレンサル
ファイド)不含の組成物である。
本発明に係るガラス繊維含有PTFE成形品は、上記のよ
うなガラス繊維含有PTFE組成物を所定形状に成形してな
ることを特徴とする。
このような本発明に係るガラス繊維含有PTFE組成物
は、特定粒径を有するPTFE粉末、特定形状のガラス繊維
粉末およびポリオキシベンゾイルポリエステル(POB)
粉末から構成されているため、成形が容易でPPS粉末を
用いた場合のように成形時にクラックが発生することが
なく、しかも耐摩耗性、耐圧縮クリープ性、摺動特性な
どの機械的特性、特に高温時での機械的特性に優れた成
形品を提供することができる。
また、本発明に係る成形品は、高加重を受ける摺動
材、シール材などとして幅広く用いることができる。
発明の具体的な説明 以下、本発明に係るガラス繊維含有PTFE組成物および
その成形品について具体的に説明する。
本発明に係るガラス繊維含有PTFE組成物は、PTFE粉
末、ガラス繊維粉末およびPOB粉末を配合して調製され
る。
このような本発明で用いられるPTFE粉末は、テトラフ
ルオロエチレンの単独重合体であってもよく、またテト
ラフルオロエチレンと2重量%以下の他の単量体との共
重合体であってもよい。
このようなテトラフルオロエチレンと共重合される単
量体としては、具体的には、炭素数3〜6のパーフルオ
ロアルケン、炭素数3〜6のパーフルオロアルキルビニ
ルエーテル、クロロトリフルオロエチレンなどが用いら
れる。
このようなPTFEあるいはPTFE共重合体は、溶融加工性
を有せず、通常粉末として用いられる。
このようなPTFE粉末は、5〜500μm、好ましくは5
〜100μmの平均粒径を有することが望ましい。
このようなPTFE粉末は、本発明に係るPTFE組成物中に
45〜88重量%好ましくは65〜85重量%の量で用いられ
る。
本発明に係るPTFE組成物に用いられるガラス繊維粉末
は、30μm以下好ましくは3〜30μmの平均直径を有
し、1000μm以下好ましくは10〜1000μm好ましくは20
〜300μmの繊維長を有することが望ましい。
平均直径30μm以下であり、かつ繊維長1000μm以下
であるガラス繊維粉末を用いることにより、引張り強
さ、伸びなどの機械的強度に優れ、かつ均質で表面が平
滑な成形品を得ることができる。
このようなガラス繊維粉末は、本発明に係るPTFE組成
物中に10〜35重量%好ましくは15〜25重量%の量で用い
られる。
ガラス繊維粉末を10重量%以上の量で用いることによ
り、成形品の摩耗特性を改善することができ、一方30重
量%未満の量で用いることにより、引張り強さ、伸びな
どの機械的強度が低下することを防止できる。
本発明で用いられるPOBは、下記式(I)で示される
ような反復単位を有する。
これらPOBは、高沸点溶剤を重合媒体として用いる方
法(特公昭46−6,796号公報および特公昭47−47,870号
公報参照)、あるいは重合系に実質的に溶剤を用いない
塊状重合法(特開昭54−46,291号公報参照)などにより
製造でき、たとえば、エコノール E−101(住友化学
工業(株)製)という商品名で市販されている。
このようなPOBは、本発明に係るPTFE組成物中に2〜2
0重量%、好ましくは3〜15重量%の量で用いられる。
POBを2重量%以上の量で用いることにより、成形品
の圧縮クリープ特性、摩擦特性および摩耗特性の改善効
果を得ることができ、さらに20重量%以下の量で用いる
ことにより、引張り強さ、伸びなどの機械的強度が低下
することを防止できる。
本発明に係るガラス繊維含有PTFE成形品は、上記した
ようなPTFE粉末、ガラス繊維粉末およびPOB粉末を均一
に混合してなるガラス繊維含有組成物を予備成形し、次
いで焼成することにより得ることができる。
PTFE組成物を調製するに際しては、PTFE粉末、ガラス
繊維粉末およびPOB粉末を、乾式混合あるいは湿式混合
のいずれの方法で混合してもよいが、ヘンシェルミキサ
ーなどの混合機で乾式混合することが好ましい。
予備成形は、従来公知のいずれの方法で行なってもよ
く、たとえば、圧縮成形、ラム押出成形、アイソスタチ
ック成形および自動成形などにより行なうことができ
る。
このような予備成形は、通常、150〜800kg/cm2好まし
くは300〜600kg f/cm2に加圧して行なわれることが望ま
しい。
このような予備成形に次いで行なわれる焼成は、フリ
ーベーク法あるいはホットコイニング法などにより行な
うことができ、通常340〜380℃、好ましくは360〜380℃
に加熱して行なわれる。
このようにして得られるガラス繊維含有成形品は、特
に高温、高加重に晒される軸受およびスライディングパ
ットなどの摺動材、あるいはピストンシールおよびオイ
ルシールなどのシール材、特に回転部に用いられるシー
ル材などとして好ましく用いられる。
発明の効果 本発明に係るガラス繊維含有PTFE組成物は、成形が容
易であるとともに焼成時にクラックが発生することがな
く、しかも耐摩耗性、耐圧縮クリープ性、摺動特性など
の機械的特性、特に高温時での機械的特性に優れた成形
品を提供することができる。
また、本発明に係る成形品は、特に高温、高加重に受
ける摺動材、シール材などとして幅広く用いることがで
きる。
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれ
ら実施例に限定されるものではない。
実施例 平均粒径約25μmのPTFEモールディングパウダー75重
量部と、平均粒径20μmのPOB(エコノール E−101、
住友化学工業(株)製)5重量部と、平均直径10μmで
繊維長分布30〜120μm(平均繊維長約80μm)のガラ
ス繊維粉末20重量部とをヘンシェルミキサーで均一に混
合した後、得られたガラス繊維含有PTFE組成物を金型に
充填し、成形圧500kg f/cm2で予備成形を行なって丸棒
状の予備成形品とし、この予備成形品を温度370℃で3
時間加熱して焼成することにより成形品を得た。
次に得られた成形品を切削し、外径25.6mm、内径20m
m、厚さ8mmの摩擦摩耗試験片と、外径12.7mm、高さ25.4
mmのクリープ試験片を作成した。
圧縮クリープ試験片を用いて、ASTM−D−621に準拠
して圧縮加重140kg f/cm2、試験温度25℃で圧縮クリー
プ試験を行なった。得られた結果を表1に示す。
動摩擦係数と摩耗係数は、摩擦摩耗試験片を用い、ス
ラスト型摩擦摩耗試験機により、摺動速度0.5m/s、面圧
6kg f/cm2、試験温度25℃で相手材を鋼材SS41として測
定した。
得られた摩耗係数の測定値を表2に示し、動摩擦係数
の経時変化を第1図に示す。
比較例1 充填材を添加せず平均粒径約25μmのPTFEモールディ
ングパウダーのみを用いた以外は、実施例と同様にして
成形品を製造し、この成形品からクリープ試験片を作成
し、実施例と同様に圧縮クリープ試験を行なった。
得られた結果を表1に示す。
比較例2 平均粒径約25μmのPTFEモールディングパウダー80重
量部と、平均直径10μmで繊維長分布30〜120μm(平
均繊維長約80μm)のガラス繊維粉末20重量部とをヘン
シェルミキサーで均一に混合してガラス繊維含有PTFE組
成物を得た以外は、実施例1と同様にして成形品を製造
し、この成形品から試験片を作成し、それぞれの試験片
について、実施例と同様の試験を行なった。
得られた結果を表1、表2および第1図に示す。
比較例3 平均粒径約25μmのPTFEモールディングパウダー75重
量部と、平均直径10μmで繊維長分布30〜120μm(平
均繊維長約80μm)のガラス繊維粉末20重量部と、PPS
粉末(ライトンP−4、フィリップス ペトローリアム
インターナショナル社製)5重量部とをヘンシェルミ
キサーで均一に混合して得たガラス繊維含有PTFE組成物
を用いた以外は、実施例と同様にして成形品を製造し、
この成形品から摩耗試験片を作成したが、成形品のいく
つかに焼成によりクラックが生じ、試験片の製造に用い
ることができなかった。
得られた摩耗試験片を用い、実施例と同様にして摩耗
係数を測定した。得られた摩耗係数の測定値を表2に示
す。
【図面の簡単な説明】 第1図は、摩擦係数の経時変化を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C10M 145/22 C10M 145/22 //(C08L 27/18 67:03) C10N 20:06 30:00 30:06 40:02 40:34 50:08 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C10M 107/38 C10M 125/28 C10M 145/22 C08L 27/18 C08L 67/03 C08K 7/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均粒径5〜500μmのポリテトラフルオ
    ロエチレン粉末45〜88重量%と、直径30μm以下で繊維
    長1000μm以下のガラス繊維粉末10〜35重量%と、ポリ
    オキシベンゾイルポリエステル樹脂2〜20重量%とを配
    合したことを特徴とする、ポリ(アリーレンサルファイ
    ド)不含のガラス繊維含有ポリテトラフルオロエチレン
    組成物。
  2. 【請求項2】請求項1記載のガラス繊維含有ポリテトラ
    フルオロエチレン組成物を所定形状に成形してなること
    を特徴とするガラス繊維含有ポリテトラフルオロエチレ
    ン成形品。
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