JP2573576B2 - 酸性ホイッピングクリ−ムの製造法 - Google Patents

酸性ホイッピングクリ−ムの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、酸性ホイッピングクリームの製造法に関
し、さらに詳しくは、乳化剤としてO/W型乳化性の強め
られたレシチンを使用することを特徴とする酸性ホイッ
ピングクリームの製造法に関する。
〔従来技術とその問題点〕
通常、ホイッピングクリームの乳化には、乳化剤とし
て庶糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グ
リセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸
エステルのうち1種又は2種以上組み合わせたものと、
レシチン,又はグリセリンモノオレートなどの親油性乳
化剤を併用して用いる。これらの乳化剤は酸性域での乳
化力に乏しく、pH3.5〜5.5の酸性域においてこれらの乳
化剤を用いて乳化したクリームは保存中可塑化しやすか
ったり、起泡性に乏しかったりして満足なものは得られ
ない。
そこで、酸性ホイッピングクリームの製造法として、
ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、庶糖脂肪酸エ
ステル等の乳化剤の種類や添加量を特定して製造する方
法(特開昭53−14594号)、乳化剤としてアセチル化
モノグリセライドを用いる方法(特開昭56−140866号、
特開昭57−146548号)、ポリグリセリン脂肪酸エステ
ルと安定剤を併用する方法(特開昭58−209947号)、
ポリグリセリン有機酸エステルと、有機酸又はそれのア
セチル化誘導体とのディグリセライドを併用する方法
(特公昭59−41373号)、レシチン及び庶糖脂肪酸エ
ステルと、特定したポリグリセリン脂肪酸エステルを併
用する方法(特開昭60−54635号)などが公表されてい
る。
しかしながら上記の方法のうち、及びでは十分に
起泡せず、気泡の安定状態も乏しく、、及びにつ
いては起泡性は有するものの、保型性が不十分であった
り、輸送中に凝固するいわゆる“ボテ”を発生しやすか
ったりして、満足できるものではない。また市販のポリ
グリセリン脂肪酸エステルは他の乳化剤と比較して風味
が悪く、特に親水性の強いポリグリセリン脂肪酸エステ
ルほど風味が悪く、輸送中の可塑性を防ぐに十分なほど
添加すると苦みや刺激味が生じることになる。
本発明の目的は、上記のような従来の酸性ホイッピン
ググリームの製造法の問題点を解決し、pH3.5〜5.5の酸
性域において、起泡性、保存性、風味等の諸特性が良好
な酸性ホイッピングクリームの製造法を提供することに
ある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、通常のレシチンを分画して親水性のも
のを多くしたレシチン及び改質して親水性を強くしたレ
シチン、すなわち、O/W型乳化性の強められたレシチン
は、pH3.5〜5.5の酸性域でも十分乳化力があり、しかも
風味も無味、無臭に近く製品の風味に悪影響を与えない
ことを見出し、かかる知見に基づいて鋭意研究を重ねた
結果本発明を完成したものである。
即ち、本発明の酸性ホイッピングクリームの製造は、
油相と水相とを酸性物質の存在下で乳化してpH3.5〜5.5
の酸性ホイッピングクリームを製造するにあたり、乳化
剤として(ホスファチジルイノシトール+ホスファチジ
ルエタノールアミン)の量1に対するホスファチジルコ
リンの量が1以上のホスファチジルコリン高含量レシチ
ン、及び/又は水素添加レシチン、部分加水分解レチシ
ン、アセチル化レシチン及びヒドロキシル化レシチンの
1種又は2種以上からなる改質レシチンを使用すること
を特徴とする。
本発明におけるホイッピングクリームは、脂肪及び蛋
白質成分等の固形分が乳固形分からなる、天然のホイッ
ピングクリームのみでなく、植物脂肪或いは大豆蛋白又
はカゼイン等を用いたフィルド又はイミテーションクリ
ーム等、広く起泡性を有するO/W型エマルジョンをも包
含する。
油相を構成する油脂としては、大豆油、コーン油、綿
実油、ヤシ油、パーム核油、鯨油、ラード、ヘッド、バ
ター等の動植物性油脂及びそれらの硬化油を適宜使用す
ることができる。
酸性物質としては、化学合成等によって得られた乳
酸、クエン酸、リン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有
機酸、又は、果汁、果肉、ジャム、又は醗酵乳、チー
ズ、サワークリーム等の酸性乳製品、又は別途調製した
乳酸菌醗酵液などのうち一種又は二種以上が使用され
る。
クリームのpHは、3.5〜5.5の範囲に調製することが必
要で、pH5.5をこえるとさわやかな酸風味に欠け、pH3.5
未満では酸味が強すぎるので、いずれも不適当である。
乳化剤として使用されるO/W型乳化性の強められたレ
シチンは、(ホスファチジルイノシトール+ホスファチ
ジルエタノールアミン)の量1に対するホスファチジル
コリンの量が1以上の、ホスファチジルコリン高含量レ
シチン、または、改質レシチンが適当である(以下、ホ
スファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノール
アミン及びホスファチジルコリンを、それぞれ、PI、PE
及びPCという。)。
前記PC高含量レシチンとしては、通常、大豆レシチン
から調製したものが使用される。そして、通常の市販の
大豆レシチンの(PI+PE)の量1に対するPCの量は0.5
〜0.6であるから、これをエタノール等で分画してPC含
量を高めた分画レシチンを使用し、これ単独またはこれ
に通常の大豆レシチンを併用することにより、(PI+P
E)の量1に対するPCの量が1以上の前記PC高含量レシ
チンが適宜調製される。
改質レシチンは、通常の大豆レシチン等を化学的処理
により改質してO/W型乳化性を強めたものであって、好
ましくは、水素添加レシチン、部分加水分解レシチン、
アセチル化レシチン及びヒドロキシル化レシチンの1種
または2種以上が使用される。
本発明において使用する乳化剤としては、上記O/W型
乳化性を強めたレシチンと共に、通常のレシチン、庶糖
脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレ
ングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸とグリセリンのエ
ステル及びその誘導体(グリセリン脂肪酸エステル、酢
酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノ
グリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石
モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステルなど)
と併用することも可能である。特にポリグリセリン脂肪
酸エステルの併用は、風味に悪影響を与えない範囲で添
加すれば起泡性を良くするのに効果がある。
本発明においては、さらに、ガム質及び各種安定剤を
使用しても良い。又、蛋白質を可溶化する目的でリン酸
塩等を使用しても良い。
〔実験例〕
以上の基本配合において、乳化剤の種類を換えて実験
を行った。以上の配合物を65℃にてホモミキサーで10分
予備乳化したのち80kg/cm2の条件で均質化処理し、次に
5℃まで冷却し、一晩冷蔵でエージング後実験に供し
た。クリームのpHはいずれも3.7であった。
その実験結果を表1に示す。
表1の実験結果No.1〜10において明らかなように、乳
化剤として通常の大豆レシチン単独、または種々の乳化
剤を組み合わせて使用したものにおいては、製品クリー
ムの諸特性、すなわち、粘度、ホイップ時間、オーバー
ラン、保型性、ボテ発生までの時間及び風味において、
いずれも、いくつかの欠点を有している。
また、乳化剤としてのPC高含量レシチンを使用したも
のにおいても、(PI+PE)の量1に対するPCの量が1未
満の実験No.11では、ボテ発生までの時間が45秒と短
い。そして、このボテ発生までの時間が1分未満では、
製品輸送中に塊まりやすく好ましくないものである。こ
れに対し、(PI+PE)の量1に対するPCの量が1以上の
実験No.12及び13においては、前記時間が2分及び3分
といずれも満足すべき値となっている。したがって、こ
の点から(PI+PE)の量1に対するPCの量が1以上であ
ることが好ましいことが判る。
さらに、乳化剤として改質レシチンを使用した実験N
o.14〜19においては、いずれも製品クリームの諸特性が
総合的に改善されている。
以上のことから、酸性ホイッピングクリームの製造に
おいて、乳化剤としてPC高含量レシチン、或いは、改質
レシチンを使用することがその製品クリームの諸特性の
改善に極めて有効であること、特に、PC高含量レシチン
に関しては、(PI+PE)の量1に対するPCの量が1以上
であることが特に好ましいことが判る。
〔実施例〕
<実施例−1> 大豆硬化油(融点35℃) 40 % 脱脂粉乳 4 % PC高含量シチン 0.8% ((PI+PE):PC=1:1.5) レモン果汁 7 % 水 48.2% 上記原料を70℃にてホモミキサーで10分間予備乳化し
た後、80kg/cm2で均質化し、5℃まで急冷し、一晩冷蔵
でエージングしpH4.5のサワーホィップクリームを得
た。品質は粘度110cp,ボテ発生までの時間4分,ホィッ
プ時間3′10″,オーバーラン95%,保型性 良、風味
良であった。
<実施例−2> ナタネ硬化油(融点35℃) 30 % 醗酵乳 30 % レシチン 0.3% 水素添加レシチン 0.8% ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1% 水 38.8% 実施例1と同様の工程でpH4.8のサワーホィップクリ
ームを得た。粘度130cp,ボテ発生までの時間4分30秒,
ホィップ時間3′20″,オーバーラン110%,保型性
良、風味 良であった。
<実施例−3> ナタネ硬化油(融点35℃) 35 % クワルク 30 % レシチン 0.3% 部分加水分解レシチン 0.5% ポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンモノス
テアレート) 0.1% ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1% 水 34 % 上記混合物を65℃でホモミキサーで予備乳化したのち
均質化し90℃プレート殺菌し冷却し、一晩エージングし
てpH4.9のサワーホィップクリームを得た。粘度100cp,
ボテ発生までの時間6分,ホィップ時間3′30″,オー
バーラン125%,保型性 良、風味 良であった。
<実施例−4> 綿実硬化油(融点35℃) 42 % オレンジ果汁 10 % グリセリンモノオレート 0.5% アセチル化レシチン 0.5% シュガーエステル(HLB16) 0.2% 水 46.8% 上記混合物を70℃にてホモミキサーで10分間予備乳化
後超高温直接加熱滅菌装置にて145℃,2秒の滅菌をし、
次に100kg/cm2で均質化後5℃まで冷却後容器に無菌充
填し、pH4.2のサワーホィップクリームを得た。品質は
粘度90cp,ボテ発生までの時間4分,ホィップ時間3′3
0″,オーバーラン115%,保型性 良、風味 良であっ
た。
<実施例−5> 実施例−2における水素添加レシチンをヒドロキシル
化レシチンに変えて、実施例−2と同様の工程でサワー
ホィップクリームを得た。品質は粘度120cp,ボテ発生ま
での時間5分,ホィップ時間3′50″,オーバーラン11
5%,保型性 良、風味 良であった。
〔発明の効果〕
以上詳述したように、本発明によれば、pH3.5〜5.5の
酸性ホイッピングクリームであって、しかも、粘度、ホ
イップ時間、オーバーラン、保型性、ボテ発生までの時
間及び風味等のクリームの諸特性において、総合的に満
足し得る極めて優れた製品が得られるものである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】油相と水相とを酸性物質の存在下で乳化し
    てpH3.5〜5.5の酸性ホイッピングクリームを製造するに
    あたり、乳化剤として(ホスファチジルイノシトール+
    ホスファチジルエタノールアミン)の量1に対するホス
    ファチジルコリンの量が1以上のホスファチジルコリン
    高含量レシチン、及び/又は水素添加レシチン、部分加
    水分解レチシン、アセチル化レシチン及びヒドロキシル
    化レシチンの1種又は2種以上からなる改質レシチンを
    使用することを特徴とする酸性ホイッピングクリームの
    製造法。
  2. 【請求項2】乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステ
    ルを併用することを特徴とする特許請求の範囲第1項記
    載の酸性ホイッピングクリームの製造法。
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