JP2002186425A - 乳入りコーヒー飲料 - Google Patents
乳入りコーヒー飲料Info
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Abstract
熱殺菌工程を経て製造する乳入りコーヒー飲料の製造に
おいて、乳分混合時および加熱殺菌後の沈殿物の発生を
防止し、風味を改善した経済的な製造方法を提供する。 【解決手段】 コーヒー分に、強塩基性物質および/ま
たは塩基性アミノ酸を添加し、乳分と混合した後に加熱
殺菌することにより、乳分混合時の凝固を防止し、か
つ、加熱殺菌後の沈殿物の発生が防止でき、乳化剤や糊
料の添加量を低減できる。
Description
分を原料として使用し、加熱殺菌工程を経て製造する乳
入りコーヒー飲料およびその製造方法に関し、具体的に
は加熱殺菌処理後に生じる沈澱物の発生を防止した、安
定かつ風味豊かな乳入りコーヒー飲料およびその製造方
法に関する。
し、加熱殺菌工程を経て製造する乳入りコーヒー飲料製
品(以下、乳入りコーヒー飲料という)は、容器の形態
で分類すると、缶入り、ペットボトル入り、紙パック入
りなどが挙げられ、種々の製品が知られている。
は、ミルク入りコーヒー飲料缶詰を例として挙げると、
「焙煎」「粉砕」「抽出」「調合」「ろ過」「充填」
「巻締」「殺菌」「冷却」「箱詰め」からなる。
質上重要な工程として、「調合」工程がある。すなわ
ち、コーヒー抽出液にそのまま乳分を添加すると、コー
ヒー抽出液の酸性のpHが影響して、乳分の凝固が発生す
る。そこで、従来から、乳入りコーヒー飲料には、乳分
の凝固を防ぐ目的で重曹(炭酸水素ナトリウム)が添加
されている。重曹は無色無臭であり、また、味への影響
がすくないため広く用いられている。
品質上重要な工程として、「殺菌」工程がある。殺菌工
程においては、通常、250g缶で125℃、20分間の加熱殺
菌がなされる{「食品製造・流通データ集」、(株)産
業調査会事典出版センター、720ページ}。しかしなが
ら、乳入りコーヒー飲料は、加熱殺菌後に沈殿物を生じ
易く、発生した場合、商品の安全性は全く問題が無くて
も、商品価値が大きく損われることが問題であった。
調整が一般的であるが、これだけでは十分な沈殿防止効
果が得られず、乳化剤または糊料(安定剤、増粘剤等)
の添加と併用する必要があった。しかしながら、乳化剤
または糊料を添加した場合は、沈殿防止効果は得られて
も、乳入りコーヒー飲料の風味上好ましくない場合があ
り、コストアップにもなっていた。また、コーヒー分や
牛乳分の配合量が多いほど、加熱殺菌後に沈殿物を生じ
易くなる傾向があるため、乳化剤または糊料を増量する
必要が生じ、風味低下やコストアップが問題となってい
た。さらに、配合によっては、乳化剤または糊料を添加
しても、沈殿防止効果が不十分な場合があった。
液を、マンナン分解酵素による処理とアルカリ性ナトリ
ウム塩またはカリウム塩の添加、特に炭酸水素ナトリウ
ムの添加と併用処理することを特徴とする、安定なコー
ヒー飲料の製造法が開示されている。
ydrophilic lipophilic balance)の異なる乳化剤を組
み合わせた、混合乳化剤を添加することを特徴とする乳
入り缶コーヒーの沈殿防止法が開示されている。
煎したコーヒー豆を抽出前にアルカリ処理することを特
徴とする乳入り缶コーヒーの沈殿防止法が開示されてい
る。これらの方法には、それぞれ特徴はあるものの、よ
り簡単で経済的な方法が求められていた。
は、乳入りコーヒー飲料において、乳分混合時および加
熱殺菌後の沈殿物の発生を防止する、経済的な方法を提
供することである。
熱殺菌後の沈殿物の発生を防止した、風味豊かな乳入り
コーヒー飲料を提供することである。本発明の別の目的
は、乳分と混合した後に加熱殺菌する乳入りコーヒー飲
料の製造方法において、乳分と混合する前に強塩基性物
質および/または塩基性アミノ酸を添加して、乳分混合
時および加熱殺菌後の沈殿物の発生を防止し、風味の低
下の原因であった乳化剤または糊料の添加量を低減させ
た乳入りコーヒー飲料およびその製造方法を提供するこ
とである。
場合には、乳化剤または糊料の添加量を増加させること
なく、加熱殺菌後の沈殿物の発生が防止できるため、本
発明をさらに好適に用いることができる。
を解決するため、加熱殺菌後における、乳入りコーヒー
飲料の沈澱発生の原因について、鋭意研究を行った結
果、驚くべきことに、従来、乳分混合工程での凝固を防
止するために、pH調整の目的で用いられている重曹が、
加熱殺菌工程での沈殿物発生の主因子であることを見出
した。また、重曹による沈殿発生メカニズムの検討を行
い、重曹による塩析的反応が生じてコーヒー分や乳分の
沈殿が発生することを突き止めた。
を、強塩基性物質および/または塩基性アミノ酸に置き
換えることで、乳分混合時の凝固を防止でき、且つ、加
熱殺菌後の沈殿物の発生が防止されることを突き止めて
本発明を完成した。
ミノ酸を、乳入りコーヒー飲料に用いる場合、色、臭い
および味に関しては、重曹と同様に影響はほとんどな
い。それどころか、風味を損なう原因であった乳化剤ま
たは糊料の添加量の低減または無添加が可能であり、従
来のコーヒー飲料に比較して、風味が良好な乳入りコー
ヒー飲料が製造できる。特に、甘味成分を実質的に添加
しない場合においては、従来法と風味の差が極めて顕著
にあらわれ、沈殿防止効果を有しながも、乳入りコーヒ
ー飲料本来の良好な風味の飲料が得られる。
飲料とは、コーヒー分及び乳分を原料として使用し、加
熱殺菌工程を経て製造される飲料製品のことをいう。製
品の種類は特に限定されないが、1977年に認定された
「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の定義
である「コーヒー」「コーヒー飲料」「コーヒー入り清
涼飲料」が主に挙げられる。また、コーヒー分を原料と
した飲料においても、乳固形分が重量百分率で3.0%以上
のものは「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の適用
を受け、「乳飲料」として取り扱われるが、これも、本
発明における乳入りコーヒー飲料として挙げられる。
含有する溶液のことをいい、主としてコーヒー抽出液、
すなわち、焙煎、粉砕されたコーヒー豆を水や温水など
を用いて抽出した溶液が挙げられる。また、コーヒー抽
出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液をドラ
イ化したインスタントコーヒーなどを、水や温水などで
適量に調整した溶液も、コーヒー分として挙げられる。
されず、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などが挙
げられ、また、品種名も特に限定されず、モカ、ブラジ
ル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コ
ナ、マンデリン、キリマンジャロなどが挙げられる。
順に基本的に3段階で表現される)についても特に限定
されず、また、コーヒーの生豆も用いることができる。
さらに、複数品種のコーヒー豆をブレンドして用いるこ
ともできる。
き、中挽き、細挽きなどに分類される)についても特に
限定されず、各種の粒度分布の粉砕豆を用いることがで
き、水や温水などを用いて、各種コーヒー抽出装置(ド
リップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、
連続式など)で抽出することができる。また、コーヒー
焙煎豆の抽出温度やコーヒー分の抽出度合いが高いほど
加熱殺菌後の沈殿物が発生し易い傾向にあるが、温度条
件や抽出度合いは特に限定されない。
含有量は、特に限定されないが、固形分換算で0.1〜10
重量%が好ましい。ここで言う固形分とは、コーヒー分
を一般的な乾燥法(凍結乾燥、蒸発乾固など)を用いて
乾燥させ水分を除いた後の、乾固物の重量のことをい
う。
にミルク風味やミルク感を付与するために添加する成分
を指し、主に乳、牛乳及び乳製品のことをいう。例え
ば、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工
乳、乳飲料などが挙げられ、乳製品としては、クリー
ム、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加
糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、
ホエイパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳など
が挙げられる。風味の面から、牛乳を用いることが望ま
しい。また、発酵乳や乳酸菌飲料も、乳分として挙げら
れる。
は、特に限定されないが、固形分換算で0.1〜10重量%が
好ましい。ここで言う固形分とは、乳分を一般的な乾燥
法(凍結乾燥、蒸発乾固など)を用いて乾燥させ水分を
除いた後の、乾固物の重量のことをいう。
溶解した時にアルカリ性を示し、電離度(α)が1に近
い塩基または塩などの物質を指す。好ましくは、α>0.
9が望ましい。電離度(α)とは、電離した溶質の量
(モル、分子数)の割合で、α=1のときは完全電離とい
い、100%電離している状態である。強塩基性物質として
は、水酸化ナトリウム(Sodium Hydroxide)、水酸化ナ
トリウム液(Sodium Hydroxide Solution)、水酸化カ
リウム(Potassium Hydroxide)、水酸化カリウム液(P
otassium Hydroxide Solution)、リン酸三ナトリウム
(Trisodium Phosphate)、リン酸三カリウム(Tripota
ssium Phosphate)など、が挙げられる。
いが、効果およびコストを考慮すると、0.005〜0.5重量
%が好ましい。但し、添加後の乳入りコーヒー飲料のp
Hが約8.0より高くならない程度に添加する。
化ナトリウム(水酸化ナトリウム液を含む)、水酸化カ
リウム(水酸化カリウム液を含む)、リン酸三ナトリウ
ム及びリン酸三カリウムは、いずれも食品添加物であ
り、安全性を考慮すると、好適に用いることができる。
これらは固形物や水溶液の状態で、市販品として入手で
きる。純度は、食用に適するかぎり特に限定されない
が、例えば、水酸化ナトリウムの結晶物では70.0〜75.0
%、水酸化ナトリウムの無水物では95.0%以上、水酸化カ
リウムでは85.0%以上のものなどがある。結晶物の性状
は、粉末状、粒状、小球状、片状、棒状などがあり、特
に限定されない。
溶液中で塩基性を示すアミノ酸のことをいい、リジン
(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)など
が挙げられる。これらのアルカリ金属塩やアルカリ土類
金属塩などの塩、および誘導体も、塩基性であって且つ
食用に適するものは、本発明の塩基性アミノ酸に含まれ
る。
ないが、効果およびコストを考慮すると、0.01〜1重量%
が好ましい。この場合も、添加後の乳入りコーヒー飲料
のpHが約8.0を越えない程度にする。
ジン(L-リジン)、アルギニン(L-アルギニン)、ヒス
チジン(L-ヒスチジン)は、いずれも食品添加物であ
り、安全性を考慮すると、好適に用いることができる。
それらは、固形物や水溶液などの状態で、市販品として
入手でき、純度は特に限定されない。
は塩基性アミノ酸は、沈殿防止効果や風味などを損わな
い範囲で、適量を各種組み合わせて添加することができ
る。強塩基性物質や塩基性アミノ酸は、コーヒー分を抽
出した後、すなわち乳分と混和する前の工程で添加する
ことが望ましいが、コーヒー分を抽出する工程にて、使
用する水や温水などに事前に添加しておいてもよい。
されないが、本発明の目的および飲料としての風味を考
慮すると、加熱滅菌後の製品において、pH 5.8〜7.0が
好ましい。
物質および/または塩基性アミノ酸を用いることで、乳
入りコーヒー飲料の風味の低下原因である乳化剤や糊料
の添加量を軽減することができる。本発明でいう乳化剤
とは、乳化の効果をもつ添加物のことをいい、広義の界
面活性剤の一種である。例えば、ショ糖脂肪酸エステ
ル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸
エステルなどが挙げられる。また、糊料とは、増粘、ゲ
ル化、安定化などの機能をもつ添加物のことをいい、キ
サンタンガムなどの増粘剤、カラギーナンなどのゲル化
剤、安定剤などが挙げられる。すなわち、乳化剤および
/または糊料は、主として乳入りコーヒー飲料の製造時
の加熱殺菌工程およびその後の流通、貯蔵もしくは自動
販売機の加温時に生じうる沈殿を防止するために一般的
に使用されるものを全て含む。
めに、乳化剤または糊料を添加しても良いが、好ましく
はその添加量は風味を大きく損わない範囲に制限するこ
とが重要であり、乳化剤と糊料の添加量の和は、1重量%
以下であることが望ましい。例えば、ショ糖脂肪酸エス
テルは、耐熱菌増殖防止を兼ねて使用されることが多
く、風味を大きく損わない範囲で添加することができ
る。乳化剤と糊料の添加時期は、加熱殺菌開始直後まで
に行うかぎり、特別な制限はない。
の防止効果を補うために、重曹を添加することができる
が、加熱殺菌後の沈澱の発生を促進しない範囲であるこ
とが重要であり、0.14重量%以下であることが望まし
い。
成分のことをいう。例えば、ショ糖、異性化糖、ブドウ
糖、果糖、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖、フ
ラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ
糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パラチ
ノース、マルチトール、ソルビトール、エリスリトー
ル、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、還元
デンプン糖化物、ステビア、グリチルリチン、タウマチ
ン、モネリン、アスパルテーム、アリテーム、サッカリ
ン、アセスルファムK、スクラロース、ズルチンなどが
挙げられる。
加の時期は、設計する商品に応じて適宜調整すればよ
く、特に限定されない。その中で、甘味成分を添加しな
い場合、実質的に甘味成分を含まない場合、および、微
糖である場合には、コーヒー本来の風味が甘味に影響さ
れずに舌に感じられることから、風味の改善効果のある
本発明の好ましい態様である。
飲料として必要な、あるいは望ましい特性を付与するた
め、他の成分を適宜添加することができる。他の成分と
しては、酸化防止剤(エリソルビン酸ナトリウムな
ど)、香料(コーヒーフレーバー、ミルクフレーバーな
ど)及び水(イオン交換水、純水、天然水など)などが
挙げられる。
ト殺菌、ホットパック、無菌充填などを用いることがで
き、特に限定されず、内容物の性状や容器等によって殺
菌条件を適宜設定すればよい。
り、ペットボトル入り、ガラス瓶入り、紙容器入りなど
を用いることができ、特に限定はされない。
的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。
糊料を添加しない条件で検討した。
したコーヒー抽出液(pH約5.0)に、各種量の重曹(炭
酸水素ナトリウム)を添加し、12gの砂糖、16mlの牛乳
を加え、純水にて総量を最終200mlに調整した試料液を
得た。
なわち、本試験では、牛乳(pH約6.6)の添加時には沈
澱が発生しないようにする必要がある。そこで、牛乳の
タンパク質の大半を占めるカゼインの等電点(pH約4.6
付近)を考慮して、いずれの試験液でも牛乳添加前のpH
が6.0以上となるように、重曹の最少添加量(最終濃度
で0.33g/L)を設定した。また、乳入りコーヒー飲料製
品の大半が分布するpH領域(pH約6.0〜6.5、図1中の矢
印参照)の範囲を考慮して重曹の添加量を、最終濃度が
0.33, 0.50, 0.67, 0.83, 1.00, 1.17, 1.33, 1.67, 2.
00g/Lとなるように設定した。
菌(125℃、20分)して、乳化剤無添加の乳入りコーヒ
ー飲料缶詰を得た。次に、これらの乳入りコーヒー飲料
缶詰の沈殿物の量を、以下の方法で測定した。すなわ
ち、乳入りコーヒー飲料缶詰を室温に3時間放置し攪拌
した後、各10mlをサンプリングして、目盛り付き遠沈管
に分注し、3,000回転、10分間遠心分離した後の沈殿物
の体積を測定した。
は、各濃度の重曹を添加して調整した乳入りコーヒー飲
料缶詰(加熱殺菌後)のpHをあらわす(重曹添加量が多
いほどpHは高くなる)。
の大半が分布するpH領域(pH約6.0〜6.5、重曹の添加量
として約0.67〜1.67g/L、図1中の矢印参照)を含め、本
試験のpHの条件下において、加熱殺菌後のpH(すなわ
ち、重曹の添加量)と加熱殺菌後の沈殿量は密接に関与
していた。重曹の添加量によっては、沈殿量が0.1ml/10
ml以下の問題ないレベルにあった(図1のpH約6.0〜6.
2の範囲参照)。
の化学変化によってpHが若干変動すること、および、風
味や保存安定性などに基づいた様々な製品設計への対応
が必要であることを考慮すると、最終製品としてpH約6.
0〜6.5の範囲のいずれのpH条件においても、沈澱を防止
できる技術が必要である。本試験の結果により、乳化剤
や糊料を添加しない条件の場合、重曹のみの添加では上
記pHのうちの限られた範囲でしか対応できないことが判
った。実施例1 重曹と各種pH調整剤を併用して検討した。コーヒー抽出
液に、参考例の実験で沈殿量が最も少なかった添加量
(最終濃度0.83g/L、製品のpH6.2)の重曹を一定量添加
し(この時点でpH 6.5)、さらに各種pH調整剤を一定pH
(pH6.8)となる様に添加した。その後の操作は、参考
例に準じ、乳入りコーヒー缶詰を得た。
酸化ナトリウム、水酸化カリウム)および弱塩基性物質
(リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、重
曹(ポジティブコントロール))を用いた。同時に、ネ
ガティブコントロールとして、各種pH調整剤のかわりに
純水を添加したものを調整した。これらの乳入りコーヒ
ー飲料缶詰の沈殿物の量の測定は、参考例の方法に従っ
た。
コーヒー飲料缶詰のpHは、加熱殺菌後に低下する。例え
ば、参考例の実験で、沈殿量が最も少なかった添加量
(0.83g/L)の重曹を添加した際の試作品(加熱殺菌
後)のpH はpH6.2であったが(図1参照)、加熱殺菌前
のpHはpH 6.5であった。これは加熱による成分の化学変
化のためと考えられ、飲料の加熱殺菌の際にしばしば見
られる現象である。
よって、沈殿量は大きく変化した。すなわち強塩基性物
質(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム)を添加した場
合には、沈殿量はネガティブコントロール(純水)と同
程度に少なかった。一方、弱塩基性物質(リン酸水素二
ナトリウム、リン酸水素二カリウムおよび重曹(ポジテ
ィブコントロール))を添加した場合、強塩基性物質を
添加した場合に比較して、いずれも沈殿量は多かった。
の沈澱を抑制するためには、pH調整剤として用いられて
いる重曹の一部分を、別のpH調整剤に置き換えることが
有効であり、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムと
いった強塩基性物質を用いることが重要であることが判
った。実施例2 実施例1の知見をもとに、重曹を全て強塩基性物質(こ
こでは水酸化ナトリウム)に置き換えた。参考例と同様
にして、水酸化ナトリウムの濃度をふって、乳化剤無添
加の乳入りコーヒー飲料缶詰を得た。本実験結果を、図
3に示す。
性物質に置き換えた場合、一般的な乳入りコーヒー飲料
製品の大半が分布するpH領域(pH約6.0〜6.5、図3中の
矢印参照)において、沈殿発生に顕著な防止効果が認め
られた。
の沈澱を抑制するためには、pH調整剤として単独で強塩
基性物質を用いる方法も有効であることが判った。更
に、pH調整剤として強塩基性物質を用いることで、最終
製品としてpH約6.0〜6.5の範囲のいずれのpH条件におい
ても、加熱殺菌時の沈澱を防止できることが判った。実施例3 次に、表1に示した所定量の原料を調合して加熱殺菌を
行い、強塩基性物質を添加した乳入りコーヒー飲料(乳
化剤無添加)を試作し、沈澱量および香味を評価した
(試作品1)。対照として、重曹を添加した乳入りコー
ヒー飲料2種(対象品1-1: 乳化剤無添加品、および対
象品1-2: 乳化剤添加品)を試作した。対象品1-2には
沈澱防止剤として必要量の乳化剤(ショ糖脂肪酸エステ
ル)を添加した。
沈殿量の測定は、参考例に従って行った。また、香味評
価は、専門パネリスト5名により評点法で行い、平均点
を示した。評点は、「良い」= 5点、「やや良い」= 4
点、「ふつう」= 3点、「やや悪い」= 2点、「悪い」=
1点の5段階とした。
乳化剤無添加)では、香味の評価点は4.2とある程度良
い評価であったが、沈澱量は0.70 ml/10mlと目標値(0.
1ml/10ml以下)よりもかなり多かった。
は、乳化剤添加を添加した効果により、沈澱量は0.05 m
l/10mlと問題ないレベル(0.1ml/10ml以下)になった。
しかし、味の評価点(3.0)は他の2種(4.2〜4.6)に比
べて低く、乳化剤の添加が香味の低下を招いたと考えら
れる。
lと問題ないレベル(0.1ml/10ml以下)であり、且つ、
香味の評価点は4.6と、3種類中、最も良い評価であっ
た。これは、香味の低下の原因である乳化剤を用いるこ
となく、沈澱の発生を抑制できたことを示す。
を用いる本発明を用いることで、加熱殺菌時の沈澱を抑
制し、かつ風味の良好な、乳入りコーヒー飲料を製造す
ることができる。
質以外に、沈殿防止効果の考えられる添加物として、塩
基性アミノ酸を検討した。
ン、ヒスチジン)のみを用いて、参考例と同様にして、
乳化剤無添加の乳入りコーヒー飲料缶詰を得た。なお、
対照として、pH調整剤として重曹のみを用いた乳化剤無
添加の乳入りコーヒー飲料缶詰を試作した。本実験結果
を、図4に示す。
曹を用いた場合に比較して、塩基性アミノ酸をもちいた
場合はいずれも沈殿量は少なく、問題ないレベル(0.1m
l/10ml以下)であった。従って、乳入りコーヒー飲料の
加熱殺菌時の沈澱を抑制するためには、pH調整剤として
塩基性アミノ酸を用いる方法は有用であることが判っ
た。実施例5 表3に示した所定量の原料を調合して加熱殺菌を行い、
強塩基性物質を添加した乳入りコーヒー飲料(乳化剤無
添加)の、コーヒー分及び牛乳分増量タイプを試作し、
沈澱量および香味を評価した。対照として、重曹を添加
した乳入りコーヒー飲料(乳化剤添加)の、コーヒー分
及び牛乳分増量タイプを試作した。これには沈澱防止剤
として必要量の乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)を添加
した。
は、実施例3に従った。表4に、沈殿量及び香味評価結
果を示す。
品2も同等で問題ないレベル(0.1ml/10ml以下)にあっ
た。一方、香味評価は、試作品2の方が対照品よりも良
い評価を得た。これは、対照品2においては、コーヒー
分や牛乳分が多い場合には、加熱殺菌後の沈殿を防ぐた
め乳化剤の増量が必要となり、香味評価に問題がでる
が、試作品2においては、コーヒー分や牛乳分が多い場
合でも、乳化剤を添加することなく加熱殺菌後の沈殿を
防止できるため、良好な香味評価が得られたものと考え
られる。実施例6 表5に示した所定量の原料を調合して加熱殺菌を行い、
強塩基性物質と塩基性アミノ酸を併用添加したタイプの
乳入りコーヒー飲料(乳化剤無添加)を試作した。
(0.1ml/10ml以下)にあり、良好な香味評価であった。
このように、pH調整剤として塩基性アミノ酸を用いる本
発明を用いることで、加熱殺菌時の沈澱を抑制し、かつ
風味の良好な、乳入りコーヒー飲料を製造することがで
きる。
pH調整剤として強塩基性物質を用いて、甘味成分を添加
しない乳入りコーヒー飲料(乳化剤無添加)を、表6に
示した所定量の原料を用いて試作し、沈澱量および香味
を評価した。対照として、pH調整剤として重曹を用いた
甘味成分無添加の乳入りコーヒー飲料(乳化剤添加)を
試作した。これには沈澱防止剤として必要量の乳化剤
(ショ糖脂肪酸エステル)を添加した。
は、実施例3に従った。表7に、沈殿量及び香味評価結
果を示す。
等で問題ないレベル(0.1ml/10ml以下)にあった。一
方、香味評価は、試作品が対照品よりも、良い評価を得
た。両者の香味の評価の差は、甘味量の添加されている
試験(実施例3)の場合よりも大きかった。これは、甘
味成分無添加の場合には、甘味に影響されずに風味が判
断されるため、風味の善し悪しの差がつきやすくなるた
めと考えられる。
い場合や微糖である場合など、甘味に影響されずに風味
が判断される場合には、本発明を好適に用いることがで
きる。
いて、重曹の添加量(pH)と、加熱殺菌後の沈殿量の関
係を示した図である。
いて、重曹と各種pH調整剤を併用した場合における加熱
殺菌後の沈殿量を示した図である。
いて、強塩基性物質の添加量(pH)と、加熱殺菌後の沈
殿量の関係を示した図である。
いて、塩基性アミノ酸を添加した場合における加熱殺菌
後の沈殿量を示した図である。
Claims (17)
- 【請求項1】 コーヒー分に、強塩基性物質および/ま
たは塩基性アミノ酸を添加し、乳分と混合した後に加熱
殺菌することを特徴とする、乳入りコーヒー飲料。 - 【請求項2】 強塩基性物質および/または塩基性アミ
ノ酸を、乳分と混合する前に添加したことを特徴とす
る、請求項1記載の乳入りコーヒー飲料。 - 【請求項3】 強塩基性物質および/または塩基性アミ
ノ酸を添加することにより、加熱殺菌後に発生する沈殿
を防止した請求項1または2記載の乳入りコーヒー飲料。 - 【請求項4】 強塩基性物質および/または塩基性アミ
ノ酸を添加することにより、乳化剤および/または糊料
の添加量を低減した、請求項1ないし3のいずれか1項記
載の乳入りコーヒー飲料。 - 【請求項5】 乳入りコーヒー飲料製品のpHが、5.8〜
7.0である、請求項1ないし4のいずれか1項記載の飲料。 - 【請求項6】 乳化剤と糊料の添加量の和が1重量%以下
である、請求項5記載の飲料。 - 【請求項7】 強塩基性物質が、水酸化ナトリウム、水
酸化カリウム、リン酸三ナトリウム及びリン酸三カリウ
ムからなる群のいずれか1種以上である、請求項1ないし
6のいずれか1項記載の飲料。 - 【請求項8】 強塩基性物質の添加量が0.005〜0.5重量
%である、請求項7記載の飲料。 - 【請求項9】 塩基性アミノ酸が、リジン、アルギニン
及びヒスチジンからなる群のいずれか1種以上である、
請求項1ないし8のいずれか1項記載の飲料。 - 【請求項10】 塩基性アミノ酸の添加量が0.01〜1重
量%である、請求項9記載の飲料。 - 【請求項11】 重曹の添加量が0.14重量%以下であ
る、請求項1ないし10のいずれか1項記載の飲料。 - 【請求項12】 固形分換算で、0.1〜10重量%のコーヒ
ー分を含む、請求項1ないし11のいずれか1項記載の
飲料。 - 【請求項13】 固形分換算で、0.1〜10重量%の乳分を
含む、請求項1ないし12のいずれか1項記載の飲料。 - 【請求項14】 乳分が牛乳であることを特徴とする、
請求項1ないし13のいずれか1項記載の飲料。 - 【請求項15】 実質的に甘味成分を含まない、また
は、微糖であることを特徴とする、請求項1ないし14
のいずれか1項記載の飲料。 - 【請求項16】 請求項1ないし15記載の乳入りコー
ヒー飲料の製造方法。 - 【請求項17】 コーヒー分および乳分を主原料として
加熱殺菌工程を経て製造される乳入りコーヒー飲料の製
造において、加熱工程前に添加するpH調節剤として強
塩基性物質および/または塩基性アミノ酸を用い、重曹
は全く使用せずもしくは0.14重量%以下しか使用しない
ことにより、乳化剤および/または糊料の添加量を低減
し、加熱殺菌による沈殿の発生を防止し、かつ、風味豊
かな乳入りコーヒー飲料の製造方法。
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