JP3302640B2 - クリ−ム及びその製造方法 - Google Patents
クリ−ム及びその製造方法Info
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Description
れ、レトルト殺菌による褐変化及び粘度上昇が抑制され
た風味の良好なクリーム(発泡性クリームを除く)及び
その製造方法に関する。
して得られる脂肪を含む油脂組成物で、共存する乳タン
パク質等の複雑な天然成分の相乗的作用で安定なo/w
型エマルジョンを形成しており、風味的には最高の品質
であることが知られているが、乳化安定性に乏しく、値
段が高いものであった。一方で、食用油脂と水を界面活
性剤を用いてo/w型に乳化して得られるエマルジョ
ン、いわゆるイミテ−ションクリ−ム(あるいは合成ク
リ−ム)は原料油脂と乳化剤の選択により一定品質のも
のが得られる。この際、生クリ−ム、牛乳、脱脂乳など
の乳成分を添加することによって、風味の優れた実用的
なクリ−ムを経済的に入手する技術が開発されている。
例えば、特開昭51-106750 号公報では、特定割合のレシ
チンと脂肪酸モノグリセリドからなる乳化剤を使用して
起泡性油脂組成物を得る方法、特開昭51-127800 号公報
では特定量のレシチン及びシュガ−エステルを含む油脂
組成物に牛乳又は脱脂乳を加えてo/w型のクリ−ム状
油脂組成物を得る方法等が知られている。
ームの保存性を向上させる目的で行なわれ、普通、レト
ルト殺菌では118 ℃で約20分程度、プレ−ト殺菌では11
0 〜120 ℃で数秒間、滅菌処理では140 〜150 ℃で数秒
間で実施される。これらの殺菌手段のうち、レトルト殺
菌処理により、保存性を向上させる試みがなされている
が、他の殺菌処理の条件と比べて、加熱時間が長いた
め、殺菌中にクリームが褐変化し、品質を損なうことが
あった。特に、ホイップ用クリームの場合は、脂肪含量
が高く、均質処理時の均質圧力が比較的低いため、脂肪
球の粒子径が大きくなり、レトルト殺菌により容易に乳
化が壊れ、クリームの粘度が著しく高くなり、ゲル化が
生じていた。その上、レトルト殺菌により、クリ−ムの
ホイップ性が低下するため、ホイップ用クリ−ムをレト
ルト殺菌した例は見られない。また、コーヒークリーム
の場合は、ホイップクリームに比べ、脂肪含量が低く、
均質処理時の均質圧力が高いため、脂肪球の粒子径は小
さく、乳化は安定であるが、レトルト殺菌により粘度が
上昇しやすかった。一方で、クリームに限らず、乳製品
は乳に含有される乳糖由来のカルボニル基とタンパク質
由来のアミノ基が反応し、アミノ・カルボニル反応と呼
ばれる一連の複雑な反応系を経て、製品が褐色を帯びる
褐変化が起こり易い。このような褐変化は乳製品本来の
白さを損なうばかりでなく、独特の異味、異臭を生じ、
この褐変反応は加熱処理等をきっかけに一度惹起される
と、低温で保存したとしても連鎖反応的に進行し、乳製
品の品質劣化による保存性低下という問題を引き起こし
ていた。
ストアでは、オープンタイプのショーケースを用いて商
品を陳列しているが、特に乳を主原料とする乳製品の場
合は、光により劣化し易いと言われている。これら乳を
主原料とする乳製品の光劣化とは、乳製品を長時間蛍光
灯や太陽光のもとに置くと製品中に含有される脂質が酸
化され、酸化臭が発生したり、タンパク質が分解され、
異臭が生じ、風味が悪くなる現象をいう。普通、商品の
陳列に使用されているショーケースには蛍光灯が設置さ
れており、この蛍光灯下に商品が長時間曝されることに
より、製品が光劣化を起こす問題が指摘されていた。こ
のように、乳を主原料とする乳製品、特に保存性の向上
のために、レトルト殺菌されたクリームは、乳に含有さ
れる物質間の相互作用により、加熱による褐変化と粘度
上昇、さらにショーケース等に陳列した際の光照射によ
る光劣化で、クリームの色、風味や組織等が低下する等
の問題があった。
下で保存されても風味の低下しないクリーム、さらには
レトルト殺菌可能で、保存性の良好なクリームが求めら
れている現状に鑑み、本発明では保存中の光劣化に伴う
風味の低下が抑制され、さらにはレトルト殺菌による褐
変化及び粘度上昇が抑制された保存性の良好なクリーム
(発泡性クリームを除く)及びその製造方法を提供する
ことを課題とする。
解決のために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも乳タン
パク質濃縮物を含有する溶液を従来の乳原料に代えて用
いることにより、得られるクリームの光劣化による風味
の低下が抑制でき、さらにはレトルト殺菌による褐変化
及び粘度上昇を抑制することができることを見い出し、
本発明を完成させるに至った。本発明は、少なくとも乳
タンパク質濃縮物を含有する溶液を水相として用いて得
られるクリームに関する。また本発明は、乳タンパク質
濃縮物が、透析濾過膜及び/又は限外濾過膜処理された
脱脂乳を加熱殺菌し、濃縮乾燥したタンパク質含量50
%以上のものであるクリーム(発泡性クリームを除く)
に関する。また本発明は、少なくとも乳タンパク質濃縮
物を含有する溶液からなる水相と油相を乳化剤を用いて
乳化することを特徴とするクリームの製造方法に関す
る。また本発明は、少なくとも乳タンパク質濃縮物を含
有する溶液からなる水相と油相を乳化剤を用いて乳化
し、レトルト殺菌することを特徴とするクリーム(発泡
性クリームを除く)の製造方法に関する。
される乳糖由来のカルボニル基とタンパク質由来のアミ
ノ基が反応し、アミノ・カルボニル反応と呼ばれる一連
の複雑な反応系を経て、製品が褐色をおびる褐変化が起
こり易く、クリ−ム本来の白さを損なうばかりでなく、
独特の異味、異臭を生じ、この褐変反応は加熱処理等を
きっかけに一度惹起されると、低温で保存したとしても
連鎖反応的に進行する。
質、ビタミン類、ミネラル類が主要な成分として含有さ
れる。このうち、タンパク質と脂質は光によって誘導さ
れる特有のフレーバーを生じることが知られており、こ
の現象は、通常、乳の光劣化と呼ばれ、乳に含有される
ビタミンB2 が関与していることが明らかにされている
(Azzara C.D,and Campbell L.B.;In Off-flavors in F
oods and Beverages,P335,Elsevier Science Pub.,Amst
erdam(1992)) 。すなわち、乳に含有されるビタミンの
1つであるビタミンB2 は光の存在下で、乳中のアミノ
酸であるメチオニンからメチオナールを生成させる触媒
として働く。このメチオナールはヒナタ臭と言われる、
一般に食品にとっては好ましくない臭いとして感じられ
る。さらにメチオナールは、風味劣化の原因となるメル
カプタン類やスルフィド類に変換される。また、メチオ
ニンからメチオナールが生成されるときに、ビタミンB
2 は還元型のビタミンB2 となる。この還元型のビタミ
ンB2 が再び酸化されるときに活性酸素を生じ、この活
性酸素は不飽和脂肪酸を容易に自動酸化して酸化臭を発
生させる。さらに脂質の劣化は、蛋白質の光による分解
により誘導される。このようにタンパク質の光劣化によ
る分解物の何らかの作用で脂質の酸化が誘導され、乳の
風味劣化が生じると言われている。
の溶解液が用いられ、これを界面活性剤により油相と乳
化してO/W型のエマルジョンとすることにより、調製
されるが、脱脂粉乳の溶解液を水相として用いたクリー
ムは、レトルト殺菌により乳化が壊れやすい。これはク
リームのようなエマルジョンでは、カゼインやホエータ
ンパク質のような乳タンパク質は、界面活性剤とともに
油脂界面付近に存在し、乳化の安定に寄与している。し
かしながら、レトルト殺菌のような過度の加熱を受ける
と、安定な状態でエマルジョンを形成している乳タンパ
ク質がカルシウムやマグネシウム等の2価の塩類と反応
して凝集し、乳化が不安定となる。さらに、ナトリウム
やカリウム等の1価又は2価の塩類と反応してホエータ
ンパク質が不溶化する。すなわち、レトルト殺菌等の過
酷な条件での加熱により、乳タンパク質が凝集し、クリ
ームの乳化が不安定となり、脂肪球も凝集し、クリーム
の粘度が上昇する。
菌用膜(Micro Filtration)等で除菌した後、透析濾過
膜(Dia Filtration)や限外濾過膜(Ultra Filtratio
n)により膜処理された保持液(リテンテート)を殺菌
又は滅菌後、濃縮、乾燥させて得られ、タンパク質を5
0%以上含有する粉末である。また、前記保持液、濃縮
液等もタンパク質を固形分当たり、50%以上含有する
粉末であれば、乳タンパク質濃縮物として用いられる。
乳タンパク濃縮物は、一般にMPC(Milk Protein Con
centrate)又はTMP(Total Milk Protein)と呼ばれ
ており、本発明ではこれらを総称してMPCと記す。本
発明では、少なくとも上記MPCを含有する溶液を従来
の乳原料に代えて用いるが、MPCはその調製過程にお
ける膜処理により、原料乳中に含有される乳糖、塩類、
ビタミンB2 等の成分が除去されている。このためレト
ルト殺菌によるクリームの褐変化の原因である乳糖由来
のカルボニル基とタンパク質由来のアミノ基とが反応す
るアミノ・カルボニル反応、光により惹起される乳中の
ビタミンB2 とタンパク質との反応により生成されるヒ
ナタ臭、さらには脂質の酸化による酸化臭の発生、さら
には、1価又は2価の塩類との反応による乳タンパク質
の凝集によるクリ−ムの粘度上昇も抑制される。
する。本発明では、まず油相を調製する。油脂を約65
℃に加温し、乳化剤0.1〜1.0重量%を添加混合し
て油相とする。ここで「油脂」としてはクリームの製造
に通常用いられる油脂であればいずれの油脂を使用して
もよく、例えば、菜種油、パーム油、ヤシ油等の植物性
油脂、バター、バターオイル、生クリーム、ラード等の
動物性油脂又はこれらの硬化油やエステル交換油、ある
いは混合油を挙げることができる。また、「乳化剤」と
しては、クリームの製造に通常用いられる乳化剤であれ
ばいずれの乳化剤を使用してもよく、例えばレシチン、
レシチン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタ
ン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪
酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレ
ングリコ−ル脂肪酸エステル等又はこれらの混合物を挙
げることができる。次いで、水相を調製する。水にMP
Cを0.1〜20重量%(タンパク質として20〜10
0%含有するように用いる)濃度となるように溶解し、
MPCの還元液を調製する。これに乳化剤を0.1〜
1.0重量%、塩類を0.05〜5.0重量%、増粘多
糖類を0.05〜3.0重量%添加して65℃まで加温
し、充分に攪拌し溶解させて、水相を調製する。なお、
このときMPCの還元液は、濃い目に調製し、水を加え
て濃度を調整してもよい。また、カゼイン、ホエ−など
のタンパク質素材、糖アルコ−ル、香料、着色料等を目
的とする最終製品に合わせて適宜添加することもでき
る。
加される「塩類」としては、クリームの製造に通常用い
られる塩類であれば、いずれの塩類を使用してもよく、
例えばリン酸塩、クエン酸塩等を挙げることができる。
また、「乳化剤」としては、クリームの製造に通常用い
られる乳化剤であれば、いずれの乳化剤を使用してもよ
く、例えばシュガーエステル、ポリグリセリン脂肪酸エ
ステル等を挙げることができる。さらに、「増粘多糖
類」としては、クリームの製造に通常用いられる増粘多
糖類であれば、いずれの増粘多糖類を使用してもよく、
例えばキサンタンガム、グアガム等を挙げることができ
る。
0℃に加温した油相を攪拌しながら少量ずつ添加し、ホ
モミキサーを用いて高速剪断(約5000rpm)で約
10分間予備乳化を行い、その後直ちに均質処理を行
い、水相と油相を完全に乳化させてクリームを得る。次
いで、得られたクリームをレトルト殺菌処理する。レト
ルト殺菌は、公知の方法に従って行えばよく、例えばレ
トルト殺菌機で118℃以上、30分間以上行なえばよ
い。このようにして得られる本発明のクリームは、デザ
ートの製造、飲料の製造、ポーションタイプにして飲料
用のクリームとして、さらにその他料理、又は製菓用の
素材として利用することができる。
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1 ホイップ用クリームの製造;表1に示す配合に従い、全
量で50kgのホイップ用クリームを調製した。先ず、
ナタネ硬化油(植田製油製)を70℃に加温し、乳化剤
としてレシチン(レシチンDX、日清製油製)、モノグ
リセリン脂肪酸エステル(エマルジーMS、理研ビタミ
ン製)及びソルビタン脂肪酸エステル(ポエムS−30
0、理研ビタミン製)を少量ずつ添加し、攪拌して油相
を調製した。次に、MPC(ALAPRO4850;タ
ンパク質82.3%、脂肪1.9%、灰分7.3%、ニ
ュージーランド製) を水に溶解し、MPCが完全に溶解
したところで、カゼインナトリウムを添加し、MPCの
溶解液を調製した。同様に脱脂粉乳とカゼインナトリウ
ム( サンラクトM−1;タンパク質89.4%、脂肪
0.6%、灰分4.6%、太陽化学製) を水に溶解し、
脱脂粉乳の溶解液を調製した。各溶解液に乳化剤とし
て、シュガーエステル(DKF−110、第一工業製薬
製)、リン酸塩(メタリン酸ナトリウム、太平化学産業
製)及びキサンタンガム(エコーガム、大日本製薬製)
を添加混合し、65℃に加温して2種の水相を調製し
た。各水相を65℃に加温し、70℃に加温した油相を
少量ずつ攪拌しながら添加し、ホモミキサー(特殊機化
工業製)を用いて、5000回転/分で10分間攪拌し
た。これを均質機(三和機械製)を用いて、均質圧60
kg/cm2 で均質処理して2種のクリーム(本発明品
1及び比較品1)を製造した。なお、表2にクリーム中
の乳糖及びビタミンB2 の含量を示す。
ヒークリームを調製した。先ず、ヤシ油(精製ヤシ油、
不二製油製)に乳化剤としてジアセチル酒石酸モノグリ
セリド(サンソフト641D、太陽化学製)、レシチン
(レシチンDY、製日清製油製)及びソルビタン脂肪酸
エステル(ポエムS−65F、理研ビタミン)を少量ず
つ添加し、攪拌して油相を調製した。次に、MPC(A
LAPRO4850;タンパク質82.3%、脂肪1.
9%、灰分7.3%、ニュ−ジ−ランド製)を水に溶解
し、MPCが完全に溶解したところで、カゼインナトリ
ウム及びpH調整剤としてクエン酸ナトリウム(クエン
酸3ナトリウム、田辺製薬製)を添加混合し、pHを
7.10に調整し、MPCの溶解液を調製した。同様
に、脱脂粉乳、カゼインナトリウム、及びpH調整剤と
してクエン酸ナトリウム(クエン酸3ナトリウム、田辺
製薬製)を水に溶解し、pHを7.10に調整し、脱脂
粉乳の溶解液を調製した。油相と水相を65℃に加温
し、水相に油相を少量づつ攪拌しながら添加し、ホモミ
キサーを用いて、5000回転/分で10分間攪拌し
た。これを均質圧300kg/cm2 で均質処理して2
種のクリーム(本発明品2及び比較品2)を調製した。
なお、表4にクリーム中の乳糖及びビタミンB2 の含量
を示す。
量で50kgのホイップ用クリームを調製した。先ず、
バターオイルを70℃に加温し、乳化剤としてレシチン
(レシチンDX、日清製油製)、モノグリセリン脂肪酸
エステル(エマルジーMS、理研ビタミン製)及びソル
ビタン脂肪酸エステル(ポエムS−300、理研ビタミ
ン製)を少量ずつ添加し、攪拌して油相を調製した。次
に、MPC(ALAPRO4850;タンパク質82.
3%、脂肪1.9%、灰分7.3%、ニュージーランド
製) を水に溶解し、MPCが完全に溶解したところで、
カゼインナトリウムを添加し、MPCの溶解液を調製し
た。同様に脱脂粉乳とカゼインナトリウム( サンラクト
M−1;タンパク質89.4%、脂肪0.6%、灰分
4.6%、太陽化学製) を水に溶解し、脱脂粉乳の溶解
液を調製した。各溶解液に乳化剤として、シュガーエス
テル(DKF−110、第一工業製薬製)、リン酸塩
(メタリン酸ナトリウム、太平化学産業製)及びキサン
タンガム(エコーガム、大日本製薬製)を添加混合し、
65℃に加温して2種の水相を調製した。各水相を65
℃に加温し、70℃に加温した油相を少量ずつ攪拌しな
がら添加し、ホモミキサー(特殊機化工業製)を用い
て、5000回転/分で10分間攪拌した。これを均質
機(三和機械製)を用いて、均質圧60kg/cm2 で
均質処理して2種のクリーム(本発明品3及び比較品
3)を製造した。なお、表6にクリーム中の乳糖及びビ
タミンB2 の含量を示す。
で得られた本発明品2と比較品2のクリームを直接蒸気
吹き込み式殺菌機(岩井機械工業製)を用いて、150
℃で4秒間殺菌した。その後、均質圧40kg/cm2
で再度均質処理を行った後、5℃まで急速冷却して殺菌
した。各クリームの光照射による影響を調べるため、以
下に示す方法で光照射試験を行った。光照射試験;各ク
リームを光安定性試験器(LST−300型、EYEL
A製)を用い、照度1000Lx、温度10℃にて48
時間保存した。クリームの風味変化を把握するため、光
照射前と光照射後の本発明品1及び2、比較例1及び2
について官能検査を行なった。官能検査は、32名のパ
ネラーを用い、風味の好ましい方を選択させる2点比較
法(両側検定)のための検定表に基づいて検定した(新
版「官能検査ハンドブック」日科技連出版社)。結果を
表7及び表8に示す。
2、比較品1及び2ともに、風味の点で差は感じられな
かったが、光照射を行なった後では、本発明品1及び2
の方が有意に好まれ、MPCを用いて調製した本発明品
1及び2は光照射による風味の劣化が抑制された。
で得られた本発明品2と比較品2をそれぞれ容量100
mlの耐熱性ガラス容器に充填し、レトルト殺菌機(日
坂製作所製)を用いて118℃で30分間及び60分間
殺菌した。その後水道水で25℃まで冷却し、5℃で2
4時間保存した。各クリームについてレトルト殺菌によ
る褐変化の影響を調べ、さらに粘度及び脂肪球径の変化
を測定した。
は、レトルト殺菌前、後の色差を測定することによって
判断した。色差の測定は、色彩色差計(CR−100、
ミノルタ製)を用い、色差の値をLab表した。色差の
基準は、L値は値が大きいほど白色、小さいほど黒色の
傾向を示す。a値は値が大きいほど赤色、小さいほど緑
色の傾向を示す。b値は値が大きいほど黄色、小さいほ
ど青色の傾向を示す。なお、ΔEは、L,a,b空間に
おける二つの色の間の直線距離であり、次に示す式で求
められる。ここでは、各クリームの加熱殺菌前の色と加
熱殺菌後の距離として示した。ΔE=((ΔL)2 +
(Δa)2 +(Δb)2 ) 上記値が大きい程、加熱後の色の変化が大きいことが示
される。結果を表9に示す。
比較品1及び2ともにL値、a値、b値ともにほとんど
差がなかった。レトルト殺菌後では、比較品1及び2の
L値が低下し、a値、b値が上昇し、より褐色に近くな
った。なお、△Eの値についても本発明品1及び2は比
較品1及び2に比べて、変化が少なかった。また、目視
でも比較品1及び2は褐変していることが確認された。
MPCを用いて調製した本発明品1及び2は、レトルト
殺菌による褐変化が抑制された。
計(東京計器)を用いて粘度(cP)を測定した。値が
大きくなるほど、クリームは粘性が高いことを示す。ま
た、脂肪球の径は、粒度分布計(SALD−1100、
島津製作所)を用いて脂肪球の粒度分布を測定し、平均
粒子径を示した。値が大きくなるほど、クリームの乳化
が破壊されていることを示す。結果を表10に示す。
比較例1及び2は、粘度及脂肪球の平均粒子径について
近似の値を示し、物性的に差はなかった。レトルト殺菌
により、比較品1及び2は粘度が上昇しゲル化が生じ
た。脂肪球の平均粒子径の値も大きくなり、クリームの
乳化が破壊されたことが確認された。一方、本発明品1
及び2は、レトルト殺菌による粘度の上昇が抑制され、
乳化の破壊も抑制された。
比較品3について光照射による酸化の影響について調べ
た。各クリームを蛍光灯の下に置き、温度10℃で、照
度1600〜1750Lxの蛍光灯下で7日間保存し
た。このときのクリーム中の油脂の酸化の度合いを測定
するために、過酸化物価の測定及びチオバルビツール酸
試験を行った。なお、過酸化物価を以下、POVと略
し、チオバルビツール酸試験により測定される値をTB
A価と略す。POVの測定は、R.A.CHAPMAN and K.MACK
AYらの方法((J.Am.Oil.Chem.Soc,pp360 −363 (194
9))に従った。なお、POVは油脂中の過酸化物の含
量を示す。TBA価の測定は、熊沢の方法(油化学、第
7巻、第2号(1958))に従った。TBA価は、過酸化
物から二次的に作られるアルデハイド、ケトンなどのカ
ルボニル化合物の量を測定した値である。一般に、油脂
の酸敗臭の原因は、過酸化物ではなくカルボニル化合物
の発する臭いが原因であるとされている。従って、TB
A価は、官能的な酸敗臭を定量化する指標に用いられて
いる。結果を表11に示す。
もにPOV及びTBA価に差はほとんどなかったが、光
照射後では、比較品3のPOV及びTBA価が上昇し
た。MPCを用いて調製した本発明品は、光照射による
酸化が抑制された。
味の低下が抑制され、さらにはレトルト殺菌による褐色
変化及び粘度上昇が抑制された保存性の良好なクリーム
(発泡性クリームを除く)を得ることが可能となる。
Claims (4)
- 【請求項1】 少なくとも乳タンパク質濃縮物を含有す
る溶液を水相として用いて得られるクリーム(発泡性ク
リームを除く)。 - 【請求項2】 乳タンパク質濃縮物粉末が、透析濾過膜
及び/又は限外濾過膜処理された脱脂乳を加熱殺菌し、
濃縮乾燥したタンパク質含量50%以上のものである請
求項1記載のクリーム(発泡性クリームを除く)。 - 【請求項3】 少なくとも乳タンパク質濃縮物を含有す
る溶液からなる水相と油相を乳化剤を用いて乳化し、殺
菌又は滅菌することを特徴とするクリーム(発泡性クリ
ームを除く)の製造方法。 - 【請求項4】 レトルト殺菌することを特徴とする請求
項3記載のクリームの製造方法。
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