WO2014065320A1

WO2014065320A1 - プーリアームの支点軸受装置

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Publication number: WO2014065320A1
Application number: PCT/JP2013/078697
Authority: WO
Inventors: 唯久田中; 佐藤　誠二; 武博高野
Original assignee: Ntn株式会社
Priority date: 2012-10-25
Filing date: 2013-10-23
Publication date: 2014-05-01
Also published as: EP2913556A4; US9581199B2; US20150275976A1; EP2913556B1; EP2913556A1; CN104736891B; CN104736891A

Abstract

　プーリアーム（１）に設けられたボス部（４）の軸孔（５）内にスリーブ（７）を挿入し、そのスリーブ（７）の両端部に形成された小径筒部（７ａ）のそれぞれ外周にワッシャ（８）を嵌合し、スリーブ（７）内に挿通されたボルト（２０）の締め付けによりスリーブ（７）をエンジンブロック（３０）に固定して、プーリアーム（１）を揺動自在に支持する。軸孔（５）の両端部に大径のシール収容凹部（１１）を設け、そのシール収容凹部（１１）内にシール部材（１２）の外周部に設けられた円筒部（１２ａ）を圧入する。シール部材（１２）の内周に内方向に向けて傾斜する径方向リップ（１２ｃ）を設け、その径方向リップ（１２ｃ）の先端部をスリーブ（７）の外径面に弾性接触させ、内部圧力が上昇した際に、その径方向リップ（１２ｃ）が縮径する方向に弾性変形させるようにして、スリーブ（７）の外径面に対する接触圧力を高めるようにしたプーリアームの支点軸受装置である。

Description

プーリアームの支点軸受装置

　この発明は、ベルトの張力調整用テンションプーリを支持するプーリアームの支点軸受装置に関する。

　一般に、オルタネータやエアコンディショナ用のコンプレッサ、ウォータポンプ等のエンジン補機を駆動するベルト伝動装置においては、テンションプーリを支持する揺動可能なプーリアームに油圧式オートテンショナを連結し、その油圧式オートテンショナからプーリアームに負荷される調整力によってテンションプーリがベルトを押圧する方向にプーリアームを付勢し、ベルトの張力変化を上記油圧式オートテンショナにより吸収してベルトの張力を一定に保つようにしている。

　上記のようなベルト伝動装置はエンジンの外部に設けられるため、プーリアームの揺動中心となる支点軸受部内に泥水やダスト等の異物が侵入するおそれがある。その異物の侵入によってプーリアームの揺動が阻害され、あるいは、軸受部の寿命が著しく低下するため、上記支点軸受部には異物の侵入防止対策が必要とされる。

　異物の侵入防止対策を施したプーリアームの支点軸受装置として下記特許文献１に記載されたものが従来から知られている。

　特許文献１に記載されたプーリアームの支点軸受装置においては、プーリアームに設けられた筒状のボス部の軸孔内に支点軸となるスリーブを挿入し、そのスリーブと軸孔の内径面間にスリーブとプーリアームを相対的に回転自在に支持するすべり軸受を組込み、上記スリーブの両端部に形成された小径筒部のそれぞれにワッシャを嵌合し、上記スリーブの内側に挿通されたボルトをエンジンブロックにねじ込み、そのボルトの締め付けによりスリーブおよびワッシャを固定して、スリーブを中心にプーリアームを揺動自在に支持している。

　また、図１５(ａ)に示すように、ボス部６０における軸孔６１の両端部に、その軸孔６１より大径の環状の凹部６２を設け、その凹部６２内にシール部材６３を組込み、そのシール部材６３に設けられた環状の基部６３ａをスリーブ６４の端部に嵌合し、その基部６３ａに連設された一対の相反する方向に傾斜するシールリップ６３ｂ、６３ｃの一方のシールリップ６３ｂにおける先端部を凹部６２の側面に弾性接触し、他方のシールリップ６３ｃの先端部をワッシャ６５の内側面に弾性接触して、そのシール部材６３によりすべり軸受６６やスリーブ６４が組み込まれたボス部６０の軸孔６１内に泥水やダスト等の異物が侵入するのを防止している。

米国特許第７９０１４０号明細書

　特許文献１に記載された支点軸受装置においては、ベルトからの振動伝播によってプーリアームが高速度で揺動すると、すべり軸受６６での接触摩擦により発熱し、その揺動中心となる支点軸受内部が高温になり易い。その支点軸受内の温度変化による内圧の上昇により、図１５(ｂ)に示すように、一方のシールリップ６３ｂが外方に向けて弾性変形し、凹部６２の側面から離反して密着性を保持することができず、外部からの異物侵入を防止することができなくなる。

　この発明の課題は、支点軸受内部の温度変化により圧力が上昇した際でも良好なシール性を確保することができるようにしたプーリアームの支点軸受装置を提供することである。

　上記の課題を解決するために、この発明においては、プーリアームのボス部に設けられた軸孔内にスリーブを挿入し、そのスリーブの両端部に前記ボス部の両端面と軸方向で対向するワッシャを設け、前記スリーブの内側に挿通されてアーム取付け対象にねじ込まれるボルトの締め付けによりスリーブを固定してプーリアームを揺動自在に支持し、前記ボス部の軸孔における両端部に、その軸孔より大径のシール収容凹部を設け、そのシール収容凹部内にシール部材を組み込んで、外部からボス部内への異物の侵入を防止するようにしたプーリアームの支点軸受装置において、前記シール部材が弾性材を素材として、前記シール収容凹部の内径面に圧入される円筒部と、その円筒部の外側端に連設された内向きの円環部と、その円環部の内周から前記円筒部内を斜め内方に向けて傾斜するテーパ状の径方向リップとを有してなり、前記径方向リップの先端部を前記スリーブの外径面に弾性接触させた構成を採用したのである。

　シール収容凹部内に組み込まれるシール部材を、シール収容凹部の内径面に圧入される円筒部の外側端に円環部を連設し、その円環部の内周から上記円筒部内を斜め内方に向けて傾斜するテーパ状の径方向リップを設けた構成とし、その径方向リップの先端部をスリーブの外径面に弾性接触させることにより、プーリアームの揺動中心となるボス部内の温度上昇によって圧力が上昇すると、径方向リップが縮径する方向に弾性変形して先端部がスリーブの外径面により強く接触することになり、上記径方向リップの接触部において良好なシール性が確保されることになる。

　シール部材における円環部の外側面の内周部に斜め外方に向けて傾斜する軸方向リップを設け、その軸方向リップの先端部をワッシャの内側面に弾性接触させることにより、ボス部内の温度低下によって圧力が低下し、その内部圧力が外部圧力より低くなると、径方向リップが径方向外方に向けて弾性変形して接触圧が低下することになるが、この場合、外部圧力により軸方向リップがワッシャに向けて弾性変形してワッシャの内側面に強く接触することになり、軸受内部の圧力が外部より低下した場合でも、良好なシール性を確保することができる。

　また、シール部材の円筒部でもって外径面および端面が被覆される円筒部の一端にシール部材の円環部でもって外側面が被覆される内向きフランジが設けられた断面Ｌ形のシール芯金をシール部材に設けると、そのシール芯金でシール部材を補強することができるため、シール部材の組込み性を高めることができると共に、安定した組込み状態を得ることができる。

　この発明に係るプーリアームの支点軸受装置において、ワッシャのボス部端面と対向する内側面の外周部に環状の凹段部を形成して、その凹段部の内側にシール収容凹部内に嵌合される円形膨出部を設け、上記ボス部の端面と微小間隙をおいて対向する上記凹段部の側面によりプーリアームの軸方向への移動を規制し、上記円形膨出部の側面に軸方向リップを弾性接触させるようにすると、軸方向リップが弾性接触する円形膨出部の側面はボス部端面からボス部内に入り込んで、微小間隙との間に距離が確保されるため、円形膨出部の側面に異物が付着してシール性が阻害されることが少なくなり、良好なシール性を長期にわたって維持することができる。

　軸方向リップの自然状態での先端外径がシール芯金の円筒部の内径より小径とされ、円形膨出部の側面に弾性接触する状態での軸方向リップの先端外径を円形膨出部の外径より小径とすると、支点軸受装置の組立て時に軸方向リップの先端部がワッシャとボス部の対向面間に挟み込まれて損傷するのを防止することができる。

　また、シール収容凹部の開口端における内周部に円形膨出部における側面の外周エッジとの間で間隙を形成するテーパ面を設けると、回転方向のガタの形成によりボス部が振れ回る状態でワッシャとの間で形成される微小間隙の範囲内で軸方向に移動したとしても、円形膨出部の外周がシール収容凹部の内径面に接触することはなく、プーリアームの揺動が阻害されるのを防止することができる。

　ボス部の開口端を密閉するシール部材は、径方向リップがスリーブの外径面と摩擦接触し、また、軸方向リップがワッシャの内側面と摩擦接触するため、耐摩耗性に優れた合成ゴムで形成するのがよい。そのようなゴムとして、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ＡＣＭゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムを挙げることができる。

　この発明においては、上記のように、ボス部のシール収容凹部内に組み込まれるシール部材に、円筒部と、その円筒部の外側端に連設された内向きの円環部と、その円環部の内周から円筒部内を斜め内方に向けて傾斜するテーパ状の径方向リップとを設け、上記円筒部をシール収容凹部の内径面に圧入して、径方向リップの先端部をスリーブの外径面に弾性接触させるようにしたので、ボス部内の温度上昇による圧力上昇時には、径方向リップが縮径する方向に弾性変形するため、スリーブの外径面に対する径方向リップの先端部の密着力が高くなり、上記径方向リップの接触部において良好なシール性を確保することができ、異物の侵入を安定的に防止することができる。

この発明に係るプーリアームの支点軸受装置を採用した補機駆動用ベルト伝動装置の正面図である。図１のII－II線に沿った断面図である。図２の支点軸受部の拡大断面図である。図３のシール部材の組込み部の拡大断面図である。（ａ）は支点軸受装置の他の例を示す断面図、（ｂ）は（ａ）の一部を拡大して示す断面図である。（ａ）、（ｂ）は図５の他の例を示す断面図である。図５（ａ）、（ｂ）に示すシール部材の自然状態における断面図である。支点軸受装置のさらに他の例を示す断面図である。図８のシール部材の組込み部を拡大して示す断面図である。シール部材の他の例を示す断面図である。スリーブの他の例を示す断面図である。シール部材の支持の他の例を示す断面図である。シール部材のさらに他の例を示す断面図である。シール部材のさらに他の例を示す断面図である。 (ａ)は従来の支点軸受部の一部を示す断面図、(ｂ)はシール部材が内部圧力の上昇によって弾性変形した状態を示す断面図である。

　以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図１は補機駆動用ベルト伝動装置を示す。このベルト伝動装置においては、揺動可能に支持されたプーリアーム１と、そのプーリアーム１の揺動側端部に回転自在に支持されたテンションプーリ２と、そのテンションプーリ２がベルトＢを押圧する方向にプーリアーム１を付勢する油圧式オートテンショナ３とからなっている。

　図２に示すように、プーリアーム１は筒状のボス部４を有し、そのボス部４の軸孔５内にすべり軸受６が組み込まれ、そのすべり軸受６内に金属製のスリーブ７が挿入されている。

　スリーブ７は、ボス部４の軸方向長さより長く、そのボス部４の両端から外部臨む両端部に小径筒部７ａが設けられ、その小径筒部７ａのそれぞれ外周にワッシャ８が嵌合されている。ワッシャ８は、金属製とされ、メッキ処理されて耐食性が付与されている。

　スリーブ７およびワッシャ８は、スリーブ７内に挿入されてアーム取付け対象としてのエンジンブロック３０にねじ込まれるボルト２０の締め付けによりエンジンブロック３０に固定され、そのスリーブ７およびワッシャ８を支点軸としてプーリアーム１が揺動可能とされている。

　図３に示すように、ボス部４における軸孔５の両端部には、その軸孔５より大径のシール収容凹部１１が形成され、そのシール収容凹部１１のそれぞれ内部にシール部材１２が組み込まれている。

　図４に示すように、シール部材１２は、シール収容凹部１１の内径面に圧入される円筒部１２ａの外側端に内向きの円環部１２ｂを連設し、その円環部１２ｂの内周部に径方向リップ１２ｃを設け、上記円環部１２ｂの外側面の内周部に軸方向リップ１２ｄを設けた合成ゴムの成形品からなっている。合成ゴムとして、耐摩耗性に優れたゴムが採用されている。そのようなゴムとして、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ＡＣＭゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムを挙げることができる。

　シール部材１２は、その成形時にシール芯金１３がモールドされる。シール芯金１３は、円筒部１３ａの一端に内向きのフランジ１３ｂを設けた断面Ｌ形とされ、上記円筒部１３ａの外径面および端面がシール部材１２の円筒部１２ａで被覆され、また、内向きフランジ１３ｂの外側面が円環部１２ｂで被覆されるモールド成形とされて、シール部材１２を補強している。

　シール部材１２における径方向リップ１２ｃは、円筒部１２ａの内側を斜め内方に向けて傾斜するテーパ状とされ、その先端部がスリーブ７の外径面に弾性接触している。また、軸方向リップ１２ｄは斜め外方に向けて傾斜するテーパ状とされ、その先端部がワッシャ８の内側面に弾性接触している。

　ワッシャ８のボス部４端面と対向する内側面の外周部には環状の凹段部９が形成され、その凹段部９の形成によってワッシャ８の内側面に円形膨出部１０が設けられている。円形膨出部１０はシール収容凹部１１内に嵌合し、その円形膨出部１０の内側面にシール部材１２の軸方向リップ１２ｄの先端部が弾性接触している。

　ここで、凹段部９の側面がボス部４の端面に接触していると、その接触部の摩擦によりプーリアーム１の揺動が阻害されることになるため、凹段部９の側面とボス部４の端面間には軸方向すきま１４が設けられている。このため、ボス部４は、軸方向すきま１４の範囲内において軸方向に移動可能とされて、上記凹段部９の側面によってボス部４の軸方向への移動が規制される。

　また、上記軸方向すきま１４の範囲内でボス部４が軸方向に移動する場合において、ボス部４の内側で回転方向のガタが生じると、ボス部４に振れ回りが生じ、円形膨出部１０の外径面がシール収容凹部１１の内径面に接触して、ボス部４の移動が阻害されることが考えられる。そこで、図４では、シール収容凹部１１の開口端部にテーパ面１５を設けて、円形膨出部１０の側面における外周のエッジＥとテーパ面１５間に、ボス部４の軸方向の移動を許容する比較的大きな間隔を形成している。

　図４において、同図の鎖線ｘは、軸方向リップ１２ｄの自然状態を示し、その自然状態における軸方向リップ１２ｄの先端外径Ｄはシール芯金１３における円筒部１３ａの内径ｄより小径とされ、また、円形膨出部１０の側面に弾性接触する状態での軸方向リップ１２ｄの先端外径は円形膨出部１０の外径より小径とされて、軸方向リップ１２ｄの先端部が円形膨出部１０の側面と常に接触する状態が確保されるようにしている。

　実施の形態で示すプーリアームの支点軸受装置は上記の構造からなり、シール部材１２の組付けは、スリーブ７の小径筒部７ａにワッシャ８を嵌合する前段においてシール収容凹部１１内に組み付ける。その組み付けは、円筒部１２ａの開口端を先にして、その円筒部１２ａをシール嵌合凹部１１の内径面に圧入し、径方向リップ１２ｃの先端部をスリーブ７の外径面に弾性接触させる。

　上記のようなシール部材１２の組み付け後、スリーブ７の両端の小径筒部７ａのそれぞれにワッシャ８を嵌合する。この場合、円形膨出部１０を先にしてワッシャ８を嵌合する。そのワッシャ８の嵌合により、円形膨出部１０が軸方向リップ１２ｄを押圧するため、軸方向リップ１２ｄは弾性変形し、その復元弾性により先端部が円形膨出部１０の側面に弾性接触する。

　ここで、軸方向リップ１２ｄは、自然状態での先端外径Ｄがシール芯金１３における円筒部１３ａの内径ｄより小径とされ、また、円形膨出部１０の側面に弾性接触する状態での軸方向リップ１２ｄの先端外径が円形膨出部１０の外径より小径とされているため、ワッシャ８の組み込み時にボス部４とワッシャ８の対向部間に軸方向リップ１２ｄの先端が噛み込まれるという不都合の発生はない。また、軸方向リップ１２ｄの先端部が円形膨出部１０の側面に弾性接触する状態を常に確保することができる。

　上記のようなシール部材１２およびワッシャ８の組み付け後、スリーブ７内にボルト２０を挿入し、そのボルト２０をエンジンブロック３０にねじ係合して締め付けると、スリーブ７およびワッシャ８が固定され、そのスリーブ７を中心にしてプーリアーム１が揺動自在の支持とされる。

　図１および図２に示すように、プーリアーム１を揺動自在に支持し、そのプーリアーム１に油圧式オートテンショナ３の調整力を付与するベルトＢの張力調整状態において、ベルトＢの張力が変化するとプーリアーム１がスリーブ７を中心に揺動する。その揺動により、すべり軸受６での接触摩擦により発熱して温度上昇し、その温度変化によりボス部４内の圧力が上昇する。

　このとき、シール部材１２に設けられた径方向リップ１２ｃは、斜め内方に向けて傾斜しているため、ボス部４内の圧力により径方向リップ１２ｃは縮径する方向に弾性変形して先端部がスリーブ７の外径面により強く押し付けられることになる。このため、径方向リップ１２ｃの先端接触部において良好なシール性が確保され、外部からの異物の侵入が安定的に防止されることになる。

　ここで、エンジンの停止により、ボス部４内の温度が低下して圧力が低下し、その内部圧力が、外部圧力より低くなると、スリーブ７の外径面に対する径方向リップ１２ｃの接触圧力が低下してシール性が低下する。しかし、このとき、外部圧力により軸方向リップ１２ｄがワッシャ８に向けて弾性変形して、円形膨出部１０の側面に強く接触することになる。したがって、ボス部４内の圧力が外部より低下した場合でも、良好なシール性が確保されることになり、異物の侵入は安定的に防止される。

　図１５に示す従来のプーリアームの支点軸装置においては、プーリアームのボス部６０とスリーブ６４との軸周りの相対回転に伴って、そのシール６３のリップ部６３ｂが、ボス部６０における凹部６２の側面に摺接して、リップ部６３ｂの摩耗を避けることはできず、時間の経過とともにシール性が損なわれることになる。

　上記シール部材のシール性の低下を抑制するため、図５および図６に示す支点軸受装置においては、ワッシャ８のボス部端面４ａと対向する内側面の外周部に環状の凹段部９を形成し、その凹段部９の内側に形成された円形膨出部１０をボス部４のシール収容凹部１１内に挿入してボス部４とワッシャ８の対向部間にラビリンスシールＬを形成し、上記ワッシャ８のシール部材１２へのシール接触面（内側面）８ａを凹段部９よりも内径側且つ軸方向内側に位置させるようにしている。

　上記のように、シール部材１２よりも外径側にラビリンスシールＬを形成することにより、そのラビリンスシールＬがシール性を発揮するので、シール部材１２のボス部４への摺接による摩耗を抑制し、そのシール性を長く維持することができる。

　ここで、図５（ａ）（ｂ）に示す支点軸受装置において、スリーブ７内に対するボルト挿入側のワッシャ８の外側面８ｂには、ボルト２０の頭部が収容される凹部８ｃが設けられている。ボルト２０の頭部が、このワッシャ８の凹部８ｃに入り込むことによって、頭部の高さ、すなわち、ボス部４に対するボルト２０の突出高さを抑制している。

　ボス部４のシール収容凹部１１内に組み込まれたシール部材１２は、シール収容凹部１１の軸方向外方に向く側面４ｄに当接して配置されている。また、シール部材１２は、すべり軸受６の軸方向両端部において、それぞれ、その外径面６ｂに嵌合されている。

　シール部材１２は、周方向全周に亘って切れ目なく連続的に形成された環状の部材である。シール部材１２は、スリーブ７に固定されたワッシャ８によって、そのワッシャ８の内側面８ａと、ボス部４におけるシール収容凹部１１の側面４ｄとの間に保持される。

　また、ワッシャ８における凹段部９の側面９ａと、ボス部４の端面４ａとの間に形成された隙間によってラビリンスシールＬの一部を形成している。

　軸方向両側に位置するワッシャ８間において、図５（ａ）に示すように、凹段部９の軸方向内側へ向く側面９ａ間の距離Ｌｏ１は、それに対向するボス部４の軸方向両端の端面４ａ、４ａ間の距離Ｌｏ２よりも大きく設定されている。このため、凹段部９の側面９ａとボス部４の端面４ａとの間に隙間Ｄが介在する。

　また、ワッシャ８の円形膨出部１０の外径面１０ａと、それに対向するシール収容凹部１１の内径面４ｃとの間にも隙間Ｃが介在する。さらに、その奥部には、シール部材１２を配置するための空間Ｅが介在する。これらの隙間Ｄ、Ｃ及び空間Ｅにより、ラビリンスシールＬが構成されている。

　なお、ワッシャ８の円形膨出部１０の外径面１０ａと、それに対向するシール収容凹部１１の内径面４ｃとの間の隙間Ｃは、ボス部４とスリーブ７との間のすべり軸受６のラジアル隙間よりも大きくなるように設定されている。ここで、ボス部４とスリーブ７との間のすべり軸受６のラジアル隙間とは、すべり軸受６の内径面６ｃの半径からスリーブ７の外径面７ｂの半径を差し引いた寸法である。ワッシャ８とボス部４との径方向の隙間Ｃを、すべり軸受６のラジアル隙間よりも大きくすることで、回転側であるボス部４と固定側であるワッシャ８との接触を避けることができる。

　このように、ワッシャ８のシール部材１２への当接部分である内側面８ａは、凹段部９よりも内径側且つ軸方向内側に位置している。シール部材１２よりも外径側のラビリンスシールＬがシール性を発揮するので、シール部材１２のプーリアーム１等への摺接による摩耗を抑制し、そのシール性を長く維持することができる。

　また、ワッシャ８の内側面８ａは、図５（ｂ）に示すように、段付きとなっている。すなわち、凹段部９が外径側、ワッシャの８の内側面８ａが内径側にあって、その内側面８ａが、ボス部４の端面４ａよりも軸方向内側に入り込む構成となっている。

　このため、ワッシャ８のスリーブ７への取り付け前の状態において、シール部材１２が、ボス部４の端面４ａよりも軸方向外側に突出しないようになっており、ワッシャ８を固定すれば、シール部材１２は、ワッシャ８の内側面８ａとシール収容凹部１１の側面４ｄとの間で圧縮されて、その間で保持されるようになっている。これにより、組立時におけるシール部材１２の保護が図られている。

　なお、この実施形態では、ワッシャ８はプレス加工品である。ワッシャ８の内側面８ａは、そのシール部材１２への接触面を切削面又は研削面とすることができる。シール部材１２の素材としてはゴム、例えば、Ｈ－ＮＢＲやフッ素ゴムを採用することができる。

　また、ワッシャ８の凹段部９と、ボス部４の端面４ａとがラビリンスシールＬを構成するために、軸方向両側に位置する凹段部９の軸方向内側へ向く側面９ａ、９ａ間の距離Ｌｏ１と、それに対向するボス部４の端面４ａ、４ａ間の距離Ｌｏ２との差は、そのワッシャ８における円形膨出部１０の軸方向への突出長さＡよりも小さく設定されていることが必要である。

　また、軸方向両側に位置するワッシャ８における内側面８ａ、８ａ間の距離Ｌｉ１が、それに対向するすべり軸受６の両端面６ａ、６ａ間の距離Ｌｉ２よりも大きく設定されて、その円形膨出部１０の内側面８ａとすべり軸受６の軸受端面６ａとの間に、隙間Ｆが形成されている。

　このとき、Ｌｉ１－Ｌｉ２　＞　Ｌｏ１－Ｌｏ２　が成立するように部材の寸法を設定すれば、部材同士が軸方向へ相対移動した際に、すべり軸受６の軸受端面６ａとが接触するよりも先に、ワッシャ８とボス部４とを接触させることができる。このため、ラビリンスシールＬを構成する隙間を維持しやすい。

　また、図７に示すシール部材１２の圧入前における軸方向幅Ｗは、凹段部９の側面９ａ、９ａ間の距離Ｌｏ１、ボス部４の両端面４ａ、４ａ間の距離Ｌｏ２、円形膨出部１０の側面８ａとシール収容凹部１１の側面４ｄ間の軸方向幅Ｂとの関係において、Ｌｏ１－Ｌｏ２＋Ｂ　＜　Ｗ　が成立するように設定されている。

　このように、シール部材１２が装着される空間の軸方向幅を、シール部材１２の装着前の軸方向幅Ｗよりも小さくすることで、シール部材１２によるシール性能を高めることができる。

　なお、シール部材１２の素材は、所定のシール性を発揮し得る限りにおいて自由であるが、この実施形態では、ゴム製のものを採用している。シール部材１２は、すべり軸受６の外径面６ｂに締代をもって嵌められている。

　また、この実施形態では、そのシール部材１２として、すべり軸受６の外径面６ｂに嵌められる環状の基部１２ｆから、外径側に突出するリップ部１２ｅを一つだけ備えるワンリップシールを採用している。シール部材１２は、このリップ部１２ｅが、ワッシャ８のシール当接部３１に接触する。

　すなわち、ワッシャ８の内面を段付きとすることによって、シール部材１２を、そのワッシャ８とボス部４との間に保持しながらラビリンスシールＬを構成することができる。その結果、ラビリンスシールＬによってある程度のシール性が期待できるので、シール部材１２をワンリップ（単リップ）とすることを可能としたものである。

　また、すべり軸受６の軸方向外側の軸受端面６ａと外径面６ｂとの間の稜線部、及び、軸方向外側の軸受端面６ａと内径面６ｃとの間の稜線部に、それぞれ面取り部６ｄが設けられている。

　上記のように、面取り部６ｄを設けることにより、シール部材１２のすべり軸受６の外周への挿入がスムーズである。また、面取り部６ｄを設けることにより、シール部材１２がすべり軸受６とワッシャ８との間等に挟まる事態を防止することができる。

　さらに、この実施形態では、すべり軸受６の軸方向外側の軸受端面６ａは、ボス部４のシール収容凹部１１の側面４ｄよりも軸方向外側に位置している。これにより、シール部材１２とすべり軸受６とを軸方向に重複させて配置することができるので、すべり軸受６の軸方向寸法を充分に長く確保することができる。特に、シール部材１２の軸方向幅に対し、その２／３以上をすべり軸受６で案内することが望ましく、この実施形態では、シール部材１２の基部１２ｆのほぼ全長をすべり軸受６で案内している。

　この実施形態では、シール部材１２の構成を、環状の基部１２ｆと、その基部１２ｆから外径側に立ち上がりワッシャ８の内側面８ａに摺接するリップ部１２ｅとを備えた構成としたが、このシール部材１２を、例えば、図６（ａ）に示すように、断面円形を成すＯリングとし、あるいは、図６（ｂ）に示すように、断面矩形を成す環状部材としてもよい。

　ここで、図１５に示す従来のプーリアームの支点軸装置においては、プーリアームのボス部６０とワッシャ６５の対向部間に軸方向すきま６７が形成され、その軸方向すきま６７の範囲内でボス部６０が軸方向に微振動し、その微振動するボス部６０と固定状態にあるワッシャ６５間にシール部材６３が組み込まれているため、シール部材６３は微振動するボス部６０およびそのボス部６０の内径面に嵌合されてボス部６０と共に振動するすべり軸受６６で繰り返し加圧されることになり、その繰り返しの加圧によりシール部材６３が塑性変形して、シール性を維持することができなくなる恐れがある。

　そのような不都合を解消するため、図８乃至図１４に示すプーリアームの支点軸受装置においては、ボス部４のシール収容凹部１１内に収容されたシール部材１２をスリーブ７とワッシャ８とで形成される支点軸部で支持してワッシャ８に密着し、そのシール部材１２の内側面とシール収容凹部１１の側面４ｂ間にワッシャ８とボス部４の対向面間に形成される軸方向すきま１４より大きな間隙１７を設け、上記シール部材１２の外周に設けられたシールリップ１２ｈ、４５、４９の先端を上記シール収容凹部１１の内径面に弾性接触させるようにしている。

　図８および図９では、シール部材１２として、断面が矩形とされた環状部１２ｇの外径面にシールリップ１２ｈを設け、そのシールリップ１２ｈの一側面にテーパ面１２ｊを設けたものを採用している。

　上記シール部材１２は、その環状部１２ｇがスリーブ７の外径面両端部に形成された凹段部１６の円筒面１６ａに嵌合され、ワッシャ８と凹段部１６の側面１６ｂとで軸方向両側から挟持されて、外側面がワッシャ８の内側面に密着し、シールリップ１２ｈの先端部がシール収容凹部１１の内径面４ｃに弾性接触する組付けとされている。

　上記のようなシール部材１２の組付け状態において、そのシール部材１２の内側面１２ｉとシール収容凹部１１の側面４ｄ間に間隙１７が設けられる。その間隙１７の大きさをδ_１、ボス部４とワッシャ８の対向部間に形成された軸方向すきま１１の大きさをδ_２とすると、δ_１＞δ_２の関係が成り立つ大きさ関係とされている。

　上記のように、スリーブ７とワッシャ８で形成される支点軸部でシール部材１２を支持してワッシャ８の内側面に密着し、そのシール部材１２の内側面１２ｉとシール収容凹部１１の側面４ｄ間にワッシャ８とボス部４の対向面間に形成される軸方向すきま１４より大きな間隙を設けることにより、上記軸方向すきま１４の範囲内でボス部が微振動しても、シール部材１２は加圧されることはない。このため、シール部材１２が塑性変形するという不都合の発生はなく、良好なシール性を長期にわたり確保することができる。

　図１０で示すように、シール部材１２の内径面における外側端のエッジに面取り４０を設け、あるいは、図１１に示すように、凹段部１６における円筒面の外側端のエッジに面取り４１を施すことにより、シール部材１２の組付け後におけるワッシャ８の組付け時に、そのシール部材１２の外側面の内周部がワッシャ８とスリーブ７の対向面間に噛み込まれるのを防止することができる。

　図９においては、スリーブ７の両端部に凹段部１６を形成し、その凹段部１６の円筒面１４ａでシール部材１３を支持するようにしたが、図１２に示すように、ワッシャ８の内側面に円筒部４２を設け、その円筒部４２でシール部材１２を嵌合支持してもよい。

　上記のように、ワッシャ８にシール部材１２が嵌合支持される円筒部４２を設けておくと、ワッシャ８の組付け前の状態で円筒部４２にシール部材１２を装着することができるため、組込み性を向上することができる。

　図１２に示すように、円筒部４２の外径Ｄ_１をスリーブ７の外径Ｄ_２より大径（Ｄ_１>Ｄ_２）としておくことにより、ワッシャ８の組付け時に、シール部材１２の内側面の内周部が円筒部４２とスリーブ７の対向面間に噛み込まれるのを防止することができる。

　なお、図１２に示す場合においては、ワッシャ８の内側面にシール部材１２を密着させ、かつ、シール部材１２の内径面を円筒部４２の外径面に密着させてシール性を確保するようにしてもよい。あるいは、シール部材１２の内径面のみを円筒部４２の外径面に密着させてシール性を確保するようにしてもよい。

　図９では、シール部材１２として、断面形状が角形とされた環状部１２ｇの外径面にシールリップ１２ｈを設けたゴムの成形品からなるものを示したが、シール部材１２はこれに限定されるものではない。

　図１３および図１４はシール部材１２の他の例を示す。図１３に示すシール部材１２は、薄金属板からなる環状のシール芯金４３の外周部にテーパ部４４を設け、そのテーパ部４４の外周にゴム製のシールリップ４５を固着した構成とし、上記シール芯金４３の内周部をスリーブ７の端面とワッシャ８の内側面に設けられた円筒部４２で軸方向の両側から挟持して、シール芯金４３の外側面を円筒部４２の端面に密着させ、シールリップ４５をシール収容凹部１１の内径面４ｃに弾性接触させるようにしている。

　図１４に示すシール部材１２においては、薄金属板からなるシール芯金４６を円筒部４７の一端に傾斜状のフランジ４８を設けた断面Ｌ字状とし、そのフランジ４８の外周部にゴム製のシールリップ４９を固着した構成とし、上記シール芯金４６の円筒部４７をスリーブ７の端部外径面に嵌合して、その外端面をワッシャ８の内側面に密着させ、シールリップ４９をシール収容凹部１１の内径面４ｃに弾性接触させるようにしている。

１　　プーリアーム
２　　テンションプーリ
４　　ボス部
５　　軸孔
７　　スリーブ
８　　ワッシャ
９　　凹段部
１０　円形膨出部
１１　シール収容凹部
１２　シール部材
１２ａ　円筒部
１２ｂ　円環部
１２ｃ　径方向リップ
１２ｄ　軸方向リップ
１３　シール芯金
１３ａ　円筒部
１３ｂ　内向きフランジ
１４　軸方向すきま
１５　テーパ面
２０　ボルト
３０　エンジンブロック（アーム取付け対象）

Claims

　プーリアームのボス部に設けられた軸孔内にスリーブを挿入し、そのスリーブの両端部に前記ボス部の両端面と軸方向で対向するワッシャを設け、前記スリーブの内側に挿通されてアーム取付け対象にねじ込まれるボルトの締め付けによりスリーブを固定してプーリアームを揺動自在に支持し、前記ボス部の軸孔における両端部に、その軸孔より大径のシール収容凹部を設け、そのシール収容凹部内にシール部材を組み込んで、外部からボス部内への異物の侵入を防止するようにしたプーリアームの支点軸受装置において、
　前記シール部材が弾性材を素材として、前記シール収容凹部の内径面に圧入される円筒部と、その円筒部の外側端に連設された内向きの円環部と、その円環部の内周から前記円筒部内を斜め内方に向けて傾斜するテーパ状の径方向リップとを有してなり、前記径方向リップの先端部を前記スリーブの外径面に弾性接触させたことを特徴とするプーリアームの支点軸受装置。
　前記シール部材における円環部の外側面内周部に斜め外方に向けて傾斜する軸方向リップを設け、その軸方向リップの先端部を前記ワッシャの内側面に弾性接触させた請求項１に記載のプーリアームの支点軸受装置。
　前記シール部材が、シール芯金により補強され、そのシール芯金が、円筒部の一端に内向きフランジが設けられて断面Ｌ形とされ、前記円筒部の外径面および端面が前記シール部材の円筒部で被覆され、内向きフランジの外側面が前記シール部材の円環部で被覆された請求項１又は２に記載のプーリアームの支点軸受装置。
　前記ワッシャの前記ボス部の端面と対向する内側面の外周部に環状の凹段部を形成して、その凹段部の内側に前記シール収容凹部内に嵌合される円形膨出部を設け、前記ボス部の端面と微小間隙をおいて対向する前記凹段部の側面によりプーリアームの軸方向への移動を規制し、前記円形膨出部の側面に前記軸方向リップを弾性接触させた請求項１乃至３のいずれか１項に記載のプーリアームの支点軸受装置。
　前記軸方向リップの自然状態での先端外径が前記シール芯金の円筒部の内径より小径とされ、前記円形膨出部の側面に弾性接触する状態での軸方向リップの先端外径が円形膨出部の外径より小径とされた請求項４に記載のプーリアームの支点軸受装置。
　前記シール収容凹部の開口端における内周部に前記円形膨出部の外周エッジとの間で間隙を形成するテーパ面を設けた請求項４又は５に記載のプーリアームの支点軸受装置。
　前記シール部材が、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ＡＣＭゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムのいずれか１種の合成ゴムからなる請求項１乃至６のいずれか１項に記載のプーリアームの支点軸受装置。