明 細 書
蛍光体複合材料及び蛍光体複合部材
技術分野
[0001] 本発明は、 LEDや LD等のデバイスに用いられる蛍光体複合材料及び蛍光体複合 部材に関するものである。
背景技術
[0002] 近年、白色 LEDは、白熱電球や蛍光灯に代わる次世代の光源として照明用途へ の応用が期待されている。
蛍光体を用いて波長変換する LED素子においては、 LEDチップの発光面が蛍光 体粉末を含む有機系バインダー樹脂によってモールドされている。このモールド部分 を LEDチップ力 発せられた光が通過する際に、その光の全部が蛍光体に吸収され て、別の波長に変換したり、または、光の一部が蛍光体に吸収され、変換された光と 透過光とが合わさって、所望の光が発せられる。
[0003] しかしながら、上記 LED素子を構成するモールド樹脂が、青色〜紫外線領域の高 出力の短波長の光によって劣化し、変色を引き起こすという問題がある。
上記問題を解決するために、 500°C以上の軟ィ匕点を有する非鉛系ガラス粉末と蛍 光体粉末を含む材料をガラスの軟ィヒ点以上の温度で焼成することで、ガラス中に蛍 光体粉末を分散させた蛍光体複合部材が特許文献 1で提案されている。
[0004] 特許文献 1で開示されている蛍光体複合部材は、蛍光体粉末が無機材料であるガ ラス中に分散されているため、化学的に安定で劣化が少なぐしかも、出力光による 変色も少ないものを得ることができる。
特許文献 1 :特開 2003— 258308号公報
特許文献 2 :特開 2005— 11933号公報
発明の開示
[0005] し力 ながら、市販の蛍光体の中には、耐熱性の低いものがあり、これを 500°C以 上の軟化点を有する非鉛系ガラス粉末と焼結すると、焼結する際の熱によって蛍光 体が劣化して発光効率が低下するという問題がある。
[0006] 上記問題を解決するために、特許文献 2に開示されているように、低融点ガラスに 蛍光体を分散させることも考えられるが、一般に、ガラスが低融点化する程、焼結させ る際にガラスは蛍光体と反応して焼結体が変色し、焼結体の透過率が低下して、発 光効率が大幅に低下する問題がある。また、ガラスの耐候性も低いため、湿気の多 い環境では使用中に表面が変質し、焼結体の透過率が低下して、発光効率が大幅 に低下する問題もある。
[0007] 本発明の目的は、低温で焼成することができ、蛍光体と反応し難ぐし力、も、耐候性 に優れ、長期間に亘つて使用しても劣化が少ない蛍光体複合部材とすることが可能 な蛍光体複合材料及びこれを焼成して得られる蛍光体複合部材を提供することであ る。
[0008] 本発明の蛍光体複合材料は、ガラス粉末と、蛍光体粉末とからなる蛍光体複合材 料であって、前記ガラス粉末が、 SnO-P O _B〇系ガラスであることを特徴とする
2 5 2 3 また、本発明の蛍光体複合部材は、上記蛍光体複合材料を焼成してなることを特 徴とする。
(発明の効果)
[0009] 本発明の蛍光体複合材料は、軟化点が低ぐ蛍光体と反応し難ぐしかも、耐候性 に優れたガラス粉末と、蛍光体粉末とからなる。それ故、本発明の蛍光体複合材料を 焼成して得られる蛍光体複合部材は、低温で焼成することができ、蛍光体と反応し難 ぐしかも、耐候性に優れ、長期間に亘つて使用しても劣化が少ない蛍光体複合部 材とすることができる。
発明を実施するための最良の形態
[0010] 本発明の蛍光体複合材料におけるガラス粉末は、低融点ガラスである Sn〇_P O
2 5 系ガラスに、 B Oを含有させた Sn〇一 P〇一 B〇系ガラスを基本組成としている。
2 3 2 5 2 3
一般に、低融点ガラスである SnO— P O系ガラスは、耐候性が低ぐまた、蛍光体と
2 5
混合して焼成する際に、蛍光体と反応して、発光効率を低下させるが、本発明のガラ スでは、蛍光体との反応を抑えるとともに耐候性を向上させる成分である B Oを含有
2 3 させている。そのため、低融点ガラス粉末からなる蛍光体複合材料であっても、蛍光
体との反応が少なぐ耐候性に優れた蛍光体複合部材を得ることができる。
[0011] 尚、蛍光体との反応を抑えると共に、耐候性を向上させるには、 B〇を 1モル%以
2 3
上含有させることが好ましい。しかし、 B Oの含有量が多くなると、ガラスの軟化点が
2 3
上昇する傾向にあり、蛍光体複合材料を低温で焼成し難くなる。また、逆に、蛍光体 と反応したり、耐候性が低下しやすくなるため、 30モル%以下にすることが好ましい。 B〇のより好ましい範囲は 2〜20%であり、さらに好ましくは 4〜20%であり、最も好
2 3
ましくは 4〜: 18%である。
[0012] また、本発明におけるガラス粉末は、 Sn〇/P〇の値をモル比で、 0. 9〜: 16の範
2 5
囲にすることが好ましレ、。 SnO/P〇 の値が 0. 9より小さくなると、ガラスの軟化点が
2 5
上昇する傾向にあり、蛍光体複合材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易く なる。また、耐候性が著しく低下する傾向にある。一方、 SnOZP Oの値が 16より大
2 5
きくなると、ガラス中に Snに起因する失透ブッが析出し、ガラスの透過率が低下する 傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する蛍光体複合部材が得難くなる。 SnO /P Oのより好ましい範囲は 1. 5〜: 16であり、さらに好ましくは 1. 5〜10であり、最
2 5
も好ましくは 2〜5である。
[0013] また、本発明におけるガラス粉末は、厚さ lmm、波長 588nmにおいて 80%以上 の内部透過率を有するガラスからなることが好ましい。ガラスの内部透過率を 80%以 上にすることにより、励起光及び励起光によって発せられる変換光の透過率が高くな り、蛍光体複合部材の発光効率を向上させることができる。ガラスの内部透過率が 80 %より低くなると、高い発光効率を有する蛍光体複合部材が得難くなる。ガラスの内 部透過率のより好ましい範囲は 92%以上であり、さらに好ましくは 93%以上である。
[0014] 尚、高い内部透過率を有するガラスを得るには、光吸収による透過率の低下を抑え るために、鉄、クロム、コバルト、銅、ニッケル等の着色不純物の少ないガラス原料を 用いて溶融したり、 Snに起因する失透ブッの析出による内部透過率の低下を抑える ために、還元雰囲気(N2ガス、 Arガス等の非酸化性雰囲気)中でガラスを溶融したり 、ガラス原料中に金属アルミニウム等の還元剤を少量添加して溶融することで得るこ とができる。
[0015] さらに、本発明におけるガラス粉末は、 400°C以下の軟化点を有することが好まし
レ、。軟ィ匕点を 400°C以下とすることにより、耐熱性の低い蛍光体を用いた場合でも、 蛍光体の劣化が少ない蛍光体複合部材とすることができる。軟化点が 400°Cを超え ると、耐熱性の低い蛍光体を用いた場合、蛍光体が劣化する傾向にあり、蛍光体複 合部材の発光効率が低下し易くなる。軟ィ匕点のより好ましい範囲は 380°C以下であ る。
[0016] また、本発明における Sn〇_P O _B〇系ガラス粉末は、内部透過率が高ぐガ
2 5 2 3
ラスの軟ィヒ点が低ぐ蛍光体と反応し難ぐ優れた耐候性を有するガラスであれば、 制限はないが、特に、モル百分率で、 Sn〇 35〜80%、 P O 5〜40%、 B O 1
2 5 2 3
〜30%、 Al O 0〜: 10%、 Si〇 0〜: 10%、 Li O 0〜: 10%、 Na〇 0〜10%、
2 3 2 2 2
K O 0〜: 10%、 Li O + Na O + K〇 0〜10%、 Mg〇 0〜10%、 Ca〇 0〜10
2 2 2 2
%、 SrO 0〜: 10%、Ba〇 0〜10%、 Mg〇 + Ca〇 + Sr〇 + BaO 0〜: 10%を含 有し、 SnO/P〇が 0. 9〜: 16であるガラスを使用することが好ましい。
2 5
[0017] 本発明においてガラスの組成を上記のように限定した理由は、次のとおりである。
SnOはガラスの骨格を形成すると共に、軟化点を下げる成分である。その含有量は 35〜80%である。 SnOの含有量が少なくなると、ガラスの軟化点が上昇する傾向に あり、蛍光体複合材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易くなる。一方、含 有量が多くなると、ガラス中に Snに起因する失透ブッが析出し、ガラスの透過率が低 下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する蛍光体複合部材が得難くなる 。また、ガラス化し難くなる。 SnOのより好ましい範囲は 40〜70%であり、さらに好ま しくは 50〜70%、最も好ましくは 55〜65%である。
[0018] P Oはガラスの骨格を形成する成分である。その含有量は 5〜40%である。 P〇
2 5 2 5 の含有量が少なくなると、ガラス化し難くなる。一方、含有量が多くなると、ガラスの軟 化点が上昇する傾向にあり、蛍光体複合材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣 化し易くなる。また、耐候性が著しく低下する傾向にある。 P oのより好ましい範囲は
2 5
10〜30%であり、さらに好ましくは 15〜24%である。
[0019] 尚、軟化点を低下させ、しかも、ガラスを安定化させるには、 Sn〇/P Oの値を、
2 5 モル比で、 0. 9〜16の範囲にすることが好ましい。 SnO/P〇の値が 0. 9より小さ
2 5
くなると、ガラスの軟化点が上昇する傾向にあり、蛍光体複合材料を低温で焼成し難
くなり、蛍光体が劣化し易くなる。また、耐候性が著しく低下する傾向にある。一方、 s nO/P Oの値が 16より大きくなると、ガラス中に Snに起因する失透ブッが析出し、
2 5
ガラスの透過率が低下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する蛍光体 複合部材が得難くなる。 SnO/P Oのより好ましい範囲は 1. 5〜: 16であり、さらに好
2 5
ましくは 1. 5〜10であり、最も好ましくは 2〜5である。
[0020] B Oは蛍光体との反応を抑えると共に、耐候性を向上させる成分である。また、ガ
2 3
ラスを安定化させる成分でもある。その含有量は 1〜30%である。 B Oの含有量が
2 3
少なくなると、上記効果が得難くなる。一方、含有量が多くなると、逆に、蛍光体と反 応したり、耐候性が低下しやすくなる。また、ガラスの軟化点が上昇する傾向にあり、 蛍光体複合材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易くなる。 B Oのより好ま
2 3 しい範囲は 2〜20%であり、さらに好ましくは 4〜18%である。
[0021] A1〇はガラスを安定化させる成分である。その含有量は 0〜10%である。 A1〇
2 3 2 3 の含有量が多くなると、ガラスの軟化点が上昇する傾向にあり、蛍光体複合材料を低 温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易くなる。 A1〇 のより好ましい範囲は 0〜7%
2 3
であり、さらに好ましくは 1〜5%である。
SiOは Al Oと同様にガラスを安定化させる成分である。その含有量は 0〜: 10%で
2 2 3
ある。 SiO の含有量が多くなると、ガラスの軟ィ匕点が上昇する傾向にあり、蛍光体複
2
合材料を低温で焼成し難くなり、蛍光体が劣化し易くなる。また、ガラスが分相しやす くなる。 SiOのより好ましい範囲は 0〜7%であり、さらに好ましくは 0〜5%である。
2
[0022] Li〇はガラスの軟ィ匕点を著しく低下させると共に、蛍光体複合部材にした際に蛍
2
光体の発光効率を向上させる成分である。その含有量は 0〜: 10%である。 Li〇の含
2 有量が多くなると、ガラスが著しく不安定になりやすくガラス化し難くなる。 Li Oのより
2 好ましレ、範囲は 0〜 7 %であり、さらに好ましくは 1〜 5 %である。
[0023] Na〇はガラスの軟ィ匕点を低下させると共に、蛍光体複合部材にした際に蛍光体の
2
発光効率を若干向上させる成分である。その含有量は 0〜: 10%である。 Na Oの含
2 有量が多くなると、ガラスが不安定になりやすくガラス化し難くなる。 Na Oのより好ま
2
しい範囲は 0〜7%であり、さらに好ましくは 0〜5%である。
[0024] K〇は、ガラスの軟ィ匕点を若干低下させると共に、蛍光体複合部材にした際に、蛍
光体の発光効率を向上させる成分である。その含有量は 0〜: 10%である。 K〇の含
2 有量が多くなると、ガラスが不安定になりやすくガラス化し難くなる。 K oのより好まし
2
い範囲は 0〜 7 %であり、さらに好ましくは 1〜 5 %である。
[0025] 尚、 Li 0、 Na O及び Κ Οを合量で 0〜10%にすることが好ましレ、。これら成分の
2 2 2
合量が 10%より多くなると、ガラスが不安定になりやすくガラス化し難くなる。 Li 0 +
2
Na O + K〇のより好ましい範囲は 0〜7%であり、さらに好ましくは 1〜5%である。
2 2
MgOはガラスを安定化させてガラス化しやすくすると共に、蛍光体複合部材にした 際に、蛍光体の発光効率を著しく向上させる成分である。その含有量は 0〜: 10%で ある。 Mg〇の含有量が多くなると、ガラスが失透しやすぐガラスの透過率が低下す る傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する蛍光体複合部材が得難くなる。 M gOのより好ましい範囲は 0〜7%であり、さらに好ましくは:!〜 5%である。
[0026] Ca〇はガラスを安定化させてガラス化しやすくする成分である。その含有量は 0〜1 0%である。 Ca〇の含有量が多くなると、ガラスが失透しやすぐガラスの透過率が低 下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する蛍光体複合部材が得難くなる 。 Ca〇のより好ましい範囲は 0〜7%であり、さらに好ましくは 0〜5%である。
SrOはガラスを安定化させてガラス化しやすくする成分である。その含有量は 0〜1 0%である。 SrOの含有量が多くなると、ガラスが失透しやすぐガラスの透過率が低 下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する蛍光体複合部材が得難くなる 。 SrOのより好ましい範囲は 0〜7%であり、さらに好ましくは 0〜5%である。
[0027] Ba〇はガラスを安定化させてガラス化しやすくする成分である。その含有量は 0〜5 %である。 BaOの含有量が多くなると、ガラスが著しく失透しやすぐガラスの透過率 が低下する傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する蛍光体複合部材が得難 くなる。 BaOのより好ましい範囲は 0〜3%であり、さらに好ましくは 0〜1 %である。 尚、 MgO、 Ca〇、 Sr〇及び Ba〇を合量で 0〜10%にすることが好ましレ、。これら成 分の合量が 10%より多くなると、ガラスが失透しやすぐガラスの透過率が低下する 傾向にあり、結果として、高い発光効率を有する蛍光体複合部材が得難くなる。 Mg 0 + CaO + Sr〇 + Ba〇のより好ましい範囲は 0〜7%であり、さらに好ましくは 1〜5 %である。
[0028] また、上記成分以外にも、本発明の主旨を損なわない範囲で種々の成分を添加す ること力 Sできる。例えば、耐候性を向上させるために、 Zn〇、 Ta〇、 TiO、 Nb〇、
2 5 2 2 5
Gd〇、 La Oを合量で 10%まで添加してもよい。
2 3 2 3
但し、 Fe〇、 Cr〇、 Co〇、 Cu〇、 Ni〇等の着色成分は、ガラスを着色させて、ガ
2 3 2 3
ラスの内部透過率を低下させるため、これら成分は合量で 0. 02%以下に抑えること が好ましい。
[0029] 尚、本発明の蛍光体複合材料におけるガラス粉末は、ガラス中の着色成分の含有 量が 0. 02%以下となるように着色不純物の少ないガラス原料を選択して上記のガラ ス組成範囲となるようにガラス原料を調合した後、調合したガラス原料を坩堝に入れ 還元雰囲気中で溶融してガラス塊を得て、粉砕、分級することで得ることができる。
[0030] 本発明の蛍光体複合材料における蛍光体粉末は、可視域に発光ピークを有するも のであれば、特に限定されるものではなレ、。尚、本発明において可視域とは、 380〜 780nmを示す。このような蛍光体として、酸化物、窒化物、酸窒化物、塩化物、酸塩 化物、硫化物、酸硫化物、ハロゲン化物、カルコゲン化物、アルミン酸塩、ハロリン酸 塩化物、 YAG系化合物などが挙げられる。窒化物、酸窒化物、塩化物、酸塩化物、 硫化物、酸硫化物、ハロゲン化物、カルコゲン化物、アルミン酸塩、ハロリン酸塩化物 などの蛍光体は、焼成時の加熱により、ガラスと反応し、発泡や変色などの異常反応 を起こしやすぐその程度は、焼成温度が高温であればあるほど著しくなる。本発明 では、このような蛍光体を用いる場合でも、ガラスの軟化点が低ぐ 400°C以下の低 温で焼成できるため、使用することができる。
[0031] 蛍光体複合部材の発光効率は、ガラス中に分散した蛍光体粒子の種類や含有量 、及び蛍光体複合部材の厚みなどによって変化する。蛍光体の含有量と蛍光体複合 部材の厚みは、発光効率が最適になるように調整すればよいが、蛍光体が多くなり すぎると、焼結しに《なったり、気孔率が大きくなつて、励起光が効率良く蛍光体に 照射されにくくなつたり、蛍光体複合部材の機械的強度が低下しやすくなるなどの問 題を生じる。一方、少なすぎると、十分に発光させることが難しくなる。従って、蛍光体 複合材料におけるガラス粉末と蛍光体粉末の混合割合 (ガラス粉末:蛍光体粉末)は 、質量];匕で、 99. 99 : 0. 01〜70: 30の範囲であることカ好ましく、より好ましくは 99.
95 : 0. 05〜80 : 20であり、特に好ましく ίま、 99. 92 : 0. 08〜85: 15の範囲である。
[0032] 本発明の蛍光体複合部材は、上記本発明の蛍光体複合材料を焼成することで得 ること力 Sできる。
焼成雰囲気としては大気中で焼成してもよいが、さらに緻密な焼結体を得る場合や ガラスと蛍光体の反応を少なくする場合には、減圧または真空の雰囲気中、あるいは 窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で焼成することが好ましい。
[0033] 焼成温度としては、 300°C〜400°Cの範囲であることが好ましレ、。焼成温度が 400 °Cより高くなると、蛍光体が劣化したり、ガラスと蛍光体が反応し、発光効率が著しく 低下する場合がある。また、焼成温度が 300°Cより低くなると、焼結体の気孔率が増 加し、光の透過性が低下する場合がある。
本発明の蛍光体複合材料を焼成し、蛍光体複合部材を得る際の蛍光体複合材料 の形態は、特に限定されるものではなぐ例えば、蛍光体複合材料の粉末を所望の 形状に加圧成型した成型体であってもよいし、ペーストの形態であってもよいし、ダリ ーンシートの形態であってもよレ、。
[0034] 本発明の蛍光体複合材料の粉末を加圧成型して蛍光体複合部材とする場合には 、ガラス粉末及び蛍光体粉末からなる蛍光体複合材料に樹脂バインダーを 0〜5質 量%添加して金型で加圧成型し、予備成型体を作製する。続けて、予備成型体を 25 0°C以下の温度で脱バインダーを行った後、 300〜400°C程度で焼成することにより 、蛍光体複合部材とすることができる。
[0035] なお、樹脂バインダーとしては、樹脂の分解終了温度が 250°C以下のものを用いる ことが望ましぐ例えば、ニトロセルロース、ポリイソブチルアタリレート、ポリェチルカ一 ボネート等が挙げられる。これらを単独または混合して使用することができる。
また、ペーストの形態で使用する場合には、ガラス粉末及び蛍光体粉末力 なる蛍 光体複合材料と共に、結合剤、溶剤等を使用してペーストイ匕することが好ましい。ぺ 一スト全体に占める蛍光体複合材料の割合としては、 30〜90質量%が一般的であ る。
[0036] 結合剤は、乾燥後の膜強度を高め、また柔軟性を付与する成分であり、その含有 量は、 0.:!〜 20質量%程度が一般的である。結合剤としては、ポリブチルメタクリレ
ート、ポリビュルブチラール、ポリメチルメタタリレート、ポリェチルメタタリレート、ェチ ルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられ、これらを単独または混合して使用する こと力 Sできる。
溶剤は、材料をペーストイ匕するために用いられ、その含有量は 10〜50質量%程度 が一般的である。溶剤としては、テルピネオール、酢酸イソァミル、トルエン、メチルェ チルケトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、 2, 2, 4一トリメチ ノレ一 1 , 3ペンタジオールモノイソブチレート等が挙げられ、これらを単独または混合 して使用することができる。
[0037] ペーストの作製は、蛍光体複合材料、結合剤、溶剤等を用意し、これらを所定の割 合で混練することにより行うことができる。
このようなペーストを用いて、蛍光体複合部材を形成するには、蛍光体複合部材と 同程度の熱膨張係数を有する無機材料の基材を用意し、その基材上にスクリーン印 刷法や一括コート法等を用いてペーストを塗布し、所定の膜厚の塗布層を形成した 後、乾燥させ、 300〜400°C程度で焼成し、無機材料の基材を取り外すことにより、 所定の蛍光体複合部材を形成することができる。
[0038] 本発明の蛍光体複合材料をグリーンシートの形態で使用する場合、グリーンシート は、ガラス粉末及び蛍光体粉末力 なる蛍光体複合材料と共に、結合剤、可塑剤、 溶剤等を用いてグリーンシートィ匕する。
グリーンシート中に占める蛍光体複合材料の割合は、 50〜80質量%程度が一般 的である。
[0039] 結合剤及び溶剤としては、上記ペーストの調製に用いられるのと同様の結合剤及 び溶剤を用いることができる。結合剤の混合割合としては、 0.:!〜 30質量%程度が 一般的であり、溶剤の混合割合としては、:!〜 40質量%程度が一般的である。
可塑剤は、乾燥速度をコントロールすると共に、乾燥させた膜に柔軟性を与える成 分であり、その含有量は、 0〜: 10質量%程度が一般的である。可塑剤としは、フタノレ 酸ジブチル、ブチルベンジルフタレート、ジォクチルフタレート、ジイソォクチルフタレ ート、ジカプリルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられ、これらを単独または混 合して使用することができる。
[0040] グリーンシートを作製する一般的な方法としては、上記蛍光体複合材料、結合剤、 可塑剤等を用意し、これらに溶剤を添加してスラリーとし、このスラリーをドクターブレ ード法によって、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルムの上にシート状に成 型する。シートを成型した後、乾燥させることによって、有機系溶剤等を除去し、ダリ ーンシートとすることができる。
以上のようにして得られたグリーンシートを用いて、蛍光体複合部材を形成するに は、蛍光体複合部材と同程度の熱膨張係数を有する無機材料の基材を用意し、そ の基材上にグリーンシートを積層し、熱圧着して塗布層を形成した後、上述のペース トの場合と同様に焼成し無機材料の基材を取り外すことにより、蛍光体複合部材とす ること力 Sできる。
[0041] 尚、上記のようにして得られた蛍光体複合部材を LEDの発光チップの発光面側に 配置することで、発光チップから発せられた光を別の波長の光に変換することができ る。
本発明の蛍光体複合部材としては、例えば、 300〜500nmの波長の光を可視光 に変換するものが挙げられる。変換特性については、使用する蛍光体の種類により 種々調整することが可能である。
実施例
[0042] 以下、実施例に基づき本発明を説明する。
表 1〜表 4は、本発明の実施例(試料 No.:!〜 24)及び比較例(試料 No. 25、 26) をそれぞれ示している。
[0043] [表 1]
1 2 3 4 5 6 7 ガラス組成 (モル%)
S n 0 62. 0 62. 0 62. 0 62. 0 62. 0 62. 0 62. 0
P 205 21. 0 21. 0 21. 0 21. 0 21. 0 21. 0 21. 0
B 20 11. 5 11. 5 11. 5 11. 5 11. 5 11. 5 11. 5
A I 20 2. 5 2. 5 2. 5 2. 5 2. 5 2. 5 2. 5
S i 02 3. 0
L i 20 —— 3. 0
N a 20 —— —— 3. 0 —— —— —— ——
K 20 —— —— —— 3. 0 —— —— ——
M g 0 —— —— —— —— 3. 0 —— ——
C a 0 3. 0 ——
S r 0 3. 0
B a 0
Z n 0
N i 0
S n 0 / P 205 2. 9 2. 9 2. 9 2. 9 2.9 2. 9 2. 9 軟化点 (°C) 350 335 340 340 350 350 350 焼成温度 (。 350 340 345 345 350 355 355 内部透過率 (%) 95 97 96 98 98 95 97 ガラスと蛍光体の
〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 反応
効率 ( I m/W)
1 9 2 0 1 9 2 0 1 9 2 1 1 9 ぐ耐候性試験前 >
tvm ( I m/w)
1 9 2 0 1 9 2 0 1 9 2 1 1 9 <耐候性試験後 >
表面状態
◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
<耐候性試験後 > 2]
8 9 1 0 1 1 1 2 1 3 1 4 ガラス組成 (モル%)
S n 0 62. 0 62. 0 69. 5 66. 0 66. 0 42. 0 71. 0
P 2〇 5 21. 0 21. 0 24. 0 22. 5 22. 5 40. 0 5. 0
B 20 11. 5 14. 5 1. 0 3. 0 4. 0 13. 0 20. 0
A I 20 2. 5 2. 5 3. 0 5. 0 4. 0 3. 0 ——
S i 02 —— —— 2. 5 1. 0 2. 0 —— ——
L i 20
N a 20 —— —— —— 2. 5 1. 5 —— ——
K 20
M g 0 1. 0
C a 0 3. 0
S r 0
B a 0 3. 0 —— —— —— —— 2. 0 ——
Z n 0
N i 0
S n 0 / P 205 2. 9 2. 9 2.9 2. 9 2. 9 1. 1 14. 0 軟化点 (°C) 360 345 330 320 325 400 330 焼成温度 (で) 365 345 330 330 330 400 330 内部透過率 (%) 96 97 98 96 98 97 87 ガラスと蛍光体の
〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 反応
効率 ( I mZW)
1 8 1 9 7 1 2 1 5 1 3 1 4 <耐候性試験前 >
効率 ( I m/W)
1 8 1 9 4 1 0 1 5 8 1 4 <耐候性試験後 >
表面状態
<耐候性試験後 > ◎ ◎ 〇 〇 ◎ 〇 ◎ ]
まず、表に示すガラス組成となるように原料を調合し、均一に混合した。次いで、調 合した原料をアルミナ坩堝に入れて N雰囲気中で、 900°C、 2時間溶融(No. 26の
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み 1200°Cで 2時間溶融)した後、ガラス融液の一部をカーボン板の上に流し出して、 板状に成形し、残りをローラー成型器を用いてフィルム状に成形した。続いて、得ら れたフィルム状のガラスをらいかい機で粉砕した後、 325メッシュの篩に通して分級し 、ガラス粉末を得た。得られた板状ガラスについては、ァニール後、切断、研磨加工 を行い、ガラスの内部透過率を測定し、ガラス粉末については、軟ィ匕点を測定した。 これらの測定結果を表に示した。
[0048] 次に、得られたガラス粉末 99質量%に対し、 1質量%の SrBaSiO : Eu2+粉末(耐
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熱性が 500°C程度の蛍光体)を添加し、混合して蛍光体複合材料を得た。次に、得 られた蛍光体複合材料を金型に入れて加圧成形し、大きさ 15mm X 15mm、厚さ 5 mmの予備成型体を作製した。この予備成型体を、 lOOPaの減圧下(1気圧 = 1. 01 3 X 105Pa)、表に示す焼成温度で焼成した後、加ェし、大きさ 1 Omm X 1 Omm、厚 み lmmの蛍光体複合部材を得た。得られた蛍光体複合部材について、ガラスと蛍 光体の反応、発光効率、及び耐候性を評価し、結果を表に示した。
[0049] 表カゝら明らかなように、実施例である試料 No. :!〜 19及び 2:!〜 23は、ガラスの軟 化点が 400°C以下と低いため、 400°C以下の温度で焼成することができた。また、ガ ラスの内部透過率が 82%以上と高ぐガラスと蛍光体との反応評価においても、焼結 体に着色はなぐ発光効率は、 71m/W以上と高かった。さらに、耐候性試験後の発 光効率は 41mZW以上あり、耐候性試験による発光効率の低下率(1一試験前の発 光効率/試験後の発光効率)も 43%以下と低ぐ試験後の焼結体表面は、 目視観 察で白濁は認められず、耐候性に優れていた。尚、試料 No. 20は、ガラスの内部透 過率が 98%と高いものの、ガラスの軟化点が 410°Cと高いため、蛍光体との反応を 抑えるために B Oを同程度含有させた他の実施例よりも発光効率が低かった。また
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、試料 No. 24は、ガラスと蛍光体との反応評価において、焼結体に着色はなぐガラ スと蛍光体が反応し難いものの、ガラスの内部透過率が 73%と低いため、発光効率 が他の実施例よりも低かった。
[0050] これに対して、比較例である試料 No. 25は、焼成時にガラスと蛍光体が反応したた め、焼結体が着色し、発光効率が 31m/Wと低かった。また、耐候性試験後の発光 効率は llmZWとなり、耐候性試験による発光効率の低下率は 67%と大きぐさらに 、試験後の焼結体表面は、 目視で観察したところ白濁しており、顕微鏡で観察でした ところ微小クラック及びガラス成分の溶出が認められ、耐候性が低かった。また、試料 No. 26は、ガラスの軟化点が 570°Cと高いため、焼成温度も高くなり、焼成時に蛍光 体が劣化し、発光効率が著しく低かった。
[0051] 尚、ガラス粉末の軟化点については、マクロ型示差熱分析計を用いて測定し、第四 の変曲点の値を軟ィ匕点とした。
ガラスの内部透過率については、板状に成形したガラスを肉厚力 Slmmになるように 光学研磨加工を行って、分光光度計を用いて波長 588nmにおける透過率及び反 射率を測定し、内部透過率 (透過率に試料両面での反射率を加えた値)を求めた。
[0052] ガラスと蛍光体の反応の評価については、焼成して得られた試料 (蛍光体複合部 材)の着色の有無を観察することで行った。各試料を目視で観察し、試料が蛍光体 粉末の色 (黄色)と同じものを「〇」とし、試料が蛍光体粉末と異なる色に着色したもの を「X」とした。尚、試料が蛍光体粉末と異なる色に着色するということは、焼成する際 の熱によりガラスと蛍光体が反応し、蛍光体が劣化してレ、ることを示す。
発光効率にっレ、ては、電流 20mAで操作した青色 LED (波長 465nm)上に試料 を設置し、積分球内で、試料上面から発せられる光のエネルギー分布スペクトルを測 定し、得られたスペクトルに標準比視感度を掛け合わせて全光束を計算し、得られた 全光束を光源の電力(0. 072W)で除して算出した。
[0053] また、耐候性の評価については、蛍光体複合部材をプレッシャータッカー試験機に て気圧 2気圧、湿度 95%、温度 121°Cの条件下に 24時間放置し、試験後の試料の 発光効率及び表面の白濁の有無を観察することで行った。尚、試験後の発光効率は 、上記と同様にして測定して求めた。また、試験後の試料表面の白濁の有無は、各 試料の表面を目視及び顕微鏡で観察し、 目視及び顕微鏡で微小クラックまたはガラ ス成分等の溶出による白濁が認められなかったものを「◎」、 目視では白濁が認めら れな力つたものの顕微鏡で白濁が認められたもの「〇」、 目視及び顕微鏡で白濁が 言忍められたものを「 X」とした。
産業上の利用可能性
[0054] 本発明の蛍光体複合材料及び蛍光体複合部材は、 LED用途に限られるものでは なぐレーザーダイオード等のように、ハイパワーの励起光を発するものに用いること も可能である。