JP3622039B2 - 密封容器入り乳含有コーヒー及びその製造方法 - Google Patents

密封容器入り乳含有コーヒー及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、缶等の保存密封容器に充填されて市場に流通する密封容器入り乳含有コーヒー及びその製造方法に関する。詳細には、本発明は、生豆換算で5g以上のコーヒー分を含有するコーヒーであって、殺菌処理及び長期保存に際してもゲル状沈殿並びにリングを生じず、品質保持、安定性に優れた密封容器入り乳含有コーヒー及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、密封容器入り乳含有コーヒー、特に生豆換算5%以上のコーヒー分を含む缶入り乳含有コーヒーに関し、その製造工程における加熱殺菌後に多量のゲル状沈殿が発生し品質が著しく損なわれること、また長期保存安定性に乏しく、特にホットベンダー等の高温状態での保存においてしばしばゲル状沈殿が生じるといった問題があり、市場のニーズに反してコーヒー含有量をそれ以上増やせないといった状況であった。
【0003】
これを解決する方法として、近年、安定化剤の使用、酵素を用いる方法(特開平7−18454号)、複数の乳化安定剤を使用する方法(特開平8−116873号)等、種々の方法が検討されてはいる。
【0004】
しかし、これらの方法は、処理が煩雑でありコーヒーの工業的生産に不向きであったり、効果が十分とはいえず、まだまだ改善の余地が残るものである。また、特に生豆換算7%以上のコーヒー分を有する条件下で、コーヒー缶詰の風味に悪影響を与えることなくかつ長期保管中においても沈殿が生じない方法は知られていなかった。
【0005】
なお、ゲル状沈殿が生じる原因の詳細は不明であるが、当該ゲル状沈殿はコーヒー抽出液又は乳成分に含まれる多糖類、蛋白質及びカルシウムイオンからなるものと推定されている。また、本明細書中でいう「リング」とは、乳タンパク、乳脂肪が遊離して容器壁に付着・固化したり、油滴または固形物が浮遊したものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の生豆換算5%以上のコーヒー分を含む乳含有コーヒーは、その製造工程での過酷な殺菌処理等によるゲル状沈殿やリングの発生のため、長期間の品質保持が困難であり、安定した品質を有する商品の提供ができないといった問題を有しており、これらの改善、解決が強く望まれていた。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたもので、製造工程においても更には長期保存によっても、ゲル状沈殿を生じず、リングもなく安定して長期にわたり品質が保持されてなる密封容器入り乳含有コーヒーを提供することを目的とするものである。
【0008】
さらに、本発明は、製造工程の殺菌処理によっても品質を損なわず、長期保存においても良好な品質を保ち得る上記密封容器入り乳含有コーヒーの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねていたところ、偶然にも、密封容器入り乳含有コーヒーの製造に際して、コーヒー調合液にリン酸3ナトリウムを配合した条件下で殺菌処理することにより、比較的コーヒー分の多い密封容器入り乳含有コーヒーであってもゲル状沈殿を生じず、さらには長期保存によってもゲル状沈殿及びリングが起こらないことを見いだした。そして、さらに研究を重ねることにより、殺菌処理前にリン酸3アルカリ金属塩もしくはそれと同等物を添加することによって、コーヒーにリン酸イオンとアルカリ金属イオンとを共存させておくことがゲル状沈殿発生の防止に有効であることを確認して本発明を完成するに至った。
【0010】
前述するように、ゲル状沈殿の発生には乳含有コーヒーに含まれている「カルシウム」が少なからず関係していると考えられている。また、リン酸イオンがカルシウムと一緒になってリン酸カルシウム沈殿を生じることは周知の通りである。よって、このような認識のもとで、カルシウムを多量に含む乳含有コーヒーにリン酸イオンを配合することにより、リン酸カルシウム沈殿を生じないばかりか殺菌処理等によって生じるゲル状沈殿の発生が防止できるという上記の知見は、まさに驚くべきことであり、本発明はかかる予想外の知見に基づくものである。
【0011】
すなわち本発明は、生豆換算5%以上のコーヒー分を含有するコーヒーであって、リン酸3アルカリ金属塩物質、例えばリン酸3ナトリウム物質を 0.01 〜 1 重量%含有することを特徴とするゲル状沈殿を実質的に含有しない密封容器入り乳含有コーヒーに関する。
【0012】
また本発明は、生豆換算5%以上のコーヒー分を含有するコーヒーであって、ナトリウムイオンを1.8×10-6〜2×10-4mol/L、リン酸イオンを6×10-7〜9×10-5mol/Lの範囲で含有することを特徴とするゲル状沈殿を実質的に含有しない密封容器入り乳含有コーヒーに関する。
【0013】
さらに本発明は、リン酸3アルカリ金属塩物質、例えばリン酸3ナトリウム物質0.01〜1重量%の存在下で、コーヒー調合液を殺菌処理して製造することによって得られる、ゲル状沈殿を実質的に含有しないことを特徴とする上記の密封容器入り乳含有コーヒーである。
【0014】
さらにまた本発明は、リン酸3アルカリ金属塩物質、例えばリン酸3ナトリウム物質0.01〜1重量%の存在下で、コーヒー調合液を殺菌処理することを特徴とする、前記のいずれかに記載の密封容器入り乳含有コーヒーの製造方法に関する。
【0015】
なお、本発明において「ゲル状沈殿を実質的に含有しない」とは、コーヒー溶液を目視によって観察した場合に、白色〜茶褐色の軟らかなゲル状の沈殿の存在が認められないことを意味する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の対象となるコーヒーは、生豆換算5%以上のコーヒー分を含有する密封容器入り乳含有コーヒーである。
【0017】
本発明において「生豆換算〜%」とは、乳含有コーヒーの内容量100重量部中に含まれるコーヒー含量を表すものであり、例えば「生豆換算5%のコーヒー分を含有する」とは、内容量100重量部中にコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分をコーヒー生豆量に換算して5重量部含むことをいう。
【0018】
また「密封容器」とは、乳含有コーヒーを充填後、密封・密閉するものであれば特に限定されず、具体的には缶、ビン、紙パック、ラミネートパック等、種々の保存容器が例示される。
【0019】
本発明で用いられるコーヒーは、豆の種類、品質、焙煎方法、焙煎度合等によって特に制限されず、また、コーヒ−豆から直接抽出されたものの他、インスタントコーヒー、コーヒーエキスを用いてもよい。豆の種類としては、アラビカ種、ロブスタ種、リベリア種などの原料樹に由来するものが例示されるが、特に、ロブスタ種を用いる場合はゲル状沈殿を発生しやすく、また焙煎後の粉砕粒度が小さいほどゲル状沈殿が発生しやすいという傾向があり、このような場合に本発明の効果が特に有用となる。
【0020】
また、本発明のコーヒ−に含有される乳とは、牛乳及びその加工品であり、加工品としては、例えば全脂練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳などが挙げられる。これらは単独もしくは2種以上を組み合わせて使用される。
【0021】
本発明の乳含有コーヒーの乳の含有量も特に制限されないが、通常は、乳含有コーヒーの内容量100重量部あたり、無脂乳固形分で0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部、より好ましくは0.1〜1重量部の範囲である。
【0022】
本発明は、上に挙げる乳含有コーヒーであって、その中にリン酸3アルカリ金属塩物質を0.01〜1重量%の範囲で含有することを特徴とするものである。
【0023】
ここで「リン酸3アルカリ金属塩物質」でいう「リン酸3アルカリ金属塩」とは、具体的にはリン酸3ナトリウムが例示される
【0024】
かかるリン酸3ナトリウムは、コーヒー溶液に配合されることにより、溶解して本発明でいう「リン酸3ナトリウム物質」になる。すなわち、本発明でいう「リン酸3ナトリウム物質」とは、上記のリン酸3ナトリウムを溶液に溶解した場合に、そのリン酸3ナトリウムが溶液中に溶解状態で存在する状態のものを広く包含する趣旨である。かかる状態は、簡便には、コーヒー調合液もしくはコーヒー溶液中にリン酸3ナトリウムを添加、溶解することによって作成できるが、特にこれに限定されることはなく、例えばリン酸水素2ナトリウムやリン酸2水素ナトリウム等のリン酸塩、又は当該リン酸塩もしくはリン酸と水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の塩基性塩とを組み合わせて用いることによっても作成できる。
【0025】
なお、本発明の一態様として、本発明の乳含有コーヒーに添加されるリン酸塩等の量、言い換えれば本発明のコーヒーに含有されるリン酸3ナトリウム物質の量は次の通りである。本発明に含有されるリン酸3ナトリウム物質は、その含有量が少なすぎると沈殿防止効果やリング防止効果が不十分となり、逆に多すぎると塩類自体の味が感じられるようになり、それを好まない人もでてくるため、これらを勘案して適当な範囲に設定することが好ましい。
【0026】
(1)リン酸3ナトリウムを用いる場合
通常0.01〜1重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%、より好ましくは0.03〜0.2重量%。
【0027】
(2)リン酸水素2ナトリウムを用いる場合
通常0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%、より好ましくは0.12〜0.2重量%。
【0028】
なお、この場合は塩基性塩として、例えば炭酸水素ナトリウムを0.01〜0.3重量%、好ましくは0.05〜0.15重量%の範囲で含有することが望ましい。
【0029】
(3)リン酸2水素ナトリウムを用いる場合
通常0.01〜1重量%、好ましくは0.2〜0.7重量%、より好ましくは0.3〜0.6重量%。
【0030】
なお、この場合は塩基性塩として、例えば炭酸ナトリウムを0.05〜0.3重量%、好ましくは0.08〜0.15重量%の範囲で含有することが望ましい。
【0031】
なお、本発明の乳含有コーヒーには、上記の原料の他に、食品の分野で広く用いられている糖類、香料、中和剤、カラメル、乳化剤、食塩、食用油脂、安定剤、酸化防止剤、保存料、色素、酸味料などが含まれていてもよい。また、本発明の乳含有コーヒーはpH5.5〜8.0、好ましくはpH5.8〜6.8、より好ましくはpH6.4〜6.6の範囲で調整されていることが望ましい。
【0032】
また別の局面からみれば、本発明の密封容器入り乳含有コーヒーは、リン酸イオンを6×10-7〜9×10-5mol/L、ナトリウムイオンを1.8×10-6〜2×10-4mol/Lの範囲で含有することを特徴とするものである。
【0034】
本発明の乳含有コーヒーに含まれるリン酸イオン及びナトリウムイオンの濃度は、それぞれ上記の範囲で有れば特に制限はされないが、例えば次に示すように、用いるリン酸塩の種類によって上記濃度範囲から適宜選択することもできる。
【0035】
(1)リン酸3ナトリウムを用いる場合
・リン酸イオン
通常6×10-7〜6.1×10-5mol/L、好ましくは1.2×10-6〜3.0×10-5mol/L、さらに好ましくは1.8×10-6〜1.2×10-5mol/L
ナトリウムイオン
通常1.8×10-6〜1.8×10-4mol/L、好ましくは3.7×10-6〜9.1×10-5mol/L、さらに好ましくは5.5×10-6〜3.7×10-5mol/L。
【0036】
(2)リン酸水素2ナトリウムを用いる場合
・リン酸イオン
通常7.0×10-7〜7.0×10-5mol/L、好ましくは7.0×10-6〜3.5×10-5mol/L、さらに好ましくは8.5×10-6〜1.4×10-5mol/L
ナトリウムイオン
通常2.6×10-6〜1.8×10-4mol/L、好ましくは1.5×10-5〜1.1×10-4mol/L、さらに好ましくは2.3×10-5〜4.6×10-5mol/L。
【0037】
(3)リン酸2水素ナトリウムを用いる場合
・リン酸イオン
通常8.3×10-7〜9×10-5mol/L、好ましくは1.7×10-5〜5.8×10-5mol/L、さらに好ましくは2.5×10-5〜5.0×10-5mol/L
ナトリウムイオン
通常1.0×10-5〜1.4×10-4mol/L、好ましくは2.6×10-5〜1.2×10-4mol/L、さらに好ましくは4.0×10-5〜7.8×10-5mol/L。
【0038】
前述のようにリン酸3ナトリウム物質をある一定量含有するか、もしくは上記のようにリン酸イオン及びナトリウムイオンをある一定量含有した乳含有コーヒーは、生豆換算5%以上の高濃度のコーヒー分を含む場合であろうと、製造工程で過酷な条件で殺菌してもゲル状沈殿を生じず品質を損なうことなく、また高温で長期保存してもリングやゲル状沈殿が発生することなく、安定状態を維持することができる。
【0039】
ゲル状沈殿は、まず製造工程中の加熱殺菌処理で生じるものであるため、上記の効果を十分発揮するためには、本発明の乳含有コーヒーは、殺菌処理より前にコーヒー調合液にリン酸3ナトリウム等を添加し、リン酸3ナトリウム物質またはリン酸イオン及びナトリウムイオンの存在下で殺菌処理され製造されることが好ましい。
【0040】
かかる観点から、本発明はまた、製造工程においても沈殿を生じず、また商品として長期保存した場合でも沈殿を生じない品質安定性に優れた商品価値の高い密封容器入り乳含有コーヒーの製造方法を提供するものである。
【0041】
一般に密封容器入り乳含有コーヒーは、コーヒー抽出液及び乳原料等の十分な混合溶解、水配合による調整、均質機での均質化、例えばプレートヒーター上での加温、密封容器への注入・充填、巻締め、殺菌処理及び冷却といった一連の工程により製造される。
【0042】
本発明は、この製造工程中、殺菌処理をリン酸3ナトリウム物質0.01〜1重量%の存在下で行うことを特徴とする、生豆換算5%以上のコーヒー分を含有する密封容器入り乳含有コーヒーの製造方法である。
【0043】
本発明の方法は、殺菌処理前に、コーヒー調合液にリン酸3ナトリウム物質が0.01〜1重量%の割合で含まれるようにリン酸塩を配合し、その条件下で殺菌処理を行うことにより達成される。
【0044】
ここで使用されるリン酸塩としては、前述するように、溶液中にリン酸3ナトリウムを溶解した場合と同様な状態・挙動を示すリン酸塩等であればよく、具体的には、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム等のリン酸塩、又は当該リン酸塩もしくはリン酸と水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の塩基性塩との組み合わせが挙げられる。
【0045】
好ましくはリン酸3ナトリウムであって、この場合配合される量としては、0.01〜1重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%、より好ましくは0.03〜0.2重量%が挙げられる。また、リン酸3ナトリウムの代わりにリン酸水素2ナトリウムまたはリン酸2水素ナトリウム等を使用する場合は、前述の配合割合でコーヒー調合液に配合し、さらに前述するように炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の塩基性塩を併せて配合することが好ましい。
【0046】
これらのリン酸塩を配合する工程・時期は特に規定されず、リン酸3ナトリウム物質が少なくとも殺菌処理時にコーヒー調合液中に含まれていたらよい。
【0047】
殺菌処理は、上記条件を満たせば、殺菌条件や殺菌装置等によって特に制限されず、一般的に使用される殺菌条件が広く採用できる。通常は、約120〜125℃で約20〜40分処理するレトルト殺菌が用いられるが、特にこれに限定されず、プレート殺菌、オートクレーブ殺菌等、食品に採用される種々の殺菌処理を挙げることができる。
【0048】
また、コーヒー調合液には、リン酸3ナトリウム物質以外にコーヒー抽出液(もしくはインスタントコーヒー、コーヒーエキス)及び乳原料が含有されていたらよいが、その他に糖類、中和剤、カラメル、乳化剤、香料、食塩、食用油脂、安定剤、酸化防止剤、保存料、色素、酸味料などが含まれていてもよい。
【0049】
加熱殺菌処理時のコーヒー調合液のpHは、殺菌後の製品がpH5.5〜8程度の範囲、好ましくはpH5.8〜6.8程度 、より好ましくはpH6.4〜 6.6程度の範囲になるように適宜調整されればよいが、具体的な加熱殺菌処理時のpHとしては、通常pH5.5〜8.5程度の範囲、好ましくはpH5.8〜7.3程度の範囲、より好ましくはpH6.4〜7.1程度の範囲が挙げられる。なお、pHを調整するために、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの中和剤を使用することもできる。
【0050】
なお、本発明には、以下の態様のものが含まれる。
【0051】
(1)生豆換算5%以上のコーヒー分を含有するコーヒーであって、リン酸3ナトリウム物質を0.01〜1重量%含有し、pHが5.5〜8の範囲であることを特徴とするゲル状沈殿を実質的に含有しない密封容器入り乳含有コーヒー。
【0052】
(2)生豆換算5%以上のコーヒー分を含有するコーヒーであって、ナトリウムイオンを1.8×10-6〜2×10-4mol/L、リン酸イオンを6×10-7〜9×10-5mol/Lの範囲で含有し、pHが5.5〜8の範囲であることを特徴とするゲル状沈殿を実質的に含有しない密封容器入り乳含有コーヒー。
【0053】
(3)リン酸3ナトリウム物質0.01〜1重量%の存在下、pH5.5〜8.5のコーヒー調合液を殺菌処理して製造することによって得られる、ゲル状沈殿を実質的に含有しないことを特徴とする上記(1)又は(2)記載の密封容器入り乳含有コーヒー。
【0054】
(4)リン酸3ナトリウム質が、リン酸3ナトリウムである(1)又は(3)記載の密封容器入り乳含有コーヒー。
【0055】
(5)生豆換算7%以上のコーヒー分を含有するコーヒーであることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の密封容器入り乳含有コーヒー。
【0056】
(6)リン酸3ナトリウム物質0.01〜1重量%の存在下で、pH5.5〜8.5のコーヒー調合液を殺菌処理することを特徴とする、(1)乃至(5)のいずれかに記載の密封容器入り乳含有コーヒーの製造方法。
【0057】
(7)リン酸3ナトリウム物質が、リン酸3ナトリウムである(6)記載の密封容器入り乳含有コーヒーの製造方法。
【0058】
【実施例・比較例】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0059】
実施例1
▲1▼砂糖、全脂粉乳、脱脂粉乳及びリン酸3ナトリウムを表1に示す割合で粉体混合し、水20部に投入し、70℃で10分間、加熱攪拌溶解した。
【0060】
▲2▼コーヒー抽出液(コーヒー生豆換算13%)68部を▲1▼で調製した溶液と混合して、10%の炭酸水素ナトリウム溶液にてpH6.7に調整した。
【0061】
なお、コーヒー豆はアラビカ種:ロブスタ種=8:2で、ともに焙煎度(L値)27〜21のものを用い、常法に従って抽出液を調整した。
【0062】
▲3▼全量を水にて100部に調整し、70℃、150kg/cmにて均質化した。
【0063】
▲4▼缶に充填し、124℃、20分間レトルト殺菌機により殺菌を行ってコーヒー生豆換算8.84%の缶入り乳含有コーヒーを調製した。
【0064】
比較例1
リン酸3ナトリウムの使用をやめ、その他の点は実施例1と同様にしてコーヒー生豆換算8.84%の缶入り乳含有コーヒーを得た(表2参照)。
【0065】
実施例2
▲1▼砂糖、全脂粉乳、脱脂粉乳、HLB15のパルミチン酸を主要脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル、HLB5.3のグリセリンコハク酸エステル及びリン酸3ナトリウムを表1に示す割合で粉体混合し、水20部に投入し、70℃で10分間、加熱攪拌溶解した。
【0066】
▲2▼コーヒー抽出液(コーヒー生豆換算13%)68部を▲1▼で調製した溶液と混合して、10%の炭酸水素ナトリウム溶液にてpH6.7に調整した。
【0067】
なお、コーヒー豆はアラビカ種:ロブスタ種=8:2で、ともに焙煎度(L値)27〜21のものを用い、常法に従って抽出液を調整した。
【0068】
▲3▼全量を水にて100部に調整し、70℃、150kg/cmにて均質化した。
【0069】
▲4▼缶に充填し、124℃、20分間レトルト殺菌機により殺菌を行ってコーヒー生豆換算8.84%の缶入り乳含有コーヒーを調製した。
【0070】
比較例2
リン酸3ナトリウムの使用をやめ、その他の点は実施例2と同様にしてコーヒー生豆換算8.84%の缶入り乳含有コーヒーを得た(表2参照)。
【0071】
実施例3
▲1▼水50部に、砂糖、牛乳、脱脂粉乳、HLB16のパルミチン酸を主要脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル、HLB5のステアリン酸を主要脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル、リン酸3ナトリウムをそれぞれ表1に示す割合で投入後、70℃に加温し、コーヒーエキス(生豆換算率80%)9部を加え、10分間加熱攪拌溶解した。
【0072】
なお、コーヒー豆はアラビカ種:ロブスタ種=8:2で、ともに焙煎度(L値)27〜21のものを用い、常法に従ってコーヒーエキスを調整した。
【0073】
▲2▼全量100部とし、70℃、200kg/cmにて均質化した。
【0074】
▲3▼これを缶に充填し、121℃、40分間レトルトにより殺菌を行ってコーヒー生豆換算7.2%の缶入り乳含有コーヒーを調製した。
【0075】
比較例3
リン酸3ナトリウムの使用をやめ、その他の点は実施例3と同様にしてコーヒー生豆換算7.2%の缶入り乳含有コーヒーを得た(表2参照)。
【0076】
実施例4
▲1▼水10部に、砂糖、HLB16のパルミチン酸を主要脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル、リン酸3ナトリウムを表1記載の割合で投入後、70℃で10分間攪拌溶解し、30℃まで冷却した。
【0077】
▲2▼▲1▼の溶液に牛乳15部を加え、これに10%炭酸水素ナトリウム溶液を1.4部を加えたコーヒー抽出液(コーヒー生豆換算12%)70部を更に加え、全量を100部に調製した。
【0078】
なお、コーヒー豆はアラビカ種:ロブスタ種=8:2で、ともに焙煎度(L値)27〜21のものを用い、常法に従って抽出液を調整した。
【0079】
▲3▼これを70℃に加温し、150kg/cmの圧力で均質化した。
【0080】
▲4▼次いで缶に充填し、121℃、35分間レトルトにより殺菌を行ってコーヒー生豆換算8.4%の缶入り乳含有コーヒーを調製した。
【0081】
比較例4
リン酸3ナトリウムの代わりにHLBが5のステアリン酸を主要脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステルを0.01部添加し、その他は実施例4と同様に調製してコーヒー生豆換算8.4%の缶入り乳含有コーヒーを調製した(表2参照)。
【0082】
実施例5
▲1▼砂糖、全脂粉乳、脱脂粉乳、HLB15のパルミチン酸を主要脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル、HLB5.3のグリセリンコハク酸エステル及びリン酸水素2ナトリウム及び炭酸ナトリウムを表1に示す割合で粉体混合し、水20部に投入し、70℃で10分間、加熱攪拌溶解した。
【0083】
▲2▼コーヒー抽出液(コーヒー生豆換算13%)68部を▲1▼で調製した溶液と混合して、10%の炭酸ナトリウム溶液にてpH6.7に調整した。
【0084】
なお、コーヒー豆はアラビカ種:ロブスタ種=8:2で、ともに焙煎度(L値)27〜21のものを用い、常法に従って抽出液を調整した。
【0085】
▲3▼全量を水にて100部に調整し、70℃、150kg/cmにて均質化した。
【0086】
▲4▼缶に充填し、124℃、20分間レトルト殺菌機により殺菌を行ってコーヒー生豆換算8.84%の缶入り乳含有コーヒーを調製した。
【0087】
比較例5
リン酸水素2ナトリウム及び炭酸ナトリウムの使用をやめ、炭酸水素ナトリウムを0.15部を添加してpHを調整し、その他の点は実施例5と同様にしてコーヒー生豆換算8.84%の缶入り乳含有コーヒーを得た(表2参照)。
【0088】
実施例6
▲1▼水に、砂糖、全脂粉乳、脱脂粉乳、HLB16のパルミチン酸を主要脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル、HLB5のステアリン酸を主要脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル、HLB5.3のグリセリンコハク酸エステル及びリン酸3ナトリウムを表1に示す割合で投入後、70℃に加温し、コーヒー抽出液(コーヒー生豆換算10%)50部を加え、10分間加熱攪拌溶解した。
【0089】
なお、コーヒー豆はアラビカ種のみを用い、焙煎度(L値)27〜21のものを用い、定法に従って抽出液を調整した。
【0090】
▲2▼全量を水にて100部に調整し、70℃、150kg/cmにて均質化した。
【0091】
▲4▼缶に充填し、121℃、40分間レトルト殺菌機により殺菌を行ってコーヒー生豆換算5.0%の缶入り乳含有コーヒーを調製した。
【0092】
比較例6
リン酸3ナトリウムの使用をやめ、炭酸水素ナトリウムでpHを調整し、その他の点は実施例6と同様にしてコーヒー生豆換算5.0%の缶入り乳含有コーヒーを得た(表2参照)。
【0093】
このようにして得られた実施例品1〜6及び比較例品1〜6について、ゲル状沈殿の発生、リング、官能検査などの品質評価試験を行った。
【0094】
その結果を表1及び表2に併せて記す。
【0095】
【表1】
Figure 0003622039
【0096】
【表2】
Figure 0003622039
【0097】
【実験例】
実験例1
▲1▼水15部に砂糖5重量部、HLB16のパルミチン酸を主要脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル0.04重量部及びHLBが5のステアリン酸を主要脂肪酸とするショ糖脂肪酸エステル0.01重量部をそれぞれ配合したものを4種類作成し、それらそれぞれにリン酸3ナトリウムを0.005重量部、0.01重量部、0.2重量部、0.5重量部、1重量部、1.2重量部を添加し、これを粉体混合し、70℃で10分間、攪拌溶解した。
【0098】
また、リン酸3ナトリウムに代えて、リン酸3ナトリウム1部につきリン酸水素2ナトリウム1部と炭酸ナトリウム0.5部を配合したもの、リン酸3ナトリウム1部につきリン酸2水素ナトリウム1部と炭酸ナトリウム1部を配合したもの、クエン酸3ナトリウムのみを配合したものも試料とした。
【0099】
▲2▼牛乳15部、コーヒー抽出液(コーヒー生豆換算12%)を68部加え、10%炭酸ナトリウム溶液にてpHを6.8〜8.5に調整した。
【0100】
▲3▼水にて全量を100部に調整し、70℃で150kg/cmの圧力にて均質化した。
【0101】
▲4▼85℃まで加温し、容器に充填し、124℃、20分間、レトルト殺菌機により殺菌を行って、コーヒー生豆換算8.16%の缶入り乳含有コーヒー(pH6.4〜8.1)を調製した。
【0102】
できあがった缶入り乳含有コーヒーを開缶し、液をピペットで吸い出し底部に沈殿が発生しているか確認した。結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
Figure 0003622039
【0104】
表3より、リン酸3ナトリウム物質の添加量が0.01重量%以上の添加量で殺菌後のゲル状沈殿が発生しないことが分かる。

Claims (8)

  1. 生豆換算5%以上のコーヒー分を含有するコーヒーであって、リン酸3ナトリウム物質を0.01〜1重量%含有することを特徴とするゲル状沈殿を実質的に含有しない密封容器入り乳含有コーヒー。
  2. 生豆換算5%以上のコーヒー分を含有するコーヒーであって、ナトリウムイオンを1.8×10-6〜2×10-4mol/L、リン酸イオンを6×10-7〜9×10-5mol/Lの範囲で含有することを特徴とする、請求項1に記載するゲル状沈殿を実質的に含有しない密封容器入り乳含有コーヒー。
  3. リン酸3ナトリウム物質0.01〜1重量%の存在下で、コーヒー調合液を殺菌処理して製造することによって得られる、ゲル状沈殿を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1又は2記載の密封容器入り乳含有コーヒー。
  4. リン酸3ナトリウム物質が、リン酸3ナトリウムである請求項1又は3記載の密封容器入り乳含有コーヒー。
  5. 生豆換算7%以上のコーヒー分を含有するコーヒーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の密封容器入り乳含有コーヒー。
  6. リン酸3ナトリウム物質0.01〜1重量%の存在下で、コーヒー調合液を殺菌処理することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の密封容器入り乳含有コーヒーの製造方法。
  7. リン酸3ナトリウム物質が、リン酸3ナトリウムである請求項6記載の密封容器入り乳含有コーヒーの製造方法。
  8. 殺菌処理前に、コーヒー調合液にリン酸3ナトリウム物質が0.01〜1重量%の割合で含まれるように、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、または当該リン酸塩もしくはリン酸と水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムとの組み合わせを配合し、その条件で殺菌処理することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の密封容器入り乳含有コーヒーの製造方法。
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