JP3759460B2 - 抹茶含有ゲル状食品の製造方法および抹茶含有ゲル状食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抹茶プリンに代表されるような、抹茶を含有するゲル状食品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
抹茶プリンなどの抹茶を含有する食品を工業的に製造する際には、従来より、加熱殺菌工程で食品の色調を変化させないようにすることが、製品外観の上で重要な課題とされてきた。
【0003】
抹茶の緑色はクロロフィルに由来するものであり、クロロフィルの緑色の加熱変化を抑制する方法として、次のような方法が知られていた。すなわち、
(1)銅塩によってクロロフィルを固定する方法、
(2)pHを調製することによってクロロフィルの分解を防止する方法、
(3)加熱殺菌方法として高温短時間殺菌(UHT殺菌)を採用することによってクロロフィルの分解を防止する方法、等の方法である(食品の変色とその化学、p135、光琳、昭和42年)。
【0004】
ところが、これらの方法を例えば抹茶プリンに適用しようとすると、上記(1)の方法は、銅塩を最終製品である抹茶プリンに残留させないようにすることが困難であった。上記(2)の方法ではpHを7.0〜8.0にする必要があるが、通常の抹茶の好ましい風味のpH領域は6.0〜6.6であり、この好ましい風味のpH領域から外れてしまうこと、またpH7.0〜8.0ではアミノカルボニール反応が促進されるので、抹茶プリンに含まれる乳成分と糖類によっては、褐変化が促進されるという問題があった。上記(3)の方法は、加熱を短時間とすることにより抹茶の色調変化を軽減させることはできるが、殺菌時の加熱温度を滅菌レベルまで高くすると、加熱時間をより短くする必要があるので殺菌が不十分となり、別の殺菌方法を併用する必要が生じるという問題があった。
【0005】
また、緑色野菜の加工法に関する特開平10−229816号公報には、緑色野菜を蛋白質またはペプチドを含有するアルカリ溶液の中でブランチングし、有機酸又はその塩類の液中で中和する方法が述べられている。この方法は、野菜中の酵素を失活するブランチングの方法であり、殺菌または滅菌を行なう方法ではなく、また抹茶には適用するのが難しい方法である。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、例えば抹茶プリンなど、抹茶を含有するゲル状食品を製造する際に、加熱による色調の変化を抑制することができる製造方法および該製造方法で得られた抹茶含有ゲル状食品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、例えば抹茶プリン等、少なくとも抹茶を含むゲル状食品について、加熱殺菌工程での抹茶の色調変化を抑制する方法について鋭意研究した結果、抹茶含有ゲル状食品の原料を、油中水型乳化物を含む油相部と、水を連続相とする水相部とに分けてそれぞれ調製し、油相部の方に抹茶を含有させておき、これら水相部と油相部とを混合、乳化して水中油型乳化物からなる混合液とした後に、該混合液をゲル化させて抹茶含有ゲル状食品を製造することによって、製造過程での加熱による抹茶の色調変化を軽減して抹茶含有ゲル状食品を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の抹茶含有ゲル状食品の製造方法は、油脂と水分を含む油中水型乳化物、抹茶、および乳化剤を含有し、油脂を連続相とする油相部と、乳化剤を含有し、水を連続相とする液からなる水相部とを混合して、水中油型乳化物からなる混合液を得、該混合液をゲル化することを特徴とする。
本発明の抹茶含有ゲル状食品の製造方法は、前記混合液を、加熱殺菌または加熱滅菌する工程を含むことができる。
【0009】
本発明において、前記油中水型乳化物に対する前記抹茶の含有率が25質量%以下であることが好ましい。
前記油中水型乳化物に対する、前記油相部に含まれる前記乳化剤の含有率が1.0質量%以上であることが好ましい。
前記油相部に含まれる乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
前記水相部における乳化剤の含有率が0.1質量%以上であることが好ましい。
前記水相部に含まれる乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
本発明はまた、本発明の抹茶含有ゲル状食品の製造方法により得られる抹茶含有ゲル状食品を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の抹茶含有ゲル状食品は、少なくとも抹茶、乳化剤、水、および油中水型乳化物を原料として製造されるゲル状食品であり、代表的な例は抹茶プリンである。
本発明で用いられる抹茶は、粉末のものが油相部への分散性が良いので好ましく用いられる。
本発明で用いられる油中水型乳化物は、油脂と水分を含む乳化物であって食品の原材料として使用可能なものであればよく、具体例としては、バター、マーガリン、バタークリーム、ファットスプレッド、チョコレート、カカオバター等が挙げられる。
【0011】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステルを用いると、加熱による抹茶の色調変化を抑える効果に優れるので好ましく、異なる種類の乳化剤を2種以上併用してもよい。具体的には、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびモノグリセリン有機酸エステルよりなる群から選ばれる1種または2種以上が好ましく用いられる。
ここで、一般的に、乳化剤として用いられるグリセリン脂肪酸エステルは、大きく分類して、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびモノグリセリン有機酸エステルの3種類がある。ここでの脂肪酸としては、主にステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、リシノレイン酸等が用いられ、これらの脂肪酸とグリセリンとのエステルをモノグリセリン脂肪酸エステルと言い、これらの脂肪酸と、重合したグリセリンとのエステルをポリグリセリン脂肪酸エステルと言う。また、有機酸としては、主に、酢酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸等が用いられ、これらの有機酸とモノグリセリン脂肪酸エステルとのエステルをモノグリセリン有機酸エステルと言う。
モノグリセリン脂肪酸エステルの例としては、モノグリセリンオレイン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸エステル、モノグリセリンパルミチン酸エステル等が挙げられ、ポリグリセリン脂肪酸エステルの例としては、ヘキサグリセリンオレイン酸エステル、オクタグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンラウリン酸エステル等が挙げられ、モノグリセリン有機酸エステルの具体例としては、モノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステル、モノグリセリンクエン酸ステアリン酸エステル、モノグリセリン乳酸ステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0012】
本発明の抹茶含有ゲル状食品の原料として、上記抹茶、乳化剤、水、および油中水型乳化物の他に、その他の原料も必要に応じて適宜使用することができる。その他の原料としては、例えば、砂糖、水飴、ブドウ糖、乳糖、デキストリン、異性化糖などの糖類;前記油中水型乳化物以外の乳製品、例えば脱脂粉乳、クリーム、牛乳、チーズ、練乳など;アミノ酸、核酸などの調味料;ゲル化剤;色素;香料等が挙げられる。
本発明の抹茶含有ゲル状食品は、冷却によってゲル化するゲル化剤を用い、静置冷却によりゲル化させることが好ましい。冷却によってゲル化するゲル化剤の具体例としては、寒天、カラギナン、ファーセルラン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、キサンタンガムとローカストビンガムの混合ゲル化剤等のハイドロコロイドが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
図1は本発明の抹茶含有ゲル状食品の製造方法の一実施形態を説明する工程図である。本実施形態においては、まず、抹茶、乳化剤、および油中水型乳化物からなる油相部と、乳化剤を含有し、水を連続相とする液からなる水相部とをそれぞれ調製する。
油相部に含有させる乳化剤と、水相部に含有させる乳化剤とは、同じものであってもよく、互いに異なっていてもよい。
前記その他の原料を使用する場合、連続相が油脂であるものは油相部に含有させ、それ以外のものは水相部に含有させることが好ましい。ただし、香料については、バターとバターフレーバーは共に油相部に含有させ、脱脂粉乳とミルクフレーバーは共に水相部に含有させるなど、同種の香りを有する原料と香料とは同じ相(水相部または油相部)に含有させることが好ましい。
【0014】
油相部の調製は、抹茶、乳化剤、油中水型乳化物、および油相部に含有させるその他の原料を混合することによって行われるが、好ましくは、まず油中水型乳化物を必要に応じて加温して溶解させたものを撹拌しながら、これに乳化剤、抹茶をこの順に添加し、連続相が油脂である状態を保持したままで混合する。その他の原料を油相部に含有させる場合、該その他の原料は、油中水型乳化物を溶解させる際に添加しておくことが好ましい。
油相部に配合する抹茶の量は、油中水型乳化物に対する抹茶の含有率が25質量%以下であることが好ましく、これより多いと加熱による色調変化を抑える効果が充分に得られなくなる。また抹茶の含有率の下限は0より大きければよいが、抹茶の好ましい風味を得るためには、抹茶含有ゲル状食品中における含有率を0.5質量%以上とすることが好ましい。
また油相部に配合する乳化剤の量は、油中水型乳化物に対する該乳化剤の含有率が1.0質量%以上であることが好ましく、これより少ないと加熱による色調変化を抑える効果が充分に得られない。また乳化剤の含有率が高すぎると、風味が損なわれるおそれがあるので、抹茶含有ゲル状食品中における乳化剤の含有率、すなわち油相部中の乳化剤と水相部中の乳化剤との合計の、抹茶含有ゲル状食品全体に対する割合が0.5質量%以下となるように設定することが好ましい。
【0015】
水相部は、水に乳化剤、および水相部に含有させるその他の原料を混合して、水を連続相とする液に調製する。原料を混合した後に加温しながら撹拌して、原料を完全に溶解させることが好ましい。また水相部に脂質が含まれる場合は、水相部全体が水中油型乳化物となるように調製する。
水相部における乳化剤の含有率は、0.1質量%以上であることが好ましく、これより少ないと加熱による色調変化を抑える効果が充分に得られない。
【0016】
次に、油相部と水相部とを混合して、水中油型乳化物からなる混合液を得る。具体的には、水相部を高速撹拌しながら油相部を添加して、全体が水中油型乳化物となるように乳化(予備乳化)する。
【0017】
そして、得られた混合液に対して、必要に応じて加熱殺菌処理または加熱滅菌処理を行う。
この加熱殺菌処理または加熱滅菌処理は、混合液を調製した後、ゲル化させる前に行えばよく、後述する均質化の前に行ってもよいし均質化の後に行ってもよい。均質化の前に殺菌または滅菌を行う場合は、均質化後の状態が熱によって変化しないという利点が得られ、均質化後に殺菌または滅菌を行う場合は、均質機のサニタリー性に完全性を要求されないという利点がある。
また抹茶含有ゲル状食品の保存期間が短い場合など、条件によっては加熱殺菌処理または加熱滅菌処理を省略できる場合もある。
【0018】
加熱殺菌処理または加熱滅菌処理時の操作条件は、加熱温度が低すぎたり加熱時間が短すぎたりすると殺菌または滅菌が十分に行われず、加熱温度が高すぎたり加熱時間が長すぎたりすると風味の損失や成分の劣化が生じるおそれがあるので、配合成分の種類に応じてこれらの不都合が生じないように設定する。加熱殺菌処理を行う場合の加熱条件は、例えば、加熱温度90℃〜120℃、加熱時間10分〜15秒とすることができる。また、加熱滅菌処理を行う場合の加熱条件は、例えば、加熱温度125℃〜145℃、加熱時間15秒〜2秒とすることができる。
加熱殺菌処理または加熱滅菌処理を行った後は、混合液中の成分の熱による劣化を抑えるために、混合液を直ちに冷却することが好ましい。このときの冷却温度は、加熱殺菌処理または加熱滅菌処理の次に行う工程に応じて適切な温度に設定する。
【0019】
前記混合液は、これを均質化することが好ましい。例えば均質機を用い、加温および加圧をしながら均質化するのが好ましい。均質化する時の混合液の温度や圧力が、高すぎると均質化後に再凝集が起こり、低すぎると均質化が不十分になるので、配合成分の種類に応じてこれらの不都合が生じないように設定する。例えば温度は60〜90℃程度とされ、圧力は5〜15MPa程度とされる。
【0020】
そして、これらの工程を経た混合液を冷却した後、カップ等の適宜の容器に充填してアルミ蓋などでシールし、静置状態で冷却してゲル化させることによって、抹茶含有ゲル状食品が得られる。
容器へ充填する際の混合液の温度は、高すぎるとその後の冷却工程での熱負荷が大きくなり、低すぎると充填前に混合液中で一部ゲル化が進行してゲル化不良になるので、例えば50〜60℃程度とされる。
ゲル化させるときの冷却温度は、使用したゲル化剤がゲル化を生じる温度であればよいが、概ね10℃以下、好ましくは5〜10℃程度の冷蔵庫内に静置させることによって好適にゲル化させることができる。
なお、容器および蓋は、殺菌済みのものを用い、容器への充填およびシールは無菌的に行うのが好ましい。
【0021】
本発明によれば、抹茶含有ゲル状食品の原料を、油中水型乳化物を含有する油相部と水を連続相とする水相部とに分けてそれぞれ調製し、油相部の方に抹茶を含有させておき、これら水相部と油相部とを混合、乳化して水中油型乳化物からなる混合液とした後に、該混合液をゲル化させて抹茶含有ゲル状食品を製造することにより、抹茶を含有する混合液に対して加熱処理が施された際の、抹茶の色調変化を抑制することができる。したがって、抹茶が有する本来の色調を生かして、外観に優れた、製品価値の高い抹茶含有ゲル状食品を製造することができる。また、抹茶が本来有する色調を充分に生かすことができるので、色調を補強するための着色剤等を使用せずに、または着色剤を使用しても僅かな使用量で、色調に優れた抹茶含有ゲル状食品を製造することができる。さらに、製造工程中における抹茶の色調変化が少ないので、好ましい色調を得るのに必要な抹茶の使用量を従来よりも低減させることが可能であり、これによって製造コストの削減を図ることができる。
また、前記混合液に対して加熱殺菌処理または加熱滅菌処理を施すことができるので、保存性に優れた抹茶含有ゲル状食品を得ることができる。
【0022】
なお、本発明における抹茶含有ゲル状食品は、好ましくは抹茶プリンであるが、少なくとも抹茶、乳化剤、水、および油中水型乳化物を原料として製造されるゲル状食品であればよく、例えば抹茶ババロア、抹茶カスタードクリーム、抹茶ブラマンジェ、抹茶羊羹等にも本発明は適用可能である。
【0023】
【実施例】
以下、具体的な実施例を示して本発明の効果を明らかにする。以下の試験および実施例における配合割合は全て質量基準で表している。
[試験1]
(目的)
この試験は、油相部の配合および水相部の配合の違いによる、抹茶プリン(抹茶含有ゲル状食品)の色調の違いを調べる目的で実施した。
(試料の調製)
表1の配合で、油相部および水相部をそれぞれ調製した。油相部は、まずバターを60℃に加温して溶解させ、これにグリセリン脂肪酸エステル(乳化剤)および抹茶をこの順に混合した。水相部は、水相部の原料全部を混合し、攪拌しながら60℃に加温して溶解させ、水中油型乳化物とした。
そして、水相部の中に油相部を添加しながら、ホモミキサー(特殊機化工業社製)で乳化して水中油型乳化物とし、さらに均質機(三丸機械工業社製)で均質化した。均質化時の温度は60℃、圧力は10MPaとした。
均質化後の混合液を半分に分け、一方は、50℃に冷却し、カップに充填した後、冷蔵庫で10℃に静置冷却して抹茶含有ゲル状食品を得た。これを加熱前試料とした。また他方は、前記均質化後の混合液を90℃に加温し、90℃で10分間保持することによって加熱殺菌した後、50℃に冷却し、カップに充填し、冷蔵庫で10℃に静置冷却して抹茶含有ゲル状食品を得た。これを加熱後試料とした。
このようにして、テストNo.1〜4のそれぞれについて、加熱前試料と加熱後試料の2種類の試料を調製した。
なお、以下の試験において、グリセリン脂肪酸エステルとしては、特に断りのない限りモノグリセリンステアリン酸エステルを使用した。
【0024】
【表1】
【0025】
(評価方法)
個々の試料について、カップの上表面の反射光を分光測色計(ミノルタ社製)で計測し、L*,a*,b*表色系(CIE 1976)で出力させ、加熱前試料と加熱後試料との色差を求めた。色差は、L*,a*,b*色差(CIE 1976)に準処して、L*,a*,b*値の差をそれぞれ2乗し、それらの合計の平方根({(L*値の差)2+(a*値の差)2+(b*値の差)2}1/2)の値を色差の値とした。この色差の値が大きいほど、色調の変化が大きいことを示す。抹茶含有ゲル状食品においては、この色差の値が10未満であれば商品として許容される程度の色調変化であるとして、以下の試験例では色差が10未満であれば許容範囲にあると判定した。
【0026】
(結果)
試験1の結果を表2に示す。
表2より、色差の値はテストNo.1>2>3>4の順で大きく、色差が10未満であるのは、テストNo.4であった。
この結果より、抹茶とグリセリン脂肪酸エステルを油相部に含有させ、水相部にグリセリン脂肪酸エステルを含有させると、熱による色調変化が効果的に抑えられることが分かった。
【0027】
【表2】
【0028】
[試験2]
(目的)
この試験は、油相部に配合する抹茶の量(油中水型乳化物に対する含有率)の違いによる、抹茶プリンの色調の違いを調べる目的で実施した。
(試料の調製)
油中水型乳化物としてバターを用い、表3の配合で試験1と同一の方法で調製した。
(評価方法)
試験1と同一の方法で評価した。
【0029】
【表3】
【0030】
(結果)
この試験の結果を表4に示す。
表4より、加熱前試料と加熱後試料との色差が10未満であったのは、テストNo.5,6,8,9であった。
この結果より、油中水型乳化物に対する抹茶の含有率が25質量%を超えると、熱による色調変化を抑制する効果が不十分になることが分かった。
【0031】
【表4】
【0032】
[試験3]
(目的)
この試験は、油相部に配合する乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)の量(油中水型乳化物に対する含有率)の違いによる、抹茶プリンの色調の違いを調べる目的で実施した。
(試料の調製)
油中水型乳化物としてバターを用い、表5の配合で試験1と同一の方法で調製した。
(評価方法)
試験1と同一の方法で評価した。
【0033】
【表5】
【0034】
(結果)
この試験の結果を表6に示す。
表6より、加熱前試料と加熱後試料との色差が10未満であったのはテストNo.12〜15であった。
この結果より、油中水型乳化物に対する乳化剤の含有率が1.0質量%以上の範囲で、熱による色調変化が効果的に抑えられることが分かった。
【0035】
【表6】
【0036】
[試験4]
(目的)
この試験は、油相部に含有させる乳化剤の種類の違いによる、抹茶プリンの色調の違いを調べる目的で実施した。
(試料の調製)
表7の配合で試験1と同一の方法で調製した。
なお本試験では、油相部に含有させる乳化剤としてレシチン、蔗糖脂肪酸エステルである蔗糖ステアリン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルであるプロピレングリコールステアリン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルであるソルビタンステアリン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるポリグリセリンステアリン酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルであるモノグリセリンステアリン酸エステル、およびモノグリセリン有機酸エステルであるモノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステルの7種類をそれぞれ用いた。
(評価方法)
試験1と同一の方法で評価した。
【0037】
【表7】
【0038】
(結果)
この試験の結果を表8に示す。
表8より、加熱前試料と加熱後試料との色差が10未満であったのはテストNo.20〜22であった。
この結果より、熱による色調変化を抑えるのに有効な油相部中の乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン有機酸エステル及びモノグリセリン脂肪酸エステルで、これらは総称してグリセリン脂肪酸エステルの範疇にあるものであることが分かった。
【0039】
【表8】
【0040】
[試験5]
(目的)
この試験は、水相部における乳化剤の含有量の違いによる、抹茶プリンの色調の違いを調べる目的で実施した。
(試料の調製)
表9の配合で試験1と同一の方法で調製した。
(評価方法)
試験1と同一の方法で評価した。
【0041】
【表9】
【0042】
(結果)
この試験の結果を表10に示す。
表10より、加熱前試料と加熱後試料との色差が10未満となったのは、テストNo.24〜27であった。
この結果より、水相部における乳化剤の含有率が0.1%以上の範囲で、熱による色調変化が効果的に抑えられることが分かった。
【0043】
【表10】
【0044】
[試験6]
(目的)
この試験は、水相部に含有させる乳化剤の種類の違いによる、抹茶プリンの色調の違いを調べる目的で実施した。
(試料の調製)
表11の配合で試験1と同一の方法で調製した。
なお本試験では、水相部に含有させる乳化剤としてレシチン、蔗糖脂肪酸エステルである蔗糖ステアリン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルであるプロピレングリコールステアリン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルであるソルビタンステアリン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルであるポリグリセリンステアリン酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルであるモノグリセリンステアリン酸エステル、およびモノグリセリン有機酸エステルであるモノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステルの7種類をそれぞれ用いた。
(評価方法)
試験1と同一の方法で評価した。
【0045】
【表11】
【0046】
(結果)
この試験の結果を表12に示す。
表12より、加熱前試料と加熱後試料との色差が10未満であったのはテストNo.32〜34であった。
この結果より、熱による色調変化を抑えるのに有効な水相部中の乳化剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン有機酸エステル及びモノグリセリン脂肪酸エステルで、これらは総称してグリセリン脂肪酸エステルの範疇にあるものであることが分かった。
【0047】
【表12】
【0048】
[実施例1〜7]
表13に示すテストNo.35〜41のそれぞれの配合割合で、7種類の抹茶プリンを製造した。
すなわち、油相部は、乳化剤及び抹茶以外の原料を60℃に加温して溶解させたものを攪拌しながら、これに乳化剤、抹茶の順に添加し、混合して調製した。一方、水相部は、水に、水相部の原料を混合した後、60℃に加温して溶解させた。
そして、得られた水相部をミキシングタンク(ヤスダファインテ社製)で高速攪拌しながら、これに油相部を添加して予備乳化させ、全体を水中油型の乳化物と成した後、プレート式殺菌機(森永エンジニアリング社製)で、140℃に加温し2秒間保持することによって滅菌した。加熱滅菌後、80℃に冷却し、均質機(三丸機械工業社製)を用い15Mpaの圧力で均質化し、60℃に冷却して、カップ充填機(トーワテクノ社製)でカップに充填し、アルミ蓋をシールした後、冷蔵庫で10℃以下に静置冷却して、7種類の抹茶プリンを製造した。
なお、乳化剤としてはポリグリセリン脂肪酸エステルであるポリグリセリンステアリン酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルであるモノグリセリンステアリン酸エステル、またはモノグリセリン有機酸エステルであるモノグリセリンコハク酸ステアリン酸エステルを用いた。
このようにして製造した抹茶プリンは、7種類いずれも良好な抹茶の風味を有し、抹茶特有の色調を有した外観の良い抹茶プリンであった。
また、各実施例の抹茶プリンについて、試験1と同一の方法で加熱殺菌前と加熱殺菌後の色差を求めたが、いずれの抹茶プリンも色差が10未満であった。
更に、これらの抹茶プリンは140℃で2秒間という加熱条件で滅菌したものであるので、37℃で5日間の増菌テスト後も無菌状態が保持されていた。
【0049】
【表13】
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、抹茶含有ゲル状食品を、熱による色調の劣化を抑制しながら製造することができる。したがって、加熱殺菌工程または加熱滅菌工程を有する工程で工業的に製造することができ、外観に優れるとともに、保存性も良好な抹茶含有ゲル状食品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の抹茶含有ゲル状食品の製造方法の一実施形態を説明する工程図である。
Claims (8)
- 油脂と水分を含む油中水型乳化物、抹茶、および乳化剤を含有し、油脂を連続相とする油相部と、乳化剤を含有し、水を連続相とする液からなる水相部とを混合して、水中油型乳化物からなる混合液を得、該混合液をゲル化することを特徴とする抹茶含有ゲル状食品の製造方法。
- 前記混合液を、加熱殺菌または加熱滅菌する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の抹茶含有ゲル状食品の製造方法。
- 前記油中水型乳化物に対する前記抹茶の含有率が25質量%以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の抹茶含有ゲル状食品の製造方法。
- 前記油中水型乳化物に対する、前記油相部に含まれる前記乳化剤の含有率が1.0質量%以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の抹茶含有ゲル状食品の製造方法。
- 前記油相部に含まれる前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の抹茶含有ゲル状食品の製造方法。
- 前記水相部における乳化剤の含有率が0.1質量%以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の抹茶含有ゲル状食品の製造方法。
- 前記水相部に含まれる乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の抹茶含有ゲル状食品の製造方法。
- 請求項1ないし7のいずれかの製造方法により得られる抹茶含有ゲル状食品。
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