図1に示すように、この実施形態に係るコーティング装置は、水平線と平行又は略平行な軸線X回りに回転駆動される通気式の回転ドラム1を備えている。回転ドラム1は、ケーシング2の内部に回転自在に収容され、その後端部側に配設される回転駆動機構3によって回転駆動される。また、回転ドラム1は、ケーシング2の内部において、内部ハウジング4の内部に収容され、内部ハウジング4の空間部はその外部に対して気密にシールされている。さらに、回転ドラム1の内部には、膜材液等のスプレー液を粉粒体層に向けて噴霧する1又は複数のスプレーノズル5aを有するスプレーノズルユニット5が配置される。この実施形態において、回転ドラム1は、前端部に前端開口部1eを有すると共に、後端部に後端開口部1gを有している。また、前端開口部1eと後端開口部1gの側に、それぞれ、給気部A1、A2が設けられている。
ケーシング2の前端部はチャンバ2aを構成し、チャンバ2aの前面は、点検窓2b1を有する前面パネル2bで閉塞されている。チャンバ2aには、上下動機構8と、後述する気流案内部材20が収容される。
スプレーノズルユニット5は、L字形の支持パイプ6の先端部に接続管7を介して取り付けられ、支持パイプ6の基端部は、前面パネル2bの内面側に取り付けられた上下動機構8に接続されている。上下動機構8により、スプレーノズルユニット5の上下方向位置を手動で又は自動で(エアーシリンダやボールねじ等のアクチュエータ機構により)調整することができる。また、前面パネル2bには、後述するノズル移動機構9が接続されており、ノズル移動機構9により、前面パネル2bをスプレーノズルユニット5と伴に、回転ドラム1の軸線X方向に移動させることができると共に、図2に一点鎖線で示す第1位置P1と実線で示す第2位置P2との間で旋回移動させることができる。
図3に示すように、この実施形態において、回転ドラム1は、多角形(例えば10角形や12角形)の横断面形状を有する周壁部1aと、周壁部1aの前端に連続した端壁部1bと、周壁部1aの後端に連続した端壁部1cとを備えている。周壁部1aの各辺面には、それぞれ多孔部で形成される通気部が設けられている。この実施形態では、周壁部1aの各辺面にそれぞれ多孔板を装着することによって通気部を形成している。端壁部1bの前端にはマウスリング部1dが設けられ、マウスリング部1dに前端開口部1eが設けられている。また、端壁部1cの後端には連結部1fが設けられ、連結部1fに後端開口部1gが設けられている。連結部1fには、回転ドラム1を回転駆動する駆動系部品のマウント等に供される延在部1h(図1参照)が連結される。
この実施形態において、回転ドラム1の周壁部1aの軸方向両端部には、環状のシールリング13が設けられ、周壁部1aの外周には、複数の仕切り部14が回転方向に所定間隔で設けられている。仕切り部14は、全体として板状形態をなし、周壁部1aの軸方向寸法とほぼ同じ長手方向寸法を有し、回転ドラム1の軸線と平行な向きで周壁部1aの外周に配置される。また、仕切り部14は、多角形の周壁部1aの各頂部1a2と各辺面1a1にそれぞれ配置されている。これらのシールリング13と仕切り部14は、回転ドラム1の回転時に、通気口10bを有する通気部材10の摺接部10a(図6参照)に摺接する。
図4に示すように、この実施形態において、仕切り部14は、周壁部1aの外周に固定された基部14aと、基部14aに、周壁部1aの内外周方向への移動が許容された状態で装着されたシール部材14bとを備えている。基部14aは、金属材等で平板状に形成され、回転ドラム1の軸線と平行な向きで周壁部1aの外周に溶接等の適宜の手段で固定される。シール部材14bは、フッ素系樹脂(PTFE等)の合成樹脂材や硬質ゴム等の合成ゴム材で平板状に形成され、基部14aの一面側又は他面側に装着される。例えば、シール部材14bは、周壁部1aの内外周方向に縦長になった長穴14b1を有し(図5も参照)、樹脂製又は金属製のワッシャ14cを介して長穴14b1に挿通したボルト14dを、基部14aに設けたボルト穴14a1に螺合することによって、基部14aに装着される。シール部材14bは、基部14aに装着された状態において、長穴14b1とボルト14dの軸部との間の隙間の範囲内で、基部14aに対して、周壁部1aの内外周方向に可動である。そのため、シール部材14bは、外周方向に向いた力を受けると、基部14aの一面又は他面と摺接しながら外周方向に移動し、上記の力に見合う力で、その先端部が通気部材10の摺接部10aに圧接する。シール部材14bに上記の外力を与える手段として、ばね等の弾性付勢手段を用いても良いが、この実施形態では、構造の簡略化の点から、回転ドラム1の回転に伴う遠心力でシール部材14bを外周方向に付勢する手段を採用している。また、上記のボルト14dに代えて、ピンを用いても良い。
また、図5に示すように、シールリング13は、周壁部1aの端部外周に固定された基部13aと、基部13aに装着されたシール部材13bとを備えている。基部13aは、金属材等でリング板状に形成され、回転ドラム1の端部外周に溶接等の適宜の手段で固定される。シール部材13bは、フッ素系樹脂(PTFE等)の合成樹脂材や硬質ゴム等の合成ゴム材でリング板状(複数の部分リング板材を組み合わせてリング板状にしたものを含む)に形成され、基部13aの外面側に装着される。例えば、シール部材13bは、周壁部1aの内外周方向に縦長になった長穴13b1を有し、樹脂製又は金属製のワッシャ13cを介して長穴13b1に挿通したボルト13dを、基部13aに設けたボルト穴13a1に螺合することによって、基部13aに固定的に装着される。シール部材13bは、基部13aに固定的に装着された状態で、その先端部が通気部材10の摺接部10aに圧接する。尚、シール部材13bは、基部13aに装着された状態において、長穴13b1とボルト13dの軸部との間の隙間の範囲内で、基部13aに対して、周壁部1aの内外周方向に可動であるようにしても良い。この場合、シール部材13bは、外周方向に向いた力を受けると、基部13aの一面又は他面と摺接しながら外周方向に移動し、上記の力に見合う力で、その先端部が通気部材10の摺接部10aに圧接する。また、上記のボルト13dに代えて、ピンを用いても良い。
図6に示すように、回転ドラム1の下方外周側にダクト状の通気部材(排気部材)10が設けられている。通気部材10は、内部ハウジング4の内部に設けられた排気通路11を介して排気ダクト12に連通している。通気部材10は、回転ドラム1のシールリング13と仕切り部14が摺接する円弧状の摺接部10aと、摺接部10aの一部に設けられた通気口(排気口)10bとを備えている。回転ドラム1の周壁部1aに設けられたシールリング13と仕切り部14が、回転ドラム1の回転時に、通気部材10の摺接部10aに摺接することにより、通気口10bの領域に、複数の仕切り部14で回転方向に所定間隔で仕切られた複数の通気空間C1が形成される。すなわち、軸方向両端部のシールリング13と、回転方向に隣接する2つの仕切り部14と、周壁部1aの外周とで1つの通気空間C1が形成され、この通気空間C1が通気口10bの領域で回転方向に沿って複数形成される。この実施形態では、仕切り部14を、多角形の周壁部1aの各頂部1a2と各辺面1a1にそれぞれ配置することにより、周壁部1aの頂部1a2の数(辺面1a1の数)よりも多い数の通気空間C1を通気口10bの領域に形成している。複数の通気空間C1は、一部又は全部が異なる回転方向寸法を有していても良いが(仕切り部14の配置間隔が不等間隔)、全て同じ回転方向寸法を有していることが好ましい(仕切り部14の配置間隔が等間隔)。また、仕切り部14は、各頂部1a2では回転ドラム1の軸心を中心とする放射方向に延び、各辺面1a1では各辺面1a1と直交する方向に延びているが、全ての仕切り部14が放射方向に延びる構成としても良く、また、少なくとも1つの仕切り部14が回転方向の前方側又は後方側(好ましくは後方側)に傾斜する構成としても良い。
また、この実施形態において、内部ハウジング4の下部は洗浄バケット4aを構成しており(図1も参照)、通気部材10は、洗浄バケット4aの内部に設けられている。回転ドラム1の洗浄時には、洗浄バケット4aに洗浄水等の洗浄液Lが供給される。通気部材10と洗浄バケット4aには、それぞれ、個別に排液口10c、4bが設けられている。洗浄バケット4aには、気泡が混在した洗浄液を洗浄バケット4aの洗浄液中に噴射する気泡流噴射ノズル(バブリングジェットノズル)(図示省略)が設けられている。また、通気部材10の内部に、洗浄液を噴射する洗浄ノズル10d、10eが配置され、排気通路11の内部に、洗浄液を噴射する洗浄ノズル11aが配置され、内部ハウジング4の上部空間に、洗浄液を噴射する洗浄ノズル4c、4dが配置される。
図7は、ノズル移動機構9を上方から見た一部断面図である。この実施形態において、ノズル移動機構9は、前面パネル2bをスプレーノズルユニット5と伴に、回転ドラム1の軸線X方向に移動させる軸方向移動機構9Aと、図2に一点鎖線で示す第1位置P1と実線で示す第2位置P2との間で旋回移動させるノズル位置調整機構9Bとを備えている。軸方向移動機構9Aは、互いに平行に配置されたスライドシャフト9a、9bと、スライドシャフト9a、9bの軸線X1、X2(回転ドラム1の軸線Xと平行)に沿った軸方向移動をスライド案内するスライド軸受部9c、9d及びスライドレール9e、9fとを主要な構成要素とする。また、ノズル位置調整機構9Bは、スライドシャフト9a、9bの軸線X1、X2回りの回動を支持する回動軸受部9g、9hと、スライドシャフト9bを回動させる回動駆動部9iとを主要な構成要素とする。
スライドシャフト9aの前端部は、前面パネル2bの内面側に取り付けられた上下動機構8のボックス8aに接続され、スライドシャフト9aの後端部は、回動軸受部9gのハウジングに設けられたスライドピン9jを介してスライドレール9eにスライド自在に装着されている。また、スライドシャフト9aの内部には、配管パイプ9kが貫通装着されている。この配管パイプ9kの内部には、スプレーノズルユニット5の各スプレーノズル5aに噴霧化気体(アトマイズエアー)等を供給する配管チューブが収容され、これら配管チューブは支持パイプ6の内部を経由して各スプレーノズル5aに接続される。
スライドシャフト9bの前端部は、前面パネル2bの内面側に取り付けられた旋回軸部9mに接続され、スライドシャフト9bの後端部は、回動軸受部9hのハウジングに設けられたスライドピン9nを介してスライドレール9fにスライド自在に装着されている。旋回軸部9mは、スライドシャフト9bの前端部に装着された偏心部材9m1と、偏心部材9m1に固定された偏心ピン9m2と、偏心ピン9m2を前面パネル2bの内面壁に対して回動自在に支持する偏心軸受部9m3とを備えている。偏心ピン9m2の軸心X3は、スライドシャフト9bの軸線X2から所定量だけ偏心している。
回動駆動部9iは、駆動モータ9i1と、駆動モータ9i1の回動力をスライドシャフト9bに伝達するギヤ機構9i2とを備えている。駆動モータ9i1は、回動軸受部9h(及び/又は回動軸受部9g)のハウジングに取り付けられており、回動駆動部9iは、スライドシャフト9b(及び/又はスライドシャフト9a)と伴に軸方向移動可能である。回動駆動部9iの駆動モータ9i1が回転すると、その回動力がギヤ機構9i2を介してスライドシャフト9bに伝達され、スライドシャフト9bが軸線X2回りに回動する。そして、スライドシャフト9bが軸線X2回りに回動すると、スライドシャフト9bの前端部に装着された偏心部材9m1が回動し、偏心部材9m1に固定された偏心ピン9m3(軸心X3)が偏心軸受部9m3に回動支持されながらスライドシャフト9bの軸線X2回りに旋回移動する。これにより、図2に示すように、前面パネル2bが、回転ドラム1の軸線Xと平行なスライドシャフト9aの軸線X1を旋回中心として(軸線X1と直交する平面内で)、同図に一点鎖線で示す第1位置P1と実線で示す第2位置P2との間で旋回移動する。
図2に示す前面パネル2bの第1位置P1と第2位置P2は、図8に示すスプレーノズルユニット5の第1位置P1’と第2位置P2’に対応する。第1位置P1’は、スプレーノズルユニット5が回転ドラム1の前端開口部1eの直径よりも内径側に位置するスプレーノズルユニット5の位置、換言すれば、スプレーノズルユニット5が回転ドラム1の前端開口部1eと干渉することなく軸方向移動できるスプレーノズルユニット5の位置である。第2位置P2’は、スプレーノズルユニット5の少なくともスプレーノズル5aが回転ドラム1の前端開口部1eの直径よりも外径側で、かつ、回転ドラム1の軸線Xを含む鉛直面Vに対して、回転ドラム1の回転方向Aの前方側に位置するスプレーノズルユニット5の位置である。この第2位置P2’では、スプレーノズルユニット5が軸方向移動すると回転ドラム1の前端開口部1eと干渉する。第2位置P2’は、粉粒体の処理時におけるスプレーノズルユニット5の設置位置であっても良いし、この設定位置よりも上方又は下方の位置であっても良い。後者の場合、スプレーノズルユニット5を上下動機構8により第2位置P2’から上記設定位置に、あるいは、上記設定位置から第2位置P2’に移動させる。図7に示す例では、第2位置P2’は、粉粒体の処理時におけるスプレーノズルユニット5の設置位置である。尚、図8は、粉粒体層Sの表層部S1が相対的に高い位置にある場合(粉粒体の処理量が多い場合)のスプレーノズルユニット5の設置位置P2’(実線)と、粉粒体層Sの表層部S1が相対的に低い位置にある場合(粉粒体の処理量が少ない場合)のスプレーノズルユニット5の設置位置P2’(点線)を示している。また、この実施形態では、第2位置P2’において、スプレーノズルユニット5のスプレーノズル5aが鉛直下方にスプレー液を噴霧するように(スプレーノズル5aの噴出口が鉛直下方を向くように)、スプレーノズル5aの向きが設定されている。尚、スプレーノズル5aの噴霧位置は、上下動機構8により上下方向に調整することができる。
図9は、回転ドラム1の前端開口部1eの側に設けられる給気部A1を示している。この実施形態において、給気部A1は、ケーシング2の前端部のチャンバ2aに配置された気流制御部としての気流案内板20と、給気ダクト21を介して供給される熱風や冷風等の処理気体を、気流案内板20に導く通路部24aを形成するための通路部材24とを備えている。気流案内板20は、前端開口部1eから離れる方向に向いた一辺部20aと、一辺部20aから前端開口部1eに近付く方向に折曲した他辺部20bとを備え、前端開口部1eの範囲のうち、回転ドラム1の軸線Xを含む鉛直面Vに対して回転方向後方側(同図で右側)となる領域に対応する位置に配置されている。また、気流案内板20は、下方から上方に向かって、漸次に鉛直面Vに近付く方向の傾斜姿勢で配置されている。通路部材24は、ケーシング2の前端壁に装着され、前面側が前面パネル2bで閉塞されることにより、チャンバ2a内で通路部24aを形成する。通路部24aの上部は、給気ダクト21の給気口21aと連通する。気流案内板20は、通路部材24の下部の前面側部分に固定され、または、一体に形成される。尚、チャンバ2aの内部には、洗浄液を噴出する洗浄ノズル22が配置され、通路部24aの内部には、洗浄液を噴出する洗浄ノズル23が配置されている。給気ダクト21の給気口21aから給気される処理気体は、通路部24aを通って気流案内板20に導かれ、上記の形態の気流案内板20によって案内されて、前端開口部1eから回転ドラム1の内部に流入する。そのため、回転ドラム1の内部に流入する処理気体は、図8に示すように、粉粒体の処理時におけるスプレーノズルユニット5の設置位置P2’に対して、粉粒体層Sの上方で、かつ、スプレーノズルユニット5に対して背面側となる回転ドラム1内の空間部を指向した流れになる。
図1に示すように、回転ドラム1の後端開口部1gの側に設けられる給気部A2は、図示されていない給気ダクトとの接続口30aを有するチャンバ部材30の内部空間と、回転ドラム1の延在部1fの内部空間とで構成される給気チャンバ31に気流案内板32を配置し、給気ダクトを介して給気チャンバ31に供給される熱風や冷風等の処理気体を、気流案内板32で案内して、後端開口部1gから回転ドラム1の内部に給気する構成としたものである。チャンバ部材30は、延在部1fの後端部に接続されている。この実施形態において、気流案内板32は、1又は複数の支持部材32aで支持され、延在部1fの内部空間に所定角度θ1をもって傾斜状に配置される。また、この実施形態において、気流案内板32は、図10に示すような半円形状の板部材で形成され、円弧部32aは延在部1fの内周面(後端開口部1gと同径又はほぼ同径)に沿い、辺部32bはスプレーノズルユニット5の背面側を向くように、回転ドラム1の軸線Xを含む鉛直面Vに対して所定角度θ2傾けた姿勢で配置される。そのため、給気ダクトを介して給気チャンバ31に供給される処理気体は、気流案内板32で案内されることにより、粉粒体の処理時におけるスプレーノズルユニット5の設置位置P2’に対して、粉粒体層Sの上方で、かつ、スプレーノズルユニット5に対して背面側となる回転ドラム1内の空間部を指向して、後端開口部1gから回転ドラム1の内部に流入する。尚、洗浄液を噴出する洗浄ノズル33が気流案内板32を貫通して設けられている。また、チャンバ部材30の内部に、洗浄液を噴出する洗浄ノズル34が配置されている。
図6に示すように、粉粒体の処理時、回転ドラム1が同図でA方向に回転することにより、周壁部1aのシールリング13と仕切り部14は、通気部材10の摺接部10aに摺接する。特に、仕切り部14のシール部材14bは内外周方向に可動であり、回転ドラム1の回転に伴う遠心力を受けて外周方向に移動し、上記の遠心力に見合う力で、通気部材10の摺接部10aに圧接する。回転ドラム1の前端部側の給気部A1と後端部側の給気部A2から回転ドラム1の内部に給気された処理気体は、粉粒体層Sを通過し、粉粒体層Sの乾燥に寄与した後、回転ドラム1の周壁部1aの通気部(多孔部)を介して上記の通気空間C1に入り、通気空間C1から通気口10bを介して通気部材10に排気される。
仕切り部14のシール部材14bが、回転ドラム1の回転に伴う遠心力により、通気部材10の摺接部10aに圧接して通気空間C1をシールする構成であるので、仕切り部14の寸法や取付けの誤差、シール部材14bの摩耗による寸法変化、回転ドラム1の軸心の振れ、ケーシングの歪等の影響を受けることなく、シール部材14bは常に所定力(遠心力に見合う力)で通気部材10の摺接部10aに圧接する。そのため、通気空間C1に対するシール性が安定し、排気の漏れやショートパスの発生がより効果的に防止される。また、仕切り部14を構成する各部品の寸法形状管理も比較的容易である。さらに、過大な圧接力によるシール部材14bの異常摩耗がなく、コンタミの発生が低減されると共に、シール部材14bの交換頻度も少なくなる。一方、シール部材14bを交換する場合でも、その交換作業は比較的容易である。しかも、この実施形態では、仕切り部14を、多角形の周壁部1aの各頂部1a2と各辺面1a1に配置することにより、周壁部1aの頂部1a2の数(辺面1a1の数)よりも多い数の通気空間C1が通気口10bの領域に形成されるようにしているので、排気のショートパスの発生がより一層効果的に防止される。
粉粒体の処理時(回転ドラム1の回転時)、粉粒体層Sの表層部S1は回転方向Aの前方側に向かって上り勾配で傾斜した状態になり、スプレーノズル5aからスプレー液の噴霧を受けた表層部S1の粉粒体粒子は、スプレー液の噴霧を受けた位置(スプレーゾーン)から傾斜下方側(図6に示すB方向)に流動する間に、スプレー液の展延と適度の乾燥を受ける(乾燥ゾーン)。スプレーノズルユニット5が粉粒体層Sの表層部S1に対して傾斜方向上位の位置となる第2位置P2’に設置されることにより、スプレーノズル5aからスプレー液の噴霧を受けた表層部S1の粉粒体粒子が傾斜下方側Bに流動する際の流動距離が相対的に大きくなり、スプレー液の展延と乾燥が効果的に行われる。さらに、この実施形態では、第2位置P2’において、スプレーノズルユニット5のスプレーノズル5aは粉粒体層Sに向けて鉛直下方にスプレー液を噴霧するので、スプレーノズル5aからスプレー液の噴霧を受けた表層部S1の粉粒体粒子は、スプレー液の噴霧圧によって傾斜下方側への流動が促進される。
回転ドラム1の前端部側の給気部A1において、気流案内板20により案内されて、粉粒体層Sの上方で、かつ、スプレーノズルユニット5に対して背面側となる回転ドラム1内の空間部を指向して回転ドラム1の内部に給気された処理気体は、該空間部内で流速が低下した後、図6に白抜き矢印で示すように、スプレーゾーンよりも傾斜下方側の乾燥ゾーンから粉粒体層Sに入り、粉粒体層Sを通過して通気部材10の通気口10bから排気される。スプレーノズルユニット5の背面側の空間部を指向して処理気体を給気する構成であることと、処理気体がスプレーゾーンよりも傾斜下方側の乾燥ゾーンから粉粒体層Sに入ること、さらに上記空間部内での処理気体の流速低下の効果とが相俟って、スプレーノズル5aから噴霧されるスプレー液のスプレーパターンが処理気体の気流によって乱されるという現象がより一層効果的に防止される。また、処理気体の流速低下により、粉粒体層Sの表層部S1での処理気体の気流の跳ね返りが起こらないので、気流の跳ね返りに起因するダストの発生や飛散が生じ難い。さらに、粉粒体層Sの傾斜方向上位の位置(スプレーゾーン)でスプレーノズル5aからスプレー液を噴霧された表層部S1の粉粒体粒子は、傾斜下方側の乾燥ゾーンに流動して、その表面にスプレー液がある程度展延した後に処理気体の気流と接触するため、ダストの発生や飛散がより生じ難い。
また、回転ドラム1の後端部側の給気部A2において、気流案内板32により案内されて、後端開口部1gから、粉粒体層Sの上方で、かつ、スプレーノズルユニット5に対して背面側となる回転ドラム1内の空間部を指向して回転ドラム1の内部に給気された処理気体は、該空間部内で流速が低下した後、スプレーゾーンよりも傾斜下方側の乾燥ゾーンから粉粒体層Sに入り、粉粒体層Sを通過して排気される。スプレーノズルユニット5の背面側の空間部を指向して処理気体を給気する構成であることと、処理気体がスプレーゾーンよりも傾斜下方側の乾燥ゾーンから粉粒体層Sに入ること、さらに上記空間部内での処理気体の流速低下の効果とが相俟って、スプレーノズル5aから噴霧されるスプレー液のスプレーパターンが処理気体の気流によって乱されるという現象がより一層効果的に防止される。また、処理気体の流速低下により、粉粒体層Sの表層部S1での処理気体の気流の跳ね返りが起こらないので、気流の跳ね返りに起因するダストの発生や飛散が生じ難い。さらに、粉粒体層Sの傾斜方向上位の位置(スプレーゾーン)でスプレーノズル5aからスプレー液を噴霧された表層部S1の粉粒体粒子は、傾斜下方側の乾燥ゾーンに流動して、その表面にスプレー液がある程度展延した後に処理気体の気流と接触するため、ダストの発生や飛散がより生じ難い。
上記のようにして、スプレーノズルユニット5のスプレーノズル5aから粉粒体層Sに噴霧された膜材液等のスプレー液は、回転ドラム1の回転に伴う攪拌混合作用によって各粉粒体粒子の表面に展延され、粉粒体層Sを通過する処理気体によって乾燥される。これにより、各粉粒体粒子の表面にコーティング被膜が形成される。
粉粒体の処理が完了し、スプレーノズルユニット5を回転ドラム1の内部から外部に引き出す際には、まず、ノズル移動機構9におけるノズル位置調整機構9Bの回動駆動部9iの駆動モータ9i1(図7参照)を作動させ、スライドシャフト9bを軸線X2回りに回動させると共に、偏心ピン9m3(軸心X3)を軸線X2回りに旋回移動させて、前面パネル2bを、スライドシャフト9aの軸線X1を旋回中心として、図2に実線で示す第2位置P2から一点鎖線で示す第1位置P1に旋回移動させる。これにより、前面パネル2bに取り付けられたスプレーノズルユニット5が、図8に示す第2位置P2’から第1位置P1’に旋回移動して、回転ドラム1の前端開口部1eと干渉することなく回転ドラム1の軸線X方向に移動可能となる。尚、スプレーノズルユニット5が図8に実線で示す第2位置P2’に設定されている場合は、上下動機構8により、スプレーノズルユニット5を点線で示す第2位置P2’に移動させた後、旋回移動させる。その後、ノズル移動機構9における軸方向移動機構9Aを手動で作動させ、あるいは、エアーシリンダ等の適宜の軸方向駆動手段で作動させて、スプレーノズルユニット5を前面パネル2bと伴に回転ドラム1の軸線X方向に移動させることにより、スプレーノズルユニット5を前端開口部1eから回転ドラム1の外部に引き出すことができる(図1参照)。その際、軸方向移動機構9Aのスライドシャフト9a、9bが、スライド軸受部9c、9d及びスライドレール9e、9fによってスライド案内されることにより、前面パネル2b及びスプレーノズルユニット5は回転ドラム1の軸線X方向に円滑に移動することができる。
一方、スプレーノズルユニット5を回転ドラム1の外部から内部に挿入する際には、上記とは逆に、まず、前面パネル2bを、図2に一点鎖線で示す第1位置P1に位置させた状態で、スプレーノズルユニット5を前面パネル2bと伴に回転ドラム1の軸線X方向に移動させて、スプレーノズルユニット5を前端開口部1eから回転ドラム1の内部に挿入する。その後、ノズル移動機構9のノズル位置調整機構9Bの回動駆動部9iの駆動モータ9i1を作動させて、前面パネル2bを、スライドシャフト9aの軸線X1を旋回中心として、図2に実線で示す第2位置P2まで旋回移動させる。これにより、前面パネル2bに取り付けられたスプレーノズルユニット5が、図8に示す第1位置P1’から第2位置P2’に旋回移動して、粉粒体の処理時の位置に設定される。尚、スプレーノズルユニット5を図8に実線で示す第2位置P2’に設定する場合は、上下動機構8により、スプレーノズルユニット5を点線で示す第2位置P2’から実線で示す第2位置P2’に移動させる。
回転ドラム1を洗浄する際は、図6に示すように、先ず、洗浄バケット4aに洗浄水等の洗浄液Lを供給する。洗浄バケット4aに供給された洗浄液Lは、回転ドラム1の周壁部1aの通気部(多孔部)から回転ドラム1の内部に入ると共に、通気部材10の通気口10bから排気部材の内部にも入る。このようにして、洗浄バケット4aに洗浄液を溜めた後、回転ドラム1を回転させ、図示しない気泡流噴射ノズルから洗浄液中に洗浄液の気泡流を噴射させながら洗浄を行う。洗浄バケット4aの洗浄液中での回転ドラム1の回転と、気泡流噴射ノズルから洗浄液中に噴出する洗浄液の噴流及び気泡の相乗効果により、回転ドラム1の周壁部や通気部、回転ドラム1の内部や通気部材10の内部等を効果的に洗浄することができる。
さらに、この実施形態では、回転ドラム1の周壁部1aに仕切り部14を設けているので、回転ドラム1の回転時、洗浄バケット4aの洗浄液が仕切り部14によって回転方向前方に流動せしめられると共に、洗浄液中の気泡が仕切り部14の回転方向前方側に保持され、周壁部1aの通気部(多孔部)を介して回転ドラム1の内部に流通せしめられる。すなわち、周壁部1aの通気部を通過する洗浄液の流通速度は緩慢になりやすく、通気部(通気孔)の孔壁面等に洗浄液中の気泡がトラップされて、洗浄力が十分に得られないことがあるが、仕切り部14により、通気部を通過する洗浄液の流通速度が高められるため、気泡のトラップが起こりにくく、気泡の流通性が向上する。そのため、特に洗浄しにくい周壁部1aの通気部も効果的に洗浄することができる。また、洗浄バケット4aの洗浄液が仕切り部14によって液面Lから回転方向前方にすくい上げられ、周壁部1aに跳ね掛けられることによる跳ね掛け洗浄の効果も期待できる。このような跳ね掛け洗浄の効果により、回転ドラム1の周壁部1aのみならず、回転ドラム1の内部のスプレーノズルユニット5やバッフル等の洗浄促進も期待できる。さらに、仕切り部14の回転方向への移動により、仕切り部14の回転方向前面側では洗浄液に陽圧が生じ、回転方向背面側では洗浄液に陰圧が生じるため、仕切り部14の回転方向前方側の通気部(通気孔)から洗浄液が回転ドラム1の内部に流れ込み、回転方向背面側の通気部(通気孔)から回転ドラム1の外部に流れ出でるという、洗浄液の循環流/渦流が発生する。この洗浄液の循環流/渦流により、洗浄力が向上する。なお、周壁部1aの各頂部は、仕切り部14を設けない場合でも、その周辺部には上記の洗浄液の循環流/渦流がある程度発生するが、周壁部1aの各辺面は、仕切り部14を設けないと、特に回転方向中央の周辺部で洗浄液の循環が緩慢になる。従って、洗浄性の点から、仕切り部14は、周壁部1aの各辺面に設けるのが効果的であり、好ましくは、各辺面の回転方向中央の周辺部での洗浄液の循環を促進するように、1又は複数の仕切り部14を各辺面に設置するのが良い。また、回転方向に隣接する仕切り部14間の間隔は、最も大きな高さを有する仕切り部14の高さよりも大きくするのが好ましい。
上記のようにして回転ドラム1の洗浄を行った後、排液口10c、4bから図1に示す排液管4cを介して洗浄液を排出する。
図11~図13は、仕切り部14の変形例を概略的に示している。図11に示す変形例では、コ字形断面の基部14aに平板状のシール部材14bを装着している。図12に示す変形例では、長手方向の開口部を有する四角筒状の基部14aに、矩形断面の幅広部14b1を有する平板状のシール部材14bを装着し、図13に示す変形例では、長手方向の開口を有する三角筒状の基部14aに、台形断面の幅広部14b1を有する平板状のシール部材14bを装着している。これらの変形例において、シール部材14bは、回転ドラム1の回転に伴う遠心力を受けると、基部14aと摺接しながら外周方向に移動し(図11~図13では、基部14aとシール部材14bとの間の隙間をかなり誇張して示している)、上記遠心力に見合う力で、その先端部が通気部材10の摺接部10aに圧接する。尚、図12及び図13に示す変形例では、組立、分解時等において、シール部材14bの幅広部14b1が基部14aの開口部と係合することにより、シール部材14bの基部14aからの抜けが防止されるようになっている。
図14は、仕切り部14の更なる変形例を概略的に示している。この変形例では、円形断面の基部14aに平板状のシール部材14bを回動自在に装着している。シール部材14bは、回転ドラム1の回転に伴う遠心力を受けると、基部14aに対して起立する方向に回動し、上記遠心力に見合う力で、その先端部が通気部材10の摺接部10aに圧接する。
図15は、仕切り部14の更なる変形例を概略的に示している。この変形例では、基部14aとシール部材14bの相対向する摺接面に、それぞれ、複数の溝14a2と複数の溝14b2を形成している。溝14a2と溝14b2は、それぞれ、外周方向に延びている。回転ドラム1の洗浄時、洗浄液が溝14a2、溝14b2を介して基部14aとシール部材14bの摺接部に入ることにより、該摺接部の洗浄性が向上する。尚、このような溝は、基部14aとシール部材14bの相対向する摺接面のうち、少なくとも一方に形成すれば良い。また、このような溝は、外周方向に対して傾斜又は直交する方向に形成しても良い。
図16は、他の実施形態に係る回転ドラム1を示している。この実施形態では、回転ドラム1の周壁部1aが、円筒状の通気部材40によって所定の間隔を隔てて外周側から覆われており、通気部材40の内周40aと周壁部1aの外周との間に空間部Cが全周に亘って形成される。周壁部1aの軸方向両端部には、この空間部Cを端部側から閉塞するシールリング13が設けられ、周壁部1aの外周には、空間部Sを回転方向に所定間隔で仕切る複数の仕切り部14が設けられている。これらのシールリング13と仕切り部14は、上述した実施形態と同様のものであり、回転ドラム1の回転時に、それぞれ通気部材40の内周面40aと摺接する。空間部Cが複数の仕切り部14で回転方向に所定間隔で仕切られることにより、周壁部1aの外周側に、所定の回転方向寸法に区画された複数の通気空間C1が形成される。すなわち、通気部材40の内周40aと、軸方向両端部のシールリング13と、回転方向に隣接する2つの仕切り部14と、周壁部1aの外周とで1つの通気空間C1が形成され、この通気空間C1が周壁部1aの外周側に回転方向に沿って複数形成される。
通気部材40は、その一部に通気口(排気口)40bを有している。この実施形態において、通気口40は、通気部材40の下部に所定の回転方向寸法と軸方向寸法で形成される。また、通気部材40の通気口40bには通気チャンバ41が接続され、通気チャンバ41に通気ダクト42が接続される。通気部材40の通気口40bと通気チャンバ41との接続部分には、乾燥気体の漏れを防止するための封止部材43が設けられている。
回転ドラム1の前端部側の給気部A1と後端部側の給気部A2から回転ドラム1の内部に給気された処理気体は、粉粒体層Sを通過し、粉粒体層Sの乾燥に寄与した後、回転ドラム1の周壁部1aの通気部(多孔部)を介して上記の通気空間C1に入り、通気空間C1から通気口40bを介して通気チャンバ41に排気される。尚、通気部材40の所定位置に給気口を設け、この給気口から回転ドラム1の内部に給気する構成としても良い。その他の事項は、上述した実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
図17は、回転ドラム1の前端開口部1eの側に設けられる給気部A1の他の実施形態を示している。この実施形態の給気部A1は、ケーシング2の前端部に給気チャンバ40を設けると共に、給気チャンバ40に気流制御部として気流旋回部43を設けたものである。給気チャンバ40の前面は、前面パネル2bで閉塞され、給気チャンバ40の後部は、回転ドラム1の前端開口部1eと連通する。また、給気チャンバ40には、給気ダクト41が接続され、給気ダクト41を介して供給される熱風や冷風等の処理気体は、給気チャンバ40に流入した後、給気チャンバ40から前端開口部1eを介して回転ドラム1の内部に流入する。
図17(A)に示すように、給気ダクト41は、回転ドラム1の前方側から見て、回転ドラム1の軸線Xを含む鉛直面Vに対して同図で右側に寄った位置で、かつ、回転ドラム1の軸線Xを含む水平面に対して同図で上側に寄った位置に給気口41aを有している。また、図17(B)に示すように、給気ダクト41は、上記の位置に設定された給気口41aに対して斜め上方から処理気体を供給するようになっている。そのため、給気ダクト41から給気口41aを介して給気チャンバ40に供給された処理気体の流れは、回転ドラム1の前方側から見て、給気チャンバ40内で右回りに旋回する。さらに、この実施形態では、図17(B)に示すように、給気チャンバ40の所定領域、すなわち回転ドラム1の軸線Xを中心とする領域に、処理気体の旋回を案内する隆起部42を設けている。同図に示す例において、隆起部42は、前面パネル2bの一部分が、上記所定領域において、回転ドラム1の前端開口部1eの方向に隆起した形態を有している。また、この隆起部42の周面は、前端開口部1eに向かって漸次縮径した円錐テーパ状の案内面42aに形成され、隆起部42の先端には、点検窓42bが装着されている。給気チャンバ40内で発生する処理気体の旋回が隆起部42の円錐テーパ状の案内面42aで案内されることにより、旋回の流れが強まりかつ安定すると共に、回転ドラム1の前端開口部1eに向かって導かれる。
給気ダクト41から給気チャンバ40に供給される処理気体は、給気チャンバ40内で旋回して、粉粒体の処理時におけるスプレーノズルユニット5の設置位置P2’に対して、粉粒体層Sの上方で、かつ、スプレーノズルユニット5に対して背面側となる回転ドラム1内の空間部を指向して、前端開口部1eからから回転ドラム1の内部に流入する。その他の事項は上述した実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
図18は、回転ドラム1の後端開口部1gの側に設けられる給気部A2の他の実施形態を示している。この実施形態の給気部A2は、回転ドラム1の後端側の延在部1fに接続されるチャンバ部材30の内部空間(給気チャンバ30a)に気流制御部として気流旋回部51を設けたものである。チャンバ部材30には、給気ダクト52が接続され、熱風や冷風等の処理気体は、給気ダクト52から給気チャンバ30aに接線方向に供給される。
給気ダクト52から給気チャンバ30aに接線方向に供給された処理気体の流れは、回転ドラム1の後方側から見て、給気チャンバ30a内で右回りに旋回する。さらに、この実施形態では、給気チャンバ30aの所定領域、すなわち回転ドラム1の軸線Xを中心とする領域に、処理気体の旋回を案内する隆起部53を設けている。この隆起部53の周面は、後端開口部1g(図1参照)に向かって漸次縮径した円錐テーパ状の案内面53aに形成され、隆起部53aの先端には、点検窓53bが装着されている。給気チャンバ30a内で発生する処理気体の旋回が隆起部53の円錐テーパ状の案内面53aで案内されることにより、旋回の流れが強まりかつ安定すると共に、回転ドラム1の後端開口部1gに向かって導かれる。
給気ダクト52から給気チャンバ30aに供給される処理気体は、給気チャンバ30a内で旋回し、延在部1f(図1参照)の内部空間(この実施形態では、図1に示す気流案内板32は配置されていない。)に入り、粉粒体の処理時におけるスプレーノズルユニット5の設置位置P2’に対して、粉粒体層Sの上方で、かつ、スプレーノズルユニット5に対して背面側となる回転ドラム1内の空間部を指向して、後端開口部1gから回転ドラム1の内部に流入する。その他の事項は上述した実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
以上の実施形態では、回転ドラム1の前端部側に給気部A1、後端部側に給気部A2を設けているが、前端部側の給気部A1のみ、または、後端部側の給気部A2のみを設ける構成としても良い。また、給気部A1は給気部A2と同様の構成にしても良く、逆に、給気部A2は給気部A1と同様の構成にしても良い。
また、以上の実施形態において、ノズル移動機構9は、2本のスライドシャフト9a、9bを備えた2軸構造を有しているが、スライドシャフト9aに対応する1本のスライドシャフトのみを備えた1軸構造としても良い。この場合、この1本のスライドシャフトをスライド案内するスライド軸受部と、このスライドシャフトの軸線回りの回動を支持する回動軸受部と、このスライドシャフトを回動駆動させる回動駆動部を設け、回動駆動部によりこのスライドシャフトを回動駆動することにより、前面パネル2bを、このスライドシャフトの軸線を旋回中心として旋回移動させる。
図19は、回転ドラム1の洗浄に関する他の実施形態を示している。回転ドラム1の下方外周側に洗浄槽17が設けられている。洗浄槽17は、内部ハウジング4の内部に設けられ、回転ドラム1の回転方向Aに対して、回転方向前方側のバケット部17aと回転方向後方側の延在部17bとで構成される。バケット部17aは、回転ドラム1の周壁部に対向する部分が開口し(開口部17a1)、図19の紙面垂直方向の側壁部17a2、17a3に、それぞれ、回転ドラム1のシールリング13と流動板14’が摺接する円弧状の摺接部17a4を備えている。この実施形態において、流動板14’は、上述した実施形態の仕切り部14の基部14aとシール部材14bとで構成される。また、バケット部17aは、図19の紙面垂直方向奥側の側壁部17a2に排気口17a5を備えている。この排気口17a5には、図示されていない排気ダクトが接続される。さらに、バケット部17aは、気泡が混在した洗浄液を洗浄槽17中に噴射する気泡流噴射ノズル(バブリングジェットノズル)17a5を備えている。延在部17bは、バケット部17aの回転方向後端部から回転ドラム1の周壁部1aに沿って回転方向後方側に円弧状に延び、回転ドラム1のシールリング13(および流動板14’)が摺接する円弧状の摺接部17b1を備えている。この摺接部17b1は、バケット部17aの摺接部17a4と滑らかに連続する。尚、延在部17bは、回転ドラム1のシールリング13(および流動板14’)と摺接するように、単純な円弧板で構成してもよい。
バケット部17aの底壁部17a6と側壁部17a7には、それぞれ、排水口17a8とオーバーフロー口17a9が設けられている。排水口17a8は、排水弁17a9を介して配水管17a10に接続され、オーバーフロー口17a9は、オーバーフロー弁17a11を介して配水管17a10に接続される。
回転ドラム1を洗浄する際は、先ず、排水弁17a9を閉、オーバーフロー弁17a11を開にした状態で、気泡流噴射ノズル17a4又は他の給液手段により、洗浄水等の洗浄液を洗浄槽17に供給する。洗浄層17に供給された洗浄液は、回転ドラム1の周壁部1aの通気部(多孔部)から回転ドラム1の内部にも入り、洗浄槽7内で図19に示す液面Lまで水位が上昇する。このようにして、洗浄槽17に洗浄液を溜めた後、回転ドラム1を回転させ、気泡流噴射ノズル17a4から洗浄液中に洗浄液の気泡流を噴射させながら洗浄を行う。洗浄槽17の洗浄液中での回転ドラム1の回転と、気泡流噴射ノズル17a4から洗浄液中に噴出する洗浄液の噴流及び気泡の相乗効果により、回転ドラム1の周壁部や通気部、回転ドラム1の内部等を効果的に洗浄することができる。また、気泡流噴射ノズル17a4から噴射される洗浄液の気泡流によって、バケット部17aの内部の洗浄も促進される。
洗浄時、気泡流噴射ノズル17a4から洗浄液中に常時噴射される気泡流によって、液面Lの付近の洗浄液はオーバーフロー口17a9からオーバーフローし、オーバーフロー弁17a11を介して配水管17a10に排出される。洗浄液中に分散した不溶性の汚れ成分(粒子状の汚れ物や油分等)は気泡の作用により液面Lに浮上し、オーバーフロー口17a9からオーバーフローする洗浄液に伴って配水管17a10に排出される。そのため、洗浄槽17中の洗浄液の清浄度が維持され、洗浄液中の汚れ成分が回転ドラム1に再付着することを防止して、洗浄効果を高めることができる。
上記のようにして回転ドラム1の洗浄を行った後、排水弁17a9を開いて、洗浄槽17の洗浄液を配水管17a10に排出する。洗浄液を排出した後、排水弁17a9とオーバーフロー弁を閉じると、洗浄槽17のバケット部17aの内部に空間部が形成されるが、この空間部は、粉粒体の処理時に排気チャンバとなる。すなわち、バケット部17aは排気部材を兼ねている。
この実施形態において、流動板14’は、周壁部1aの外周に固定された基部14aと、基部14aに、周壁部1aの内外周方向への移動が許容された状態で装着されたシール部材14bとで構成しているが、流動板の全体をフッ素系樹脂(PTFE等)の合成樹脂材や硬質ゴム等の合成ゴム材等で一体の平板状に形成して、周壁部1aの外周に固定してもよい。また、各流動板は、回転ドラム1の回転方向に対して前傾姿勢となるように、周壁部1aの外周に固定してもよい。これにより、流動板の回転方向前面側において、上述した洗浄液の陽圧発生が促進される。さらに、各流動板は、平板状のものに限らず、周壁部1aから外周側に向かって回転方向寸法が漸次増大する断面形状、例えば逆三角形状又は逆台形形状の断面形状を有する板状のものであってもよい。これにより、流動板の回転方向前面側において、上述した洗浄液の陽圧発生が促進されると共に、流動板の回転方向背面側において、上述した洗浄液の陰圧発生が促進される。また、気泡流噴射ノズル7a4に代えて、洗浄槽7の洗浄液中に気泡を発生させる気泡生成ノズルを用いても良い。その他の事項は上述した実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
図20は、回転ドラム1の洗浄に関する他の実施形態を示している。回転ドラム1の下方外周側に洗浄槽17が設けられている。洗浄槽17は、内部ハウジング4の内部に設けられ、回転ドラム1の回転方向Aに対して、回転方向前方側のバケット部18と回転方向後方側の延在部19とで構成される。
バケット部18は、回転ドラム1の周壁部1aに対向する部分が開口し(開口部18a)、図20の紙面垂直方向の側壁部18b、18cに、それぞれ、回転ドラム1のシールリング13が摺接する円弧状の第1リング摺接部18dを備えている(図21参照)。流動板14’は、第1リング摺接部18dには摺接しない。
また、バケット部18は、側壁部18bと側壁部18cとの間に、上壁部18eの回転ドラム1側の端部から洗浄液の液面L1の位置周辺まで側面視でシールリング13に沿って延在する円弧壁部18fと、円弧壁部18fの端部から斜め下方に延在する第1案内部18gとを備える。
バケット部18の円弧壁部18fは、その回転ドラム1側の面がシールリング13の周縁と同様の曲率の円弧板で、流動板14’の軸線方向の全域が摺接する第1流動板摺接部18hを有するが、シールリング13は円弧壁部18fに摺接しない。第1案内部18gは、側面視で、回転方向後方側に移行するに従って、シールリング13から漸次離隔する形状の板である。
また、バケット部18は、図20の紙面垂直方向奥側の側壁部18bに接続口18iを備えている。この接続口18iには、図示されていない通気ダクトが接続される。さらに、バケット部18は、気泡が混在した洗浄液を洗浄槽17中に噴射する気泡流噴射ノズル(バブリングジェットノズル)10’を備えている。
延在部19は、バケット部18の回転方向後端部から回転ドラム1の周壁部1aに沿って回転方向後方側に円弧状に延びる。この実施形態では、延在部19は板状であり、本体部19aと第2案内部19bとを備えている。本体部19aは、シールリング13に沿った単純な円弧板である。
延在部19の本体部19aの回転ドラム1側は、回転ドラム1の一対のシールリング13が摺接する一対の第2リング摺接部19cと、これらの第2リング摺接部19cの間に形成される流動板14’が摺接する第2流動板摺接部19dを有する(図21参照)。第2リング摺接部19cは、バケット部18の第1リング摺接部18dと滑らかに連続する。流動板14’の軸線方向の全領域が、本体部19aの第2流動板摺接部19dに摺接する。延在部19の第2案内部19bは、回転方向後方側に移行するに従って、シールリング13から漸次離隔する形状の板である。尚、延在部19は、流動板14’の軸線方向の両端部のみとシールリング13とが摺接するように、例えば、軸線方向に沿った断面がコ字状であってもよい。
バケット部18の底壁部18jと側壁部18kには、それぞれ、排水口8lとオーバーフロー口18mが設けられている。排水口8lは、排水弁11a’を介して排水管11b’に接続され、オーバーフロー口18mは、オーバーフロー弁11c’を介して排水管11b’に接続される。
回転ドラム1を洗浄する際は、先ず、排水弁11a’を閉、オーバーフロー弁11c’を開にした状態で、気泡流噴射ノズル10’又は他の給液手段により、洗浄水等の洗浄液を洗浄槽17に供給する。洗浄槽17に供給された洗浄液は、回転ドラム1の周壁部1aの通気部(多孔部)から回転ドラム1の内部にも入り、洗浄槽17内で図20に示す液面L1まで水位が上昇する。このようにして、洗浄槽17に洗浄液を溜めた後、回転ドラム1を回転させ、気泡流噴射ノズル10’から洗浄液中に洗浄液の気泡流を噴射させながら洗浄を行う。
回転ドラム1が回転すると、回転ドラム1内では、回転ドラム1の内壁によって(回転ドラム1の回転エネルギーによって)洗浄液が流動させられて、回転ドラム1内の洗浄液の液面L2は、回転方向前方側が高く、回転方向後方側が低くなるように傾斜する。
そして、洗浄液内に、流動板14’のシール部材14bが最も外周側の位置より内周側の位置に規制される規制領域R1と、シール部材14bが外周側に対して開放される開放領域R2とが形成される。規制領域R1では、規制部材としての延在部19の本体部19aによってシール部材14bの位置が規制される。開放領域R2では、開口部18aにおいてシール部材14bが外周側に対して開放され、遠心力によって最も外周側に位置する。開放領域R2は、規制領域R1より回転ドラム1の回転方向前方側である。
なお、第1及び第2案内部18g,19bでは、流動板14’のシール部材14bが案内される。第1案内部18gによって、開放領域R2で、最も外周側に位置していたシール部材14bが、円弧壁部18fの回転ドラム1側にスムーズに移動することができる。第2案内部19bでは、規制領域の回転方向後方側で遠心力によって外周側に位置していたシール部材14bが、延在部19の本体部19aの回転ドラム1側にスムーズに移動することができる。また、第1案内部18gは、回転ドラム1の回転方向前方に流動させられてきた洗浄液を回転ドラム1内部へ誘導する機能も有する。
また、回転ドラム1が回転することにより、周壁部1aのシールリング13と流動板14’は、それぞれ、延在部19の第2リング摺接部19cと第2流動板摺接部19dに摺接する。これにより、回転ドラム1の周壁部1aの外周側に、流動板14’によって区画された空間Sが形成される。換言すれば、規制領域R1では、隣接する流動板14’の間の空間Sは、軸線方向両端側がシールリング13によって閉塞されると共に、外周側が延在部19の本体部19aによって閉塞される。また、流動板14’のシール部材14bは内外周方向に可動であり、回転ドラム1の回転に伴う遠心力を受けて外周方向に移動し、この遠心力に見合う力で、延在部19の第2流動板摺接部19dに圧接する。
尚、バケット部18でも、側壁部18b,18cの第1リング摺接部18dに対して、周壁部1aのシールリング13が摺接し、バケット部18の円弧壁部18fの第1流動板摺接部18hに対して、流動板14’が摺接する。これにより、回転ドラム1の周壁部1aの外周側に、流動板14’によって区画された空間が形成される。換言すれば、隣接する流動板14’の間の空間は、軸線方向両端側がシールリング13によって閉塞されると共に、外周側がバケット部18の側壁部18b,18cと円弧壁部18fによって閉塞される。また、バケット部18の円弧壁部18fでは、流動板14’のシール部材14bが、遠心力により、延在部19の第1流動板摺接部18hに圧接する。
洗浄液内では、このような規制領域R1や開放領域R2あるいは第1案内部18gによって、例えば図20に矢印で示す流れが発生する。
開放領域R2では、流動板14’のシール部材14bが外周側に対して開放されるので、シール部材14bが遠心力で最も外周側の位置になる。これにより、流動板14’が外周方向に伸び、流動板14’全体の内外周方向の長さが長くなる。従って、流動板14’による洗浄液の撹拌力を強化することができる。そして、流動板14’によって流動させられる洗浄液が遠心力により回転ドラム1内部から外部へ吐き出される作用が強化される。
一方で、規制領域R1では、シール部材14bが最も外周側の位置より内周側の位置に規制されるので、開放領域R2の流動板14’に比較して、流動板14’全体の内外周方向の長さが短い。このため、開放領域R2に比較して、上述の流動板14’による洗浄液の吐き出し作用が弱いので、洗浄液が外部へ吐き出されても回転ドラム1内部へ戻り易い。
これらの理由によって、回転ドラム1内外で大きな洗浄液の流れが生じ、流動板14’周辺や回転ドラム1内外における洗浄液の流れが活発になる。従って、本発明のコーティング装置では、回転ドラム1を効果的に洗浄することができる。
また、上述したように、洗浄中、回転ドラム1内の洗浄液は、回転方向前方が高く、後方が低くなるように傾斜した液面L2を形成する。この状態では、回転ドラム1内の液面と、洗浄槽内の液面L3との高さの関係によって、通常、洗浄液は、液面高さの低い回転ドラム1の回転方向の後方側から回転ドラム1内部に流れ込む。逆に、洗浄液は、液面高さの高い回転方向前方側から回転ドラム1外部に流出する。これに加えて、規制領域R1の回転方向前方側の開放領域R2で流動板14が開放されることで、回転ドラム1の回転方向前方側からの洗浄液の回転ドラム1外部への排出量が増加する。回転ドラム1の前方側からの洗浄液の回転ドラム1外部への排出量が増加することで、回転ドラム1の回転方向後方側からの洗浄液の回転ドラム1内部への流入量が増加する。この結果、回転ドラム1内外の洗浄液の流通が活発になり、洗浄性が高まる。
また、上述したように、流動板14’周辺では遠心力で回転ドラム1の内部から外部向きに洗浄液の流れが発生する。そして、流動板14’の軸線方向の両端部でも遠心力によって外部向きに洗浄液の流れが生じている。しかしながら、流動板14’の間の空間Sにおける軸線方向両端側がシールリング13によって閉塞されていない場合、例えば流動板14’の軸線方向両端部とシールリング13が離隔している場合、次のような状態が生じる可能性がある。
すなわち、流動板14’の軸線方向の両端部では、必ずしも回転ドラム1内部から流動板14’を経て流動板14’の外部へ洗浄液が流れるとは限らない。これは、流動板14’の軸線方向端部周辺の洗浄液が外部向きに流れても、流動板14’の端部の軸線方向外側から流動板14’の端部周辺へ洗浄液が流入する(流入リーク)ため、回転ドラム1の内部の洗浄液が流動板14’の端部周辺へ流出することが妨げられるからである。このため、回転ドラム1の周壁部の軸線方向両端では通気部の洗浄力が低下することがある。
これに対して、この実施形態では、流動板14’の間の空間Sにおける軸線方向両端側がシールリング13によって閉塞されるので、上述のような流入リークが抑制される。従って、洗浄液の流れが回転ドラム1内部→通気部→流動板14’→流動板14’の外部へとなるように、洗浄液を導くことが出来る為、通気部/回転ドラム1の洗浄力が向上する。
また、洗浄時には、ドラムの回転に伴って流動板14’によって洗浄液が流動させられるために、洗浄槽17内の洗浄液全体に大きな循環する流れが生じる。また、流動板14’が洗浄液から抜き出る際に、液面近傍に洗浄液の往復する流れが生じ、洗浄槽17内の液面にL3で例示する波が発生する。これらの洗浄液の流れや波が、洗浄槽17自体の洗浄に寄与するため、洗浄槽17も効率的に洗浄することができる。
図22,23は、内部ハウジング4の下部を洗浄槽17として用いた実施形態を示している。洗浄槽17は、内部ハウジング4の下部の底壁部17aと側壁部17b,17cとで構成されており、底壁部17aは、回転ドラム1に対して所定の間隔を保ちつつ、回転ドラム1の回転方向に沿って延在している。また、この実施形態では、図23に示すように、洗浄槽17は、その内部にバケット部18を有する。バケット部18の底壁部は、洗浄槽17の底壁部17aで構成される。バケット部18の側壁部18b,18cはそれぞれ洗浄槽17の側壁部17b,17cに対して所定距離離隔している。バケット部18は、回転ドラム1の回転方向前方に延びる排気通路18nを介して不図示の排気ダクトに連通している。粉粒体処理時には、洗浄槽17のバケット部18は、通気ダクトの一部として機能する。また、洗浄時には、液面L1まで、洗浄液が洗浄槽17およびバケット部18に供給される。
バケット部18全体は、回転ドラム1回転方向の後方側の側壁部18oから、所定距離、回転ドラム1の回転方向に沿って前方に延び、回転ドラム1に対向する部位に開口部18aを有する。そして、バケット部18は、側壁部18b,18cとの間に、側面視で、シールリング13に沿って延在する円弧壁部18pを備える。円弧壁部18pは、側壁部18oの上端から開口部18aの側縁まで延在する。円弧壁部18pは、その回転ドラム1側の面がシールリング13の周縁と同様の曲率の円弧板で、回転ドラム1回転方向前方(図22で左側)の円弧壁部18fと同様の形状である。円弧壁部18pは、その回転ドラム1側の面に、流動板14’の軸線方向の全域が摺接するが、シールリング13は摺接しない。洗浄時には、バケット部18の円弧壁部18pが規制部材として機能し、シール部材14bの位置が規制され、規制領域R1が形成される。また、洗浄槽17におけるバケット部18の回転ドラム1の回転方向後方(図22で右側)では、規制部材が存在せず、洗浄時に、開放領域R2が形成される。一方、この実施形態でも、バケット部18の開口部18aに、開放領域R2が形成される。従って、バケット部18の開口部18aの開放領域R2は、規制領域R1より回転ドラム1の回転方向前方側である。その他の構成は、上記の実施形態と実質的に同一なので、説明を省略する。
以下、回転ドラムの内部に配設されるバッフルに関する実施形態について説明する。
図24に示すように、回転ドラムの側壁部1’は、周壁部62と、端部63,64と、周壁部62と端部63,64とを接続する端壁部65,66とを主要な構成要素とする。端部63は、回転ドラムのマウスリング部と前端開口部を構成する。
周壁部62は、側壁部1’の軸線方向中間に、周方向に沿って軸線に平行に形成される。この実施形態では、周壁部62は、その横断面形状が10角形であり、この10角形の各辺に対応する10の矩形平板状の辺壁部67で構成されている。そして、周壁部62の各辺壁部67は、多孔板で構成され、通気性を有する。そして、粉粒体層の撹拌混合効果を高めるために、周壁部62の内面には、上段バッフル68と下段バッフル69との2種類のバッフルが設けられている。周壁部62の内面は、端壁部65側のバッフルが設けられているバッフル設置領域R1’と、端壁部66側のバッフルが設けられていないバッフル非設置領域R2’の軸線方向(図24の縦方向)で2つの領域に区分される。この実施形態では、上段バッフル68は20枚設置されており全て同一形状及び同一寸法であり、下段バッフル69は5枚設置されており全て同一形状及び同一寸法である。上段バッフル68と下段バッフル69は共に、平板状であり、辺壁部67に対して垂直になるように設けられている。後で詳述するが、上段バッフル68は、辺壁部67の内面からの高さが調整可能である。これに対して、下段バッフル69は、辺壁部67に対して固定されており、辺壁部67の内面からの高さは変更できない。
5枚の下段バッフル69は、周方向等間隔に設けられている。また、各下段バッフル69は、4つの辺壁部67に亘って、バッフル設置領域R1’の端壁部65側端縁から端壁部66側端縁まで延在する。周方向に隣接する下段バッフル69は、その半分が同一の2つの辺壁部67に設けられている。そして、下段バッフル69の間のそれぞれに、4枚ずつ上段バッフル68が設けられている。下段バッフル69の間で、上段バッフル68のそれぞれは、別の辺壁部67に設けられている。各上段バッフル68は、辺壁部67内で、周方向一端側近傍から他端側近傍まで延在する。上段バッフル68と下段バッフル69は共に、その延在方向が、回転ドラムの周方向(図24の横方向)に対して同一角度で傾斜しているが、それらの傾斜の向きは相互に逆である。また、上段バッフル68の延在方向中央は、辺壁部67の周方向中央に位置する。下段バッフル69の延在方向中央は、4枚の辺壁部67における周方向中央側で隣接する辺壁部67の境界線上に位置する。また、バッフル設置領域R1’を軸線方向(図24の縦方向)で4つに区画した場合、各領域に5枚の上段バッフル68が配置されるように、上段バッフル68は配設されている。
端壁部65は、端壁部65の周壁部62側の端縁を底辺とする10の三角形状面と、端壁部65の端部63側の端縁を底辺とする10の三角形状面とで構成され、端壁部66は、端壁部66の周壁部62側の端縁を底辺とする10の三角形状面と、端壁部66の端部64側の端縁を底辺とする10の三角形状面とで構成される。端壁部65には、粉粒体を排出する際に粉粒体を案内する排出プレート70が、この実施形態では1枚設けられている。排出プレート70は、4つの三角形状面に亘って、端壁部65の周壁部62側の端縁から端壁部65の端部63側の端縁まで延在し、その延在方向は、回転ドラムの周方向(図24の横方向)に対して傾斜している。
回転ドラムは、粉粒体の処理中には、図24に白矢印で示す方向に回転する。上段バッフル68の延在方向と、下段バッフル69の延在方向とが異なるので、上段バッフル68により粉粒体が移動する方向と下段バッフル69により粉粒体が移動する方向が異なる。これによって、バッフルの延在方向が1種類の場合と比較して、撹拌混合効率を良好とすることができる。
回転ドラムから粉粒体を排出する時には、図24の白矢印とは反対方向に回転ドラムは回転する。粉粒体は、下段バッフル69によって端壁部65に移動し、更に、端壁部65では、排出プレート70に案内されて端部63まで移動し、端部63に溜まった後、後続の粉粒体に押し出されて開口部から排出される。
図25に示すように、辺壁部67の内面からの上段バッフル68の上端68aの高さH1は、下段バッフル69の上端69aの高さH2より高い。なお、ここで高さの方向あるいは上下方向は、辺壁部67に対して垂直な方向である(特に説明の無い限り、以下同じ)。また、上と下は、図中での上下を意味し、回転ドラムの回転状態によって、実際の上下とは異なる(特に説明の無い限り、以下同じ)。図25で、上段バッフル68の存在領域は、下段バッフル69の存在領域とは重ならない。つまり、上段バッフル68の下端68bの高さH1’は、下段バッフル69の上端69aの高さH2より高い。本実施形態では、上段バッフル68の幅W1は、下段バッフル69の幅W2と同一である。
図26に示すように、上段バッフル68は、一対の側辺が上端68aに向かって漸次接近する略台形状の板状である。この実施形態のコーティング装置には、辺壁部67の内面からの上段バッフル68の上端68aの高さH1を、回転ドラムの外部から調整可能な高さ調整手段71が設けられている。この実施形態では、高さ調整手段71で、高さ方向に沿って上段バッフル68の位置を変更することによって、上段バッフル68の高さH1を調整する。高さ調整手段71は、回転ドラムの辺壁部67を進退自在に貫通する高さ調整ピン72を有する。以下に詳述するように、高さ調整ピン72は、その一端部72aが上段バッフル68に着脱自在に装着され、他端部72bが回転ドラムの外側に着脱自在に装着され、該高さ調整ピン72を長さの異なる高さ調整ピンに交換することによって、高さ方向に沿って上段バッフル68の位置を変更する。
図27(A)に示すように、高さ調整ピン72は、一端部72aと、他端部72bと、一端部72aから他端部72bまで高さ方向に沿って延在する断面円形状の棒状の本体部72cから構成される。一端部72aには、雄ネジが形成されている。他端部72bには、本体部72cに対して径方向外側に突出した断面六角形状のフランジが設けられている。
図26に示すように、上段バッフル68の下端には、相互に離隔して、一対のピン受け部68cが設けられている。このピン受け部68cは断面円形状の棒状で、その上端側は上段バッフル68に例えば溶接等で固定されている。ピン受け部68cの下端には、高さ調整ピン72の一端部72aの雄ネジと螺合する雌ネジが内周面に形成されたネジ穴68dが設けられている。ピン受け部68cの外径と高さ調整ピン72の本体部72cの外径は同一である。
辺壁部67には、相互に離隔して一対の貫通孔67aが設けてあり、辺壁部67の外側における貫通孔17aの周縁には、取り付けボス73が例えば溶接等で固定されている。取り付けボス73の外周には雄ネジが形成されている。そして、取り付けボス73には、取り付けボス73の雄ネジが螺合する雌ネジがネジ孔に形成された断面六角形状の固定ナット74が取り付けられている。取り付けボス73の下端面と固定ナット74のネジ孔の底面との間に、高さ調整ピン72の他端部72bのフランジが挟持固定されている。貫通孔67aと取り付けボス73の内径は、高さ調整ピン72と上段バッフル68のピン受け部68cが辺壁部67に対して進退自在となるように、高さ調整ピン72と上段バッフル68のピン受け部68cの外径より少し大きく設定されている。
図27(A)に示す高さ調整ピン72に対して、その本体部72cの長さLが異なるもの、例えば、図27(B)に示すように本体部72cの長さLが0である(本体部72cを有さない)高さ調整ピン72’が別途用意されている。一対の高さ調整ピン72を、一対の高さ調整ピン72’に交換することによって、高さ方向に沿って上段バッフル68の位置は変更され、上段バッフル68の高さが調整される。ここでは、高さ調整ピン72を高さ調整ピン72’に交換することによって、上段バッフル68の高さH1を変更する場合を以下に説明する。
まず、図26に示す状態から、一対の固定ナット74の両方を、取り付けボス73から取り外す。次に、一対の高さ調整ピン72を、同時に外側に引き出すことによって、図26の二点鎖線で示すように、上段バッフル66を、その下端6bが辺壁部67に当接するまで下方に移動させる。この状態では、上段バッフル68の一対のピン受け部68cは、貫通孔67a及び取り付けボス73内に嵌合しており、ピン受け部68cの下端面と、取り付けボス73の下端面は同一の高さ方向位置となっている。
そして、高さ調整ピン72の他端部72bのフランジを六角レンチ等で回転させ、高さ調整ピン72の一端部72aの雄ネジと、上段バッフル68のピン受け部68cにおけるネジ穴68dの雌ねじとの螺合を解除することによって、高さ調整ピン72を上段バッフル68から取り外す。そして、この高さ調整ピン72を高さ調整ピン72’に交換して、この高さ調整ピン72’の他端部72bのフランジを六角レンチ等で回転させることによって、一端部72aの雄ネジをピン受け部68cの雌ネジに螺合させる。その後、固定ナット74を回転させて取り付けボス73に取り付けることで、上段バッフル68は図26に二点鎖線で示す下端68bが辺壁部67に当接した状態で固定される。この状態で、辺壁部67の内面からの上段バッフル68の上端68aの高さはH3である。これで、上段バッフル68の高さH1から高さH3への変更作業は完了する。なお、以上の説明と同様にして、本体部72cの長さLが高さ調整ピン72’とは別である高さ調整ピンに交換すれば、上段バッフル68を別の高さとすることができる。
上段バッフル68は、高さH1の状態でも高さH3の状態でも、辺壁面67に対して垂直な方向に沿っている。また、この実施形態では、上段バッフル68の幅W1が下段バッフル69の幅W2に等しいので、上段バッフル68の変更後の高さH3は、図25に示す下段バッフル69の高さH2に等しい。
なお、この上段バッフル68の高さH1から高さH3への変更作業の際には、対象となる上段バッフル68が取り付けられている辺壁部67が、回転ドラム全体の中で下方に位置し且つ水平になっていることが好ましい。この場合には、高さ調整ピン72を両方取り外した状態でも、ピン受け部68cが貫通孔67a及び取り付けボス73内に嵌合した状態となるので作業を実施し易い。
以上のように構成されたこの実施形態のコーティング装置の回転ドラムは、以下のような効果を享受できる。
辺壁部67の内面からの上段バッフル68の上端68aの高さを回転ドラムの外部から調整することが可能である。従って、この上段バッフル68の高さの調整によって、上段バッフル68の高さを粉粒体量に対応させることができる。また、この上段バッフル68の高さの調整は、回転ドラムの外部から実施することができるので、この調整のために人が回転ドラムの中に入る必要が無い。従って、上段バッフル68の高さ調整のための作業が容易となり、一人でも作業ができ、また、作業時間を短いものとすることができる。また、上段バッフル68の高さ調整のための作業の後に洗浄を行なう必要が無いので、この洗浄に要する時間やコストも不要となる。
また、この実施形態では、高さ調整ピン72を交換することによって、上段バッフル68の高さを調整するので、上段バッフル68の高さを大きく変更することが可能である。
また、従来のパンコーティング装置では、図28に示すように、回転ドラムDが白矢印Ah1で示す方向に回転した場合、粉粒体層Gでは、次のような領域が生じる。すなわち、回転ドラムDの回転によって回転ドラムDの内面近傍に形成され、矢印Ah2で示す方向に粉粒体が動く輸送領域と、重力によって粉粒体層Gの表面近傍に形成され、矢印Ah3で示す方向に粉粒体が動く転落領域と、輸送領域と転落領域との間(粉粒体層Gの中央付近)に形成され、粉粒体の動きが緩慢な停滞領域Rsである。この停滞領域Rsでは、粉粒体の動きが緩慢なので、粉粒体層G全体の混合が不十分となる可能性がある。これに対して、本実施形態の回転ドラムでは、図25で示すように、上段バッフル68の高さを高い状態とすることによって、バッフルを上段バッフル68と下段バッフル69の2段構成とすることが可能である。このバッフルが2段構成の状態で回転ドラムを回転すれば、上述の停滞領域Rsとなっている領域の粉粒体を動かすことが可能となり、粉粒体層G全体を最適に混合することが可能となる。
上記の実施形態では、高さ調整手段71で高さ方向に沿って上段バッフル68の位置を変更することによって、上段バッフル68の高さを調整していたが、次に説明するように、高さ調整手段71でバッフルを高さ方向に対して傾斜させることによって、バッフルの高さを調整するようにしてもよい。
図29~図31に示す実施形態でも、バッフル75は、平板状で、辺壁部67に対して垂直に配設されている。バッフル75の高さ調整手段71が、辺壁部67に揺動自在に支持される揺動軸76を有し、この揺動軸76にバッフル75を支持する一対の支持棒77が取り付けられている。詳述すれば、揺動軸76は、辺壁部67の一部として辺壁部67に固定された基板78の内側に設けられた凹部78aにその外周面が揺動自在に支持される。基板78の外側には、部分円柱状の取り付け部78bが設けられる。そして、支持棒77は、基板78とその取り付け部78bに形成された長孔の貫通孔78cを揺動自在に挿通し、その一端はバッフル75に固定される。支持棒77の他端には、雄ネジが形成され、この雄ネジにカバー部材79を介してナット80の雌ネジが螺合されることによって、支持棒77の他端が取り付け部78bの外周に着脱自在に装着される。
この実施形態では、ナット80を緩め、図30に白矢印で示すように、バッフル75と支持棒77とを、揺動軸76を介して辺壁部67に対して回動させた後、ナット80を締めて、バッフル75を高さ方向に対して傾斜させる。これにより、辺壁部67の内面からのバッフル75の上端75aの高さが変更される。
次に、図32~図34に示す実施形態では、揺動軸76は、辺壁部67の内側に固定された軸支持部81に設けられた凹部81aにその外周面が揺動自在に支持される。そして、支持棒77は、辺壁部67に形成された長孔の貫通孔67bを揺動自在に貫通し、その一端はバッフル75に固定される。支持棒77の他端には、雄ネジが形成され、この雄ネジにナット80の雌ネジが螺合されることによって、支持棒77の他端が辺壁部67の外側に着脱自在に装着される。図32では、バッフル75は、垂直方向に沿っており、図34(A)に示すように、高さ方向に対して傾斜していない。
この実施形態では、バッフル75を高さ方向に対して傾斜させるために、辺壁部67や支持棒77に対して着脱自在な、図33に示す取り付け部材82を使用する。この取り付け部材82には、辺壁部67に当接する取り付け面82aに対して所定の傾斜角度を有する一対の貫通孔82bと、貫通孔82bに対して垂直な面82cとが設けられている。この取り付け部材82の一対の貫通孔82bは、一対の支持棒77が挿通可能になるように設定されている。
この実施形態では、次のように、バッフル75を高さ方向に対して傾斜させる。図34(A)に示す状態(バッフル傾斜角度0°)から、ナット80を取り外した後、取り付け部材82の貫通孔82bに支持棒77を挿通し、ナット80を取り付けて面82cに当接させる。これにより、バッフル75が高さ方向に対して傾斜させられ、図34(B)に示す状態(バッフル傾斜角度30°)となり、辺壁部67の内面からのバッフル75の上端の高さが変更される。取り付け面82aに対して異なる傾斜角度の貫通孔82bを有する取り付け部材82を使用すれば、図34(C)(バッフル傾斜角度45°),図34(D)(バッフル傾斜角度60°)のように、バッフル75の傾斜角度を変更可能である。このように、バッフル75は傾斜角度が変更され、その上端75aの辺壁部67の内面からの高さが変更される。
図35~図37に示す実施形態では、揺動軸76は、辺壁部67の外側に固定された一対の軸支持部81に設けられた凹部81bにその軸端が揺動自在に支持される。そして、支持棒77は、辺壁部67に形成された長孔の貫通孔67cを揺動自在に貫通し、その一端はバッフル75に固定され、他端は揺動軸76に固定される。揺動軸76の両端面には、片面ごとにネジ穴76a~76cが設けられている(図37参照)。このネジ穴76a~76cは、全て軸芯からの距離は同じで、相互に成す中心角は90°である。一方で、一対の軸支持部81のそれぞれには、貫通孔81c~81fが設けられている。図35では、軸支持部81の貫通孔81cを介してネジ穴76aにボルト83が螺合されている(図37(A)に示すバッフル傾斜角度0°の状態)。
この実施形態では、バッフル75を高さ方向に対して傾斜させるために、ボルト83が挿通される軸支持部81の貫通孔81c~81fと、ボルト83が螺合されるネジ穴76a~76cを変更する。例えば、ボルト83を、貫通孔81dを介してネジ穴76bに螺合した場合、図37(B)に示すように、バッフル75は30°傾斜する。また、ボルト83を、貫通孔81eを介してネジ穴76cに螺合した場合、図37(C)に示すように、バッフル75は、45°傾斜する。更に、ボルト83を、貫通孔81fを介してネジ穴76aに螺合した場合、図37(D)に示すように、バッフル75は、60°傾斜する。このようにして、この実施形態では、辺壁部67の内面からのバッフル75の上端75aの高さが変更される。
図38に示す実施形態では、高さ調整手段11は、バッフル24を有する。辺壁部67には長穴の貫通孔85が設けられている。バッフル84は、この貫通孔85を介して、辺壁部67に進退自在である。バッフル84の一端には、取り付け部84aが設けられており、この取り付け部84aが、例えばボルト等の固定手段(図示省略)によって、辺壁部67の外面に固定される。
辺壁部67の内面からのバッフル84の上端84bの高さを変更する場合には、取り付け部84aの固定を解除して、バッフル84を辺壁部67から外す。次に、図38(B)に示す高さの異なるバッフル84を、辺壁部84の貫通孔85に挿通し、このバッフル84の取り付け部84aを辺壁部67の外面に固定する。このバッフル84の交換作業も、全て辺壁部7(回転ドラム)の外部から行うことができる。
図39に示す更なる実施形態において、周壁部62は、側壁部1’の軸線方向中間に、周方向に沿って軸線に平行に形成される。周壁部62の内面には、粉粒体層の撹拌混合効果を高めるために、周壁部の内面からの高さが相対的に高い上段バッフル68と低い下段バッフル69との2種類のバッフルが設けられている。周壁部62は、バッフル68,69が配置されている単位領域Uと、単位領域Uの軸線方向両側に存在するバッフル68,69が配置されていない領域Xとに周方向に沿って区分される。
この実施形態では、周壁部62は、その横断面形状が12角形であり、この12角形の各辺に対応する12の矩形平板状の辺壁部67で構成されている。そして、周壁部62の各辺壁部67は、多孔板で構成され、通気性を有する。
図示例では、上段バッフル68は、8枚設置されており、全て同一形状及び同一寸法である。下段バッフル69は、4枚設置されており、全て同一形状及び同一寸法である。上段バッフル68と下段バッフル69は共に、平板状であり、辺壁部67に対して垂直になるように設けられている。上段バッフル68は、一対の側辺が上端68aに向かって漸次接近する略台形状の板状である。上段バッフル68は、上記の実施形態と同様の高さ調整手段により、辺壁部67の内面からの高さが調整可能である。これに対して、下段バッフル69は、辺壁部67に対して固定されており、辺壁部67の内面からの高さは変更できない。
4枚の下段バッフル69は、周方向等間隔に設けられている。また、各下段バッフル69は、4つの辺壁部67に亘って、周壁部62の端壁部65側端縁近傍から端壁部66側の端縁近傍まで延在する。周方向に隣接する下段バッフル69の端部は、同一の辺壁部67に設けられている。そして、下段バッフル69の間のそれぞれに、2枚ずつ上段バッフル68が設けられている。上段バッフル68のそれぞれは、別の辺壁部67に設けられている。各上段バッフル68は、辺壁部67内で、周方向一端側近傍から他端側近傍に延在する。
上段バッフル68と下段バッフル69は共に、その延在方向が、回転ドラムの周方向(図39の横方向)に対して同一角度で傾斜しているが、それらの傾斜の向きは相互に逆である。この延在方向の周方向に対する傾斜角度は、例えば15~25°である。また、上段バッフル68の延在方向中央は、辺壁部67の周方向中央に位置する。下段バッフル69の延在方向中央は、4つの辺壁部67における周方向中央側で隣接する辺壁部67の境界線上に位置する。
周壁部62における単位領域Uを、図39に2点鎖線で示すように周方向に沿って分割することによって軸線方向の長さが相互に等しい複数(図1では4つ)の区画Sとした場合、区画Sに存在する上段バッフル68と下段バッフル69の数が区画Sの間で相互に同一である。図39では、各区画Sには、2枚の上段バッフル68と4枚の下段バッフル69とが存在している。
端壁部65は、端壁部65の周壁部62側の端縁を底辺とする12の三角形状面と、端壁部65の端部63側の端縁を底辺とする12の三角形状面とで構成される。端壁部66は、端壁部66の周壁部62側の端縁を底辺とする12の三角形状面と、端壁部66の端部64側の端縁を底辺とする12の三角形状面とで構成される。端壁部65には、粉粒体を排出する際に粉粒体を案内する排出プレート70が、この実施形態では4枚設けられている。これら4枚の排出プレート70は周方向等間隔に設けられている。各排出プレート70は、4つの三角形状面に亘って、端壁部65の周壁部62側の端縁から端壁部65の端部63側の端縁まで延在し、その延在方向は、回転ドラムの周方向(図39の横方向)に対して傾斜している。排出プレート70の回転ドラムの周方向に対する傾斜の向きは、下段バッフル69の傾斜の向きと同じである。
図25、図26に示すように、辺壁部67の内面からの上段バッフル68の上端68aの高さH1は、下段バッフル69の上端69aの高さH2より高い。上段バッフル68は、辺壁部67の内面に、高さ調整ピン72等を介して固定され、辺壁部67の内面との間に隙間を有する。一方、下段バッフル69は、その下端が辺壁部67の内面に直接固定され、辺壁部67の内面との間に隙間を有さない。上段バッフル68の下端68bの高さH1’は、下段バッフル69の上端69aの高さH2以上であり、この実施形態では、下端68bの高さH1’は上端69aの高さH2より高い。
上段バッフル68は、図40に示すように、先端部68eが、その他の部分に対して傾斜していてもよい。この傾斜の向きは、粉粒体が処理される時の回転ドラムの回転方向とは反対側(回転方向後方)である。この傾斜角度は、好ましくは25~45°、更に好ましくは30~45°である。
このように先端部68eが傾斜した上段バッフル68を使用すると、処理中の粉粒体が先端部68eに垂直に衝突することを抑制し、粉粒体が割れたり欠けたりすることを抑制することができる。しかし、先端部68eの傾斜角度が25°より小さい場合、或いは傾斜角度が45°より大きい場合には、この効果が十分に得られない可能性がある。
また、先端部68eが傾斜した上段バッフル68を使用すると、粉粒体の排出時(回転ドラムの逆回転時)に、この先端部68eが粉粒体をすくい上げる作用をなす。この作用により、先端部68eが、効率良く下段バッフル69の基端部側に粉粒体を案内するので、時間当たりの粉粒体の排出量が増加し、排出工程時間の短縮につながる。しかし、先端部68eの傾斜角度が30°より小さい場合には、このすくい上げる作用が十分に得られない可能性がある。
その他の事項は、全て上記の実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
上記のようなバッフルを備えた回転ドラムをスケールアップする手法としては、例えば、図41に示すように、回転ドラムの周壁部62をその軸線方向に拡張する手法を適用することができる。図41に例示する周壁部62には、周方向に全周に亘って延びる単位領域Uが軸線方向に3個配列されている。各単位領域Uにおけるバッフル(上段バッフル68、下段バッフル69)の配置、形状及び寸法が、単位領域Uの間で相互に同一である。ここで、配置とは、少なくとも、位置、向き、数を含む概念である(以下、同じ)。
ただし、この実施形態では、単位領域Uは、軸線方向の一端の単位領域Uから他端の単位領域Uに移行するに従って、順次、周方向の一方に等距離でずれている。例えば、図41に点線で示すように、一番上の単位領域Uの周方向位置Eに対して、真ん中の単位領域Uにおける対応する周方向位置Eは、左に辺壁部67の4つ分ずれており、一番下の単位領域における対応する周方向位置Eは、真ん中の単位領域Uの周方向位置Eより更に左に辺壁部67の4つ分ずれている。なお、この実施形態では、単位領域Uが、軸線方向に連続して配列されているが、バッフルが配置されていない領域を介して配列されてもよい。
図41の周壁部62の単位領域Uにおけるバッフル(上段バッフル68、下段バッフル69)の配置、形状及び寸法は、図39に示す周壁部62の単位領域Uと同一である。つまり、図41に示す回転ドラムは、図39に示す周壁部62を単位領域Uとして、単位領域Uの周壁部62における軸線方向配列の数を1つから3つに変更することによって、図39に示す回転ドラムをスケールアップしたものである。この回転ドラムのスケールアップによって、周壁部62は、軸線方向に3倍にスケールアップし、これに伴い、回転ドラムの処理容量は約3倍となる。
このように、単位領域Uを有する回転ドラムでは、この単位領域Uの軸線方向の配列数を増加することによってスケールアップをする手法を適用できる。この手法では、単位領域Uの配列数に比例して回転ドラムの処理容量を増加させることができる。一方で、単位領域Uで混合される粉粒体量はほとんど変化しないので、粉粒体の混合性は略同一となる。すなわち、この手法によれば、混合性が変化することを抑制しつつ回転ドラムをスケールアップすることができる。
また、図42に示すように、スケールアップ後における単位領域U当りのスプレーノズルNの数(図示例では1つ)を、単位領域Uの間で同一とし、且つ、このスプレーノズルNの数を、スケールアップ前における単位領域U当りのスプレーノズルNの数と同一とすることが好ましい。これにより、単位領域U当りのスプレー面積を、スケールアップの前後で略同じとすることが可能となり、スプレーノズルNの設計変更等を不要とすることができる。また、同様に、単位領域Uに対するスプレーノズルNの噴霧方向や噴霧位置も、スケールアップ前後で同一とすることが更に好ましい。
また、上述のように単位領域Uが周方向にずれて配列されているため、図41に示すように、下段バッフル69は、単位領域Uの間で、連続している。また、例えば二点差線で囲んで示すように、下段バッフル69を挟んで配設された一対の上段バッフル68が、下段バッフル69に沿って、等間隔に並んでいる。仮に、単位領域Uを更に追加して、同様にずらして配列させても、下段バッフル69は連続し、下段バッフル69に沿って、一対の上段バッフルが等間隔に並ぶ。このように、この実施形態の単位領域Uを使用したスケールアップ方法では、軸線方向に同一の態様のバッフル配置が連続的に繰り返される。別の観点では、下段バッフル69を基準にみた場合、上段バッフル68と下段バッフル69は、軸線方向に螺旋状に連続的に配設されている。
従って、図41に示すスケールアップした回転ドラムは、周方向で見た場合にも、軸線方向で見た場合にも略均一のバッフル68,69の配置となっている。このため、スケールアップ後の回転ドラムにおいて、混合性を良好とするために、奥行き方向(軸線方向)に、粉粒体を循環させたり、移動させたりすることが重要(必要)でなくなる。従って、上段バッフル68と下段バッフル69のそれぞれの構造は、微小なエリアで個々の粉粒体を混合したり転動したりすることを重視したものとすることができる。また、回転ドラムの奥行き方向全体での粉粒体の大循環や大移動が不要になることで、粉粒体に大循環や大移動のためのエネルギーを付与する必要が無くなり、微小なエリア内の粉粒体の混合及び転動のためにエネルギーを有効に利用することができる。換言すれば、混合力向上のためにエネルギーをより多く付与する必要がなくなるため、粉粒体に余分なストレスを与えずに済む。
また、下段バッフル69が、単位領域の間で、連続しているので、回転ドラムから粉粒体を排出する時に、回転ドラムの軸線方向の奥側(底壁部側)の粉粒体が下段バッフル69によってスムーズに排出プレート70まで移動する。従って、回転ドラムからの粉粒体の排出時間を短縮できる。
ここでは、回転ドラムをスケールアップする場合を説明したが、単位領域Uの軸線方向の配列数を減少させることによって、例えば図41に示す回転ドラムを図39に示す回転ドラムにスケールダウンさせてもよい。
ところで、図41において、周壁部62における軸線方向の両端の領域Y(最も軸辺方向両端側の上段バッフル68と端壁部65,66との間の領域)では、端壁部65,66との干渉を回避するため、下段バッフル69における領域Yに存在する部分を省略することがある。この場合には、単位領域Uの軸線方向両端から領域Yと同等の領域を除いた単位領域U’が、軸線方向に3つ配列されているとみなすことができる。各単位領域U’におけるバッフル(上段バッフル68、下段バッフル69)の配置、形状及び寸法は、単位領域U’の間で相互に同一である。
また、図43に示すように、周壁部62を、単位領域Uを軸線方向に2.5個分配列することによって構成することも考えられる。この場合、一番上の単位領域Uの周方向位置Eに対して、一番下の単位領域における対応する周方向位置Eは、左に辺壁部7の6つ分ずれている。そして、この場合、単位領域Uを軸線方向中央で2分割することによって形成される単位領域U”が、軸線方向に5つ配列されているとみなすことができる。各単位領域U”におけるバッフル(上段バッフル68、下段バッフル69)の配置、形状及び寸法は、単位領域U”の間で相互に同一である。そして、単位領域U”は、軸線方向の一端の単位領域U”から他端の単位領域U”に移行するに従って、順次、周方向の一方に辺壁部7の2つ分ずれている。
以上の実施形態のバッフル構造は、前述した実施形態のコーティング装置の回転ドラム1に適用することができる。また、いわゆるジャケットレス構造の回転ドラムに限らず、ジャケットが装着される回転ドラムに適用してもよい。さらに、通気部を有さない回転ドラムに適用してもよい。
本発明は、周壁部の横断面形状が多角形の回転ドラムを備えたコーティング装置に限らず、周壁部の横断面形状が円形、円錐形、多角円錐形の回転ドラムを備えたコーティング装置にも同様に適用可能である。また、いわゆるジャケットレス構造のコーティング装置に限らず、回転ドラムの周壁部にジャケットを装着した構造のコーティング装置にも同様に適用可能である。さらに、回転ドラムが水平線と平行又は略平行な軸線回りに回転駆動されるコーティング装置に限らず、回転ドラムが水平線に対して傾斜した軸線回りに回転駆動されるコーティング装置にも同様に適用可能である。